JP2019110252A - 非接触給電用伝送コイルおよびその製造方法ならびに非接触給電装置 - Google Patents

非接触給電用伝送コイルおよびその製造方法ならびに非接触給電装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、携帯電子機器において、小型化・薄型化を可能とし、かつ表皮効果や近接効果による高周波損失を低減して交流抵抗の増大を抑制できる非接触給電用の伝送コイルを提供することを目的とする。さらにこの伝送コイルを用いた高伝送効率の非接触給電装置を提供することを目的とする。【解決手段】非接触給電用伝送コイルは、基板と、前記基板上に配置され渦巻状に巻回されたコイルとを備えた非接触給電用伝送コイルであって、前記コイルのコイル導体断面の両側面および両端部上に第一磁性膜を設けたことを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、携帯電子機器等に非接触で給電する非接触給電用の伝送コイルおよびその製造方法に関する。さらにはそれを用いた非接触給電装置に関する。
近年、二次電池を搭載する携帯通信端末やデジタルカメラ等の携帯電子機器への給電装置として、送電用の1次コイルと受電用の2次コイルの間の電磁誘導を利用した非接触給電装置が提案されている。非接触給電装置では、送電コイルに高周波の交流電流を通電し、送電コイルから発生する高周波磁界を受電コイルが受け取ることで、非接触で電力送電する。このような非接触給電装置は、小型であること、特に薄型であることが要求される。そこで、送電用・受電用の伝送コイルとして渦巻型の平面コイルが使用されている。
薄型コイルの形成技術として、例えば、特許文献1には、導電性インクの印刷パターンやプリント基板上に薄膜形成、表面処理によって形成された導電性パターンをコイルに使用することが記載されている。
しかし、薄膜コイルにおいては、コイル導体厚が薄いため、渦電流による表皮効果や近接効果によってコイル導体の両端部で磁束線が集中し電流が集中する。特に、コイル膜厚がコイルの表皮深さと同程度の場合、コイル導体の側面から表皮深さの領域で電流集中が顕著である。このためコイルの交流抵抗が増大し電力伝送効率が低下する問題があった。
このような表皮効果や近接効果による抵抗増大の対策として、例えば、特許文献2には、撚り線(リッツ線)のような絶縁された電線からなるコイルを使用することが記載されている。また、誘導加熱コイルに関する特許文献3では、コイル導体間に磁性体を挿入して配置し高周波損失を低減することが記載されている。
しかし、特許文献2のリッツ線は電線であり、また特許文献3の磁性体はフェライトであって、何れもバルクであるため小型化・薄型化の要請に十分応えられるものではなかった。さらに、特許文献3のフェライトについては、焼結体であるため振動・落下などによる衝撃に弱いという欠点も有していた。
特開2016−59323号公報 特開2006−42519号公報 WO2011/030539号公報
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、携帯電子機器において、小型化・薄型化を可能とし、かつ表皮効果や近接効果による高周波損失を低減して交流抵抗の増大を抑制できる非接触給電用の伝送コイルを提供することを目的とする。さらにこの伝送コイルを用いた高伝送効率の非接触給電装置を提供することを目的とする。
第1の発明の非接触給電用伝送コイルは、基板と、前記基板上に配置され渦巻状に巻回されたコイルとを備えた非接触給電用伝送コイルであって、前記コイルのコイル導体断面の両側面および両端部上に第一磁性膜を設けたことを特徴とする。
第2の発明の非接触給電用伝送コイルは、第1の発明に係る非接触給電用伝送コイルにおいて、前記基板の裏面の前記第一磁性膜に対向する位置に第二磁性膜を設けたことを特徴とする。
第3の発明の非接触給電用伝送コイルは、第1の発明又は第2の発明に係る非接触給電用伝送コイルにおいて、前記第一磁性膜における前記コイル導体断面の片端部上の磁性膜部分の長さがコイル導体の表皮深さの1倍以上20倍以下であることを特徴とする。
第4の発明の非接触給電用伝送コイルは、第1から第3のいずれか一つの発明に係る非接触給電用伝送コイルにおいて、前記基板がフレキシブル基板であることを特徴とする。
第5の発明の非接触給電用伝送コイルの製造方法は、第1から第4のいずれか一つの発明に係る非接触給電用伝送コイルの製造方法において、前記コイル導体上のレジスト感光材の開口部分に磁性コンポジット材を充填し、前記磁性コンポジット材の不要部分を除去して前記第一磁性膜及び前記第二磁性膜を形成することを特徴とする。
第6の発明の非接触給電装置は、第1から第4のいずれか1つの発明に係る非接触給電用伝送コイルを、送電コイルとして又は送電コイルおよび受電コイルとして用いることを特徴とする。
第1の発明によれば、コイル導体断面の両側面だけでなく、コイル導体断面の両端部上にも薄膜の磁性膜を設けているので、磁束線がコイル導体を迂回して分布するようになる。このためコイル導体断面の両端部での電流集中が緩和され、コイルの交流抵抗を低減できる。
第2の発明によれば、コイル導体の両端部上だけでなく、基板の裏面側にも薄膜の磁性膜を設けているので、さらに磁束線がコイル導体を迂回しやすくなる。これにより、電流集中が緩和され交流抵抗をさらに低くできる。
第3の発明によれば、第1又は第2の発明について、コイル導体断面の片端部上の磁性膜部分の長さを表皮深さの1倍以上20倍以下とすることで、コイル導体断面の側面から表皮深さまでの磁束線が集中する部分を磁性膜で覆うことができ、効率的に磁束線をコイル導体から迂回させて交流抵抗を低減できる。
第4の発明によれば、基板にフレキシブル基板を用いることで、非接触給電用伝送コイルの小型化・薄型化を容易に実現でき、さらにその可撓性から耐衝撃性を向上させることができる。
第5の発明によれば、磁性コンポジット材をレジストの開口部に充填してその不要部を除去することで第1及び第2の薄膜の磁性膜を形成できるので、簡便に低コストで伝送コイル部品を製造できる。
第6の発明によれば、表皮効果や近接効果による高周波損失を低減し低コストで製造できる伝送コイルを使用するので、伝送効率が高くかつ低コストの非接触給電装置を提供できる。
第1及び第2の実施の形態に係る伝送コイルの平面概略図(磁性膜の部分は省略)である。 第1の実施の形態に係る伝送コイルの断面概略図である。 第2の実施の形態に係る伝送コイルの断面概略図である。 磁性材塗布による伝送コイルの磁性膜の製造プロセスを説明する図である。 磁性材めっきによる伝送コイルの磁性膜の製造プロセスを説明する図である。 磁性材スパッタによる伝送コイルの磁性膜の製造プロセスを説明する図である。 一実施の形態に係る非接触給電装置を説明する回路ブロック図である。 コイルの計算モデルを説明する図(平面図)である。 第一磁性膜のみを有する伝送コイルの断面概略図である。 第一磁性膜のみを有する伝送コイルにおける、交流抵抗とD1、L1との関係を示す図である。 第一磁性膜及び第二磁性膜を有する伝送コイルの断面概略図である。 第一磁性膜及び第二磁性膜を有する伝送コイルにおける、交流抵抗とD1、L1との関係を示す図である。 磁性膜をコイル導体断面の両側面にのみ配置した伝送コイルの断面概略図である。 磁性膜をコイル導体断面の両側面にのみ配置した伝送コイルにおける、交流抵抗とD2との関係を示す図である。
本発明の実施形態に係る伝送コイルおよびその製造方法ならびに伝送コイルを用いた非接触給電装置について、図面に基づいて説明する。
<1.伝送コイル>
(第1の実施の形態)
図1は、第1及び第2の実施の形態に係る伝送コイルのコイル部分のみの平面概略図である。磁性膜の部分については省略して図示していない。伝送コイル1は、基板2上にアルミニウム、銅又はマンガニン(登録商標)(銅、マンガン及びニッケルの合金)の金属からなるコイル導体11が渦巻状に巻回された平面コイル(巻き数は3巻)を備えている。
図2は、第1の実施の形態に係る伝送コイルの断面概略図であり、図1のA−A′断面に磁性膜を追加して図示したものである。基板2上にコイル導体11を備え、さらに各巻のコイル導体11において断面の両側面および両端部上に第一磁性膜31を設けている。第一磁性膜31は、FeSiBCr等の鉄系アモルファス磁性粉を含有する磁性コンポジット材やNi系、Fe系の磁性薄膜などで構成することができる。
コイル導体11に高周波の交流電流を流すとコイル導体11の周囲に磁束線を発生させるが、表皮効果及び近接効果によって磁束線はコイル導体断面の端部で集中しコイル導体11を貫通する。このため、コイル導体11の端部では電流が集中し当該端部での抵抗が増加する。この影響は、コイル導体11が薄く、断面のアスペクト比が大きいほど大きい。
これに対し、本実施の形態では、コイル導体断面の両端部の両側面及びその上に第一磁性膜31を配置する。すなわち、第一磁性膜31をコイル導体の両端部でコイル導体を覆いかぶすように配置する。これにより、コイル導体11の周囲の磁束線は比透磁率の高い第一磁性膜31に吸い寄せられ誘導されコイル導体11を迂回して分布する。よって、本実施の形態においては、コイル導体11の両端部での磁束線の集中や電流集中の問題を解消でき、交流抵抗の増加を抑制できる。
また、第一磁性膜31のコイル導体11に覆いかぶさる磁性膜部分の長さが長い場合、コイル導体11の周囲を流れる磁束線は当該磁性膜部分に吸い寄せられるが、磁性膜部分の比透磁率が小さいと、磁性膜部分からコイル導体11に磁束線が漏れてコイル導体11を貫通し易くなる。このため、コイル導体11内で電流集中が起き交流抵抗も高くなる。この影響は、コイル導体11の膜厚が表皮深さの程度に薄いとき大きい。コイル導体断面の側面から概ね表皮深さの距離の部分で電流集中が顕著に起きるからである。
そこで、効率的に磁束線を吸い寄せ誘導するため、コイル導体断面の片端部上の第一磁性膜31の磁性膜部分の長さL1は、表皮深さの1倍以上20倍以下であることが好ましい。電流集中が起きるコイル断面両端のコイルの表皮深さの部分を磁性膜部分で完全に覆うことができ、磁性膜部分の長さL1が表皮深さの20倍を超えると当該磁性膜部分からの磁束線の漏れの影響が大きくなるからである。さらに好ましくは、磁性膜部分の長さL1は表皮深さの3倍以上12倍以下である。
なお表皮深さdは、次の式で表すことができる。
ρ:コイル導体の電気抵抗率
ω:電流の角周波数(=2π×周波数f)
μ:コイル導体の透磁率(=コイル導体の比透磁率μr×真空の透磁率μ
ここで、ρ=1.72×10−8Ωm(銅を想定)、μ=4π×10−7H/m(μr=1に相当)とすると、f=85kHzのとき表皮深さd=226.4μm、f=1MHzのとき表皮深さd=66μm、f=13.56MHzのとき表皮深さd=17.9μmである。
さらに、第一磁性膜31の比透磁率についても、磁束線の漏れ軽減の観点から、比透磁率は2以上10,000以下であることが好ましく、さらに好ましくは10以上10,000以下である。
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態に係る伝送コイルの断面概略図である。第2の実施の形態に係る伝送コイル(磁性膜を省略したもの)の平面概略図は、図1と同じであり、図3は、平面概略図の図1のA−A′断面に磁性膜を追加して図示したものである。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態である伝送コイルにおいて、基板2を介して第一磁性膜31に対向する基板2の裏面にも、断面矩形の第二磁性膜32を追加し配備したものである。第一磁性膜31と第二磁性膜32について、コイル導体11への磁束線の漏れを抑える観点から、基板2を介して互いに対向する磁性膜部分のそれぞれの長さは略等しい(すなわち、第一磁性膜31におけるコイル導体断面上のコイル導体をかぶる部分の長さL1と、第二磁性膜32における基板2を介して対向する磁性膜部分の長さL2と略等しい)ことが好ましい。
第二磁性膜32は、第一磁性体31と同様にアモルファス磁性粉を含有する磁性コンポジット材やNi系、Fe系の磁性薄膜などで構成することができる。また、比透磁率についても、第一磁性膜31と同様に、第二磁性膜32の比透磁率は2以上10,000以下であることが好ましく、さらに好ましくは10以上10,000以下である。
第2の実施の形態では、第一磁性膜31の他に第二磁性膜32をコイル導体11の両端部に配備しているため、コイルの交流抵抗の増大をさらに抑制できる。
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る伝送コイルは、第1又は第2の実施の形態に係る伝送コイルにおいて、基板にフレキシブル基板を用いたものである。薄いフレキシブル基板を使用することにより、基板を含む伝送コイルの厚みさらに薄くでき、伝送コイルの小型化・薄型化を実現できる。さらにフレキシブル基板は可撓性を有するので、伝送コイルについて優れた耐衝撃性を実現することができる。
<2.伝送コイルの製造方法>
(磁性材塗布による磁性膜の製造プロセス)
図4は、一実施の形態に係る伝送コイルの製造プロセス、特に磁性材塗布による第一磁性膜の製造プロセスを説明する図である。渦巻状に3巻に巻回され形成された薄膜の伝送コイルの断面を図示している。
第一磁性膜は、次のように製造する。すなわち、(a)基板2上に貼り付けられた所定膜厚の銅箔をエッチング等で所望のサイズの渦巻状にパターニングしコイル導体11を形成する。そして、当該基板2上にレジストを塗布し又はレジストフィルムを貼り付け、所定の膜厚のレジスト41の層を形成する。(b)その後、フォトマスクを介してレジストに紫外線を露光(照射)し、現像・水洗してレジスト41をパターニングし、コイル導体11の両端部にレジストの開口を設ける。(c)さらに、FeSiBCr等の鉄系アモルファス磁性粉をエポキシ樹脂又はシリコン樹脂に含有させた磁性材42を基板2の表面に塗布し、磁性材42をレジストの開口部に充填する。(d)そして、スキージ等で表面を平に仕上げ、レジスト41上の不要な磁性材42を除去し、(e)その後、磁性材42をエポキシ樹脂のときは200℃、シリコン樹脂のときは120℃で加熱成形して、レジストを溶剤でリムーブする。これにより、コイル導体11の両端部の側面及び上面に所定の形状の第一磁性膜を製造する。
なお(e)において、レジストをリムーブせず、そのまま残しておくこともできる。また、基板2はフレキシブル基板であってもよい。
上に述べた第一磁性膜の製造方法は、第二磁性膜の製造プロセスにも応用できる。すなわち、上述の製造プロセスにより第一磁性膜を形成した基板の裏面に、上述の製造プロセスと同様に、レジストを塗布又はレジストフィルムを貼り付けパターニングし、開口部に磁性材を充填して不要部を除去して、第二磁性膜を製造可能である。なお、第一磁性膜と第二磁性膜が基板の表面と裏面の同じ位置に形成できるようにするため、基板を貫通するピンを位置マーカとして利用することもできる。
(磁性材めっき又は磁性材スパッタによる磁性膜の製造プロセス)
図5は、他の実施の形態に係る伝送コイルの製造プロセス、特に磁性材めっきによる第一磁性膜の製造プロセスを説明する図である。図4と同様に、渦巻状に3巻に巻回され形成された薄膜の伝送コイルの断面を図示している。
第一磁性膜は、次のように製造する。すなわち、(a)基板2上に貼り付けられた所定膜厚の銅箔をエッチング等で所望のサイズの渦巻状にパターニングしコイル導体11を形成する。そして、当該基板2の表面の全面に、例えば酸化シリコン(SiO)又はアルミナ(Al)からなる絶縁層43をスパッタにより成膜し、続いて例えばニッケル(Ni)又はパーマロイ(NiFe)からなるめっきベース44をスパッタ又は蒸着により成膜する。絶縁層43は、後述の金属からなる磁性材42にコイル導体11から電流が流れないようにするためのものである。そして、めっきベース44上にレジストを塗布又はレジストフィルムを貼り付け、所定の膜厚のレジスト41の層を形成する。(b)その後、フォトマストを介してレジストに紫外線を露光(照射)し、現像・水洗してレジスト41をパターニングし、コイル導体11の両端部にレジストの開口を設ける。(c)そして、この基板をニッケル、又はニッケル及び鉄(Fe)が溶けためっき液に浸漬し、めっきベース44を陰極、例えば白金を陽極にして電界をかけて、レジストが開口してめっきベース44が露出した部分にニッケル又はパーマロイをめっき成膜して磁性材42を形成する。(d)さらに、レジスト41を溶剤でリムーブし、(e)磁性材42及びめっきベース44が露出した表面をアルゴンガス等によるイオンミリング又は逆スパッタによってめっきベース44を削る。これにより、コイル導体11の両端部の側面及び上面に所定の形状の第一磁性膜を製造する。
図6は、また別の実施の形態に係る伝送コイルの製造プロセス、特に磁性材スパッタによる第一磁性膜の製造プロセスを説明する図である。図4及び図5と同様に、渦巻状に3巻に巻回され形成された薄膜の伝送コイルの断面を図示している。
第一磁性膜は、次のように製造する。すなわち、(a)基板2上に貼り付けられた所定膜厚の銅箔をエッチング等で所望のサイズの渦巻状にパターニングしコイル導体11を形成する。そして、当該基板2の表面の全面に、例えば酸化シリコン(SiO)又はアルミナ(Al)からなる絶縁層43をスパッタにより成膜し、そして、その上にレジストを塗布し又はレジストフィルムを貼り付け、所定の膜厚のレジスト41の層を形成する。絶縁層43は、後述の金属からなる磁性材42にコイル導体11から電流が流れないようにするためのものである。(b)その後、フォトマストを介してレジストに紫外線を露光(照射)し、現像・水洗してレジスト41をパターニングし、コイル導体11の両端部にレジストの開口を設ける。(c)そして、基板2の全面にニッケル、パーマロイ又は鉄をスパッタして、(d)さらに、基板ごと溶剤に浸漬してレジスト41をリムーブし、レジスト41上の磁性材42をリフトオフする。これにより、コイル導体11の両端部の側面及び上面に所定の形状の第一磁性膜を製造する。なお磁性材42としては、ニッケル、パーマロイ又は鉄など強磁性体材料の他、Siなど添加した珪素鋼の他に、アモルファス、センダストや金属の酸化物(フェライト)などを使用できる。
第二磁性膜についても、上述した磁性材めっき又は磁性材スパッタによる方法を応用可能である。
磁性材めっきの場合は、第一磁性膜を形成した基板の裏面にめっきベースをスパッタ又は蒸着しレジストを塗布又はレジストフィルムを貼り付けレジストの層を形成し、露光・現像によって所定の位置にレジスト開口部を設けて、基板ごとめっき液に浸してめっきベースを通電し、第二磁性膜をめっき成膜する。なお、基板は絶縁性を有するので、第二磁性膜の形成については、第一磁性膜の場合とは異なり絶縁層の形成は不要である。
磁性材スパッタの場合は、第一磁性膜を形成した基板の裏面にレジストを塗布又はレジストフィルムを貼り付けレジストの層を形成し、露光・現像に所定の位置にレジスト開口部を設けて、基板裏面の全面に磁性材をスパッタし、リフトオフによってレジストおよび不要部分の磁性材を除去して、第二磁性膜をスパッタ成膜する。なお、基板は絶縁性を有するので、第二磁性膜の形成については、第一磁性膜の場合とは異なり絶縁層の形成は不要である。
なお、第一磁性膜と第二磁性膜が基板の表面と裏面の同じ位置に形成できるようにするため、基板を貫通するピンを位置マーカとして利用することもできる。
<3.非接触給電装置>
図7は、一実施の形態に係る非接触給電装置を説明する回路ブロック図である。この例では、携帯電子機器に適用したものである。この非接触給電装置は、充電器として機能する送電装置5と携帯電子機器本体7の電源となる二次電池64を含む受電装置6とを備えている。送電装置5と受電装置6は、電磁的に結合することにより、非接触で電力送電を行う非接触給電装置を形成するようになっている。
送電装置5は、図7に示すように、電源51と整流回路52と送電回路53と送電コイル54とを備えている。電源51は、例えば100Vの単相交流電圧を供給する系統電源である。整流回路52は、入力端が電源51に接続されるとともに出力端が送電回路53に接続されており、電源51から供給される交流電圧を整流して直流電圧に変換し、変換した直流電圧を送電回路53に出力する。送電回路53は、入力端が整流回路52に接続されるとともに出力端が送電コイル54の両端に接続されており、整流回路52からの直流電圧を使用して所定の周波数の交流を生成する回路であり、その生成した交流電圧を送電コイル54に供給するようになっている。
受電装置6は、図7に示すように、受電コイル61と受電回路62と充放電制御回路63と二次電池64とを備えている。
受電コイル61は、送電装置5の送電コイル54と接近させて対向させ使用する場合に、両コイル61、54が電磁結合して両者の間で変圧器を形成するようになっている。この電磁誘導により受電コイル61に誘起される交流電圧は、受電回路62に供給され、受電回路62において整流されて直流電圧に変換される。そして、受電回路62から出力される直流電圧は、充放電制御回路63を介して二次電池64に供給され、二次電池64を充電するようになっている。充放電制御回路63は、受電回路62からの出力により二次電池64を充電する場合にはその充電の制御を行い、二次電池64の負荷である携帯電子機器本体7を動作させる場合には放電の制御を行う回路である。二次電池64には、放電後に充電により繰り返して使用可能なリチウムイオン電池やニッケル水素電池等が用いられる。
本実施の形態に係る非接触給電装置においては、送電コイル54に、前述した本発明に係る伝送コイルが用いることができる。これにより、表皮効果や近接効果による高周波損失を低減し低コストで製造できる伝送コイル部品を使用しているので、伝送効率が高くかつ低コストの非接触給電装置を提供できる。
また、受電コイル61に前述した本発明に係る伝送コイルを用いてもよい。さらに伝送効率が高い低コストの非接触給電装置を提供できる。
本発明に係る非接触給電装置は、携帯電話やスマートフォン、タブレットなどの携帯電子機器に限定されるものではない。電気自動車やハイブリッド型自動車などの車両の電力給電に用いられてもよい。また、本発明に係る伝送コイル部品は、誘導式加熱装置などにも適用されてもよい。さらに、本発明に係る伝送コイル部品は、電磁誘導方式の非接触給電装置における使用に限定されない。磁界共鳴方式の非接触給電装置にも適用されてもよい。
以下、本発明に係る伝送コイル部品を実施・適用した場合のシミュレーション結果について述べるが、本発明はここで述べられる適用例に限定されるものではない。
<1.シミュレーション解析モデル>
本発明に係る伝送コイルのシミュレーションによる適用例を説明する前に、まず、コイルの特性(交流抵抗、インダクタンス、Q値、結合係数k、伝送効率η)について解析するためのシミュレーションモデルについて説明する。シミュレーション用の解析ソフトには、電磁場解析ソフトウェアのANSYS Maxwell(ANSYS社製)を用いた。表1に解析の諸条件をまとめる。
図8は、コイルの計算モデルを説明する図(平面図)である。ただし、磁性膜については省略し図示していない。コイル導体は、抵抗率1.72×10−8 Ωmの銅材を想定している。巻数が3回巻の渦巻状の平面コイルである。コイルの外径(直径)をOD、内径(直径)をIDする。
<2.送電コイルへの適用>
本発明に係る伝送コイルを送電コイルとして適用した場合、磁性膜の膜厚やコイル導体上の長さを変化させてコイル特性(交流抵抗、インダクタンス、Q値)を計算する。送電コイルの外径ODはφ73mm、内径IDはφ47mmであり、コイルに通電する交流電流の周波数は13.56MHzである。
(第一磁性膜のみを有する場合)
図9は、第一磁性膜のみを有し、第二磁性膜は有しない場合の送電コイルの断面概略図である。図8のA−A′断面図に相当する。ただし図8では磁性膜を省略したが、図9では磁性膜(第一磁性膜)の断面も図示している。
図9において、基板2の厚さT1は0.025mmである。コイル導体11は、断面が矩形であって、コイル導体断面の長手方向の幅W1が3mm、厚さT2が0.035mmであり、コイル導体間のスペースW2は2mmである。また、第一磁性膜31のコイル導体上の磁性膜部分の厚みとコイル導体断面の両側面に配置される第一磁性膜31の基板2上の磁性膜部分の幅は等しく、その値をD1とする。また、第一磁性膜31のコイル導体上の磁性膜部分の長さ(第一磁性膜31とコイル導体11がオーバーラップしている距離)をL1とする。
図10(a)は、図9において、D1及びL1を変化させたときのコイルの交流抵抗の変化(交流抵抗とD1、L1との関係)を表すグラフである。図10(a)から、何れのD1に対してもL1の増加に伴い交流抵抗は減少し、L1が0.1mm付近で最小となり、さらにこの値を超えると交流抵抗が増加しているのが分かる。よって、L1が0mmであり第一磁性膜31がコイル導体11上にオーバーラップしない場合(すなわち、コイル導体断面の両側に、幅がD1で厚みがD1+T2の矩形の第一磁性膜31が配置される場合)に比べ、コイル導体上に第一磁性膜31(コイル導体上の磁性膜部分の長さがL1である)を配置することによって、交流抵抗を低減できることが分かる。
図10(b)は、図10(a)についてL1が0〜0.5mmの範囲のものを拡大して図示したものである。図10(b)からL1=0mmにおいて最も交流抵抗が大きいのは、D1=1.0mmの場合である。このときの抵抗Rmaxは、Rmax=180mΩである。
コイル導体の抵抗率=1.72×10−8 Ωm、電流の周波数f=13.56MHzであるから、表皮深さdは、d=17.9μmである。この表皮深さdを用いれば、L1がd以上20×d以下の範囲であれば、何れのD1についても、交流抵抗をさらに小さくすることができるのが分かる。さらにD1が0.25mm以上のとき、L1が3×d以上12×d以下の範囲で、後述する第一磁性膜31がコイル導体11の側面にのみ接して配置する場合(第一磁性膜31の膜厚はコイル導体11の膜厚と同じ)に比べて、交流抵抗を15%以上低減できる。
また、D1が0.1mm、L1が0.1mmのときのコイル特性(交流抵抗、インダクタンス、Q値)を実施例1として表2に示す。さらに、第一磁性膜を有しない場合、すなわちコイル導体のみで磁性膜が無い場合(図9において、D1=0mm、L1=0mmの場合に相当)について、コイル特性を計算した。求めた交流抵抗、インダクタンス、Q値を比較例1として表2にまとめる。
(第一磁性膜及び第二磁性膜を有する場合)
図11は、第一磁性膜31及び第二磁性膜32を有する場合の送電コイルの断面概略図である。図8のA−A′断面図に相当する。ただし図8では磁性膜を省略していたが、図11では磁性膜(第一磁性膜及び第二磁性膜)の断面も図示している。
図11において、基板2の厚さT1、コイル導体断面の長手方向の幅W1、コイル導体断面の厚さT2及びコイル導体間のスペースW2は、図9に示した第一磁性膜のみを有する場合のものと同じである。すなわち、T1=0.025mm、W1=3mm、T2=0.035mm、W2=2mmである。そして、第二磁性膜32は、膜厚がD1、コイル導体断面の長手方向に平行な方向の長さがD1+L1である。第二磁性膜32は、基板2を介して、第一磁性膜31に対向する位置に配置されている。したがって、コイル導体および基板を介して対向する第一磁性膜31と第二磁性膜32のそれぞれの部分の長さは略等しくなっている。
図12は、図11において、D1及びL1を変化させたときのコイルの交流抵抗の変化(交流抵抗とD1、L1との関係)を表すグラフである。図12(b)は、図12(a)についてL1が0〜0.5mmの範囲のものを拡大して図示したものである。図12から、何れのD1に対してもL1の増加に伴い交流抵抗は減少しL1が0.1mm付近で最小となり、この値を超えると交流抵抗が増加しているのが分かる。D1が0.1mm、L1が0.1mmのときのコイル特性(交流抵抗、インダクタンス、Q値)を実施例2として表2に示す。
さらに、磁性膜をコイル導体断面の全周に配置した場合、すなわち、図11においてD1が1mm、L1が1.5mmの場合について、求めたコイル特性(交流抵抗、インダクタンス、Q値)を比較例2として表2に示す。
(磁性膜をコイル導体断面の両側面のみに配置した場合)
図13は、磁性膜をコイル導体11の断面の両側面にのみに配置した送電コイルの断面概略図である。図8のA−A′断面図に相当する。ただし図8では磁性膜を省略していたが、図13では磁性膜(側面磁性膜)の断面も図示している。側面磁性膜33は、断面が矩形でありコイル導体11の断面の両側面に配置されている。側面磁性膜33の膜厚はコイル導体断面の厚さに等しい。
図13において、基板2の厚さT1、コイル導体断面の長手方向の幅W1、コイル導体断面の厚さT2及びコイル導体間のスペースW2は、図9に示した第一磁性膜のみを有する場合のものと同じである。すなわち、T1=0.025mm、W1=3mm、T2=0.035mm、W2=2mmである。そして、側面磁性膜33の膜厚はコイル導体断面の厚さT2である。また、コイル導体断面の長手方向に平行な方向の側面磁性膜33の長さをD2とする。
図14は、図13において、D2を変化させたときのコイルの交流抵抗の変化(交流抵抗とD2との関係)を表すグラフである。D2が0.1mmのときのコイル特性(交流抵抗、インダクタンス、Q値)を比較例3として表2に示す。
<3.送電コイル及び受電コイルへの適用>
本発明に係る伝送コイル部品を送電コイルと受電コイルとして使用する。両コイルの中心を一致させて両コイルを互いに向い合せ、両コイルを10mmの距離(伝送距離)を離して対向させた場合のコイル特性(結合係数kと伝送効率η)を計算する。結合係数kは、トランスを構成する送電コイルと受電コイルとの結合の度合いを表す数である。また伝送効率ηは、結合係数kとQ値の積により求めることができる。
送電コイルの外径ODと内径IDは、上述の<2.送電コイルへの適用>で示したものと同様に、それぞれφ73mm、φ47mmである。受電コイルの外径ODと内径IDは、それぞれφ63mm、φ37mmであって、受電コイルは送信コイルよりも小さい構造となっている。
(第一磁性膜のみを有する場合)
送電コイルは、実施例1で用いたものを使用する。
受電コイルは、基本的には実施例1と同じであり、外径ODと内径IDが異なる。すなわち、図9において、受電コイルの基板2の厚さT1、コイル導体断面の長手方向の幅W1、コイル導体断面の厚さT2、コイル導体間のスペースW2、第一磁性膜31のコイル導体上の磁性膜部分の厚み(=コイル導体断面の両側面に配置される第一磁性膜31の基板2上の磁性膜部分の幅)D1及び第一磁性膜31のコイル導体上の磁性膜部分の長さ(第一磁性膜31とコイル導体11がオーバーラップしている距離)L1は、実施例1のものと同じく、T1=0.025mm、W1=3mm、T2=0.035mm、W2=2mm、D1=0.1mm、L1=0.1mmである。
計算したコイル特性(結合係数kと伝送効率η)を実施例3として表2に示す。
さらに、送電コイル及び受電コイル共に第一磁性膜を有しない場合、すなわちコイル導体のみで磁性膜が無い場合(図9において、T1=0.025mm、W1=3mm、T2=0.035mm、W2=2mmであるが、D1=0mm、L1=0mmの場合に相当)についてコイル特性(結合係数kと伝送効率η)を求めた。結果を比較例4として表2にまとめる。
(第一磁性膜及び第二磁性層を有する場合)
送電コイルは、実施例2で用いたものを使用する。
受電コイルは、基本的には実施例2と同じであり、外径ODと内径IDが異なる。すなわち、図11において、受電コイルのT1、W1、T2、W2、D1及びL1は、実施例2と同じく、T1=0.025mm、W1=3mm、T2=0.035mm、W2=2mm、D1=0.1mm、L1=0.1mmである。
計算したコイル特性(結合係数kと伝送効率η)を実施例4として表2に示す。
さらに、送電コイル及び受電コイル共に、磁性膜をコイル導体断面の全周に配置した場合、すなわち、図11においてD1が1mm、L1が1.5mmの場合について、求めたコイル特性(結合係数kと伝送効率η)を比較例5として表2に示す。
(磁性膜をコイル導体断面の両側面のみに配置した場合)
送電コイルは、比較例3で用いたものを使用する。
受電コイルは、基本的には比較例3と同じであり、外径ODと内径IDが異なる。すなわち、図13において、受電コイルのT1、W1、T2、W2及びD2は、比較例3と同じく、T1=0.025mm、W1=3mm、T2=0.035mm、W2=2mm、D2=0.1mmである。
計算したコイル特性(結合係数kと伝送効率η)を比較例6として表2に示す。
表2から、実施例1及び2について、比較例1〜3に比べ交流抵抗が減少し、Q値が高なって高周波損失が少なくなっている。
また表2から、実施例3及び4について、比較例4〜6に比べ高い伝送効率ηが得られることが分かる。
したがって、本発明に係る伝送コイル部品を送電コイルとして、また送電コイルおよび受電コイルとして使用することにより、交流抵抗の増大を抑制し、高い伝送効率の非接触給電を実現することができることが分かる。
本発明に係る伝送コイルおよび非接触給電装置は、携帯電話等の電子機器や自動車、誘導式加熱装置の分野で利用が可能である。
1 伝送コイル
11 コイル導体
2 基板
31 第一磁性膜
32 第二磁性膜
33 側面磁性膜
41 レジスト
42 磁性材
43 絶縁層
44 めっきベース
5 送電装置
51 電源
52 整流回路
53 送電回路
54 送電コイル
6 受電装置
61 受電コイル
62 受電回路
63 充放電制御回路
64 二次電池
7 携帯電子機器本体

Claims (6)

  1. 基板と、前記基板上に配置され渦巻状に巻回されたコイルとを備えた非接触給電用伝送コイルであって、
    前記コイルのコイル導体断面の両側面および両端部上に第一磁性膜を設けた
    ことを特徴とする非接触給電用伝送コイル。
  2. 前記基板の裏面において前記第一磁性膜に対向する位置に第二磁性膜を設けた
    ことを特徴とする請求項1記載の非接触給電用伝送コイル。
  3. 前記第一磁性膜における前記コイル導体断面の片端部上の磁性膜部分の長さがコイル導体の表皮深さの1倍以上20倍以下である
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の非接触給電用伝送コイル。
  4. 前記基板がフレキシブル基板である
    ことを特徴とする請求項1乃至3記載の非接触給電用伝送コイル。
  5. 前記コイル導体上のレジスト感光材の開口部分に磁性コンポジット材を充填し、前記磁性コンポジット材の不要部分を除去して前記第一磁性膜及び前記第二磁性膜を形成する
    ことを特徴とする請求項1乃至4記載の非接触給電用伝送コイルの製造方法。
  6. 請求項1乃至4のいずれか1項記載の非接触給電用伝送コイルを送電コイルとして又は送電コイルおよび受電コイルとして用いる
    ことを特徴とする非接触給電装置。
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