以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の火災警報器を詳細に説明する。図1には、一実施形態の火災警報器1の構成の一例がブロック図で示されている。
図1に示されるように火災警報器1は、周囲の温度を測定する測温部2と、測温部2によって測定された温度である実測温度が、温度に対する火災警報の発報に関する閾値である所定の温度閾値以上である場合に火災警報を発する警報部3と、を備えている。警報部3は、第1温度閾値、第1温度閾値よりも高温である第2温度閾値、および第2温度閾値よりも高温である第3温度閾値を少なくとも有し、実測温度が第3温度閾値以上である場合に火災警報を発する。さらに、警報部3は、実測温度が第2温度閾値に達したときに、実測温度が第1温度閾値に達してから第2温度閾値に達するまでの所要時間が所定の時間閾値以内である場合にも火災警報を発する。すなわち、警報部3は、周囲温度の上昇によって実測温度が第1温度閾値に達してから第2温度閾値に達するまでの所要時間をカウントする計時手段31を備えており、実測温度が第2温度閾値に達したと判断すると、計時手段31のカウントに基づく所要時間と、火災警報の発報に関する時間軸上での閾値である所定の時間閾値とを対比する。そして、警報部3は、その所要時間が時間閾値以下であると判断したときに、実測温度が第3温度閾値以上である場合に発する火災警報と同じ趣旨の火災警報を発する。好ましくは、所定の時間閾値以内の第2温度閾値への実測温度の到達によって発せられる火災警報の態様は、実測温度が第3温度閾値以上である場合に発せられる火災警報の態様と同じである。
前述したように、従来から熱検知式の火災警報器は所定の閾値以上の温度を検知すると警報を発するが、発炎後の火の回りの速さに鑑みると、より早く火災の発生を検知し、すぐさま警報を発する方が、警報器のユーザーなどの安全確保の面で好ましい。また、その場合も、予備的な趣旨の警報では無く、所定の閾値温度への到達時に発する警報と同じ趣旨の警報を発する方が、緊急性がユーザーなどに伝わり、避難、消火、または消防署への通報などの迅速な対応を促すという本来の趣旨に対して好ましいと考えられる。しかし、警報を発する基準となる閾値を単に下げる(警報が発報され易くする)と、誤報を頻発させるおそれがある。特に熱検知式の火災警報器において火災発生と判断する閾値温度を低くすると、夏季の無人の室内などにおいて、火災が発生していないにも拘らず自然な温度上昇に反応して火災警報が発せられるおそれがある。特に無人の状態でそのような誤報が発せられると、近隣住民などの迷惑となるばかりでなく、無用な騒ぎの元にもなりかねない。
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ね、火災発生時と、太陽光などによる自然な温度上昇時とでは昇温速度に違いがあることを見出した。すなわち、火災発生時には、特定の温度から、より高温の特定の温度に達するまでの所要時間が、非火災状況での温度上昇時の所要時間よりも短いことを見出した。そして、その所要時間が予め定めた時間軸上の閾値(時間閾値)以内か否かを判断することによって、従来「火災発生」と判断していた温度に周囲の温度が達する前に、火災の発生を適切に検知し、より早く適切な火災警報を発することができることを見出したのである。
従って、一実施形態の火災警報器1は、温度に関して少なくとも3つの閾値を有している。最も高い温度閾値である第3温度閾値以上に実測温度が達したときには、それまでの昇温速度または特定の二つの温度間の変化に要した時間に関わりなく火災警報を発せられる。さらに、火災警報器1は、実測温度が第3温度閾値に至らなくても、第3温度閾値よりも低い第2温度閾値に実測温度が到達したときに、第1温度閾値から第2温度閾値に至るまでの所要時間が時間閾値以内でさえあれば、第3温度閾値への到達によって発する火災警報と同趣旨の、従って好ましくは同じ態様で、火災警報を発する。すなわち、本実施形態の火災警報器1によれば、温度単独で火災発生と判断し得る温度(たとえば第3温度閾値)に実測温度が達するよりも早く、しかも適切な判断の下に、ユーザーなどに緊急性を認知させ得る火災警報を発することができる。たとえば、所定の温度に周囲の温度が達してから所定の時間が経過するのを待って、その所定の時間の経過時点の温度と所定の閾値温度とを比較して火災警報を発する場合と比べて、早期に火災警報を発し得ることがある。ユーザーなどに早期の初期対応を促すことができると共に、その安全の確保に貢献することができる。しかも、単に閾値温度を下げる訳ではないので、誤報の頻発を防止することもできる。
ここで、実測温度が各温度閾値に「達するとき」および「達したとき」、ならびに各温度閾値への「到達時」は、昇温中においては実測温度が各温度閾値以上の温度まで上昇したと警報部3が判断するときを意味しており、降温中においては実測温度が各閾値温度以下の温度まで降下したと警報部3が判断するときを意味している。従って、必ずしも、測温部2によって各温度閾値に相当する温度が測定された正にそのときが意味されるのではなく、また、必ずしも、周囲温度が各温度閾値の温度に到達したときが意味されるのでもない。換言すると、上記の「達するとき」など、および、これらと同様の表現で表される「とき」は、周囲温度の変化から警報部3の判断までのタイムラグに応じて、各温度閾値の温度への周囲温度の到達時と略同じときでもよく、測温部2によって各温度閾値に相当する温度が測定されたときでもよく、これらの「とき」と異なる、各温度閾値への実測温度の到達が警報部3によって判断されたときでもよい。
第1〜第3の温度閾値および時間閾値には、起こり得る火災の種類、火災警報器1の周囲の可燃物の存在状況、季節変化、または法規などに応じて任意の温度または時間が選択され得る。第1温度閾値は、たとえば45℃〜54℃の範囲のいずれかの温度であり、好ましくは50℃程度の温度である。また、第2温度閾値は、第1温度閾値よりも高温で、51℃〜58℃の範囲のいずれかの温度であり、好ましくは55℃程度の温度である。そして、第3温度閾値は、第2温度閾値よりも高温で、56℃〜62℃の範囲のいずれかの温度であり、好ましくは59℃程度の温度である。また、時間閾値は、たとえば、5秒〜40秒の範囲のいずれかの長さの時間であり、好ましくは20秒程度の時間である。これら各範囲内の値または好適値を各閾値に選択することによって、比較的多様な状況において早期かつ適切に火災を検知することができると考えられる。
測温部2は、具体的には、周囲温度の変化に応じて電気的特性などの自身の特性を変化させる温度センサなどの検知素子を含み、好ましくは、温度センサなどの特性変化によって得られる電気信号を警報部3に対して出力する。警報部3から測温部2に対して電圧などが印加されることによって温度センサなどの特性変化に基づく電気量が警報部3に入力されてもよい。測温部2には、たとえば、サーミスタ式、熱電対式または測温抵抗式などの各種の温度センサが用いられ得る。
警報部3は、前述した計時手段31の他に、光および/または音声などで前述の火災警報を含むユーザーへの各種の報知を実行する報知手段34、少なくとも警報部3における動作に必要な情報を記憶する記憶手段33を含んでいる。さらに、警報部3は、計時手段31、報知手段34および記憶手段33の動作を制御すると共に、火災警報を発するか否かの判断を行う制御手段32を含んでいる。制御手段32は、測温部2を含む火災警報器1の警報動作を全体的に制御してもよい。
制御手段32は、たとえば、市販のマイコンおよびASICなどの半導体装置によって具現化され、好ましくは、演算機能、比較機能および記憶機能などを備えている。制御手段32を具現化するマイコンなどは、たとえば、自身が内蔵するプログラムに従って動作し得る。内蔵されたプログラムには、少なくとも測温部2の実測温度が入力されてから火災警報を発するまでに制御手段32が実行する処理の手順が記述され、さらに、火災警報器1の動作を全体的に制御するための手順および判断基準などが記述されていてもよい。たとえば制御手段32を構成するマイコンなどは、このように自身が内蔵するプログラムに従って動作し、プログラムに従って動作することによって、計時手段31、記憶手段33および報知手段34の制御などを実行する。
計時手段31は、少なくとも、実測温度が低温側から第1温度閾値に達してから第2温度閾値に達するまでの所要時間をカウントする。計時手段31は、具体的には、自身が保持するカウント値を単位時間ごとにインクリメントする。実測温度が低温側から第1温度閾値に達してから第2温度閾値に達するまでの所要時間が、離散的なカウント値としてカウントされ、後述するカウント時間Ecとして所要時間を得ることができる。計時手段31は、単独のカウンタIC(半導体集積回路)の他、制御手段32を主に構成するマイコンなどに備えられるカウンタ回路などによって実現されてもよい。計時手段31を構成するカウンタICなどは、制御手段32の制御に応じて、カウントを開始、または停止および保持し、さらに、既に保持しているカウント値をリセットしてもよい。
報知手段34は、たとえば、発光ダイオード(LED)、ブザーおよび/またはスピーカーなどにより具現化され、主に、光および/または音を発することにより火災警報を発する。たとえば火災検知時には、報知手段34を構成するLEDが点滅し、スピーカーから、「ウーウー、カンカンカン、火事です、火事です」などの音声が発せられてもよい。報知手段34は、火災警報を発する以外にも、自己点検結果の報知、および、火災警報器1が電池式である場合の寿命の接近の報知などのために動作してもよい。
記憶手段33は、任意の記憶素子によって構成され得る。たとえば、記憶手段33は、ROMまたはRAMなどの単独の半導体メモリによって構成されてもよく、制御手段32を主に構成するマイコンなどのCPUが有する各種のレジスタまたはマイコンに備えられるフラッシュメモリなどで構成されてもよい。
記憶手段33には、計時手段31によってカウントされたカウント値が記憶されてもよい。また、記憶手段33は、第2温度閾値への実測温度の到達によって火災警報が発せられたときにセットされるフラグ(以下、このフラグは早期警報フラグとも称される)のための記憶領域を有していてもよい。早期警報フラグは、第2温度閾値への実測温度の到達時の計時手段31のカウント値に相当する時間が時間閾値以内であると判断され、故にその時点で火災警報が発せられたときにセットされる。換言すると、早期警報フラグの記憶領域に情報「1」が記憶される。すなわち、記憶手段33には、計時手段31によってカウントされたカウント値そのものを含め、そのカウント値に基づく情報が記憶され得る。
図2Aには、火災警報器1の外観の一例が正面図で示され、図2Bには、その側面図が示されている。図2Aおよび図2Bの例では、火災警報器1は、全体として円盤状の外形を有し、天井や壁などの設置面に向けられる側と反対側の表面11の中央部に、周側面に開口を有する中空の突出部を有している。この突出部の中空部分に測温部2を構成するサーミスタ式の温度センサが備えられている。また表面11の周縁部に、火災警報器1への自己点検の実施の指示および火災警報発報時の警報停止に用いられる押し込み型のスイッチ12が備えられている。図示されていないが、スイッチ12の内部にはランプが備えられており、スイッチ12は報知手段34(図1参照)も構成し得る。さらに、火災警報器1は、スイッチ12と反対側の周縁部に開口13を備えている。火災警報器1の内部における開口13の近傍には、報知手段34を構成するスピーカー(図示せず)が備えられており、火災警報の発報時には、前述したような警報メッセージが開口13を通して放たれる。
つぎに、図3および図4を参照して、一実施形態の火災警報器1の警報動作をさらに詳細に説明する。図3および図4は、いずれも、時間(横軸)の経過に対する四つの対象事象の推移を示している。両図面において、最も上段には実測温度Tmの変化が示され、上から2段目には、計時手段31(図1参照)によるカウント値に相当する時間Ec(以下、単に「カウント時間Ec」とも称される)が示されている。なお、カウント時間Ecの縦軸は横軸と同様に時間の次元を示しており、図3および図4においてカウント時間Ecは45度の傾きで上昇する。図3および図4において下から2段目には、前述した早期警報フラグFeの状態が、セット状態を示す「Hi」レベル、およびリセット状態を示す「Lo」レベルで示されている。そして、一番下の段には、火災警報Amの発報の有無が、発報を示す「Hi」レベル、および発報していないことを示す「Lo」レベルで示されている。なお、警報部3は、図3および図4の例と異なり、早期警報フラグFeを必ずしも備える必要はなく、計時手段31に保持されているカウント値を参照することによって火災警報の発報に関する処理を実行してもよい。
図3は、実測温度Tmが第2温度閾値Ts2以上に達した後、一旦火災警報Amが停止するまで低下するものの第1温度閾値Ts1まで低下せずに再度上昇する例を示している。図3に示される実測温度Tmの変化において、実線で示されるTmaは、実測温度Tmが第1温度閾値Ts1に達してから時間閾値Es以内に第2温度閾値Ts2に達する場合(以下、状況Aとも称される)の例を示している。また、二点鎖線で示されるTmbは、実測温度Tmが時間閾値Esを超えて第2温度閾値Ts2に達する場合(以下、状況Bとも称される)の例を示している。カウント時間Ec、早期警報フラグFeおよび火災警報Amそれぞれにおいて、実線で示されるEca、FeaおよびAmaは、状況Aにおけるそれぞれの変動を示し、Ecb、FebおよびAmbは、状況Bにおけるそれぞれの変動を示している。まず、状況Aについて説明する。
周囲の温度の上昇に伴って実測温度Tm(Tma)が上昇し、時間t1で低温側から第1温度閾値Ts1に達すると、計時手段31によるカウントが開始され、カウント時間Ecが、第1温度閾値Ts1への到達からの時間の経過と共に増加する。しかし、この時点では、火災警報Amは発せられない。つぎに時間t2で実測温度Tmaが第2温度閾値Ts2に達すると、実測温度Tmaが第1温度閾値Ts1に達してから第2温度閾値Ts2に達するまでの時間E1が、時間閾値Esと比べられる。具体的には、実測温度Tmaが第2温度閾値Ts2に達したときのカウント時間Ec1が時間閾値Esと比べられる。なお、符号Esで示される矢印の長さは、時間閾値Esの長さを示している。ここではカウント時間Ec1が時間閾値Esよりも短いので火災警報Am(Ama)が発せられる。また、早期警報フラグFe(Fea)がセットされる。図3の例では、実測温度Tm(Tma)が第2温度閾値Ts2に達すると、計時手段31はカウントを停止する。そしてカウント時間Ec(Eca)は、時間t2以後、カウント時間Ec1を維持している。なお、早期警報フラグFeが備えられている場合、計時手段31のカウント値は必ずしも維持されなくてもよく、たとえば時間t2以降の任意の時点でリセットされてもよい。
図3の例では、警報部3は、第1温度閾値Ts1よりも高温かつ第2温度閾値Ts2よりも低温である第4温度閾値Ts4をさらに有している。警報部3は、第2温度閾値Ts2への到達後に実測温度Tmが第4温度閾値Ts4まで低下したときには、第2温度閾値Ts2への実測温度Tmの到達によって発した火災警報を停止する。すなわち、図3の例において第2温度閾値Ts2への到達後に降下を始めた実測温度Tm(Tma)が、時間t5において第4温度閾値Ts4まで低下すると、火災警報Am(Ama)が停止される。なお、ここで火災警報Amaが停止されても、カウント時間Ec(Eca)は、カウント時間Ec1に維持されたままであり、早期警報フラグFe(Fea)はセットされたままである。
第4温度閾値Ts4には、前述した第1〜第3の温度閾値Ts1〜Ts3と同様に、起こり得る火災の種類や火災警報器1の周囲の状況などに応じて任意の温度が選択され得る。たとえば第4温度閾値Ts4は、第1温度閾値Ts1よりも高温かつ第2温度閾値Ts2よりも低温で、50.5℃〜57.5℃の範囲のいずれかの温度であり、好ましくは54.5℃程度の温度である。
実測温度Tm(Tma)が時間t8において、再度、低温側から第2温度閾値Ts2に達すると、再度火災警報Am(Ama)が発せられる。すなわち、警報部3は、火災警報Amの停止後に実測温度Tmが第1温度閾値Ts1に達することなく上昇する場合は、実測温度Tmが第2温度閾値Ts2に再度達したときに火災警報を発する。図3から明らかなように、実測温度Tmの低温側からの第1温度閾値Ts1への到達時から第2温度閾値Ts2への再到達時でまでの経過時間が時間閾値Esを超えていても、警報部3は、実測温度Tmの第2温度閾値Ts2への再到達時に火災警報を発している。図3に例示される実測温度Tmaのような温度変化の場合、火災警報器1は、少なくとも一度、時間閾値Es以下の短い時間における第1温度閾値Ts1から第2温度閾値Ts2に至る実測温度Tmの変化を検知して警報を発している。従って、その後一旦は温度が低下しているものの、火災の発生が疑われる状況にあることに変わりはない。そのため、再度第2温度閾値Ts2まで実測温度Tmが上昇した場合は、直前の温度上昇の速度に関係なく、第2温度閾値Ts2への実測温度Tmの到達に伴って警報を発することが好ましい。
つぎに、状況Bの場合について説明する。実測温度Tmbは、第1温度閾値Ts1への到達(時間t1)後、時間閾値Esを超えて時間t3で第2温度閾値Ts2に達している。そのため、火災警報Am(Amb)が発せられることなく、早期警報フラグFe(Feb)もセットされない。一方、計時手段31のカウントは停止され、カウント時間Ec2が維持される。
実測温度Tmbがさらに上昇し、時間t4で第3温度閾値Ts3に達すると、警報部3は、時間t1からの経過時間に関わらず火災警報Am(Amb)を発する。なお、前述した実測温度Tmaのように時間閾値Es以内に実測温度Tmが第2温度閾値Ts2に達することによって既に火災警報Amが発せられ、その発報が継続している場合は、実測温度Tmが第3温度閾値Ts3に達したときに異なる態様の警報などが発せられる必要はない。既に発せられている火災警報Amが継続されればよい。図3の例では、実測温度Tmbは一旦温度閾値Ts3を超えてから降下を始め、第4温度閾値Ts4に達するまで実測温度Tmbが降下すると、警報部3は火災警報Am(Amb)を停止する。すなわち、警報部は、時間閾値Esを越えて第2温度閾値Ts2に達した実測温度Tmが、さらに第3温度閾値Ts3に到達した後に第4温度閾値Ts4まで低下したときに火災警報Amを停止する。
実測温度Tmbは、第1温度閾値Ts1まで低下することなく再度上昇し、時間t7において、再度低温側から第2温度閾値Ts2に達している。しかし、警報部3は、実測温度Tmbが第2温度閾値Ts2に達しても火災警報Am(Amb)を発することなく、実測温度Tmbがさらに上昇し、第3温度閾値Ts3に達したとき(時間t9)に火災警報Am(Amb)を発する。すなわち、警報部3は、状況Bにおいては、実測温度Tmの第3温度閾値Ts3への到達によって発した火災警報Amの停止後に実測温度Tmが再度上昇する場合も、実測温度Tmが第2温度閾値Ts2に達したときではなく再度第3温度閾値Ts3に達したときに火災警報Amを発する。最初に実測温度Tmが第2温度閾値Ts2に達したときの第1温度閾値Ts1への到達時からの経過時間が長い場合には、実測温度Tmが一旦低下した後の再度の温度上昇も単に自然な温度上昇に過ぎないことがあるため、このような動作が好ましいことがある。なお、状況Bにおいて、時間閾値Es以内に第2温度閾値Ts2に達しなかった実測温度Tmが第3温度閾値Ts3に達することなく降下し、第2温度閾値Ts2を下回ってから再度上昇する場合も、警報部3は、実測温度Tmが再度第2温度閾値Ts2に達したときではなく第3温度閾値Ts3に達したときに火災警報を発し得る。
また、図3の例では、実線で示される状況Aおよび二点鎖線で示される状況Bのいずれにおいても、第4温度閾値Ts4に実測温度Tmが達したときに火災警報Amが停止される。しかし、状況Aと状況Bとでは、火災警報発報時の状況が異なるのであるから、警報の停止の基準となる温度閾値が異なっていてもよい。すなわち、警報部3は、実測温度Tmが時間閾値Esを越えて第2温度閾値Ts2に達した後に第3温度閾値Ts3に達した場合は、実測温度Tmが第4温度閾値Ts4の温度と異なる温度まで低下したときに火災警報Amを停止してもよい。たとえば、火災警報器1の設置環境によっては、状況Bでは少なくとも一旦は第3温度閾値Ts3まで実測温度Tmbが上昇しているのであるから、状況Aよりも火災が発生している可能性が高いと考えられる場合がある。その場合、警報部3は、状況Aにおいて第4温度閾値Ts4まで実測温度Tmaが低下したときに火災警報Amaを停止し、状況Bにおいては、第4温度閾値Ts4よりもさらに低い温度まで実測温度Tmbが低下したときに火災警報Ambを停止してもよい。また、火災警報器1の設置環境によっては、状況Aでは所定の温度範囲において少なくとも時間閾値Es以内に温度が上昇しているのであるから、状況Bよりも火災が発生している可能性が高いと考えられる場合がある。その場合、警報部3は、状況Bにおいて第4温度閾値Ts4まで実測温度Tmbが低下したときに火災警報Ambを停止し、状況Aにおいては、第4温度閾値Ts4よりもさらに低い温度まで実測温度Tmbが低下したときに、火災警報Ambを停止してもよい。
つぎに、図4を参照して、一旦発せられた火災警報Amが実測温度Tmの第4温度閾値Ts4への到達によって停止され、さらに、第1温度閾値Ts1に達するまで低下した実測温度Tmが再度上昇する場合の動作について説明する。図4に示される実測温度Tmの変化において実線で示されるTmcは、再上昇する実測温度Tmが、低温側から再度第1温度閾値Ts1に達してから時間閾値Es以内に第2温度閾値Ts2に達する場合(以下、状況Cとも称される)の例を示している。また、二点鎖線で示される実測温度Tmdは、再上昇する実測温度Tmが時間閾値Esを超えて第2温度閾値Ts2に達する場合(以下、状況Dとも称される)の例を示している。カウント時間Ec、早期警報フラグFeおよび火災警報Amそれぞれにおいて、実線で示されるEcc、FecおよびAmcは、状況Cにおけるそれぞれの変動を示し、Ecd、FedおよびAmdは、状況Dにおけるそれぞれの変動を示している。
図4の例では、実測温度Tmは、まず、時間閾値Es以内に第1温度閾値Ts1からTs2へと到達しており(時間t12)、その到達時に火災警報Amが発せられている。また、早期警報フラグFeがセットされ、計時手段31(図1参照)によるカウントが停止されてカウント時間Ec1が維持されている。その後、実測温度Tmは、第3温度閾値Ts3を超えるまで上昇した後に降下し、実装温度Tmの第4温度閾値Ts4への到達(時間t13)によって火災警報Amが停止されている。
そして、実測温度Tmがさらに低下し、時間t14において、第1温度閾値Ts1まで達すると、計時手段31によってカウントされ、時間t12から維持されていたカウント値がリセットされ、カウント時間Ec1が維持されていたカウント時間Ecも「ゼロ」にリセットされる。また、早期警報フラグFeがリセットされる。換言すると、警報部3は、実測温度Tmが時間閾値Es以内に第1温度閾値Ts1から第2温度閾値Ts2に達したときは、計時手段31のカウントによって計数されたカウント値に基づく情報の記憶を、実測温度Tmが第1温度閾値Ts1以下の温度に低下するまで維持する。すなわち、第1温度閾値Ts1は、実測温度Tmが低温側から達したときに計時手段31のカウントがスタートする閾値であると共に、実測温度Tmが高温側から達したときに、そのカウントによって計数されたカウント値に基づく情報の記憶がリセットされる閾値である。なお、前述したように、早期警報フラグFeが備えられる場合には、計時手段31のカウント値は、実測温度Tmが第1温度閾値Ts1まで低下する前にリセットされてもよい。
実測温度Tmは、第1温度閾値Ts1を下回った後再度上昇し、時間t15において再度低温側から第1温度閾値Ts1に達している。そして、計時手段31(図1参照)によるカウントが再度開始され、先に「ゼロ」にリセットされたカウント時間Ecが再度増加を始める。このように火災警報Amの停止後に実測温度Tmが第1温度閾値Ts1に達するまで低下した後に上昇する場合、警報部3は、実測温度Tmが再度第1温度閾値Ts1に達してから時間閾値Esを超えて第2温度閾値Ts2に達したときには、その時点では火災警報Amを発しない。すなわち、図4において実測温度Tm(Tmd)などが二点鎖線で示される状況Dの場合、時間t17では火災警報Am(Amd)は発せられない。また、早期警報フラグFe(Fed)もセットされない。しかし状況Dにおいても、実測温度Tmdが第3温度閾値Ts3に達すると(時間t18)、火災警報Am(Amd)が発せられる。
一方、警報部3は、実測温度Tmが再度第1温度閾値Ts1に達してから時間閾値Es以内に第2温度閾値Ts2に達したときには、その第2温度閾値Ts2への到達時に火災警報Amを発する。すなわち、図4において実測温度Tm(Tmc)などが実線で示される状況Cの場合、時間t16において火災警報Am(Amc)が発せられる。また、火災警報Amcの発報に伴って、早期警報フラグFe(Fec)がセットされている。なお、計時手段31によるカウントは、状況Cおよび状況Dのいずれにおいても、第2温度閾値Ts2への実測温度Tmの到達(時間t16または時間t17)に伴って停止され、その後、カウント時間Ecc、Ecdが維持されている。
要するに、図4の例のように実測温度Tmが、第2温度閾値Ts2を一旦超えた場合でも、その後、第3温度閾値Ts3に達するか否かに関わらず、実測温度Tmが第1温度閾値Ts1まで低下した場合、火災警報Amの発報に関する火災警報器1の状態が、実測温度Tmが第2温度閾値Ts2に達する前の状態にリセットされる。そして、再度第1温度閾値Ts1に達してさらに第2温度実測値Ts2に実測温度Tmが達したときには、その再度の第1温度閾値Ts1への到達時からの経過時間と時間閾値Esとの大小関係に基づいて火災警報Amが発せられる。実測温度Tmが時間閾値Es以内に第2温度閾値Ts2に一旦達した場合でも、その後、一定の低い温度(第1温度閾値Ts1)まで実測温度Tmが低下した場合には、先に検知した実測温度Tmの上昇が火災によって生じた可能性は、ある程度低いと考えられる。従って、このように火災警報の発報に関する状態を一旦リセットすることが好ましい。
なお、図4の例では、実測温度Tmの高温側からの第1温度閾値Ts1への到達と略同時に、カウント時間Ecおよび早期警報フラグFeがリセットされている。しかし、実測温度Tmが、たとえば風の吹き込みなどによって瞬間的に第1温度閾値Ts1まで低下することもあり得る。従って、実測温度Tmの第1温度閾値Ts1への到達後、所定の時間以上、第1温度閾値Ts1以下の温度が維持されたときに、カウント時間Ecおよび早期警報フラグFeがリセットされてもよい。また、一旦、実測温度Tmが第1温度閾値Ts1まで低下した後に再上昇する場合の時間閾値Esの長さが、当初の時間閾値Esの長さから変更されてもよい。たとえ第1温度閾値Ts1まで低下したとはいえ、実測温度Tmが時間閾値Es以下の時間で第1温度閾値Ts1から第2温度閾値Ts2まで上昇したことには変わりがないので、たとえば再度の温度上昇時には火災警報Amが発報され易いように時間閾値Esの長さが当初よりも長くされてもよい。
図5には、本実施形態の火災警報器1における動作の流れを示すフローチャートが示されている。図5を参照し、図3および図4に示される火災警報Amの発報をもたらす警報部3での処理の流れを説明する。
火災警報器1が稼働を開始すると、必要に応じて、計時手段31(図1参照)のカウント値がリセットされる(ステップS1)。早期警報フラグが備えられている場合には早期警報フラグもリセットされる。ステップS2で、実測温度Tmが第1温度閾値Ts1に達しているか否かが判断され、達していない場合は(ステップS2で「N」)、ステップS2が繰り返される。
実測温度Tmが第1温度閾値Ts1に達している場合には(ステップS2で「Y」)、ステップS3で計時手段31におけるカウントが開始され、ステップS4で、実測温度Tmが第2温度閾値Ts2に達しているか否かが判断される。実測温度Tmが第2温度閾値Ts2に達していない場合には(ステップS4で「N」)、ステップS4が繰り返される。なお、図5には示されていないが、この際、実測温度Tmが降下して第1温度閾値Ts1以下まで低下した場合は、計時手段31のカウントが停止され、さらにそのカウント値がリセットされて、制御がステップS2に戻される。
実測温度Tmが第2温度閾値Ts2に達すると(ステップS4で「Y」)、計時手段31のカウントが停止され(ステップS5)、ステップS6にて、計時手段31によってカウントされたカウント値に相当するカウント時間Ecが、時間閾値Es以下か否かが判断される。カウント時間Ecが時間閾値Es以下である場合は(ステップS6で「Y」)、火災警報が発せられ(ステップS7)、早期警報フラグが備えられている場合は早期警報フラグがセットされる(ステップS8)。ステップS5におけるカウント停止までに計時手段31によってカウントされたカウント値は、後述するステップS17まで維持されてもよく、早期警報フラグが備えられる場合は、ステップS8以降にリセットされてもよい。
その後、ステップS12で、実測温度Tmが第4温度閾値Ts4以下まで低下するか否かが判断される。ここで実測温度Tmがさらに上昇して、たとえば第3温度閾値Ts3を超えるか否かが判断されてもよいが、既に火災警報を発している状態であるため図5では省略されている。
実測温度Tmが第4温度閾値Ts4まで低下するまでステップS12が繰り返され(ステップS12で「N」に続くループ)、実測温度Tmが第4温度閾値Ts4まで低下すると(ステップS4で「Y」)、火災警報が停止される(ステップS13)。
その後、実測温度Tmが再度第2温度閾値Ts2に達するまで上昇するか(ステップS14)、または、第1温度閾値Ts1まで低下するか(ステップS15)が判断される。実測温度Tmが第2温度閾値Ts2まで再度上昇した場合は(ステップS14で「Y」)、維持されているカウント時間Ecが、時間閾値Es以下か否かが判断される(ステップS18)。早期警報フラグが備えられている場合は早期警報フラグがセットされているか否かが判断されてもよい。カウント時間Ecが時間閾値Es以下、または、早期警報フラグがセットされている場合は(ステップS18で「Y」)、火災警報が発せられ(ステップS11)、再度、ステップS12で、実測温度Tmが第4温度閾値Ts4まで低下するか否かが判断される。
このようにステップS18では、ステップS18に至るまでの時間(たとえば、ステップS3からステップS18に至るまでの時間)ではなく、ステップS6と同様に、ステップS3からステップS5までの時間に基づいて、火災警報を発するか否かが判断される。そのため、図3に示される時間t8において火災警報Am(Ama)が発せられる。一方、後述するステップS9およびステップS11を経てステップS18に至った場合には、図3の例で時間t7において示されるように、火災警報Am(Amb)は発報されない。ステップS18において、カウント時間Ecが時間閾値Es以下、または、早期警報フラグがセットされていないと判断される場合は(ステップS18で「N」)、後述するステップS9に制御が移される。
実測温度Tmが再度第2温度閾値Ts2まで上昇せずに(ステップS14で「N」)第1温度閾値Ts1まで低下している場合は(ステップS15で「Y」)、ステップS17で、計時手段31(図1参照)によるカウント値(カウント時間Ec)がリセットされる。早期警報フラグが備えられている場合は、早期警報フラグがリセットされてもよい。
一方、実測温度Tmが第1温度閾値Ts1まで低下していない場合は(ステップS15で「N」)、実測温度Tmが第2温度閾値Ts2まで上昇するか、第1温度閾値Ts1まで低下するまでステップS14およびステップS15がループR2で繰り返される。このループR2において、図5に示されるように、ステップ7で警報を発してから、所定の時間(リセット閾値)以上の時間が経過しているか否かが判定されてもよい(ステップS16)。そして、リセット閾値以上の時間が経過していない場合に(ステップS16で「N」)、ループR2でステップS14〜S16が繰り返され、リセット閾値以上の時間が経過している場合は(ステップS16で「Y」)、ステップS17に制御が進められてもよい。そしてステップS17で計時手段31のカウント値(カウント時間Ec)および/または早期警報フラグがリセットされてもよい。
すなわち、警報部3は、時間閾値Esを超えないうちに第2温度閾値Ts2に実測温度Tmが達して火災警報を発した後、実測温度Tmが第1温度閾値Ts1に達するまで低下することなく所定の時間が経過すると、計時手段31のカウントによって計数されたカウント値に基づく情報の記憶をリセットしてもよい。時間閾値Es以内に実測温度Tmが第2温度閾値Ts2に達したことによって火災警報が発報された場合でも、その発報後、長時間経過した場合には火災の危険性は低いと判断できる。また、その火災警報の停止後の再度の火災警報の発報に関する判断において、いつまでも実測温度Tmの過去の推移を参酌するのは好ましくない場合がある。そのため、ステップS16が設けられ、ステップS7での火災警報の発報から所定の時間(リセット閾値)以上の時間が経過している場合には、火災警報の発報に関する火災警報器1の状態がリセットされてもよい。なお、リセット閾値には、火災警報器1の周囲の状況または想定される火災の種類などに応じて任意の時間が選択され得る。たとえば、リセット閾値は、3時間〜9時間の範囲のいずれかの長さの時間であり、好ましくは6時間程度の時間である。なお、警報部3は、ステップS7からの経過時間の計時のために、複数の計時手段31を有していてもよい。
ステップS6に戻って、カウント時間Ecが時間閾値Esを超えていた場合(ステップS6で「N」)について説明する。この場合、および前述したステップS18での判断が「N」の場合、ステップS9およびステップS10で、実測温度Tmが第3温度閾値Ts3に達するまで上昇しているか、および第1温度閾値Ts1に達するまで低下しているかが判断される。実測温度Tmが第3温度閾値Ts3に達している場合は(ステップS9で「Y」)、ステップS11で火災警報が発せられ、前述したステップS12へと制御が進められる。
実測温度Tmが第3温度閾値Ts3まで上昇せず(ステップS9で「N」)かつ第1温度閾値Ts1まで低下もしていない場合は(ステップS10で「N」)、ループR3でステップS9およびステップS10が繰り返される。
実測温度Tmが第1温度閾値Ts1に達するまで低下した場合は(ステップS10で「Y」)、ステップS9およびステップS10の反復が終了され、ステップS17で、計時手段31のカウント値(カウント時間Ec)および/または早期警報フラグがリセットされてもよい。なお、図5には示されていないが、ステップS18を経て制御がステップS9へと進められている場合は、ループR3においても、前述したステップS16と同様に、ステップS7からの経過時間がリセット閾値を超えているか否かが判断され、超えている場合にはステップS9およびステップS10の反復を終了してステップS17へと制御が移されてもよい。
ステップS17の後、ループR1で、ステップS2へと制御が戻され、火災警報の発報に関して火災警報器1がリセットされた状態で、実測温度Tmの各温度閾値に対する判断が繰り返される。たとえばこのような図5に示される手順で警報部3が動作することによって、火災警報Amが図3および図4に示されるように発報され得る。
なお、警報部3が、前述したように複数の記憶手段31を有する場合、ステップS10またはステップS15において実測温度Tmが第1温度閾値Ts1まで低下したと判断された後さらに、ステップS5またはステップS7などからの経過時間と、前述したリセット閾値と同じかまたは異なる所定の時間とが比較されてもよい。そして、ステップS5またはステップS7などからの経過時間の方が長い場合だけ、ステップS17でカウント値(カウント時間Ec)および/または早期警報フラグがリセットされ、逆の場合は、カウント値などがリセットされずに制御がステップS2に戻されてもよい。そうすることによって、前述したように偶発的な要因で実測温度Tmが第1温度閾値Ts1以下まで低下したことによるカウント値などのリセットを防止することができる。
図3〜図5に例示される警報部3の動作では、実測温度Tmが低温側から第2温度閾値Ts2に達すると、計時手段31のカウントが停止された。しかし、火災警報器1では、実測温度Tmの第2温度閾値Ts2への到達後も、計時手段31によるカウントが継続されてもよい。そして、第1温度閾値Ts1への到達から時間閾値Esを超えて実測温度Tmが第2温度閾値Ts2に達したときには、さらに、第2温度閾値Ts2の温度よりも高く、かつ、第3温度閾値Ts3の温度よりも低い所定の温度(第5温度閾値)に実測温度Tmが達したときの時間に基づいて、火災警報が発せられてもよい。たとえば、時間閾値Esの時間よりも長い時間である第2時間閾値が設定され、実測温度Tmが第1温度閾値Ts1に達してから第2時間閾値以内に第5温度閾値に達した場合には、第2温度閾値Ts2への実測温度Tmの到達時に火災警報が発報されなかった場合でも、第5温度閾値に達したときに火災警報が発せられてもよい。そうすることによって、時間閾値Es以内に実測温度Tmが第2温度閾値Ts2に達しなかった場合に第3温度閾値Ts3に実測温度Tmが達するまで火災警報が発報されない場合よりも、早期かつ適切に火災警報を発することができることがある。第5温度閾値および第2時間閾値は特に限定されないが、たとえば第5温度閾値は57℃程度の温度であってもよく、第2時間閾値は60秒程度の時間であってもよい。
さらに、第2温度閾値Ts2への実測温度Tmの到達時に火災警報が発せられなかった場合に、第3温度閾値Ts3に実測温度Tmが達するまでの間、時時得られる実測温度Tmと、第1温度閾値Ts1への実測温度Tmの到達時からの経過時間との関係に基づいて、火災警報を発するか否かが連続的に判断されてもよい。たとえば、実測温度Tmが時間閾値Esを越えて第2温度閾値Ts2に達した後に第3温度閾値Ts3に達するまでの間、実測温度Tmが、(第1温度閾値Ts1への到達時からの経過時間)×(第2温度閾値Ts2)/(時間閾値Es)より高い場合に、火災警報が発せられてもよい。図6には、このような判断基準において火災警報が発せられる実測温度Tmの変化の一例が示されている。図6において、符号Esで示される矢印の長さは、図3などと同様に時間閾値Esの時間の長さを示している。また、符号Ts2Lで示される矢印の長さは、第2温度閾値Ts2の大きさ(0℃と第2温度閾値Ts2の温度との温度差)を示している。すなわち、第2温度閾値Ts2に時間閾値Esを超えて達した実測温度Tmが、図6に二点鎖線で描かれて符号Tsaを付された矢印の傾き以上の傾きで上昇する場合に、火災警報が発報されてもよい。
また上記式の変形例が用いられてもよい。たとえば、時間閾値Esを越えて第2温度閾値Ts2に達した実測温度Tmが第3温度閾値Ts3に達するまでの間、実測温度Tmと第1温度閾値Ts1との温度差が、(第1温度閾値Ts1への到達時からの経過時間)×(第2温度閾値Ts2−第1温度閾値Ts1)/(時間閾値Es)より高い場合に火災警報が発せられてもよい。上記の二つの式を用いる例のように、実測温度Tmが第3温度閾値Ts3に達するまで連続的に、火災警報を発するか否かを判断することによって、火災警報を適切かつ早期に発し得ることがある。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
また、上記実施形態では、説明の便宜上、実施形態の火災警報器の処理動作を処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明では、火災警報器の処理動作を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。