JP2019119423A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物のフィルムを備えた空気入りタイヤにおいて、そのフィルムのスプライス部での故障の発生を防止し、耐久性を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供する。【解決手段】熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムLを有し、フィルムLのタイヤ周方向の端部同士が重ならずに突き合わされて配置され、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムTとフィルムTの両側に積層されたゴム層3とからなる積層体2がフィルムLのタイヤ周方向の一方の端部におけるタイヤ内腔側の位置Paから他方の端部におけるタイヤ外側の位置Pbに架け渡されることでフィルムLのスプライス部1が形成される。【選択図】図2
Description
本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物のフィルムを備えた空気入りタイヤにおいて、そのフィルムのスプライス部での故障の発生を防止し、耐久性を改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとからなる熱可塑性エラストマー組成物で形成されたフィルムをインナーライナー層などのタイヤ構成部材として使用することが提案されている。このようなフィルムをタイヤ製造工程に供し、そのタイヤ周方向の端部同士を重ね合わせることでラップスプライス部を形成することが行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、厚さが厚いフィルムを用いてラップスプライス部を形成した場合には、ユニフォーミティーが悪化し易く、加硫故障が発生し易いという問題がある。
また、上述のようなフィルムをタイヤ製造工程に供し、そのタイヤ周方向の端部同士を突き合わせ、その突き合せた端部間を跨ぐようにしてスプライステープを貼り付けてスプライス部を形成することが行われている(例えば、特許文献4,5参照)。しかしながら、厚さが厚いフィルムを用いてスプライステープによるスプライス部を形成した場合、厚いフィルムは剛性が高くなるので、スプライス部の故障が発生し易いという問題がある。特に、バス、トラック用等の重荷重用空気入りタイヤでは空気圧が高いのでスプライス部の故障が生じ易くなる。
本発明の目的は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物のフィルムを備えた空気入りタイヤにおいて、そのフィルムのスプライス部での故障の発生を防止し、耐久性を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための空気入りタイヤは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムLを有し、該フィルムLのタイヤ周方向の端部同士が重ならずに突き合わされて配置され、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムTと該フィルムTの両側に積層されたゴム層とからなる積層体が前記フィルムLのタイヤ周方向の一方の端部におけるタイヤ内腔側の位置から他方の端部におけるタイヤ外側の位置に架け渡されることで前記フィルムLのスプライス部が形成されていることを特徴とするものである。
本発明では、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムLを有し、フィルムLのタイヤ周方向の端部同士が重ならずに突き合わされて配置され、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムTと該フィルムTの両側に積層されたゴム層とからなる積層体がフィルムLのタイヤ周方向の一方の端部におけるタイヤ内腔側の位置から他方の端部におけるタイヤ外側の位置に架け渡されることでフィルムLのスプライス部が形成されているので、フィルムLのタイヤ周方向の両端部とフィルムTの両側に積層されたゴム層とが互いに接着し、スプライス部における接着性を向上させることができる。また、フィルムLに対してタイヤ周方向(引張方向)に歪みが発生した場合、フィルムTが変形して歪みを緩和する作用があるため耐久性の改善に寄与する。これにより、スプライス部の故障の発生を防止し、耐久性を改善することができる。そのため、バス、トラック用等の重荷重用空気入りタイヤにおいても、スプライス部の故障の発生を防止し、耐久性を効果的に改善することができる。
本発明では、フィルムLの平均厚さGL[mm]と、フィルムLの20%伸長時のモジュラスML[MPa]と、フィルムTの平均厚さGT[mm]と、フィルムTの20%伸長時のモジュラスMT[MPa]とは下記式(1)を満たすことが好ましい。これにより、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。
0.5≦GT×MT/(GL×ML)≦2.0 (1)
0.5≦GT×MT/(GL×ML)≦2.0 (1)
本発明では、フィルムLの平均厚さGLは0.01mm〜0.50mmであることが好ましい。これにより、成形時の不具合を抑制し、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。
本発明では、フィルムLの平均厚さGL[mm]とタイヤの最大空気圧P[kPa]とはP/20×10-3≦GL≦P/2×10-3の関係を満たすことが好ましい。これにより、スプライス部の故障を効果的に抑制することができる。
本発明では、フィルムLの20%伸長時のモジュラスMLは2.0MPa〜20.0MPaであることが好ましい。これにより、フィルムの成形時における過度な伸びや不均一な膨張を抑制することができる。
本発明では、フィルムTの平均厚さGTは0.01mm〜0.50mmであることが好ましい。これにより、成形時の不具合を抑制し、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。
本発明では、フィルムTの20%伸長時のモジュラスMTは2.0MPa〜20.0MPaであることが好ましい。これにより、成形時の不具合を抑制し、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。
本発明では、フィルムTの両側に積層されたゴム層のそれぞれの厚さは0.05mm〜0.50mmであることが好ましい。これにより、成形時の不具合を抑制し、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。
本発明では、フィルムLの少なくとも片側にゴム層が積層されていることが好ましい。これにより、成形時の不具合を抑制することができる。
本発明では、フィルムLとフィルムTの間に層間ゴム層が介在し、スプライス部におけるフィルムLとフィルムTのタイヤ周方向のラップ長さD[mm]と、フィルムLの平均厚さGL[mm]と、フィルムLの20%伸長時のモジュラスML[MPa]と、フィルムTの平均厚さGT[mm]と、フィルムTの20%伸長時のモジュラスMT[MPa]と、層間ゴム層の厚さGg[mm]と、層間ゴム層の20%伸長時のモジュラスMg[MPa]とは下記式(2)を満たすことが好ましい。これにより、スプライス部での故障の発生を防止し、耐久性を効果的に改善することができる。
D≧0.25×(GT×MT+GL×ML)/(Gg×Mg) (2)
D≧0.25×(GT×MT+GL×ML)/(Gg×Mg) (2)
本発明では、フィルムTのタイヤ周方向の長さはタイヤ周長の1/18以下であることが好ましい。これにより、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。
本発明では、フィルムTの両側に積層されたゴム層のタイヤ周方向の端部はフィルムTのタイヤ周方向の端部よりもタイヤ周方向に長いことが好ましい。これにより、成形時の不具合を抑制することができる。
本発明では、フィルムTはフィルムLの両端部間でタイヤ径方向に対して傾斜しており、その傾斜角度αは10°≦α≦80°の関係を満たすことが好ましい。これにより、タイヤが撓んだ際にフィルムTにかかる歪みが軽減され、耐久性を改善することができる。
本発明では、フィルムLのタイヤ周方向の両端面はタイヤ径方向に対して同一方向に傾斜しており、その傾斜角度βは10°≦β≦80°の関係を満たすことが好ましい。これにより、タイヤが撓んだ際にフィルムLにかかる歪みが軽減され、耐久性を改善することができる。
本発明では、フィルムLのタイヤ周方向の両端縁はタイヤ周方向に対して傾斜しており、その傾斜角度θは60°≦θ≦80°の関係を満たすことが好ましい。これにより、タイヤが撓んだ際にフィルムLにかかる歪みが軽減され、耐久性を改善することができる。また、ユニフォーミティーを効果的に改善することができる。
本発明では、スプライス部において上記積層体が架け渡された部材の厚さは1.0mm以上であることが好ましい。これにより、耐久性を効果的に改善することができる。
本発明では、フィルムLとフィルムTはタイヤ最内面に配置されていることが好ましい。上記フィルムL及びフィルムTをタイヤ最内面に配置することで、優れた空気透過防止性能を得ることができる。
本発明において、フィルムL、フィルムT及び層間ゴム層の20%伸長時のモジュラス[MPa]は、JIS K−6251:2010に準拠して測定されるものである。即ち、加硫済みの空気入りタイヤからフィルム及び層間ゴム層を採取する、或いは、加硫相当の熱履歴を与えたフィルム及び層間ゴム層を作製する。このように採取又は作製したフィルム及び層間ゴム層のそれぞれについて、JIS3号ダンベル型の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分、温度20℃の条件下で引張試験を行い、20%伸長時における引張応力を測定した値である。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例を示すものである。図2は本発明の空気入りタイヤのフィルムLにおけるスプライス部の実施形態の一例を示すものである。なお、図1,2において、矢印Tcはタイヤ周方向、矢印Twはタイヤ幅方向、Trはタイヤ径方向を示している。図2において、図の上方がタイヤ外側(タイヤ外表面側)であり、下方がタイヤ内腔側を示している。
図1に示す空気入りタイヤには、トレッド部11の左右にサイドウォール部12とビード部13が連接するように設けられている。そのタイヤ内側には、タイヤの骨格たるカーカス層14が、タイヤ幅方向に左右のビード部13間に跨るように設けられており、各ビード部13に配置されたビードコア16の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。トレッド部11に対応するカーカス層14の外周側にはスチールコードからなる2層のベルト層15が設けられている。カーカス層14の内側には、インナーライナー層10が配され、そのスプライス部1がタイヤ幅方向に延在している。
図2に示す空気入りタイヤでは、インナーライナー層10としてフィルムLを用い、フィルムLのタイヤ周方向の端部同士は、タイヤ周上の少なくとも1箇所において互いに重ならずに突き合わされている。フィルムLは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物のフィルムである。フィルムLのタイヤ周方向の両端部間には積層体2が介在している。
積層体2は、フィルムLのタイヤ周方向の一方の端部におけるタイヤ内腔側の位置Paから他方の端部におけるタイヤ外側(タイヤ外表面側)の位置Pbに架け渡されている。このように積層体2がフィルムLの両端部間を架け渡されることでフィルムLのスプライス部1が形成されている。積層体2は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムTと、そのフィルムTの両側に積層されたゴム層3の3層構造で構成される。フィルムTに積層したゴム層3はフィルムTに加硫接着する。なお、図2において、フィルムL、フィルムT及びゴム層3の本体の断面は、理解を容易にするため直線状に描かれている。
フィルムLのスプライス部1を形成する際、フィルムLを1枚使用する場合は、フィルムLのタイヤ周方向の両端部同士がフィルムTを介してスプライスされて環状を成すように形成される。或いは、フィルムLを複数枚使用する場合は、各フィルムLのタイヤ周方向の端部同士がフィルムTを介してスプライスされることで、各フィルムLが繋ぎ合わされ全体で一つの環状を成すように形成される。また、フィルムLのスプライス部1の付近(スプライス部1を含んでスプライス部1からタイヤ周方向の両側にそれぞれ10mmの領域)において、他のタイヤ構成部材(例えば、カーカス層など)のタイヤ周方向の端部同士が互いに重ね合わされたラップスプライス部が存在しないことが好ましい。
上述した空気入りタイヤでは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムLを有し、フィルムLのタイヤ周方向の端部同士が重ならずに突き合わされて配置され、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムTと該フィルムTの両側に積層されたゴム層3とからなる積層体2がフィルムLのタイヤ周方向の一方の端部におけるタイヤ内腔側の位置Paから他方の端部におけるタイヤ外側の位置Pbに架け渡されることでフィルムLのスプライス部1が形成されているので、フィルムLのタイヤ周方向の両端部とフィルムTの両側に積層されたゴム層3とが互いに接着し、スプライス部1における接着性を向上させることができる。また、フィルムLに対してタイヤ周方向(引張方向)に歪みが発生した場合、フィルムTが変形して歪みを緩和する作用があるため耐久性の改善に寄与する。これにより、スプライス部1の故障の発生を防止し、耐久性を改善することができる。そのため、バス、トラック用等の重荷重用空気入りタイヤにおいても、スプライス部1の故障の発生を防止し、耐久性を効果的に改善することができる。
上記空気入りタイヤにおいて、フィルムLの平均厚さGL[mm]と、フィルムLの20%伸長時のモジュラスML[MPa]と、フィルムTの平均厚さGT[mm]と、フィルムTの20%伸長時のモジュラスMT[MPa]とは下記式(1)を満たすことが好ましい。このように下記式(1)を満たすことで、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。ここで、GT×MT/(GL×ML)が0.5より小さくなる、或いは、2.0より大きくなると、フィルムLとフィルムTとの剛性差が過度に大きくなるのでユニフォーミティーが悪化する傾向がある。
0.5≦GT×MT/(GL×ML)≦2.0 (1)
0.5≦GT×MT/(GL×ML)≦2.0 (1)
上記空気入りタイヤにおいて、フィルムLの平均厚さGL(図2参照)は0.01mm〜0.50mmであると良い。このようにフィルムLの平均厚さGLを適度に設定することで、成形時の不具合を抑制し、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。ここで、フィルムLの平均厚さGLが0.01mmより薄いと成形時にフィルムLが皺になり易く、逆に0.50mmより厚くなるとユニフォーミティーが悪化する傾向がある。
また、フィルムLの平均厚さGL[mm]とタイヤの最大空気圧P[kPa]とはP/20×10-3≦GL≦P/2×10-3の関係を満たすことが好ましい。このようにフィルムLの平均厚さGLをタイヤの最大空気圧Pに対して適度に設定することで、スプライス部1の故障を効果的に抑制することができる。ここで、フィルムLの平均厚さGLがP/20×10-3よりも薄くなるとフィルムLのエア漏れ性能が悪くなり内部のゴムが酸化劣化しやくなり、逆にP/2×10-3よりも厚くなると走行時に縁石などを乗り越して過度の歪みを受けたときにスプライス部1が故障し易くなる。
更に、フィルムLの20%伸長時のモジュラスMLは2.0MPa〜20.0MPaであることが好ましい。このようにフィルムLの20%伸長時のモジュラスMLを適度に設定することで、フィルムLの成形時における過度な伸びや不均一な膨張を抑制することができる。ここで、フィルムLの20%伸長時のモジュラスMLが2.0MPaよりも低いと成形時にフィルムLが過度に伸び、皺になり易くなり、逆に20.0MPaよりも高いと成形時にフィルムLが均一に膨らみにくく、ユニフォーミティーが悪化する傾向がある。
上記空気入りタイヤにおいて、フィルムTの平均厚さGT(図2参照)は0.01mm〜0.50mmであることが好ましい。このようにフィルムTの平均厚さGTを適度に設定することで、成形時の不具合を抑制し、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。ここで、フィルムTが0.10mmよりも薄いと成形時に皺になり易く、逆に0.50mmより厚くなるとユニフォーミティーが悪化する傾向がある。
また、フィルムTの20%伸長時のモジュラスMTは2.0MPa〜20.0MPaであることが好ましい。このようにフィルムTの20%伸長時のモジュラスMTを適度に設定することで成形時の不具合を抑制し、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。ここで、フィルムTの20%伸長時のモジュラスMTが2.0MPaよりも低いと成形時にフィルムTが過度に伸び、皺になり易くなり、逆に20.0MPaよりも高いと成形時にフィルムTが均一に膨らみにくく、ユニフォーミティーが悪化する傾向がある。
更に、フィルムTの両側に積層されたゴム層3のそれぞれの厚さは0.05mm〜0.50mmであると良い。このようにゴム層3の厚さを適度に設定することで、成形時の不具合を抑制し、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。ここで、フィルムTが0.05mmよりも薄いとフィルムTと積層する際に皺になり易く、逆に0.50mmより厚くなると重量の増加になるのでユニフォーミティーが悪化する傾向がある。
図3は本発明の空気入りタイヤの成形時におけるフィルムLのスプライス部の実施形態の変形例を示すものである。図3に示すように、フィルムTのタイヤ周方向の端縁Taの垂線kに沿って測定したときのフィルムTのタイヤ周方向の長さを長さTSとする。このとき、フィルムTのタイヤ周方向の長さTSはタイヤ周長の1/18以下であると良い。このようにフィルムTのタイヤ周方向の長さTSをタイヤ周長に対して適度に設定することで、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。ここで、フィルムTのタイヤ周方向の長さTSがタイヤ周長の1/18より大きくなるとユニフォーミティーの悪化に繋がる。なお、タイヤ周長は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態で測定される長さである。
図3に示すように、フィルムLのタイヤ周方向の両端縁Laはタイヤ周方向に対して傾斜している。このとき、フィルムLのタイヤ周方向の端縁Laのタイヤ周方向に対する傾斜角度θは60°≦θ≦80°の関係を満たすことが好ましい。このようにフィルムLの傾斜角度θを適度に設定することで、タイヤが撓んだ際にフィルムLにかかる歪みが軽減され、耐久性を改善することができる。また、ユニフォーミティーを効果的に改善することができる。ここで、フィルムLの傾斜角度θが60°よりも小さいと、成形時におけるフィルムLの切断が困難になると共に、皺になり易い。
図4は本発明の空気入りタイヤのフィルムLにおけるスプライス部の実施形態の他の変形例を示すものである。フィルムLの少なくとも片側(図4では両側)にゴム層4が積層されており、このゴム層4はフィルムLに加硫接着する。図4に示すように、フィルムLがゴム層4との積層構造で構成される場合、フィルムLに積層されたゴム層4のタイヤ周方向の端部は、スプライス部1においてフィルムTに積層されたゴム層3と接合する(ゴム−ゴム同士が加硫接合する)ため、接着力が大きくなる。このようにフィルムLがゴム層4との積層構造から構成されることで、成形時の不具合を抑制することができる。
図5は本発明の空気入りタイヤのフィルムLにおけるスプライス部の実施形態の他の変形例を示すものである。図5に示すように、フィルムLとフィルムTの間には層間ゴム層6が介在している。この層間ゴム層6は、2層のゴム層5と、フィルムTに加硫接着するゴム層3と、フィルムLに加硫接着するゴム層4とから構成される。層間ゴム層6の構造は特に限定されるものではなく、ゴム層5を設けない構造も採用することができる。この場合、層間ゴム層6はフィルムTに加硫接着するゴム層3とフィルムLに加硫接着するゴム層4とから構成される。
このような構造において、スプライス部1におけるフィルムLとフィルムTのタイヤ周方向のラップ長さD[mm]と、フィルムLの平均厚さGL[mm]と、フィルムLの20%伸長時のモジュラスML[MPa]と、フィルムTの平均厚さGT[mm]と、フィルムTの20%伸長時のモジュラスMT[MPa]と、層間ゴム層6の平均厚さGg[mm]と、層間ゴム層6の20%伸長時のモジュラスMg[MPa]とは下記式(2)を満たすと良い。特に、スプライス部1におけるフィルムLとフィルムTのタイヤ周方向のラップ長さDの上限は、タイヤ周長の1/36に設定することが好ましい。下記式(2)では、フィルムTのGT×MT及びフィルムLのGL×MLと、層間ゴム層6のGg×Mgとの比が大きくなるほど(フィルムL,Tと層間ゴム層6との剛性差が大きくなるほど)、ラップ長さDを長くする必要があることを示している。下記式(2)を満たすように各部材を構成することで、スプライス部1での故障の発生を防止し、耐久性を効果的に改善することができる。なお、ラップ長さDは、フィルムTの端部の先端からそのフィルムTの端部と重なるフィルムLの端部の先端までのタイヤ周方向の長さを測定したものであり、層間ゴム層6の平均厚さGg及び20%伸長時のモジュラスMgは、層間ゴム層6を構成するゴム層が積層された状態で測定される平均厚さ及び20%伸長時のモジュラスである。
D≧0.25×(GT×MT+GL×ML)/(Gg×Mg) (2)
D≧0.25×(GT×MT+GL×ML)/(Gg×Mg) (2)
図5において、フィルムTの両側に積層されたゴム層3のタイヤ周方向の端部は、フィルムTのタイヤ周方向の端部よりもタイヤ周方向に長く構成されている。特に、ゴム層3のタイヤ周方向の端部の突き出し長さは、フィルムTの平均厚さGTの1〜50倍になるように構成されることが望ましい。このようにゴム層3のタイヤ周方向の端部がフィルムTのタイヤ周方向の端部よりもタイヤ周方向に長く構成されることで、成形時の不具合を抑制することができる。ここで、ゴム層3のタイヤ周方向の端部がフィルムTのタイヤ周方向の端部よりもタイヤ周方向に過度に長いと皺になり易い。
また、フィルムTはフィルムLの両端部間でタイヤ径方向に対して傾斜している。このとき、フィルムTの傾斜角度αは10°≦α≦80°の関係を満たすと良い。このようにフィルムTの傾斜角度αを適度に設定することで、タイヤが撓んだ際にフィルムTにかかる歪みが軽減され、耐久性を改善することができる。ここで、フィルムTの傾斜角度αが10°よりも小さいと成形時に皺になり易い。
一方、フィルムLのタイヤ周方向の両端面はタイヤ径方向に対して同一方向に傾斜している。このとき、フィルムLのタイヤ周方向の両端面の傾斜角度βは10°≦β≦80°の関係を満たすと良い。このようにフィルムLのタイヤ周方向の両端面の傾斜角度βを適度に設定することで、タイヤが撓んだ際にフィルムLにかかる歪みが軽減され、耐久性を改善することができる。ここで、フィルムLの傾斜角度βが10°よりも小さいと成形時に皺になり易い。
なお、上述したフィルムTの傾斜角度α及びフィルムLのタイヤ周方向の両端面の傾斜角度βは、フィルムLのタイヤ周方向の両端縁Laがタイヤ周方向に対して傾斜している場合(図3の実施形態の場合)、フィルムLのタイヤ周方向の端縁Laに対して直交しかつタイヤ径方向に切り欠いた断面において測定される傾斜角度である。
上記空気入りタイヤにおいて、スプライス部1で積層体2が架け渡された部材の厚さは1.0mm以上であることが好ましい。スプライス部1において積層体2が架け渡された部材は、図2の実施形態ではフィルムLであり、図4の実施形態ではフィルムL及びフィルムLの両側に積層されたゴム層4であり、図5の実施形態ではフィルムL、フィルムLの両側に積層されたゴム層4及び2層のゴム層5である。このようにスプライス部1における積層体2が架け渡された部材の厚さを適度に設定することで、耐久性を効果的に改善することができる。ここで、スプライス部1における積層体2が架け渡された部材が1.0mmよりも薄いとフィルムTが歪みを十分に緩和することができない。
本発明において、フィルムL及びフィルムTは、いずれも熱可塑性樹脂のフィルムか、又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムである。
フィルムL及びフィルムTに用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物〔例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体(ETFE)〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を用いることができる。
なかでも、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が、物性面や加工性、取扱い性などの点で好ましい。
また、フィルムL及びフィルムTを構成することができる熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物(熱可塑性エラストマー組成物)は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができる。熱可塑性エラストマー組成物を構成する熱可塑性樹脂とエラストマーのうち、熱可塑性樹脂については上述のものを使用できる。熱可塑性エラストマー組成物を構成するエラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ボリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。
特に、複数のエラストマーをブレンドするとき、そのうち50重量%以上が、ハロゲン化ブチルゴム又は臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴム又は無水マレイン酸変性エチレンαオレフィン共重合ゴムであることが、ゴム体積率を増やして低温から高温に至るまで柔軟、高耐久化できる点で好ましい。
また、熱可塑性エラストマー組成物中の熱可塑性樹脂の50重量%以上が、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体、ナイロン6/10共重合体、ナイロン4/6共重合体、ナイロン6/66/12共重合体、芳香族ナイロン、及びエチレン/ビニルアルコール共重合体のいずれかであることが優れた耐久性を得ることができるものであり、好ましい。
また、上述した特定の熱可塑性樹脂及びエラストマーを組合せて熱可塑性エラストマー組成物を調製する際に、両者の相溶性が不足する場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて相溶化させることができる。熱可塑性樹脂及びエラストマーのブレンド系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマーとの界面張力が低下し、その結果、分散相を形成しているエラストマーの粒子径が微細になることから両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に熱可塑性樹脂及びエラストマーの両方又は片方の構造を有する共重合体、あるいは熱可塑性樹脂又はエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらはブレンドされる熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すればよいが、通常使用されるものには、スチレン/エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBS)及びそのマレイン酸変性物、EPDM、EPM、EPDM/スチレン又はEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体及びそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシン等を挙げることができる。かかる相溶化剤の配合量には特に限定されないが、好ましくは、ポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマーとの合計)100重量部に対して、0.5〜10重量部が良い。
熱可塑性エラストマー組成物において、熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、特に限定されるものではない。例えば、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとるように、組成比を適宜決めればよい。熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、熱可塑性樹脂/エラストマーの重量比で、好ましくは90/10〜20/80、より好ましくは80/20〜30/70であると良い。
本発明において、熱可塑性樹脂、又は熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物には、例えば、フィルムL及びフィルムTを構成することに必要な特性を損なわない範囲内で、上述した相溶化剤以外にも、他のポリマーを混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、材料の成型加工性を良くするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等があり、これに用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS、ポリカーボネート(PC)等を例示することができる。
また、一般的にポリマー配合物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等をフィルムL及びフィルムTとしての必要特性を損なわない限り、任意に配合することもできる。
また、熱可塑性樹脂とブレンドされるエラストマーは、熱可塑性樹脂との混合の際に、動的に加硫することもできる。動的に加硫する場合の加硫剤、加硫助剤、加硫条件(温度、時間)等は、添加するエラストマーの組成に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。
このように熱可塑性樹脂組成物中のエラストマーが動的加硫をされていることは、得られる熱可塑性エラストマー組成物が加硫エラストマーを含んだものとなるので、外部からの変形に対して抵抗力(弾性)があり、本発明の効果を大きくできることになり好ましい。
加硫剤としては、一般的なゴム加硫剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオウ系加硫剤としては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等を例示でき、例えば、0.5〜4phr(本明細書において、「phr」は、エラストマー成分100重量部あたりの重量部をいう。以下、同じ。)程度用いることができる。
また、有機過酸化物系の加硫剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が例示され、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
更に、フェノール樹脂系の加硫剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が例示でき、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
その他として、亜鉛華(5phr程度)、酸化マグネシウム(4phr程度)、リサージ(10〜20phr程度)、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン(2〜10phr程度)、メチレンジアニリン(0.2〜10phr程度)が例示できる。
また、必要に応じて、加硫促進剤を添加しても良い。加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な加硫促進剤を、例えば、0.5〜2phr程度用いることができる。
また、ゴム層3,4を構成するゴム材料には、天然ゴム、イソプレンゴム、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、水素化スチレンブタジエンゴム等のジエン系ゴムや、エチレンプロピレンゴム、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム等を好ましく使用できる。
そして、上記フィルムL及びフィルムTは、隣接するゴム層3,4との接着性を高めるために接着層を介在させて積層するとよい。接着層を構成するポリマーとしては、分子量100万以上、好ましくは300万以上の超高分子量ポリエチレン、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルアクリレート樹脂、エチレンアクリル酸共重合体等のアクリレート共重合体類及びそれらの無水マレイン酸付加物、ポリプロピレン及びそのマレイン酸変性物、エチレンプロピレン共重合体及びそのマレイン酸変性物、ポリブタジエン系樹脂及びその無水マレイン酸変性物、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、フッ素系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂などが好ましく使用される。
上述した実施形態では、フィルムL及びフィルムTをタイヤ最内面に配置することでインナーライナー層10として使用した場合について説明したが、フィルムL及びフィルムTを補強部材として適用することもできる。特に、フィルムL及びフィルムTをインナーライナー層10に用いた場合には、優れた空気透過防止性能を得ることができる。また、上述した実施形態では、積層体2をフィルムLの両端部間にS字状に架け渡した場合について説明したが、積層体2を左右対称の形状であるZ字状に架け渡すこともできる。
タイヤサイズ195/65R15(乗用車用)、275/70R22.5(重荷重用)で、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムLを有し、フィルムLのタイヤ周方向の端部同士が重ならずに突き合わせて配置し、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムTとフィルムTの両側に積層したゴム層とからなる積層体がフィルムLのタイヤ周方向の一方の端部におけるタイヤ内腔側の位置から他方の端部におけるタイヤ外側の位置に架け渡すことでフィルムLのスプライス部を形成し、タイヤの種類、フィルムLの平均厚さGL、フィルムLのモジュラスML、フィルムLに積層したゴム層の厚さ、フィルムTの平均厚さGT、フィルムTのモジュラスMT、フィルムTに積層したゴム層の厚さ、ラップ長さD、層間ゴムの平均厚さGg、層間ゴムのモジュラスMg、フィルムTのタイヤ周方向の長さTS、フィルムTのタイヤ径方向に対する傾斜角度α、フィルムLのタイヤ周方向の両端面の傾斜角度β、フィルムLのタイヤ周方向の両端縁の傾斜角度θを表1及び表2のように異ならせた実施例1〜14のタイヤを作製した。
比較のため、フィルムL及びフィルムTにはゴム層を積層せず、フィルムTをフィルムLのタイヤ周方向の一方の端部におけるタイヤ内腔側の位置から他方の端部におけるタイヤ外側の位置に架け渡し、フィルムLとフィルムTとを熱溶着させてスプライス部を形成したこと以外は実施例1と同じ構造を有する比較例のタイヤを用意した。
なお、実施例1〜14のタイヤにおいて、フィルムLの両側にゴム層を積層させた。また、比較例及び実施例1〜14のタイヤにおいて、表1,2におけるフィルムLのモジュラスML又はフィルムTのモジュラスMTが、10.0であるものはナイロン6/66共重合体(N6/66)と臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン共重合体(BIMS)とを重量比50/50で含む熱可塑性エラストマー組成物であり、20.0であるものはN6/66とBIMSとを重量比75/25で含む熱可塑性エラストマー組成物であり、4.0であるものはN6/66とBIMSとを重量比35/65で含む熱可塑性エラストマー組成物であり、2.0であるものはN6/66とBIMSとを重量比30/70で含む熱可塑性エラストマー組成物である。実施例1〜14のタイヤにおいて、フィルムL又はフィルムTに積層されたゴム層は、天然ゴムとスチレンブタジエンゴムを主成分とするゴム組成物であることを共通にした。
これら試験タイヤについて、下記試験方法により耐久性を評価し、その結果を表1及び表2に併せて示した。
耐久性:
各試験タイヤをリムサイズ15×6JJ(乗用車用)、リムサイズ22.5×7.50(重荷重用)のいずれかに組み付け、タイヤ内圧で240kPa(乗用車用)又は900kPa(重荷重用)となるように空気を充填した。このタイヤを室内ドラム試験機にかけて、JATMAで規定される最大負荷能力の120%の荷重を負荷し、速度80km/h(乗用車用)又は50km/h(重荷重用)で20,000km走行させた。その後、フィルムLのスプライス部を目視で観察してクラックの発生を確認し、発生した場合はクラックの長さ[mm]を測定した。
各試験タイヤをリムサイズ15×6JJ(乗用車用)、リムサイズ22.5×7.50(重荷重用)のいずれかに組み付け、タイヤ内圧で240kPa(乗用車用)又は900kPa(重荷重用)となるように空気を充填した。このタイヤを室内ドラム試験機にかけて、JATMAで規定される最大負荷能力の120%の荷重を負荷し、速度80km/h(乗用車用)又は50km/h(重荷重用)で20,000km走行させた。その後、フィルムLのスプライス部を目視で観察してクラックの発生を確認し、発生した場合はクラックの長さ[mm]を測定した。
表1及び表2から判るように、実施例1〜14のタイヤは、スプライス部においてクラックの発生を防止することができ、比較例のタイヤに比して耐久性が改善した。
1 スプライス部
2 積層体
3,4,5 ゴム層
6 層間ゴム層
10 インナーライナー層
11 トレッド部
12 サイドウォール部
13 ビード部
14 カーカス層
15 ベルト層
16 ビードコア
L,T フィルム
Pa タイヤ内腔側の位置
Pb タイヤ外側の位置
2 積層体
3,4,5 ゴム層
6 層間ゴム層
10 インナーライナー層
11 トレッド部
12 サイドウォール部
13 ビード部
14 カーカス層
15 ベルト層
16 ビードコア
L,T フィルム
Pa タイヤ内腔側の位置
Pb タイヤ外側の位置
Claims (17)
- 熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムLを有し、該フィルムLのタイヤ周方向の端部同士が重ならずに突き合わされて配置され、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムTと該フィルムTの両側に積層されたゴム層とからなる積層体が前記フィルムLのタイヤ周方向の一方の端部におけるタイヤ内腔側の位置から他方の端部におけるタイヤ外側の位置に架け渡されることで前記フィルムLのスプライス部が形成されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
- 前記フィルムLの平均厚さGL[mm]と、前記フィルムLの20%伸長時のモジュラスML[MPa]と、前記フィルムTの平均厚さGT[mm]と、前記フィルムTの20%伸長時のモジュラスMT[MPa]とが下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
0.5≦GT×MT/(GL×ML)≦2.0 (1) - 前記フィルムLの平均厚さGLが0.01mm〜0.50mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記フィルムLの平均厚さGL[mm]と前記タイヤの最大空気圧P[kPa]とがP/20×10-3≦GL≦P/2×10-3の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記フィルムLの20%伸長時のモジュラスMLが2.0MPa〜20.0MPaであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記フィルムTの平均厚さGTが0.01mm〜0.50mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記フィルムTの20%伸長時のモジュラスMTが2.0MPa〜20.0MPaであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記フィルムTの両側に積層されたゴム層のそれぞれの厚さが0.05mm〜0.50mmであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記フィルムLの少なくとも片側にゴム層が積層されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記フィルムLと前記フィルムTの間に層間ゴム層が介在し、前記スプライス部における前記フィルムLと前記フィルムTのタイヤ周方向のラップ長さD[mm]と、前記フィルムLの平均厚さGL[mm]と、前記フィルムLの20%伸長時のモジュラスML[MPa]と、前記フィルムTの平均厚さGT[mm]と、前記フィルムTの20%伸長時のモジュラスMT[MPa]と、前記層間ゴム層の厚さGg[mm]と、前記層間ゴム層の20%伸長時のモジュラスMg[MPa]とが下記式(2)を満たすことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
D≧0.25×(GT×MT+GL×ML)/(Gg×Mg) (2) - 前記フィルムTのタイヤ周方向の長さがタイヤ周長の1/18以下であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記フィルムTの両側に積層されたゴム層のタイヤ周方向の端部が前記フィルムTのタイヤ周方向の端部よりもタイヤ周方向に長いことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記フィルムTが前記フィルムLの両端部間でタイヤ径方向に対して傾斜し、その傾斜角度αが10°≦α≦80°の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記フィルムLのタイヤ周方向の両端面がタイヤ径方向に対して同一方向に傾斜し、その傾斜角度βが10°≦β≦80°の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記フィルムLのタイヤ周方向の両端縁がタイヤ周方向に対して傾斜し、その傾斜角度θが60°≦θ≦80°の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記スプライス部において前記積層体が架け渡された部材の厚さが1.0mm以上であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
- 前記フィルムL及び前記フィルムTがタイヤ最内面に配置されていることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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