JP2013119814A - ピストンスカート構造及び摺動部材 - Google Patents

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Eiji Shimodaira
英二 下平
Masao Kumagai
正夫 熊谷
Kazuyuki Yaoi
和之 矢追
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Abstract

【課題】 比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、スラップ音やスカッフ等の発生を効果的に抑制することができると共に、耐摩耗性や初期馴染み性を改善しつつ、ピストンスカートの外表面と、シリンダ内壁と、のクリアランスを初期から長期に亘って適正なものとすることができるピストンスカート構造を提供する。
【解決手段】 このため、本発明に係るピストンスカート130は、少なくとも外周面にピストン上下方向と交差する方向に延びる複数の溝131が形成されると共に、該溝131間の隆起部132の相手部材との摺動部に、前記複数の溝131と略平行な複数の溝132A,132Bが形成されたことを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、内燃機関等のシリンダに摺動自在に嵌挿されるピストンのスカートに関する。また、該ピストンのスカート等の摺動部に適した摺動部材に関する。
従来より、内燃機関等の燃焼室の一部を画成しシリンダブロックに設けられるシリンダ(或いはシリンダライナ)に摺動自在に嵌挿保持されるピストンは、燃焼圧を受けて直線移動(往復運動)することによりピストンピンやコネクティングロッドを介してクランク軸に回転動力を伝達するが、燃焼圧を保持したりシリンダ内周面のオイルを掻き落としたりするための各種のピストンリングを所定間隙をもって保持するピストンリング溝が刻設されるランド部を有して構成されている。
また、このランド部の下側(クランク軸側)には、往復運動中におけるピストンの姿勢を整え、ピストンに側圧(サイドフォース)が作用した際においてピストンがシリンダに対して局所的に衝突して所謂スラップ音を発生させたりスカッフ(溶損)等を発生させないようにするためのスカート部が備えられる。
前述したランド部はシリンダ内径に対して比較的小さく設定される一方で、スカート部は、燃焼の際に生じるサイドフォース(スラストフォース)が作用する際に、ピストンの側方への移動距離を小さくしてシリンダに対して柔らかくスカート部を当てることができるように、ランド部に比べると比較的大きな径で(シリンダ内径との隙間が小さく)形成されている。
また、スカート部は、シリンダ内周面との衝突の際にその面圧を小さくしてスラップ音の低減やスカッフ等の発生を抑制するために、比較的大きな面積を有して構成される。
このため、サイドフォース(スラストフォース)作用時におけるスラップ音の低減やスカッフの発生等の抑制を促進しようとすると、フリクションロスが大きくなって内燃機関の燃費、出力、排気性能に悪影響を当たる一方で、フリクションロスの低減を改善しようとすると、スラップ音の低減やスカッフ等の発生の抑制に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、スカート部の外周面と、シリンダ内周面と、の間における初期馴染み性を良くするために、スカート部の外周面に形成される条痕の溝間の隆起部の表面に微小凹凸(図10参照)を形成して表面粗さを粗くすることで凹部を油溜まりとして機能させて油膜の保持性を保つことなどが行われているが、初期馴染みを終えたころにはスカート部の外周面の条痕の溝間の隆起部分の凹凸の頭(突起の先端)の部分が削れ落ちるなどして、スカート部の外周面と、シリンダ内周面と、のクリアランスが大きい状態でその後の長い期間運転されることになる。
このため、スラップ音の低減効果やスカッフの発生等の抑制効果が薄れるため、初期馴染み後におけるクリアランスを適正にすることも要求される。
このようなことから、ピストンスカート部の外周面の表面形状等について種々の研究がなされているが、例えば、特許文献1には、従来のスカート部の外周面に形成される条痕の溝間の隆起部分の微小凹凸を、図12に示すように、予め削り落しておいて内燃機関に組み込むようにしたものが記載されている。
特開2005−291390号公報
特許文献1に記載されるものは、図11、図12に示すように、バイト(チップ)による切削加工によりスカート部の外周面に形成される条痕の溝間の隆起部分を予め削り落しておくことで、条痕形状を略台形状としている。このため、特許文献1に記載されるピストン(新品)を内燃機関に組み込んだときから初期馴染み後の形状に近い形状にしておくことができるので、スカート部の外周面と、シリンダ内周面と、のクリアランスを初期から長期に亘って適正に保つことができる。
しかしながら、特許文献1に記載のものは、バイト(チップ)による削り加工により条痕の溝間の隆起部分の微小凹凸(図10参照)を削り落しているため、図12に示したように、スカート部外周面がシリンダ内周面と当接する摺動部付近は平坦で、図10に示した微小凹凸により提供されるような油溜まりを提供することが難しく、初期馴染み性が低下するおそれや、スカート部やシリンダ内周面の耐スカッフ性や耐摩耗性等に悪影響を与えるおそれがある。
なお、初期馴染み性を良くするためには、スカート部外周面に各種の表面処理(例えば、モリブデンコーティング、パーカライジング処理など)などを行うことなどが種々提案されているが、これらの処理による皮膜は初期馴染み後には消失してしまうため、スカート部の外周面と、シリンダ内周面と、のクリアランスを初期から長期に亘って適正に保つことは難しいといった実情がある。
また、条痕の溝は、潤滑油を摺動面に供給するための油溜まりや異物の収容部などとして機能すると共に、スカート部の外周面とシリンダ内周面との間にマイクロスカッフ等が生じた際にそのスカッフを条痕(溝)の油溜まりで冷却しつつ分断することでスカッフが大きく拡大することを抑制するような機能を有するが、特許文献1のものは、図12に示したように、条痕の溝間の隆起部分を削り加工により落しているため、その削り落した分だけ条痕の溝の深さが浅くなり、上記の油溜まりとしての機能を十分に奏することができなくなるおそれがある。
本発明は、かかる従来の実情に鑑みなされたものであり、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、スラップ音やスカッフ(溶損)等の発生を効果的に抑制することができると共に、耐摩耗性や初期馴染み性を改善しつつ、ピストンスカートの外表面と、シリンダ内壁と、のクリアランスを初期から長期に亘って適正なものとすることができるピストンスカート構造を提供することを目的とする。また、ピストンスカート等の摺動部に適した摺動部材を提供することを目的とする。
このため、本発明に係るピストンスカート構造は、
少なくとも外周面にピストン上下方向と交差する方向に延びる複数の溝が形成されると共に、該溝間の隆起部の相手部材との摺動部に、前記複数の溝と略平行な複数の溝が形成されたことを特徴とする。
本発明において、少なくとも前記隆起部の相手部材との摺動部に、微小ディンプルが形成されたことを特徴とすることができる。
本発明において、少なくとも前記隆起部の相手部材との摺動部に、DLC皮膜が形成されたことを特徴とすることができる。
また、本発明に係る摺動部材は、
摺動方向と交差する方向に延びる複数の溝が形成されると共に、該溝間の隆起部の相手部材との摺動部に、前記複数の溝と略平行な複数の溝が形成されたことを特徴とする。
本発明において、少なくとも前記隆起部の相手部材との摺動部に、微小ディンプルが形成されたことを特徴とすることができる。
本発明において、少なくとも前記隆起部の相手部材との摺動部に、DLC皮膜が形成されたことを特徴とすることができる。
本発明によれば、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、スラップ音やスカッフ(溶損)等の発生を効果的に抑制することができると共に、耐摩耗性や初期馴染み性を改善しつつ、ピストンスカートの外表面と、シリンダ内壁と、のクリアランスを初期から長期に亘って適正なものとすることができるピストンスカート構造を提供することができる。また、ピストンスカート等の摺動部に適した摺動部材を提供することができる。
本発明の実施例1に係るピストンの全体構成を概略的に示した斜視図である。 同上実施例1のピストンのスカート部外周面の外形形状の一部を拡大して示した斜視図である(二条の微小溝の例)。 同上実施例1のピストンのスカート部外周面の外形形状の一部を形状測定器(表面粗さ計)にて測定した形状データ(往復運動方向に沿って測定したデータ)である。 本発明の実施例2に係るピストンのスカート部外周面の外形形状の一部を拡大して示した斜視図である。 同上実施例2のピストンのスカート部外周面に設けられた微小ディンプルを拡大して示した斜視図である。 本発明の実施例3に係るピストンのスカート部外周面の外形形状の一部を拡大して示した斜視図(三条の微小溝の例)である。 図6の三条の微小溝の部分を拡大して示した斜視図である。 従来のピストンのスカート部外周面の外形形状の一例を拡大して示した斜視図である。 従来のピストンのスカート部外周面の外形形状の一例を拡大して示した斜視図である。 従来のピストンのスカート部外周面の外形形状の一例を拡大して示した断面図である(ピストン上下方向(往復直線運動方向)に沿った断面にて切断した断面図である)。 従来のピストンのスカート部外周面の条痕加工の様子を示す斜視図である。 従来のピストン(特許文献1)のスカート部外周面の外形形状の一例を拡大して示した断面図である(ピストン上下方向(往復直線運動方向)に沿った断面にて切断した断面図である。
以下、本発明に係る一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
本実施の形態の実施例1に係る内燃機関等に用いられるピストン100は、図1に示すように、ピストン頂面側のランド部110には、ピストンリング(図示せず)を所定間隙を有して保持する複数本のピストンリング溝111が刻設されている。図1では、トップリング、セカンドリング、オイルリングのための3本のピストンリング溝が刻設されているが、これに限定されるものではない。
また、ピストンリング溝111の下側には、コネクティングロッド延いてはクランクシャフトに連接するためのピストンピンを嵌挿保持するピストンピンボス部120が形成されていると共に、ピストンピンと略直交する円周方向にはピストンスカート部130が設けられている。
ピストンスカート部130は、図1に示したように、往復直線運動方向(ピストン上下方向)と直角に近い角度で交差する方向に延びる条痕が形成されている。この条痕は、図11に示したように、ピストン100を所定の回転速度で回転させつつ切削バイト(チップ)を往復直線運動方向に送りながらピストンスカート部130の外周面を削ることで、一条の螺旋状の溝131(図2参照)として形成されるようになっている。
ここで、図8に示すような形状や、図9や図12に示したような略台形状(往復直線運動方向に沿った平面にて切断したときの断面形状)では、初期馴染み性が十分ではないため、本実施例では、図2に示すように、隣接する溝(条痕)131間の隆起部132の先端(シリンダ内周面との摺動部)に複数の溝(微小溝132A,132B)を形成するようにした。
このように、本実施例では、シリンダ内周面と潤滑油を介して当接する隆起部132に、2本の微小溝132A,132Bを設けたことで、シリンダ内周面との摺動部付近に微小な油溜まりを複数形成することができるため、ピストンスカート部130の外周面とシリンダ内周面との間の摺動面に良好に潤滑油を供給して良好な油膜を形成することができるため、初期馴染み性、耐摩耗性、耐スカッフ性等を改善することができる。
従って、本実施例によれば、条痕の溝間の摩耗し易い部分(図10の微小凹凸)を予め削り落しても、初期馴染み性、耐摩耗性、耐スカッフ性等を改善することができるため、新品のピストン100を内燃機関に組み込んだときから従来における初期馴染み後のクリアランスに設定することなどが可能となる。
このため、本実施例によれば、新品のピストン100を内燃機関に組み込んだときから長期に亘って、ピストンスカート部130の外周面とシリンダ内周面との間のクリアランスを適正な値に維持することができ、以ってスラップ音の低減効果やスカッフの発生等の抑制効果を長期に亘って維持することができる。
なお、先端部132に形成した2つの微小溝132A、132Bは、例えば、図11に示したような切削バイト(チップ)により螺旋状の条痕131を切削した後、隣接する溝131間の隆起部132に複数の微小溝132A、132Bを形成するために必要な距離だけバイト(チップ)の刃先をピストン半径方向外側に逃がした後、条痕131を切削した際のバイトの送り速度(往復直線運動方向への移動速度)の1/6〜1/5程度の送り速度で切削することで形成することができる。
また、本実施例では、図3に示すように、隆起部132に形成した2つの微小溝132A、132Bの先端から条痕(溝)131の底部までの深さを、図10に示した従来の条痕と同等の深さ(約0.01mm)となるように設定することができる。
すなわち、2つの微小溝132A、132Bを形成した前後の隆起部132の底部からの高さ変化を考慮して、先に形成する条痕(溝)131の深さを、図10の従来の条痕の深さより深く形成しておいて、2つの微小溝132A、132Bを形成した後にその隆起部132の先端から条痕131の底部までの深さが、図10に示した従来の条痕深さと同等の深さとなるように調整されている。
なお、条痕(溝)131は、例えば、図3に示すように、従来の条痕間の隆起部を削り落さない場合の条痕と同等の深さである約0.01mm(約10μm)程度に形成され、溝ピッチは0.25mm〜0.3mm程度で形成されることができる。
そして、2つの微小溝132A、132Bは、ピッチ0.05mm程度で、深さが2μm程度で形成されることができる。
このように、本実施例では、隆起部132の先端から条痕(溝)131の底部までの深さを従来の条痕と同等の深さとなるようにしたので、条痕(溝)131の油溜まりとしての機能を、従来同等に奏することができる。
すなわち、本実施例によれば、条痕(溝)131の深さを従来同等としたので、条痕(溝)131をピストンスカート部130の外周面とシリンダ内周面との間の摺動面に潤滑油を供給するための油溜まりや異物の収容部などとして良好に機能させることができると共に、ピストンスカート部130の外周面とシリンダ内周面との間にマイクロスカッフ等が生じた際にそのスカッフを条痕131の溝の油溜まりで冷却しつつ分断することでスカッフが拡大することを抑制するといった機能を良好に発揮させることができる。
以上説明したように、本実施例によれば、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、スラップ音やスカッフ(溶損)等の発生を効果的に抑制することができると共に、耐摩耗性や初期馴染み性を改善しつつ、ピストンスカートの外周面と、シリンダ内周面と、のクリアランスを初期から長期に亘って適正なものとすることができるピストンスカート構造を提供することができる。また、ピストンスカートに限らず、ピストンスカート等の摺動部に適した摺動部材を提供することができる。
実施例2では、実施例1のピストン100に対して、図4、図5に示すように、ピストンスカート部130の外周面に微小ディンプル140を形成するようにした。
図4では、隆起部132に形成した2つの微小溝132A、132Bの付近にのみ微小ディンプル140が形成されている様子を示しているが、これに限らず、条痕(溝)131の底部などにも微小ディンプル140を形成することができる。
微小ディンプル140は、例えば、WPC処理により形成することができる。
WPC処理とは、「微粒子ピーニング」、「精密ショットピーニング」、「FPB(Fine Particle Bombarding)」などと称される表面処理で、金属製品の表面に、目的に応じた材質の微粒子を圧縮性の気体に混合して高速衝突させる表面改質処理である。かかるWPC処理においては、処理対象物の最表面で急熱・急冷が繰り返される一方で、材料表面の局所領域に多方向・多段・非同期の強加工が導入されることにより、微細で靭性に富む緻密な組織が形成され、高硬度化して表面を強化すると同時に、表面性状を微小ディンプルへ変化させることによって摩擦摩耗特性を向上させることができる。
このため、この実施例2のように、ピストンスカート部130の外周面にWPC処理を施した場合には、上述した実施例1により奏せられる各種の作用効果を一層高いレベルで奏することができることに加え、WPC処理により形成される微小ディンプル140を、隆起部132に形成した2つの微小溝132A、132Bに形成することができるため、ピストンスカート部130の外周面とシリンダ内周面との間の摺動部付近に多数の微小油溜まりを形成することができるので、以って一層の初期馴染み性、耐摩耗性、耐スカッフ性等の改善を図ることができる。
また、WPC処理により表面硬度を向上させることができる一方で微小ディンプル140により潤滑特性を改善することができるため、WPC処理を行わない実施例1のものに比べてフリクション、耐摩耗性を一層向上させることができるため、より一層長期間に亘って燃費低減や摩耗低減に貢献することができる。
なお、実施例2においても、WPC処理後の隆起部132の先端から条痕131の底部までの深さを、図3に示したように、従来の条痕深さ(図10参照)と同等の深さとなるように構成することができる。
なお、微小ディンプル140のサイズとしては、径がφ数μm〜φ100μm程度(好ましくは、φ30μm程度)、深さで1〜1.5μm程度とすることができる。
以上説明したように、実施例2によれば、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、スラップ音やスカッフ(溶損)等の発生を効果的に抑制することができると共に、耐摩耗性や初期馴染み性を改善しつつ、ピストンスカートの外周面と、シリンダ内周面と、のクリアランスを初期から長期に亘って適正なものとすることができるピストンスカート構造を提供することができる。また、ピストンスカートに限らず、ピストンスカート等の摺動部に適した摺動部材を提供することができる。
実施例3では、実施例1のピストン100に対して、図6、図7に示すように、隣接する条痕(溝)131間の隆起部132に3本の複数の微小溝132A,132B、132Cを形成するようにした。
かかる構成の実施例3では、シリンダ内周面と潤滑油を介して当接する隆起部132に、3本の微小溝132A,132B、132Cを設けたことで、シリンダ内周面との摺動部付近に油溜まりをより一層多く形成することができるため、ピストンスカート部130の外周面とシリンダ内周面との間の摺動面に良好に潤滑油を供給して良好な油膜を形成することができるため、初期馴染み性、耐摩耗性、耐スカッフ性等を一層改善することができる。
従って、実施例3では、実施例1と同様、条痕の溝間の摩耗し易い部分(図10の微小凹凸)を予め削り落しても、初期馴染み性、耐摩耗性、耐スカッフ性等を改善することができるため、新品のピストン100を内燃機関に組み込んだときから従来における初期馴染み後のクリアランスに設定することなどが可能となる。
このため、実施例3によれば、新品のピストン100を内燃機関に組み込んだときから長期に亘って、スカート部130の外周面とシリンダ内周面との間のクリアランスを適正な値に維持することができ、以ってスラップ音の低減効果やスカッフの発生等の抑制効果を長期に亘って維持することができる。
また、実施例3においても、図3に示したように、隆起部132に形成した3つの微小溝132A、132B、132Cの先端から条痕(溝)131の底部までの深さを、図10に示した従来の条痕と同等の深さ(約0.01mm)となるように設定することができる。
このように、実施例3においても、条痕(溝)131の深さを従来同等とすることで、条痕(溝)131をピストンスカート部130の外周面とシリンダ内周面との間の摺動面に潤滑油を供給するための油溜まりや異物の収容部などとして良好に機能させることができると共に、ピストンスカート部130の外周面とシリンダ内周面との間にマイクロスカッフ等が生じた際にそのスカッフを条痕131の溝の油溜まりで冷却しつつ分断することでスカッフが拡大することを抑制するといった機能を良好に発揮させることができる。
以上説明したように、実施例3によれば、比較的簡単かつ低コストな構成でありながら、スラップ音やスカッフ(溶損)等の発生を効果的に抑制することができると共に、耐摩耗性や初期馴染み性を改善しつつ、ピストンスカートの外周面と、シリンダ内周面と、のクリアランスを初期から長期に亘って適正なものとすることができるピストンスカート構造を提供することができる。また、ピストンスカートに限らず、ピストンスカート等の摺動部に適した摺動部材を提供することができる。
なお、実施例3においても、ピストンスカート部130の外周面に微小ディンプル140を形成することができる。
これにより、上述した実施例2により奏される作用効果と同様の作用効果を実施例3においても奏することができる。
ところで、上述した実施例1〜実施例3のピストンスカート部130の外周面に対して、DLC(Diamond−Like Carbon)皮膜を形成することができる。なお、シリンダ内周面と当接する部分(隆起部132の表面)に施すことが効果的である。
ここで、DLC皮膜は、イオンを利用した気相合成法により合成されるダイヤモンドに類似した高硬度・電気絶縁性・赤外線透過性などを持つ炭化物系皮膜で、主として炭化水素、あるいは、炭素の同素体から成る非晶質(アモルファス)の硬質膜である。DLC皮膜は、薄膜にもかかわらず、非常に固い膜を作ることができ、一般的に、窒化処理の3〜7倍、TiNに対しても2〜4倍以上の硬度を有する(但し、硬度は、DLCの成膜法によって変化する)。
また、DLC皮膜の摩擦係数は、乾燥状態の摺動では鉄同士の摩擦係数に対しDLC−鉄で半減、潤滑剤の存在下においても、鉄同士に対して25%程度に近くなるなど、非常に低い摩擦係数の実現が可能である。
なお、ここでは、例えば、プラズマCVD法或いはPVD法により、DLC皮膜を10μm以下(好ましくは、0.1〜3μm程度)の厚さに形成することができる。
但し、DLC皮膜に限らず、他の硬質で低摩擦な皮膜(薄膜)を形成することができる。例えば、CrC(炭化クロム)皮膜(薄膜)、CrN(窒化クロム)皮膜(薄膜)、更には、これらを組み合わせた皮膜を形成することもできる。例えば、下層をCrC皮膜として上層をDLC皮膜としたものや、下層をCrN皮膜として上層をDLC皮膜とすることができる。
このように、DLC処理を施すことで、ピストンスカート部130の外周面とシリンダ内周面との間の摺動面における摩擦係数を大幅に低減することができると共に、ピストンスカート部130の外周面の硬度の向上により摩耗を低減することができるため、より一層ピストンスカート部の外周面とシリンダ内周面との間のクリアランスを小さくすることができると共に、耐スカッフ性や信頼性を向上させることができ、以って低燃費化や長寿命化などを一層促進することができる。
なお、ピストンスカート部の外周面とシリンダ内周面との間のクリアランスを小さくすることができれば、ピストンスラップ音の低減やブローバイガス量などの低減を促進することができる。
ところで、実施例2で述べたようなWPC処理によって微小ディンプル140をピストンスカート部130の外周面に形成し、その上からDLC皮膜を形成することで、ピストンスカート部130(母材)とDLC皮膜との密着度合いを高めることが可能である。これにより、DLC皮膜の剥離等をより高いレベルで防止することができるので、耐久性を向上させることができ、以って高い信頼性の内燃機関等の提供に貢献することができる。
ところで、上述した各実施例では、シリンダ内周面は、シリンダブロックに穿孔されたシリンダボアの内周面とすることができると共に、シリンダボアに嵌挿されるシリンダライナの内周面とすることもできる。
また、上述した各実施例では、切削加工のし易さなどの観点から、一条の連続した螺旋状の溝131にて説明したが、これに限定されるものではなく、一条一条を環状に形成したものを所定ピッチで多数隣接させた構成とすることもでき、すなわち、往復直線運動方向と交差する方向に延びる溝が複数連続してピストンスカート部の外周面に形成されたものであれば本発明の範囲に含まれるものである。
また、上述した各実施例に係るピストンスカート部は、アルミニウム合金(AC8A、AC9A、AC9Bなど)とすることができるが、これに限定されるものではなく、本発明は、アルミ以外の金属、例えば、球状黒煙鋳鉄、可鍛鋳鉄、スチールなどの鉄系その他の材料にも適用可能である。
また、上述した各実施例に係るピストンスカート部は、ピストンランド部やピストンピンボス部等と一体成形されたピストンのスカート部として説明したが、本発明に係るピストンスカート構造はこれに限定されるものではなく、ピストンランド部やピストンピンボス部等と、ピストンのスカート部と、を別々に製造してアッセンブリするような所謂2ピースピストンなどにおけるピストンスカート構造にも適用可能である。すなわち、ピストンスカートのみが独立して製造され販売等される場合において、そのピストンスカートは本発明の範囲に含まれるものである。
また、本発明は、ピストンスカートに限定されるものではなく、ピストンスカート以外の摺動部に利用される摺動部材にも適用可能である。
また、上述した各実施例に係るピストンは、内燃機関に利用されるものに限定されるものではなく、外燃機関に用いられるピストンにも適用可能であると共に、燃焼を伴わないエアコンプレッサなどに利用されるピストンにも適用可能である。
また、上述した各実施例では、ピストンスカート部130に条痕(溝)131を設け、この条痕(溝)131間の隆起部132の先端(シリンダ内周壁との摺動部)に複数の微小溝132A、132B(、132C)を形成した場合について説明したが、ピストンスカート部以外のランド部110に同様の条痕131、隆起部132、複数の微小溝132A、132B(、132C)を形成することもできる。
本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
100 ピストン
110 ランド部
111 ピストンリング溝
120 ピストンピンボス部
130 ピストンスカート部
131 条痕(溝)
132 隆起部
132A 溝(微小溝)
132B 溝(微小溝)
132C 溝(微小溝)
140 微小ディンプル

Claims (6)

  1. 少なくとも外周面にピストン上下方向と交差する方向に延びる複数の溝が形成されると共に、該溝間の隆起部の相手部材との摺動部に、前記複数の溝と略平行な複数の溝が形成されたことを特徴とするピストンスカート構造。
  2. 少なくとも前記隆起部の相手部材との摺動部に、微小ディンプルが形成されたことを特徴とする請求項1に記載のピストンスカート構造。
  3. 少なくとも前記隆起部の相手部材との摺動部に、DLC皮膜が形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のピストンスカート構造。
  4. 摺動方向と交差する方向に延びる複数の溝が形成されると共に、該溝間の隆起部の相手部材との摺動部に、前記複数の溝と略平行な複数の溝が形成されたことを特徴とする摺動部材。
  5. 少なくとも前記隆起部の相手部材との摺動部に、微小ディンプルが形成されたことを特徴とする請求項4に記載の摺動部材。
  6. 少なくとも前記隆起部の相手部材との摺動部に、DLC皮膜が形成されたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の摺動部材。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2015192944A1 (de) * 2014-06-17 2015-12-23 Mtu Friedrichshafen Gmbh Verfahren zum behandeln einer oberfläche
JP2017209735A (ja) * 2016-05-23 2017-11-30 株式会社不二Wpc 処理器具
JP2017209144A (ja) * 2016-05-23 2017-11-30 株式会社不二Wpc 金属製ざる状容器及び金属製蓋状部材

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