デジタルコヒーレント方式の受信側装置は、送信される光信号と局部発振光(以下、局発光ともいう)との干渉波形の強度の測定を行うことにより、信号光の位相成分を検出するコヒーレント受信を行う。コヒーレント受信した際の受信信号には、送信符号系列に対応する変調成分に対して、信号光の周波数と局発光の周波数の差の周波数で変化する周波数オフセット成分が重畳されている。送信符号系列に対応する変調成分を受信側で再生するためには、受信信号から周波数オフセット成分を除去する必要がある。そのため、受信側では周波数オフセット量を推定することが求められる。
アクセスネットワークにおいてはコスト削減の観点から送信装置の光源には安価なものが用いられているため、送信装置ごとの周波数のばらつきは、コアネットワークの場合に比べて大きいことが想定される。そのため、受信側において生じる周波数オフセット量の大きさの範囲も広くなることが想定される。したがって、アクセスネットワークにおける周波数オフセット量を推定する技術は、推定する周波数範囲が広い技術である必要がある。
また、PON方式の上り通信において、OLT120が受信する信号はバースト信号であり、各時間スロットにおいて、OLT120は、異なるONU110−1〜110−3から送信された信号を受信する。そのため、受信側では時間スロットごとに周波数オフセット量を推定する必要があり、その推定の頻度はコアネットワークの場合に比べて多くなる。
周波数オフセット量の推定技術として、例えば、送信信号の一定の区間に与えられる符号系列を受信側にて解析することで周波数オフセット量の推定を行うという手法がある。周波数オフセット量の推定の頻度が高いアクセスネットワークにおいて、このような符号系列の解析によって周波数オフセット量の推定を行う手法を適用する場合、効率的な伝送を行うためには、推定に要する処理時間を少なくする必要がある。そのため、データ伝送に寄与しない周波数オフセット量の推定用の符号系列の数を削減することが重要となる。
以上のことから、アクセスネットワークにおける周波数オフセット量の推定技術には、推定する周波数範囲が広いこと及び推定に用いる符号系列の数が少ないことが要求される。
例えば、周波数オフセット量を推定する技術として、M乗法を用いる技術(例えば、非特許文献1参照)、フィードバックループを用いる技術(例えば、非特許文献2参照)などが提案されている。
M乗法は、受信信号の1シンボル遅延差動を算出し、M回乗算することで周波数オフセット成分を除去し、変調成分を取り出す手法である(ここで、Mは多値数であり、BPSK(Binary Phase Shift Keying)の場合、M=2となる)。M乗法において周波数オフセット量を推定可能な周波数の範囲は、−B/2M≦fIF<B/2M(ここで、Bは、送信信号におけるシンボルのボーレートであり、fIFは、信号光と局発光との周波数差である)で表される。したがって、M乗法を用いる場合、多値数Mが増加すると、推定可能な周波数の範囲が減少するという問題がある。
これに対して、フィードバックループを用いる技術では、推定可能な周波数の範囲が、−B/2≦fIF<B/2であるため、M乗法のように多値数Mの大きさによって推定可能な周波数の範囲が減少することはない。しかし、当該技術では、フィードバックの収束に長い時間を要し、そのために符号系列が長くなるという問題がある。
また、一般的なトレーニング信号の相関によるタイミング推定と、トレーニング信号を受信信号から差し引くことにより、上記のM乗法より推定可能な周波数の範囲を広くして−B/2≦fIF<B/2とする技術がある(例えば、非特許文献3参照)。ここで、非特許文献3に示される技術を参考に、トレーニング符号系列を用いた周波数オフセット量を推定する技術について説明する。
図12は、デジタルコヒーレント伝送を行う光伝送システム200の構成を示す概略ブロック図である。デジタルコヒーレント伝送方式では、光受信装置220が備える光コヒーレント受信部300が、受信する信号光と、局部発振器301が出力する局発光との干渉波形を測定するコヒーレント受信を行う。
コヒーレント受信を行う場合、偏波ダイバーシティ受信器が用いられることが多いが、図12では、構成の説明を簡単にするため、光コヒーレント受信部300として、位相ダイバーシティ受信器を適用した例を示している。信号光と局発光の周波数をそれぞれf0、 fLOとすると、光コヒーレント受信部300が出力する信号電流のI(In-Phase)成分、およびQ(Quadrature)成分はそれぞれ次式(1)及び次式(2)により表される。
式(1)及び式(2)においてφm(t)は、信号光の位相変調成分である。αは、局発光と信号光の位相差のオフセット成分を示しており時間的に一定である。fIFは、信号光と局発光との周波数差であり次式(3)により求められる。
式(1)〜式(3)より、受信信号の複素振幅は、次式(4)として表される。
ADC(Analog-to-Digital Converter)302は、光コヒーレント受信部300が出力する複素振幅で表されるアナログ出力をデジタル信号に変換する。デジタル信号処理部303は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)であり、等化器310、周波数オフセット補償部311及び位相オフセット補償部312を備える。等化器310は、ADC302が出力するデジタル信号に対して、適応等化処理を行い、伝搬によって生じた波形歪、例えば、波長分散、偏波モード分散、偏波回転等を補償する。
式(4)に示される通り、受信信号の位相は、位相変調成分φm(t)に対して周波数オフセット成分2πfIFtが重畳された形となっている。そのため、IQ平面上では時間の経過とともにシンボルの位相が回転することになり、シンボルの位相を正しく検出することができない。シンボルの周期をTとすれば、1シンボルあたりの回転量は2πfIFnTとなる(nは、0を含む正の整数である)。この位相回転量2πfIFnTが、上述した周波数オフセット量であり、信号光と局発光の周波数差fIFに比例する量である。
光受信装置220では、周波数オフセット補償部311が行うデジタル信号処理により、受信信号に対してIQ平面上で周波数オフセット成分2πfIFnTとは逆向きで大きさの等しい回転を与えることにより受信信号の位相の検出が可能になるように補償する。その後、位相オフセット補償部312が、時間的に一定の位相オフセット成分αを除去する処理を行うことにより送信信号のコンスタレーションを再現することができる。出力部304は、位相オフセット補償部312の出力信号を復号して外部に出力する。
トレーニング信号を用いる手法では、送信信号のある特定の区間に送信するトレーニング符号系列を受信側において解析することにより周波数オフセット量を推定する。トレーニング符号系列は、例えば、BPSKの場合、0またはπの系列となる。
トレーニング符号系列の解析によって周波数オフセット量の推定を行うためには、符号系列の先頭位置を検出する必要がある。図13に示すように、光送信装置210から送信される個々のバースト信号のフォーマットは、先頭からプリアンブル400、ペイロード401、エンドオブバースト402のフィールドに分かれている。
ペイロード401には、送信データ系列が含まれる。プリアンブル400には、デジタル信号処理部303が処理するデータが含まれている。プリアンブル400のフィールドの先頭から長さLtの区間と、その後に続く長さLfの区間の2区間のそれぞれに、タイミング検出用トレーニング符号系列410と、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列411とが含まれる。
光受信装置220のデジタル信号処理部303の周波数オフセット補償部311は、図14に示すように、最初に、タイミング検出部500が、タイミング検出用トレーニング符号系列410を解析してタイミングを検出、すなわちトレーニング信号の先頭位置を検出する。その後、先頭位置からLt後に存在する周波数オフセット推定用トレーニング符号系列411が乗算器503に与えられると、当該符号系列を対象として解析が行われ周波数オフセット量が求められる。
(タイミング検出用トレーニング符号系列の解析)
タイミング検出部500によるタイミング検出用トレーニング符号系列410の解析手法について説明する。タイミング検出に用いるタイミング検出用トレーニング符号系列410をs(n)とし、s(n)の先頭位置を、n=n0とする。このとき、s(n)は、n0≦n≦n0+Lt/2において次式(5)に示される関係を満たす符号系列である。
式(5)に示される通り、s(n)は、系列長がLtで、先頭からLt/2番目までの符号系列と、Lt/2番目からLt番目までの符号系列が一致する符号系列である。シンボル時間t=nTにおける周波数オフセットを含んだ受信信号は、式(4)より、nの関数として、次式(6)で表される。
式(6)において、φm(n)は、s(n)、すなわちタイミング検出用トレーニング符号系列410に対応する位相変調であり、BPSKの場合、0またはπの値となる。受信信号r(n)のn番目のシンボルと、n+Lt/2番目のシンボルの差動成分d(n)は、式(6)より、次式(7)で表される。
r(n+Lt/2)*の「*」は、複素共役を意味する。任意の位置n=n’からn=n’+Lt/2までのd(n)の和を算出すると次式(8)となる。
ここで、式(5)より、n0≦n≦n0+Lt/2の場合、次式(9)が成り立つ。
したがって、式(8)は、次式(10)となる。
式(10)において、右辺第1項は、ランダムな位相を有するベクトルの和であり、互いに打ち消し合う成分が存在する。これに対して、第2項は、nに依存しない同一ベクトルの和であり、これらの成分は互いに強め合う。そのため、式(10)の第2項に含まれるベクトルの数が、第1項に含まれるベクトルの数に比べて多い場合ほど、D(n’)の値は増大する。n’=n0の場合、式(10)の右辺第1項の成分は0となりD(n’)の値が最大となる。
以上の手順により、タイミング検出部500は、|D(n’)|の最大値を検出してタイミング検出用トレーニング符号系列410の先頭位置n0を算出する。タイミング検出用トレーニング符号系列410の系列長はLtであることから、n0にLtを加えることで周波数オフセット推定用トレーニング符号系列411の先頭位置も算出することができる。これにより、タイミング検出部500は、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列411に対応する受信信号r(n)を乗算器503に出力するタイミング検出を行うことが可能となる。当該タイミングの検出手法において、トレーニング信号の先頭位置の検出の精度を高めるには式(10)の第2項の値を増大させる必要があり、そのためには、タイミング検出用トレーニング符号系列410の系列長Ltを長くする必要がある。
(周波数オフセット推定用トレーニング符号系列の解析)
図14を参照しつつ、周波数オフセット補償部311が行う周波数オフセット量の推定の手順について説明する。図14に示すトレーニング信号生成部501が、予め与えられる周波数オフセット推定用トレーニング符号系列411からトレーニング信号を生成して出力する。トレーニング符号系列のシンボルから生成されるトレーニング信号は、式(4)より、nの関数として、次式(11)として表される。
これに対して、タイミング検出部500が出力する周波数オフセット推定用トレーニング符号系列411に対応する受信信号r(n)は、上記の式(6)の通りであり、この式を次式(12)として再掲する。
タイミング検出部500は、上述した通り、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列411の先頭位置を検出し、検出した先頭位置以降のシンボルを含む受信信号r(n)を出力する。しかし、タイミング検出部500によるタイミングの検出おいて、シンボルの検出位置に誤差Δn(ここで、Δnは、整数であり、…−3,−2,−1,0,1,2,3,…のいずれかの値である)が生じる場合がある。以下、当該誤差Δnを含めた説明を行う。
乗算器503は、位置の誤差を含む受信信号r(n+Δn)と、複素共役器502が出力するトレーニング信号t(n)の複素共役t(n)*とを乗算することにより、受信信号r(n+Δn)と、トレーニング信号t(n)との差動成分d’(n)を算出する。差動成分d’(n)は、次式(13)として表される。
遅延器504は、乗算器503が出力する差動成分d’(n)を取り込み、1シンボル遅延させたd’(n+1)を出力する。複素共役器505は、d’(n+1)を取り込み、複素共役d’(n+1)*を出力する。乗算器506は、差動成分d’(n)と、複素共役器505が出力するd’(n+1)*を乗算し、次式(14)で表される1シンボル遅延差動成分を算出する。
式(14)において、タイミング検出の誤差Δnが0の場合、次式(15)となる。
したがって、周波数オフセット量は、次式(16)で表される通り、式(15)の偏角として求められることになる。
実際の伝送では、受信信号は、伝送による雑音の影響を受けるため、当該雑音の影響を除去する必要があり、そのために、複数の1シンボル遅延差動成分d’(n)d’(n+1)*のベクトル平均を算出する。ベクトル平均器507は、乗算器506が出力する1シンボル遅延差動成分を、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列411の系列長Lfにわたって式(15)のベクトル平均を算出する。偏角器508は、ベクトル平均器507が算出したベクトル平均の偏角を出力する。これにより、次式(17)に示すように周波数オフセット量が求められる。
なお、次式(18)のように偏角の平均を算出することによっても周波数オフセット量を求めることができる。
以上のように、受信信号に含まれるトレーニング信号と、予め与えられる周波数オフセット推定用トレーニング符号系列411から生成したトレーニング信号とを用いて周波数オフセット量を算出することができる。周波数オフセット補償部311の周波数オフセット補償処理部509は、算出した周波数オフセット量を用いて受信信号の周波数オフセットを行い、周波数オフセットを補償した受信信号を出力する。
ところで、上記の手順では、式(14)から分かるように、タイミング検出の際の位置の誤差Δnが、1シンボル以上生じると、周波数オフセット量を算出する演算を行うことが困難になる。そのため、トレーニング信号を用いる非特許文献3に示される手法等において、タイミング検出部500によるタイミング検出用トレーニング符号系列410の先頭位置の検出には高い精度が求められる。しかしながら、高い精度で位置検出を行うためには、タイミング検出用トレーニング符号系列410の系列長を長くする必要があり、アクセスネットワークにおける周波数オフセット量の推定技術として適用することが難しいという問題がある。
上記事情に鑑み、本発明は、デジタルコヒーレント方式において、推定する周波数範囲が広く、少ないトレーニング符号系列で周波数オフセット量の推定を行うことができる技術の提供を目的としている。
本発明の一態様は、予め定められるトレーニング符号系列に基づいて生成されるトレーニング信号を含むコヒーレント光信号を受信し、受信した前記コヒーレント光信号から得られる受信信号に含まれる前記トレーニング信号を用いて前記受信信号の周波数オフセットの補償を行う光受信装置であって、前記受信信号から前記トレーニング符号系列に含まれる周波数オフセット推定用トレーニング符号系列の一部又は全てを含む区間であって、前記周波数オフセット推定用トレーニング符号系列の系列長に対応する長さの前記受信信号を周波数オフセット推定用の受信トレーニング信号として検出するタイミング検出部と、検出した前記受信トレーニング信号の1シンボル遅延差動成分と、前記周波数オフセット推定用トレーニング符号系列に基づいて生成される前記トレーニング信号の1シンボル遅延差動成分と、に基づいて周波数オフセット量を算出する周波数オフセット推定部と、を備え、前記周波数オフセット推定用トレーニング符号系列は、多値の位相変調のシンボルからなる符号系列であって当該周波数オフセット推定用トレーニング符号系列に基づいて生成される前記トレーニング信号の1シンボル遅延差動成分のベクトル平均の偏角が所定の角度となる符号系列である光受信装置である。
本発明の一態様は、上記の光受信装置であって、前記周波数オフセット推定用トレーニング符号系列は、当該周波数オフセット推定用トレーニング符号系列の系列長が、前記タイミング検出部によるシンボル位置の検出誤差よりも十分に長く、当該周波数オフセット推定用トレーニング符号系列に基づいて生成される前記トレーニング信号の1シンボル遅延差動成分のベクトル平均を算出した場合、互いに打ち消し合わずに強め合い、かつ前記ベクトル平均の偏角が所定の角度となる符号系列である。
本発明の一態様は、上記の光受信装置であって、前記トレーニング符号系列は、前記周波数オフセット推定用トレーニング符号系列の前後、または前か後ろのいずれか一方に冗長符号系列が付加されており、前記周波数オフセット推定用トレーニング符号系列の前に前記冗長符号系列が付加される場合、前記冗長符号系列は、前記周波数オフセット推定用トレーニング符号系列の最後を含む部分系列であって前記冗長符号系列と同じ系列長の部分系列と同一の符号系列であり、前記周波数オフセット推定用トレーニング符号系列の後ろに前記冗長符号系列が付加えられる場合、前記冗長符号系列は、前記周波数オフセット推定用トレーニング符号系列の最初を含む部分系列であって前記冗長符号系列と同じ系列長の部分系列と同一の符号系列である。
本発明の一態様は、上記の光受信装置であって、前記タイミング検出部は、前記受信信号がバースト信号である場合、前記バースト信号の光強度と、予め定められる閾値とに基づいて前記受信トレーニング信号を検出する。
本発明の一態様は、多値の位相変調のシンボルからなる符号系列であって当該符号系列に基づいて生成される信号の1シンボル遅延差動成分のベクトル平均の偏角が所定の角度となる符号系列である周波数オフセット推定用トレーニング符号系列を含むトレーニング符号系列をプリアンブルに書き込んで送信フレームを生成するフレーム生成部と、前記送信フレームのI成分とQ成分を生成するIQ信号生成部と、前記送信フレームのI成分と前記送信フレームのQ成分とに基づいて変調を行うことにより得られるコヒーレント光信号を送信する光コヒーレント送信部と、を備える光送信装置である。
本発明の一態様は、多値の位相変調のシンボルからなる符号系列であって当該符号系列に基づいて生成される信号の1シンボル遅延差動成分のベクトル平均の偏角が所定の角度となる符号系列である周波数オフセット推定用トレーニング符号系列を含むトレーニング符号系列に基づいて生成されるトレーニング信号を含むコヒーレント光信号を受信し、受信した前記コヒーレント光信号から得られる受信信号から前記トレーニング符号系列に含まれる前記周波数オフセット推定用トレーニング符号系列の一部又は全てを含む区間であって、前記周波数オフセット推定用トレーニング符号系列の系列長に対応する長さの前記受信信号を周波数オフセット推定用の受信トレーニング信号として検出し、検出した前記受信トレーニング信号の1シンボル遅延差動成分と、前記周波数オフセット推定用トレーニング符号系列に基づいて生成される前記トレーニング信号の1シンボル遅延差動成分と、に基づいて周波数オフセット量を算出する周波数オフセット推定方法である。
本発明により、デジタルコヒーレント方式において、推定する周波数範囲が広く、少ないトレーニング符号系列で周波数オフセット量の推定を行うことが可能となる。
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態における光伝送システムSの構成を示す概略ブロック図である。光伝送システムSは、光送信装置1及び光受信装置2を備える。光送信装置1と光受信装置2とは、光伝送路3を介して通信可能に接続される。
光送信装置1は、フレーム生成部10、IQ信号生成部11及び光コヒーレント送信部12を備える。
フレーム生成部10は、外部から与えられる送信データを取り込み、図2に示すバーストフレーム10outを生成する。バーストフレーム10outは、先頭から順番にプリアンブル、ペイロード、エンドオブバーストの各フィールドを有する。フレーム生成部10は、外部から与えられる送信データをペイロードに含めてバーストフレーム10outを生成する。
また、フレーム生成部10は、内部の記憶領域に予め記憶する系列長がLtのタイミング検出用トレーニング符号系列60と、系列長がLfの周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70とをプリアンブルに含めてバーストフレーム10outを生成する。第1の実施形態では、後述する光受信装置2が行うトレーニング信号の先頭位置の検出手法に、上述したタイミング検出部500の手法が適用される。そのため、フレーム生成部10がプリアンブルに含めるタイミング検出用トレーニング符号系列60は、上記の式(5)の関係を満たす符号系列である。
なお、以下の説明において、「トレーニング符号系列」と記載した場合、タイミング検出用トレーニング符号系列60及び周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の両方を含んだ符号系列を意味するものとする。ただし、後述するプリアンブルにタイミング検出用トレーニング符号系列60が含まれない構成の場合に「トレーニング符号系列」と記載したときは、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70を意味する。
IQ信号生成部11は、フレーム生成部10が生成したバーストフレーム10outを取り込み、I成分とQ成分の変調信号11outを生成する。第1の実施形態では、例えば、IQ信号生成部11は、BSPK(Binary Phase shift Keying)により変調信号を生成するものとする。
光コヒーレント送信部12は、IQ信号生成部11が生成したI成分とQ成分の変調信号を用いて、内部に備える光源が出力する光を変調することによりコヒーレント光信号の送信信号を生成する。光コヒーレント送信部12は、生成した送信信号を、光伝送路3を介して光受信装置2に送信する。
光受信装置2は、光コヒーレント受信部20、局部発振器21、ADC22、デジタル信号処理部23及び出力部24を備える。
光コヒーレント受信部20は、位相ダイバーシティ方式により光伝送路3を介して受信する受信光と、局部発振器21が出力する局発光の干渉波形を測定するコヒーレント受信を行いI成分とQ成分のアナログ信号を出力する。
ADC22は、光コヒーレント受信部20から出力されたI成分とQ成分のアナログ信号をデジタル信号に変換する。デジタル信号処理部23は、例えば、DSPであり、等化器31、周波数オフセット補償部32及び位相オフセット補償部33を備える。等化器31は、ADC22が出力するデジタル信号に対して、適応等化処理を行い、伝搬によって生じた波形歪、例えば、波長分散、偏波モード分散、偏波回転等を補償した受信信号31outを出力する。
周波数オフセット補償部32は、等化器31が出力する受信信号31outに含まれるトレーニング信号を用いて周波数オフセット量を算出する。また、周波数オフセット補償部32は、算出した周波数オフセット量を用いて、等化器31が出力する受信信号31outに対して逆回転演算を行い、周波数オフセットの位相回転を取り除いた受信信号32outを出力する。
位相オフセット補償部33は、周波数オフセット補償部32が出力する受信信号32outから時間的に一定の位相オフセット成分を取り除き、送信信号のコンスタレーションが再現された受信信号33outを出力する。出力部24は、受信信号33outを復号して外部に出力する。
図3は、周波数オフセット補償部32の内部構成を示すブロック図である。周波数オフセット補償部32は、タイミング検出部320、トレーニング信号解析部321、周波数オフセット推定部322及び周波数オフセット補償処理部323を備える。
タイミング検出部320は、受信信号31outに含まれるトレーニング信号の位置を検出する。第1の実施形態では、上述したように、タイミング検出部320によるトレーニング信号の先頭位置の検出手法として、タイミング検出部500による手法が適用される。
トレーニング信号解析部321は、トレーニング信号生成部41、遅延器42、複素共役器43、乗算器44、ベクトル平均器45及び偏角器46を備える。周波数オフセット推定部322は、遅延器51、複素共役器52、乗算器53、ベクトル平均器54、偏角器55及び減算器56を備える。
トレーニング信号解析部321において、トレーニング信号生成部41は、予め与えられる周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70からトレーニング信号t(n)を生成して出力する。予め与えられる周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70は、以下のような手段によってトレーニング信号生成部41の内部の記憶領域に予め記憶されているものとする。例えば、通信品質の良い別の通信回線を介して光受信装置2が光送信装置1から受信したり、記録媒体から光受信装置2が読み出したりする等の手段によって光受信装置2が周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の情報を内部に取り込む。トレーニング信号生成部41は、取り込まれた周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の情報を内部の記憶領域に予め書き込んで記憶させておく。
トレーニング信号解析部321及び周波数オフセット推定部322において、遅延器42,51は、取り込んだ信号に対して1シンボル遅延した信号を出力する。複素共役器43,52は、取り込んだ信号の複素共役の信号を出力する。乗算器44,53は、取り込んだ2つの信号を乗算し、乗算した結果を出力する。ベクトル平均器54は、定められる範囲のベクトルの総和を算出することによりベクトル平均を求めて出力する。偏角器46,55は、ベクトルの偏角を算出する。周波数オフセット推定部322において、減算器56は、取り込んだ2つの偏角の差分を算出して出力する。
周波数オフセット補償処理部323は、周波数オフセット推定部322が算出する周波数オフセット量を用いて受信信号31outに対する周波数オフセットの補償を行う。
(トレーニング信号の偏角θtの算出)
周波数オフセット補償部32が受信信号31outを取り込む前に、トレーニング信号解析部321は、トレーニング信号の偏角θtを算出する。トレーニング信号生成部41は、予め与えられる周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70からトレーニング信号t(n)を生成して出力する。
トレーニング符号系列は、例えば、BPSKの場合、0,πの2値の符号系列となり、トレーニング信号t(n)は、Aexpj(ωt),Aexpj(ωt+π)となる。なお、参考としてQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)の場合、トレーニング符号系列は、+1/4π,−1/4π,+3/4π,−3/4πの4値の符号系列となり、トレーニング信号t(n)は、Aexpj(ωt+1/4π),Aexpj(ωt−1/4π),Aexpj(ωt+3/4π),Aexpj(ωt−3/4π)となる。
遅延器42は、トレーニング信号t(n)を取り込み、取り込んだトレーニング信号t(n)の1シンボル遅延後の信号t(n+1)を出力する。複素共役器43は、遅延器42が出力するt(n+1)を取り込み、t(n+1)の複素共役t(n+1)*を出力する。
乗算器44は、トレーニング信号t(n)と、複素共役器43が出力するt(n+1)*とを乗算し、1シンボル遅延差動成分Δt(n)を算出する。1シンボル遅延差動成分Δt(n)は、式(11)より、次式(19)として表される。
なお、式(19)において、式(20)に示す置き換えを行っている。
ベクトル平均器45により、Δt(n)を周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の系列長Lfにわたってベクトル和を算出する。ベクトル平均器45が算出するベクトル和は、次式(21)により表される。
偏角器46は、ベクトル平均器45が出力するベクトル和の偏角、すなわちθtを出力する。
(周波数オフセット量を推定する処理の流れ)
次に、図4に示すフローチャートを参照しつつ、タイミング検出部320及び周波数オフセット推定部322による周波数オフセット量を演算により算出して推定する処理の流れについて説明する。
タイミング検出部320は、等化器31が出力する受信信号31outを取り込み、タイミング検出用トレーニング符号系列60を用いて、第1の先頭位置として、受信信号31outに含まれるトレーニング信号の先頭位置を検出する。タイミング検出用トレーニング符号系列60の系列長はLtである。そのため、タイミング検出部320は、第1の先頭位置に系列長Ltに対応する信号長を加えて周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70に対応する区間のトレーニング信号の先頭位置、すなわち第2の先頭位置を検出する。タイミング検出部320は、検出した第2の先頭位置以降のシンボルを含む受信信号r(n)を受信トレーニング信号として出力する(ステップS101)。
なお、第1の実施形態では、タイミング検出部320による先頭位置の検出には、後述するように、誤差が含まれていることを前提としている。そのため、「受信トレーニング信号」の用語は、その中に「トレーニング信号」の用語を含んでいるが、検出誤差のために周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70以外の系列を一部に含んでいる可能性があるものとして以下の説明を行う。
遅延器51は、タイミング検出部320が出力する受信信号r(n)を取り込み、取り込んだ受信信号r(n)の1シンボル遅延後の信号r(n+1)を出力する。複素共役器52は、遅延器51が出力するr(n+1)を取り込み、r(n+1)の複素共役r(n+1)*を出力する。乗算器53は、受信信号r(n)と、複素共役器52が出力するr(n+1)*とを乗算し、1シンボル遅延差動成分Δr(n)を算出する(ステップS102)。1シンボル遅延差動成分Δr(n)は、式(12)より、次式(22)として表される。
式(22)より、隣接シンボル間の1シンボル遅延差動成分Δr(n)の位相は、周波数オフセット成分2πfIFTと隣接シンボル間の変調位相差Δθの和で表されることが分かる。これより、周波数オフセット量は、1シンボル遅延差動成分Δr(n)の偏角を用いて、次式(23)により求めることができる。
なお、式(23)に示す関係をIQ平面上において示すと図5(a)となる。また、式(23)により周波数オフセット量を推定する場合、推定可能な周波数オフセット量の範囲は、次式(24)で示す通りとなる。
したがって、周波数オフセット量を推定可能な周波数の範囲は、式(25)の通りとなる。
なお、式(25)において、Bは、上述したように送信信号におけるシンボルのボーレートである。
雑音の影響を除去するため、ベクトル平均器54は、時間的な平均、すなわち1シンボル遅延差動成分Δr(n)を周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の系列長Lfにわたってベクトル和を算出する(ステップS103)。ベクトル平均器54が算出するベクトル和は、次式(26)により表される。
偏角器55は、ベクトル平均器54が出力するベクトル和の偏角、すなわちθrを算出する(ステップS104)。
減算器56は、θrからθtを減算して周波数オフセット量を算出する(ステップS105)。算出した周波数オフセット量は次式(27)として表すことができる。
図5(b)に示す通り、IQ平面上において、ベクトル平均器54の出力であるΣΔr(n)の偏角、すなわちθrからトレーニング信号解析部321が出力するθtを減算することにより周波数オフセット量の2πfIFTを求めることができる。
上記の処理において、式(21)及び式(26)に示す通り、トレーニング信号解析部321のベクトル平均器45がベクトル平均を求める区間と、周波数オフセット推定部322のベクトル平均器54がベクトルの平均を求める区間とがn=0〜Lfで一致している必要がある。
タイミング検出部320が検出した第1の先頭位置に検出誤差が含まれている場合、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の先頭位置に対応する第2の先頭位置にも誤差が含まれることになる。この誤差をΔn(ここで、Δnは、整数であり、…−3,−2,−1,0,1,2,3,…のいずれかの値である)とすると、Δnが生じている場合、式(26)は、次式(28)となる。
式(21)、式(26)、式(28)より、タイミング検出の誤差の影響を除去するには、次式(29)に示す関係が成り立つことが必要である。
例えば、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70と、当該系列の前後の符号系列との関係において、次式(30)に示すような関係が成立すれば、式(29)の条件を近似的に満たすことができる。それにより、タイミング検出部320による検出誤差による影響を低減することが可能となる。
式(30)が示す関係とは、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の系列長LfをΔnに対して十分に長くすること及びΔt(n)を構成するベクトルのベクトル平均を算出した際に、互いが打ち消し合わず、逆に強め合うようなΔt(n)となる符号系列であることを満たすことである。
換言すると、第1の実施形態の構成では、タイミング検出部320による第1の先頭位置の検出に誤差が生じていたとしても、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70に含まれるシンボルの組み合わせのパターンや系列長を工夫することで、誤差の影響を抑えることができる。したがって、タイミング検出部320の位置の検出精度として、タイミング検出部500に要求されるような高い精度は要求されず、タイミング検出部320は、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70に対応するトレーニング信号の位置をおおまかに検出すればよいことになる。そのため、タイミング検出用トレーニング符号系列60の系列長も短くすることができ、通信効率を高めることが可能となる。また、タイミング検出部320による検出手法として、タイミング検出用トレーニング符号系列60を用いる検出手法よりも精度の低い検出手法を適用してもよい。
式(30)の左辺の偏角は、式(21)よりθtであり、周波数オフセット量を式(27)に示すようにθr−θtの演算より算出するためには、式(30)の左辺に示す1シンボル遅延差動成分Δt(n)のベクトル平均のベクトルの長さがゼロにならず、IQ平面上において偏角θtが所定の角度を有している必要がある。仮に、1シンボル遅延差動成分Δt(n)のベクトル平均のベクトルの長さがゼロになってしまった場合、少しでも誤差があれば、式(30)の関係が成立しないことになる。式(30)の関係が成立しないと誤差に起因する雑音成分が大きくなるためθrがランダムな値となり、周波数オフセット量を演算によって算出することが困難となる。なお、偏角θtの所定の角度とは、式(30)の関係を満たすようなトレーニング符号系列のベクトルの偏角であり、検出誤差の量によって所定の角度となる合成ベクトルの長さとして要求される値は増減する。
上記の互いが打ち消し合わずに、強め合う周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の一例として、BPSKにおける例を以下に示す。BPSKの符号系列は、上述したように、0とπの2値であり、例えば、(π,0,π,0,π,0,…)というような、πと0を交互に入れ替わる符号系列を周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70にしたとする。この場合、1シンボル遅延差動成分Δt(n)は、式(19)より(+π,−π,+π,−π,…)となる。+π=−πであることから、結果として、1シンボル遅延差動成分Δt(n)は、(+π,+π,+π,+π,…)となる。
この(+π,+π,+π,+π,…)の符号系列について、IQ平面上でベクトル平均を算出した場合、互いが打ち消し合うことなく強め合うため、誤差に起因する雑音成分よりも大きくなり、式(30)に示す関係を有することになる。そのため、当該符号系列は、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70として適切な符号系列であるといえる。
式(29)において、次式(31)を満たす符号系列を用いる場合、式(29)の条件を完全に満たすことになるため、タイミング検出部320による検出誤差の影響を除去することが可能となる。
例えば、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の前後に式(31)を満たす冗長符号系列を付加した符号系列にすることで、式(29)の条件を完全に満たす符号系列を実現することができる。冗長符号系列の例として、理解の容易のため、第1の実施形態の対象であるBPSKではなく、QSPKの4値の符号系列の場合を図6及び図7に示す。なお、図6及び図7では、QPSKの(+1/4π,−1/4π,+3/4π,−3/4π)の4値を(0,1,2,3)を用いて示している。
図6(a)は、系列長Lfを有するQPSKの周波数オフセット推定用トレーニング信号70aの前後に冗長符号系列71aと冗長符号系列72aとを付加した例である。冗長符号系列71aは、シンボル数においてLf個先の符号系列70a−eと同一の符号系列となっている。また、冗長符号系列72aも、シンボル数においてLf個後の符号系列70a−sと同一の符号系列となっている。そのため、冗長符号系列71aと冗長符号系列72aとは、式(31)を満たす符号系列である。
また、図6(a)のように、周波数オフセット推定用トレーニング信号70aの前後に冗長符号系列71a,72aを付加するのではなく、前又は後ろのいずれかに冗長符号系列72a(または71a)を付加するようにしてもよい。例えば、図6(b)は、周波数オフセット推定用トレーニング信号70aの後ろに冗長符号系列72aを付加した例である。周波数オフセット推定用トレーニング信号70aの前後のいずれかに冗長符号系列72a(または71a)を付加する場合、ベクトル平均を算出する区間の先頭の位置を、発生する誤差、及び付加する冗長符号系列72a(または71a)の長さに応じて定める必要がある。
理解の容易のため、10値のシンボル値に変調された例を用いて説明する。例えば、元のシンボルが系列長10の「0,1,2,3,4,5,6,7,8,9」という系列であるとする。元のシンボルの後ろに、元のシンボルの先頭から4シンボル分と同一の系列である冗長符号系列「0,1,2,3」を付加すると、系列長14の「0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,0,1,2,3」という系列が得られる。この場合、冗長符号系列が付加されたトレーニング符号系列の先頭から2シンボル後をベクトル平均を算出する区間であるLfの先頭として10シンボルを抽出すると、「2,3,4,5,6,7,8,9,0,1」という系列になる。抽出した10シンボルの系列に基づいてベクトル平均を算出すれば、タイミング検出の前後2シンボル以内の誤差が生じる場合、式(31)の関係を満たしつつベクトル平均を算出することができる。なお、図6(b)は、1シンボル後をベクトル平均を算出する区間であるLfの先頭とした例であり、発生する誤差に応じて、付加する冗長符号系列の長さを定めて、冗長符号系列の長さの範囲内でベクトル平均を算出する先頭位置を定めることになる。
図7は、式(31)を満たす冗長化したトレーニング符号系列を生成する他の例を示す図である。例えば、4値のシンボル[0,1,2,3]に対して、1シンボルごとにπとπ/2の位相回転を与えてトレーニング符号系列70bを生成する。生成したトレーニング符号系列70bは、図7に示すように、[0,2,3,1,2,0,1,3,0,2,3,1,2,0,1,3,…,0,2,3,1,2,0,1,3]となる。これは、図7において符号70b−sで示す[0,2,3,1,2,0,1,3]という8シンボルからなる系列が繰り返されているパターンとなる。
この場合、ベクトル平均を算出する区間であるLfが8シンボルの倍数であれば、図6に示したように新たに冗長符号系列を付加しなくても、生成したトレーニング符号系列70bの一部を冗長化したトレーニング符号系列として用いることができる。例えば、ベクトル平均を算出する区間であるLfを符号73bで示す区間とする場合、符号73bの区間の前後4シンボルを冗長符号系列71b,72bとし、冗長符号系列を含む符号74bで示す区間を冗長化したトレーニング符号系列として用いればよいことになる。なお、図7では、一例として、符号73bの区間の前後4シンボルを冗長符号系列71b,72bとする例を示したが、冗長符号系列71b,72bは前後4シンボルに限らず、前後4シンボルの周辺のシンボル全て(例えば、8シンボルの繰り返しパターンが続く区間)が用いられてもよい。この場合、8シンボルの繰り返しパターンが続く区間全てを含む区間を冗長化したトレーニング符号系列として用いればよいことになる。以下では、前後4シンボルを冗長符号系列71b,72bとし、冗長符号系列を含む符号74bで示す区間を冗長化したトレーニング符号系列として用いる場合を例に説明する。
このように、符号70b−sで示すような特定のパターンの繰り返しによって式(31)を満たす冗長化したトレーニング符号系列を生成する場合、ベクトル平均を算出する区間の長さLfを、特定のパターンの倍数にしさえすれば、その前後のシンボルを含めるだけで、冗長化したトレーニング符号系列74bを生成することができる。そのため、図7に示す手法は、図6に示した手法のように新たに冗長符号系列を付加するという手順を行うことないため、図6に示した手法よりも容易に冗長化したトレーニング符号系列74bを得ることができる。また、図7の例においても、図6(b)と同様に、冗長符号系列71b,72bのいずれか一方のみを付加して、ベクトル平均を算出する区間の先頭の位置を、付加したいずれか一方の冗長符号系列71b,72bの長さの範囲内で定めるようにしてもよい。
ところで、一般的に光伝送システムにおいて光送信装置や光受信装置には動作可能な周波数帯域に制限があり、送受信される信号に同一の符号が連続(例えば、π,π,π,π,0,0,0,0)で生じる場合、低周波成分を含むことになり、低周波成分による波形劣化が問題となることがある。そのため、第1の実施形態の構成では、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70として同一の符号の連続ができるだけ少ないような符号系列を用いることが望ましい。
第1の実施形態の構成では、上述したように、1シンボル遅延差動成分のベクトル平均を算出する際、雑音耐性の向上のためには1シンボル遅延差動成分のベクトル平均の結果を強め合うような周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70が要求される。したがって、第1の実施形態の構成では、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70より生成されるトレーニング信号の1シンボル遅延差動成分が要求されるものになればよく、符号系列そのものは自由に選択できることになる。そのため、同一の符号の連続がないような符号系列を選択することも可能であり、そういう選択をすることで低周波成分による波形劣化を抑えることが可能となる。
上記の第1の実施形態の構成により、光受信装置2は、予め定められるトレーニング符号系列に基づいて生成されるトレーニング信号を含むコヒーレント光信号を受信する。光受信装置2の周波数オフセット補償部32が備えるタイミング検出部320は、受信信号からトレーニング符号系列に含まれる周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の一部又は全てを含む区間であって周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の系列長に対応する長さの受信信号を周波数オフセット推定用の受信トレーニング信号として検出する。周波数オフセット推定部322は、タイミング検出部320が検出した受信トレーニング信号の1シンボル遅延差動成分と、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70より生成されるトレーニング信号の1シンボル遅延差動成分とに基づいて、周波数オフセット補償に用いる周波数オフセット量を算出する。周波数オフセット補償処理部323は、周波数オフセット推定部322が算出した周波数オフセット量を用いて受信信号の周波数オフセットの補償を行う。周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70は、例えばBPSKのシンボルからなる符号系列であって当該周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70より生成されるトレーニング信号の1シンボル遅延差動成分のベクトル平均の偏角が所定の角度となる符号系列である。これにより、デジタルコヒーレント方式において、推定する周波数範囲が広く、かつ少ない符号系列で周波数オフセット量の推定を行うことが可能となる。それにより、比較的簡易な構成で、信号対雑音比を低下や波長劣化を抑えることができ、符号誤り率を改善することができ、光伝送路の最大伝送距離の長延化と、光伝送路における分岐数拡大とが可能となる。また、第1の実施形態の構成では、位相変調の多値数によらず適用可能な周波数の範囲が、−B/2≦fIF<B/2であり広い周波数範囲となっている。また、受信信号におけるトレーニング信号の位置の検出に高い精度を要求しないため、タイミング検出用トレーニング符号系列60の数を削減することができるため、通信効率を高めることができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態として、第1の実施形態の構成に対して、変調方式としてQPSKを適用する場合に用いられる周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70について説明する。図8(a)は、QPSKの場合の周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70から生成されるトレーニング信号t(n)の一例である。図8(b)は、光送信装置1が図8(a)のトレーニング信号を送信して光受信装置2が当該トレーニング信号を受信した場合に、タイミング検出部320が出力する受信信号r(n)、すなわち受信トレーニング信号を示した図である。
図8(a)に示すように周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70として、1シンボルごとにπとπ/2の位相回転を与えるような符号系列、すなわち(π/4,5π/4,7π/4,3π/4,5π/4)という系列を与えている。
図8(a)のn=0において、符号81の実線の円の位置がトレーニング信号t(n)の「π/4」を示している。なお、図8(a)では説明の簡単化のため、n=0の場合には周波数オフセットによる影響がない場合を図示しているため、図8(b)の符号81rの実線の円で示される受信信号r(n)の位置は、IQ平面において符号81と同一の「π/4」の位置となる。
図8(a)のn=1において、符号82の実線の円の位置は、1つ前の「π/4」の位置を示す符号81pの破線の円の位置から+πの位相回転後の「5π/4」を示している。図8(b)のn=1において、符号82tの破線の円は、図8(a)のn=1の符号82で示される「5π/4」の位置を示している。
同様に、図8(a)の符号83〜85の実線の円は、符号系列(7π/4),(3π/4),(5π/4)の各々に対応する位置を示している。図8(a)の符号82p,83p,84pの破線の円は、1つ前の符号82,83,84の位置を示しており、図8(b)の符号83t,84t,85tの破線の円は、図8(a)の符号83,84,85の位置を示している。
図8(b)において、n=1の場合、トレーニング信号t(n)に対して周波数オフセットとして2πfIFT分の位相回転が加わるため、受信信号r(n)の位置は、符号82rの実線の円の位置となる。同様にして、n=2の場合、4πfIFT分の周波数オフセットが加わるため、受信信号r(n)の位置は、符号83rの実線の円の位置となる。n=3の場合、6πfIFT分の周波数オフセットが加わるため、受信信号r(n)の位置は、符号84rの実線の円の位置となる。また、n=4の場合、8πfIFT分の周波数オフセットが加わるため、受信信号r(n)の位置は、符号85rの実線の円の位置となる。
図9(a)は、図8(a)のトレーニング信号の1シンボル遅延差動成分Δt(n)のベクトル平均を示す図である。図8(a)の場合、πとπ/2の出現頻度が等しいため、トレーニング信号t(n)の1シンボル遅延差動成分Δt(n)のベクトル平均の偏角は、図9(a)に示す通り「3π/4」となる。これが、式(27)におけるθtとなる。
図9(b)は、図8(b)の受信信号r(n)の1シンボル遅延差動成分Δr(n)のベクトル平均と、当該ベクトル平均の偏角θrを示す図である。したがって、θrからθtを減算することにより周波数オフセット量を算出することができ、式(27)よりfIFは、次式(32)で示される値となる。
上記の(π/4,5π/4,7π/4,3π/4,5π/4)という符号系列は、同じ符号が続かず、かつ長時間平均を求めた場合にも符号に隔たりがない符号系列となっている。このような符号系列は、一般的に、光通信における受信側の過渡応答による悪影響が少ない符号系列であると言える。当該符号系列は、上述したBPSKの例として示した1シンボル遅延差動成分Δt(n)が(+π,+π,+π,+π,…)のようにIQ平面上において1点に集中し、ベクトル平均を求めた場合に互いに常に強め合う符号系列にはなっていない。しかし、当該符号系列は、1シンボル遅延差動成分Δt(n)がIQ平面上において隣接する2点に集中する符号系列となっている。したがって、このような符号系列であっても1シンボル遅延差動成分Δt(n)のベクトル平均は、誤差に起因する雑音成分よりも大きくなるため、式(30)に示す関係を有する。そのため、当該符号系列(π/4,5π/4,7π/4,3π/4,5π/4)は、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70として適切な符号系列である。
(第3の実施形態)
上記の第1の実施形態の構成において、タイミング検出部320に対して、タイミング検出部500によるトレーニング信号の先頭位置の検出手法が適用されるとしていた。上述したように、第1の実施形態の構成では、タイミング検出部320に対して、タイミング検出部500に要求されるような高い精度の位置検出を要求していないため、他の検出手法を適用することもできる。第3の実施形態として、タイミング検出部320に適用可能な当該他の検出手法について説明する。
上述したように、光送信装置1において、フレーム生成部10は、バーストフレーム10outを生成して送信していることから、光受信装置2が受信する受信信号は、バースト信号となる。バースト信号の光強度の波形は、例えば、図10(a)に示すように、矩形波ではなく、少しずつ線形的に増加した後、一定の光強度になる波形となる。
バーストフレーム10outのプリアンブルにおいて周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70が書き込まれる位置は予め定められている。そのため、図10(a)に示すように、バースト信号の光強度が閾値を超える時刻nthから周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の先頭位置までの時間n’は、ほぼ一定である。したがって、タイミング検出部320は、受信信号の光強度と、予め定められる閾値とに基づいて、光強度が閾値を超えるか否かを判定し、光強度が閾値を超えると判定した際の時刻nthに、例えば、内部に備えるタイマを起動させる。
タイミング検出部320は、タイマが示す時間がn’に一致するか否かを判定し、タイマが示す時間がn’に一致した場合、一致した時点の受信信号の位置を周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の区間に対応する先頭位置として検出する。タイミング検出部320は、当該先頭位置、すなわち時刻nth+n’からnth+n’+Lfまでの受信信号を周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の区間に対応する受信信号r(n)、すなわち受信トレーニング信号90として周波数オフセット推定部322に出力する。これにより、周波数オフセット推定部322は、受信トレーニング信号90に基づいて周波数オフセット量を求めることができる。
また、第1の実施形態において説明した周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70の前後に冗長符号系列を付加する符号系列を用いる他の手法もある。例えば、プリアンブルの全てを、図7に示した、冗長符号系列と同一の系列が繰り返される符号系列とする。この場合、トレーニング信号における任意の区間であって系列長Lfに対応する信号長の区間を取り込む。これにより、取り込んだ区間が、冗長化したトレーニング符号系列74bから任意に抽出した長さLfの区間となるため、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70bそのものか、または、冗長符号系列71b,72bの全てもしくは一部と周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70bの一部となるため周波数オフセット量を求めることができる。処理の手順としては、タイミング検出部320は、図10(b)に示すように光強度が予め定められる閾値を超えた時刻nthからnth+Lfの区間の受信信号r(n)を受信トレーニング信号91として周波数オフセット推定部322に出力する。周波数オフセット推定部322は、受信トレーニング信号91に基づいて周波数オフセット量を算出するという手順になる。
図10(b)に示すバースト信号の場合、プリアンブルにタイミング検出用トレーニング符号系列60を含める必要がない。また、図10(a)の場合も、タイミング検出用トレーニング符号系列60を必ずしも含める必要がない。
なお、上記の第3の実施形態において、「光強度が閾値を超えるか否か」という判定処理は一例に過ぎず、閾値の定め方に応じて、「光強度が閾値以上であるか否か」を判定するようにしてもよい。また、「タイマが示す時間がn’に一致するか否か」という判定処理は、一例に過ぎず、「タイマが示す時間がn’を超えるか否か」、「タイマが示す時間がn’以上となるか否か」を判定するようにしてもよい。
上記の第1から第3の実施形態において、図3に示した周波数オフセット補償部32のトレーニング信号解析部321が、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列70よりθtを算出するようにしているが、本発明の構成は、当該実施の形態に限られない。例えば、トレーニング信号解析部321を外部の別の装置に備えておき、当該別の装置においてθtを算出するようにしてもよい。例えば、当該別の装置が光送信装置1である場合、光送信装置1におけるトレーニング信号解析部321が、周波数オフセット推定用トレーニング符号系列よりθtを算出し、算出したθtを通信品質の良い別の回線を介して光受信装置2に送信する。光受信装置2は、受信したθtを取り込み、周波数オフセット補償部32が取り込んだθtを内部に備える記憶領域に記憶させておく構成としてもよい。当該構成の場合、減算器56が、θrからθtの減算を行う際、当該記憶領域からθtを読み出すことになる。
上記の第1から第3の実施形態において、図1に示す光受信装置2の光コヒーレント受信部20は、位相ダイバーシティ方式のコヒーレント受信を行うとしているが、偏波ダイバーシティ方式のコヒーレント受信を行うようにしてもよい。
上記の第1の実施形態では、BPSKを対象とし、第2の実施形態では、QPSKを対象として説明したが、本発明の構成は、当該実施の形態には限られない。本発明が、Mの値が4を超えるM−PSK(Phase Shift Keying)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation)などの更に多値の変調方式を対象として周波数オフセット量を算出するようにしてもよく、また、本発明は、このような多値の変調方式に対しても同様の効果を奏するものである。
上記の第3の実施形態では、送受信される信号としてバースト信号を前提としているが、第1及び第2の実施形態においては、必ずしもバースト信号でなくてもよく、送受信される信号の光強度が時間的に一定である信号であってもよい。
上述した実施形態におけるデジタル信号処理部23をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。