JP2019119838A - 潤滑油組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、上記事情に鑑み、合成系基油を含む潤滑油組成物であって、オイルシールゴムの物性に適合し油漏れを抑制することができる潤滑油組成物を提供することを目的とする。【解決手段】(A)潤滑油基油と、(B)硫黄系極圧剤と、及び(C)リン系極圧剤とを含有する潤滑油組成物において、前記(A)潤滑油基油として少なくとも(A-1)炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのジエステルを潤滑油組成物全体の質量に対して1〜20質量%となる量で含有することを特徴とする、前記潤滑油組成物。【選択図】なし
Description
本発明は潤滑油組成物に関する。詳細には、種々のオイルシールに適合する潤滑油組成物に関する。
潤滑油組成物は自動車用及び機械用など多岐の用途に使用されている。近年、省燃費化を図るための様々な潤滑油組成物が開発されている。例えば、特許文献1には、低粘度基油と高粘度基油の併用によって、潤滑油の低粘度化を図り、特に油膜形成能が影響するベアリング疲労寿命特性と省燃費性を同時に達成できることが記載されている。特許文献2は、低粘度でありながら、潤滑性、酸化安定性及び極圧性に優れたギヤ油組成物を記載している。また、特許文献3は、低粘度化した場合であっても、変速機、特にディファレンシャルギヤに使用される、ベアリング等における摩耗及びギヤ歯面等におけるスコーリングの発生を抑制できる潤滑油組成物を記載している。
また、一般に自動車エンジン、変速機やディファレンシャルギヤ等にはオイルシールが使用されている。オイルシールとは、通常、ゴム、ばね、金属環で構成されており、ゴムとしてはニトリルゴムやアクリルゴム等が使用されている。オイルシールは機械装置に組み込まれて静止時及び軸作動時に流体を密封し、回転する軸の端部とケースの隙間から油の漏れを防いだり、外部からのほこりの侵入を防く為に機能する。
近年、自動車の燃費に対する要求の高まりに伴い、潤滑油において高品質な化学合成系基油を用いる傾向が高まっているが、従来の鉱油系基油(グループI基油)は一般的にオイルシールゴムを膨潤・軟化させる傾向があるのに対し、高品質の合成系基油はオイルシールゴムを膨潤・軟化させる影響が小さく、場合によっては、オイルシールゴムを収縮・硬化させることがある。オイルシールゴムが収縮・硬化するとオイルシールからの油漏れが起きてしまうという問題が生じ得る。そのため、合成系基油を含む潤滑油組成物におけるオイルシールゴムへの適合(油漏れの抑制)が要求されている。
本発明者は、先の発明として、低粘度化した場合であっても、ベアリング等における摩耗及びギヤ歯面等におけるスコーリングの発生を抑制できる潤滑油組成物を開発した(特願2016−148523号明細書、以下、先願という)。該潤滑油組成物は、摩耗防止性、スコーリング防止性、及び酸化安定性に優れているものである。先願明細書には、基油として、鉱油系基油と、GTL由来基油と、PAO基油との組み合わせが好ましいと記載されている。しかし、該先願実施例の潤滑油組成物を用いて実機によるオイルシール試験(動的試験)を行ったところ、オイルシール特性が基準値を下回り、油漏れの懸念が生じた。これは動的試験においてオイルシールゴムに硬化傾向が生じたことによる。
本発明は、上記事情に鑑み、合成系基油を含む潤滑油組成物であって、オイルシールゴムの物性に適合し油漏れを抑制することができる潤滑油組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、一般的にプラスチックの可塑剤として使用されており、ゴムの膨潤及び軟化効果を有するエステル化合物に着目した。先願潤滑油組成物における基油としてジイソノニルフタレート(DINP)等の芳香族系二塩基酸エステルを使用して、ASTM D471に準拠するゴム浸漬試験(静的試験)を行い、アクリルゴムに対する適合性を評価した。該静的試験は潤滑油組成物のゴム適合性を評価するために通常行われる試験である。潤滑油組成物に試験ゴム片(アクリルゴム)を浸漬し、加熱して、一定時間経過後の体積変化及び硬さ変化を評価するものである。該静的試験において、芳香族系二塩基酸エステルを含む潤滑油組成物は、上述した先願実施例の潤滑油組成物に比較して、体積変化率及び硬さ変化率が大きく、即ち、良好な膨潤性及び軟化性を示した。しかし、該芳香族系二塩基酸エステルを含む潤滑油組成物を実機によるオイルシール試験(動的試験)に付したところ、先願実施例の潤滑油組成物と同じくオイルシール特性は基準値を下回っており、油漏れの問題は解消されなかった。
そこで本発明者は更に検討を重ねたところ、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)等の脂肪族系二塩基酸エステルを含む潤滑油組成物が、静的試験における体積変化率及び硬さ変化率は芳香族系二塩基酸エステルを含む潤滑油組成物に比較して小さいにも関わらず、動的試験においてオイルシール特性が基準値を超え、優れた油漏れ防止性能(オイルシール性能)を示すことを見出し、本発明を成すに至った。
即ち、本発明は (A)潤滑油基油と、(B)硫黄系極圧剤と、及び(C)リン系極圧剤とを含有する潤滑油組成物において、前記(A)潤滑油基油として少なくとも(A-1)炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのジエステルを潤滑油組成物全体の質量に対して1〜20質量%となる量で含有することを特徴とする、前記潤滑油組成物を提供する。
本発明の好ましい実施態様は、以下に示す(1)〜(11)の少なくとも1の特徴をさらに有する。
(1) (A-2)GTL(Gas to Liquid)由来基油を潤滑油組成物全体の質量に対して30〜95質量%となる量で更に含む。
(2)(A-3)ポリ−α−オレフィン(PAO)基油を潤滑油組成物全体の質量に対し50質量%以下となる量で更に含む。
(3)前記(A-1)成分がアジピン酸エステルである。
(4)前記アジピン酸エステルがジイソデシルアジペート(DIDA)である。
(5)前記(B)硫黄系極圧剤が活性硫黄量5〜30質量%を有し、前記(B)硫黄系極圧剤が潤滑油組成物全体の質量に対して5〜15質量%の量で含有され、前記(C)リン系極圧剤が潤滑油組成物全体の質量に対して1.5〜8質量%の量で含有されている。
(6)前記(B)硫黄系極圧剤が硫化オレフィンである。
(7)前記(C)リン系極圧剤が酸性リン酸エステルのアミン塩、酸性亜リン酸エステルのアミン塩、酸性チオリン酸エステルのアミン塩、及び酸性チオ亜リン酸エステルのアミン塩から選ばれる少なくとも1種である。
(8)前記潤滑油組成物が100℃における動粘度3〜40mm2/sを有する。
(9)前記(A)潤滑油基油が100℃における動粘度3〜40mm2/sを有する。
(10)変速機用である潤滑油組成物。
(11)ディファレンシャルギヤ用である潤滑油組成物。
(1) (A-2)GTL(Gas to Liquid)由来基油を潤滑油組成物全体の質量に対して30〜95質量%となる量で更に含む。
(2)(A-3)ポリ−α−オレフィン(PAO)基油を潤滑油組成物全体の質量に対し50質量%以下となる量で更に含む。
(3)前記(A-1)成分がアジピン酸エステルである。
(4)前記アジピン酸エステルがジイソデシルアジペート(DIDA)である。
(5)前記(B)硫黄系極圧剤が活性硫黄量5〜30質量%を有し、前記(B)硫黄系極圧剤が潤滑油組成物全体の質量に対して5〜15質量%の量で含有され、前記(C)リン系極圧剤が潤滑油組成物全体の質量に対して1.5〜8質量%の量で含有されている。
(6)前記(B)硫黄系極圧剤が硫化オレフィンである。
(7)前記(C)リン系極圧剤が酸性リン酸エステルのアミン塩、酸性亜リン酸エステルのアミン塩、酸性チオリン酸エステルのアミン塩、及び酸性チオ亜リン酸エステルのアミン塩から選ばれる少なくとも1種である。
(8)前記潤滑油組成物が100℃における動粘度3〜40mm2/sを有する。
(9)前記(A)潤滑油基油が100℃における動粘度3〜40mm2/sを有する。
(10)変速機用である潤滑油組成物。
(11)ディファレンシャルギヤ用である潤滑油組成物。
本発明の潤滑油組成物は、実機によるオイルシール試験(動的試験)において優れた油漏れ防止性能(オイルシール性能)を有することができる。更には、本発明の潤滑油組成物は、ベアリング等における摩耗及びギヤ歯面等におけるスコーリングの発生を抑制することができる。本発明の潤滑油組成物は、自動車用潤滑油として好適に使用でき、さらには変速機用ギヤ油及びディファレンシャルギヤ油として好適である。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
(A)潤滑油基油
本発明における潤滑油基油は、少なくとも(A-1)炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数1〜20のモノアルコールとのジエステルを潤滑油組成物全体の質量に対して1〜20質量%、好ましくは3〜18質量%、さらに好ましくは4〜16質量%、特に好ましくは5〜12質量%で含有することを特徴とし、(A-1)基油は2種類以上のジエステルの混合物であっても良い。これにより、実機によるオイルシール試験(動的試験)において優れた油漏れ防止性能(オイルシール性能)を有することができる。炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸は不飽和結合を有していてもよいが、好ましくは、炭素数4〜12の脂肪族飽和ジカルボン酸であるのがよい。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びマレイン酸が挙げられる。中でもアジピン酸及びセバシン酸が好ましい。炭素数1〜20のアルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノニルアルコール、イソデシルアルコール、ドデカノール、及びオレイルアルコールが挙げられる。中でも、ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノニルアルコール、イソデシルアルコールが好ましい。これらから得られるジエステルであればよいが、中でも、アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)(DEHA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、及びアジピン酸ジイソデシル(DIDA)等のアジピン酸エステル、及びセバシン酸ジブチル(DBS)が好ましい。より好ましくはアジピン酸エステルであり、特に好ましくはアジピン酸ジイソデシル(DIDA)である。
本発明における潤滑油基油は、少なくとも(A-1)炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数1〜20のモノアルコールとのジエステルを潤滑油組成物全体の質量に対して1〜20質量%、好ましくは3〜18質量%、さらに好ましくは4〜16質量%、特に好ましくは5〜12質量%で含有することを特徴とし、(A-1)基油は2種類以上のジエステルの混合物であっても良い。これにより、実機によるオイルシール試験(動的試験)において優れた油漏れ防止性能(オイルシール性能)を有することができる。炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸は不飽和結合を有していてもよいが、好ましくは、炭素数4〜12の脂肪族飽和ジカルボン酸であるのがよい。脂肪族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、及びマレイン酸が挙げられる。中でもアジピン酸及びセバシン酸が好ましい。炭素数1〜20のアルコールとしては、メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノニルアルコール、イソデシルアルコール、ドデカノール、及びオレイルアルコールが挙げられる。中でも、ブタノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、イソノニルアルコール、イソデシルアルコールが好ましい。これらから得られるジエステルであればよいが、中でも、アジピン酸ジブチル(DBA)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)(DEHA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、及びアジピン酸ジイソデシル(DIDA)等のアジピン酸エステル、及びセバシン酸ジブチル(DBS)が好ましい。より好ましくはアジピン酸エステルであり、特に好ましくはアジピン酸ジイソデシル(DIDA)である。
本発明における潤滑油基油は、(A-2)GTL(Gas to Liquid)由来基油及び/又は(A-3)ポリ−α−オレフィン(PAO)基油をさらに含むのが好ましい。(A-2)GTL(Gas to Liquid)由来基油の含有量は、潤滑油組成物全体の質量に対して30〜95質量%となる量、好ましくは40〜70質量%、さらに好ましくは45〜65質量%である。(A-3)ポリ−α−オレフィン(PAO)基油の含有量は、潤滑油組成物全体の質量に対し50質量%以下、好ましくは0〜50質量%、好ましくは12〜45質量%、より好ましくは15〜40質量%、更に好ましくは18〜35質量%、特に好ましくは20〜30質量%である。
(A-2)GTL由来基油とは、メタン等の天然ガスからフィッシャー・トロプシュ合成等で得られたワックス等の原料を水素化分解処理及び水素化異性化処理して得られる基油である。100℃における動粘度は特に制限されるものではないが、2〜40mm2/sを有することが好ましく、さらに好ましくは2〜20mm2/sであり、一層好ましくは2〜10mm2/sであるのがよい。
(A-3)PAO基油は、特に制限されるものではないが、例えば1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−α-オレフィンオリゴマー、エチレン‐プロピレンオリゴマー、イソブテンオリゴマー並びにこれらの水素化物を使用できる。100℃における動粘度は、2〜200mm2/sが好ましく、さらに好ましくは2〜150mm2/sであり、一層好ましくは4〜50mm2/sであるのがよい。
本発明の潤滑油組成物は、上記合成系基油と併せて、その他の合成系基油及び鉱油系基油から選ばれる1種以上を含有してもよい。これらの含有量は本発明の効果を損ねない限りで適宜調整されればよい。その他の合成系基油としては、例えば、ポリブテン、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、ポリグリコールエステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、及びシリコン油などを挙げることができる。また、本発明の潤滑油組成物は、芳香族系二塩基酸エステルを上記(A-1)成分と併用して含有することもできる。
鉱油系基油としては、水素化精製油、触媒異性化油などに溶剤脱蝋または水素化脱蝋などの処理を施した高度に精製されたパラフィン系鉱油(高粘度指数鉱油系潤滑油基油)が挙げられる。または、潤滑油原料をフェノール、フルフラールなどの芳香族抽出溶剤を用いた溶剤精製により得られるラフィネート、シリカ−アルミナを担体とするコバルト、モリブデンなどの水素化処理触媒を用いた水素化処理により得られる水素化処理油などが挙げられる。例えば、100ニュートラル油、150ニュートラル油、500ニュートラル油などを挙げることができる。鉱油系基油は上記製造方法によって製造されたものに制限されるものではないが、100℃における動粘度2〜35mm2/sを有することが好ましく、さらに好ましくは2〜20mm2/sであり、一層好ましくは3〜10mm2/sであるのがよい。
潤滑油基油の動粘度は、本発明の要旨を損なわない限り制限されることはない。特には、低粘度の潤滑油組成物を得るためには、潤滑油基油全体が100℃における動粘度3〜40mm2/sを有することが好ましく、さらに好ましくは4〜20mm2/s、一層好ましくは5〜15mm2/s、特に好ましくは6〜12mm2/sを有するのがよい。潤滑油基油の100℃における動粘度が前記範囲内であることにより、潤滑油組成物の低粘度化を図ることができ、省燃費性を向上することでき、また、摩耗防止性やスコーリング防止性を確保することもできる。
(B)硫黄系極圧剤
本発明の潤滑油組成物は硫黄系極圧剤を含有する。該硫黄系極圧剤は、好ましくは、活性硫黄量が5〜30質量%を有し、さらに好ましくは5〜20質量%であり、一層好ましくは5〜15質量%であり、特に好ましくは8〜12質量%であるのがよい。活性硫黄量が上記範囲内であることにより、摩耗防止性及びスコーリング防止性を確保することができる。
本発明の潤滑油組成物は硫黄系極圧剤を含有する。該硫黄系極圧剤は、好ましくは、活性硫黄量が5〜30質量%を有し、さらに好ましくは5〜20質量%であり、一層好ましくは5〜15質量%であり、特に好ましくは8〜12質量%であるのがよい。活性硫黄量が上記範囲内であることにより、摩耗防止性及びスコーリング防止性を確保することができる。
ここで、活性硫黄量とはASTM D1662に規定される方法により測定されるものである。ASTM D1662に基づく活性硫黄量は、より詳細には以下の手順により測定することができる。
1.200mlのビーカーに試料50gと銅粉(純度99%以上、粒径75μm以下)5gを入れ、スターラ(500rpm)で攪拌しながら150℃まで加熱する。
2.150℃に達したら、更に銅粉を5g加え、30分間攪拌する。
3.攪拌を止め、ASTM D130準拠の銅板をビーカーへ入れ10分間浸漬させる。このとき、銅板に変色が見られたら、さらに銅粉を5g加えて30分間攪拌する(この操作を銅板の変色が認められなくなるまで続ける)。
4.銅板変色が認められなくなったら、試料中の銅粉をろ別し、ろ液に含まれる硫黄量を測定する。
活性硫黄量(質量%)は、「もともとの試料(上記手順1)中に含まれる硫黄量(質量%)−銅粉との反応後のろ液(上記手順4)に含まれる硫黄量(質量%)」をもとに算出される。
1.200mlのビーカーに試料50gと銅粉(純度99%以上、粒径75μm以下)5gを入れ、スターラ(500rpm)で攪拌しながら150℃まで加熱する。
2.150℃に達したら、更に銅粉を5g加え、30分間攪拌する。
3.攪拌を止め、ASTM D130準拠の銅板をビーカーへ入れ10分間浸漬させる。このとき、銅板に変色が見られたら、さらに銅粉を5g加えて30分間攪拌する(この操作を銅板の変色が認められなくなるまで続ける)。
4.銅板変色が認められなくなったら、試料中の銅粉をろ別し、ろ液に含まれる硫黄量を測定する。
活性硫黄量(質量%)は、「もともとの試料(上記手順1)中に含まれる硫黄量(質量%)−銅粉との反応後のろ液(上記手順4)に含まれる硫黄量(質量%)」をもとに算出される。
本発明における硫黄系極圧剤は上述した特定の活性硫黄量を有するものであればよく、公知の硫黄系極圧剤から選択することができる。好ましくは、硫化オレフィンに代表されるスルフィド化合物、硫化油脂に代表される硫化エステルから選ばれる少なくとも1種であり、特には硫化オレフィンが好ましい。尚、本発明において、チオリン酸エステル等の硫黄及びリンを有する極圧剤は、後述する(C)リン系極圧剤に包含されるため、該(B)硫黄系極圧剤には包含されない。また、本発明の硫黄系極圧剤はジチオリン酸亜鉛を包含しない。
本発明で用いられる硫黄系極圧剤は、例えば下記一般式(1)で表されるものである。
R1−(-S-)x−R2 (1)
R1−(-S-)x−R2 (1)
上記式(1)中、R1及びR2は互いに独立に、一価の置換基であり、炭素、水素、酸素、硫黄のうち少なくとも1つの元素を含む。詳細には、例えば炭素数1〜40の、直鎖構造または分岐構造を有する、飽和または不飽和の炭化水素基を挙げることができ、脂肪族、芳香族、あるいは芳香族基を有する脂肪族炭化水素基であって良い。また、その中に酸素及びあるいは硫黄原子を含んでも良い。R1とR2が結合していても良く、結合が1つの場合には、例えば下記一般式(2)で表される。
上記式(1)及び(2)中、xは1以上の整数であり、好ましくは1〜12の整数である。xが小さいと極圧性が低下し、xが大きすぎると熱酸化安定性が低下する傾向にある。極圧性及び熱酸化安定性を共に得るためには、xが1〜6の整数であることが好ましく、より好ましくは2〜5の整数である。一般式(1)及び(2)で表される硫黄系極圧剤は通常はxが単一のものではなく、種々の硫黄数の混合物であり、その中で特定の硫黄数の化合物が活性硫黄として機能するものと考えられる。
硫黄系極圧剤の例を以下でさらに説明する。
硫化オレフィンはオレフィン類を硫化して得られるものであり、オレフィン類以外の炭化水素系原料を硫化して得られるものを含めてスルフィド化合物と総称する。硫化オレフィンとしては、例えば、ポリイソブテン類及びテルペン類などのオレフィン類を、硫黄または他の硫化剤で硫化して得られるものが挙げられる。
硫化オレフィン以外のスルフィド化合物としては、例えば、ジイソブチルポリスルフィド、ジオクチルポリスルフィド、ジ−tert−ブチルポリスルフィド、ジイソブチルポリスルフィド、ジヘキシルポリスルフィド、ジ−tert−ノニルポリスルフィド、ジデシルポリスルフィド、ジドデシルポリスルフィド、ジイソブテンポリスルフィド、ジオクテニルポリスルフィド、及びジベンジルポリスルフィドなどが挙げられる。
硫化油脂は、油脂と硫黄との反応生成物であり、油脂としてラード、牛脂、鯨油、パーム油、ヤシ油、ナタネ油などの動植物油脂が挙げられる。この反応生成物は、単一物質種のものではなく、種々の物質の混合物であり、化学構造そのものは必ずしも明確でない。
硫化エステルは、上記硫化油脂の他に、各種有機酸(飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、ジカルボン酸、芳香族カルボン酸など)と各種アルコールとの反応により得られるエステル化合物を硫黄その他の硫化剤で硫化して得られるものが挙げられる。硫化油脂と同様、化学構造そのものは必ずしも明確でない。
本発明の潤滑油組成物において上記硫黄系極圧剤の含有量は、潤滑油組成物全体の質量に対して5質量%〜15質量%、好ましくは6質量%〜12質量%であり、従来の潤滑油組成物に比較して硫黄系極圧剤の含有量が多いのが好ましい。上記硫黄系極圧剤は、1種類若しくは2種類以上を混合して用いることもできる。含有量が上記上限値を超えると熱酸化安定性が低下しスラッジが発生しやすくなり、加えて金属腐食も発生しやすくなるおそれがある。また、含有量が上記下限値未満では、スコーリング防止性が低下するおそれがある。
(C)リン系極圧剤
本発明の潤滑油組成物はさらにリン系極圧剤を含有する。上記硫黄系極圧剤と併せてリン系極圧剤を後述する範囲の量で含有することにより、摩耗防止性とスコーリング防止性をバランス良く両立することができるため好ましい。尚、本発明において、チオリン酸エステル等の硫黄及びリンを有する極圧剤は、上述した(B)硫黄系極圧剤でなく、(C)リン系極圧剤に包含される。また、本発明のリン系極圧剤はジチオリン酸亜鉛を包含しない。
本発明の潤滑油組成物はさらにリン系極圧剤を含有する。上記硫黄系極圧剤と併せてリン系極圧剤を後述する範囲の量で含有することにより、摩耗防止性とスコーリング防止性をバランス良く両立することができるため好ましい。尚、本発明において、チオリン酸エステル等の硫黄及びリンを有する極圧剤は、上述した(B)硫黄系極圧剤でなく、(C)リン系極圧剤に包含される。また、本発明のリン系極圧剤はジチオリン酸亜鉛を包含しない。
リン系極圧剤は、特に限定されることはなく、従来公知のものであってよい。例えば、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステル、酸性亜リン酸エステル、チオリン酸エステル、酸性チオリン酸エステル、チオ亜リン酸エステル、酸性チオ亜リン酸エステル、酸性リン酸エステルのアミン塩、酸性亜リン酸エステルのアミン塩、酸性チオリン酸エステルのアミン塩、及び酸性チオ亜リン酸エステルのアミン塩の中から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。好ましくは、酸性リン酸エステルのアミン塩、酸性亜リン酸エステルのアミン塩、酸性チオリン酸エステルのアミン塩、及び酸性チオ亜リン酸エステルのアミン塩の中から選ばれる少なくとも1種であるのがよい。
リン酸エステル及び酸性リン酸エステルは(R1O)aP(=O)(OH)3−aで表される。aは0、1、2、又は3である。R1は互いに独立に、炭素数1〜30の一価炭化水素基である。ここで、a=3の場合がリン酸エステル、a=1又は2の場合が酸性リン酸エステル、a=0の場合がリン酸となる。
亜リン酸エステル及び酸性亜リン酸エステルは(R2O)bP(=O)(OH)2−bHで表される。bは0、1、又は2である。R2は互いに独立に、炭素数1〜30の一価炭化水素基である。ここで、b=2の場合が亜リン酸エステル、b=1の場合が酸性亜リン酸エステル、b=0の場合が亜リン酸となる。
チオリン酸エステル及び酸性チオリン酸エステルは(R3X1)(R4X2)(R5X3)P(=X4)で表される。R3、R4及びR5は、互いに独立に、水素原子、又は炭素数1〜30の一価炭化水素基である。ここで、R3、R4及びR5のうち1つまたは2つが水素原子の場合が酸性チオリン酸エステルとなり、3つが水素原子の場合はチオリン酸となる。X1、X2、X3及びX4は、互いに独立に、酸素原子または硫黄原子である。但しX1、X2、X3及びX4のうち少なくとも1つは硫黄原子である。
チオ亜リン酸エステル及び酸性チオ亜リン酸エステルは(R6X5)(R7X6)P(=X7)Hで表される。R6及びR7は、互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜30の一価炭化水素基である。ここで、R6及びR7のうち1つが水素原子の場合が酸性チオ亜リン酸エステルとなり、2つが水素原子の場合はチオ亜リン酸となる。X5、X6及びX7は、互いに独立に、酸素原子または硫黄原子である。但し、X5、X6及びX7のうち少なくとも1つは硫黄原子である。
上記において、炭素数1〜30の一価炭化水素基とは、詳細には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、オクタデシル基、エイコシル基、イソブチル基、イソヘキシル基、イソデシル基、イソオクタデシル基、ネオペンチル基、2-エチルヘキシル基、及びオレイル基等である。好ましくは炭素数4〜20の一価炭化水素基である。
リン酸エステル及び酸性リン酸エステルは、好ましくはリン酸モノアルキルエステル、リン酸ジアルキルエステル、及びリン酸トリアルキルエステルであるのがよいが、これに限定されるものではない。
亜リン酸エステル及び酸性亜リン酸エステルは、好ましくは亜リン酸モノアルキルエステル及び亜リン酸ジアルキルエステルであるのがよいが、これに限定されるものではない。
チオリン酸エステル及び酸性チオリン酸エステルは、好ましくはチオリン酸モノアルキルエステル、チオリン酸ジアルキルエステル、及びチオリン酸トリアルキルエステルであるのがよいが、これに限定されるものではない。
チオ亜リン酸エステル及び酸性チオ亜リン酸エステルは、好ましくはチオ亜リン酸モノアルキルエステル及びチオ亜リン酸ジアルキルエステルであるのがよいが、これに限定されるものではない。
リン酸エステル、亜リン酸エステル、チオリン酸エステル、及びチオ亜リン酸エステルとして、さらに詳細には、リン酸モノオクチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリオクチル、亜リン酸モノオクチル、亜リン酸ジオクチル、チオリン酸モノオクチル、チオリン酸ジオクチル、チオリン酸トリオクチル、チオ亜リン酸モノオクチル、チオ亜リン酸ジオクチル、リン酸モノドデシル、リン酸ジドデシル、リン酸トリドデシル、亜リン酸モノドデシル、亜リン酸ジドデシル、チオリン酸モノドデシル、チオリン酸ジドデシル、チオリン酸トリドデシル、チオ亜リン酸モノドデシル、チオ亜リン酸ジドデシル、リン酸モノオクタデセニル、リン酸ジオクタデセニル、リン酸トリオクタデセニル、亜リン酸モノオクタデセニル、亜リン酸ジオクタデセニル、チオリン酸モノオクタデセニル、チオリン酸ジオクタデセニル、チオリン酸トリオクタデセニル、チオ亜リン酸モノオクタデセニル、及びチオ亜リン酸ジオクタデセニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
更に、上記化合物のうち部分エステルになっているもののアルキルアミン塩及びアルケニルアミン塩も好適に使用することができる。すなわち、上記酸性リン酸エステルのアミン塩、上記酸性亜リン酸エステルのアミン塩、上記酸性チオリン酸エステルのアミン塩、及び上記酸性チオ亜リン酸エステルのアミン塩を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
より詳細には、リン酸モノオクチルのアミン塩、リン酸ジオクチルのアミン塩、亜リン酸モノオクチルのアミン塩、チオリン酸モノオクチルのアミン塩、チオリン酸ジオクチルのアミン塩、チオ亜リン酸モノオクチルのアミン塩、リン酸モノドデシルのアミン塩、リン酸ジドデシルのアミン塩、亜リン酸モノドデシルのアミン塩、チオリン酸モノドデシルのアミン塩、チオリン酸ジドデシルのアミン塩、リン酸モノオクタデセニルのアミン塩、リン酸ジオクタデセニルのアミン塩、亜リン酸モノオクタデセニルのアミン塩、チオリン酸モノオクタデセニルのアミン塩、チオリン酸ジオクタデセニルのアミン塩、及びチオ亜リン酸モノオクタデセニルのアミン塩などが挙げられる。
なお、アミン塩のアミンはR8R9R10Nで表される。R8、R9及びR10は互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜20の、直鎖構造または分岐鎖を有する、飽和または不飽和の脂肪族、芳香族、あるいは芳香脂肪族炭化水素基である。より詳細には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ステアリル基及びオレイル基などが挙げられる。
なお、アミン塩のアミンはR8R9R10Nで表される。R8、R9及びR10は互いに独立に、水素原子又は炭素数1〜20の、直鎖構造または分岐鎖を有する、飽和または不飽和の脂肪族、芳香族、あるいは芳香脂肪族炭化水素基である。より詳細には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、ステアリル基及びオレイル基などが挙げられる。
上記リン系極圧剤は、単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。組合せる場合には、例えば以下のような態様が挙げられるが、これらに限定されることはない。
(1)チオリン酸エステルアミン塩とリン酸エステルアミン塩
特に、アルキル基を有するチオリン酸エステルアミン塩とアルキル基を有するリン酸エステルアミン塩との組み合わせ、
(2)チオリン酸エステルアミン塩とリン酸エステル
特に、アルキル基を有するチオリン酸エステルアミン塩とアルキル基を有するリン酸エステルとの組み合わせ、
(3)リン酸エステルアミン塩とチオリン酸エステル
特に、アルキル基を有するリン酸エステルアミン塩とアルキル基を有するチオリン酸エステルとの組み合わせ、
(4)チオリン酸エステルとリン酸エステル
特に、アルキル基を有するチオリン酸エステルとアルキル基を有するリン酸エステルとの組み合わせ。
(1)チオリン酸エステルアミン塩とリン酸エステルアミン塩
特に、アルキル基を有するチオリン酸エステルアミン塩とアルキル基を有するリン酸エステルアミン塩との組み合わせ、
(2)チオリン酸エステルアミン塩とリン酸エステル
特に、アルキル基を有するチオリン酸エステルアミン塩とアルキル基を有するリン酸エステルとの組み合わせ、
(3)リン酸エステルアミン塩とチオリン酸エステル
特に、アルキル基を有するリン酸エステルアミン塩とアルキル基を有するチオリン酸エステルとの組み合わせ、
(4)チオリン酸エステルとリン酸エステル
特に、アルキル基を有するチオリン酸エステルとアルキル基を有するリン酸エステルとの組み合わせ。
上記リン系極圧剤の添加量は潤滑油組成物全体の質量に対して1.5〜8質量%、1.8〜7質量%であり、好ましくは2〜6質量%である。リン系極圧剤の量が上記上限値以下であることにより、歯面等におけるスコーリング防止性を良好に確保できるため好ましい。さらには、前記含有量が潤滑油組成物全体の質量に対して上記下限値以上であることにより、摩耗防止性能の向上に、より一層寄与する。リン系極圧剤の量が上記下限値未満では反応被膜の生成が不十分で摩耗防止性能が悪化する恐れがある。
本発明の潤滑油組成物は、上記(B)硫黄系極圧剤と該(C)リン系極圧剤を各々上述した特定量にて併用することにより、課題である優れたオイルシール特性に加えて、良好な摩耗防止性又はスコーリング防止性を確保することができる。(B)成分及び(C)成分の少なくとも一方の量が少なすぎる又は多すぎると、摩耗防止性又はスコーリング防止性が不十分となるおそれがある。より好ましくは、上記(B)硫黄系極圧剤と(C)リン系極圧剤の含有量の合計が、潤滑油組成物全体の質量に対して7〜20質量%であるのがよく、より好ましくは8〜18質量%である、一層好ましくは9〜16質量%である。さらに上記(B)硫黄系極圧剤と該(C)リン系極圧剤の使用比(質量比)が、(B)/(C)=1〜10であることが好ましく、より好ましくは1.1〜8、更に好ましくは1.2〜7、特に好ましくは1.4〜5である。
本発明の潤滑油組成物は上記(B)硫黄系極圧剤及び(C)リン系極圧剤以外の極圧剤を上記(B)及び(C)成分と併せてさらに含有することができる。例えばジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)を使用することができる。ZnDTPの含有量は、潤滑油組成物全体の質量に対して0.1〜5質量%が好ましく、更に好ましくは0.2〜3質量%、一層好ましくは0.3〜1質量%である。
(D)無灰分散剤
本発明の潤滑剤組成物はさらに無灰分散剤を含有することができる。無灰分散剤は従来公知のものを使用すればよく、特に制限されるものでない。例えば、炭素数40〜400の、直鎖構造又は分枝構造を有するアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、あるいはコハク酸イミド及びその変性品等が挙げられる。無灰分散剤は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、ホウ素化無灰分散剤を使用することもできる。ホウ素化無灰分散剤は潤滑油に用いられている任意の無灰分散剤をホウ素化したものである。ホウ素化は一般に、イミド化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和することにより行われる。
本発明の潤滑剤組成物はさらに無灰分散剤を含有することができる。無灰分散剤は従来公知のものを使用すればよく、特に制限されるものでない。例えば、炭素数40〜400の、直鎖構造又は分枝構造を有するアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、あるいはコハク酸イミド及びその変性品等が挙げられる。無灰分散剤は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、ホウ素化無灰分散剤を使用することもできる。ホウ素化無灰分散剤は潤滑油に用いられている任意の無灰分散剤をホウ素化したものである。ホウ素化は一般に、イミド化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和することにより行われる。
上記アルキル基又はアルケニル基の炭素数は、好ましくは40〜400であり、より好ましくは60〜350である。アルキル基及びアルケニル基の炭素数が前記下限値未満であると、化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下する傾向にある。また、アルキル基及びアルケニル基の炭素数が上記上限値を超えると、潤滑油組成物の低温流動性が悪化する傾向にある。上記アルキル基及びアルケニル基は、直鎖構造を有していても分枝構造を有していてもよい。好ましい態様としては、例えば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン等のオレフィンのオリゴマー、エチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基又は分枝状アルケニル基等が挙げられる。
前記コハク酸イミドには、ポリアミンの一端と無水コハク酸との反応生成物である、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端と無水コハク酸との反応生成物である、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとがある。本発明の潤滑油組成物は、モノタイプ及びビスタイプのうちいずれか一方を含有してもよいし、あるいは双方を含有してもよい。
上記コハク酸イミドの変性品とは、例えば、コハク酸イミドをホウ素化合物で変性したものである(以下、ホウ素化コハク酸イミドということがある)。ホウ素化合物で変性するとは、ホウ素化することを意味する。ホウ素化コハク酸イミドは1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。併用する場合は、ホウ素化コハク酸イミドの2種以上の組合わせであってもよい。また、モノタイプ及びビスタイプの両方を含んでもよいし、モノタイプ同士の併用、又はビスタイプ同士の併用であってもよい。ホウ素化コハク酸イミドと非ホウ素化コハク酸イミドとを併用してもよい。
例えば、ホウ素化コハク酸イミドの製造方法としては、特公昭42−8013号公報及び同42−8014号公報、特開昭51−52381号公報、及び特開昭51−130408号公報等に開示されている方法等が挙げられる。具体的には例えば、アルコール類やヘキサン、キシレン等の有機溶媒、軽質潤滑油基油等にポリアミンとコハク酸無水物(誘導体)にホウ酸、ホウ酸エステル、又はホウ酸塩等のホウ素化合物を混合し、適当な条件で加熱処理することにより得ることができる。この様にして得られるホウ素化コハク酸イミドに含まれるホウ素含有量は通常0.1〜4質量%とすることができる。本発明においては、特に、アルケニルコハク酸イミド化合物のホウ素変性化合物(ホウ素化コハク酸イミド)は耐熱性、酸化防止性及び摩耗防止性に優れるため好ましい。
ホウ素化無灰分散剤中に含まれるホウ素含有量は特に制限はない。通常無灰分散剤の質量に対して0.1〜3質量%である。本発明の1つの態様としては、無灰分散剤中のホウ素含有量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上であり、また好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.3質量%以下、さらに好ましくは2.0質量%以下であるのがよい。ホウ素化無灰分散剤として好ましくはホウ素化コハク酸イミドであり、特にはホウ素化ビスコハク酸イミドが好ましい。
ホウ素化無灰分散剤は、ホウ素/窒素質量比(B/N比)0.1以上、好ましくは0.2以上を有するものであり、好ましくは1.2未満、より好ましくは1.0以下を有するものが好ましい。
組成物中の無灰分散剤の含有量は適宜調整されればよいが、例えば潤滑油組成物全体の質量に対して、0.01〜20質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%である。無灰分散剤の含有量が上記下限値未満であると、スラッジ分散性が不十分となるおそれがある。また含有量が上記上限値を超えると、特定のゴム材料を劣化させたり、低温流動性を悪化させるおそれがある。
(E)その他の添加剤
本発明の潤滑油組成物は、上記(A)〜(D)成分以外のその他の添加剤として、粘度指数向上剤、酸化防止剤、金属系清浄剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、及び流動点降下剤を含有することができる。但し、本発明の潤滑油組成物はグリースではないため、増ちょう剤は含有しない。該増ちょう剤とは、例えば金属石けんや金属塩等である。
本発明の潤滑油組成物は、上記(A)〜(D)成分以外のその他の添加剤として、粘度指数向上剤、酸化防止剤、金属系清浄剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、及び流動点降下剤を含有することができる。但し、本発明の潤滑油組成物はグリースではないため、増ちょう剤は含有しない。該増ちょう剤とは、例えば金属石けんや金属塩等である。
粘度指数向上剤としては、例えば、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体、若しくはその水素化物などの、いわゆる非分散型粘度指数向上剤、又は、窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体(α−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる)、若しくはその水素化物、ポリイソブテン若しくはその水素化物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、及びポリアルキルスチレン等が挙げられる。
粘度指数向上剤の分子量は、潤滑油組成物のせん断安定性を考慮して選定することが必要である。例えば、粘度指数向上剤の重量平均分子量は、分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合には、通常5,000〜1,000,000、好ましくは100,000〜900,000のものが、ポリイソブテン又はその水素化物の場合は通常800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のものが、エチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は通常800〜500,000、好ましくは3,000〜200,000のものが用いられる。
粘度指数向上剤の中でもエチレン−α−オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。上記粘度指数向上剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができる。
潤滑油組成物中の粘度指数向上剤の含有量は、組成物全量基準で、0.01〜20質量%、好ましくは0.02〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。
潤滑油組成物中の粘度指数向上剤の含有量は、組成物全量基準で、0.01〜20質量%、好ましくは0.02〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%である。
酸化防止剤は潤滑油に一般的に使用されているものであればよく、例えば、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤等の無灰系酸化防止剤及び有機金属系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤の添加により、潤滑油組成物の酸化安定性をより高めることができる。
金属系清浄剤としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のスルホネート、フェネート、サリシレート、カルボキシレートから選択される化合物を含むものが挙げられ、過塩基性塩、塩基性塩、中性塩等の塩基価の異なるものを任意に選択して用いることができる。金属系清浄剤は、通常潤滑油組成物中に、金属量として0.01〜1質量%で配合される。
摩擦調整剤としては、例えば、有機モリブデン系化合物、脂肪酸、脂肪酸エステル、アルコール、アミン、アミド等が挙げられる。摩擦調整剤は、通常潤滑油組成物中に0.01〜5質量%で配合される。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。腐食防止剤は、通常潤滑油組成物中に0.1〜5質量%で配合される。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルスルホン酸塩、脂肪酸、脂肪酸セッケン、脂肪酸アミン、アルキルポリオキシアルキレン、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。防錆剤は、通常潤滑油組成物中に0.01〜5質量%で配合される。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。抗乳化剤は、通常潤滑油組成物中に0.01〜5質量%で配合される。
金属不活性化剤としては、例えば、ピロール類、イミダゾール類、ピラゾール類、ピラジン類、ピリミジン類、ピリダジン類、トリアジン類、トリアゾール類、チアゾール類、チアジアゾール類等が挙げられる。金属不活性化剤は、通常潤滑油組成物中に0.01〜3質量%で配合される。
消泡剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン類及びそれらのフッ素化誘導体、ポリアクリレート類及びそれらのフッ素化誘導体、パーフルオロポリエーテル類等が挙げられる。消泡剤は、通常潤滑油組成物中に0.001〜1質量%で配合される。
流動点降下剤としては、例えば、使用する潤滑油基油に適合するポリメタクリレート系のポリマー等が使用できる。流動点降下剤は、通常潤滑油組成物中に0.01〜3質量%で配合される。
本発明の潤滑油組成物の40℃における動粘度は20〜120mm2/sが好ましく、30〜100mm2/sがより好ましい。更に好ましくは40〜80mm2/sである。
本発明の潤滑油組成物の100℃における動粘度は3〜40mm2/sが好ましく、より好ましくは4〜20mm2/s、一層好ましくは5〜15mm2/s、特に好ましくは6〜12mm2/sである。
本発明の潤滑油組成物はオイルシール特性に優れ、油漏れを抑制することができる。尚、本発明においてオイルシール特性とは、オイルシールにおける潤滑油組成物の漏れにくさで評価されるものである。これは、後述するオイルシール試験により測定されることができ、基準値(好ましくは基準値:2.5)よりも値が大きい潤滑油組成物は油漏れしにくく、優れたオイルシール特性を有すると評価される。対象となるオイルシールゴムの材料は、特に制限されるものでなく、例えば、アクリルゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、及びフッ素ゴム等が挙げられる。特に好ましくはアクリルゴムである。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例により制限されるものではない。
実施例及び比較例にて使用した各成分は以下の通りである。下記に示す各成分を表1又は2に示す組成にて混合して潤滑油組成物を調製した。下記においてKV40は40℃での動粘度を意味し、KV100は100℃での動粘度を意味する。
(A)潤滑油基油
・合成系基油1:ジイソドデシルアジペート(DIDA)、KV100=3.6mm2/s
・合成系基油2:GTL由来基油、KV100=8mm2/s
・合成系基油3:エチレン−α−オレフィン基油、KV100=40mm2/s
・合成系基油4(比較用):ジイソノニルフタレート(DINP)、KV100=4.6mm2/s
・鉱油系基油(比較用):KV40=19mm2/s、KV100=4mm2/s
(A)潤滑油基油
・合成系基油1:ジイソドデシルアジペート(DIDA)、KV100=3.6mm2/s
・合成系基油2:GTL由来基油、KV100=8mm2/s
・合成系基油3:エチレン−α−オレフィン基油、KV100=40mm2/s
・合成系基油4(比較用):ジイソノニルフタレート(DINP)、KV100=4.6mm2/s
・鉱油系基油(比較用):KV40=19mm2/s、KV100=4mm2/s
(B)硫黄系極圧剤
下記における活性硫黄量は、ASTM D1662に準拠する方法により測定された値であり、
硫黄系極圧剤に占める活性硫黄量である。
・硫黄系極圧剤1:硫化オレフィン(活性硫黄量=11質量%)
・硫黄系極圧剤2:硫化オレフィン(活性硫黄量=32質量%)
下記における活性硫黄量は、ASTM D1662に準拠する方法により測定された値であり、
硫黄系極圧剤に占める活性硫黄量である。
・硫黄系極圧剤1:硫化オレフィン(活性硫黄量=11質量%)
・硫黄系極圧剤2:硫化オレフィン(活性硫黄量=32質量%)
(C)リン系極圧剤
・リン系極圧剤1:酸性リン酸エステル(C4〜C8アルキル基を有する)とアミン(C8〜C18アルキル基を有する)の塩
・リン系極圧剤2:酸性チオリン酸エステル(C4〜C8アルキル基を有する)とアミン(C8〜C18アルキル基を有する)の塩
・リン系極圧剤1:酸性リン酸エステル(C4〜C8アルキル基を有する)とアミン(C8〜C18アルキル基を有する)の塩
・リン系極圧剤2:酸性チオリン酸エステル(C4〜C8アルキル基を有する)とアミン(C8〜C18アルキル基を有する)の塩
(D)無灰分散剤
・ホウ素化ポリイソブテニルコハク酸イミド(ビスイミドタイプ)
ポリブテニル基分子量=1,400、 ホウ素=1.8質量%, 窒素=2.4質量%
・ホウ素化ポリイソブテニルコハク酸イミド(ビスイミドタイプ)
ポリブテニル基分子量=1,400、 ホウ素=1.8質量%, 窒素=2.4質量%
(E)その他の添加剤
消泡剤、流動点降下剤、防錆剤
消泡剤、流動点降下剤、防錆剤
各潤滑油組成物について下記方法に従い各種性状を測定した。結果を表1及び2に示す。
(1)40℃における動粘度(KV40)および100℃における動粘度(KV100)
ASTM D445に準拠して測定した。
(2)粘度指数
ASTM D2270に準拠して測定した。
(3)摩耗性評価
ASTM D2714に準拠し、以下の条件で試験を行い、試験後のブロック試験片に出来た摩耗幅を評価した。油温:120℃、荷重:20lbf、回転数:1000rpm、時間:1h、摩耗幅(mm)が0.5以下の場合を合格とした。
(4)スコーリング性評価
ASTM D4172で規定される四球摩耗試験機を用い、以下の条件で試験を行い、焼付きが発生した時の回転数を記録した。油温:室温、荷重:100kgf、回転数:30秒ごとに100rpmずつ増加。回転数(rpm)が1000を超えた場合を合格とした。
(1)40℃における動粘度(KV40)および100℃における動粘度(KV100)
ASTM D445に準拠して測定した。
(2)粘度指数
ASTM D2270に準拠して測定した。
(3)摩耗性評価
ASTM D2714に準拠し、以下の条件で試験を行い、試験後のブロック試験片に出来た摩耗幅を評価した。油温:120℃、荷重:20lbf、回転数:1000rpm、時間:1h、摩耗幅(mm)が0.5以下の場合を合格とした。
(4)スコーリング性評価
ASTM D4172で規定される四球摩耗試験機を用い、以下の条件で試験を行い、焼付きが発生した時の回転数を記録した。油温:室温、荷重:100kgf、回転数:30秒ごとに100rpmずつ増加。回転数(rpm)が1000を超えた場合を合格とした。
(5)ASTM D471に準拠するゴム適合性評価(静的試験)
潤滑油組成物に試験ゴム片(アクリルゴム)を浸漬し、150℃にて70時間加熱した後の体積変化率(%)及び硬さ変化を求めた。体積変化率(%)の値が大きいほど膨潤傾向にあることを意味する。また、硬さ変化が負の値を示した場合、初期の状態から軟化している傾向にあることを意味する。
潤滑油組成物に試験ゴム片(アクリルゴム)を浸漬し、150℃にて70時間加熱した後の体積変化率(%)及び硬さ変化を求めた。体積変化率(%)の値が大きいほど膨潤傾向にあることを意味する。また、硬さ変化が負の値を示した場合、初期の状態から軟化している傾向にあることを意味する。
(6)オイルシール試験(動的試験)
下記に従い、オイルシールの密封機構に重要な「ポンピング作用」を評価する。
工程1)オイルシールを図1のような状態(正取付)で試験機に取り付けて、下記の条件にて軸を回転させて大気を油側に送り込んだ。
条件
油量:軸中心レベル
油温:130〜160℃
時間:100時間
回転数:8600rpm
オイルシール:アクリルゴム(NOK製)
軸偏心:0.1mm
工程2)上記工程1の後、図2に示すようにオイルシールを逆向きに取り付けて、内側に潤滑油組成物を満たし、下記の条件にて軸を回転させた。油側から大気側に流出する単位時間当たりの油流出量(ポンプ量と定義)を測定した。結果を表1に示す。ポンプ量は2.5以上を合格とした。逆向取付にて油流出量が大きいほど、正取付した際には大気の送りこみ量が大きくなり油が漏れない(ポンピング作用が大きい)ことを意味する。
条件
油温:80℃
回転数:2000 rpm
オイルシール:アクリルゴム(NOK製)
軸偏心:0.1mm
下記に従い、オイルシールの密封機構に重要な「ポンピング作用」を評価する。
工程1)オイルシールを図1のような状態(正取付)で試験機に取り付けて、下記の条件にて軸を回転させて大気を油側に送り込んだ。
条件
油量:軸中心レベル
油温:130〜160℃
時間:100時間
回転数:8600rpm
オイルシール:アクリルゴム(NOK製)
軸偏心:0.1mm
工程2)上記工程1の後、図2に示すようにオイルシールを逆向きに取り付けて、内側に潤滑油組成物を満たし、下記の条件にて軸を回転させた。油側から大気側に流出する単位時間当たりの油流出量(ポンプ量と定義)を測定した。結果を表1に示す。ポンプ量は2.5以上を合格とした。逆向取付にて油流出量が大きいほど、正取付した際には大気の送りこみ量が大きくなり油が漏れない(ポンピング作用が大きい)ことを意味する。
条件
油温:80℃
回転数:2000 rpm
オイルシール:アクリルゴム(NOK製)
軸偏心:0.1mm
表1に示される通り、エステル系合成油を含まない特願2016−148523号明細書記載の潤滑油組成物(比較例1)は、オイルシール特性が2.5を下回っており、油漏れ抑制効果が不十分である。基油としてジイソノニルフタレート(DINP)を使用した比較例2の潤滑油組成物は、静的試験における体積変化率及び硬さ変化の値によれば、実施例1及び3よりも膨潤及び軟化効果が大きいことを示しているが、動的試験におけるオイルシール特性は2.5を下回っており、油漏れ抑制効果は不十分である。これに対し、本発明の潤滑油組成物は、動的試験におけるオイルシール特性が2.5以上であり、良好な油漏れ抑制効果を有する。
また、上記表2に示す参考例1〜5の組成物と実施例1〜3の組成物を対比すると、硫黄系極圧剤の含有量が少なすぎる組成物はスコーリング防止性に劣る(参考例1)。硫黄系極圧剤の含有量が多すぎる組成物は硬さ変化に劣る(参考例2)。活性硫黄量が高すぎる硫黄系極圧剤を含む組成物は摩耗防止性に劣る(参考例3)。リン系極圧剤の含有量が少なすぎる組成物は摩耗防止性に劣る(参考例4)。また、リン系極圧剤の含有量が多すぎるとスコーリング防止性に劣る(参考例5)。これに対し、本発明の潤滑油組成物において、(B)成分として特定の活性硫黄量を有する極圧剤を特定量にて配合し、及び(C)成分としてリン系極圧剤を特定量にて配合することにより、本発明の課題であるオイルシールゴム適合性及び油漏れの抑制を達成することに加えて、さらに優れた摩耗防止性及びスコーリング防止性を確保することができるため好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、実機によるオイルシール試験(動的試験)において優れた油漏れ防止性能(オイルシール性能)を有することができる。更には、本発明の潤滑油組成物は、ベアリング等における摩耗及びギヤ歯面等におけるスコーリングの発生を抑制することができる。本発明の潤滑油組成物は、自動車用潤滑油として好適に使用でき、特に変速機用ギヤ油及びディファレンシャルギヤ油として好適である。
1.バネ
2.金属環
3.アクリルゴム
4.回転軸
5.潤滑油組成物
6.大気
2.金属環
3.アクリルゴム
4.回転軸
5.潤滑油組成物
6.大気
Claims (13)
- (A)潤滑油基油と、(B)硫黄系極圧剤と、(C)リン系極圧剤とを含有する潤滑油組成物において、前記(A)潤滑油基油として少なくとも(A-1)炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸と炭素数1〜20の1価アルコールとのジエステルを潤滑油組成物全体の質量に対して1〜20質量%となる量で含有することを特徴とする、前記潤滑油組成物。
- 前記 (A)潤滑油基油として (A-2)GTL(Gas to Liquid)由来基油を潤滑油組成物全体の質量に対して30〜95質量%となる量で更に含む、請求項1記載の潤滑油組成物。
- 前記 (A)潤滑油基油として(A-3)ポリ−α−オレフィン(PAO)基油を潤滑油組成物全体の質量に対し50質量%以下となる量で更に含む、請求項1または2記載の潤滑油組成物。
- 前記(A-1)成分がアジピン酸エステルである、請求項1〜3のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
- 前記アジピン酸エステルがアジピン酸ジイソデシル(DIDA)である、請求項4記載の潤滑油組成物。
- 前記(B)硫黄系極圧剤が、活性硫黄量5〜30質量%を有し、潤滑油組成物全体の質量に対して5〜15質量%の量で含有され、及び、前記(C)リン系極圧剤が潤滑油組成物全体の質量に対して1.5〜8質量%の量で含有されている、請求項1〜5のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
- 前記(B)硫黄系極圧剤が硫化オレフィンである、請求項1〜6のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
- 前記(C)リン系極圧剤が酸性リン酸エステルのアミン塩、酸性亜リン酸エステルのアミン塩、酸性チオリン酸エステルのアミン塩、及び酸性チオ亜リン酸エステルのアミン塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜7のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
- 前記潤滑油組成物が100℃における動粘度3〜40mm2/sを有する、請求項1〜8のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
- 前記(A)潤滑油基油が100℃における動粘度3〜40mm2/sを有する、請求項1〜9のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
- 変速機用である、請求項1〜10のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
- ディファレンシャルギヤ用である、請求項1〜10のいずれか1項記載の潤滑油組成物。
- 請求項1〜12のいずれか1項記載の潤滑油組成物を用いてオイルシール適合性及び摩耗防止性を改善する方法。
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JP2010101600A (ja) * | 2008-10-27 | 2010-05-06 | Mitsubishi Electric Corp | 空調システム |
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AU3654897A (en) * | 1996-07-25 | 1998-02-20 | Henkel Corporation | Base stocks for transmission/gear lubricants |
JP2000073078A (ja) * | 1998-08-31 | 2000-03-07 | New Japan Chem Co Ltd | 金属加工油組成物 |
JP2009126871A (ja) * | 2007-11-19 | 2009-06-11 | Cosmo Sekiyu Lubricants Kk | 潤滑油組成物 |
JP5480259B2 (ja) * | 2009-03-10 | 2014-04-23 | ザ ルブリゾル コーポレイション | 動力伝達系路デバイスを潤滑する、耐摩耗組成物および方法 |
KR20120093211A (ko) * | 2009-09-16 | 2012-08-22 | 더루우브리졸코오포레이션 | 에스테르를 함유하는 윤활 조성물 |
-
2018
- 2018-01-11 JP JP2018002692A patent/JP2019119838A/ja active Pending
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2019
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