本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1ないし図29に示す本実施形態の転写具は、例えば粘着剤や修正テープ、顔料等の転写物を転写テープ126から紙面その他の転写対象面に転写するための転写ヘッド125を備えた転写具本体1と、転写具本体1に装着されてこれを覆う外ケース2とを具備してなる。そして、外ケース2が転写具本体1に対して相対的に回転移動することにより、図1及び図2に示すように転写具本体1及び転写ヘッド125が外ケース2内に収納される非使用状態と、図4及び図5に示すように転写具本体1の転写ヘッド125が外ケース2外に露出する使用状態とをとり得るものである。
図6、図7及び図11に示すように、転写具本体1は、転写対象面に転写されるべき転写物が付着している(即ち、転写物を支持している)転写テープ126を繰り出す繰出リール124と、繰出リール124から繰り出される転写テープ126が巻き掛けられる転写ヘッド125と、転写ヘッド125を経由した後の転写テープ126を巻き取る巻取リール123と、繰出リール124の回転と巻取リール123の回転とを連動させる歯車伝動機構とを備えている。本実施形態の転写具を使用する際には、転写ヘッド125が外ケース2の外部に露出する使用状態とした後、外ケース2の把持部を把持し、転写ヘッド125を転写対象面に対して押圧しながら、転写具を転写対象面に対して相対的に変位させる。さすれば、巻取リール123が繰り出された転写テープ126の外表面に付着している転写物を、転写テープ126から転写対象面に転写することができる。転写物が剥離し除去された使用済みの転写テープ126は、巻取リール123に巻き取られる。
外ケース2は、第一ケース部材21及び第二ケース部材22を要素とした半割構造をなす。外ケース2は、繰出リール124及び巻取リール123の回転軸の伸びる方向に沿って見た平面視において、基端側が円形で先端側に向かって徐々に先細りとなる略涙滴状の外形を有している。その基端側の円弧状の輪郭の中心が、当該外ケース2の転写具本体1に対する相対的な回転移動の中心となっており、外ケース2は繰出リール124及び巻取リール123の回転軸と略平行に伸びる軸回りに正逆回転する。
第一ケース部材21は、平面視略涙滴状をなす底壁211と、底壁211の外周縁から起立する周壁212とを有した樹脂一体成形品である。並びに、第二ケース部材22は、平面視略涙滴状をなし第一ケース部材21の底壁211と対向する頂壁221と、頂壁221の外周縁から垂下して第一ケース部材21の周壁と突合する周壁222とを有した樹脂一体成形品である。外ケース2の基端側にある底壁211及び頂壁221は、転写具を使用する使用者が把持することのできる把持部となる。
外ケース2の周壁212、222は、当該外ケース2の全周に亘って連続してはおらず、一部が切り欠かれている。具体的には、外ケース2の先端側から基端側に向かって直線的に延びる一方の側辺、及び外ケース2の部分円筒状をなす基端側の外周、他方の側辺近傍までの領域が開口している。この開口部23は、外ケース2の内部空間を外側方に連通せしめるとともに、転写具本体1の転写ヘッド125を含む先端側を出し入れするための出入口となる。
周壁212、222の切り欠かれていない部分は、外ケース2の内部空間を外側方から遮蔽する閉塞部となる。閉塞部は、外ケース2の先端部位、及び外ケース2の先端側から基端側に向かって直線的に延びる他方の側辺を含む。その上で、この直線状に拡張する部位に、第一ケース部材21と第二ケース部材22とを相対回動可能に連結するヒンジ24を付設している。
第二ケース部材22は、第一ケース部材21に対し、外ケース2の他方の側辺の延びる方向(閉塞部の拡張する方向)に略平行な軸回りに回動する。そして、図1ないし図5に示すように両ケース部材21、22が重なり合い外ケース2が閉じた状態となる閉成姿勢と、図6及び図7に示すように両ケース部材21、22が離反して外ケース2が開いた状態となる展開姿勢とをとり得る。回転軸の方向は、繰出リール124及び巻取リール123の回転軸の方向に対して略垂直である。第二ケース部材22が第一ケース部材21に対して展開姿勢をとるとき、平面視転写具本体1の全域が外ケース2に覆われることなく露出する。
本実施形態におけるヒンジ24は、第一ケース部材21及び第二ケース部材22の各々とは別体をなす樹脂成形品である。図8ないし図10に示すように、ヒンジ24は、第一ケース部材21における閉塞部を構成する周壁212に固定される第一の取付部241と、第二ケース部材22における閉塞部を構成する周壁222に固定される第二の取付部242と、これら一対の取付部241、242を相対回動可能に連結する連結部243と、連結部243とは別に両取付部241、242に跨って設けられ両取付部241、242を弾性付勢するばね部244とを有している。
外ケース2が閉成姿勢をとるとき、第一ケース部材21の周壁212と第二ケース部材22の周壁222とが互いに略面一となり、故にヒンジ24の第一の取付部241と第二の取付部242とが互いに略面一となる。このとき、図8及び図9に示すように、連結部243は外ケース2の外側方に向かって突き出すような湾曲形状をなす。翻って、外ケース2が展開姿勢をとるとき、第一ケース部材21の周壁212と第二ケース部材22の周壁222とが優角をなすように拡開し、故にヒンジ24の第一の取付部241と第二の取付部242とが優角をなすように拡開する。このとき、図10に示すように、連結部243は外ケース2の内側方に向かって突き出すような湾曲形状をなす。
ヒンジ24の各取付部241、242は、第一ケース部材21及び第二ケース部材22の各々の周壁212、222の内側に取り付けられる。図2及び図5に示しているように、ヒンジ24(の取付部241、242、連結部243及びばね部244)は、外ケース2の周壁212、222の外側面よりも外側方には突出しない。
第二ケース部材22が閉成姿勢と展開姿勢との間の思案点よりも第一ケース部材21に近いと、ヒンジ24のばね部244は第二ケース部材22を閉成姿勢若しくはその近傍に向けて(即ち、外ケース2を閉じる方向に)弾性付勢する。これに対し、第二ケース部材22が思案点よりも第一ケース部材21から離れていると、ばね部244は第二ケース部材22を展開姿勢若しくはその近傍に向けて(即ち、外ケース2を開く方向に)弾性付勢する。このように、ヒンジ24はスナップヒンジとしての作用を営む。
第二の取付部242を第一の取付部241に対して回動させる過程で、換言すれば第二ケース部材22を第一ケース部材21に対して回動させる過程で、連結部243の突き出す方向は外ケース2の外側方から内側方に変化し、あるいは逆に外ケース2の内側方から外側方に変化する。連結部243の突き出す方向が変化する付近が、外ケース2の閉成姿勢と展開姿勢との中間の思案点である。
転写具本体1は、外ケース2の第一ケース部材21に離脱不能に取り付けられているベース部11と、このベース部11に着脱可能に取り付けられるとともに転写テープ126を保持するリフィル部12とを要素とする。図7に示すように、リフィル部12は、転写テープ126を巻く繰出リール124及び巻取リール123、並びに転写ヘッド125を、一体のフレーム120に支持させてなる。本実施形態の転写具では、このリフィル部12が、消費された転写物を補給するために交換されるリフィルとなる。転写テープ126の交換に際して付け外しされるのがリフィル部12に限定されており、ベース部11は交換しない、即ち転写具本体1全体を交換せずに済むことから、廃棄部品を減らすことができる。
ベース部11は、繰出リール124と巻取リール123とを連動させる歯車伝動機構、転写具の非使用時に転写ヘッド125及び転写テープ126を汚損から保護するためのカバー(または、シャッタ)14、並びに外ケース2を転写具本体1に対して回転移動させる際に押下操作される操作部材15を、一体のフレーム110に支持させてなる。
転写具本体1の外殻は、リフィル部12のフレーム120及びベース部11のフレーム110を要素とした半割構造をなす。図6に示すように、転写具本体1の外殻は、平面視において、基端側が円形で先端側に向かって徐々に先細りとなる略涙滴状の外形を有している。その基端側の円弧状の輪郭の中心が、外ケース2の転写具本体1に対する相対的な回転移動の中心となる。
ベース部11のフレーム110は、平面視略涙滴状をなす底壁111と、底壁111の外周縁から起立する周壁112とを有した樹脂一体成形品である。並びに、リフィル部12のフレーム120は、平面視略涙滴状をなしベース部11の底壁111と対向する頂壁121と、頂壁121の外周縁から垂下してベース部11の周壁112と突合する周壁122とを有した樹脂一体成形品である。
転写具本体1の外殻の周壁112、122は、当該転写具本体1の全周に亘って連続してはおらず、一部が切り欠かれている。特に、転写具本体1の先端側、及びその先端側から基端側に向かって直線的に延びる一方の側辺の部分が開口している。この開口部13には、カバー14が配置される。リフィル部12のフレーム120に支持させた転写ヘッド125は、転写具本体1の外殻の先端側よりも先方に位置している。
既に述べた通り、転写具本体1のリフィル部12は、ベース部11に対して着脱自在となっている。具体的には、図7及び図11に示しているように、リフィル部12のフレーム120の頂壁121からベース部11に向けて突出する係合片127を、ベース部11のフレーム110に設けられた被係合部115に挿入して係合させる。なおかつ、リフィル部12のフレーム120に支持された繰出リール124及び巻取リール123の内周に、ベース部11のフレーム110に設けられた支軸116、117を各々嵌入することで、リフィル部12をベース部11に組み付けることができる。
リフィル部12をベース部11に取り付けたとき、巻取リール123に一体的に形成されている歯車1231が、ベース部11に配設された歯車伝動機構の所定の歯車113に噛合する。歯車伝動機構は、ベース部11のフレーム110に回転可能に支持された一または複数の歯車を要素に含み、そのうちの一つの歯車113が繰出リール124と同軸となるとともに、繰出リール124及びこれと係合する支軸117の回転を巻取リール123に伝動する。本実施形態では、歯車伝動機構の歯車113が支軸117に一体的に形成され、この歯車113が直接に巻取リール123の歯車1231に噛合する。だが、支軸117側の歯車113と巻取リール123側の歯車1231との間に、別の歯車を介在させても構わない。その場合、当該歯車は、歯車伝動機構の要素の一つとして、予め歯車113に噛合した状態で歯車113とともにベース部材11に配設されることとなる。
支軸117は、その先端部に滑りクラッチ(または、摩擦クラッチ)118を有しており、この滑りクラッチ118を介して繰出リール124に係合し、繰出リール124を支持する。滑りクラッチ118は、繰出リール124と歯車113との間に介在し、これら両者の回転速度差を許容しつつ、両者の間でトルクを伝達する。滑りクラッチ118は、転写テープ126が消費されるにつれて、即ち繰出リール124から繰り出され巻取リール123に巻き取られるにつれて変化する、繰出リール124の回転速度と巻取リール123の回転速度との差を吸収する。
ベース部11に装着したリフィル部12のフレーム120の頂壁121の上面は、閉成姿勢をとる外ケース2の第二ケース部材22の頂壁221の下面に当接または近接する。図6に示すように、頂壁121の上面には、軸孔1211及び長孔1212が形成されている。軸孔1211は、平面視外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の中心に位置しており、長孔1212は、平面視その中心と同心の部分円弧状をなす。第二ケース部材22の頂壁221の下面からは、係合突起2211、2212が突き出しており、外ケース2の第二ケース部材22を閉成姿勢としたときに、各係合突起2211、2212が軸孔1211及び長孔1212にそれぞれ挿入されてこれらに係合する。係合突起2211と軸孔1211との係合、及び係合突起2212と長孔1212との係合は、外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の妨げとならない。
ベース部11のフレーム110の底壁111の下面は、外ケース2の第一ケース部材21の底壁211の上面に当接または近接する。図11に示すように、底壁111には、これを貫通する係止孔1111が形成されている。係止孔1111は、平面視外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の中心に位置している。そして、第一ケース部材21の底壁211の上面からは、係止突起2111が突き出している。係止突起2111は、係止孔1111に挿入されてこれに係合する。係止突起2111の先端部には、当該係止突起2111の係止孔1111に対する挿入方向と略直交する方向に突き出した爪2112が存在し、この爪2112が抜け止めとなって、一旦係止孔1111に挿入された係止突起2111は係止孔1111から容易に抜出することはない。従って、ベース部11の底壁111は、第一ケース部材21の底壁211から離反することができない。つまり、転写具本体1のベース部11は、外ケース2の第一ケース部材21から離脱しない。また、係止突起2111と係止孔1111との係合は、外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の妨げとならない。
図1ないし図5及び図18に示すように、転写具本体1の基端側における部分円筒状をなす外殻の周壁112、122の外面には、僅かながら凹んだ凹部181、182を形成してある。平面視または平断面視において、これら凹部181、182は、外ケース2の転写具本体1に対する相対的な回転移動の中心に対称な二箇所に所在する。なお、図18では、簡明化のため、外ケース2、転写具本体1のフレーム110、カバー14、ヒンジ24及び転写ヘッド125以外の内部構造の図示を省略している。図1及び図2に示す非使用状態にあって、転写具本体1の基端側の周壁112、122及び凹部181、182は、外ケース2の開口部23を介して表出している。使用者は、各凹部181、182に指を掛け、転写具本体1の基端側の周壁112、122を二本の指で摘まむように保持して、転写具本体1を外カバー2に対して回転させる操作を行うことができる。
本実施形態の転写具は、図1及び図2に示す非使用状態と、図4に示す第一の使用状態と、図5に示す第二の使用状態とを選択的にとり得る。非使用状態では、転写具本体1及び転写ヘッド125が外ケース2内に収容される。より詳しくは、平面視において転写ヘッド125が閉成姿勢をとる外ケース2の外周(及び、周壁212、222)よりも内側に収まり、転写ヘッド125を含む転写具本体1の全域が同外ケース2の底壁211及び頂壁221に遮蔽される。そして、転写ヘッド125を転写対象面に接触させようとしても、外ケース2が転写対象面に干渉して、転写ヘッド125を転写対象面に接触させることができない。
のみならず、非使用状態では、転写具本体1のベース部11のフレーム110に支持されているカバー14が、外ケース2の先端部にある周壁212、222に(即ち、開口部23の端縁に)当接または極近接する閉位置まで進出する。外ケース2の開口部23は、外ケース2の基端側から一方の側辺に沿って先端部付近まで拡張している。このことから、非使用状態にあっては、外ケース2の先端部の周壁212、222と転写具本体1の外殻の周壁112、122との間に空隙が形成される。だが、カバー14が、転写具本体1の先端部に所在する転写ヘッド125の側方まで進出してこの空隙を閉じ、外ケース2の外部からの転写ヘッド125への接触を阻む。カバー14の存在により、転写具の非使用時に塵や埃が外ケース2内に侵入して転写ヘッド125や転写テープ126に付着することが抑制される。
第一の使用状態及び第二の使用状態では、転写具本体1の先端側及び転写ヘッド125が外ケース2外に露出する。このとき、カバー14は、転写ヘッド125の側方から変位し、転写ヘッド125と転写対象面との当接を妨げない開位置まで退避する。第一の使用状態は、非使用状態から外ケース2を転写具本体1に対し一定角度だけ相対回転移動させた状態であり、第二の使用状態は、この第一の使用状態からさらに外ケース2を同一方向に一定角度だけ相対回転移動させた状態である。
しかして、本実施形態の転写具には、外ケース2を転写具本体1に対して、非使用状態、第一の使用状態及び第二の使用状態の何れかの位置に保定することを可能とするロック機構が実装されている。
詳述すると、図11ないし図15に示すように、第一ケース部材21の底壁211の上面に、ベース部11の底壁111に向かって突出する凸条2131が形成されている。この凸条2131は、平面視外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の中心と同心の部分円弧状をなすレール214となる領域を囲繞している。加えて、外側にある凸条2131の内周面の一部を、外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の中心に向けて膨出または突出させることで、複数の保定位置215、216、217を構成している。
他方、転写具本体1のベース部11には、外ケース2の転写具本体1に対する保定を実現するとともにその保定を解除するために操作される操作部材15が設けられる。操作部材15は、ベース部11の底壁111の所定部位から突出するピン1191に嵌まるように組み付けられる。そして、このピン1191と係合する位置から、支軸117に支持される繰出リール124と支軸116に支持される巻取リール123との間に向かうように、腕部155が伸長している。腕部155の先端は、ベース部11の底壁111から突出する支え突起1192に掛かる。さらに、ピン1191と係合する位置から、ベース部11のフレーム110の先端側に向かって、かつベース部11の周壁112に沿うように、基部151が拡張している。
操作部材15の基部151における、第一ケース部材21の底壁211に形成されたレール214の直上に位置する部位には、第一ケース部材21の底壁211に向かってストッパ突起154が突出している。図16に示しているように、ストッパ突起154は、転写具本体1のベース部11の底壁111に穿たれた長孔1193を介して底壁111を貫通し、第一ケース部材21の底壁211に形成されたレール214内に収まる。
上記の保定位置215、216、217及びストッパ突起154が、ロック機構の要素となる。即ち、ストッパ突起154が何れかの保定位置215、216、217に係合することにより、外ケース2(の第一ケース部材21)の転写具本体1(のベース部11のフレーム110)に対する相対回転移動が制止され、外ケース2が非使用状態、第一の使用状態及び第二の使用状態の何れかの位置に保定される。図12は非使用状態を、図14は第一の使用状態を、図15は第二の使用状態を、それぞれ表している。ストッパ突起154が挿通される長孔1193は、平面視ピン1191を中心とした円弧に近い軌跡に沿って拡張している。
基部151の一部は、使用者の手により押下操作される押下ボタン152となっている。押下ボタン152は、転写具本体1の外殻の周壁112、122、特にベース部11の周壁112に予め形成された窓161から転写具本体1の外側方に向けて表出する。但し、押下ボタン152が常に使用者の手指の届く位置に露出しているとは限らない。図2及び図12に示す非使用状態では、押下ボタン152は外ケース2の周壁212、222(の直線状に拡張する部位)に遮られて隠蔽されており、使用者の手指でこれを視認することも、これに触れることも困難である。対して、図14及び図15に示す使用状態では、押下ボタン152が外ケース2の開口部23から、または外ケース2外に露出するようになり、使用者がこれを視認でき、使用者の手指で容易にこれに触れることが可能となる。
図12ないし図15に示しているように、平面視または平断面視において、操作部材15は、押下ボタン152を除き、転写具本体1の周壁112、122の内側、支軸117に支持される繰出リール124と支軸116に支持される巻取リール123との間の空間に収まっている。
ロック機構による、外ケース2の転写具本体1に対する保定、即ち相対回転移動の制止を解除するためには、転写具本体1の周壁112の窓161から表出している押下ボタン152を押下してこれを没入させる。さすれば、操作部材15の基部151が、押下ボタン152及びストッパ突起154とともに、ベース部11のフレーム110に対して、ピン1191を中心に回動するように変位する。同時に、基部151に形成されたストッパ突起154が、拡張している長孔1193に沿って、外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の中心に近づく方向、即ち外側にある凸条2131の内周面から離反する方向に変位する。結果、ストッパ突起154が保定位置215、216、217から離脱して、外ケース2の転写具本体1に対する相対回動移動が解禁される。
また、このとき、操作部材15が弾性変形して反力を蓄える。特に、根元がピン1191により変位不能に軸支されている基部151が、腕部155に接近するように撓み変形して曲がる。一方で、腕部155は支え突起1193に係合しており、腕部155が多少変形することはあっても、基部151と同程度に変位することは阻まれる。故に、操作部材15全体がピン1191を中心に回動することはない。
使用者が押下ボタン152を押下しなくなると、ばねとして機能する操作部材15が蓄えた弾性反力によって、基部151が、押下ボタン152及びストッパ突起154とともに、ピン1191を中心に逆方向に回動するように変位する。そして、基部151の撓み変形が緩和ないし解消される。同時に、基部151に形成されたストッパ突起154が、拡張している長孔1193に沿って、外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の中心から遠ざかる方向、即ち外側にある凸条2131の内周面に接近する方向に変位する。結果として、再びストッパ突起154が何れかの保定位置215、216、217に係合可能となり、使用者が外ケース2を回転させることで任意の使用状態または非使用状態に外ケース2を保定できるようになる。外ケース2が転写具本体1に対して回動移動する際には、ストッパ突起154が凸条2131の内周面に対して摺動しながらレール214内を移動し、保定位置215、216、217に到達したときに当該保定位置215、216、217に嵌まり込む。
押下ボタン152は、外ケース2外に露出している転写具本体1及び転写ヘッド125の外ケース2に対する相対的な角度を変更するために押下操作される。転写具を使用する使用者は、転写具本体1の転写ヘッド125を転写対象面に対して押圧する。その反作用で、転写具本体1には、当該転写具本体1を第一の使用状態から第二の使用状態に向かわせる方向の力が加わる。図4及び図14に示す第一の使用状態において、ロック機構を構成するストッパ突起154と保定位置216との係合は、転写具の使用中に転写具本体1が外ケース2に対して意図せず回転することを制止する。使用者が押下ボタン152を押下すると、外ケース2の転写具本体1に対する保定が解除され、外ケース2または転写具本体1を第一の使用状態から図5及び図15に示す第二の使用状態に向けて回転移動させることが可能となる。
特に、図14に示しているように、使用者が押下ボタン152を押下するときに当該押下ボタン152が受ける操作力Pは、転写ヘッド125を備える転写具本体1の先端部が第一の使用状態から第二の使用状態に向かって回転する方向Rに沿った、換言すれば方向Rに平行な分力を含む。換言すれば、使用者が押下ボタン152を押す方向Pと、転写具本体1を第一の使用状態から第二の使用状態に向けて回転させるべくこれを押す方向Rとが近くなっている。よって、自然な操作で第一の使用状態から第二の使用状態へと遷移することができる。
外ケース2または転写具本体1を、第二の使用状態から第一の使用状態または非使用状態に向けて回転移動させるときには、必ずしも押下ボタン152を押下する必要はない。外ケース2を転写具本体1に対して勢いよく回転させれば、ストッパ突起154が保定位置216に深く嵌まり込む前にこれを通過させることが可能である。とは言え、転写具本体1及び転写ヘッド125を外ケース2内に収納するときに、押下ボタン152を押下しても構わない。
転写具の非使用時に転写ヘッド125及び転写テープ126を保護するカバー14は、外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動に連動して開閉する。図12ないし図15に示すように、第一ケース部材21の底壁211の上面には、ベース部11の底壁111に向かって突出する凸条2132が形成されている。凸条2132は、平面視レール214よりも内側にあって、外ケース2の転写具本体1に対する相対回転移動の中心と同心の円弧状またはC字形をなしている。凸条2132の突出高さは、レール214を囲繞する凸条2131のそれよりも高い。
この凸条2132の外周面の一部には、歯218が存在している。歯218は、転写具本体1のベース部11のフレーム110に支持された歯車17に噛合する。図16に示しているように、歯車17は、ベース部11の底壁111における第一ケース部材21の底壁211に臨む面に現れるように設けられている。さらに、この歯車17が、ベース部11のフレーム110にスライド可能に支持されているカバー14に形成されたラック歯141に噛合する。
上記の歯218、歯車17及びラック歯141は、外ケース2と転写具本体1との相対回転移動をカバー14のスライド移動に変換する変換機構の要素となる。そして、この変換機構は、非使用状態から第一の使用状態までの間でカバー14をスライド移動させる。具体的には、外ケース2の第一ケース部材21が転写具本体1のベース部11に対し、図1、図2及び図12に示す非使用状態から図4及び図14に示す第一の使用状態に向かって相対回転移動する過程で、凸条2132の外周面の歯218が歯車17を回転させ、回転する歯車17がカバー14のフレーム110、120に対するスライド移動を惹起して、カバー14を閉位置から開位置に変位させる。
カバー14が図3及び図13に示す開位置に至ったとき、歯車17は、凸条2132の外周面における、歯218の設けられていない部分に到達する。即ち、使用状態においては、歯車17と歯218とが噛合しない。従って、外ケース2(の第一ケース部材21)が転写具本体1(のベース部11)に対してさらに回転移動したとしても、それ以上歯車17が回転することはなく、カバー14は開位置にあり続ける。なお、使用状態において歯車17の歯がカバー14側の歯141と噛合しなくなるような構造とすることを妨げない。
外ケース2の第一ケース部材21が、転写具本体1のベース部11に対し、図4及び図14に示す第一の使用状態に位置づけられたとき、ストッパ突起154が、第一の使用状態に対応した保定位置216に係合する。同時に、凸条2132の外周面に一個または小数個設けられている歯(または、突起)219が、歯車17に噛合(または、係合)する。これにより、外ケース2が第一の使用状態の位置に保定されるとともに、ラック歯141に噛合する歯車17の回転が抑制され、カバー14に外力が作用したとしても、カバー14がベース部11に対してスライド移動することなく開位置に保定される。
さらに、外ケース2の第一ケース部材21が、転写具本体1のベース部11に対し、図5及び図15に示す第二の使用状態に位置づけられたとき、ストッパ突起154が、第二の使用状態に対応した保定位置217に係合する。同時に、凸条2132の外周面に一個または小数個設けられている歯(または、突起)210が、歯車17に噛合(または、係合)する。これにより、外ケース2が第二の使用状態の位置に保定されるとともに、ラック歯141に噛合する歯車17の回転が抑制され、カバー14に外力が作用したとしても、カバー14がベース部11に対してスライド移動することなく開位置に保定される。
外ケース2の第一ケース部材21が、転写具本体1のベース部11に対し、第一の使用状態から非使用状態に向かって相対回転移動する過程では、凸条2132の外周面の歯218が歯車17を逆回転させ、この歯車17がカバー14のベース部11に対するスライド移動を惹起して、カバー14が開位置から閉位置に変位することは言うまでもない。
歯車17に関して補足すると、図16及び図17に示すように、歯車17は、第一歯車要素171と第二歯車要素172との組となっている。第一歯車要素171は、第一ケース部材21の底壁211におけるベース部11の底壁111に臨む面に形成された歯218、219、210に噛合する。第二歯車要素172は、ベース部11のフレーム110にスライド可能に支持されているカバー14に形成された歯141に噛合する。平常時、第一歯車要素171と第二歯車要素172とは一体となって回転し、一体の歯車17を構成する。
第一歯車要素171と第二歯車要素172とのうち一方(図示例では、第二歯車要素172)には、歯車17の回転軸の伸びる方向に沿って突出する軸部1721が設けられ、他方(図示例では、第一歯車要素171)には、当該軸部1721が挿入される軸孔1711が設けられる。これら軸部1721及び軸孔1711は、第一歯車要素171の回転と第二歯車要素172の回転とを連動させ同期させる滑りクラッチ(または、摩擦クラッチ)として機能する。軸孔1711の内周には、歯車17の回転軸と直交する径方向に沿って内方に凹む複数の凹部1712が連続的に成形されている。並びに、軸体1721の外周には、歯車17の回転軸と直交する径方向に沿って外方に突き出す凸部1722が連続的に成形されている。この凸部1722は、軸孔171の内周の凹部1712の何れかに係合する。また、軸体1721は、径方向に沿って内方に弾性変形できるよう、複数の部分に分割されて(図示例では、二分されて)いる。
歯車17に作用する回転トルクが過大でない平常時には、凹部1712と凸部1722との係合を通じて第一歯車要素171と第二歯車要素172との間でトルクが伝達され、第二歯車要素172が第一歯車要素171に対して相対的に回転せず、両者が一体の歯車17として回転する。
これに対し、歯車17に作用する回転トルクが過大となると、軸体1721の弾性変形を伴って凸部1722が係合している凹部1712から脱出し、隣接する凹部1712に遷移する。つまり、第一歯車要素171と第二歯車要素172とを繋ぐクラッチにおいて滑りが生じ、両者の間でトルクが伝達されず、第二歯車要素172が第一歯車要素171に対して相対的に回転するようになる。故に、第一歯車要素171と第二歯車要素172とのうちの一方が回転するにもかかわらず、もう一方が回転しない状態となる。
転写テープ126を消費したリフィル部12を新品のリフィル部12に交換する際には、図6に示しているように外ケース2を開いて展開姿勢とする。第二ケース部材22が第一ケース部材21に対して回動するときの回転軸は、外ケース2が転写具本体1に対して回転移動するときの回転軸に直交する仮想的な平面(この仮想平面は、平面視の視線方向と直交する)と略平行である。転写具本体1の基端側における頂壁121の外面、及びこの頂壁121に臨む第二ケース部材22の頂壁221の内面は、外ケース2が展開姿勢をとるときに露わとなるが、外ケース2が閉成姿勢をとるときには隠蔽される。本実施形態では、転写具本体1の頂壁121の外面と第二ケース部材22の頂壁221の内面とのうちの一方または両方に、転写具の使用方法または注意事項を表示するための表示領域1213、2213が設けられている。
本実施形態の転写具には、転写具本体1のリフィル部12をベース部11及び外ケース2に係留する係留機構が実装されている。リフィル部12をベース部11及び外ケース2から取り外すためには、この係留機構による係留を解除する必要がある。具体的には、図7及び図19に示すように、ベース部11のフレーム110に支持されている操作部材15の基部151から、リフィル部12のフレーム120に向かって係留爪156が延出している。その爪先1561は、リフィル部12の周壁122の内周面に向かって突き出している。他方、リフィル部12の周壁122の内周面における爪先1561に臨む部位には、外側方に凹む被係留部129が形成されている。
上記の係留爪156及び被係留部129は、係留機構の要素となる。即ち、リフィル部12をベース部11に取り付けているとき、係留爪156の爪先1561が被係留部129の内に差し入ってこれに係合する。そして、リフィル部12のフレーム120をベース部11のフレーム110から引き離すような力が作用したとしても、係留爪156の爪先1561が被係留部129に引っ掛かってリフィル部12のフレーム120を係留するために、リフィル部12のフレーム120が容易にベース部11のフレーム110から引き離されることはない。従って、リフィル部12がベース部11及び外ケース2から離脱しない。
リフィル部12をベース部11及び外ケース2から取り外すには、まず外ケース2を開いて展開姿勢とし、露出する押下ボタン152を押下する。さすれば、操作部材15の基部151とともに、係留爪156が、リフィル部12の周壁122の内周面から離反する方向に変位する。結果、係留爪156の爪先1561が被係留部129から離脱して、リフィル部12のフレーム120のベース部11のフレーム110に対する係留が解除される。
しかる後、リフィル部12のフレーム120をベース部11のフレーム110から引き離すようにして、係合片127を被係合部115から抜出し、かつ巻取リール123及び繰出リール124を支軸116、117から脱離させる。これにより、図7に示すように、リフィル部12をベース部11から取り外すことができる。その上で、新品のリフィル部12をベース部11に取り付け、外ケース2を再び閉じて図1ないし図5に示す閉成姿勢とすればよい。
本実施形態では、転写物を転写テープ125から転写対象面に転写するための転写ヘッド125を備えた転写具本体1と、転写具本体1を収容する外ケース2とを具備し、外ケース2が転写具本体1に対して相対移動することで、転写具本体1の転写ヘッド125が外ケース2に覆われる非使用状態と、転写具本体1の転写ヘッド125が外ケース2外に露出する第一の使用状態と、転写具本体1の転写ヘッド125が外ケース2外に露出し当該転写具本体1の外ケース2に対する相対的な位置が第一の使用状態とは異なる第二の使用状態とをとり得る転写具であって、前記第一の使用状態において前記外ケース2の前記転写具本体1に対する相対移動を制止するロック機構、及び、使用者の手指により押下されることでロック機構による外ケース2の転写具本体1に対する相対移動の制止を解除する押下ボタン152が設けられた転写具を構成した。
本実施形態によれば、転写具の使用時において外ケース2の転写具本体1に対する相対移動を制止する制止力を必要十分に強めることができる。押下ボタン152に加わる押下操作力によって制止を解除するロック機構は、単純な凹凸係合構造や節度機構と比較してより大きな制止力を発揮することが可能である。従って、転写具の使用中に外ケース2または転写具本体1に大きな外力が作用したとしても、外ケース2が転写具本体1に対して不意に回転してしまうことを防止でき、転写具としての使いやすさがより一層向上する。外ケース2または転写具本体1を第一の使用状態から第二の使用状態または非使用状態へと遷移させるためには、押下ボタン152を押下してロック機構による制止を解除すればよい。
そして、転写具の使用時には、第一の使用状態と第二の使用状態とを任意に選択できる。即ち、転写具本体1に対する外ケース2の位置を、使用者の手になじむ、使いやすい位置に設定することが可能である。
図14及び図15に示すように、使用状態では、押下ボタン152が転写具の下方かつ転写具全体(転写具本体1の先端部にある転写ヘッド125から外ケース2の先端部まで)の中間あたりに位置している。このため、使用者が転写具を把持して転写ヘッド125を転写対象面に押圧する操作において、使用者の手指が誤って押下ボタン152を押すことがない。
前記押下ボタン152は、前記非使用状態において前記外ケース2により遮蔽されて露出せず、当該非使用状態から外ケース2が前記転写具本体1に対して相対移動することで外ケース2外に露出するものであるため、非使用状態における転写具の美観、格調を高められる。また、押下ボタン152の存在が外ケース2の外観デザインを制約することが避けられ、外観デザインの自由度が確保される。
前記相対移動が、前記外ケース2の前記転写具本体1に対する相対回転移動であるため、使用者個々人の好みに合わせて、転写具本体2に対する外ケース1の姿勢、角度または向きを変更して使用することができる。
加えて、使用者が前記押下ボタン152を押下するときに当該押下ボタン152が受ける操作力Pが、前記転写ヘッド125を備える前記転写具本体1の先端部の回転する方向Rに沿った分力を含むように、押下ボタン152が配置されていることから、転写具本体1の回転の制止を解除するべく押下ボタン152を押す方向Pと、転写具本体1を回転させるべくこれを押す方向Rとが近くなり、自然な操作で転写具本体1に対する外ケース2の姿勢、角度または向きを変更できる。
本実施形態の転写具においては、前記第一の使用状態にて、前記転写ヘッド125が転写対象面に対して押圧される反作用で前記転写具本体1に第一の使用状態から前記第二の使用状態に向かわせる方向の力が加わる。前記ロック機構は、その力によって前記転写具本体1が回転することを制止する。このため、転写具の使用時に転写具本体1が第一の使用状態の位置から非使用状態の位置に向かって回転しない、つまりは転写具の使用中に転写ヘッド125が外ケース2内に没入してしまうことがない。
使用者が前記押下ボタン152を押下するときに変形して弾性反発力を蓄えるばね15が、前記転写具本体1における、前記転写テープ126を繰り出す繰出リール124と前記転写ヘッド125を経由した転写テープ126を巻き取る巻取リール123との間の空間を利用して配置されるため、スペースをとるばね15を効率よく組み込むことができ、転写具本体1及び外ケース2の肥大化を抑制できる、即ち転写具のコンパクト化に資する。
さらに、本実施形態の転写具には、前記転写ヘッド125、前記繰出リール124及び前記巻取リール123を備えて前記転写具本体1を構成するリフィル12を、前記外ケース2から離脱しないように係留する係留機構が設けられており、前記押下ボタン152が、使用者の手指により押下されることで前記係留機構による係留を解除して前記リフィル12の前記外ケース2に対する着脱を許容するものとなっている。従って、外ケース2の転写具本体1に対する相対移動の制止を解除するための押下ボタン152と、リフィル12の外ケース2への係留を解除するための押下ボタン152とが共通化し、部品点数が削減されるとともに、押下ボタン152の数が増すことによる分かりにくさを回避できる。
並びに、本実施形態では、転写物を転写テープ126から転写対象面に転写するための転写ヘッド125を備えた転写具本体1と、転写具本体1を収容する外ケース2とを具備し、外ケース2が転写具本体1に対して相対移動することで、転写具本体1の転写ヘッド125が外ケース2に覆われる非使用状態と、転写具本体1の転写ヘッド125が外ケース2外に露出する使用状態とをとり得る転写具であって、前記外ケース2が、第一ケース部材21と、この第一ケース部材21と重なり合い当該外ケース2が閉じた状態となる閉成姿勢と第一ケース部材21から離反して当該外ケース2が開いた状態となる展開姿勢とをとり得る第二ケース部材22とを備えており、前記閉成姿勢において隠蔽され前記展開姿勢において露出する、前記第二ケース部材22の内面及び/または前記転写具本体1の外面に、当該転写具の使用方法または注意事項を表示するための表示領域2213、1213が設けられている転写具を構成した。
本実施形態によれば、外ケース2を開いて展開姿勢とすることで、転写具本体1の大半部ないし全域を露出させることができ、転写具本体1を構成するリフィル12の脱着、交換作業が容易となる。
前記第二ケース部材22は、前記ヒンジ24により、当該第二ケース部材22が前記第一ケース部材21に対して相対的に閉成姿勢と展開姿勢との間で回動できるよう、第一ケース部材21に連結されている。
そして、前記外ケース2が前記転写具本体1に対して所定の仮想平面(本実施形態にあっては、外ケース2が転写具本体1に対して非使用状態と使用状態との間で回転移動するときの回転軸に直交する面)に沿って相対移動するものであり、前記第二ケース部材22が前記第一ケース部材21に対して前記仮想平面と略平行な軸回りに回動するものであることから、展開姿勢において転写具本体1の大半部ないし全域を好適に露出させることができる。
以上説明した転写具において、転写ヘッド125に関連した部分は以下のような特殊構造をなしている。その構造について図20〜図29を参照して詳述する。
ここで、図20は、リフィル部12をベース部11から取り外した状態で当該リフィル部12の先端部分を真下から観察した部分底面図であり、前記リフィル部12のフレーム120及び転写ヘッド125以外は図示を省略してある。図21は、同部分を斜め後下側から見上げた部分斜視図である。図22は、リフィル部12をベース部11から取り外した状態で当該ベース部11の先端部分を真上から観察した部分平面図であり、前記ベース部11のフレーム110以外は図示を省略してある。図23は、同部分を斜め後上側から見下した部分斜視図である。図24は、リフィル部12をベース部11に平行姿勢で接近させて組み付ける直前の状態を示す図11相当の作用説明図であり、リフィル部12及びベース部11の各フレーム120、110及び転写ヘッド125以外は図示を省略してある。図25は、図24におけるX−X線に対応する概略端面図である。図26は、リフィル部12をベース部11に組み付けた状態を示す図11相当の作用説明図であり、リフィル部12及びベース部11の各フレーム120、110及び転写ヘッド125以外は図示を省略してある。図27は、図26におけるY−Y線に対応する概略端面図である。図28は、リフィル部12をベース部11から取り外す過程を示す図11相当の作用説明図であり、リフィル部12及びベース部11の各フレーム120、110及び転写ヘッド125以外の別体部品は図示を省略してある。図29は、図28におけるZ−Z線に対応する概略端面図である。
この実施形態における転写具は、第1のフレームである前記リフィル部12のフレーム120を、第2のフレームである前記ベース部11のフレーム110に着脱可能に組み付けてなるリフィルタイプのものである。そして、前記リフィル部12のフレーム120には、前記転写ヘッド125が固定して設けられているとともに、前記ベース部11のフレーム110には、これら両フレーム120、110を組み付けた状態で前記転写ヘッド125を支持するヘッド支持部114が設けられており、前記転写ヘッド125及び前記ヘッド支持部114には、前記両フレーム120、110が平行状態で離反できないように係合状態を維持する誘導係合部4が設けられている。
詳述すれば、前記転写ヘッド125は、図11、図20、図21及び図24〜29に示すように、板状をなす基部1251と、この基部1251の先端両側縁から前方に延出させた対をなすアーム1252と、これらアーム1252間に回転可能に架設されたローラー状をなすヘッド本体1253とを具備してなるもので、前記基部1251の一方の片半部分1258が前記リフィル部12のフレーム120の先端部内面に設けられたヘッド固設部128に固定状態で取り付けられているとともに、前記基部1251の他方の片半部分1259が前記ベース部11のフレーム110の先端部内面に設けられた前記ヘッド支持部114に着脱可能に支持されている。
具体的に説明すれば、前記転写ヘッド125の基部1251は、長方形状をなす板状のもので、リフィル側に位置する一方の片半部分1258の両側に断面矢尻状をなす係合爪1255が一体に突設されており、この一方の片半部分1258が前記リフィル部12のフレーム120に設けられたヘッド固設部128にはめ殺し状態で嵌着されている。すなわち、ヘッド固設部128は、前記リフィル部12のフレーム120から垂下して設けられた一対の固設壁1281と、これら固設壁1281の後端間を閉塞する奥壁1282とを備えたもので、前記両固設壁1281には上方に解放された切欠き1283がそれぞれ設けられている。そして、この切欠き1283に前記係合爪1255を部材の一時的な弾性変形を利用して係合させることにより、前記リフィル部12のフレーム120に前記転写ヘッド125を固定している。一方、前記転写ヘッド125の基部1251における他方の片半部分1259は、その長手方向中央部における下端部分が下方に向かって漸次薄くなるような形態をなしており、その下端部分の両側に斜め下方を向く第1の装着用傾斜案内面1254が形成されている。また、この他方の片半部分1259には、前記誘導係合部4を構成する誘導溝1256が形成されている。この誘導溝1256は、中間が上方に膨出するように円弧状に湾曲したもので、その前端よりも後端1257が低い位置にある。
前記ヘッド支持部114は、図11、図22〜29に示すように、ベース部11のフレーム110の内面に一体に突設された一対の支持壁1141を備えたものである。これら支持壁1141は前後方向に伸びるもので、支持壁1141の前端間、後端間及び上端間はそれぞれ解放されている。すなわち、これら支持壁1141の間に形成されるヘッド挿入空間1149が前後に開通している。これら両支持壁1141の対向面には、前記誘導溝1256に係合し前記誘導係合部4を構成する係合突起1142が一体に突設されている。前記係合突起1142は、前記誘導溝1256内に全体的に進入する前半部1143と、この前半部1143に連続する後半部1144とを備えたものであり、前記後半部1144は、後方に向かって漸次突出寸法が小さくなるように形成されている。具体的に説明すれば、前記係合突起1142の前半部1143は、その全体が前記誘導溝1256内に十分に進入しうる突出寸法を有した断面矢尻状のもので、その上縁側に、斜め上方を向く第2の装着用傾斜案内面1145が形成されている。前記係合突起1142の後半部1144は、その突出高さが後方に向かって漸次小さくなるクサビ形状をなすものであり、その後端は前記支持壁1141の対向面に連続している。しかしてこの後半部には、図22及び図23に示すように、斜め後方を向く離脱用傾斜案内面1146が形成されている。
なお、この実施形態における「上下」とは、図24〜図29における上下方向を示すものである。すなわち、「上」とはリフィル部12側、「下」とはベース部11側をそれぞれ示す。また、「前後」とは、図20、図22、図24、図26及び図28における左右方向を示すものであり、転写ヘッド125が存在する側を「前」として説明している。
ここで、前記リフィル部12を前記ベース部11に対して装脱する際の転写ヘッド125関連部分の係脱関係を説明する。
まず、図11、図24及び図25に示す状態すなわちリフィル部12をベース部11から離脱させた状態では、リフィル部12のフレーム120に設けられたヘッド固設部128に転写ヘッド125の基部1251における一方の片半部分1258が装着固定されており、他方の片半部分1259はベース部11のヘッド支持部114から離れている。
この状態からリフィル部12をベース部11に平行姿勢を保ったまま接近させていくと、転写ヘッド125の他方の片半部分1259の下端部分が前記ベース部11のヘッド支持部114における支持壁1141の間に形成された前記ヘッド挿入空間1149に進入し、基部1251の第1の装着用傾斜案内面1254が前記支持壁1141の係合突起1142に設けられた第2の装着用傾斜案内面1145に当接する。この段階で前記リフィル部12を前記ベース部11にさらに押しつけると、前記両装着用傾斜案内面1254、1145の案内作用により前記支持壁1141が一時的に離間する方向に弾性変形し、それら支持壁1141に設けられた係合突起1142が前記基部1251に設けられた前記誘導溝1256に係合する。図26及び図27は、この係合状態を示している。この係合状態に達した段階で、ベース部11の係留爪156がリフィル部12の被係留部129に係合するとともに、リフィル部12側の前記係合片127がベース部11側の被係合部115に係合して、リフィル部12のベース部11に対する装着が完了する。このとき、誘導係合部4の前記誘導溝1256と前記係合突起1142とが係合しているので、リフィル部12がベース部11から平行状態を保ったまま離間することが禁止される。
前記リフィル部12を前記ベース部11から取り外す場合には、まず、前記押下ボタン152を押圧して前記係留部の係留状態を解除するとともに、リフィル部12の後端側をベース部11の後端側から離れるように引き上げて、前記係合片127の前記被係合部115に対する弾性係合を解除することにより、前記リフィル部12の後端側を前記ベース部11の後端側から若干浮き上がらせる。この段階からリフィル部12の後端部をさらにベース部11の後端部から離反させるように操作すると、転写ヘッド125付近を支点にして前記リフィル部12が前記ベース部11に対して相対的に回動し、最終的に誘導係合部4による係合状態も解除されてリフィル部12をベース部11から取り外すことができる。すなわち、前記リフィル部12を前記ベース部11に対して相対的に回動させると、前記係合突起1142が前記誘導溝1256に沿って後方に相対移動する。そして、図28及び図29に示すように、誘導溝1256の後端1257が係合突起1142の後半部1144の前記離脱用傾斜案内面1146に乗り上げ、この離脱用傾斜案内面1146の案内作用により前記支持壁1141が一時的に離間する方向に弾性変形する。そして、誘導溝1256の後端1257が係合突起1142の前半部1143に乗り上げると、前記係合突起1142間の間隔が前記転写ヘッド125の基部1251の厚み寸法と等しくなって誘導係合部4による係合状態が解除され、前記リフィル部12を前記ベース部11から取り外すことができるようになる。
このように、本実施形態によれば、リフィル部12のフレーム120の先端部とベース部11のフレーム110の先端部とが、使用状態においては転写ヘッド125を介して結合されリフィル部12がベース部11に対して平行姿勢を保ったまま離間することが禁止される。そのため、把持態様に関わらず、リフィル部12の先端部とベース部11の先端部との間に隙間が生じるのを効果的に防止又は抑制するための把持部の態様に関する設計の自由度を向上させることができる。一般に、係留機構等を転写具本体1の先端部に設けることはスペース的に難しいため、転写具本体1の先端部に隙間が生じるのを転写ヘッド125を利用して防止又は抑制することができるのは有意義なことである。
そして、本実施形態によれば、転写具本体1の先端部に隙間が生じるのを禁止しても、前述したようにリフィル部12をベース部11に対して相対回動させるだけで当該リフィル部12を離脱させることができるため、リフィル部12の交換に支障が生じることがない。すなわち、本実施形態の構成によれば、構造の複雑化を招く不具合や、リフィル部12の挿脱が難しくなるという不具合を招くことなしに、使用中にリフィル部12とベース部11との間に隙間が生じるという課題を解消することができる。
また、このような構成によれば、転写ヘッド125の後端部分を支持するための支持要素を省略でき、省スペースを図りつつ上述したような効果を実現できる。
なお、以上説明した実施形態では、本発明をリフィルタイプの転写具に適用した場合について説明したが、本発明は、必ずしもこのようなものに限られず、非リフィルタイプの転写具にも同様に適用が可能である。すなわち、本発明は、転写ヘッドが設けられた前記第1のフレームと、この第1のフレームに着脱可能に組み付けられる前記第2のフレームとを備え、前記第2のフレームを離脱させた上で前記第1のフレームに対して転写テープを巻装したリールを挿脱しうるように構成された転写具にも同様に適用することができる。
また、リフィルタイプの転写具であっても、上述した実施形態のように転写具本体全体を覆うような外ケースを有するものに限らず、転写ヘッドのみを覆うケースを有するもの等であってもよい。
さらに、前記実施形態では、誘導係合部がリフィル部のフレームとベース部のフレームとの相対回動により係合状態が解除されるようなものについて説明したが、例えば、リフィル部をベース部に対して離間方向以外の方向へのスライド移動等により係合状態が解除されるようにしてもよい。
加えて、前記実施形態では、誘導係合部が転写ヘッドの基部に設けられた誘導溝と支持壁の内面側に設けられた係合突起とを備えた構成のものについて説明したが、例えば、誘導係合部が転写ヘッドの基部に設けられた係合突起と支持壁の内面側に設けられた誘導溝とを備えた構成のもの等を採用してもよい。
その他、各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。