JP2019116079A - ガスバリアフィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造効率を上げつつ、基材と原子層堆積膜との密着性を安定して維持し、ガスバリア性を持続させたガスバリアフィルムおよびその製造方法を提供する。【解決手段】ガスバリアフィルム10は、高分子材料からなる基材11と、基材11の表面11a上に形成され、アルミニウムの酸化物およびアルミニウム以外の元素の酸化物を含有する原子層堆積膜12と、を備え、原子層堆積膜12中であって原子層堆積膜12の表面12aから所定の深さにおけるアルミニウムの組成比および元素の組成比をそれぞれX1およびY1、X1/Y1の値をZ1、基材11中であって基材11の表面11aから所定の深さにおけるアルミニウムの組成比および元素の組成比をそれぞれX2およびY2、X2/Y2の値をZ2とした場合に、基材11中の少なくとも一部において、Z1の最大値とZ2とは、Z1の最大値<Z2の関係を満たす。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリアフィルムおよびその製造方法に関し、特に、高分子材料からなる基材上に原子層堆積膜(原子層堆積法により成膜した膜)を形成したガスバリアフィルムおよびその製造方法に関する。
従来、物質を気体のように原子または分子レベルで動ける状態にする気相を用いて物体の表面に薄膜を形成する方法としては、化学気相成長(CVD(Chemical Vapor Deposition))法と、物理気相成長(PVD(Physical Vapor Deposition)、あるいは物理蒸着法ともいう)法と、がある。
CVD法は、真空チャンバー内に原料ガスを導入し、基材上において、熱エネルギーにより、1種類あるいは2種類以上のガスを分解または反応させることで、固体薄膜を成長させる方法である。このとき、成膜時の反応を促進させたり、反応温度を下げたりするために、プラズマや触媒(Catalyst)反応を併用するものがある。
CVD法のなかでも、プラズマ反応を用いるCVD法を、PECVD(Plasma Enhanced CVD)法という。また、触媒反応を利用するCVD法を、Cat−CVD法という。このようなCVD法を用いると、成膜欠陥が少なくなるため、例えば、半導体デバイスの製造工程(例えば、ゲート絶縁膜の成膜工程)等において、これらCVD法が広く適用されている。
PVD法としては、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等がある。スパッタリング法は、膜質および膜厚の均一性に優れた高品質な薄膜の成膜が行えるため、液晶ディスプレイ等の表示デバイスの透明電極配線膜や電極配線膜、光ディスクの光反射膜等に広く適用されている。
近年、成膜方法として、原子層堆積(ALD(Atomic Layer Deposition))法が注目されている。
ALD法は、表面吸着した物質を表面における化学反応によって原子レベルで一層ずつ成膜していく方法である。ALD法は、上記のCVD法の範疇に分類されている。
一般的なCVD法は、単一のガスまたは複数のガスを同時に用いて基材上で反応させて薄膜を成長させるものである。それに対して、ALD法は、前駆体、またはプリカーサともいわれる活性に富んだガスと、反応ガスと、を交互に用いることで、基材表面における吸着と、これに続く化学反応と、によって原子レベルで一層ずつ薄膜を成長させていく特殊な成膜方法である。
ALD法の具体的な成膜方法は、以下のような手法で行われる。
始めに、いわゆるセルフ・リミッティング効果(基材上の表面吸着において、表面がある種のガスで覆われると、それ以上、当該ガスの吸着が生じない現象のことをいう。)を利用し、基材上に前駆体が一層のみ吸着したところで未反応の前駆体を排気する(第1のステップ)。
次いで、チャンバー内に反応ガスを導入して、先の前駆体を酸化または還元させて所望の組成を有する薄膜を一原子層分のみ成膜した後に反応ガスを排気する(第2のステップ)。
ALD法では、上記の第1および第2のステップを1サイクルとし、当該サイクルを繰り返し行うことで、基材上に薄膜を成長させる。
ALD法は、従来の真空蒸着法やスパッタリング法等との比較ではもちろんのこと、一般的なCVD法と比較しても、さらに成膜欠陥が少ないことが特徴である。また、ALD法では、緻密な膜を成膜することができるため、ALD法により成膜した原子層堆積膜をガスバリア膜として採用することで、優れたガスバリア性を有するフィルムを製造することができる。
このため、ALD法により成膜した原子層堆積膜は、食品および医薬品等の包装分野や電子部品分野等の幅広い分野への応用が期待されている。
特許文献1には、高分子フィルムからなる基材の少なくとも片面に、ALD法により形成されたセラミック膜を設けることで、ガスバリア性を向上させたガスバリアフィルムが開示されている。
特許第5668294号公報
しかしながら、基材が高分子材料からなるフィルム等であると、半導体分野で用いられているウェハやフォトマスクとは異なって表面に微細な凹凸があり、かつ不規則な構造を有する。このため、当該基材上にALD法によりガスバリア膜(無機材料からなる原子層堆積膜)を形成する場合には、基材とガスバリア膜との密着性を安定して維持することが困難となる。基材とガスバリア膜との密着性が低下すると、ガスバリアフィルムのガスバリア性も当然に低下してしまう。
特許文献1では、高分子フィルムとセラミック膜との間に、表面がOH基で覆われかつ表面の算術平均粗さ(Ra)が3ナノメートル以下である密着層を設けることで、高分子フィルムとセラミック膜との密着性を向上させている。
しかしながら、特許文献1では、例えば塗布方式によって密着層を形成し、さらにディップコーティング処理やプラズマ処理等によって密着層の表面を制御する処理を行う必要があるため、製造プロセスが煩雑となり、その製造コストも高くなっている。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、製造効率を上げつつ、基材と原子層堆積膜との密着性を安定して維持し、ガスバリア性を持続させたガスバリアフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の第一の態様は、高分子材料からなる基材と、前記基材の表面上に形成され、アルミニウムの酸化物およびアルミニウム以外の元素の酸化物を含有する原子層堆積膜と、を備え、前記原子層堆積膜中であって前記原子層堆積膜の表面から所定の深さにおける前記アルミニウムの組成比および前記元素の組成比をそれぞれX1およびY1、X1/Y1の値をZ1、前記基材中であって前記基材の表面から所定の深さにおける前記アルミニウムの組成比および前記元素の組成比をそれぞれX2およびY2、X2/Y2の値をZ2とした場合に、前記基材中の少なくとも一部において、Z1の最大値とZ2とは、Z1の最大値<Z2の関係を満たしていることを特徴とするガスバリアフィルムである。
前記関係を満たす前記基材中の少なくとも一部は、前記基材の表面から前記原子層堆積膜のエッチングレート換算で深さ10ナノメートルまでの所定の深さに位置していてもよい。
前記元素は、シリコン、チタン、ニオブ、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、スズのうちいずれかであってもよい。
上記第一の態様のガスバリアフィルムは、前記原子層堆積膜の表面上に形成され、有機材料、無機材料、または有機材料と無機材料とのハイブリッド材料からなるオーバーコート膜をさらに備えていてもよい。
上記第一の態様のガスバリアフィルムは、前記基材と前記原子層堆積膜との間に配され、有機材料、または有機材料と無機材料とのハイブリッド材料からなるハードコート膜をさらに備えていてもよい。
前記基材は、光学等方性を有していてもよい。
本発明の第二の態様は、上記第一の態様のガスバリアフィルムの製造方法であって、真空チャンバー内に前記基材を配置する基材配置工程と、前記真空チャンバー内に配置された前記基材の表面上に、原子層堆積法により、前記原子層堆積膜を成膜する原子層堆積膜成膜工程と、を備え、前記原子層堆積膜成膜工程において、初期段階での前記アルミニウムの酸化物の成膜原料となる前駆体の供給量を、前記初期段階よりも後の段階での前記前駆体の供給量の1.5倍以上とすることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法である。
前記原子層堆積膜成膜工程における前記初期段階は、前記原子層堆積膜の成膜開始から前記原子層堆積膜の膜厚が0.1ナノメートル以上5.0ナノメートル以下に達するまででもよい。
本発明のガスバリアフィルムは、製造効率を上げつつ、基材と原子層堆積膜との密着性を安定して維持し、ガスバリア性を持続することができる。
また、本発明のガスバリアフィルムの製造方法は、基材と原子層堆積膜との密着性を安定して維持し、ガスバリア性を持続するガスバリアフィルムを効率良く製造することができる。
本発明の第一実施形態に係るガスバリアフィルムを模式的に示す断面図である。 本発明の第二実施形態に係るガスバリアフィルムを模式的に示す断面図である。 本発明の第三実施形態に係るガスバリアフィルムを模式的に示す断面図である。 本発明の第四実施形態に係るガスバリアフィルムを模式的に示す断面図である。 実施例1において測定されたガスバリアフィルムの深さ方向(厚み方向)とアルミニウム原子の組成比との関係を示すグラフである。 実施例1において測定されたガスバリアフィルムの深さ方向(厚み方向)とシリコン原子の組成比との関係を示すグラフである。 実施例1において測定されたガスバリアフィルムの深さ方向(厚み方向)とアルミニウム原子の組成比/シリコン原子の組成比との関係を示すグラフである。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態について、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るガスバリアフィルム10を模式的に示す断面図である。ガスバリアフィルム10は、高分子材料からなる基材11と、基材11の表面11a上に形成された原子層堆積膜12とを備えている。
基材11は、高分子材料により構成されている。基材11は、原子層堆積膜12が形成される表面11aを有している。
基材11は、例えば、フレキシブル性を有するフィルム状またはシート状のものを用いることができる。基材11の厚みは特に限定されないが、一例として、10マイクロメートル以上1000マイクロメートル以下の厚みを有する基材が用いられる。
基材11を構成する高分子材料としては、原子層堆積法(ALD法)により原子層堆積膜12を形成する際に使用する成膜原料である前駆体と結合可能な官能基を有する高分子材料を用いることができる。例えば、高分子材料としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ナイロン−6、ナイロン−66、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル、アクリル、トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロース(DAC)等を用いることができる。なお、前駆体と結合可能な官能基を有する高分子材料であれば、上記高分子材料には限られない。
原子層堆積膜12は、基材11の一方の面である表面11a上に形成されている。原子層堆積膜12は、原子層堆積法によって成膜される膜である。原子層堆積膜12は、基材11の表面11aと接する面とは反対側に表面12aを有している。
原子層堆積膜12の膜厚は、例えば、1ナノメートル以上200ナノメートル以下であることが好ましい。原子層堆積膜12の膜厚が1ナノメートル未満であると、ガスバリア性等の機能を十分に発現することができない。また、原子層堆積膜12の膜厚が200ナノメートルを超えると、成膜時間を要し、製造コストも高くなるため好ましくない。
原子層堆積膜12は、アルミニウム(Al)の酸化物(AlO)およびアルミニウム以外の元素(M)の酸化物(MO)を含有する膜(AlM)であり、ここでのxおよびyは自然数であれば特に限定されない。アルミニウム以外の元素(M)としては、例えば、シリコン(Si)、チタン(Ti)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)のうちいずれかを用いることができる。
原子層堆積膜12が含有するアルミニウム(Al)の酸化物(AlO)の成膜原料となる前駆体は、第1の前駆体14である。
第1の前駆体14としては、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリエチルアルミニウム(TEA)、ジメチルアルミニウムイソプロポキシド(DMAI)、アルミニウムセカンダリブトキシド(ASB)等の有機アルミニウム化合物を用いることができる。
原子層堆積膜12が含有するアルミニウム以外の元素(M)の酸化物(MO)の成膜原料となる前駆体は、第2の前駆体15である。
第2の前駆体15としては、トリスジメチルアミノシラン(3DMAS)、SAM.24(登録商標)、ビスジエチルアミノシラン(BDEAS)等の有機シリコン化合物や、チタンテトラクロリド(TTC)、テトラキスジメチルアミノチタン(TDMAT)、ペンタエトキシタンタル(PEOT)等の有機金属化合物を用いることができる。
原子層堆積法によって原子層堆積膜12を成膜する際には、目的の堆積物に応じて、第1の前駆体14および第2の前駆体15をそれぞれ適宜選択する。
図1に示すように、本実施形態に係るガスバリアフィルム10には、基材11の表面11aを含む表層に浸透層11Bが形成されている。浸透層11Bは、基材11の一部であって、原子層堆積膜12の成膜原料となる前駆体が浸透した層である。
図1において、浸透層11B(基材11)の一部である領域Rを拡大した模式図を示している。浸透層11Bは、高分子材料からなる基材11の一部であり、高分子鎖13を有している。
一般的に、高分子材料からなる基材(フィルム)には、結晶領域と非結晶領域とが混在しており、非結晶領域では、自由体積(フリーボリューム)と呼ばれる高分子鎖が存在していない空隙がある。
図1における領域Rの拡大模式図に示すように、浸透層11B(基材11の表層)においても、非結晶領域では高分子鎖13が存在していない自由体積が存在する。このため、原子層堆積法により原子層堆積膜12を成膜する際には、原子層堆積膜12の成膜原料となる前駆体が基材11の表面11aを含む表層に対して浸透していく。
なお、図1では、浸透層11Bの境界を破線Lで示しているが、説明の便宜上のものであり、実際には破線Lのような明確な境界は存在せず、その境界は不規則かつ不鮮明なものとなっている。
本実施形態においては、基材11の表面11aを含む表層に対して第1の前駆体14を積極的に浸透させることで、浸透層11Bを形成している。つまり、基材11上に原子層堆積法によって原子層堆積膜12を成膜する際に生じる前駆体の基材への浸透を積極的に利用し、かつ当該浸透を制御することで浸透層11Bを形成している。
より詳細には、原子層堆積膜12が含有するアルミニウム(Al)の酸化物(AlO)の成膜原料となる第1の前駆体14と、原子層堆積膜12が含有するアルミニウム以外の元素(M)の酸化物(MO)の成膜原料となる第2の前駆体15とを、所定の関係を満足するように基材11の表面11aを含む表層に対して浸透させることで、浸透層11Bを形成している。
所定の関係とは、原子層堆積膜12中であって原子層堆積膜12の表面12aから所定の深さにおけるアルミニウム(Al)の組成比および元素(M)の組成比をそれぞれX1およびY1、X1/Y1の値(X1をY1で除した値)をZ1、基材11(浸透層11B)中であって基材11の表面11aから所定の深さにおけるアルミニウム(Al)の組成比および元素(M)の組成比をそれぞれX2およびY2、X2/Y2の値(X2をY2で除した値)をZ2とした場合に、基材11(浸透層11B)中の少なくとも一部において、Z1の最大値とZ2とが、Z1の最大値<Z2の関係を満たしていることである。
上記の各組成比X1、Y1、X2、Y2は、例えばX線光電子分光分析装置(XPS装置)を用いて測定することができる。X線光電子分光分析法(XPS法)は、X線照射により放出される光電子のエネルギー分布を測定し、試料表面(数ナノメートル程度の深さ)の元素の種類、存在量、化学結合状態に関する知見を得る手法である。XPS法では、イオンスパッタリングを利用して、試料表面のエッチングを行い、エッチングと測定とを交互に繰り返すことで、試料の深さ方向(厚み方向)における元素の種類や組成比等の情報を得ることができる。また、この場合には、試料のエッチングレートに基づいて試料表面からの深さの情報を見積もることができる。
上記の所定の関係を満足する基材11の表面11aを含む表層(浸透層11B)では、図1における領域Rの拡大模式図に示すように、高分子鎖13が存在していない自由体積に対して第1の前駆体14が確実に浸透している。
このため、基材11と原子層堆積膜12との界面付近(浸透層11B)を、基材11を構成する高分子材料と、原子層堆積膜12の成膜原料(第1の前駆体14)とのハイブリッド層であるかのように構成することができるため、基材11と原子層堆積膜12との密着性が安定して維持される。
基材11中におけるX2/Y2の値であるZ2は、基材11の表面11a近傍においてZ1の最大値よりも大きくなることが好ましい。より詳細には、Z1の最大値<Z2との関係を満たす基材11中の少なくとも一部は、基材11の表面11aから原子層堆積膜12のエッチングレート換算で深さ10ナノメートルまでの所定の深さに位置していることが好ましい。
基材11中であって、Z1の最大値<Z2との関係を満足する基材11の一部が上記範囲の所定の深さに位置していることで、基材11中であって、かつ原子層堆積膜12との界面近傍の領域(部分)を多くの第1の前駆体14が配置された領域(部分)とすることができる。このため、基材11と原子層堆積膜12との密着性がより安定して維持される。
上記のように構成された本実施形態に係るガスバリアフィルム10の製造方法について説明する。
原子層堆積膜成膜装置(ALD装置)は、第1の前駆体14を収容する第1供給源と、第2の前駆体15を収容する第2供給源と、第1の前駆体14および第2の前駆体15を導入可能な真空チャンバーとを備えている。
原子層堆積膜成膜装置の真空チャンバー内のステージに、基材11の表面11aが上面側の面となるように基材11を配置する(基材配置工程)。
次いで、真空チャンバー内に、反応ガス兼放電ガスを導入し、基材11の表面11aに当該反応ガス兼放電ガスを供給する。このとき、真空チャンバー内の圧力は、例えば、10〜50パスカルの範囲内で適宜設定することができる。反応ガス兼放電ガスとしては、酸素、オゾン、水、過酸化水素、アンモニア、窒素、亜酸化窒素のうちいずれかのガス、またはそれらの混合ガスを用いることができる。
次いで、真空チャンバー内において、ICP(Inductively Coupled Plasma)モードでプラズマ放電を実施する。このとき、プラズマ放電の出力電源としては、例えば、250ワットの電源を用いることができる。また、プラズマガス励起用電源としては、例えば、13.56メガヘルツの電源を用いることができる。
プラズマ放電後、真空チャンバー内をガスパージ処理する。ガスパージ処理を行う際に使用するパージガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素等の不活性ガスを用いることができる。ガスパージ処理時の温度は、高分子材料からなる基材11の温度あるいは基材11を配置しているステージ温度を超えない温度であり、例えば、90℃に設定することができる。
次いで、真空チャンバー内に配置された基材11の一方の面である表面11a上に、原子層堆積膜12を成膜する(原子層堆積膜成膜工程)。より詳細には、原子層堆積膜成膜工程は、以下のステップAからステップDを1サイクルとして行われる。
真空チャンバー内に、アルミニウム(Al)の酸化物(AlO)の成膜原料となる第1の前駆体14と、アルミニウム以外の元素(M)の酸化物(MO)の成膜原料となる第2の前駆体15とを供給し、基材11の表面11aに第1の前駆体14および第2の前駆体15を供給する(ステップA)。
ステップAにおいて、第1の前駆体14および第2の前駆体15は、基材11の表面11aに配置されると共に、その一部は図1に示すように基材11の表面11aを含む表層に浸透する。
第1の前駆体14としては、基材11の自由体積よりも分子量サイズ(配位子サイズ)の小さいものを用いる。これにより、図1における領域Rの拡大模式図に示すように、浸透層11B(基材11の表層)において、高分子鎖13が存在していない自由体積に対して第1の前駆体14が浸透しやすくなる。
第2の前駆体15としては、第1の前駆体14よりも分子量サイズ(配位子サイズ)の大きいものを用いる。これにより、図1における領域Rの拡大模式図に示すように、浸透層11B(基材11の表層)において、高分子鎖13が存在していない自由体積に対して第2の前駆体15が浸透しにくくなる。
第1の前駆体14の分子量サイズと第2の前駆体15の分子量サイズとを適宜設定することで、例えば、図1における領域Rの拡大模式図に示すように、第2の前駆体15と比較して第1の前駆体14がリッチな浸透層11Bを形成することができる。
一定時間が経過した後、基材11に含まれる官能基と結合されていない、または基材11内に浸透していない第1の前駆体14および第2の前駆体15を真空ポンプ等で真空チャンバーの外へ排気する(ステップB)。
ステップBにおいて、真空チャンバー内にヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素等の不活性ガスをあわせて供給してもよい。
次いで、真空チャンバー内に反応ガスを供給し、反応ガスに電圧を印加することでプラズマを発生させ、当該プラズマを第1の前駆体14および第2の前駆体15と反応させることで、一原子層分の原子層堆積膜12を形成する(ステップC)。
ステップCにおいて、反応ガスとしては、酸素、窒素、二酸化炭素、水素のうちいずれかのガス、またはそれらの混合ガスを用いることができる。また、このときの真空チャンバー内の圧力は、例えば、10〜50パスカルの範囲内で適宜設定することができる。また、ICPモードでプラズマ放電を行うことでプラズマを発生させることができる。このときに使用するプラズマガス励起用電源としては、例えば、13.56メガヘルツの電源を用いることができる。
次いで、真空チャンバー内にパージガスを供給し、ガスパージ処理を行う(ステップD)。パージガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、窒素等の不活性ガスを用いることができる。
上記のステップAからステップDまでの処理を1サイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことで、アルミニウム(Al)の酸化物(AlO)およびアルミニウム以外の元素(M)の酸化物(MO)を含有する原子層堆積膜12(AlM)が成膜される。
本実施形態に係るガスバリアフィルム10の製造方法においては、上記の原子層堆積膜成膜工程において、成膜の初期段階での第1の前駆体14の供給量を、初期段階よりも後の段階での第1の前駆体14の供給量の1.5倍以上としている。
上記のステップAからステップDのサイクルが繰り返されていくと、基材11の表面11aは、徐々に原子層堆積膜12を構成する堆積物によって緻密に覆われていく。このため、成膜が進むにつれて、第1の前駆体14は基材11中に浸透しにくくなる。
そこで、本実施形態に係るガスバリアフィルム10の製造方法では、原子層堆積膜12中におけるX1/Y1のZ1と、基材11(浸透層11B)中におけるX2/Y2のZ2とが、基材11中の少なくとも一部において、Z1の最大値<Z2の関係を満足するように、第1の前駆体14が基材11中に浸透しやすい成膜の初期段階においてその供給量を増加させている。例えば、初期段階において、第1の前駆体14の分圧を大きくしたり、基材11の表面11aが第1の前駆体14に曝される時間を長くしたりすることで、第1の前駆体14の基材11への供給量を増加させることができる。
成膜の初期段階での第1の前駆体14の供給量は、初期段階よりも後の段階での第1の前駆体14の供給量の1.5倍以上とすることが好ましい。成膜の初期段階での第1の前駆体14の供給量を1.5倍以上とすることで、第1の前駆体14を確実に基材11の表面11aを含む表層に浸透させることができる。このため、基材11と原子層堆積膜12との密着性を安定して維持するための浸透層11Bを確実に形成することができる。
また、第1の前駆体14の供給量を増加させる初期段階は、原子層堆積膜12の成膜開始から原子層堆積膜12の膜厚が0.1ナノメートル以上5.0ナノメートル以下に達するまでであることが好ましい。初期段階を原子層堆積膜12の膜厚が0.1ナノメートルに達するよりも前までとすると、第1の前駆体14の基材11への浸透の量が十分ではなくなる可能性がある。また、原子層堆積膜12の膜厚が5.0ナノメートルに達すると、基材11の表面11aはすでに緻密に原子層堆積膜12を構成する堆積物によって覆われているため、それ以降の段階において第1の前駆体14の供給量を増加させても無駄になってしまう可能性がある。
上記のステップAからステップDのサイクルを少なくとも15回繰り返すと原子層堆積膜12の膜厚は5.0ナノメートルに達する。したがって、第1の前駆体14の供給量を増加させる初期段階は、原子層堆積膜12の成膜開始からサイクル数が15回以下までであることが好ましいともいえる。
以上説明したように、本実施形態のガスバリアフィルム10によれば、原子層堆積膜12の成膜原料となる前駆体が基材11に浸透し、原子層堆積膜12中におけるX1/Y1のZ1と、基材11(浸透層11B)中におけるX2/Y2のZ2とが、基材11中の少なくとも一部において、Z1の最大値<Z2の関係を満たしている。したがって、基材11と原子層堆積膜12との界面付近(浸透層11B)を、基材11を構成する高分子材料と、原子層堆積膜12の成膜原料(第1の前駆体14)とのハイブリッド層であるかのように構成することができ、基材11と原子層堆積膜12との密着性が安定して維持される。基材11と原子層堆積層12との密着性が安定して維持されるため、ガスバリアフィルム10のガスバリア性も好適に持続する。
さらには、原子層堆積膜12の前駆体の基材11への浸透を利用することで、基材11と原子層堆積膜12との密着性を向上させているため、煩雑なプロセスを要することがない。
さらには、基材11が自由体積を有する基材であれば、本実施形態に係る構成を適用することができる。したがって、基材11として利用可能な高分子材料は多く、例えば、基材11として、透明性が高く、複屈折率が低い光学等方性を有する基材を採用することができる。
本実施形態のガスバリアフィルム10の製造方法によれば、原子層堆積膜12の成膜原料となる前駆体を基材11に浸透させ、原子層堆積膜12中におけるX1/Y1のZ1と、基材11(浸透層11B)中におけるX2/Y2のZ2とを、基材11中の少なくとも一部において、Z1の最大値<Z2の関係を満足するように制御することができる。また、原子層堆積膜12の成膜原料となる第1の前駆体14の基材11への浸透の量を制御して、基材11と原子層堆積膜12との密着性を向上させているため、煩雑なプロセスを要することがない。したがって、基材11と原子層堆積膜12との密着性を安定して維持し、ガスバリア性を持続するガスバリアフィルム10を効率良く製造することができる。
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について、図2を参照して説明する。本実施形態に係るガスバリアフィルムは、基材と原子層堆積膜との間にハードコート膜を備えているという点で、第一実施形態とは異なっている。
なお、以降の説明において、既に説明したものと共通する構成等については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図2は、本実施形態に係るガスバリアフィルム20を模式的に示す断面図である。ガスバリアフィルム20は、高分子材料からなる基材11と、原子層堆積膜12と、基材11と原子層堆積膜12との間に配されたハードコート膜21とを備えている。
基材11の表面11a上にハードコート膜21が形成され、ハードコート膜21の表面21a上に原子層堆積膜12が形成されている。
ハードコート膜21の材質や膜厚等の構成は、基材11の材料や原子層堆積膜12の成膜原料である第1の前駆体14との関係で決定される。
本実施形態のガスバリアフィルム20は、所望のハードコート膜21を基材11と原子層堆積膜12との間に介在させることで、原子層堆積膜12を成膜する際の第1の前駆体14の基材11への浸透を構造的に制御するものである。ハードコート膜21を設けることで、第1の前駆体14を基材11に浸透しにくくさせることができ、例えば、ハードコート膜21の膜厚を適宜調整することで、第1の前駆体14の基材11への浸透のしやすさおよび浸透しにくさを調整することができる。
基材11として、自由体積が大きな基材を用いる場合には、基材11の表面11aを含む表層(浸透層11B)には第1の前駆体14が浸透しやすい。このような場合に、基材11と原子層堆積膜12との間にハードコート膜21を介在させることで、第1の前駆体14の基材11への浸透を好適に制御することができる。
ハードコート膜21は、有機材料、または有機材料と無機材料とのハイブリッド材料から構成されている。ハードコート膜21を構成する有機材料としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、多糖類等を用いることができる。これらの有機材料を単体で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、ハードコート膜21を構成する有機材料と無機材料とのハイブリッド材料としては、有機材料と金属アルコキシド(TEOS等)の加水分解物等を用いることができる。
ハードコート膜21の膜厚は、上記の観点で適宜設定されるものであり、例えば、10ナノメートル以上100マイクロメートル以下とすることができる。また、ハードコート膜21は、複数の層を積層させた積層膜で構成されてもよい。
本実施形態のガスバリアフィルム20においても、原子層堆積膜12の成膜原料となる前駆体が基材11に浸透し、原子層堆積膜12中におけるX1/Y1のZ1と、基材11(浸透層11B)中におけるX2/Y2のZ2とが、基材11中の少なくとも一部において、Z1の最大値<Z2の関係を満たしている。したがって、基材11と原子層堆積膜12との密着性が安定して維持され、ガスバリアフィルム20のガスバリア性も好適に持続する。
さらには、第1の前駆体14を基材11に対して構造的に浸透しにくくすることができるため、自由体積が比較的大きな基材等をガスバリアフィルム20の基材11として用いることができる。
また、本実施形態のガスバリアフィルム20はハードコート膜21を形成する必要があるため、第一実施形態のガスバリアフィルム10と比較すると製造プロセスが増えることになる。しかしながら、公知の製造技術を用いてハードコート膜21を追加すればよいため、相変わらずその製造効率は高い。
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態について、図3を参照して説明する。本実施形態に係るガスバリアフィルムは、原子層堆積膜の表面上にオーバーコート膜を備えているという点で、第一実施形態とは異なっている。
図3は、本実施形態に係るガスバリアフィルム30を模式的に示す断面図である。ガスバリアフィルム30は、高分子材料からなる基材11と、原子層堆積膜12と、原子層堆積膜12の表面12a上に形成されたオーバーコート膜31とを備えている。
オーバーコート膜31は、原子層堆積膜12の表面12a上に形成されている。オーバーコート膜31は、原子層堆積膜12の表面12aと接する面とは反対側に表面31aを有している。
図3に示すように、原子層堆積膜12の表面12aを覆うようにオーバーコート膜31を設けることで、環境ストレス、特に高温高湿度環境下における原子層堆積膜12を保護することができると共に、機械的ストレスから原子層堆積膜12を保護することができる。
オーバーコート膜31は、有機材料、無機材料、または有機材料と無機材料とのハイブリッド材料から構成されている。オーバーコート膜31を構成する有機材料としては、例えば、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等を用いることができる。また、オーバーコート膜31を構成する無機材料としては、例えば、酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウム等の酸化物を用いることができる。また、オーバーコート膜31を構成する有機材料と無機材料とのハイブリッド材料としては、例えば、有機材料と金属アルコキシド(TEOS等)の加水分解物等を用いることができる。
オーバーコート膜31の膜厚は、例えば、10ナノメートル以上5000ナノメートル以下とすることができる。また、オーバーコート膜31は、複数の層を積層させた積層膜で構成されてもよい。
本実施形態のガスバリアフィルム30においても、原子層堆積膜12の成膜原料となる前駆体が基材11に浸透し、原子層堆積膜12中におけるX1/Y1のZ1と、基材11(浸透層11B)中におけるX2/Y2のZ2とが、基材11中の少なくとも一部において、Z1の最大値<Z2の関係を満たしている。したがって、基材11と原子層堆積膜12との密着性が安定して維持され、ガスバリアフィルム30のガスバリア性も好適に持続する。
さらには、原子層堆積膜12の表面12aを覆うようにオーバーコート膜31を設けることで、環境ストレスや機械的ストレスから原子層堆積膜12を保護することができる。
また、本実施形態のガスバリアフィルム30はオーバーコート膜31を形成する必要があるため、第一実施形態のガスバリアフィルム10と比較すると製造プロセスが増えることになる。しかしながら、公知の製造技術を用いてオーバーコート膜31を追加すればよいため、相変わらずその製造効率は高い。
(第四実施形態)
次に、本発明の第四実施形態について、図4を参照して説明する。本実施形態に係るガスバリアフィルムは、上記の第二実施形態に係るハードコート膜と、上記の第三実施形態に係るオーバーコート膜との両方を備えている。
図4は、本実施形態に係るガスバリアフィルム40を模式的に示す断面図である。ガスバリアフィルム40は、高分子材料からなる基材11と、原子層堆積膜12と、基材11と原子層堆積膜12との間に配されたハードコート膜21と、原子層堆積膜12の表面12a上に形成されたオーバーコート膜31とを備えている。
本実施形態のガスバリアフィルム40においても、原子層堆積膜12の成膜原料となる前駆体が基材11に浸透し、原子層堆積膜12中におけるX1/Y1のZ1と、基材11(浸透層11B)中におけるX2/Y2のZ2とが、基材11中の少なくとも一部において、Z1の最大値<Z2の関係を満たしている。したがって、基材11と原子層堆積膜12との密着性が安定して維持され、ガスバリアフィルム40のガスバリア性も好適に持続する。
さらには、ガスバリアフィルム40は、ハードコート膜21およびオーバーコート膜31を備えているため、上記の第二実施形態に係る効果および上記の第三実施形態に係る効果も奏する。
次に、以下に示す実施例に基づいて、本発明のガスバリアフィルムについてより詳細に説明する。
(実施例1)
本実施例1では、第一実施形態に開示された構成を有するガスバリアフィルム10(図1参照)を作製した。
基材配置工程においては、基材11として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意し、ALD装置の真空チャンバー内のステージにPETフィルムを配置した。
原子層堆積膜成膜工程においては、原子層堆積膜12として、アルミニウム(Al)の酸化物(AlO)およびシリコン(Si)の酸化物(SiO)を含有する原子層堆積膜(AlSi)を成膜した。
具体的には、真空チャンバー内に、アルミニウム(Al)の酸化物(AlO)の成膜原料となる第1の前駆体14としてトリメチルアルミニウム(TMA)と、シリコン(Si)の酸化物(SiO)の成膜原料となる第2の前駆体15としてSAM.24とを供給した。
そして、PETフィルムの表面に、TMAおよびSAM.24を吸着させた。このとき、PETフィルムの表面を含む表層に対してTMAおよびSAM.24を浸透させた。
TMAの分子量はSAM.24の分子量よりも小さく、また、成膜の初期段階(成膜開始から3.0ナノメートルの膜厚に達するまでの段階)におけるTMAの供給量を初期段階よりも後の段階におけるTMAの供給量の1.5倍としたことで、PETフィルムの表面を含む表層に対して積極的にTMAを浸透させた。
その後、真空チャンバー内の排気を行い、PETフィルムの表面に吸着しなかった、または浸透しなかった余剰なTMAおよびSAM.24を排気した。
続いて、真空チャンバー内に反応ガスを供給し、反応ガスに電圧を印加することでプラズマを発生させた。当該プラズマをTMAおよびSAM.24と反応させて、PETフィルムの表面に一原子層分の原子層堆積膜(AlSi)を成膜した。
その後、真空チャンバー内にパージガスを供給し、ガスパージ処理を行った。
このような真空チャンバー内への前駆体供給からガスパージ処理までの一連の工程を1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返すことにより、PETフィルムの表面に膜厚20ナノメートルの原子層堆積膜(AlSi)を成膜した。また、上記の通り、原子層堆積膜(AlSi)の膜厚が3.0ナノメートルに達するまでの初期段階(サイクル数が10回までの初期段階)では、TMAの供給量は、その後の段階におけるTMAの供給量の1.5倍とした。
以上のようにして、本実施例1のガスバリアフィルム10を得た。今回は、本実施例1のガスバリアフィルム10として、サンプル1からサンプル4を製造し、サンプル1からサンプル3は原子層堆積膜(AlSi)の成膜時の温度(ステージ温度)を115℃とし、サンプル4は80℃とした。
図5は、本実施例1のガスバリアフィルム10において測定されたガスバリアフィルム10の深さ方向(厚み方向)とアルミニウム原子の組成比との関係を示すグラフである。図5に示す縦軸のアルミニウム原子の組成比(atomic%)はXPS法を用いて測定した。図5に示す横軸の深さ(ナノメートル)は、原子層堆積膜(AlSi)の表面からの深さを示しており、原子層堆積膜(AlSi)のエッチングレート換算で算出した。
図5からわかるように、本実施例1のサンプル1からサンプル4では、原子層堆積膜(AlSi)だけではなく、基材(PET)(図5における深さ20ナノメートル以降の範囲)からもアルミニウムが測定されており、前駆体であるTMAがPET中に浸透していることが確認できた。
図6は、本実施例1のガスバリアフィルム10において測定されたガスバリアフィルム10の深さ方向(厚み方向)とシリコン原子の組成比との関係を示すグラフである。図6に示す縦軸のシリコン原子の組成比(atomic%)はXPS法を用いて測定した。図6に示す横軸の深さ(ナノメートル)は、原子層堆積膜(AlSi)の表面からの深さを示しており、原子層堆積膜(AlSi)のエッチングレート換算で算出した。
図6からわかるように、本実施例1のサンプル1からサンプル4では、原子層堆積膜(AlSi)だけではなく、基材(PET)(図6における深さ20ナノメートル以降の範囲)からもシリコンが測定されており、前駆体であるSAM.24がPET中に浸透していることが確認できた。
図7は、本実施例1のガスバリアフィルム10において測定されたガスバリアフィルム10の深さ方向(厚み方向)とアルミニウム原子の組成比/シリコン原子の組成比との関係を示すグラフである。図7に示す横軸の深さ(ナノメートル)は、図5および図6の横軸と対応している。図7に示す縦軸は、図5の所定の深さにおけるアルミニウム原子の組成比(atomic%)を、図6の対応する所定の深さにおけるシリコン原子の組成比(atomic%)で除した値を示している。例えば、図7の深さ30ナノメートルにおけるアルミニウム原子の組成比/シリコン原子の組成比は、図5の深さ30ナノメートルにおけるアルミニウム原子の組成比(atomic%)を、図6の深さ30ナノメートルにおけるシリコン原子の組成比(atomic%)で除した値である。
図7からわかるように、例えばサンプル4では、原子層堆積膜(AlSi)中である深さ15ナノメートルにおいて、X1/Y1の値であるZ1が最大値となっていた。そして、基材(PET)中である深さ21ナノメートルにおいて、X2/Y2の値であるZ2がZ1の最大値よりも大きくなっており、基材(PET)中である深さ30ナノメートルにおけるZ2もZ1の最大値よりも大きくなっていることが確認できた。つまり、Z1の最大値<Z2の関係を満たす基材(PET)の少なくとも一部は、基材(PET)の表面から原子層堆積膜(AlSi)のエッチングレート換算で深さ10ナノメートルまでの深さに位置していることが確認できた。
同様に、図7からわかるように、サンプル1からサンプル3についても、原子層堆積膜(AlSi)中におけるX1/Y1のZ1と、基材(PET)中におけるX2/Y2のZ2とが、基材(PET)中の少なくとも一部において、Z1の最大値<Z2の関係を満たしていることが確認できた。
(実施例2)
本実施例2では、第一実施形態に開示された構成を有するガスバリアフィルム10(図1参照)を作製した。
本実施例2では、シリコン(Si)の酸化物(SiO)の成膜原料となる第2の前駆体15としてSAM.24に代えて、トリスジメチルアミノシラン(3DMAS)を用いた。その他の構成は、全て実施例1と同様とした。
本実施例2のガスバリアフィルム10においても、原子層堆積膜(AlSi)中におけるX1/Y1のZ1と、基材(PET)中におけるX2/Y2のZ2とが、基材(PET)中の少なくとも一部において、Z1の最大値<Z2の関係を満たしていることが確認できた。
(評価)
上記の実施例1および実施例2で作製したガスバリアフィルム10について、密着性およびガスバリア性を評価するために、水蒸気透過率測定装置を用いて、実施例1および実施例2のガスバリアフィルム10の水蒸気透過率(WVTR)を測定した。
各ガスバリアフィルム10の製造直後の水蒸気透過率を測定した後、各ガスバリアフィルム10を85℃、85%RHの雰囲気下に500時間曝し、再び各ガスバリアフィルム10の水蒸気透過率を測定した。
その結果、いずれのガスバリアフィルム10についても、製造直後の水蒸気透過率は5×10−4g/(m・day)であり、85℃、85%RHの雰囲気下に500時間曝した後の水蒸気透過率は5×10−3g/(m・day)であった。各ガスバリアフィルム10は、85℃、85%RHの雰囲気下に500時間曝されても、高いガスバリア性を持続しており、基材11と原子層堆積膜12との密着性が安定して維持されていることがわかった。
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
例えば、上述の各実施形態では、ガスバリアフィルムは、その機能としてガスバリア性を有していることを説明したが、上記の各実施形態におけるガスバリアフィルムには、ガスバリア性に加えて、他の機能を付与してもよい。このとき、付与する機能は深さ方向(厚み方向)に傾斜していることが好ましい。機能が傾斜しているとは、フィルムの深さ方向(厚み方向)において、その機能が徐々に変化していることを意味する。例えば、基材の深さ方向において前駆体の浸透の量を制御することによって、屈折率に傾斜を持たせた傾斜機能付きのガスバリアフィルムとすることができる。屈折率に傾斜を持たせるとは、フィルムの深さ方向(厚み方向)において、屈折率の高低を徐々に変化させることを意味する。
また、上述の第一実施形態では、真空チャンバー内に、第1の前駆体14および第2の前駆体15の両方を同時に供給する例を説明したが、先ず第1の前駆体14を供給し、その後第2の前駆体15を供給してもよい。この場合、各サイクルにおいて第1の前駆体14から供給されるため、第1の前駆体14を基材11により浸透させやすくすることができる。
なお、例えば、1サイクル目のみ第1の前駆体14から供給し、以降のサイクルでは第1の前駆体14および第2の前駆体15を同時に供給してもよい。もちろん、1サイクル目から数サイクルの各サイクルにおいて、第1の前駆体14を第2の前駆体15よりも先に供給してもよい。
また、上述の第一実施形態で説明したガスバリアフィルム10の製造方法は一つの例であり、ガスバリアフィルム10が上記のZ1の最大値<Z2の関係を満足するように製造されれば、その製造方法は限定されない。
また、上述の各実施形態では、ガスバリアフィルムは、その機能としてガスバリア性を有していることを説明したが、ガスバリアフィルムに求められる機能に応じて、適宜の膜および層を追加したり、削除したりすることができることは言うまでもない。
上記実施形態のガスバリアフィルムによれば、製造効率を上げつつ、基材と原子層堆積膜との密着性を安定して維持し、ガスバリア性を持続することができる。
また、上記実施形態のガスバリアフィルムの製造方法によれば、基材と原子層堆積膜との密着性を安定して維持し、ガスバリア性を持続するガスバリアフィルムを効率良く製造することができる。
10、20、30、40 ガスバリアフィルム
11 基材
11a (基材の)表面
11B 浸透層
12 原子層堆積膜
12a (原子層堆積膜の)表面
13 高分子鎖
14 第1の前駆体
15 第2の前駆体
21 ハードコート膜
21a (ハードコート膜の)表面
31 オーバーコート膜
31a (オーバーコート膜の)表面

Claims (8)

  1. 高分子材料からなる基材と、
    前記基材の表面上に形成され、アルミニウムの酸化物およびアルミニウム以外の元素の酸化物を含有する原子層堆積膜と、を備え、
    前記原子層堆積膜中であって前記原子層堆積膜の表面から所定の深さにおける前記アルミニウムの組成比および前記元素の組成比をそれぞれX1およびY1、X1/Y1の値をZ1、前記基材中であって前記基材の表面から所定の深さにおける前記アルミニウムの組成比および前記元素の組成比をそれぞれX2およびY2、X2/Y2の値をZ2とした場合に、前記基材中の少なくとも一部において、Z1の最大値とZ2とは、Z1の最大値<Z2の関係を満たしていることを特徴とするガスバリアフィルム。
  2. 前記関係を満たす前記基材中の少なくとも一部は、前記基材の表面から前記原子層堆積膜のエッチングレート換算で深さ10ナノメートルまでの所定の深さに位置していることを特徴とする請求項1に記載のガスバリアフィルム。
  3. 前記元素は、シリコン、チタン、ニオブ、タンタル、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、スズのうちいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
  4. 前記原子層堆積膜の表面上に形成され、有機材料、無機材料、または有機材料と無機材料とのハイブリッド材料からなるオーバーコート膜をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
  5. 前記基材と前記原子層堆積膜との間に配され、有機材料、または有機材料と無機材料とのハイブリッド材料からなるハードコート膜をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
  6. 前記基材は、光学等方性を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガスバリアフィルム。
  7. 請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガスバリアフィルムの製造方法であって、
    真空チャンバー内に前記基材を配置する基材配置工程と、
    前記真空チャンバー内に配置された前記基材の表面上に、原子層堆積法により、前記原子層堆積膜を成膜する原子層堆積膜成膜工程と、を備え、
    前記原子層堆積膜成膜工程において、初期段階での前記アルミニウムの酸化物の成膜原料となる前駆体の供給量を、前記初期段階よりも後の段階での前記前駆体の供給量の1.5倍以上とすることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
  8. 前記原子層堆積膜成膜工程における前記初期段階は、前記原子層堆積膜の成膜開始から前記原子層堆積膜の膜厚が0.1ナノメートル以上5.0ナノメートル以下に達するまでであることを特徴とする請求項7に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
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