JP2019112720A - R−t−b系希土類焼結磁石用合金、r−t−b系希土類焼結磁石 - Google Patents
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Abstract
Description
また、R−T−B系合金の組成は、通常、R−T−B系磁石の組織における主相の割合を高めるために、NdとFeとBとの比が、できる限りR2T14Bに近くなるようにされている(例えば、非特許文献1参照)。
R−T−B系磁石の保磁力を向上させる技術としては、R−T−B系合金のRをNdからDyに置換する技術がある。しかしながら、Dyは資源が偏在しているうえ、産出量も限られているためにその供給に不安が生じている。このため、R−T−B系合金に含まれるDyの含有量を多くすることなく、R−T−B系磁石の保磁力を向上させる技術が検討されている。
この合金のB濃度は従来のR−T−B系合金よりも低いものである。
鋳造合金の粉砕は通常、水素解砕、微粉砕の順で行なわれる。
ここで、水素解砕は、前工程の水素吸蔵工程と後工程の脱水素工程に分けられる。
水素吸蔵工程においては、水素は主に合金薄片のRリッチ相から吸蔵され、膨張し脆い水素化物が生成される。そのため、水素解砕では、合金薄片中にRリッチ相に沿った微細なクラック、あるいはRリッチ相を起点とした微細なクラックが導入される。その後の微粉砕工程で、水素解砕で生成した多量の微細クラックを起点として合金薄片が壊れる。
水素吸蔵工程により生成した水素化物は大気中では不安定であり酸化され易いため、通常、脱水素工程を行う。
0.32≦B/TRE≦0.40・・(式1)
(式1)において、Bはボロン元素の濃度(原子%)、TREは希土類元素合計の濃度(原子%)を表す。
(2)希土類元素であるRと、Feを必須とする遷移金属であるTと、Al、Ga、Cuのうちから選ばれる1種以上の金属を含む金属元素Mと、Bおよび不可避不純物からなり、Rを13〜15.5原子%含み、Bを5.0〜6.0原子%含み、Mを0.1〜2.4原子%含み、Tが残部であり、全希土類元素中のDyの割合が0〜65原子%であり、かつ下記(式1)を満たす合金溶湯を鋳造して鋳造合金を製造する鋳造工程と、前記鋳造合金に水素を吸蔵させる水素吸蔵工程と、水素が吸蔵された鋳造合金から水素を放出させる脱水素工程と、を有し、前記脱水素工程を、真空中で600℃未満の温度で行うことを特徴とするR−T−B系希土類焼結磁石用合金の製造方法。
0.32≦B/TRE≦0.40・・(式1)
(式1)において、Bはボロン元素の濃度(原子%)、TREは希土類元素合計の濃度(原子%)を表す。
(3)前記脱水素工程を、300℃〜500℃で行うことを特徴とする(1)又は(2)のいずれかに記載のR−T−B系希土類焼結磁石用合金の製造方法。
(4)(1)〜(3)のいずれか一項に記載のR−T−B系希土類焼結磁石用合金の製造方法により製造されたR−T−B系希土類焼結磁石用合金を用いることを特徴とするR−T−B系希土類焼結磁石用合金の製造方法。
なお、本明細書において、「鋳造合金」とは、合金溶湯を例えば、ストリップキャスト法によりに鋳造して得られる合金を指し、本発明の「R−T−B系希土類焼結磁石用合金の製造方法」における「R−T−B系希土類焼結磁石用合金」とは、「鋳造合金」(薄片化されたものを含む)に対して水素解砕工程を行ったものであって、焼結磁石の製造のための焼結を行う前のものを指す。
本発明の一実施形態のR−T−B系希土類焼結磁石用合金の製造方法を用いて製造されるR−T−B系希土類焼結磁石用合金(以下、「R−T−B系合金」と略記する場合がある)は、成形して焼結することにより、R2Fe14Bを主として含む主相と、主相よりRを多く含む粒界相とを備えた焼結体からなり、粒界相が、Rリッチ相と、Rリッチ相よりも希土類元素濃度が低く遷移金属元素濃度が高い粒界相である遷移金属リッチ相とを含む、R−T−B系希土類焼結磁石が得られるものである。
このR−T−B系希土類焼結磁石において、Rリッチ相は、希土類元素であるRの合計原子濃度が70原子%以上の相である。遷移金属リッチ相は、希土類元素Rの合計原子濃度が25〜35原子%の相である。遷移金属リッチ相は、Feを必須とする遷移金属であるTを50〜70原子%含むものであることが好ましい。
0.32≦B/TRE≦0.40・・(式1)
(式1)において、DyはDy元素の濃度(原子%)、Bはボロン元素の濃度(原子%)、TREは希土類元素合計の濃度(原子%)を表す。
R−T−B系合金溶湯の全希土類元素中のDyの含有量は0〜65原子%とされている。本実施形態においては、遷移金属リッチ相を含むことにより、保磁力を向上させているので、Dyを含まなくても良いし、Dyを含む場合でも65原子%以下の含有量で充分に高い保磁力向上効果が得られる。
本実施形態のR−T−B系合金の製造方法により製造されるR−T−B系合金において、合金粒界相の間隔を3μm以下とするには、R−T−B系合金に含まれるB含有量を、5.0原子%以上、6.0原子%以下とする。
B含有量を上記範囲とすることで、合金組織の粒径が微細化されて粉砕性が向上し、これを用いて製造されたR−T−B系磁石において粒界相が均一に分布され、優れた保磁力が得られる。より粉砕性に優れ、合金粒界相の間隔が3μm以下の微細な合金組織が得られるようにするためには、Bの含有量を5.5原子%以下とすることが好ましい。しかし、R−T−B系合金に含まれるBの含有量が5.0原子%未満である場合、R−T−B系合金の隣接する合金粒界相間の間隔が急激に広くなり、合金粒界相の間隔が3μm以下の微細な合金組織が得られにくくなる。また、R−T−B系合金に含まれるBの含有量が増大するのに伴って、R−T−B系合金の隣接する合金粒界相間の間隔が広くなり、合金粒子が大きくなる。また、Bが過剰となることで焼結磁石中にBリッチ相が含まれる。このため、Bの含有量が6.0原子%を超えた場合、これを用いて製造されたR−T−B系磁石の保磁力が不十分となる恐れがある。
また、Fe/Bが13未満になると、残留磁化が低下する。
0.32≦B/TRE≦0.40・・(式1)
本実施形態のR−T−B系合金溶湯は、金属元素Mが0.1〜2.4原子%含まれているものであるので、これを焼結することで、Rリッチ相と遷移金属リッチ相とを含むR−T−B系磁石が得られる。
また、Cuの濃度が1原子%を超える場合は、R−T−B系磁石の磁化(Br)が低下するので好ましくない。
本発明の一実施形態に係るR−T−B系合金の製造方法ではまず、例えば、1450℃程度の温度の所定の組成の合金溶湯を、例えば、SC(ストリップキャスト)法により鋳造して鋳造合金を製造する。次いで、この鋳造合金を破砕して鋳造合金薄片とする。この鋳造合金薄片の冷却速度を700〜900℃で一時的に遅くして合金内の成分の拡散を促す処理(温度保持工程)を行っても良い。
その後、得られた鋳造合金薄片を、水素解砕法などにより解砕し、粉砕機により粉砕することによってR−T−B系合金が得られる。以下で各工程について詳細に説明する。
本実施形態においては、合金溶湯を鋳造して鋳造合金を製造する。通常、この鋳造合金を破砕して鋳造合金薄片を得る。
鋳造工程の一例として、図1に示す製造装置を用いて鋳造合金を製造する方法について説明する。
図1は、鋳造合金の製造装置であって、鋳造合金を鋳造後、鋳造合金薄片まで製造できる製造装置の一例を示す正面模式図である。
図1に示す鋳造合金の製造装置1は、合金溶湯を鋳造する鋳造装置2と、鋳造後の鋳造合金を破砕する破砕装置3と、破砕後の鋳造合金薄片を保温する保温容器4と、保温後の鋳造合金薄片を貯蔵する貯蔵容器5とから概略構成されている。
その後、ゲート板7を開いて回転軸8に沿って保温容器4を傾け、鋳造合金薄片を貯蔵容器5に送出する。
また、温度保持工程における鋳造合金薄片の温度が500℃未満である場合や一定の温度で維持する時間が10秒未満である場合、温度保持工程を行うことによる元素の再配置の効果が充分に得られない場合がある。
本発明のR−T−B系希土類焼結磁石用合金の製造方法における水素解砕工程は、水素吸蔵工程と、脱水素工程とを有する。
水素解砕法において水素が吸蔵された鋳造合金あるいは鋳造合金薄片は、体積が膨張するので、合金内部に容易に多数のひび割れ(クラック)が発生し、解砕される。
例えば、0.1MPa〜0.105MPaの圧力の水素ガス雰囲気で、室温〜100℃の温度で、1分間あたりの水素ガス圧力低下が1kPa未満になるまで保持する。
本発明の脱水素工程は、不活性ガス雰囲気中で行う場合には550℃未満の温度で行うか、又は、真空中で行う場合には600℃未満の温度で行う。
不活性ガス雰囲気中において550℃以上で脱水素工程を行った合金を用いて製造したR−T−B系希土類焼結磁石では、十分な角形性や保磁力が得られないからである。また、真空中において600℃以上で脱水素工程を行った合金を用いて製造したR−T−B系希土類焼結磁石では、十分な保磁力が得られないからである。
不活性ガスとしては例えば、アルゴンが挙げられる。
水素解砕された鋳造合金薄片を粉砕する方法としては、ジェットミルなどが用いられる。水素解砕された鋳造合金薄片をジェットミル粉砕機に入れ、例えば0.6MPaの高圧窒素を用いて平均粒度1〜4.5μmに微粉砕して粉末とする。粉末の平均粒度を小さくした方が、焼結磁石の保磁力を向上させることができる。しかし、粒度をあまり小さくすると、粉末表面が酸化されやすくなり、逆に保磁力が低下してしまう。
次に、このようにして得られた本実施形態のR−T−B系希土類焼結磁石用合金の製造方法を用いて製造されたR−T−B系合金を用いてR−T−B系磁石を製造する方法を説明する。
例えば、本実施形態のR−T−B系合金の粉末に、潤滑剤として0.02質量%〜0.03質量%のステアリン酸亜鉛を添加し、横磁場中成形機などを用いてプレス成形して、真空中で焼結し、その後、熱処理する方法などが挙げられる。
そして、R−T−B系磁石における遷移金属リッチ相の体積率を調整することによって、Dyの含有量を抑制しつつ、用途に応じた所定の保磁力を有するR−T−B系磁石が得られる。
Ndメタル(純度99wt%以上)、Prメタル(純度99wt%以上)、Dyメタル(純度99wt%以上)、フェロボロン(Fe80%、B20w%)、鉄塊(純度99%wt以上)、Alメタル(純度99wt%以上)、Gaメタル(純度99wt%以上)、Cuメタル(純度99wt%)、Coメタル(純度99wt%以上)、Zrメタル(純度99wt%以上)を表1に示す合金A〜Eの合金組成になるように秤量し、アルミナるつぼに装填した。
具体的にはまず、鋳造合金薄片を直径5mm程度になるように粗粉砕し、室温の水素中に挿入して水素を吸蔵させた。続いて、水素を吸蔵させた鋳造合金薄片を300℃まで水素中で加熱する熱処理を行った。その後、鋳造合金薄片に対して表2に示す温度と雰囲気で1時間保持して脱水素工程を行った。
また、比較例1〜6についても脱水素工程の条件以外は実施例1等を同様にして焼結磁石を作製した。また、比較例7は、水素解砕工程のうち脱水素工程を行わなかった以外は実施例1等と同様にして作製したものであり、比較例8は、水素解砕工程自体を行わなかった以外は実施例1等と同様にして作製したものである。
実施例1〜5のいずれも、保磁力、角形性は良好な値を示した。
比較例1では、保磁力は実施例1〜5と同程度の値が得られているものの、角形性は実施例1〜5と比較して大きく低下していることがわかった。
比較例2では、保磁力及び角形性のいずれも著しく低下していることがわかった。
比較例3では、保磁力は実施例1〜5と同程度の値が得られているものの、角形性は実施例1〜5と比較して大きく低下していることがわかった。
実施例6及び7は実施例1〜5に比べると、保磁力が低めであるが、角形性については同程度かそれ以上であり、特性全体として良好である。保磁力が低めである理由は主に、B/TREの値に起因していると考えられる。
実施例8及び9は実施例1〜5に比べると、保磁力も角形性も優れている。
実施例10及び11は、保磁力が実施例8及び9よりもさらに優れているが、角形性は実施例1〜5よりも低めである。
比較例4及び5は、合金A〜DのR−T−B系合金を用いた場合で良好な保磁力が得られた条件で脱水素工程を行った場合であるが、この場合でも、十分な保磁力が得られなかった。
この場合も、十分な保磁力が得られなかった。
但し、式1を満たさない合金Eの組成のR−T−B系合金を用いた場合には、アルゴン雰囲気中で500℃の温度で脱水素工程を行った場合(比較例5)と、600℃の温度で脱水素工程を行った場合(比較例6)とで、保磁力や角形性に大きな差は見られなかった。
この点は、式1を満たす合金Aの組成のR−T−B系合金を用いた場合、アルゴン雰囲気中で500℃の温度で脱水素工程を行った場合(実施例3)と、600℃の温度で脱水素工程を行った場合(比較例2)とで、保磁力や角形性に大きな差が見られたのとは異なる。また、式1を満たす合金Aの組成のR−T−B系合金を用いた場合、真空中で500℃の温度で脱水素工程を行った場合(実施例5)と、600℃の温度で脱水素工程を行った場合(比較例3)とで、保磁力は差がほとんど見られなかったが、角形性に差が見られた。このように、本発明者が開発した式1を満たす組成のR−T−B系合金と、従来の式1を満たさない組成のR−T−B系合金とで特性変動の大きな差異を示すことは、本発明者が開発した組成のR−T−B系合金が従来のR−T−B系合金と全く異なる構成を有することに起因するものと考えられる。すなわち、本発明者が見出した脱水素工程の条件は、本発明者が開発した、低B濃度のR−T−B系合金に特有なものである。
これらの場合は、保磁力が比較例4〜6の場合よりもさらに低く、角形性も低かった。
実施例3について、400℃〜500℃において放出される水素量が増加しているのは、水素化物が3価から2価に変化したことに対応するものと考えられる。その後、焼結温度に近づくと放出される水素量が増加するのは、通常の焼結磁石の製造の際と同様に、水素化物が分解してメタルになる際に発生するからと考えられる。
これに対して、比較例2では焼結温度に近づく前の700℃〜800℃において、放出される水素量のピークが見られる。かかるピークは実施例3には見られないものであり、実施例3とは異なる水素化物の存在を示唆するものと考えられる。この水素化物の存在が角形性を低下させる原因の一つである可能性がある。
比較例2及び比較例3について、実施例3及び実施例5と比較すると、アルゴン雰囲気中及び真空中のいずれについても脱水素工程の温度が600℃の場合、Rリッチ相のGa濃度が高いことがわかった。この結果からは、Rリッチ相のGaが角形性を低下させる原因の一つである可能性がある。
3…ゲート板、55…回転軸。
Claims (2)
- 希土類元素であるRと、Feを必須とする遷移金属であるTと、Gaと、Bおよび不可避不純物からなり、Rを13〜15.5原子%含み、Bを5.0〜6.0原子%含み、Gaを0.1〜2.4原子%含み、Tが残部であり、全希土類元素中のDyの割合が0〜65原子%であり、かつ下記(式1)を満たす合金であって、
400〜500℃において水素放出量が極大となる、ことを特徴とするR−T−B系希土類焼結磁石用合金。
0.32≦B/TRE≦0.40・・(式1)
(式1)において、Bはボロン元素の濃度(原子%)、TREは希土類元素合計の濃度(原子%)を表す。 - 希土類元素であるRと、Feを必須とする遷移金属であるTと、Gaと、Bおよび不可避不純物からなり、Rを13〜15.5原子%含み、Bを5.0〜6.0原子%含み、Gaを0.1〜2.4原子%含み、Tが残部であり、全希土類元素中のDyの割合が0〜65原子%であり、かつ下記(式1)を満たす磁石であって、
Rリッチ相中のGaの含有量が4原子%以下である、ことを特徴とするR−T−B系希土類焼結磁石。
0.32≦B/TRE≦0.40・・(式1)
(式1)において、Bはボロン元素の濃度(原子%)、TREは希土類元素合計の濃
度(原子%)を表す。
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