JP2019119778A - ボールペン用水性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペン - Google Patents

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Abstract

【課題】筆跡乾燥性を向上させることができるとともに、顔料を用いた場合であっても顔料の凝集や沈降を生じることなく長期に亘って良好な筆跡を形成できる、インキ安定性能と筆記・筆跡性能に優れたボールペン用水性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンを提供する。【解決手段】顔料と、水と、水溶性有機溶剤と、下記一般式(1)で示すリン酸化合物と、重量平均分子量が300〜120000の範囲にある糖類を少なくとも含有するボールペン用水性インキ組成物。前記ボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペン。〔式(1)中、Rは炭素数12〜18であるアルキル基であり、a及びbは付加モル数を示す整数である。エチレンオキサイドの付加モル数を示すaは、3〜20の範囲、プロピレンオキサイドの付加モル数を示すbは、1〜20の範囲である。〕【選択図】なし

Description

本発明はボールペン用水性インキ組成物に関する。更には、筆跡乾燥性に優れ、顔料凝集を生じることなく高い筆記性能を長期的に維持できるボールペン用水性インキ組成物及びそれを内蔵したボールペンに関する。
従来、油性インキに比べて筆跡が乾き難い水性インキを内蔵したボールペンにおいては、筆跡乾燥性を向上するために水溶性の添加剤を用いたり、物性や構造等、種々の条件を特定した有機溶剤が添加され、実用に供される。
これらの具体例として、特許文献1、2のような技術が開示されている。
特開2001−271020号公報 特許第5578970号公報
前記文献1では、ブチルセロソルブやブチルカルビトールが適用されるものであるが、少量の添加では筆跡の乾燥効果が低く、添加量を増やすことで顔料が凝集する傾向にあるため、着色剤として顔料を用いた際には適用し難いものである。
前記文献2は、有機溶剤の物性によって筆跡乾燥性を向上させる試みであり、SP値が20〜30MPa1/2の範囲のアルコールやグリコールエーテルが適用されるとともに、ポリオキシエチレンステロール系活性剤を顔料分散剤として併用する技術である。これは、前記SP値のアルコールやグリコールエーテルを適用した際に着色剤として顔料を用いた場合、顔料の凝集や沈降が生じ易くなるため、ポリオキシエチレンステロール系活性剤を必須とするものである。しかしながら、前記活性剤をインキ中で安定化させるために、インキ組成の組合せが限定され、使用制限が大きくなってしまう。そのため、前記SP値のアルコールやグリコールエーテルのみを顔料インキに適用した場合、顔料が凝集することでボールの回転に伴うインキ吐出時に、大粒子が吐出されて筆記感が損なわれたり、凝集具合が酷いと沈降してインキ吐出を阻害して筆記性能の低下や筆記不良をきたす虞があった。また、顔料凝集により筆跡の色調が悪くなり、顔料の利点である発色性が低下してしまう虞があった。
本発明は、筆跡乾燥性を向上させることができるとともに、顔料を用いた場合であっても顔料の凝集や沈降を生じることなく長期に亘って良好な筆跡を形成できる、インキ安定性能と筆記・筆跡性能に優れたボールペン用水性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンを提供するものである。
本発明のボールペン用水性インキ組成物は、顔料と、水と、水溶性有機溶剤と、下記一般式(1)で示すリン酸化合物と、重量平均分子量が300〜120000の範囲にある糖類を少なくとも含有することを要件とする。
Figure 2019119778
〔式(1)中、Rは炭素数12〜18であるアルキル基であり、a及びbは付加モル数を示す整数である。エチレンオキサイドの付加モル数を示すaは、3〜20の範囲、プロピレンオキサイドの付加モル数を示すbは、1〜20の範囲である。〕
更に、前記水溶性有機溶剤の溶解度パラメータが、8〜12(cal/cm1/2の範囲にあること、前記リン酸化合物が、0.01〜10質量%の範囲で添加されること、前記糖類が、1〜10質量%の範囲で添加されることを要件とする。
更には、前記いずれかに記載のボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペンを要件とする。
本発明により、有機溶剤によって筆跡の浸透性と蒸発性をコントロールして筆跡乾燥性を向上させるとともに、特定のリン酸化合物と糖類を併用することで、有機溶剤の使用で生じる顔料の凝集沈降を抑制しつつ良好な筆記感が付与できるため、速乾性に優れ、かすれや濃淡等のない均一で良好な筆跡が高い筆記感で得られる筆記性能に優れたボールペン用水性インキ組成物とそれを内蔵したボールペンとなる。
本発明は、着色剤として顔料を用いたボールペン用水性インキ組成物に、水溶性有機溶剤と、特定のリン酸化合物と糖類を用いることで、筆跡に速乾性を付与して筆記直後に筆跡に接触した際に生じていたインキ汚れを防止するとともに、顔料凝集を抑制して良好な筆跡を、高い筆記感で得ることが可能な水性インキ組成物を形成するものである。
前記顔料としては、カーボンブラック、群青などの無機顔料や銅フタロシアニンブルー、ベンジジンイエロー等の有機顔料の他、予め界面活性剤等を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等が用いられ、例えば、C.I.Pigment Blue 15:3B〔品名:S.S.Blue GLL、顔料分22%、山陽色素株式会社製〕、C.I.Pigment Red 146〔品名:S.S.Pink FBL、顔料分21.5%、山陽色素株式会社製〕、C.I.Pigment Yellow 81〔品名:TC Yellow FG、顔料分約30%、大日精化工業株式会社製〕、C.I.Pigment Red220/166〔品名:TC Red FG、顔料分約35%、大日精化工業株式会社製〕等を挙げることができる。
蛍光顔料としては、各種蛍光性染料を樹脂マトリックス中に固溶体化した合成樹脂微細粒子状の蛍光顔料が使用できる。
その他、パール顔料、金色、銀色のメタリック顔料、蓄光性顔料、修正ペン等に用いられる二酸化チタン等の白色顔料、アルミニウム等の金属粉、更には熱変色性組成物、光変色性組成物、香料等を直接又はマイクロカプセル化したカプセル顔料等を例示できる。
前記熱変色性組成物としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物が好適であり、マイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料として適用される。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる。
更に、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている比較的大きなヒステリシス特性(ΔH=8〜50℃)を示すものや、特開2006−137886号公報、特開2006−188660号公報、特開2008−45062号公報、特開2008−280523号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度以上の高温域での消色状態が、特定温度域で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包させ加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる。
尚、前記水性インキに適用される色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50〜95℃、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃の範囲に特定し、ΔH値を40〜100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
更に、必要に応じて顔料分散剤を添加できる。前記顔料分散剤としてはアニオン、ノニオン等の界面活性剤、ポリアクリル酸、スチレンアクリル酸等のアニオン性高分子、PVP、PVA等の非イオン性高分子等が用いられる。
また、前記顔料とともに、水性媒体に溶解可能な染料を併用することも可能である。
前記染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料等が適用でき、汎用のものを選択して使用することができる。
前記顔料を含む着色剤は一種又は二種以上を適宜混合して使用することができ、インキ組成中1〜25質量%、好ましくは2〜15質量%の範囲で用いられる。
前記水溶性有機溶剤は、水に相溶性のある従来汎用のものが適宜適用され、筆跡乾燥性を向上する。
特に本発明では、有機溶剤の物性によって筆跡の浸透性と蒸発性をコントロールして筆跡乾燥性を向上させるために、溶解度パラメータ〔SP値:(cal/cm1/2〕が8以上12未満の範囲にあるものが好適に用いられる。
溶解度パラメータ〔SP値:(cal/cm1/2〕が8以上12未満である水溶性有機溶剤は、筆跡の紙面に対する浸透性を向上させることで、筆跡の蒸発乾燥性も向上できるものである。特に、8.5〜10.5のものは効果が高く、より好適である。
JIS P3201に規定される筆記用紙A等の汎用の浸透性用紙は、通常、塗布されたインキの滲みを抑制するために添加剤が配合されており、この添加剤のSP値と、本発明範囲のSP値が近似するため、浸透効果が高くなると推測される。その結果、紙面に残る溶剤量も少なくなるため、残量の蒸発速度が早まることから、浸透、蒸発を利用して効果的な筆跡乾燥性が得られる。
前記範囲を外れるものは、インキ吐出量が多い場合に速乾性が得られず、筆記直後に筆跡に指先等が接触した際にインキが付着して紙面を汚す虞がある。尚、本発明では、HansenのSP値を用いる。
前記SP値の水溶性有機溶剤は、水性インキ組成物中に0.5〜20質量%、好ましくは1〜15質量%の範囲で配合されることで特に高い効果が発現されるためより好ましい。
前記SP値の水溶性有機溶剤としては水溶性を有するものであればいずれの汎用溶剤も適用できるが、特に速乾効果が高いことからグリコールエーテルやアルコールが好適である。
具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値10.2)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(SP値9.4)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値9.1)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値11.2)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値9.1)、エチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル(SP値9.0)、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテル(SP値9.2)、エチレングリコールイソプロピルエーテル(SP値9.2)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値9.5)、2−エチルヘキサノール(SP値9.5)、3−メトキシ−3−メチルブタノール(SP値9.3)、ヘキシレングリコール(SP値10.5)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値10.7)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値11.2)、フェニルグリコール(SP値11.5)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(SP値9.4)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(SP値8.9)、トリエチレングリコールモノブチルメチルエーテル(SP値8.9)、ブチルセロソルブ(SP値9.5)等が例示できる。
尚、本発明における水溶性とは、20℃における水100gへの溶解度が10g以上である。
更に、前記SP値の溶剤を主溶剤とし、従来汎用の水溶性有機溶剤を補助溶剤として用いることもでき、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、チオジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオプレングリコール、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。
重量平均分子量が300以上120000以下の糖類は、顔料インキに前記SP値の有機溶剤を用いた際に生じる顔料凝集を抑制することができるため、安定したインキ吐出性を維持してかすれや線飛びのない筆跡を形成するために必須な材料であり、二糖類、オリゴ糖類、還元糖類、還元水飴、非還元糖類、還元澱粉分解物、およびこれらの混合物などが使用できる。これらのうち、特に還元水飴が好ましい。尚、重量平均分子量が120000を超える糖類、例えば、キサンタンガムなどの増粘多糖類などを使用した場合には、その増粘作用により剪断減粘性を付与できるものの、顔料の凝集を抑制する能力はないため、重量平均分子量120000以下という条件が有効なものとなる。
前記還元水飴は、糖類がもつカルボニル基を還元する等して得られる鎖状多価アルコールの総称であり、本発明においては、重量平均分子量が300以上3000以下のものが還元水飴として適用される。特に、還元水飴の標準糖組成の4糖以上の比率が4〜100%のものがより好ましい。
前記糖類は特に限定されることなく汎用の添加剤と同等の添加量で用いられるが、インキ組成物全量中1〜10質量%の範囲であることが好ましく、1〜8質量%の範囲で添加されることがより好ましい。前記範囲においては特に高い効果が発現できる。
前記一般式(1)で示すリン酸化合物(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルリン酸)は、水性インキ中に添加することで高い潤滑性を発現し、重量平均分子量が300〜120000の範囲にある糖類と併用することで、顔料が凝集することを抑制できるものであり、ボールペンに適用することで滑らかな筆感と良好な筆跡が得られるものとなる。
一般式(1)において、Rはアルキル基であり、炭素数12〜18である置換基、例えば、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、セチル基、ステアリル基、オレイル基等が適用できる。中でも、汎用性が高く、少量の添加で効果を発現できる点から、ミリスチル基、セチル基、オレイル基が特に好ましい。
また、a及びbは付加モル数を示す整数であり、エチレンオキサイドの付加モル数を示すaは、3〜20の範囲が好ましく、より好ましくは5〜15の範囲である。プロピレンオキサイドの付加モル数を示すbは、1〜20の範囲が好ましく、より好ましくは3〜8の範囲である。これらの範囲内の付加モル数のものは、潤滑効果が高いため好適に用いられる。
尚、前記一般式(1)において、具体的には、aが10、bが5、Rがセチル基の組み合わせ、aが5〜8、bが2、Rがミリスチル基の組み合わせ、aが5〜8、bが2、Rがオレイル基の組み合わせが特に好ましい。
また、インキ中に添加する際には、アルカリ金属塩やアミン塩として適用することもできる。
前記リン酸化合物の添加量としては、インキ組成物全量中0.01〜10質量%の範囲、好ましくは0.1〜8質量%の範囲で添加することができる。
0.01質量%未満では所望の凝集抑制効果と潤滑効果が得られ難く、また、10質量%を越えて配合しても効果の向上は見られないため、これ以上の添加は要さない。
更に、紙面への固着性や粘性を付与するために水溶性樹脂を添加することが好ましい。前記水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられる。前記水溶性樹脂は一種又は二種以上を併用することができ、インキ組成中1〜30質量%の範囲で用いられる。
また、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイド付加型カチオン活性剤、リン酸エステル系界面活性剤、チオカルバミン酸塩、ジメチルジチオカルバミン酸塩、N−アシルアミノ酸、N−アシルメチルタウリン、金属石鹸等、汎用の潤滑剤を併用することもできる。
その他、必要に応じて、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2−ベンズチアゾリン3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ぶどう糖、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を使用してもよい。
更に、アスコルビン酸類、エリソルビン酸類、α−トコフェロール、カテキン類、合成ポリフェノール、コウジ酸、アルキルヒドロキシルアミン、オキシム誘導体、α−グルコシルルチン、α−リポ酸、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜硫酸塩、スルホキシル酸塩、亜ジチオン酸塩、チオ硫酸塩、二酸化チオ尿素等を添加して化学的に気泡を除去することもできる。
また、N−ビニル−2−ピロリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピペリドンのオリゴマー、N−ビニル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、N−ビニル−ε−カプロラクタムのオリゴマー等の増粘抑制剤を添加することで、出没式形態での機能を高めることもできる。
また、インキ組成物中に剪断減粘性付与剤を添加することもできる。
前記剪断減粘性付与剤としては、水に可溶乃至分散性の物質が効果的であり、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する炭水化物、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、ポリN−ビニルカルボン酸アミド、無機質微粒子、HLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキルスルホコハク酸の金属塩やアミン塩等を例示でき、更には、インキ組成物中にN−アルキル−2−ピロリドンとアニオン系界面活性剤を併用して添加しても安定した剪断減粘性を付与できる。
前記構成からなるインキ組成物の粘性特性としては、高剪断減粘性の所謂ゲルインキや、インキ保溜部材等を用いる際に適用される低粘度、低剪断減粘性の所謂ニュートニアンインキ(剪断減粘性付与剤を含まないインキ)等いずれであってもよい。
前記ボールペン用水性インキ組成物を充填するボールペンの構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、ペン先(ボールペンチップ)にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材をペン先との間に介在させる構造、ペン先を直接又は接続部材を介して連結した軸筒にインキとインキ逆流防止体(液栓)を収容した構造、インキ収容管にインキとインキ逆流防止体を収容したボールペンレフィルを外軸内に収容した構造等を例示でき、キャップ式、出没式のいずれを用いることもできる。尚、出没式としては、前記レフィルを複数本収容する形態であってもよい。
前記ボールペンレフィルに適用されるインキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、α−オレフィンオリゴマー、シリコーン油、精製鉱油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、脂肪酸アマイド等を添加することもできる。また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。前記液状及び固体のインキ逆流防止体は併用することも可能である。
前記ボールペンの筆記先端部(チップ)の構造は、従来汎用の機構が有効であり、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属製のパイプや金属材料の切削加工により形成したチップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
また、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック等からなる汎用のものが適用でき、直径0.15mm〜2.0mm、好ましくは0.18mm〜1.0mmの範囲のものが好適に用いられる。
前記水性インキ組成物を収容する軸筒、インキカートッリッジ、インキ収容管(レフィルパイプ)は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネート、ABS等の熱可塑性樹脂からなる成形体や金属加工体がインキの低蒸発性、生産性の面で好適に用いられる。
特に、前記軸筒、インキカートッリッジ、インキ収容管の一部又は全体が透明性を有する樹脂で構成された場合、内部が視認できるため、インキの残量や色相が確認できるものとなる。尚、前記透明性とは着色透明、半透明、着色半透明を含む。
前記軸筒にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記軸筒とチップを連結してもよい。
前記軸筒内に収容されるインキ組成物は、インキ組成物が低粘度である場合は軸筒前部にインキ保留部材を装着し、軸筒内に直接インキ組成物を収容する方法や、多孔質体或いは繊維加工体(外皮により被覆された繊維束など)等のインキ吸蔵体に前記インキ組成物を含浸させて収容する方法が挙げられる。
また、軸筒内にインキを直接内蔵する形態をとらず、インキカートリッジやインキ収容管等のインキ収容体とした場合や、前記インキ吸蔵体にインキを充填し、外軸内に収容する形態をとる場合、これらのインキ収容体やインキ吸蔵体を交換可能な構造とすることもできる。
以下に実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の表に実施例及び比較例のボールペン用水性インキの組成を示す。尚、表中の数値は質量部を示す。
Figure 2019119778
表中の原料の内容について注番号に沿って説明する。
(1)山陽色素(株)製、商品名:SS BLUE GLL−E
(2)冨士色素(株)製、商品名:SPブラック8922
(3)(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン4.5部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.5部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料〔T:−20℃、T:−9℃、T:40℃、T:57℃、ΔH:63℃、平均粒子径:2.5μm(コールター法)、黒色から無色に色変化する〕
(4)POP(5)POE(10)セチルエーテルリン酸
(5)POP(2)POE(5)ミリスチルエーテルリン酸
(6)POP(2)POE(8)オレイルエーテルリン酸
(7)POE(9)ラウリルエーテルリン酸
(8)重量平均分子量30000の糖類、三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック70
(9)重量平均分子量17000の糖類、三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック100
(10)重量平均分子量2013の還元水飴、三菱商事フードテック(株)製、商品名:PO−10
(11)重量平均分子量100000の糖類、三和澱粉工業(株)製、商品名:サンデック30
(12)重量平均分子量1230の還元水飴、三菱商事フードテック(株)製、商品名:PO−20
(13)重量平均分子量332の糖アルコール、三菱商事フードテック(株)製、商品名:アマミール
(14)ソルビトール、重量平均分子量182の糖アルコール
(15)重量平均分子量200万の多糖類
(16)プロピレングリコール−n−プロピルエーテル(SP値:9.4)
(17)2−メチルペンタン−1,3−ジオール(SP値:10.3)
(18)ジエチレングリコールエチルメチルエーテル(SP値8.9)
(19)ブチルセロソルブ(SP値9.5)
インキの調製
水に各成分を添加して、20℃で、ディスパーにて400rpm、1時間攪拌し、濾過することで各インキを調製した。
ボールペンの作製
前記実施例及び比較例のインキ組成物各2.0gを軸筒内部に直接収容し、櫛溝状のインキ流量調節部材を介在させてなる、直径0.5mmの超硬合金製ボールを抱持するステンレススチール製切削チップを組み付けた後、キャップを装着することで試料ボールペンを作製した。
尚、実施例3及び比較例3のインキは、前記チップがポリプロピレン製パイプの一端に嵌着されたレフィルに充填し、その後端にポリブテンと脂肪酸アマイドからなるインキ逆流防止体を配設することでボールペンレフィルを作製し、更に、そのボールペンレフィルを軸筒(後端ノック式)に組み込むことで、試料ボールペンを作製した。
前記試料ボールペンとインキ組成物を用いて以下の試験を行った。尚、いずれの筆跡も速乾性を有しており、筆記直後に接触しても汚れを生じなかった。
筆記試験
筆記可能であることを確認した試料ボールペンを、50℃の環境下に30日間放置した後、自動筆記試験機にて、JIS P3201筆記用紙Aに螺旋状の丸を連続筆記し、充填されるインキが完全に消費できるかどうか確認した。尚、前記試験機は、筆記荷重50g、筆記角度70°、筆記速度4m/分の条件で使用した。
インキ安定性試験
各インキ組成物をガラス瓶に封入し、50℃の環境下に30日間放置した。その後、室温にて内部のインキの状態を目視により確認した。
前記各試験の結果を以下の表に示す。
Figure 2019119778
尚、試験結果の評価は以下の通りである。
筆記試験
○:最後まで均一な筆跡で書き切りができた。
△:かすれや線飛びが見られる。
×:書き切り不能。
インキ安定性試験
○:異常なし。
△:若干の凝集が見られる。
×:多量の凝集が見られる。

Claims (5)

  1. 顔料と、水と、水溶性有機溶剤と、下記一般式(1)で示すリン酸化合物と、重量平均分子量が300〜120000の範囲にある糖類を少なくとも含有するボールペン用水性インキ組成物。
    Figure 2019119778
    〔式(1)中、Rは炭素数12〜18であるアルキル基であり、a及びbは付加モル数を示す整数である。エチレンオキサイドの付加モル数を示すaは、3〜20の範囲、プロピレンオキサイドの付加モル数を示すbは、1〜20の範囲である。〕
  2. 前記水溶性有機溶剤の溶解度パラメータが、8〜12(cal/cm1/2の範囲にある請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
  3. 前記リン酸化合物が、0.01〜10質量%の範囲で添加される請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
  4. 前記糖類が、1〜10質量%の範囲で添加される請求項1記載のボールペン用水性インキ組成物。
  5. 前記請求項1乃至4のいずれかに記載のボールペン用水性インキ組成物を内蔵したボールペン。
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