JP2019119792A - 水性ポリマーの製造方法 - Google Patents

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芳峰 坂元
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Abstract

【課題】耐凍害性に優れる塗膜を形成可能な水性ポリマーの製造方法を提供する。【解決手段】下記有機酸化剤及び下記有機還元剤を用いてスチレン系単量体を含有する単量体成分を乳化重合させて、スチレン系単量体に由来する構成単位の割合が50〜90質量%でありガラス転移温度が0〜50℃である水性ポリマーを製造する方法であり、70〜100℃の温度条件下、下記式(1)で定義される前記有機酸化剤の供給比Xaが0.9以上となるように、前記単量体成分の供給中に前記有機還元剤を供給して前記単量体成分を乳化重合させる重合工程Aを含む、水性ポリマーの製造方法。有機酸化剤:水溶解度が室温で14g/100g以上、且つ10時間半減期温度が110℃以上有機還元剤:水溶解度が室温で14g/100g以上Xa=(a/A)/(b/B) (1)【選択図】なし

Description

本発明は、水性ポリマーの製造方法に関する。
建物構造物の外壁及び建築建材の塗装には溶剤系塗料や水系塗料が用いられている。特に、建築建材の塗装では、下塗りと上塗りに大別される。下塗りに関して、窯業系建材等の無機質建材には、無機質建材の表面又は裏面に塗布されるシーラーと呼ばれる下塗り剤が用いられることがある。近年、環境保護の観点から、シーラーとして、エマルション樹脂を含有する水性下塗り塗料組成物(例えば、特許文献1参照)、共重合体エマルションを主成分とする水性2液型下塗り塗料組成物(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
特開2001−335735号公報 特開2001−262053号公報
シーラーとしての性能により優れる観点から、シーラー用樹脂組成物における樹脂として、スチレン系単量体を構成単位として含むものが用いられることがある。しかしながら、スチレン系単量体を構成単位として高い配合割合で含む水性ポリマーを用いた樹脂エマルションは、スチレン系単量体を用いることによるシーラー性能を充分に発揮することができず、耐凍害性が不充分となることがあった。
従って、本発明の目的は、耐凍害性に優れる塗膜を形成可能な水性ポリマーの製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の有機酸化剤及び特定の有機還元剤を用いてスチレン系単量体を含有する単量体成分を乳化重合させて、スチレン系単量体に由来する構成単位の割合が50〜90質量%でありガラス転移温度が0〜50℃である水性ポリマーを製造する方法であり、特定の温度条件下、上記有機還元剤の供給中の任意の時間tにおける上記有機酸化剤の上記有機還元剤に対する供給比が特定以上となるように、上記単量体成分の供給中に上記有機還元剤を供給して上記単量体成分を乳化重合させる重合工程を含む製造方法によれば、耐凍害性に優れる塗膜を形成可能な水性ポリマーが得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
すなわち、本発明は、下記有機酸化剤及び下記有機還元剤を用いてスチレン系単量体を含有する単量体成分を乳化重合させて、スチレン系単量体に由来する構成単位の割合が50〜90質量%でありガラス転移温度が0〜50℃である水性ポリマーを製造する方法であり、
70〜100℃の温度条件下、下記式(1)で定義される、上記有機還元剤の供給中の任意の時間tにおける上記有機酸化剤の上記有機還元剤に対する供給比Xaが0.9以上となるように、上記単量体成分の供給中に上記有機還元剤を供給して上記単量体成分を乳化重合させる重合工程Aを含む、水性ポリマーの製造方法を提供する。
有機酸化剤:水溶解度が室温で14g/100g以上、且つ10時間半減期温度が110℃以上
有機還元剤:水溶解度が室温で14g/100g以上
Xa=(a/A)/(b/B) (1)
(式中、Aは上記有機酸化剤の全質量、Bは上記有機還元剤の全質量、aは任意の時間tにおいて既に供給された上記有機酸化剤の質量、bは任意の時間tにおいて既に供給された上記有機還元剤の質量をそれぞれ示す。)
上記水性ポリマーは、平均粒子径が400nm以下であることが好ましい。
上記製造方法は、単量体成分を乳化重合させる工程を多段階含み、上記多段階における1以上の段階が、スチレン系単量体を80〜100質量%含有する単量体成分を乳化重合させる重合工程であることが好ましい。
上記製造方法は、単量体成分を乳化重合させる工程を多段階含み、上記多段階における1段階目はスチレン系単量体を80〜100質量%含有する単量体成分を乳化重合させる重合工程であり、2段階目以降の各段階はスチレン系単量体を20〜70質量%含有する単量体成分を乳化重合させる重合工程であり、上記多段階のうちの少なくとも1つの段階における重合工程が上記重合工程Aであることが好ましい。上記2段階目以降の各段階における重合工程においてガラス転移温度−40〜50℃の樹脂層を形成することが好ましい。
また、上記製造方法は、単量体成分を乳化重合させる重合工程を3段階含み、1段階目はスチレン系単量体を80〜100質量%含有する単量体成分を乳化重合させる重合工程であり、2段階目は乳化重合によりガラス転移温度−40〜0℃の樹脂層を形成する重合工程であり、3段階目は乳化重合によりガラス転移温度0〜50℃の樹脂層を形成する重合工程であり、上記3段階のうちの少なくとも1つの段階における重合工程が上記重合工程Aであることが好ましい。
上記製造方法において、重合開始時の単量体成分の乳化重合に過硫酸塩を重合開始剤として用いることが好ましい。
また、本発明は、スチレン系単量体に由来する構成単位を80〜100質量%含有する樹脂から形成されたコア層と、上記コア層を覆うように形成され、スチレン系単量体に由来する構成単位を20〜40質量%含有しガラス転移温度が−40〜0℃である樹脂から形成された中間層と、上記中間層を覆うように形成され、スチレン系単量体に由来する構成単位を40〜70質量%含有しガラス転移温度が0〜50℃である樹脂から形成されたシェル層と、を有し、スチレン系単量体に由来する構成単位の割合が50〜90質量%でありガラス転移温度が0〜50℃である、水性ポリマーを提供する。
本発明の水性ポリマーの製造方法により得られる水性ポリマーを含む樹脂エマルションを用いたシーラーを塗布して形成される塗膜は、耐凍害性に優れる。なお、本明細書において、「塗膜」とは、樹脂エマルションを用いた組成物を塗布し、乾燥して得られる膜をいう。
本発明の水性ポリマーの製造方法は、下記有機酸化剤及び下記有機還元剤を用いてスチレン系単量体を含有する単量体成分を乳化重合させて、スチレン系単量体に由来する構成単位の割合が50〜90質量%でありガラス転移温度が0〜50℃である水性ポリマーを製造する方法である。有機酸化剤:水溶解度が室温で14g/100g以上、且つ10時間半減期温度が110℃以上。有機還元剤:水溶解度が室温で14g/100g以上。なお、本明細書において、本発明の水性ポリマーの製造方法を「本発明の製造方法」と称する場合がある。また、本発明の水性ポリマーの製造方法により得られる水性ポリマーを「本発明の水性ポリマー」と称する場合がある。また、本明細書において、「水性ポリマー」とは、水を含む水性媒体に溶解又は分散可能なポリマーをいう。
上記有機酸化剤は、水溶解度が室温(25±1℃)で14g/100g以上、且つ10時間半減期温度が110℃以上である。また、上記有機還元剤は、水溶解度が室温で14g/100g以上である。このような有機酸化物及び有機還元剤の組み合わせをレドックス重合開始剤として用いることにより、水分散性に優れながら、有機化合物であるスチレン系単量体に対して親和性が高く、また上記有機酸化剤は70〜100℃の温度条件下において熱分解しにくいためと推測され、スチレン系単量体を高い割合で含む単量体成分を重合させてもスチレン系単量体とその他の単量体を均一に重合させることができ、シーラー性能に優れ、特に耐凍害性に優れる塗膜を形成することが可能な水性ポリマーを得ることができる。
上記有機酸化剤としては、例えば、t−ブチルヒドロキシペルオキシドジコハク酸ペルオキシド、ジグルタル酸ペルオキシド等が挙げられる。中でも、スチレン系単量体を高い割合で含む単量体成分をより均一に重合させることができる観点から、t−ブチルヒドロキシペルオキシドが好ましい。上記有機酸化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記有機還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、酒石酸等が挙げられる。中でも、上記温度条件下で上記有機酸化剤から効率的にラジカルを発生させることができる観点から、アスコルビン酸が好ましい。上記有機還元剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
本発明の水性ポリマーにおける、上記スチレン系単量体に由来する構成単位の割合は、本発明の水性ポリマーを構成する単量体に由来する構成単位の全量(100質量%)に対して、50〜90質量%であり、好ましくは53〜80質量%、より好ましくは55〜75質量%である。スチレン系単量体に由来する構成単位の割合が50質量%以上であることにより、コストを抑えつつ、シーラー性能に優れ、特に耐凍害性に優れる塗膜を形成することができる。スチレン系単量体に由来する構成単位の割合が90質量%以下であることにより、他の単量体に由来する構成単位を含むことができ、造膜性に優れる水性ポリマーを得ることができる。
本発明の水性ポリマーのガラス転移温度は、0〜50℃であり、好ましくは5〜45℃、より好ましくは10〜40℃である。上記ガラス転移温度が0℃以上であることにより、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションを用いて形成される塗膜の耐ブロッキング性に優れる。上記ガラス転移温度が50℃以下であることにより、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションを用いて塗膜を形成する際の造膜性に優れる。
なお、本明細書において、樹脂のガラス転移温度は、当該樹脂を構成する単量体成分に使用されている単量体の単独重合体のガラス転移温度を用いて、式:
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
[式中、Wmは樹脂を構成する単量体成分における単量体mの含有割合(質量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す]
で表されるフォックス(Fox)の式に基づいて求められる温度である。単独重合体のガラス転移温度について、例えば、スチレンの単独重合体では100℃、2−エチルヘキシルアクリレートの単独重合体では−70℃、アクリル酸の単独重合体では95℃、メタクリル酸の単独重合体では130℃、ブチルアクリレートの単独重合体では−56℃、メチルメタクリレートの単独重合体では105℃、アクリロニトリルの単独重合体では96℃である。
本発明の製造方法は、70〜100℃の温度条件下、下記式(1)で定義される、上記有機還元剤の供給中の任意の時間tにおける上記有機酸化剤の上記有機還元剤に対する供給比Xaが0.9以上となるように、上記単量体成分の供給中に上記有機還元剤を供給して上記単量体成分を乳化重合させる重合工程を含む。なお、本明細書において、上記重合工程を「重合工程A」と称する場合がある。また、下記式(1)において、上記有機還元剤の供給中の任意の時間tは、上記単量体成分の供給中に上記有機還元剤を供給する際の、上記有機還元剤の供給中の全ての時間である。
Xa=(a/A)/(b/B) (1)
(式中、Aは上記有機酸化剤の全質量、Bは上記有機還元剤の全質量、aは任意の時間tにおいて既に供給された上記有機酸化剤の質量、bは任意の時間tにおいて既に供給された上記有機還元剤の質量をそれぞれ示す。)
重合工程Aでは、70〜100℃の温度条件下、上記単量体成分の供給中に上記有機還元剤を供給して上記単量体成分を乳化重合させる。上記温度条件は、好ましくは75〜95℃である。上記温度条件が70℃以上であることにより、上記有機酸化剤がラジカルを発生して重合開始剤として作用し、またスチレン系単量体を高い割合で含む単量体成分を重合させてもスチレン系単量体とその他の単量体を均一に重合させることができると推測され、シーラー性能に優れ、特に耐凍害性に優れる塗膜を形成することが可能な水性ポリマーを得ることができる。上記温度条件が100℃以下であることにより、上記有機酸化剤が分解されにくく重合開始剤として充分に機能する。なお、上記温度条件は、一定であってもよく、上記範囲内において乳化重合中に変化させてもよい。
重合工程Aでは、上記温度条件下、上記供給比Xaが0.9以上となるように、上記単量体成分の供給中に上記有機還元剤を供給して上記単量体成分を乳化重合させる。上記供給比Xaが0.9以上となるように上記有機還元剤を供給することにより、上記有機酸化剤の全使用量に対する反応系内の上記有機酸化剤の割合が、上記有機還元剤の全使用量に対する反応系内の上記有機還元剤の割合と同等以上となるため、上記有機還元剤の供給開始から供給終了まで均一にラジカルを発生させることができる。これにより、スチレン系単量体を高い割合で含む単量体成分を重合させてもスチレン系単量体とその他の単量体を均一に重合させることができる。また、上記有機酸化剤は、上記温度条件下では熱分解されにくいため、上記有機還元剤の供給前に予め全使用量の上記有機酸化剤を反応系内に供給しておいてもよく、すなわち、上記供給比Xaの上限は特に限定されない。
重合工程Aでは、上記有機酸化剤と上記有機還元剤を個別に且つ同時に供給することが特に好ましい。なお、反応系中への個別の供給とは、有機酸化剤及び有機還元剤が反応系中に供給される前に有機酸化剤及び有機還元剤が混合することなく、連続且つ均一に供給が行われることである。また、有機酸化剤及び有機還元剤の、反応系中への同時の供給とは、上記供給比Xaが、好ましくは0.9〜1.5、より好ましくは0.9〜1.2、さらに好ましくは0.9〜1.1となるように供給されることである。上記供給比Xaが上記範囲内であると、重合工程Aにおいて、より安定的に反応用器内にラジカルを均一に生じさせることができるため、スチレン系単量体を高い割合で含む単量体成分を重合させてもスチレン系単量体とその他の単量体をより均一に重合させることができる。
重合工程Aにおいて、上記単量体成分の供給中に上記有機還元剤を供給する。言い換えると、重合工程Aにおいて乳化重合させる単量体成分の供給と、上記有機酸化剤と上記有機還元剤の反応によるラジカルの発生とが、同時に且つ連続的に行われることが好ましい。これにより、重合初期にラジカルが大量に発生して重合終盤にラジカルが存在しなくなることを防止して、レドックス反応により上記有機酸化剤からラジカルを逐次的に発生させつつ単量体成分の重合を均一に進行させることができる。また、反応器内には安定的にラジカルが存在することになるため、残存モノマーの割合が少なくなる傾向がある。さらに、上記有機酸化剤及び上記有機還元剤を用いることにより、水溶性の高い無機系重合開始剤を用いる場合に対して、残存モノマーの割合が飛躍的に少なくなる。これらにより、塗膜の耐凍害性に優れる。さらに、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションを用いた塗料は、長期でも粘度変化が少なく、安定性(特に、加熱安定性)に優れる。なお、上記単量体成分の供給は、上記有機還元剤を同時に供給する段階を含めばよく、例えば、同時に供給する段階の前及び/又は後に、上記有機還元剤を供給しないで上記単量体成分を供給する段階や、上記単量体成分を供給しないで上記有機還元剤を供給する段階を含んでいてもよい。
上記単量体成分の供給中に上記有機還元剤を供給する際、下記式(2)で定義される、上記有機還元剤の供給中の任意の時間tにおける有機還元剤の単量体成分に対する供給比Xbが、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.3〜3、さらに好ましくは0.5〜2、さらに好ましくは0.8〜1.5、特に好ましくは0.9〜1.1となるように供給されることである。上記単量体成分の供給中に上記有機還元剤を供給することにより、上記単量体成分の供給中は、上記単量体成分の供給とラジカルの発生が同時に行われ、スチレン系単量体を高い割合で含む単量体成分をよりいっそう均一に重合させることができる。また、上記有機還元剤の供給が上記単量体成分の供給よりも前に完了することがより均一な組成の水性ポリマーを得るために好ましい観点から、上記供給比Xbは、0.8以上(特に、0.9以上、1以上)が好ましい。なお、下記式(2)において、上記有機還元剤の供給中の任意の時間tは、上記単量体成分の供給中に上記有機還元剤を供給する際の、上記有機還元剤の供給中の全ての時間である。
Xb=(b/B)/(m/M) (2)
(式中、Bは有機還元剤の全質量、Mは単量体成分の全質量、bは任意の時間tにおいて既に供給された有機還元剤の質量、mは任意の時間tにおいて既に供給された単量体成分の質量をそれぞれ示す。)
重合工程Aにおいて、乳化重合させる全単量体成分の60質量%以上と、上記有機還元剤とを、同時に供給することが好ましい。上記有機還元剤と同時に供給する上記単量体成分の割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。上記割合は、例えば98質量%以下である。言い換えると、重合工程Aにおいて乳化重合させる全単量体成分の60質量%以上の単量体成分の供給と、上記有機酸化剤と上記有機還元剤の反応によるラジカルの発生とが、同時に且つ連続的に行われることが好ましい。
重合工程Aにおいて、上記有機酸化剤は、上記有機還元剤の供給前に反応系内に供給しておいてもよい。上記有機還元剤は70〜100℃の温度条件下では熱的に安定であるため、上記有機還元剤の供給前に反応系内に供給しておいても熱分解されにくく、上記有機還元剤の供給により均一にラジカルを発生させることが可能である。また、上記有機酸化剤は、上記有機還元剤の供給中に供給してもよい。上記有機還元剤の供給中に上記有機酸化剤を供給する場合、上記有機還元剤の供給時に充分な量のラジカルを発生させることができるように、上記有機還元剤の供給終了よりも前に上記有機酸化剤の供給が終了することが好ましい。
また、重合工程Aでは、上記単量体成分及び上記有機還元剤の供給中に上記有機酸化剤を供給することが好ましい。この際、下記式(3)で定義される、上記有機還元剤の供給中の任意の時間tにおける有機酸化剤の単量体成分に対する供給比Xcが、好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.3〜3、さらに好ましくは0.5〜2となるように供給されることである。上記単量体成分及び上記有機還元剤の供給中に上記有機酸化剤を供給すると、上記単量体成分の供給中は、上記単量体成分の供給とラジカルの発生がより安定的に同時に行われ、スチレン系単量体を高い割合で含む単量体成分をより均一に重合させることができる。なお、下記式(3)において、上記有機還元剤の供給中の任意の時間tは、上記有機還元剤の供給中に上記有機酸化剤を供給する際の、上記有機還元剤の供給中の全ての時間である。
Xc=(a/A)/(m/M) (3)
(式中、Aは有機酸化剤の全質量、Mは単量体成分の全質量、aは任意の時間tにおいて既に供給された有機酸化剤の質量、mは任意の時間tにおいて既に供給された単量体成分の質量をそれぞれ示す。)
上記有機還元剤の供給終了までに供給する上記有機酸化剤の使用量は、上記有機酸化剤を重合工程Aにおける主たる重合開始剤として使用する観点から、重合工程Aにおいて乳化重合させる全単量体成分100質量部に対し、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.07質量部以上である。また、上記有機酸化剤の使用量は、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションから形成される塗膜の耐透水性(耐吸水性)を向上させ、耐凍害性を向上させる観点から、重合工程Aにおいて乳化重合させる全単量体成分100質量部に対し、1質量部以下が好ましく、より好ましくは0.3質量部以下である。
上記単量体成分の供給中に供給する上記有機還元剤の使用量は、上記単量体成分の供給中に上記有機酸化剤からのラジカル発生をより促進させる観点から、上記有機酸化剤100質量部に対し、10質量部以上が好ましく、より好ましくは50質量部以上である。また、上記有機還元剤の使用量は、有機酸化剤から徐々にラジカルを発生させ、スチレン系単量体を高い割合で含む単量体成分を均一に重合させることができる観点から、上記有機酸化剤100質量部に対し、300質量部以下が好ましく、より好ましくは200質量部以下である。
重合工程Aにおいて、上記有機還元剤と同時に供給する段階を含む単量体成分供給時の、単量体成分の供給開始から供給終了までの時間(供給時間)は、2時間以上、6時間以内が好ましい。上記供給時間が2時間以上であると、反応系内に供給された単量体成分が逐次反応し、スチレン系単量体を高い割合で含む単量体成分を重合させてもスチレン系単量体とその他の単量体をより均一に重合させることができる。また、上記供給時間が6時間以内であると、単量体成分が反応することでは発生する反応熱により重合工程Aの反応温度70〜100℃を安定に維持でき、また製造時間を短縮できる。
重合工程Aにおいて、上記有機還元剤と同時に供給する段階を含む単量体成分供給時の単量体成分の供給速度は、供給する全単量体成分1000質量部に対して0.1〜50質量部/分が好ましく、より好ましくは1〜20質量部/分である。上記供給速度が1000質量部あたり50質量部/分以下であると、反応系内に供給された単量体成分が逐次反応し、スチレン系単量体を高い割合で含む単量体成分を重合させてもスチレン系単量体とその他の単量体をより均一に重合させることができる。また、上記供給速度が1000質量部あたり0.1質量部/分以上であると、単量体成分が反応することでは発生する反応熱により重合工程Aの反応温度70〜100℃を安定に維持でき、また製造時間を短縮できる。
重合工程Aでは、上記温度条件下、スチレン系単量体を含む単量体成分を乳化重合させる。なお、上記単量体成分は、スチレン系単量体以外の他の単量体を含んでいてもよい。上記他の単量体としては、例えば、スチレン系単量体以外の芳香族系単量体、エチレン性不飽和単量体等が挙げられる。上記他の単量体は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。重合工程Aにおいて乳化重合させる単量体成分中のスチレン系単量体の含有割合は、20〜100質量%であることが好ましい。単量体成分が他の単量体を含む場合、重合工程Aにおいて乳化重合させる単量体成分中の他の単量体の含有割合は、0質量%を超え80質量%以下であることが好ましい。
上記スチレン系単量体は、スチレン骨格を有する単量体をいう。上記スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、tert−メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。スチレン系単量体は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。スチレン系単量体の中では、シーラーを用いて塗膜とした際の耐凍害性に優れる点と安価なことからスチレンが好ましい。
上記スチレン系単量体以外の芳香族系単量体としては、例えば、アラルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記アラルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレート等の炭素数が7〜18のアラルキル基を有するアラルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記スチレン系単量体以外の芳香族系単量体は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び/又は「メタクリル」を意味する。
上記エチレン性不飽和単量体としては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有(メタ)アクリレート、カルボキシ基含有単量体、カルボニル基含有単量体、アルキレングリコール系単量体、フッ素原子含有単量体、窒素原子含有単量体、エポキシ基含有単量体等が挙げられる。上記エチレン性不飽和単量体は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート等のエステル基の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエステル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレートは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
カルボキシ基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸等のカルボキシ基含有脂肪族系単量体等が挙げられる。中でも、樹脂エマルション中における水性ポリマーの分散安定性を向上させる観点から、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸が好ましく、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸である。カルボキシ基含有単量体は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
カルボニル基含有単量体としては、例えば、アセトニル(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシアルキルプロペナール等のカルボニル基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。カルボニル基含有単量体は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
窒素原子含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド化合物;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の窒素原子含有(メタ)アクリレート化合物;N−ビニルピロリドン;(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。中でも、塗布対象に対する塗膜の密着性を向上させる観点から、(メタ)アクリロニトリルが好ましい。窒素原子含有単量体は、一種のみしてもよいし、二種以上を使用してもよい。
アルキレングリコール系単量体としては、例えば、エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート等の(ジ)エチレングリコール(メトキシ)(メタ)アクリ
レート等が挙げられる。アルキレングリコール系単量体は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
フッ素原子含有単量体としては、例えば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート等のエステル基の炭素数が2〜6のフッ素原子含有アルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。フッ素原子含有単量体は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
エポキシ基含有単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。エポキシ基含有単量体は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記他の単量体の中でも、エチレン性不飽和単量体が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリロイル基を有する単量体)である。特に、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションから形成される塗膜の耐透水性(耐吸水性)を向上させ、耐凍害性を向上させ、且つ造膜性を向上させる観点から、アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシ基含有単量体、窒素原子含有単量体、カルボニル基含有単量体が好ましく、より好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートである。
重合工程Aでは乳化剤を用いて乳化重合を行うことが好ましい。重合工程Aにおいて乳化重合させる方法としては、例えば、水と、必要に応じてメタノール等の低級アルコール等の水溶性有機溶媒を含む水性媒体中に乳化剤を溶解させ、攪拌下で単量体成分の供給中に、上記有機酸化剤及び上記有機還元剤を個別に且つ同時に連続供給する方法、乳化剤及び水を用いてあらかじめ乳化させておいた上記有機酸化剤を水性媒体中に連続供給し、その後単量体成分の供給中に上記有機還元剤を連続供給する方法等が挙げられる。なお、媒体の量は、得られる樹脂エマルションに含まれる不揮発分濃度を考慮して適宜設定すればよい。
上記乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、高分子乳化剤等が挙げられる。上記乳化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
アニオン性乳化剤としては、例えば、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;アンモニウムドデシルスルホネート、ナトリウムドデシルスルホネート等のアルキルスルホネート塩;アンモニウムドデシルベンゼンスルホネート、ナトリウムドデシルナフタレンスルホネート等のアルキルアリールスルホネート塩;ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩;ジアルキルスルホコハク酸塩;アリールスルホン酸−ホルマリン縮合物;アンモニウムラウリレート、ナトリウムステアリレート等の脂肪酸塩等が挙げられる。
ノニオン性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、エチレンオキサイドと脂肪族アミンとの縮合生成物等が挙げられる。
カチオン性乳化剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド等のアルキルアンモニウム塩等が挙げられる。
両性乳化剤としては、例えば、ベタインエステル型乳化剤等が挙げられる。
高分子乳化剤としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム等のポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン;ポリヒドロキシエチルアクリレート等のポリヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;これらの重合体を構成する単量体のうちの一種以上を共重合成分とする共重合体等が挙げられる。
また、上記乳化剤として、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションから形成される塗膜の耐透水性(耐吸水性)を向上させ、耐凍害性を向上させる観点から、重合性官能基を有する乳化剤、すなわち、いわゆる反応性乳化剤が好ましく、環境保護の観点から、非ノニルフェニル型の乳化剤が好ましい。
反応性乳化剤としては、例えば、プロペニル−アルキルスルホコハク酸エステル塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンスルホネート塩、(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレンホスフォネート塩[例えば、商品名「エレミノールRS−30」(三洋化成工業(株)製)等]、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルスルホネート塩[例えば、商品名「アクアロンHS−10」(第一工業製薬(株)製)等]、アリルオキシメチルアルキルオキシポリオキシエチレンのスルホネート塩[例えば、商品名「アクアロンKH−10」(第一工業製薬(株)製)等]、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレンのスルホネート塩[例えば、商品名「アデカリアソープSE−10」((株)ADEKA製)等]、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン硫酸エステル塩[例えば、商品名「アデカリアソープSR−10」、商品名「アデカリアソープSR−30」(以上、(株)ADEKA製)等]、ビス(ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル)メタクリレート化スルホネート塩[例えば、商品名「アントックスMS−60」(日本乳化剤(株)製)等]、アリルオキシメチルアルコキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン[例えば、商品名「アデカリアソープER−20」((株)ADEKA製)等]、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル[例えば、商品名「アクアロンRN−20」(第一工業製薬(株)製)等]、アリルオキシメチルノニルフェノキシエチルヒドロキシポリオキシエチレン[例えば、商品名「アデカリアソープNE−10」((株)ADEKA製)等]等が挙げられる。
乳化剤の使用量は、重合安定性を向上させる観点から、全単量体成分100重量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上である。また、乳化剤の使用量は、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションから形成される塗膜の耐透水性(耐吸水性)を向上させ、耐凍害性を向上させる観点から、10質量部以下が好ましく、より好ましくは6質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
重合工程Aにおいて、必要により、例えば、tert−ドデシルメルカプタン等のチオール基を有する化合物等の連鎖移動剤、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤、顔料等の着色剤、増粘剤、上記有機酸化剤以外の重合開始剤等の添加剤を使用してもよい。添加剤の使用量は、添加剤の種類によって適宜決定され、通常、全単量体成分100質量部に対し、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
重合工程Aにおける乳化重合の際の雰囲気は、特に限定されないが、重合開始剤の効率を高める観点から、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
重合工程Aにおける乳化重合の時間は、重合反応の進行状況に応じて適宜設定されるが、通常、2〜20時間程度である。
本発明の製造方法では、重合開始時の単量体成分の乳化重合に過硫酸塩を重合開始剤として用いることが好ましい。これにより、スチレン系単量体を高い割合で含む単量体成分の重合開始を促進させることができる。上記過硫酸塩としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。過硫酸塩の使用量は、過硫酸塩を用いる重合工程において乳化重合させる全単量体成分100質量部に対し、0.03質量部以上が好ましく、より好ましくは0.05質量部以上である。また、上記有機酸化剤及び上記有機還元剤による乳化重合を促進させる観点から、2質量部以下が好ましく、より好ましくは1質量部以下である。
本発明の製造方法は、重合工程Aのみを含むものであってもよいが、単量体成分を乳化重合させる工程を多段階含むことが好ましい。これにより、コアシェル構造を有する水性ポリマー粒子を製造することができる。なお、上記多段階のうちの少なくとも1つの段階における重合工程が上記重合工程Aであり、上記多段階のうちの60%以上の段階における重合工程が重合工程Aであることが好ましい。コアシェル構造を有する水性ポリマーは、コア層とシェル層とでそれぞれ異なる機能に優れるよう設計することが可能であり、例えば、コアシェル構造を有する水性ポリマーを含む樹脂エマルションを用いたシーラーは、形成した塗膜の耐凍害性により優れ、且つ耐透水性(耐吸水性)にもより優れる設計とすることが可能である。
本発明の製造方法が上記多段階を含む場合、上記多段階における1以上の段階が、スチレン系単量体を80〜100質量%含有する単量体成分を乳化重合させる重合工程(「重合工程B」と称する場合がある)であることが好ましい。特に、上記多段階における1段階目が重合工程Bであることが好ましい。重合工程Bにおいて乳化重合させる単量体成分中のスチレン系単量体の含有割合は、好ましくは90〜100質量%、より好ましくは95〜100質量%である。上記含有割合が80質量%以上であると、重合工程Bにおいて形成される樹脂層(1段階目が重合工程Bである場合はコアシェル構造におけるコア層を形成する樹脂)中のスチレン系単量体に由来する構成単位の割合が高くなり、このような樹脂層(コア層)を有する本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションから形成される塗膜は耐凍害性及び耐透水性(耐吸水性)により優れる。また、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションから形成される塗膜の耐ブロッキング性に優れる。なお、重合工程Bが重合工程Aであってもよいし、重合工程B以外の段階が重合工程Aであってもよい。
本発明の製造方法において、重合開始時の単量体成分の乳化重合に過硫酸塩を重合開始剤として用いる場合、上記1段階目の乳化重合において過硫酸塩を用いる。1段階目の乳化重合において用いる重合開始剤は、過硫酸塩のみであってもよいし、過硫酸塩と上記有機酸化剤とを組み合わせて用い、過硫酸塩で重合を開始した後、上記有機酸化剤を上記有機還元剤と共に供給してもよい。
1段階目の乳化重合により得られる樹脂(コア層を形成する樹脂)のガラス転移温度は、50〜150℃が好ましく、より好ましくは70〜120℃である。上記ガラス転移温度が50℃以上であると、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションから形成される塗膜の吸水性が低下し、耐凍害性に優れる。また、耐ブロッキング性に優れる。上記ガラス転移温度が150℃以下であると、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションの造膜性により優れる。
1段階目の乳化重合におけるその他の重合条件の好ましい態様については、重合工程Aにおけるものと同様である。
1段階目が重合工程Bである場合、2段階目以降の各段階は、スチレン系単量体を20〜70質量%含有する単量体成分を乳化重合させる重合工程であることが好ましい。上記含有割合が20質量%以上であると、コアシェル構造におけるシェル層や、コア層とシェル層の間に形成される中間層を形成する樹脂中のスチレン系単量体に由来する構成単位の割合も比較的高く、シーラー性能により優れ、特に耐凍害性により優れる塗膜を形成することが可能な水性ポリマーを得ることができる。上記含有割合が70質量%以下であると、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションを用いて塗膜を形成する際の造膜性に優れる。
したがって、1段階目が重合工程Bである場合、2段階目以降の各段階における重合工程では、スチレン系単量体を20〜70質量%及び他の単量体を30〜80質量%含む単量体成分を乳化重合させることが好ましい。このため、スチレン系単量体と他の単量体をより均一に重合させる観点から、2段階目以降の各段階における重合工程は上記重合工程Aであることが好ましい。
1段階目が重合工程Bである場合、2段階目以降の各段階における重合工程で乳化重合させる他の単量体としては、上述の重合工程Aにおいて使用可能な他の単量体として例示されたものが挙げられ、中でも、アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシ基含有単量体、窒素原子含有単量体、カルボニル基含有単量体が好ましく、より好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートである。
1段階目が重合工程Bである場合、2段階目以降の各段階において、乳化重合により得られる樹脂(シェル層及び中間層を形成する樹脂)のガラス転移温度は、−40〜50℃が好ましく、より好ましくは−30〜40℃である。上記ガラス転移温度が−40℃以上であると、シーラー性能により優れ、特に耐凍害性により優れる塗膜を形成することができる。上記ガラス転移温度が50℃以下であると、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションの造膜性により優れる。
2段階目以降の各段階の乳化重合におけるその他の重合条件の好ましい態様については、重合工程Aにおけるものと同様である。
本発明の製造方法は、特に、単量体成分を乳化重合させる工程を3段階含むことが好ましい。これにより、コア層と、シェル層と、コア層とシェル層の間に位置する中間層を有する水性ポリマー粒子を製造することができる。なお、上記3段階のうちの少なくとも1つの段階における重合工程が上記重合工程Aである。コア層と中間層とシェル層とを有する三層構造の水性ポリマーは、コア層と中間層とシェル層でそれぞれ異なる機能に優れるよう設計することが可能であり、例えば、三層構造を有する水性ポリマーを含む樹脂エマルションを用いたシーラーは、単層構造あるいは二層構造を有する水性ポリマーを用いた場合と比較して、形成された塗膜の耐凍害性、耐透水性(耐吸水性)、さらに塗膜強度にもより一層優れる設計とすることが可能である。
上記3段階における1段階目は、スチレン系単量体を80〜100質量%含有する単量体成分を乳化重合させる重合工程(重合工程B)であることが好ましい。1段階目の重合工程の好ましい態様は、上述の通りである。特に、上記三層構造を有する水性ポリマーにおいては、単層構造あるいは二層構造の場合よりも各層の機能をより発揮できるように設計することができるため、単量体成分中のスチレン系単量体の割合をより高くした場合(例えば95質量%超)であっても、シーラー性能に優れつつ、塗膜強度をより高くすることが可能である。
上記3段階における2段階目は、乳化重合によりガラス転移温度−40〜0℃の樹脂層を形成する重合工程であることが好ましい。上記ガラス転移温度は、好ましくは−35〜−10℃である。上記ガラス転移温度が−40℃以上であると、シーラー性能により優れ、特に耐凍害性及び耐透水性(耐吸水性)により優れる塗膜を形成することができる。上記ガラス転移温度が0℃以下であると、中間層の柔軟性が向上し、冷熱サイクルに対する耐性に優れる。また、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションの伸びがよく塗布性に優れる。
上記3段階における2段階目は、スチレン系単量体を20〜40質量%含有する単量体成分を乳化重合させる重合工程であることが好ましい。上記含有割合が20質量%以上であると、シーラー性能により優れ、特に耐凍害性により優れる塗膜を形成することが可能な水性ポリマーを得ることができる。上記含有割合が40質量%以下であると、他の単量体を使用することにより中間層の柔軟性を向上させることができる。
上記3段階における2段階目の重合工程で乳化重合させる単量体成分は他の単量体を60〜80質量%含むことが好ましい。当該他の単量体としては、上述の重合工程Aにおいて使用可能な他の単量体として例示されたものが挙げられ、中でも、アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシ基含有単量体、窒素原子含有単量体が好ましく、より好ましくは、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリルである。このため、スチレン系単量体と他の単量体、特に、通常均一に重合させにくいスチレン系単量体とn−ブチル(メタ)アクリレートや2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートとをより均一に重合させる観点から、2段階目の重合工程は上記重合工程Aであることが好ましい。
上記3段階における3段階目は、乳化重合によりガラス転移温度0〜50℃の樹脂層を形成する重合工程であることが好ましい。上記ガラス転移温度は、好ましくは10〜40℃である。上記ガラス転移温度が0℃以上であると、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションを用いて形成される塗膜の耐ブロッキング性、樹脂エマルション中の分散安定性、及び樹脂エマルションにおける着色剤の混和安定性に優れる。上記ガラス転移温度が50℃以下であると、塗布対象に対する塗膜の密着性に優れる。
上記3段階における3段階目では、スチレン系単量体を40〜70質量%含有する単量体成分を乳化重合させることが好ましい。上記含有割合が40質量%以上であると、本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションを用いて形成される塗膜の耐ブロッキング性、樹脂エマルション中の分散安定性、及び樹脂エマルションにおける着色剤の混和安定性に優れる。上記含有割合が70質量%以下であると、他の単量体を使用することにより、塗布対象に対する塗膜の密着性を向上させることができる。
上記3段階における3段階目の重合工程で乳化重合させる単量体成分は他の単量体を30〜60質量%含むことが好ましい。当該他の単量体としては、上述の重合工程Aにおいて使用可能な他の単量体として例示されたものが挙げられ、中でも、アルキル(メタ)アクリレート、窒素原子含有単量体、カルボニル基含有単量体が好ましく、より好ましくは、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレートである。このため、スチレン系単量体と他の単量体をより均一に重合させる観点から、3段階目の重合工程は上記重合工程Aであることが好ましい。
2段階目及び3段階目の乳化重合におけるその他の重合条件の好ましい態様については、重合工程Aにおけるものと同様である。
本発明の水性ポリマー中の、1段階目の重合工程により形成される樹脂(コア層)の含有割合は、10〜50質量%が好ましく、より好ましくは25〜45質量%である。上記コア層の含有割合が10質量%以上(特に、25質量%以上)であると、耐凍害性、耐透水性(耐吸水性)、耐ブロッキング性、及び塗膜強度により優れる。また、2段階目の重合工程により形成される樹脂(中間層)の含有割合は、5〜40質量%が好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。上記中間層の含有割合が5質量%以上であると、水性ポリマーの柔軟性をより向上させることが可能となる。また、3段階目の重合工程により形成される樹脂(シェル層)の含有割合は、30〜60質量%が好ましく、より好ましくは35〜55質量%である。上記シェル層の含有割合が30質量%以上であると、樹脂エマルションを用いて形成される塗膜の耐ブロッキング性、樹脂エマルション中の分散安定性、及び樹脂エマルションにおける着色剤の混和安定性、及び塗布対象に対する塗膜の密着性により優れる。
以上のようにして、本発明の製造方法により、水性ポリマーを製造することができる。なお、本発明の水性ポリマーは乳化重合により製造して得られるため、本発明の製造方法により本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルション(「本発明の樹脂エマルション」と称する場合がある)の形態で得ることができる。
本発明の水性ポリマーは、平均粒子径が400nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下である。上記平均粒子径が400nm以下であると、樹脂エマルション中の分散安定性に優れる。なお、上記平均粒子径は、動的光散乱法による体積平均粒子径であり、粒子径測定装置(商品名「FPER−1000」、大塚電子(株)製)を用いて測定することができる。
本発明の製造方法が上述の単量体成分を乳化重合させる工程を3段階含む場合、本発明の製造方法により、スチレン系単量体に由来する構成単位を80〜100質量%含有する樹脂から形成されたコア層と、上記コア層を覆うように形成され、スチレン系単量体に由来する構成単位を20〜40質量%含有しガラス転移温度が−40〜0℃である樹脂から形成された中間層と、上記中間層を覆うように形成され、スチレン系単量体に由来する構成単位を40〜70質量%含有しガラス転移温度が0〜50℃である樹脂から形成されたシェル層と、を有し、スチレン系単量体に由来する構成単位の割合が50〜90質量%でありガラス転移温度が0〜50℃である、水性ポリマーを得ることができる。なお、上記コア層、上記中間層、及び上記シェル層の少なくとも1つを形成する樹脂が上記有機酸化剤に由来する構造部を有する。また、上記コア層は上記1段階目の重合工程により形成され、上記中間層は上記2段階目の重合工程により形成され、上記シェル層は上記3段階目の重合工程により形成される。
本発明の樹脂エマルションは、本発明の水性ポリマー以外に、必要により、例えば、pH緩衝剤、キレート剤、造膜助剤、顔料等の着色剤、増粘剤、滑剤、消泡剤等の添加剤を使用してもよい。添加剤の使用量は、添加剤の種類によって適宜決定される。また、本発明の樹脂エマルションは、乳化重合において使用したものの残留物(連鎖移動剤や重合開始剤等)を含んでいてもよい。
本発明の樹脂エマルションの不揮発分濃度(固形分)は、例えば10〜60質量%、好ましくは20〜50質量%である。上記含有割合が上記範囲内であると、塗布性に優れる。上記不揮発分濃度は、樹脂エマルション1gを秤量し、熱風乾燥機で110℃の温度で1時間乾燥させ、得られた残渣を不揮発成分とし、下記式により求められる。
[樹脂エマルションにおける不揮発分濃度(質量%)]=([残渣の質量]÷[樹脂エマルション1g])×100
本発明の製造方法により得られる樹脂エマルション中の残存モノマーの含有割合は、1000質量ppm未満であることが好ましく、より好ましくは500質量ppm未満である。上記含有割合が1000質量ppm未満であると、上記樹脂エマルションから形成される塗膜の耐凍害性により優れる。
本発明の樹脂エマルションの最低造膜温度(MFT)は、塗膜硬度を高める観点から、−5℃以上が好ましく、より好ましくは5℃以上、さらに好ましくは20℃以上である。また、造膜性を向上させる観点から、70℃以下が好ましく、より好ましくは65℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。なお、上記樹脂エマルションの最低造膜温度は、熱勾配試験機の上に置いたガラス板上に樹脂エマルションを厚さが0.2mmとなるようにアプリケーターで塗工して乾燥させ、クラックが生じたときの温度をいう。
本発明の樹脂エマルションのpHは、本発明の樹脂エマルションをシーラー用途に用いることが好ましい観点から、2〜11が好ましく、より好ましくは7〜10である。
本発明の樹脂エマルションの初期粘度は、本発明の樹脂エマルションをシーラー用途に用いることが好ましい観点及び加熱安定性に優れる観点から、1〜10000mPa・sが好ましく、より好ましくは10〜2000mPa・sである。上記初期粘度は、B型粘度計を用い、25℃、20rpmの条件で測定される。
本発明の水性ポリマー及び本発明の樹脂エマルションは、建築構造物(例えば、外壁、建築建材)の塗装に用いられる水系塗料に用いることができる。例えば、トップコート等の上塗り塗料に用いることができるし、シーラー等の下塗り塗料にも用いることができる。建築建材の中でも、無機質建材は、一般に、その内部に水が透しやすので、劣化しやすいという性質を有するため、無機質建材の表面および裏面には、一般に、シーラーと呼ばれている下塗り剤が塗布されている。特に、本発明の水性ポリマー及び本発明の樹脂エマルションは、シーラーに用いられることが好ましい。すなわち、本発明の樹脂エマルションは、シーラー用樹脂エマルションであることが好ましい。特に、窯業系建材等の無機質建材用シーラーとして有用である。
無機質建材としては、例えば、窯業系基材、金属系基材等が挙げられる。窯業系基材としては、例えば、瓦、外壁材等が挙げられる。窯業系基材は、無機質硬化体の原料となる水硬性膠着材に無機充填剤、繊維質材料等を添加し、得られた混合物を成形し、得られた成形体を養生し、硬化させることによって得られる。無機質建材としては、例えば、フレキシブルボード、珪酸カルシウム板、石膏スラグパーライト板、木片セメント板、プレキャストコンクリート板、ALC板、石膏ボード等が挙げられる。
本発明の樹脂エマルションを塗布して乾燥することにより塗膜を製造することができる。本発明の樹脂エマルションから形成される塗膜の、大気中で−20℃に冷却して2時間凍結させた後に20℃の水中に2時間浸漬する操作を1サイクルとして50サイクル行ったあとにおいて、クラックが発生している面積率が10%未満であることが好ましく、より好ましくは5%以下である。
本発明の樹脂エマルションから形成される塗膜の引張弾性率(塗膜のサイズ:5mm×80mm、引張速度:5mm/min)は、0.01N/m2以上が好ましく、より好ましくは0.1N/m2以上、さらに好ましくは0.15N/m2以上である。
本発明の樹脂エマルションから形成される塗膜は、室温に調温された脱イオン水に24時間浸した後の重量変化(塗膜のサイズ:30mm×30mm)が5%未満であることが好ましく、より好ましくは2%未満である。
本発明の製造方法は、特定の有機酸化剤及び特定の有機還元剤を用いてスチレン系単量体を含有する単量体成分を乳化重合させて、スチレン系単量体に由来する構成単位の割合が50〜90質量%でありガラス転移温度が0〜50℃である水性ポリマーを製造する方法であり、70〜100℃の温度条件下、有機還元剤の供給中の任意の時間tにおける有機酸化剤の有機還元剤に対する供給比が0.9以上となるように、単量体成分の供給中に有機還元剤を供給して単量体成分を乳化重合させる重合工程Aを含むことを特徴とする。シーラーとしての性能及びコストに優れる観点からスチレン系単量体が用いられることが考えられるが、従来の乳化重合の方法では、スチレン系単量体を50質量%以上もの多量に含む単量体成分を均一に重合させることは困難であった。例えば、乳化重合には通常無機系重合開始剤が使用されるが、無機系重合開始剤を用いてスチレン系単量体を高い割合で含む単量体成分を乳化重合させようとした場合、重合反応が遅れ、その結果、設計処方通りの組成のポリマーを得ることが困難であり、すなわち設計処方とは異なる組成のポリマーが得られ、目的とする性能を有するポリマーを得ることが極めて困難であった。これに対し、本発明の製造方法によれば、スチレン系単量体を高い割合で含む単量体成分を乳化重合させてもスチレン系単量体とその他の単量体を均一に重合させることができ、設計処方に極めて近いポリマーを得ることができると推測され、シーラー性能に優れ、特に耐凍害性に優れる塗膜を形成することが可能な水性ポリマーを得ることができる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において、特記しない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」をそれぞれ表す。
[実施例1]
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計、及び還流冷却管を備えたフラスコに、脱イオン水530部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水120部、乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−20」、(株)ADEKA製)の25%水溶液50部及びスチレン340部及びn−ブチルアクリレート10部からなる1段階目滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる量をフラスコに添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、過硫酸カリウム(KPS)の3.5%水溶液30部を添加して重合を開始した。80℃に到達した後、その温度を維持しながらプレエマルションの残部を滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持した。
引き続いて、脱イオン水60部、乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−20」、(株)ADEKA製)の25%水溶液15部、n−ブチルアクリレート115部、スチレン75部、アクリロニトリル10部、及びメタクリル酸3部からなる2段階目滴下用プレエマルションを調製し、80℃を維持しながらこのプレエマルションと共にt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)2.5%水溶液13部とアスコルビン酸の2.5%水溶液20部を60分にわたり均一に同時に滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持した。
引き続いて、脱イオン水130部、乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−20」、(株)ADEKA製」の25%水溶液45部、n−ブチルアクリレート145部、スチレン255部、アクリロニトリル20部、及びメタクリル酸メチル27部からなる3段階目滴下用プレエマルションを調製し、80℃を維持しながらこのプレエマルションと共にt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)2.5%水溶液20部とアスコルビン酸の2.5%水溶液30部を100分にわたり均一に同時に滴下した。滴下終了後、同温度で50分間維持した後、単量体成分を充分に反応させる目的でt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)5%水溶液10部と二酸化チオウレアの2.5%水溶液20部を滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持した後、25%アンモニア水を添加しpHを9.6に調整し重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、300メッシュの金網でろ過して水性ポリマーを含む樹脂エマルションを得た。
[実施例2]
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計、及び還流冷却管を備えたフラスコに、脱イオン水480部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水110部、乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−20」、(株)ADEKA製)の25%水溶液40部及びスチレン190部及びn−ブチルアクリレート10部からなる1段階目滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる量をフラスコに添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、過硫酸カリウム(KPS)の3.5%水溶液30部を添加し重合を開始した。80℃に到達した後、その温度を維持しながらプレエマルションの残部を滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持した。
引き続いて、脱イオン水110部、乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−20」、(株)ADEKA製)の25%水溶液30部n−ブチルアクリレート210部、スチレン125部、アクリロニトリル20部、及びメタクリル酸3部からなる2段階目滴下用プレエマルションを調製し、80℃を維持しながらこのプレエマルションと共にt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)2.5%水溶液13部とアスコルビン酸の2.5%水溶液20部を60分にわたり均一に同時に滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持した。
引き続いて、脱イオン水130部、乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−20」、(株)ADEKA製)の25%水溶液45部、n−ブチルアクリレート140部、スチレン255部、アクリロニトリル20部、及びメタクリル酸メチル27部からなる3段階目滴下用プレエマルションを調製し、80℃を維持しながらこのプレエマルションと共にt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)2.5%水溶液20部とアスコルビン酸の2.5%水溶液30部を100分にわたり均一に同時に滴下した。滴下終了後、同温度で50分間維持した後、単量体成分を充分に反応させる目的でt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)5%水溶液10部と二酸化チオウレアの2.5%水溶液20部を滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持した後、25%アンモニア水を添加しpHを9.6に調整し重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、300メッシュの金網でろ過して水性ポリマーを含む樹脂エマルションを得た。
[実施例3]
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計、及び還流冷却管を備えたフラスコに、脱イオン水480部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水365部、乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−20」、(株)ADEKA製)の25%水溶液105部、n−ブチルアクリレート275部、スチレン665部、アクリロニトリル30部、及びメタクリル酸メチル30部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる量をフラスコに添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、過硫酸カリウム(KPS)の3.5%水溶液30部を添加し重合を開始した。80℃に到達した後、その温度を維持しながら、プレエマルションの残部と共にt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)2.5%水溶液70部とアスコルビン酸の2.5%水溶液50部を220分にわたり均一に同時に滴下した。滴下終了後、同温度で50分間維持した後、単量体成分を充分に反応させる目的でt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)5%水溶液10部と二酸化チオウレアの2.5%水溶液20部を滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持した後、25%アンモニア水を添加しpHを9.6に調整し重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、300メッシュの金網でろ過して水性ポリマーを含む樹脂エマルションを得た。
[実施例4]
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計、及び還流冷却管を備えたフラスコに、脱イオン水480部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水365部、乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−20」、(株)ADEKA製)の25%水溶液105部、n−ブチルアクリレート275部、スチレン系単量体665部、アクリロニトリル30部、及びメタクリル酸メチル30部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる量をフラスコに添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、過硫酸カリウム(KPS)の3.5%水溶液30部とt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)2.5%水溶液70部を添加し重合を開始した。80℃に到達した後、その温度を維持しながらプレエマルションの残部と共にアスコルビン酸の2.5%水溶液50部を220分にわたり均一に同時に滴下した。滴下終了後、同温度で50分間維持した後、単量体成分を充分に反応させる目的でt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)5%水溶液10部と二酸化チオウレアの2.5%水溶液20部を滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持した後、25%アンモニア水を添加しpHを9.6に調整し重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、300メッシュの金網でろ過して水性ポリマーを含む樹脂エマルションを得た。なお、得られた樹脂エマルションの固形分は46質量%であり、樹脂エマルション中の水性ポリマーのスチレン含有量は67質量%、ガラス転移温度は37℃であった。
[比較例1]
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計、及び還流冷却管を備えたフラスコに、脱イオン水480部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水365部、乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−20」、(株)ADEKA製)の25%水溶液105部、n−ブチルアクリレート275部、スチレン665部、アクリロニトリル30部、及びメタクリル酸メチル30部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる量をフラスコに添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、過硫酸カリウム(KPS)の3.5%水溶液30部を添加し重合を開始した。80℃に到達した後、その温度を維持しながらプレエマルションの残部と共に過硫酸カリウム(KPS)2.5%水溶液70部と二亜硫酸ナトリウム(SMBS)2.5%水溶液50部を220分にわたり均一に同時に滴下した。滴下終了後、同温度で50分間維持した後、単量体成分を充分に反応させる目的でt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)5%水溶液10部と二酸化チオウレアの2.5%水溶液20部を滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持した後、25%アンモニア水を添加しpHを9.6に調整し重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、300メッシュの金網でろ過して水性ポリマーを含む樹脂エマルションを得た。
[比較例2]
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計、及び還流冷却管を備えたフラスコに、脱イオン水480部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水365部、乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−20」、(株)ADEKA製)の25%水溶液105部、n−ブチルアクリレート470部、スチレン450部、アクリロニトリル40部、及びメタクリル酸メチル40部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる量をフラスコに添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、過硫酸カリウム(KPS)の3.5%水溶液30部を添加し重合を開始した。80℃に到達した後、その温度を維持しながら、プレエマルションの残部と共に過硫酸カリウム(KPS)2.5%水溶液70部と二亜硫酸ナトリウム(SMBS)2.5%水溶液50部を220分にわたり均一に同時に滴下した。滴下終了後、同温度で50分間維持した後、単量体成分を充分に反応させる目的でt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)5%水溶液10部と二酸化チオウレアの2.5%水溶液20部を滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持した後、25%アンモニア水を添加しpHを9.6に調整し重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、300メッシュの金網でろ過して水性ポリマーを含む樹脂エマルションを得た。
[比較例3]
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計、及び還流冷却管を備えたフラスコに、脱イオン水480部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水365部、乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−20」、(株)ADEKA製)の25%水溶液105部、n−ブチルアクリレート470部、スチレン450部、アクリロニトリル40部、及びメタクリル酸メチル40部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる量をフラスコに添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、過硫酸カリウム(KPS)の3.5%水溶液30部を添加し重合を開始した。80℃に到達した後、その温度を維持しながら、プレエマルションの残部と共にt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)2.5%水溶液70部とアスコルビン酸の2.5%水溶液50部を220分にわたり均一に同時に滴下した。滴下終了後、同温度で50分間維持した後、単量体成分を充分に反応させる目的でt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)5%水溶液10部と二酸化チオウレアの2.5%水溶液20部を滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持した後、25%アンモニア水を添加しpHを9.6に調整し重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、300メッシュの金網でろ過して水性ポリマーを含む樹脂エマルションを得た。
[比較例4]
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計、及び還流冷却管を備えたフラスコに、脱イオン水480部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水365部、乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−20」、(株)ADEKA製)の25%水溶液105部、n−ブチルアクリレート275部、スチレン665部、アクリロニトリル30部、及びメタクリル酸メチル30部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる量をフラスコに添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら68℃まで昇温し、過硫酸カリウム(KPS)の3.5%水溶液30部を添加し重合を開始した。68℃に到達した後、その温度を維持しながら、プレエマルションの残部と共にt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)2.5%水溶液70部とアスコルビン酸の2.5%水溶液50部を220分にわたり均一に同時に滴下した。滴下終了後、同温度で50分間維持した後、単量体成分を充分に反応させる目的でt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)5%水溶液10部と二酸化チオウレアの2.5%水溶液20部を滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持した後、25%アンモニア水を添加しpHを9.6に調整し重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、300メッシュの金網でろ過して水性ポリマーを含む樹脂エマルションを得た。
[比較例5]
滴下ロート、攪拌機、窒素導入管、温度計、及び還流冷却管を備えたフラスコに、脱イオン水480部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水365部、乳化剤(商品名「アデカリアソープSR−20」、(株)ADEKA製)の25%水溶液105部、n−ブチルアクリレート275部、スチレン665部、アクリロニトリル30部、及びメタクリル酸メチル30部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の5%にあたる量をフラスコに添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、過硫酸カリウム(KPS)の3.5%水溶液30部を添加し重合を開始した。80℃に到達した後、t−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)2.5%水溶液70部とアスコルビン酸の2.5%水溶液50部を一度に添加した。添加後、80℃を維持しながらプレエマルションの残部を220分にわたり均一に滴下した。滴下終了後、同温度で50分間維持した後、単量体成分を充分に反応させる目的でt−ブチルヒドロキシペルオキシド(PBH)5%水溶液10部と二酸化チオウレアの2.5%水溶液20部を滴下した。滴下終了後、同温度で60分間維持した後、25%アンモニア水を添加しpHを9.6に調整し重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却後、300メッシュの金網でろ過して水性ポリマーを含む樹脂エマルションを得た。
実施例及び比較例で得られた各樹脂エマルションについて以下の通り評価した。評価結果を表に示した。
(1)pH
実施例及び比較例で得られた各樹脂エマルションについて、pHメーター(商品名「F−71」、(株)堀場製作所製)を用いて、25℃の温度条件で測定した。
(2)初期粘度
実施例及び比較例で得られた各樹脂エマルションについて、B型粘度計(商品名「VISCOMETER」、東機産業(株)製)を用いて、25℃、20rpmの条件で測定した。
(3)平均粒子径
実施例及び比較例で得られた各樹脂エマルションについて、粒子径測定装置(商品名「FPER−1000」、大塚電子(株)製)を用いて、動的光散乱法により水性ポリマーの体積平均粒子径を測定した。
(4)残存モノマー量
実施例及び比較例で得られた各樹脂エマルションについて、ガスクロマトグラフィー(商品名「GC−2014」、(株)島津製作所製)を用いて、残存するモノマー量を測定した。そして、残存モノマー量を以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
○:残存モノマー量が500質量ppm未満
△:残存モノマー量が500質量ppm以上1000質量ppm未満
×:残存モノマー量が1000質量ppm以上
(5)加熱安定性
(塗料の作製)
実施例及び比較例で得られた各樹脂エマルション100部をホモディスパーにより1000min-1で分散させながら、造膜助剤として2,2,4−トリメチル−1、3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名「CS−12」、JNC(株)製)を、その造膜温度が0〜5℃となるように上記樹脂エマルションに添加し、混合物を得た。
顔料ペーストの量がエマルション粒子と顔料ペーストの合計固形分の50%となるように、上記で得られた混合物に顔料(商品名「ユニラント77」、横浜化成(株)製、及び、商品名「NS#100」、日東粉化工業(株))を添加した。さらに不揮発分濃度が40%となるように適量の希釈水及び適量のシリコーン系消泡剤(商品名「SNデフォーマー777」、サンノプコ(株)製)を当該混合物に添加した後、BM型粘度計(東京計器(株)製)で回転速度30min-1における25℃での粘度が1000mPa・sとなるように増粘剤(商品名「アクリセットWR−517」、(株)日本触媒製)を当該混合物に添加し、回転速度1000min-1で30分間攪拌することにより、塗料を得た。
(評価)
上記塗料を密閉容器に入れ1日養生後、BM粘度計(商品名「TVB−10M」、東機産業製)を用いて回転数30rpmで粘度を測定し、初期粘度とした。次に密閉容器に入れた上記塗料を50℃で1ヶ月養生し、その後、上記BM粘度計を用いて回転数30rpmで粘度を測定した。そして、加熱安定性を以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
○:粘度変化率が20%未満
×:粘度変化率が20%以上
(6)耐凍害性
(塗料の作製)
実施例及び比較例で得られた各樹脂エマルション100部をホモディスパーにより1000min-1で分散させながら、造膜助剤として2,2,4−トリメチル−1、3−ペンタンジオールモノイソブチレート(商品名「CS−12」、JNC(株)製)を、その造膜温度が0〜5℃となるように上記樹脂エマルションに添加し、混合物を得た。
顔料ペーストの量がエマルション粒子と顔料ペーストの合計固形分の50%となるように、上記で得られた混合物に顔料(商品名「ユニラント77」、横浜化成(株)製、及び、商品名「NS#100」、日東粉化工業(株))を添加した。さらに不揮発分濃度が40%となるように適量の希釈水及び適量のシリコーン系消泡剤(商品名「SNデフォーマー777」、サンノプコ(株)製)を当該混合物に添加した後、BM型粘度計(東京計器(株)製)で回転速度30min-1における25℃での粘度が1000mPa・sとなるように増粘剤(商品名「アクリセットWR−517」、(株)日本触媒製)を当該混合物に添加し、回転速度1000min-1で30分間攪拌することにより、塗料を得た。
(試験片の作製)
スレート板(日本テストパネル(株)製、縦:70mm、横:150mm、厚さ:3mm)に上記塗料を4milのアプリケーターを用いて均一に塗布し、熱風乾燥機にて100℃で10分間乾燥させ凍害試験用の試験片となる塗膜を作製した。
(評価)
上記試験片を、大気中で−20℃に冷却して2時間凍結させた後に20℃の水中に2時間浸漬する操作を1サイクルとし、10サイクルごとに拡大倍率が30倍のルーペを用いて塗膜表面のクラックの発生状態を観察しながら上記操作を50サイクル行なった。そして、耐凍害性を以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
◎:50サイクル時点で外観の変化なし
○:50サイクル時点でクラックが全体の10%未満の面積率
×:50サイクル時点でクラックが全体の10%以上の面積率
(7)塗膜吸水率
(塗料の作製)
実施例及び比較例で得られた各樹脂エマルション100部に対し、成膜助剤として2,2,4−トリメチルー1,3−ペンタンジオールイソブチレート(商品名「CS−12」、JNC(株)製)とエチレングリコールモノブチルエーテルを等量で混合することによって得られた混合液15部を添加し、ホモディスパーで回転速度1000min-1にて10分間攪拌した後、消泡剤(商品名「SNデフォーマー777」、サンノプコ(株製)0.5部を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、塗料を作製した。
(試験片の作製)
剥離紙に各塗料を塗布し室温にて24時間乾燥させた後、80℃で3時間、120℃で3時間熱風乾燥行い、試験片となる塗膜(30mm×30mm)を作製した。
(評価)
上記試験片を剥離紙から剥離し、試験片を室温に調温された脱イオン水に浸し24時間後の重量変化を測定した。そして、塗膜吸水率を以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
◎:重量変化が2%未満
○:重量変化が2%以上5%未満
×:重量変化が5%以上
(8)塗膜強度
(塗料の作製)
実施例及び比較例で得られた各樹脂エマルション100部に対し、成膜助剤として2,2,4−トリメチルー1,3−ペンタンジオールイソブチレート(商品名「CS−12」、JNC(株)製)とエチレングリコールモノブチルエーテルを等量で混合することによって得られた混合液15部を添加し、ホモディスパーで回転速度1000min-1にて10分間攪拌した後、消泡剤(商品名「SNデフォーマー777」、サンノプコ(株)製)0.5部を添加し、その状態で30分間攪拌することにより、塗料を作製した。
(試験片の作製)
剥離紙に各塗料を塗布し室温にて24時間乾燥させた後、80℃で3時間、120℃で3時間熱風乾燥行い、試験片となる塗膜(5mm×80mm)を作製した。
(評価)
上記試験片を剥離紙から剥離し、試験片を20℃に調温された恒温ボックス内で3時間調温した後に引張試験機(商品名「オートグラフAGS−100D」、(株)島津製作所製)を用いて、初期標線間距離50mm、引張速度5mm/minの条件で引張試験を行った。そして、塗膜強度を以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
◎:0.15 N/m2以上
○:0.1 N/m2以上0.15 N/m2未満
△:0.01 N/m2以上0.1 N/m2未満
×:0.01 N/m2未満
Figure 2019119792
表1に示すように、本発明の製造方法により得られた本発明の水性ポリマーを含む樹脂エマルションは、残存モノマー量が少なく、加熱安定性に優れ、またこれから形成される塗膜は、耐凍害性、塗膜吸水率、及び塗膜強度に優れていた(実施例1〜3)。一方、重合開始剤として、上記有機酸化剤及び上記有機還元剤を用いず、過硫酸カリウム及び二亜硫酸ナトリウムを用いた場合(比較例1及び2)、水性ポリマー中のスチレンに由来する構成単位の割合が50質量%未満である場合(比較例2及び3)、単量体成分及び上記有機還元剤の供給時の温度が70℃未満である場合(比較例4)、並びに、単量体成分の供給中に上記有機還元剤を供給しなかった場合(比較例5)のいずれにおいても、実施例に対して塗膜の耐凍害性、塗膜吸水率、及び塗膜強度に劣っていた。また、実施例4で得られた樹脂エマルションから形成された塗膜は、比較例に対して耐凍害性及び塗膜吸水率が優れていた。

Claims (8)

  1. 下記有機酸化剤及び下記有機還元剤を用いてスチレン系単量体を含有する単量体成分を乳化重合させて、スチレン系単量体に由来する構成単位の割合が50〜90質量%でありガラス転移温度が0〜50℃である水性ポリマーを製造する方法であり、
    70〜100℃の温度条件下、下記式(1)で定義される、前記有機還元剤の供給中の任意の時間tにおける前記有機酸化剤の前記有機還元剤に対する供給比Xaが0.9以上となるように、前記単量体成分の供給中に前記有機還元剤を供給して前記単量体成分を乳化重合させる重合工程Aを含む、水性ポリマーの製造方法。
    有機酸化剤:水溶解度が室温で14g/100g以上、且つ10時間半減期温度が110℃以上
    有機還元剤:水溶解度が室温で14g/100g以上
    Xa=(a/A)/(b/B) (1)
    (式中、Aは前記有機酸化剤の全質量、Bは前記有機還元剤の全質量、aは任意の時間tにおいて既に供給された前記有機酸化剤の質量、bは任意の時間tにおいて既に供給された前記有機還元剤の質量をそれぞれ示す。)
  2. 平均粒子径が400nm以下である、請求項1に記載の水性ポリマーの製造方法。
  3. 単量体成分を乳化重合させる工程を多段階含み、前記多段階における1以上の段階が、スチレン系単量体を80〜100質量%含有する単量体成分を乳化重合させる重合工程である、請求項1又は2に記載の水性ポリマーの製造方法。
  4. 単量体成分を乳化重合させる工程を多段階含み、前記多段階における1段階目はスチレン系単量体を80〜100質量%含有する単量体成分を乳化重合させる重合工程であり、2段階目以降の各段階はスチレン系単量体を20〜70質量%含有する単量体成分を乳化重合させる重合工程であり、前記多段階のうちの少なくとも1つの段階における重合工程が前記重合工程Aである、請求項1又は2に記載の水性ポリマーの製造方法。
  5. 前記2段階目以降の各段階における重合工程においてガラス転移温度−40〜50℃の樹脂層を形成する、請求項4に記載の水性ポリマーの製造方法。
  6. 単量体成分を乳化重合させる重合工程を3段階含み、1段階目はスチレン系単量体を80〜100質量%含有する単量体成分を乳化重合させる重合工程であり、2段階目は乳化重合によりガラス転移温度−40〜0℃の樹脂層を形成する重合工程であり、3段階目は乳化重合によりガラス転移温度0〜50℃の樹脂層を形成する重合工程であり、前記3段階のうちの少なくとも1つの段階における重合工程が前記重合工程Aである、請求項1又は2に記載の水性ポリマーの製造方法。
  7. 重合開始時の単量体成分の乳化重合に過硫酸塩を重合開始剤として用いる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の水性ポリマーの製造方法。
  8. スチレン系単量体に由来する構成単位を80〜100質量%含有する樹脂から形成されたコア層と、前記コア層を覆うように形成され、スチレン系単量体に由来する構成単位を20〜40質量%含有しガラス転移温度が−40〜0℃である樹脂から形成された中間層と、前記中間層を覆うように形成され、スチレン系単量体に由来する構成単位を40〜70質量%含有しガラス転移温度が0〜50℃である樹脂から形成されたシェル層と、を有し、スチレン系単量体に由来する構成単位の割合が50〜90質量%でありガラス転移温度が0〜50℃である、水性ポリマー。
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