JP2019120048A - コンクリート充填鋼管の施工方法、コンクリート充填鋼管柱および柱部材 - Google Patents

コンクリート充填鋼管の施工方法、コンクリート充填鋼管柱および柱部材 Download PDF

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Hiromitsu Morioka
宙光 森岡
敏弘 梅田
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Abstract

【課題】コンクリート充填鋼管の施工方法において、クレーンや、支保工及びジャッキ、吊り材等の立上げ設備を用いることなく施工でき、また組立てと同時にコンクリートを充填していくことにより、組立ての作業時間を削減し、効率的な施工が可能なコンクリート充填鋼管の施工方法を提供すること。【解決手段】コンクリート充填鋼管の施工方法であって、外径の異なる複数の鋼管を入れ子状に設置し、前記入れ子状に設置した鋼管のうち最外の鋼管を除く任意の鋼管を鋼管Aとしたとき、コンクリートの充填圧力により、当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ外側に設置した鋼管に設けた内径縮幅部とが接触するまで、当該鋼管Aを押し上げることを特徴とするコンクリート充填鋼管の施工方法。【選択図】図5

Description

本発明は、コンクリート充填鋼管の施工方法、コンクリート充填鋼管柱および柱部材に関し、特に建設分野におけるコンクリート充填鋼管の現場施工法に関するものである。
コンクリート充填鋼管構造(CFT)は、角形鋼管や円形鋼管などの鋼材を柱として自立させた後、中空鋼管の内部にコンクリートを充填して硬化させた構造を有しており、鋼管には引張り力を、コンクリートには圧縮力を負担させる。また、コンクリート充填鋼管は、充填したコンクリートが鋼管の局部座屈を防止し、かつ鋼管がコンクリートを拘束するコンファインド効果が得られることで、耐力および変形性能に優れた部材である。
コンクリート充填鋼管の施工方法としては、現場での建設時には鉄骨構造物と同様、工場で製作された輸送可能な大きさの、柱、梁、ダイアフラム等の部材を建設現場に搬入し、溶接やボルトによって部材を組立てていく。そして、例えば、組立てた柱の上部よりバケット及びトレミー管などを用いてコンクリートを打設充填するか、柱の下部よりポンプ圧送によりコンクリートを充填することでコンクリート充填鋼管とする。
鋼管同士の接合部の補強材としてダイアフラムが用いられる。コンクリート充填鋼管では、コンクリートを鋼管中に万遍なく充填するために、内ダイアフラムを用いる際にはコンクリートが通過できるように十分な大きさの孔を開けたものを使用する。また、鋼管下端のコンクリート注入用の孔は、コンクリート充填後に鉄板により塞ぎ、コンクリート漏れのないようにする。
鋼管同士を接合する場合、従来の鉄骨造建築では予め開先を切った鋼管同士を現場で横向き溶接により接合し、柱と梁の接合はブラケットを介したボルト接合もしくは溶接により接合する。
以上のコンクリート充填鋼管の施工方法では、鉄骨柱を立ち上げた後にコンクリートを充填し、コンクリートが硬化するまで待つ必要があり、鉄骨造と比べると工期が長くなる。そのため、特許文献1、2には、工期短縮を図る方法が提案されている。
特許文献1は、コンクリート充填鋼管に使用する中空鋼管を対象とし、中空鋼管製の柱の外径より一回り大きな筒状体をボルトにより嵌装固着し、筒状体を介して前記柱とブラケットを接合するものである。この工法により現場溶接することなく柱同士さらに柱とブラケットを溶接することができ、内ダイアフラムを省略することでコンクリートを阻害することなく充填することが可能となる。
特許文献2は、コンクリート充填鋼管の柱と梁の接合部を対象とし、前記柱の側面に孔を開けることで、柱だけでなく梁の端部までコンクリートを充填し、スタッドボルトを介して応力を伝達することで柱と梁を接合するものである。この工法により、梁のフランジ上端と柱を溶接するだけで、その他の部位に溶接やボルト接合を用いることなく、施工性を大幅に向上させることが可能となる。
また、特許文献3には、効率の良い施工が可能となる柱脚構造体が開示されている。特許文献3は、コンクリート充填鋼管に使用する中空鋼管を対象とし、径の異なる複数の鋼管を上方に継ぎ足し、鋼管下部を下層のCFTに埋め込むことで接合を完了する構造体である。この構造体を用いることで作業スペースが限られる場所、山間部等の施工条件の悪い場所でも、大型の機械、設備を要することなく、効率の良い施工が可能となる。
特開平10−252148号公報 特開2000−226888号公報 特開平5−263402号公報
従来のコンクリート充填鋼管の施工では、初めに一階の柱となる鋼管を設置し、次の階の柱となる鋼管を順次クレーンにより吊り上げ、一つ下の階の鋼管と溶接により接合して組立てた柱の一階部分の鋼管の下端よりコンクリートを注入するため、手順が多く、施工開始からコンクリートが硬化するまで時間が長くなるという課題がある。特許文献3では、中空鋼管の上方への移動を、大型のクレーンを使用せずに中空鋼管内に設置した支保工及びジャッキにより、或いはワイヤーやテンションロッド等の吊り材により行う施工方法が開示されているが、かかる施工方法においても、支保工及びジャッキ、吊り材等の立上げ設備を設置する必要があり、コンクリート充填鋼管の組立て作業時間が長くなるという課題がある。
また、コンクリート充填鋼管は閉断面となるため、上下階の鋼管同士を接合する際にボルトを用いることができなかった。鋼管同士を現場溶接で接合する場合には、上向き溶接や横向き溶接が発生し、施工の難易度が高かった。
本発明は、コンクリート充填鋼管の施工方法において、クレーンや、支保工及びジャッキ、吊り材等の立上げ設備を用いることなく施工でき、また組立てと同時にコンクリートを充填していくことにより、組立ての作業時間を削減し、効率的な施工が可能なコンクリート充填鋼管の施工方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記施工方法により好適に製造されるコンクリート充填鋼管柱、前記施工方法に好適に用いられる柱部材を提供することを目的とする。
本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
[1]コンクリート充填鋼管の施工方法であって、外径の異なる複数の鋼管を入れ子状に設置し、前記入れ子状に設置した鋼管のうち最外の鋼管を除く任意の鋼管を鋼管Aとしたとき、コンクリートの充填圧力により、当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ外側に設置した鋼管に設けた内径縮幅部とが接触するまで、当該鋼管Aを押し上げることを特徴とするコンクリート充填鋼管の施工方法。
[2]当該鋼管Aに設けた外径拡幅部の板厚が、当該鋼管Aの板厚の√3倍以上であることを特徴とする[1]に記載のコンクリート充填鋼管の施工方法。
[3]当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ外側に設置した鋼管に設けた内径縮幅部との接触部を、下向き溶接により接合することを特徴とする[1]または[2]に記載のコンクリート充填鋼管の施工方法。
[4]鋼管にコンクリートが充填されてなるコンクリート充填鋼管柱であって、前記コンクリート充填鋼管柱は、外径の異なる複数の鋼管で、上階に行くに従い外径が小さくなるように構成され、前記鋼管のうち1階に位置する鋼管を除く任意の階の鋼管を鋼管Aとしたとき、当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ下階に位置する鋼管に設けた内径縮幅部とが接触してなることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱。
[5]当該鋼管Aに設けた外径拡幅部の板厚が、当該鋼管Aの板厚の√3倍以上であることを特徴とする[4]に記載のコンクリート充填鋼管柱。
[6]当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ下階に位置する鋼管に設けた内径縮幅部との接触部が溶接接合されてなることを特徴とする[4]または[5]に記載のコンクリート充填鋼管柱。
[7]外径の異なる複数の鋼管が入れ子状に設置されてなる伸長可能な柱部材であって、前記入れ子状に設置した鋼管のうち最外の鋼管を除く任意の鋼管を鋼管Aとしたとき、当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ外側に設置した鋼管に設けた内径縮幅部とが接触するまで、伸長可能とされたことを特徴とする柱部材。
[8]当該鋼管Aに設けた外径拡幅部の板厚が、当該鋼管Aの板厚の√3倍以上であることを特徴とする[7]に記載の柱部材。
本発明によれば、コンクリート充填鋼管の施工において、クレーンや、支保工及びジャッキ、吊り材等の立上げ設備を用いることなく現場施工でき、また組立てと同時にコンクリートを充填していくことにより、組立ての作業時間を削減し工期を短縮することできる、効率的な施工が可能なコンクリート充填鋼管の施工方法を提供することができる。
また、本発明の施工方法によれば、鋼管同士のボルト接合が可能となり、施工時に溶接以外の接合形式を選択肢に入れることができる。さらに、現場溶接を行う場合でも、下向き溶接が可能となり施工が容易となり、より効率的な施工が可能となる。
本発明の一実施形態にかかる柱部材(入れ子状に設置した4本の鋼管)を示す図である。 図1の柱部材のうち最外に設置した鋼管(最外鋼管1)を示す図である。 図1の柱部材のうち最外鋼管1の1つ内側に設置した鋼管(鋼管2)を示す図である。 図1の柱部材のうち最内に設置した鋼管(最内鋼管4)を示す図である。 本発明のコンクリート充填鋼管の施工方法の一実施形態を説明する説明図(断面図)である。 コンクリートと鋼管の接合補強法の例を示す図で、(a)は鋼管下端部から水平にリブを伸ばした補強法、(b)は鋼管下端部から鉛直にリブを伸ばした補強法を示す図である。 鋼管同士をボルト接合する場合の例を示す図で、(a)は断面図、(b)は斜視図である。 鋼管同士を溶接接合する場合の例を示す図で、(a)は断面図、(b)は斜視図である。 鋼管に予め外ダイアフラムおよびブラケットを取り付ける場合の例を示す図で、(a)は断面図、(b)は斜視図(裏側の外ダイアフラム、ブラケットは省略)である。 本発明を円形鋼管に適用した例を示す斜視図である。 打設済みの柱に本発明による鋼管を打継ぐ場合の例を示す断面図である。 充填可能なCFTの高さ(20m)と、鋼管厚、鋼管径、鋼材の降伏点の関係を示す表である。
以下、本発明のコンクリート充填鋼管の施工方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
(柱部材)
はじめに、本発明のコンクリート充填鋼管の施工方法に好適に用いられる柱部材について説明する。本発明の柱部材は、外径の異なる複数の鋼管が入れ子状に設置されて構成される。ここで、外径とは、円形鋼管の場合の外径寸法のほか、角形鋼管の場合の外径寸法(平断面での幅と高さ(横と縦の辺の長さ))をいう。
図1は、本発明のコンクリート充填鋼管の施工方法に好適に用いられる柱部材の一実施形態である柱部材30を示す図であり、図1(a)は、前記柱部材30の斜視図であり、図1(b)は、前記柱部材30のXX線での切断面図である。図1に示すように、柱部材30は、外径の異なる4つの鋼管が入れ子状に設置されて構成されている。すなわち、柱部材30は、最外に設置された鋼管1(以下、最外鋼管1ともいう)と、前記鋼管1の1つ内側に設置された鋼管2と、前記鋼管2の1つ内側に設置された鋼管3と、前記鋼管3の1つ内側に設置された鋼管4(以下、最内鋼管4ともいう)とで構成されており、最外鋼管1から順番に、内側に行くにつれて鋼管の外径が小さくなる。なお、図1に示す柱部材30は、外径の異なる4本の鋼管が入れ子状に設置されて構成されているが、本発明の柱部材を構成する鋼管の本数に特に制限はなく、2本の鋼管で構成されてもよいし、3本の鋼管で構成されてもよいし、5本以上の鋼管で構成されてもよい。
図1に示す柱部材30を構成する鋼管1〜鋼管4は中空鋼管であり、その内部(中空部分)にコンクリートを充填することができる。
図1に示すように、最外鋼管1の下端は、ベースプレート5に溶接接合されている(なお、図1(a)、(b)中の符号6は溶接線を示す)。また、図1(b)に示すように、鋼管2〜鋼管4は、最外鋼管1に対して鉛直上向きにずらして設置され、ベースプレート5と離間して設置されている。柱部材30を本発明の施工方法に用いる際には、最外鋼管1の下端もしくはその近傍にコンクリート充填用の孔を設け、この孔からコンクリートを充填する。そして前記孔から充填されたコンクリートは、前記鋼管2〜鋼管4とベースプレート5の隙間を通り鋼管の内部に充填される。
なお、前記鋼管2〜鋼管4を、ベースプレート5と離間して設置させる方法は、特に限定されず、例えば適当な手段で鋼管2〜鋼管4を最外鋼管1に対して鉛直上向きにずらして仮止めしてもよいし、鋼管2〜鋼管4の下端とベースプレート5との間に鋼片やゴム等の適当な部材を挟んで鋼管2〜鋼管4をベースプレート5と離間して設置してもよい。
次に、柱部材30を構成する鋼管1〜鋼管4についてそれぞれ詳細に説明する。
<鋼管1>
図2は、柱部材30を構成する鋼管のうち最外鋼管1を示す図であり、図2(a)は、前記鋼管1の斜視図であり、図2(b)は、前記鋼管1のXX線での切断面図であり、図2(c)は、前記鋼管1の平面図である。図2(a)〜(c)に示すように、鋼管1の上端(頂部)には、内径縮幅部1aが設けられている。また、鋼管1の下端(底部)は、ベースプレート5と溶接接合されている。
前記内径縮幅部1aは、後述するように、鋼管1の1つ内側に設置した鋼管2が伸び上がった時に、鋼管2に設けた外径拡幅部と接触しストッパーとして機能するものである。前記内径縮幅部1aは、特に限定されないが、例えば、枠状の鋼部材を鋼管1の上端もしくは内面に溶接等により接合して設けることができる。なお、図2に示す鋼管1では、内径縮幅部1aは、鋼管1の上端に設けられているが、これに限定されず、鋼管1の任意の高さに設けることができる。ただし、前記内径縮幅部1aは、鋼管2が伸び上がった時にストッパーとして機能する必要があることから、鋼管2に設けた外径拡幅部よりは上方に設ける必要がある。
柱部材30を組立てた際に鋼管の耐力を十分に伝達することができる点等から、前記内径縮幅部1aの板厚t1aは、鋼管1の板厚tの√3倍以上であることが好ましい(図2(b))。
また、前記内径縮幅部1aによる縮幅量(図2(c)中のw11とw12の和)は、鋼管2の外径等に応じて適宜設定すればよいが、後述する鋼管2に設けた外径拡幅部による拡幅量と同程度とすることが好ましい。
<鋼管2>
図3は、柱部材30を構成する鋼管のうち鋼管2を示す図であり、図3(a)は、前記鋼管2の斜視図であり、図3(b)は、前記鋼管2のXX線での切断面図であり、図3(c)は、前記鋼管2の平面図である。図3(a)〜(c)に示すように、鋼管2には、その上端(頂部)に内径縮幅部2aが設けられており、その下端(底部)に外径拡幅部2bが設けられている。
前記内径縮幅部2aは、鋼管1の内径縮幅部1aと同様に設けることができる。前記内径縮幅部2aは、鋼管2の1つ内側に設置した鋼管3が伸び上がった時に、鋼管3に設けた外径拡幅部と接触しストッパーとして機能するものである。なお、図2に示す鋼管2では、内径縮幅部2aは、鋼管2の上端に設けられているが、これに限定されず、鋼管2の任意の高さに設けることができる。ただし、前記内径縮幅部2aは、鋼管3が伸び上がった時にストッパーとして機能する必要があることから、鋼管3に設けた外径拡幅部よりは上方に設ける必要がある。
前記外径拡幅部2bは、特に限定されないが、例えば、枠状の鋼部材を鋼管2の下端もしくは外面に溶接等により接合して設けることができる。なお、図2に示す鋼管2では、外径拡幅部2bは、鋼管2の下端に設けられているが、これに限定されず、鋼管2の任意の高さに設けることができる。ただし、前述したように、前記外径拡幅部2bは、鋼管2が伸び上がった時に、鋼管2の1つ外側に設置した鋼管1の内径縮幅部1aと接触しストッパーとして機能する必要があることから、鋼管1に設けた内径縮幅部1aよりは下方に設ける必要がある。
また、柱部材30を組立てた際に鋼管の耐力を十分に伝達することができる点等から、前記内径縮幅部2aの板厚t2aは、鋼管2の板厚tの√3倍以上であることが好ましい。また、前記外径拡幅部2bの板厚t2bは、鋼管2の板厚tの√3倍以上であることが好ましい(図3(b))。
前記内径縮幅部2aによる縮幅量(図3(c)中のw21とw22の和)は、鋼管2の1つ内側に設置した鋼管3の外径等に応じて適宜設定すればよいが、鋼管3に設けた外径拡幅部による拡幅量と同程度とすることが好ましい。
また、前記外径拡幅部2bによる拡幅量(図3(c)中のw23とw24の和)は、鋼管2の1つ外側に設置した鋼管1の内径等に応じて適宜設定すればよいが、前述のとおり、鋼管1に設けた内径縮幅部1aによる縮幅量と同程度とすることが好ましい。
<鋼管3>
鋼管3は、その外径が鋼管2より小さいこと以外は、鋼管2と同様の構成を有している。すなわち、鋼管3には、その上端(頂部)に内径縮幅部3aが設けられており、その下端(底部)に外径拡幅部3bが設けられている。なお、上述のとおり、鋼管3は、鋼管2と同様の構成を有しているため、鋼管3についての個別の図示は省略する。
前記内径縮幅部3aは、鋼管2の内径縮幅部2aと同様に設けることができる。ただし、前記内径縮幅部3aは、鋼管3の1つ内側に設置した鋼管4が伸び上がった時に、鋼管4の外径拡幅部4bと接触しストッパーとして機能する必要があることから、鋼管4に設けた外径拡幅部4bよりは上方に設ける必要がある。
前記外径拡幅部3bは、鋼管2の外径拡幅部2bと同様に設けることができる。ただし、前記外径拡幅部3bは、鋼管3が伸び上がった時に、鋼管3の1つ外側に設置した鋼管2の内径縮幅部2aと接触しストッパーとして機能する必要があることから、鋼管2に設けた内径縮幅部2aよりは下方に設ける必要がある。
また、柱部材30を組立てた際に鋼管の耐力を十分に伝達することができる点等から、前記内径縮幅部3aの板厚t3aは、鋼管3の板厚tの√3倍以上であることが好ましい。また、前記外径拡幅部3bの板厚t3bは、鋼管3の板厚tの√3倍以上であることが好ましい。
前記内径縮幅部3aによる縮幅量は、鋼管3の1つ内側に設置した鋼管4の外径等に応じて適宜設定すればよいが、鋼管4に設けた外径拡幅部による拡幅量と同程度とすることが好ましい。また、前記外径拡幅部3bによる拡幅量は、鋼管3の1つ外側に設置した鋼管2の内径等に応じて適宜設定すればよいが、鋼管2に設けた内径縮幅部2aによる縮幅量と同程度とすることが好ましい。
<鋼管4>
図4は、柱部材30を構成する鋼管のうち最内鋼管4を示す図であり、図4(a)は、前記鋼管4の斜視図であり、図4(b)は、前記鋼管4のXX線での切断面図であり、図4(c)は、前記鋼管4の平面図である。図4(a)〜(c)に示すように、鋼管4には、その下端(底部)に外径拡幅部4bが設けられている。また、鋼管4の上端(頂部)には、蓋部4cが設けられており、鋼管4の上端は蓋部4cによって塞がれている。
前記蓋部4cは、後述するように、柱部材30にコンクリートを充填した際に、コンクリートを堰き止め、コンクリートの充填圧力により、鋼管を上方へ押し上げる起点となるものである。前記蓋部4cは、特に限定されないが、例えば、平板状の鋼部材を鋼管4の上端もしくは内面に溶接等により接合して設けることができる。なお、図4に示す鋼管4では、蓋部4cは、鋼管4の上端に設けられているが、これに限定されず、鋼管4の任意の高さに設けることができる。
前記外径拡幅部4bは、特に限定されないが、鋼管3の外径拡幅部と同様に設けることができる。ただし、前記外径拡幅部4bは、鋼管4が伸び上がった時に、鋼管4の1つ外側に設置した鋼管3の内径縮幅部3aと接触しストッパーとして機能する必要があることから、鋼管3に設けた内径縮幅部3aよりは下方に設ける必要がある。
また、前記蓋部4cの板厚t4cは、特に限定されないが、コンクリートの充填圧力に耐え、十分な耐力を確保する点等から、鋼管4の板厚tの√3倍以上であることが好ましい。また、柱部材30を組立てた際に鋼管の耐力を十分に伝達することができる点等から、前記外径拡幅部4bの板厚t4bは、鋼管4の板厚tの√3倍以上であることが好ましい。
前記外径拡幅部4bによる拡幅量(図4(c)中のw43とw44の和)は、鋼管4の1つ外側に設置した鋼管3の内径等に応じて適宜設定すればよいが、鋼管3に設けた内径縮幅部による縮幅量と同程度とすることが好ましい。
なお、鋼管1〜4の板厚は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。鋼管1〜4の板厚は、柱部材30を組立てた際の耐力等を考慮して適宜に設定することができる。
以上、説明したように、本発明の柱部材は、外径の異なる複数の鋼管(上述の柱部材30の例では、鋼管1〜4)が入れ子状に設置されて構成されている。そして、最外の鋼管を除く鋼管(鋼管2〜4)が、上方にスライドすることで伸長可能とされている。
そして、前記入れ子状に設置した鋼管のうち最外の鋼管を除く任意の鋼管を鋼管Aとしたとき、当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ外側に設置した鋼管に設けた内径縮幅部とが接触するまで、伸長可能とされている。例えば、上述の柱部材30の例でいうと、任意の鋼管Aが鋼管2のとき、鋼管2に設けた外径拡幅部2bと、鋼管2の1つ外側に設置した鋼管1に設けた内径縮幅部1aとが接触するまで、伸長可能とされている。同様に、任意の鋼管Aが鋼管3のとき、鋼管3に設けた外径拡幅部3bと、鋼管3の1つ外側に設置した鋼管2に設けた内径縮幅部2aとが接触するまで、伸長可能とされている。
また、柱部材を組立てた際に鋼管の耐力を十分に伝達することができる点等から、当該鋼管Aに設けた外径拡幅部の板厚は、当該鋼管Aの板厚の√3倍以上であることが好ましい。
本発明による柱部材は、以下に説明するコンクリート充填鋼管の施工方法に好適に用いることができる。本発明による柱部材は、施工現場で鋼管を一気に立ち上げて組立てることが可能であり、組立ての作業時間を削減することができる。また、一般に、トラック等の車両で鋼管を運搬する際には、車両の長さ、幅などで運搬可能なサイズが制限されるが、本発明の柱部材は、外径の異なる鋼管を入れ子状に設置して構成し、施工現場で立ち上げて組立てることが可能であるため、施工現場まで一気に運搬して組立てることが可能である。
(コンクリート充填鋼管の施工方法)
次に、本発明のコンクリート充填鋼管の施工方法の一実施形態について説明する。本実施形態では、上記柱部材30を用いた場合の施工方法について説明する。
図5は、本発明のコンクリート充填鋼管の施工方法の一実施形態を説明する説明図(断面図)である。本実施形態では、まず、柱部材30の下端部(最外鋼管1の下端もしくはその近傍に設けたコンクリート充填用の孔)からコンクリート7を充填していく(図5(a))。コンクリート7は、鋼管2〜鋼管4とベースプレート5の隙間を通り、最内鋼管4の中空部分を満たしながら進行していき、最内鋼管4の蓋部4cまで達すると、その充填圧力により、最内鋼管4を押し上げる(図5(b))。
そして、最内鋼管4は、外径拡幅部4bが、最内鋼管4の1つ外側に設置した鋼管3の内径縮幅部3aと接触するまでコンクリートの充填圧力により押し上げられる。すなわち、鋼管に設けた外径拡幅部、内径縮幅部は、鋼管が目標高さまで立ち上がった時のストッパーとして機能する。
さらにコンクリート7の充填を続けると、コンクリートの充填圧力により、外径拡幅部4bと内径縮幅部3aとの接触部を介して鋼管3が押し上げられる。これが繰り返されることで、鋼管を自立して、すなわち、クレーンや、支保工及びジャッキ、吊り材等の立上げ設備などを用いて吊り上げることなく伸び上がらせて組立てることができる。
そして、鋼管が目標高さまで立ち上がった時点、すなわち、鋼管2〜4に設けた外径拡幅部が全て、対応する内径縮幅部と接触した時点でコンクリートの充填を完了させる(図5(c))。
その後、柱部材30の下端部に設けたコンクリート充填用の孔を鋼板等で塞ぐ。そして、この状態でコンクリートを硬化させることにより、ボルトや溶接を用いることなく鋼管同士を接合して、コンクリート充填鋼管柱20を組立てることができる(図5(c))。
すなわち、本発明のコンクリート充填鋼管の施工方法は、外径の異なる複数の鋼管(上述の柱部材30の例では、鋼管1〜4)が入れ子状に設置され、前記入れ子状に設置した鋼管のうち最外の鋼管を除く任意の鋼管を鋼管Aとしたとき、コンクリートの充填圧力により、当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ外側に設置した鋼管に設けた内径縮幅部とが接触するまで、当該鋼管Aを押し上げるものである。例えば、上述の柱部材30を用いた例でいうと、任意の鋼管Aが鋼管2のとき、コンクリートの充填圧力により、当該鋼管2に設けた外径拡幅部2bと、当該鋼管2の1つ外側に設置した鋼管1に設けた内径縮幅部1aとが接触するまで、当該鋼管2を押し上げる。同様に、任意の鋼管Aが鋼管3のとき、コンクリートの充填圧力により、当該鋼管3に設けた外径拡幅部3bと、当該鋼管3の1つ外側に設置した鋼管2に設けた内径縮幅部2aとが接触するまで、当該鋼管3を押し上げる。
そして、当該鋼管Aに設けた外径拡幅部が全て、対応する内径縮幅部と接触した時点でコンクリートの充填を完了させる。
柱部材を組立てた際に鋼管の耐力を十分に伝達することができる点等から、当該鋼管Aに設けた外径拡幅部の板厚は、当該鋼管Aの板厚の√3倍以上であることが好ましい。
以上、説明したとおり、本発明のコンクリート充填鋼管の施工方法によれば、コンクリート充填鋼管の現場施工に際して、予め入れ子状に設置した鋼管を用いて、コンクリートの充填圧力を利用して、コンクリート充填と同時に鋼管を伸び上がらせて組立てることで、通常の施工と比べて工期を短縮することができ、さらにクレーンや、支保工及びジャッキ、吊り材等の立上げ設備を使用せずに自立して柱を立ち上げることが可能となる。
なお、本発明による施工方法では、コンクリートの充填圧力を利用して鋼管を自立して伸び上がらせるため、現在のコンクリート圧入装置を使用する場合では、高さ20m程度の建物を想定する。
ここで、コンクリート充填鋼管構造(CFT)設計ガイドブックによれば、充填可能なCFTの高さは、鋼管厚、鋼管径、鋼材の降伏点により決まる(図12の表1)。実際には本発明による施工方法では、コンクリートの他に最外鋼管の内側に設置した鋼管を持ち上げる必要がある。例えば、板厚16mm、径500mmの鋼管の場合の単位高さあたりの重量(kg/m)は、245(kg/m)程度で、充填されるコンクリート507(kg/m)程度と比べると半分程度となり、鋼管とコンクリートの断面積を考慮すると、単位高さあたりの重量は、単純にコンクリートのみを充填する場合に対して1.5倍程度となる。ここで、コンクリートの密度は2.3(g/cm3)、鉄の密度は7.9(g/cm3)として計算している。最下部での鋼管の断面座屈は、鋼管に充填される充填物の重量で決まると考えられるため、本発明による施工方法では、打込み可能高さは表1の2/3倍程度となる。具体例として、コンクリートを高さ20mまで充填して施工する場合、外径500mmの角形鋼管ならば、1階には板厚22mm(降伏点235N/mmの場合)以上、もしくは、板厚19mm(降伏点325N/mmの場合)以上の板厚を使用すればよい。
なお、外径拡幅部と内径縮幅部との接合部のコンクリート支圧強度が不足する場合には、鋼管の下端部に水平リブ8(図6(a))、もしくは鉛直リブ9(図6(b))を取り付けることにより、接合部耐力を高めることができる。
また、外径拡幅部と内径縮幅部との接触部を、溶接やボルトにより接合してもよい。一例として、図7に示すように、鋼管同士を機械接合する際には、予め柱部材を構成する鋼管の外径拡幅部にボルト10を接着剤等で仮止めし、前記外径拡幅部と接触する内径縮幅部には、前記ボルト10のねじ部が通る孔を設けておき、コンクリート充填後にレンチでボルト10を締付けることで、閉断面であるコンクリート充填鋼管に対してボルト接合を行うことが可能となり、溶接と比べて工期の短縮を図り、溶接技術のない施工者でも鋼管同士の接合を行うことが可能となる(図7(a)、(b))。さらに、鋼管同士を機械接合するに際しては、外径拡幅部、内径縮幅部に摩擦面処理を施してもよい。
また、一例として、図8に示すように、鋼管同士を溶接接合する際には、外径拡幅部と内径縮幅部の接触部を、下向き溶接で接合することができ、難易度の高い上向き溶接や横向き溶接が発生せず、施工が容易となる(図8(b))。さらに、内径縮幅部に開先(溶接開先11)を設けてもよい(図8(a))。
さらに、一例として、図9に示すように、予め各鋼管に外ダイアフラムおよびブラケット12を工場溶接しておくことで、現場での施工を簡略化することができ、通常の鋼管柱と比べて運搬時にスペースを小さくすることが可能となる。ブラケット12はハンチ部13を有してもよい(図9(a)、(b))。
また、図10に示すように、本発明の適用範囲は角形鋼管に限らず、通常のCFTが想定する円形等の形状の鋼管に対しても適用可能である。
さらに、図11に示すように、対象建築物が高層となる場合でも、既に打設された柱14の頂部に、本発明の柱部材を接合してコンクリートを充填することで、任意の高さの建築物に対しても本発明による施工方法で柱を立ち上げることが可能である。
(コンクリート充填鋼管柱)
上記のようにして組立てられたコンクリート充填鋼管柱は、外径の異なる複数の鋼管にコンクリートが充填されてなり、上階に行くに従い外径が小さくなるように構成される。そして、前記鋼管のうち1階に位置する鋼管を除く任意の階の鋼管を鋼管Aとしたとき、当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ下階に位置する鋼管に設けた内径縮幅部とが接触してなる。例えば、上述の図5(c)に示すコンクリート充填鋼管柱20の例でいうと、任意の階の鋼管Aが2階に位置する鋼管2のとき、当該鋼管2に設けた外径拡幅部2bと、当該鋼管2の1つ下階に位置する鋼管1に設けた内径縮幅部1aとが接触してなる。同様に、任意の階の鋼管Aが3階に位置する鋼管3のとき、当該鋼管3に設けた外径拡幅部3bと、当該鋼管3の1つ外側に位置する鋼管2に設けた内径縮幅部2aとが接触してなる。
鋼管の耐力を十分に伝達することができる点等から、当該鋼管Aに設けた外径拡幅部の板厚は、当該鋼管Aの板厚の√3倍以上であることが好ましい。
また、本発明のコンクリート充填鋼管柱は、当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ下階に位置する鋼管に設けた内径縮幅部との接触部が、上述したようなボルト接合や溶接接合されて構成されてもよい。
なお、本発明による柱部材は、好適にはコンクリート充填鋼管を施工する際に用いられるものであるが、これに限定されず、コンクリートを充填せずに、柱や梁等の鉄骨造の構造物として用いることもできる。ただし、この場合には、最外鋼管以外の鋼管をクレーン等を用いて引き上げて組立てることが必要となる。さらに、鋼管を引き上げた後に、外径拡幅部と内径縮幅部との接触部に対し、上述したようなボルト接合や溶接接合を施して、鋼管同士を接合することが必要となる。
1 最外鋼管
2 鋼管(内鋼管)
3 鋼管(内鋼管)
4 最内鋼管
5 ベースプレート
6 溶接線
7 充填コンクリート
8 水平リブ
9 鉛直リブ
10 ボルト(高力ボルト)
11 溶接開先
12 ブラケット
13 ハンチ部
14 打設済みの柱
20 コンクリート充填鋼管柱
30 柱部材

Claims (8)

  1. コンクリート充填鋼管の施工方法であって、
    外径の異なる複数の鋼管を入れ子状に設置し、前記入れ子状に設置した鋼管のうち最外の鋼管を除く任意の鋼管を鋼管Aとしたとき、
    コンクリートの充填圧力により、当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ外側に設置した鋼管に設けた内径縮幅部とが接触するまで、当該鋼管Aを押し上げることを特徴とするコンクリート充填鋼管の施工方法。
  2. 当該鋼管Aに設けた外径拡幅部の板厚が、当該鋼管Aの板厚の√3倍以上であることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート充填鋼管の施工方法。
  3. 当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ外側に設置した鋼管に設けた内径縮幅部との接触部を、下向き溶接により接合することを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート充填鋼管の施工方法。
  4. 鋼管にコンクリートが充填されてなるコンクリート充填鋼管柱であって、
    前記コンクリート充填鋼管柱は、外径の異なる複数の鋼管で、上階に行くに従い外径が小さくなるように構成され、
    前記鋼管のうち1階に位置する鋼管を除く任意の階の鋼管を鋼管Aとしたとき、
    当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ下階に位置する鋼管に設けた内径縮幅部とが接触してなることを特徴とするコンクリート充填鋼管柱。
  5. 当該鋼管Aに設けた外径拡幅部の板厚が、当該鋼管Aの板厚の√3倍以上であることを特徴とする請求項4に記載のコンクリート充填鋼管柱。
  6. 当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ下階に位置する鋼管に設けた内径縮幅部との接触部が溶接接合されてなることを特徴とする請求項4または5に記載のコンクリート充填鋼管柱。
  7. 外径の異なる複数の鋼管が入れ子状に設置されてなる伸長可能な柱部材であって、
    前記入れ子状に設置した鋼管のうち最外の鋼管を除く任意の鋼管を鋼管Aとしたとき、
    当該鋼管Aに設けた外径拡幅部と、当該鋼管Aの1つ外側に設置した鋼管に設けた内径縮幅部とが接触するまで、伸長可能とされたことを特徴とする柱部材。
  8. 当該鋼管Aに設けた外径拡幅部の板厚が、当該鋼管Aの板厚の√3倍以上であることを特徴とする請求項7に記載の柱部材。
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