JP2019111570A - ステンレス冷延鋼板の処理の決定方法および処理方法 - Google Patents

ステンレス冷延鋼板の処理の決定方法および処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面疵が存在するステンレス冷延鋼板に施す処理を合理的に決定することができるステンレス冷延鋼板の処理の決定方法を提供すること。【解決手段】表面に疵が存在するステンレス冷延鋼板を処理する際のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法であって、ステンレス冷延鋼板の表面に存在する疵を、疵の種類により分類する表面疵の分類工程と、前記表面疵の分類工程で分類した疵の種類および疵の程度に応じて、前記ステンレス冷延鋼板に施す処理を決定する処理の決定工程と、を有することを特徴とするステンレス冷延鋼板の処理の決定方法。【選択図】なし

Description

本発明は、表面に疵が存在するステンレス冷延鋼板の処理の決定方法および処理方法に関するものである。
ステンレス冷延鋼板の製造方法の一例として、例えば次の方法が挙げられる。まず、転炉、電気炉等の溶解炉で鋼を溶製し、さらに取鍋精錬、真空精錬等の二次精錬を行い所定の成分組成とした鋼を、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法で鋼片(スラブ)とする。次に、前記スラブを熱間圧延により熱延板とし、この熱延板に、焼鈍、酸洗を施し熱延焼鈍酸洗板とする。さらに、この熱延焼鈍酸洗板に対し、冷間圧延を施した後、仕上焼鈍および酸洗、あるいは光輝焼鈍を施し、必要に応じてスキンパス圧延を施してステンレス冷延鋼板を製造する。
上記のような各工程を経て製造されたステンレス冷延鋼板には、例えば冷間圧延工程においてロール表面の疵が鋼板表面に転写される等して発生した表面疵が、製造後にも鋼板表面に残存する場合がある。
このような製造後に表面疵が残存するステンレス冷延鋼板に対しては、廃棄処理や、表面疵が存在しても使用可能な用途に転用する処理(向け先変更処理)がなされる場合がある(以下、廃棄処理と向け先変更処理をまとめて「処分処理」ともいう)。しかし、廃棄処理の場合には、製造したステンレス冷延鋼板が全損となる。また、向け先変更処理の場合にも、実際には表面疵が存在しても使用可能な用途は少なく、仮にそのような用途が見つかったとしても販売価格が通常の鋼板より低くなる場合があるといった問題がある。
また、上記のような製造後に表面疵が残存するステンレス冷延鋼板に対して、表面疵を消去する処理を施す場合がある。かかる処理としては、表面研磨や表面切削を行った後に再圧を行って表面疵を消去する処理(例えば特許文献1)や、再圧のみで表面疵を消去する処理が挙げられる。
ここで、表面研磨等を行った後に再圧を行って表面疵を消去する処理は、表面疵を消去する能力に優れる。しかし、表面研磨等を施すことで処理コストが高くなるという問題がある。また、表面研磨設備の能力が足らなくなる場合もある。さらに、フェライト系ステンレス鋼では表面研磨等を施すことで鋼板の光沢度が低下しやすいという問題もある。光沢度を確保するためには一定以上の総圧下率で再圧を施す必要があるが、この場合、転用先が限定されるといった問題もある。
また、再圧のみで表面疵を消去する処理は、コストの掛かる表面研磨等が不要であり処理効率に優れる。さらに、光沢度の低下の問題が生じないという利点を有する。しかしながら、再圧のみでは表面疵を消去できない場合がある。そして、再圧後に表面疵が残存する場合には、鋼板を処分処理(廃棄処理または向け先変更処理)するしかなくなるという問題がある。
特開2001−191206号公報
本発明は、表面疵が存在するステンレス冷延鋼板に施す処理を合理的に決定することができるステンレス冷延鋼板の処理の決定方法を提供することを目的とする。
また、前記決定方法により決定された処理を、表面疵が存在するステンレス冷延鋼板に施すことで、前記ステンレス冷延鋼板を効率的に処理することができるステンレス冷延鋼板の処理方法を提供することを目的とする。
本発明者らによる詳細な検討の結果、表面疵が存在するステンレス冷延鋼板の処理について、以下の知見が得られた。
i)表面疵の程度がある一定の程度(疵の種類によって決まる)までの場合は、再圧(冷間圧延)のみで表面疵を消去できる。
ii)再圧のみでは消去できない表面疵でも、疵の程度がある一定の程度(疵の種類によって決まる)までの場合は、表面研磨を行った後に再圧を行えば表面疵を消去できる。
iii)表面疵が一定の程度を超える場合(疵の種類によって決まる)、表面研磨を行った後に再圧しても表面疵を消去できない。
このことから、表面疵の種類と疵の程度に応じて、再圧のみの処理、表面研磨と再圧とを組み合わせた処理、処分処理を決定し、決定した処理を鋼板に施すことで、表面疵が発生したステンレス冷延鋼板を効率的に処理することができることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の構成を備える。
[1]表面に疵が存在するステンレス冷延鋼板を処理する際のステンレス冷延鋼板の処理
の決定方法であって、
ステンレス冷延鋼板の表面に存在する疵を、疵の種類により分類する表面疵の分類工程と、
前記表面疵の分類工程で分類した疵の種類および疵の程度に応じて、前記ステンレス冷延鋼板に施す処理を決定する処理の決定工程と、を有することを特徴とするステンレス冷延鋼板の処理の決定方法。
[2]前記表面疵の分類工程では、ステンレス冷延鋼板の表面に存在する疵を、点状疵、線状疵、模様類のいずれかに分類することを特徴とする[1]に記載のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法。
[3]前記表面疵の分類工程では、ステンレス冷延鋼板の表面に存在する疵を、点状疵、線状疵、模様類のいずれかに分類し、
前記処理の決定工程では、前記表面疵の分類工程において点状疵、線状疵、模様類いずれかに分類された疵のグレードを判定し、前記判定されたグレードに応じて、前記ステンレス冷延鋼板に施す処理を決定することを特徴とする[1]または[2]に記載のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法。
[4]前記処理の決定工程では、前記疵のグレードの判定を、予め作成しておいた指標を用いて行うことを特徴とする[3]に記載のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法。
[5]前記処理の決定工程で決定される処理が、冷間圧延処理、表面研磨処理と冷間圧延処理とを組み合わせた処理、処分処理のいずれかであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法。
[6]表面に疵が存在するステンレス冷延鋼板の処理方法であって、
前記ステンレス冷延鋼板に対する処理を前記[1]〜[5]のいずれかに記載のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法により決定し、該決定された処理を前記ステンレス冷延鋼板に施すことを特徴とするステンレス冷延鋼板の処理方法。
本発明によれば、表面疵が存在するステンレス冷延鋼板に施す処理を合理的に決定することができる。また、前記決定された処理を、表面疵が存在するステンレス冷延鋼板に施すことで、前記ステンレス冷延鋼板を効率的に処理することができる。
点状疵に分類された疵が存在するステンレス冷延鋼板に対する処理を決定するフローを示す図である。 線状疵に分類された疵が存在するステンレス冷延鋼板に対する処理を決定するフローを示す図である。 模様類に分類された疵が存在するステンレス冷延鋼板に対する処理を決定するフローを示す図である。
以下、本発明のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法の一実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。
(ステンレス冷延鋼板の処理の決定方法)
本発明のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法は、ステンレス冷延鋼板の表面に存在する疵を、疵の種類により分類する表面疵の分類工程と、前記表面疵の分類工程で分類した疵の種類および疵の程度に応じて、前記ステンレス冷延鋼板に施す処理を決定する処理の決定工程と、を有する。
はじめに、本発明のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法に含まれる表面疵の分類工程、処理の決定工程の各工程について詳細に説明する。
<表面疵の分類工程>
表面疵の分類工程では、ステンレス冷延鋼板の表面に存在する疵を、疵の種類により分類する。本実施形態では、ステンレス冷延鋼板の表面に存在する疵を、点状疵、線状疵、模様類のいずれかに分類する。
[点状疵]
点状疵は、ステンレス冷延鋼板の表面に点状に存在する疵である。例えば、ロール疵、圧着、打疵、押込みがこれに該当する。
ロール疵は、鋼板表面の圧延方向に周期的に生じる凹状の疵である。ロール疵は、ロール表面の疵やロール表面の付着物に起因して鋼板表面に発生する疵である。
圧着は、削れ屑などの異物が圧着されてできた凹状の疵である。
打疵は、局部的に認められた凹みである。打疵は、打撃または押し付けに起因して発生する疵である。
押込みは、鋼板表面に異物が押し込まれ、または圧着されてできた凹状の疵である。押込みは、スケール、異物の飛び込み、カキ疵・スリ疵などの削られた部分の押し込み等に起因して発生する疵である。
[線状疵]
線状疵は、ステンレス冷延鋼板の表面に線状に存在する疵である。例えば、カキ疵、スリ疵がこれに該当する。
カキ疵は、表面に生じたひっかき疵であり、疵の終端にカキ玉(ひっかきにより生じた糸状に剥がれた母材あるいは剥がれかけた母材がまるまったもの)を伴うものである。カキ疵は、工程中または取扱い中の異物との接触によるひっかき、製品同士によるひっかきに起因して発生する疵である。
スリ疵は、表面がすられた疵で、疵の終端にカキ玉を伴わないものである。スリ疵は、工程中または取扱い中の異物との接触によるひっかき、製品同士によるひっかきに起因して発生する疵である。
[模様類]
模様類は、ステンレス冷延鋼板の表面に面状に存在する疵である。例えば、縞、斑点、光沢ムラがこれに該当する。
縞は、粗さが不揃いで、表面の光沢が圧延方向に平行な縞状に見えるものである。縞は、圧延機や研磨機の回転部などの異常振動に起因して発生する疵(模様)である。
斑点は、表面に点状の模様が不均一に生じたものである。
光沢ムラは、鋼板表面における光沢の均一性が保たれていないものである。
この表面疵の分類工程での疵の分類は、鋼板表面に存在する疵を、目視あるいは疵検査装置等により観察して行うことができる。この鋼板表面に存在する疵の観察は、冷間圧延後、さらに冷延板焼鈍酸洗あるいは光輝焼鈍を行い、その後にスキンパス圧延を行った後のステンレス冷延鋼板に対して行うことが好ましい。
<処理の決定工程>
処理の決定工程では、前記表面疵の分類工程で分類した疵の種類および疵の程度に応じて、前記ステンレス冷延鋼板に施す処理を決定する。
本実施形態では、まず、前記表面疵の分類工程において点状疵、線状疵、模様類いずれかに分類された疵のグレードを判定する。
この判定は、予め作成しておいた指標を用いて行うことができる。例えば、前記指標として、予め点状疵、線状疵、模様類ごとに疵のグレード表を作成しておき、前記表面疵の分類工程で点状疵、線状疵、模様類のいずれかに分類した疵が、このグレード表のどのグレードに属するかで、前記分類した疵のグレードを判定することができる。また、前記指標として、予め点状疵、線状疵、模様類ごとに各グレードの限界サンプルを用意しておき、前記表面疵の分類工程で点状疵、線状疵、模様類のいずれかに分類した疵と、この限界サンプルとを対比することで、前記分類した疵がどのグレードに属するかを判定してもよい。
また、疵のグレードは、様々な観点から定めることができる。例えば、疵のグレードを、疵の深さや、疵の長さ等の程度により定めてもよいし、疵の数や疵のピッチ間隔等の程度により定めてもよい。さらに、これらを組み合わせて定めてもよい。また、グレードの数(階級数)は、二階級以上であれば特に限定されず、例えば、二階級、三階級または四階級以上のグレードとすることができる。
[点状疵に対する処理]
図1に、点状疵に分類された疵が存在するステンレス冷延鋼板に対する処理を決定するフローを示す。
図1に示すように、本実施形態の処理の決定工程(点状疵が存在するステンレス冷延鋼板に施す処理を決定する処理の決定工程)では、鋼板表面に存在する点状疵をグレードA〜Cに判定する。なお、本実施形態では、点状疵のグレードを、点状疵の深さによって定めている。
本実施形態において、グレードAは、点状疵の深さが70μm未満である。グレードBは、点状疵の深さが70μm以上150μm未満である。グレードCは、点状疵の深さが150μm以上である。
なお、鋼板に点状疵の深さが異なる複数の点状疵が存在する場合には、そのなかの最大値(点状疵の深さの最大値)を用いて疵のグレードを判定する。
なお、上記点状疵の深さは、例えば公知の疵検査装置により測定して求めることができる。また、簡易的には、現場で検査員が目視により、または、爪等で表面の疵を擦りその際の感触等により、求めることができる。
そして、本実施形態では、グレードAと判定された鋼板に対して、冷間圧延(再圧)処理を決定する。また、グレードBと判定された鋼板に対して、表面研磨した後、冷間圧延する処理を決定する。さらに、グレードCと判定された鋼板に対して、処分処理(廃棄処理または向け先変更処理)を決定する。
これは、グレードAと判定された鋼板は、冷間圧延のみの処理で表面疵を消去することが可能であり、グレードBと判定された鋼板は、冷間圧延のみの処理では表面疵を消去することは困難であるが、表面研磨した後、冷間圧延することで表面疵を消去することが可能であるためである。この際の冷間圧延(再圧)は、例えば総圧下率が50〜75%の圧延を2〜10パスで施せばよい。また、表面研磨は、例えば粒度240番以下、好ましくは180番以下、さらに好ましくは80番以下の研磨ベルトで研磨を施せばよい。一方、グレードCと判定された鋼板は、上記のような冷間圧延、または、表面研磨した後、冷間圧延を施しても、消去できない表面疵が残り、向け先変更処理するか、或いは、廃棄処理するしかなくなるためである。
[線状疵に対する処理]
図2に、線状疵に分類された疵が存在するステンレス冷延鋼板に対する処理を決定するフローを示す。
図2に示すように、本実施形態の処理の決定工程(線状疵が存在するステンレス冷延鋼板に対する処理を決定する処理の決定工程)では、鋼板表面に存在する線状疵をグレードA〜Cに判定する。なお、本実施形態では、線状疵のグレードを、線状疵の深さおよび長さによって定めている。
本実施形態において、グレードAは、線状疵の深さが70μm未満かつ線状疵の長さが30mm未満である。グレードBは、線状疵の深さが70μm以上または線状疵の長さが30mm以上で、かつ、線状疵の深さが150μm未満かつ疵の長さが50mm未満である。グレードCは、線状疵の深さが150μm以上であるか、線状疵の長さが50mm以上である。
なお、上記線状疵の深さや長さは、点状疵と同様に求めることができる。また、鋼板に線状疵の深さおよび長さが異なる複数の線状疵が存在する場合には、そのなかのそれぞれの最大値(線状疵の深さの最大値、線状疵の長さの最大値)を用いてグレードを判定する。
そして、本実施形態では、グレードAと判定された鋼板に対して、冷間圧延(再圧)処理を決定する。また、グレードBと判定された鋼板に対して、表面研磨した後、冷間圧延する処理を決定する。さらに、グレードCと判定された鋼板に対して、処分処理(廃棄処理または向け先変更処理)を決定する。この理由は、上述した点状疵の場合と同様である。また、冷間圧延(再圧)処理、表面研磨処理を施す際の条件は、上述した点状疵の場合と同様とすることができる。
[模様類に対する処理]
図3に、模様類に分類された疵が存在するステンレス冷延鋼板に対する処理を決定するフローを示す。
図3に示すように、本実施形態の処理の決定工程(模様類が存在するステンレス冷延鋼板に対する処理を決定する処理の決定工程)では、鋼板表面に存在する模様類をグレードA、Bに判定する。なお、本実施形態では、模様類のグレードを光沢度によって定めている。
本実施形態において、グレードAは、鋼板表面に存在する模様類の光沢度をKONICA MINOLTA社製の光沢度計GM−268Plusを用いて角度20°で圧延方向に垂直に測定した場合に、光沢度が450以上となるものであり、グレードBは、光沢度が450未満となるものである。
なお、鋼板に光沢度の異なる複数の模様類が存在する場合には、そのなかの最小値(模様類の光沢度の最小値)を用いてグレードを判定する。
そして、本実施形態では、グレードAと判定された鋼板に対して、冷間圧延(再圧)処理を決定する。また、グレードBと判定された鋼板に対して、表面研磨した後、冷間圧延する処理を決定する。この理由は、上述した点状疵の場合と同様である。また、冷間圧延(再圧)処理、表面研磨処理を施す際の条件は、上述した点状疵の場合と同様とすることができる。
なお、模様類のグレードA、Bの判定は、必ずしも上記光沢度計を用いて行う必要はない。例えば、上記光沢度計で測定した場合にグレードA、Bにそれぞれ判定される限界サンプルを用意しておき、この限界サンプルと模様類が存在する鋼板表面とを対比して前記模様類のグレードを判定してもよい。また、検査員が、前記限界サンプルに自分の顔を映したときの映り具合を記憶しておき、模様類が存在する鋼板表面に自分の顔を映したときの映り具合によって(例えば、グレードAは、自分の顔をはっきりと認識できる、グレードBは、自分の顔がぼやけて見える、または、自分の顔を認識できない等)によって簡易的に模様類のグレードを判定してもよい。
なお、鋼板表面に、複数の種類に分類される複数の疵が存在する場合には、疵の種類ごとにグレードを判定する。そして、最も低いグレードに応じた処理を決定する。例えば、上述の実施形態において、鋼板表面に、点状疵と線状疵が存在する場合、点状疵のグレードと、線状疵のグレードをそれぞれ判定する。そして、点状疵がグレードC、線状疵がグレードBと判定されたら、鋼板に施す処理としてグレードCに応じた処理(処分処理)を決定する。同様に、例えば、鋼板表面に、点状疵と模様類が存在する場合、点状疵のグレードと、模様類のグレードをそれぞれ判定する。そして、点状疵がグレードA、模様類がグレードBと判定されたら、鋼板に施す処理としてグレードBに応じた処理(表面研磨した後、冷間圧延する処理)を決定する。
(ステンレス冷延鋼板の処理方法)
本発明のステンレス冷延鋼板の処理方法は、表面に疵が存在するステンレス冷延鋼板に対する処理を上述したステンレス冷延鋼板の処理の決定方法により決定し、該決定された処理を前記ステンレス冷延鋼板に施すものである。これにより前記ステンレス冷延鋼板を効率的に処理することが可能となる。
以上、説明したとおり、本発明によれば、表面に疵が存在するステンレス冷延鋼板に施す処理を、疵の種類により分類し、分類した疵の種類および疵の程度に応じて決定するものとしたため、前記ステンレス冷延鋼板に対する処理を合理的に決定することができる。
また、本発明によれば、上記ステンレス冷延鋼板の処理の決定方法により決定された処理を、表面に疵が存在するステンレス冷延鋼板に施すことで、前記ステンレス冷延鋼板を効率的に処理することができる。
本発明によれば、例えば、冷間圧延のみで表面疵を消去できる鋼板に対して、過剰な処理(表面研磨処理や処分処理)を施すことを抑制することができる。また、冷間圧延処理、または、表面研磨と冷間圧延を組み合わせた処理を施しても表面疵を消去できない鋼板に対して、速やかに処分処理(廃棄処理または向け先変更処理)を決定することができる。そのため、表面に疵が存在するステンレス冷延鋼板を処理する際に、前記冷延鋼板に施す処理を合理的に決定できる。そして、前記合理的に決定された処理を、表面に疵が存在するステンレス冷延鋼板に施すことで、無駄なコストや労力が発生することを抑制でき、効率的な処理が可能となる。
さらに、フェライト系ステンレス冷延鋼板は表面に疵が付きやすく、また、表面研磨を施すことで鋼板の光沢度が低下しやすい。本発明によれば、表面に疵が存在するフェライト系ステンレス冷延鋼板に対しても、表面研磨処理を最小限に抑え、最適な処理を施すことが可能となるため、特にフェライト系ステンレス冷延鋼板に本発明を適用することが好適である。
(実施例1)
公知の方法により板厚1.2mmのSUS430(16mass%Cr)フェライト系ステンレス冷延鋼板を製造した。製造後のステンレス冷延鋼板の表面を観察したところ、表面に点状の疵が、鋼板の圧延方向長さ1m当たり数個の頻度で存在した。
これを点状疵(ロール疵)に分類した。次いで、疵検査装置により疵の深さを求め、深さが10〜20μmであることを確認した。予め作成しておいた疵のグレード表(当該グレード表における各グレードは上述したグレードA〜C)から、点状疵をグレードAと判定し、前記ステンレス冷延鋼板に対する処理として冷間圧延処理(再圧)を決定した。
前記ステンレス冷延鋼板に対して、板厚を0.5mmにする6パスの冷間圧延処理を施したところ、表面疵を消去することができた。
(実施例2)
公知の方法により板厚1.0mmのSUS430フェライト系ステンレス冷延鋼板を製造した。製造後のステンレス冷延鋼板の表面を観察したところ、表面に長さ20〜40mmの線状の疵が、鋼板の圧延方向長さ100m当たり数個の頻度で存在した。
これを線状疵(カキ疵)に分類した。次いで、疵検査装置により疵の深さを求め、深さが60〜80μmであることを確認した。予め作成しておいた疵のグレード表(当該グレード表における各グレードは上述したグレードA〜C)から、グレードBと判定し、前記ステンレス冷延鋼板に対する処理として表面研磨処理と冷間圧延処理(再圧)とを組み合わせた処理を決定した。
前記ステンレス冷延鋼板に対して、粒度80番の研磨ベルトによる表面研磨処理を施した後、板厚を0.4mmにする6パスの冷間圧延処理を施したところ、表面疵を消去することができた。
(実施例3)
公知の方法により板厚1.0mmのSUS430フェライト系ステンレス冷延鋼板を製造した。製造後のステンレス冷延鋼板の表面を観察したところ、縞状の模様が鋼板表面の全長にわたり存在した。
これを模様類(縞)に分類した。次いで、鋼板表面の縞が存在する領域の光沢度を、KONICA MINOLTA社製の光沢度計GM−268Plusを用いて角度20°で圧延方向に垂直に測定し、光沢度が468であることを確認した。予め作成しておいた疵のグレード表(当該グレード表における各グレードは上述したグレードA、B)から、グレードAと判定し、前記ステンレス冷延鋼板に対する処理として冷間圧延処理(再圧)を決定した。
前記ステンレス冷延鋼板に対して、板厚を0.5mmにする5パスの冷間圧延処理を施したところ、表面疵を消去することができた。
(比較例1)
実施例2で製造した板厚1.0mmのSUS430フェライト系ステンレス冷延鋼板を分割して、これに冷間圧延処理を施したこと以外は、実施例2と同様の処理を行った。すなわち、比較例1では、表面に長さ20〜40mm、深さが60〜80μmの線状の疵が存在する板厚1.0mmのSUS430フェライト系ステンレス冷延鋼板に対して、表面研磨処理を施さずに、板厚を0.4mmにする6パスの冷間圧延処理(再圧)を施した。
その結果、表面疵を消去することはできなかった。また、冷間圧延処理(再圧)を施した後の鋼板は、使用可能な用途も見つからず廃棄処理となった。
(比較例2)
公知の方法により板厚1.0mmのSUS430フェライト系ステンレス冷延鋼板を製造した。製造後のステンレス冷延鋼板の表面を観察したところ、表面に長さ約110mmの線状の疵が、鋼板の圧延方向長さ100m当たり数個の頻度で存在した。
次いで、疵検査装置により疵の深さを求め、深さが160〜200μmであることを確認した。このステンレス冷延鋼板に対し、粒度80番の研磨ベルトによる表面研磨処理を施した後、板厚を0.4mmにする6パスの冷間圧延処理(再圧)を施したところ、表面疵を消去することはできなかった。
なお、この疵は、上述した本発明のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法に従えば、線状疵に分類されるものであり、予め作成しておいた疵のグレード表からは、グレードCに判定されるものであった。また、前記表面研磨処理と冷間圧延処理(再圧)を施した後の鋼板は、使用可能な用途も見つからず廃棄処理となった。

Claims (6)

  1. 表面に疵が存在するステンレス冷延鋼板を処理する際のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法であって、
    ステンレス冷延鋼板の表面に存在する疵を、疵の種類により分類する表面疵の分類工程と、
    前記表面疵の分類工程で分類した疵の種類および疵の程度に応じて、前記ステンレス冷延鋼板に施す処理を決定する処理の決定工程と、を有することを特徴とするステンレス冷延鋼板の処理の決定方法。
  2. 前記表面疵の分類工程では、ステンレス冷延鋼板の表面に存在する疵を、点状疵、線状疵、模様類のいずれかに分類することを特徴とする請求項1に記載のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法。
  3. 前記表面疵の分類工程では、ステンレス冷延鋼板の表面に存在する疵を、点状疵、線状疵、模様類のいずれかに分類し、
    前記処理の決定工程では、前記表面疵の分類工程において点状疵、線状疵、模様類いずれかに分類された疵のグレードを判定し、前記判定されたグレードに応じて、前記ステンレス冷延鋼板に施す処理を決定することを特徴とする請求項1または2に記載のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法。
  4. 前記処理の決定工程では、前記疵のグレードの判定を、予め作成しておいた指標を用いて行うことを特徴とする請求項3に記載のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法。
  5. 前記処理の決定工程で決定される処理が、冷間圧延処理、表面研磨処理と冷間圧延処理とを組み合わせた処理、処分処理のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法。
  6. 表面に疵が存在するステンレス冷延鋼板の処理方法であって、
    前記ステンレス冷延鋼板に対する処理を請求項1〜5のいずれかに記載のステンレス冷延鋼板の処理の決定方法により決定し、該決定された処理を前記ステンレス冷延鋼板に施すことを特徴とするステンレス冷延鋼板の処理方法。
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