以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る歩行補助装置100の側面概観図であり、図2は、図1の状態における歩行補助装置100を上方から観察した上面概観図である。本実施形態に係る歩行補助装置100は、使用者の歩行を補助するための装置であり、使用者からの荷重を支えつつ、使用者の歩行に沿って併走する。歩行補助装置100は、主に、怪我等により一時的に歩行が困難となった患者のリハビリ訓練に用いられる。
歩行補助装置100は、移動方向に沿って2つの前輪111と1つの後輪113を備える。前輪111は、台車基台110に配設され、台車基台110に収容された不図示のモータと減速機構によって駆動されて、駆動輪として機能する。後輪113は、台車基台110から後方へ伸延する台車フレーム112の後端近傍に配設され、歩行補助装置100の移動方向に倣うように追従する従動輪として機能する。歩行補助装置100は、3つの車輪によって3点で接地しており、使用者900が使用していない待機状態でも自立する、静的安定車輌である。
支柱114は、台車基台110に対して立設され、使用者900からの荷重を台車基台110へ伝達するための支持部材である。支柱114は、台車基台110に支持される一端側とは反対の他端側近傍で、水平方向へ突出するハンドル115を支持している。ハンドル115の先端部には、使用者900が把持しやすいように、例えばウレタンのグリップ116が設けられている。グリップ116は、使用者900が把持する把持部であり、使用者900から荷重を受けて、ハンドル115、更には支柱114へその荷重を伝達する。
アーム117は、一端側で支柱114の中心軸周りに回動可能に支柱114に支持され、他端側でディスプレイ122を支持する。また、アーム117は、回動機構を介して接続された複数のリンクを有する。支柱114に設けられた回動機構を含めそれぞれの回動機構は所定の位置で固定できる構造を有し、アーム117は、使用者900等が調整した姿勢を保つことができる。したがって、ディスプレイ122は、例えば図示するように使用者900の顔前に配置され得る。すなわち、アーム117は、使用者900の進行方向の視界の少なくとも一部を遮る位置にディスプレイ122を位置させる位置調整部としての機能を有する。
ディスプレイ122は、例えば液晶パネルであり、後述する映像やリハビリ訓練に関する各種情報を表示する。ディスプレイ122は、表示部としての機能を担う。ディスプレイ122は、使用者900の顔前に配置されるように、使用者900の身体に合わせてアーム117の姿勢が調整される。具体的には、使用者900が進行方向へ向いたときの視界Eにディスプレイ122の表示画面が含まれるように調整され、結果的には使用者900の進行方向の視界の少なくとも一部がディスプレイ122によって遮られる。このように、ディスプレイ122が使用者900の顔前に配置されることにより、使用者900はディスプレイ122を観察している状態でも、背筋を伸ばした、理想的な歩行姿勢を維持することができる。
制御ユニット120は、後述の制御部とメモリ等を含む。制御ユニット120は、ディスプレイ122や前輪111を駆動するモータの他にも、制御対象となる種々の要素と電気的に接続されている。それらの要素には、歩行補助装置100の状態や周辺環境の状況、使用者900の動作を観察する各種センサが含まれる。
本実施例における各種センサは、測距センサ130、前方カメラ131、足元カメラ132、把持スイッチ133を含む。測距センサ130は、支柱114に固定されており、使用者900の脚までの距離を計測する。より具体的には、測距センサ130は、例えばレーザレンジファインダであり、図2で示す破線で囲まれる水平面内の範囲Rをスキャンしてそれぞれの方向における検出距離を継続的に取得することにより、使用者900の歩行動作を検出する。なお、図1および図2において歩行補助装置100は、使用者900の右側方で移動するように使用されているが、使用者の左側方で移動するようにも使用され得る。そこで、範囲Rは、使用者が歩行補助装置100のどちら側に立って使用する場合であっても使用者の歩行動作を検出できるように、移動方向に対して対称な範囲が設定されている。なお、本実施例においては、「脚」は、股関節より下部全体を示す用語として用い、「足」を足首からつま先までの部分を示す用語として用いる。
前方カメラ131は、歩行補助装置100の移動方向である前方へ向けて、支柱114に固定されている。前方カメラ131は、例えばCMOSイメージセンサである撮像素子と画像データ生成部を含み、移動方向の空間を撮像して生成した画像データを出力する。前方カメラ131が撮像する画像は、使用者900の視界と同程度の画角を有し、必要に応じてディスプレイ122に表示される。具体的な表示態様については後に詳述する。
足元カメラ132は、使用者900の足元の全体が観察できるように、支柱114に固定されている。足元カメラ132は、例えばCMOSイメージセンサである撮像素子と画像データ生成部を含み、使用者900の足元を撮像して生成した画像データを出力する。足元カメラ132が撮像する画像は、使用者が歩行補助装置100の右側方および左側方のいずれに立った場合でもその足元が観察できる程度の画角を有し、必要に応じてディスプレイ122に表示される。具体的な表示態様については後に詳述する。
把持スイッチ133は、グリップ116の内側に配設されたオンオフスイッチであり、使用者900がグリップ116を把持している間はオン信号を出力する。把持スイッチ133は、物理的に電機接点が接触または非接触となる素子でも良いし、圧力を検出する類の素子などであっても良い。
図3は、歩行補助装置100の制御ブロック図である。制御部200は、例えばCPUであり、制御ユニット120に収容されている。制御部200は、歩行補助装置100の全体を統括的に制御する。
ディスプレイ122は、制御部200がディスプレイ122用に調整した映像信号を受信して、視認可能に表示する。例えば、制御部200は、前方カメラ131や足元カメラ132が出力する画像データを逐次取得し、動画像の映像信号としてディスプレイ122へ送信する。ディスプレイ122は、当該映像信号を受信して、動画像として表示する。また、ディスプレイ122は、制御部200が生成するテキストやイラストなどの映像信号も、視認可能にそれぞれ表示する。つまり、制御部200は、ディスプレイ122に表示する表示映像を制御する表示制御部としての機能も担う。
駆動輪ユニット210は、駆動輪である前輪111を駆動するための駆動回路やモータを含み、台車基台110に収容されている。制御部200は、駆動輪ユニット210へ駆動信号を送ることにより、前輪111の回転制御を実行する。車速センサ220は、前輪111の回転量を監視して、歩行補助装置100の速度を検出する。車速センサ220は、制御部200の要求に応じて、検出結果を速度信号として制御部200へ送信する。
メモリ230は、不揮発性の記憶媒体であり、例えばソリッドステートドライブが用いられる。メモリ230は、歩行補助装置100を制御するための制御プログラムの他にも、制御に用いられる様々なパラメータ値、関数、ルックアップテーブル、表示用のテキスト情報やイラスト情報等を記憶している。
測距センサ130は、上述のように、使用者900の脚までの距離を検出する。測距センサ130は、制御部200の要求に応じて、検出結果を測距信号として制御部200へ送信する。前方カメラ131は、上述のように、歩行補助装置100の前方空間を撮像して画像データを出力する。前方カメラ131は、制御部200の要求に応じて撮像を実行し、生成したが画像データを制御部200へ送信する。足元カメラ132は、上述のように、使用者900の足元を撮像して画像データを出力する。足元カメラ132は、制御部200の要求に応じて撮像を実行し、生成したが画像データを制御部200へ送信する。把持スイッチ133は、使用者900にグリップ116が把持された場合にオン信号を制御部200へ送信する。なお、把持スイッチ133は、使用者900がグリップ116を把持している間は、オン信号を継続して制御部200へ送信する。
次に、歩行補助装置100が移動を開始する条件について説明する。図4は、歩行補助装置100の移動開始条件を説明する図である。上段のグラフは、経過時間(横軸)に対する把持スイッチ133のオンオフ状態(縦軸)を表す。中段のグラフは、経過時間(横軸)に対する使用者900の脚速v(縦軸)を表す。下段のグラフは、経過時間(横軸)に対する歩行補助装置100の目標速度V(縦軸)を表す。それぞれのグラフの横軸は、相互に同期させて表している。
歩行補助装置100は、上述のように待機状態で自立している。待機状態では、使用者900はグリップ116を把持していないので把持スイッチ133の出力はオフである。使用者900が時刻t1の時点からグリップ116を把持すると、把持スイッチ133は時刻t1から継続してオン信号を出力する。制御部200は、把持スイッチ133からオン信号を受信することにより使用者900がグリップ116を把持する把持動作を検出する。すなわち、把持スイッチ133と制御部200は、協働して把持動作を検出する把持検出部として機能する。
制御部200は、把持スイッチ133から時刻t1にオン信号を受信すると、システムの全体を、電力消費を抑制するスリープ状態から抑制を解除したアクティブ状態へ移行させる。また、測距センサ130にセンシングを開始させる。
制御部200は、測距センサ130から測距信号を受信して、観察対象となる脚速を演算する。すなわち、測距センサ130と制御部200は、協働して使用者900の歩行動作を検出する動作検出部として機能する。具体的には、制御部200は、測距センサ130から測距信号としてセンシング時のスキャン角と検出距離のセットを連続的に取得する。スキャン角は、測距センサ130を基点とする範囲R内の方位を表す。検出距離は、測距センサ130から脚の検出点までの距離を表す。測距センサ130は、範囲R内に脚が存在しなければ検出距離を出力しない。制御部200は、1周期分の測距信号を取得することにより、範囲R内に存在する両脚の位置を把握できる。
制御部200は、把握する両脚を観察対象とする。制御部200は、観察対象の脚(以下、観察脚とする)のうち、例えば最も近い箇所を観察箇所と定め、その経時変化を観察する。制御部200は、歩行補助装置100に対する観察脚の脚速として、取得した検出距離の微分値を計算する。制御部200は、移動開始を判断する材料としてこの脚速vを用いる。
制御部200は、時刻t1後に、使用者900の脚速vが、歩行動作を開始したと認識できる基準脚速v0を超える時点を検出する。図においては、脚速vは時刻t2で基準脚速v0を超えるので、制御部200は、時刻t2で使用者900が歩行動作を開始したことを検出する。
制御部200は、把持動作と歩行動作の開始、及び両脚の位置を共に検出したので、歩行動作の開始を検出した時刻t2から、前輪111を駆動する駆動信号を駆動輪ユニット210へ送信する。そして、車速センサ220からの速度信号を監視し、目標速度VTに到達した後は、一定速度VTで歩行補助装置100を移動させる。このように、把持動作の検出のみで歩行補助装置100の移動を開始せず、歩行動作の開始と脚の位置も併せて検出した場合に歩行補助装置100の移動を開始すれば、歩行者の「訓練を開始したい」という意図を反映させることができる。特に、把持はしたものの、歩き出す体勢が整わないうちに歩行補助装置が動き始めることを防ぐことができる。
また、歩行補助装置100は、主にリハビリ訓練に用いられることを想定しているので、移動を開始した後は目標速度を一定速度とすることが好ましい。すなわち、リハビリ訓練においては若干の強制力を与えることで訓練効果を得るので、目標速度を一定速度とすることにより使用者の歩行をリードするという観点で好ましい。
次に、歩行補助装置100が訓練を終了する以前に移動を停止する緊急停止条件について説明する。緊急停止する条件は2つあり、いずれかの条件が満たされた場合に歩行補助装置100は緊急停止する。図5は、歩行補助装置100の1つ目の緊急停止条件を説明する図である。上段のグラフは、経過時間(横軸)に対する把持スイッチ133のオンオフ状態(縦軸)を表す。下段のグラフは、経過時間(横軸)に対する歩行補助装置100の目標速度V(縦軸)を表す。それぞれのグラフの横軸は、相互に同期させて表している。
制御部200は、時刻t3で把持スイッチ133のオン信号を受信しなくなったことにより使用者900がグリップ116を離したことを検出したら、この時点から速度を漸減させ、歩行補助装置100を緊急停止させる。すなわち、使用者900がグリップ116を離すという動作が、「歩行を止めたい」という意図を表すものと捉え、歩行補助装置100を緊急停止させる。なお、歩行補助装置100は、自立するので、使用者900がグリップ116を離しても倒れる恐れがない。
図6は、歩行補助装置100の2つ目の緊急停止条件を説明する図である。上段のグラフは、経過時間(横軸)に対する脚距離D(縦軸)を表す。それぞれのグラフの横軸は、相互に同期させて表している。
制御部200は、上述のように、脚速を追跡する過程において測距センサ130から観察脚までの脚距離Dを継続的に観察している。制御部200は、緊急停止を判断する材料としてこの脚距離Dを用いる。
制御部200は、時刻t4で脚距離Dが基準距離D0を超えたことを検出したら、この時点から速度を漸減させ、歩行補助装置100を緊急停止させる。すなわち、使用者900が歩行補助装置100に対して大きく遅れを取った動作を異常歩行動作と捉え、歩行補助装置100を緊急停止させる。例えば、路面の凹凸に躓いてもたついたような状況においても、歩行補助装置100は適切に停止する。したがって、使用者900が歩行補助装置100に引き摺られて転倒するようなことを回避できる。
次に、ディスプレイ122の表示態様についていくつかの例を説明する。上述のように、ディスプレイ122は、使用者900が背筋を伸ばした理想的な歩行姿勢でリハビリ訓練を行えるように、使用者900の顔前に配置される。そこで、制御部200は、ディスプレイ122によって遮られる前方視界を提供するために、ディスプレイ122に前方カメラ131の映像を表示する。また、制御部200は、脚を患う使用者900が足元を気に掛ける心理に対応するために、ディスプレイ122に足元カメラ132の映像を表示する。すなわち、本実施形態においては、制御部200は、前方カメラ131で撮像された前方映像と、足元カメラ132で撮像された足元映像とをディスプレイ122に同時に表示する。なお、上述のように、足元カメラ132が撮像する画像は、使用者が歩行補助装置100の右側方および左側方のいずれに立った場合でもその足元が観察できる程度の画角を有するが、足元映像は、使用者の足元が含まれる領域が切り出された映像である。具体的には、制御部200は、測距センサ130の出力を参照して使用者の脚が存在する側を決定し、足元カメラ132が出力する画像から決定した一側方側の領域を切り出して足元映像とする。
図7は、第1の表示例で表示するディスプレイ122の表示画面である。図示するように第1の表示例では、ディスプレイ122の表示画面を上下に略2つに分割し、上部に前方映像310が、下部に足元映像320がそれぞれ独立して表示される。図の例では、前方映像310は、リハビリ訓練を行っている室内の様子を捉えており、足元映像320は、サンダルを履いた使用者900の両足を捉えている。
制御部200は、前方カメラ131が逐次出力する画像データを前方映像として取得し、足元カメラ132が逐次出力する画像データを足元映像として取得する。そして、ほぼ同じタイミングで撮像されたそれぞれのフレーム画像を図示するように並べた映像信号に調整し、調整した当該映像信号を連続的にディスプレイ122へ送信する。ディスプレイ122は、受信した当該映像信号を視認可能に表示する。このような処理により、使用者900は、図示する態様で、前方の様子と足元の様子をほぼリアルタイムに表示される動画像として観察できる。
図8は、第2の表示例で表示するディスプレイ122の表示画面である。図示するように第2の表示例では、ディスプレイ122の表示画面の中央に前方映像311を大きく配置し、前方映像311の右下部にスーパーインポーズ形式により小画面で足元映像321を重ねて表示する。そして、余白領域に重畳映像330を表示する。重畳映像330は、例えばリハビリ訓練に関する情報を示す映像であり、図の例では訓練を開始してからの経過時間、現時点までに歩いた累積歩数、設定されたゴールまでの距離が重畳映像330として表示されている。なお、重畳映像330は、リハビリ訓練に関する情報に限らず、リハビリ訓練に有用な情報であれば構わない。また、足元映像321をスーパーインポーズする位置や大きさは、図の例に限らない。
図の例においては、前方映像311を大画面としてこのフレーム内に足元映像321をスーパーインポーズしたが、足元映像321を大画面として前方映像311をスーパーインポーズしても良い。例えば、リハビリ訓練初期の段階では、使用者900は足元に不安を覚えることが多いので足元映像321を大画面とし、リハビリ訓練に慣れた段階では、歩く速度も上がることから前方映像311を大画面とすると良い。また、好みに応じて使用者900が切り替えられるように、切替スイッチなどを設けても良い。
制御部200は、前方カメラ131からのフレーム画像に、ほぼ同じタイミングで撮像された足元カメラ132からのフレーム画像を埋め込み、余白部分に重畳映像330を加えて映像信号を調整する。このような処理により、使用者900は、図示する態様で、前方の様子と足元の様子をほぼリアルタイムに表示される動画像として観察できると共に、リハビリ訓練に有用な情報も認識することができる。
図9は、第3の表示例で表示するディスプレイ122の表示画面である。図示するように第3の表示例では、ディスプレイ122の表示画面全体に前方映像312を配し、中央下部に半透明処理を施した足元映像322を重ねて表示する。制御部200は、前方カメラ131からのフレーム画像に、ほぼ同じタイミングで撮像された足元カメラ132からのフレーム画像を半透明化して重ね合わせて映像信号を調整する。このような処理により、使用者900は、前方の様子を広く観察しつつも、足元の様子も同時に観察することができる。なお、第3の表示例においては、第2の表示例と同様に、リハビリ訓練に有用な情報も重ね合わせても良い。この場合は、広い面積を有する前方映像312に重ねることが好ましい。
図10は、第4の表示例で表示するディスプレイ122の表示画面である。図示するように第4の表示例は、第1の表示例と同様に前方映像310と足元映像320を表示するが、前方映像310に重畳して使用者900の目標進路を示す補助映像331を表示する点で第1の表示例と異なる。補助映像331は、例えば図示するように矢印のイラストとして表現され、前方映像310の下部中央付近に配置される。また、目標進路の関連する情報として、設定されたゴールまでの距離を示す重畳映像332を、補助映像331に隣接させて表示しても良い。このような処理により、使用者900は、前方の様子と足元の様子をほぼリアルタイムに表示される動画像として観察できると共に、進むべき進路を認識することができる。なお、第4の表示例においては、第2の表示例や第3の表示例のように前方映像と足元映像を表示した上で、補助映像331を重ね合わせても良い。
図11は、第5の表示例で表示するディスプレイ122の表示画面である。図示するように第5の表示例は、第1の表示例と同様に前方映像310と足元映像320を表示するが、足元映像320に重畳して使用者900の目標着地点を示す補助映像333を表示する点で第1の表示例と異なる。補助映像333は、例えば図示するように足跡のイラストとして表現され、足元映像320のうち、運脚側の足裏が到達すべき地点に相当する位置に配置される。制御部200は、到達すべき地点を、立脚時の足裏位置から前方に、リハビリ訓練前に設定値として入力された歩幅に相当する距離だけ離間した地点に設定する。また、目標地点に関連する情報として、リハビリ開始から数えて次の一歩が何歩目であるかを示す重畳映像334を、補助映像333に隣接させて表示しても良い。
このような処理により、使用者900は、前方の様子と足元の様子をほぼリアルタイムに表示される動画像として観察できると共に、次の一歩の目標位置を認識することができる。なお、第5の表示例においては、第2の表示例や第3の表示例のように前方映像と足元映像を表示した上で、補助映像333を重ね合わせても良い。また、第4の表示例と組み合わせた表示態様であっても良い。
図12は、第6の表示例で表示するディスプレイ122の表示画面である。第6の表示例は、図5および図6を用いて説明した緊急停止を行った場合の表示画面の例である。図示するように、制御部200は、第1の表示例と同様に前方映像310と足元映像320を表示するが、歩行補助装置100が停止したことにより、トレーニングが中断中であることを示す重畳映像335をディスプレイ122の表示画面中央に重ねて表示する。また、使用者900がこれまで実行したトレーニングをキャンセルする指示を与えられるように、キャンセルボタンとして機能する重畳映像336を右下部に重ねて表示する。使用者900がキャンセルボタンである重畳映像336に触れると、制御部200は、タッチスクリーンを介して当該指示を認識し、一連のリハビリ訓練を終了する。なお、第2の表示例から第5の表示例のいずれの表示態様であっても、緊急停止が行われたときには、重畳映像335のようなメッセージを表示し、重畳映像336のようなキャンセルボタンを機能させると良い。
以上本実施形態を説明したが、歩行補助装置100の移動機構は上記のように前輪としての2つの駆動輪と後輪としての1つの従動輪の構成に限らない。従動輪を更に設けても良いし、車輪以外の駆動機構を採用しても良い。また、歩行補助装置100は、使用者900が単独で用いるものとして説明したが、介助者が使用者900の後方から介助できるように、介助者が掴むハンドルを歩行補助装置に設けても良い。
また、以上の本実施形態においては、単一のディスプレイ122に前方カメラ131で撮像された前方映像と、足元カメラ132で撮像された足元映像とを同時に表示したが、2つの独立したディスプレイを用意し、一方に前方映像を他方に足元映像を同期させて表実しても良い。この場合であっても、それぞれのディスプレイは、使用者の進行方向の視界の少なくとも一部を遮る位置に配置される。また、ディスプレイ122は、液晶パネルに限らず、スクリーンとプロジェクタの組合せであっても構わない。この場合は、映像が投射されるスクリーンが使用者の進行方向の視界の少なくとも一部を遮る位置に配置される。
また、以上の実施形態においては、ディスプレイ122に前方カメラ131で撮像された前方映像と、足元カメラ132で撮像された足元映像とを同時に表示する場合を説明したが、それぞれの映像を単独で表示する表示モードを有しても良い。例えば、ディスプレイ122に重畳されたタッチパネルを使用者900が操作すると、制御部200は、前方映像と足元映像を同時に表示する第1表示状態から、前方映像と足元映像のいずれか一方を選択的に表示する第2表示状態へ切り替える。制御部200は、第2表示状態において、使用者900が前方映像を選択した場合には、前方映像をディスプレイ122に表示し、使用者900が足元映像を選択した場合には、足元映像をディスプレイ122に表示する。使用者900が再度操作部を操作した場合は、制御部200は、第1表示状態へ戻す。このように構成することにより、使用者900は自らの歩行状態に応じて、前方の視認性と足元の視認性のいずれかを優先させることもできる。なお、第2表示状態において、足元映像を補助映像として扱う場合には、前方映像を単独で表示する表示状態のみが選択できる構成であっても良い。逆に、前方映像を補助映像として扱う場合には、足元映像を単独で表示する表示状態のみが選択できる構成であっても良い。また、表示の切り替えは、利用者900に限らず、補助者が行えるように構成しても良い。
また、上記の歩行補助装置100は使用者900の側方で歩行を支援するようモータで自立的に前進するものであったが、歩行補助装置は、自立走行する機能を省いたものであって良い。その場合は、歩行補助装置は、使用者がグリップを押す力によって前進する。