JP2019104773A - β型サイアロン蛍光体の製造方法 - Google Patents
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(1)一般式:Si6-zAlzOzN8-z:Eu(0<z<4.2)で示されるβ型サイアロン蛍光体の製造方法であって、
前記β型サイアロン蛍光体を得るための原料混合粉末を焼成して焼成物を得る焼成工程と、前記焼成物の粉末をアルコキシシランと混合処理する混合工程を含み、JIS Z8825(2013)に準拠して、レーザー回折・散乱法にて測定した、前記β型サイアロン蛍光体の平均粒子径D50が、前記混合工程前の焼成物の粉末の平均粒子径D50に対し1.2倍以上であることを特徴とする、β型サイアロン蛍光体の製造方法。
(2)前記アルコキシシランが、一般式:R1Si(OR2)3(R1は炭素数が1〜12の置換又は非置換の一価炭化水素基、R2は炭素数が1〜12の非置換の一価炭化水素基である。)、又は一般式:R1Si(OR2)2R3(R1は炭素数が1〜12の置換又は非置換の一価炭化水素基、R2、R3は炭素数が1〜12の非置換の一価炭化水素基である。)で表されることを特徴とする前記(1)に記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。なお前記Rに付いている各添字1、2、3は、元素の数を示す添字ではなく、以下同様である。
(3)レーザー回折・散乱法にて測定した、前記β型サイアロン蛍光体の平均粒子径D50が、前記混合工程前の焼成物の粉末の平均粒子径D50に対し8.0倍以下であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
(4)レーザー回折・散乱法にて測定した、前記混合工程前の焼成物の粉末の平均粒子径D50が1〜25μmであることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
(5)前記アルコキシシランの1分子に含まれる炭素数が4以上であることを特徴とする前記(1)〜(4)いずれかに記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
(6)前記アルコキシシランの1分子に含まれる炭素数が15以下であることを特徴とする前記(1)〜(5)いずれかに記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
(7)前記混合工程は、混合工程前の前記焼成物の粉末100質量部に対し、前記アルコキシシランが1.0〜10.0質量部の比率になるように混合する操作と、混合後に乾燥する操作とを含むことを特徴とする前記(1)〜(6)いずれか一項記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
本発明の実施により得られるβ型サイアロン蛍光体は、一般式Si6-zAlzOzN8-z(zは0より大きく4.2未満である)で示されるβ型サイアロンの母体結晶に、発光中心となるEu2+が固溶したものであり、前記特許文献1等に記載される周知のβ型サイアロン蛍光体である。
本発明のβ型サイアロン蛍光体の製造方法で用いられるアルコキシシランは、一般式:R1Si(OR2)3(R1は炭素数が1〜12の置換又は非置換の一価炭化水素基、R2は炭素数が1〜12の非置換の一価炭化水素基である。)又は、一般式:R1Si(OR2)2R3(R1は炭素数が1〜12の置換又は非置換の一価炭化水素基、R2、R3は炭素数が1〜12の非置換の一価炭化水素基である。)で表される。R1の置換又は非置換の一価炭化水素基としては、炭素数が上前記範囲内であれば特に限定されず、例えば、アルキル基等の飽和脂肪族基、不飽和脂肪族基等であり得る。また、これらの脂肪族基は、水素原子の一部又は全部が、エポキシ基、アミノ基、その他の基で置換されていてもよい。
本発明において、焼成物の粉末をアルコキシシランと混合処理する混合工程は、混合工程前の焼成物の粉末とアルコキシシランを混合すること、及び混合後又は混合途中でこれを乾燥することを含む。
焼成物の粉末とアルコキシシランを混合する方法については、これらを均一に混合することができれば、特に限定されるものではない。
また、アルコキシシランは、単独で使用してもよいが、焼成物の粉末との均一な混合を助けるために、アルコキシシランを溶解できる溶媒に混合して使用してもよい。このような溶媒としては、例えば、メタノールやエタノール等が挙げられる。更に、β型サイアロン蛍光体粒子とアルコキシシランとの脱水縮合反応を促進するために、アルコキシシランを水に溶解させて加水分解させてから混合に使用してもよい。
焼成物の粉末とアルコキシシランを混合した後に乾燥することで、アルコキシシランと焼成物の粉末との脱水縮合を促進させ、粉末同士がさらに一部凝集したβ型サイアロン蛍光体を得ることができる。この際、アルコキシシランが完全に乾燥して塊状になるまで十分乾燥することが必要となる。アルコキシシランの種類によるが、通常は100℃から200℃の温度範囲で乾燥することが好ましい。乾燥時間は特に制限されないが、2〜24時間であることが好ましい。なお本発明のβ型サイアロン蛍光体の製造方法では、焼成物の粉末とアルコキシシランは均一に十分混合されることが好ましいが、乾燥が終了した段階において、多数の焼成物の粉末が凝集してしまい、粒子径が平均値から極端に外れて大きいβ型サイアロン蛍光体の粒子が微量存在している場合があるが、このような粒子は本発明の効果を妨げる例外的な巨大粒子として、例えば篩を用いるなどして、その混入が無いことの確認ができ、またはその混入を防止することができる。この場合、平均値から極端に外れて大きい粒子とは、混合工程前の焼成物の粉末の平均粒子径D50に対し、少なくとも5倍以上の目開きを有する篩上に残る大きさの粒子である。なおこの操作は、巨大粒子の除去が目的であるため、基本的に殆ど全ての粒子を篩下に落とす操作となる。
前記半導体発光素子は、240〜500nmの波長の光を発するものが望ましく、なかでも420nm以上500nm以下の青色LEDが好ましい。
実施例1〜8及び比較例1は、いずれも一般式がSi5.75Al0.25O0.25N7.75:Eu2+で表されるβ型サイアロン蛍光体に基づくものである。比較例1の蛍光体は、従来のβ型サイアロン蛍光体の製造方法、即ちアルコキシシランとの混合工程を有しない方法で得られたものである。一方、実施例1〜8の蛍光体は、比較例1のβ型サイアロン蛍光体(即ち混合工程前の焼成物の粉末)をアルコキシシランで処理し、平均粒子径をさらに拡大させる製造方法で得られたものである。
比較例1のβ型サイアロン蛍光体は、以下に記載するように、原料混合粉末を焼成して焼成物を得る焼成工程を実施し、焼成工程後の焼成物に、さらに解砕粉砕処理、分級処理、アニール処理及び酸処理を施して製造した。
α型窒化ケイ素(SN−E10グレード、酸素含有量1.0質量%、宇部興産社製)95.58質量%、窒化アルミニウム(Eグレード、酸素含有量0.8質量%、トクヤマ社製)2.89質量%、酸化アルミニウム(TM−DARグレード、大明化学社製)0.93質量%、及び酸化ユーロピウム(RUグレード、信越化学工業社製)0.60質量%となるように秤量した。当該原料の配合比は、β型サイアロンの一般式:Si6-zAlzOzN8-zにおいて、酸化ユーロピウムを除いて、z=0.25となるように設計した。この原料混合粉末をV型混合機(S−3、筒井理化学器械社製)で10分間乾式混合した。混合後の原料のうち、目開き250μmのナイロン製篩を通過したものを以下の工程に用いた。前記混合物を蓋付きの円筒型窒化ホウ素製容器(N−1グレード、デンカ社製)に充填し、カーボンヒーターの電気炉で0.8MPaの加圧窒素雰囲気中、2000℃で15時間放置して焼成を行った。焼成終了後、容器を取り出し、室温になるまで放置した。
得られた塊状の焼成物を、ロールクラッシャーで解砕し、目開き150μmの篩を通過させた粉体を以下の処理に用いた。
前記焼成工程後の粉体を、アルゴンガス雰囲気下、雰囲気圧力0.15MPaで1450℃に8時間保持した。
アニール処理後の粉体を、フッ化水素酸と硝酸の混酸に30分間浸すことにより酸処理を行った。酸処理後の粉体から酸を分離するため、粉体を混酸ごと合成樹脂製フィルタに流し、フィルタ上に残った粉体を水洗いして比較例1のβ型サイアロン蛍光体を得た。
比較例1のβ型サイアロン蛍光体粒子と、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業社製)とを、β型サイアロン蛍光体粒子100質量部に対し3.0質量部の比率となるように配合し、10分間混合した。混合後に150℃で2時間乾燥し、乾燥後のβ型サイアロン蛍光体を目開き75μmの篩を用いて、巨大粒子を除去した。殆ど全ての粒子は篩下で回収され、処理後のβ型サイアロン蛍光体を得た。
実施例2〜7は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの配合量、乾燥後の篩の目開きを、それぞれ以下のように変更したこと以外は実施例1と同じ条件で製造した。
実施例8では、アルコキシシランとして3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(KBE−503、信越化学工業社製)を使用し、配合量をβ型サイアロン蛍光体粒子100質量部に対して5.0質量部としたこと以外は実施例1と同じ条件で製造した。
得られた実施例1〜8、比較例1のβ型サイアロン蛍光体を以下の方法で評価した。評価結果を表1に示す。
表1に示す実施例1〜8、比較例1の、混合工程前の焼成物の粉末の平均粒子径D50及びβ型サイアロン蛍光体の平均粒子径D50は、どちらも粒度分布測定装置(MT―3300EXII、マイクロトラック・ベル社製)を用いて、JIS Z8825(2013)に準拠して、レーザー回折・散乱法による粒子径分布測定により得られた体積基準の積算分率における50%粒子径(D50)である。測定の前処理として、分散剤(ヘキサメタリン酸ナトリウム)を0.2重量%加えた水溶媒中に蛍光体を分散させ、超音波ホモジナイザー(US−150E、日本精機製作所社製)で3分間分散処理を実施した。またこれらの値から、混合工程前後の比率(β型サイアロン蛍光体の平均粒子径D50/混合工程前の焼成物の粉末の平均粒子径D50)の値を併せて記載した。
得られた実施例1〜8、比較例1のβ型サイアロン蛍光体の基本的な特性として、その吸収率、及び量子効率を、次の様な方法により、常温下で評価した。即ち、積分球(φ60mm)の側面開口部(φ10mm)に、反射率が99%の標準反射板(スペクトラロン、Labsphere社製)をセットし、この積分球内に、発光光源(Xeランプ)から455nmの波長に分光した単色光を光ファイバーにより導入し、反射光のスペクトルを分光光度計(MCPD−7000、大塚電子社製)により測定した。その際、450〜465nmの波長範囲のスペクトルから励起光フォトン数(Qex)を算出した。次に、表面が平滑になるようにβ型サイアロン蛍光体を充填した凹型のセルを、積分球の開口部にセットし、波長455nmの単色光を照射し、励起反射光及び蛍光のスペクトルを分光光度計により測定した。得られたスペクトルデータから励起反射光フォトン数(Qref)及び蛍光フォトン数(Qem)を算出した。なお励起反射光フォトン数は、励起光フォトン数と同じ波長範囲で、蛍光フォトン数は、465〜800nmの範囲で算出した。得られた三種類のフォトン数から、吸収率(=(Qex−Qref)/Qex×100(%))、内部量子効率(=Qem/(Qex−Qref)×100(%))、外部量子効率(=Qem/Qex×100(%))を求めた。
実施例1〜8、比較例1で得られたβ型サイアロン蛍光体の発光特性を調べるため、それぞれの発光スペクトルのピーク強度を測定し、YAG:Ce蛍光体(P46Y3、化成オプトニクス社製)の発光スペクトルのピーク高さを100%としたときの相対ピーク強度(%)を求めた。即ち、実施例1〜8、比較例1で得られたβ型サイアロン蛍光体の粉末を、それぞれ縦10mm×横10mm×高さ45mmの2面透明石英セルに入れ、50回タッピングした後、セルの方向を180度変え、更に50回タッピングした。その蛍光体粉末の入ったセルを分光蛍光光度計(F7000、日立ハイテクノロジーズ社製)の試料室内にあるセルホルダーに取り付けた。このセルに、発光光源(Xeランプ)から、455nmの波長に分光した単色光を照射した。この単色光を励起源として、前記分光蛍光光度計により各蛍光体の発光スペクトルのピーク強度を測定した。なお、前記各蛍光体の発光スペクトルのピーク強度の測定値は、それぞれ同測定によるYAG:Ce蛍光体(P46Y3、化成オプトニクス社製)の発光強度を100%とした相対ピーク強度(%)に換算し、表1に示した。
実施例1〜8、比較例1で得られたβ型サイアロン蛍光体を、発光素子に用いた場合の特性を評価するため、前記の実施例及び比較例のβ型サイアロン蛍光体を、それぞれKSF蛍光体(KR−2K01、波長455nmの励起光を受けた際の発光ピーク波長は631nm、デンカ社製)と共に硬化性シリコーン樹脂(KER−6150、信越化学工業社製)に添加し、脱泡、混練した後、ピーク波長450nmの青色発光半導体素子を接合した表面実装タイプのパッケージにポッティングし、更にそれを熱硬化させることによって白色LEDを作製した。KSF蛍光体とβ型サイアロン蛍光体との添加量比は、通電発光時に白色LEDの色度座標(x、y)が(0.28、0.27)になるように調整した。
実施例1〜8、比較例1のβ型サイアロン蛍光体を含む、前記白色LEDのうち、特に色度xが0.275〜0.284、色度yが0.265〜0.274の範囲内に収まる10個を選別し、それぞれ各白色LEDを通電発光させ、分光光度計(MCPD−9800、大塚電子社製)に直径300mm積分半球(大塚電子社製)とを組み合わせた全光束測定装置を用いた測定により各全光束を求め、それらの平均値を全光束の代表値とした。なお表1には、比較例1の全光束を100%としたときの相対値を相対全光束(%)として示した。この相対全光束が大きい程、発光素子としての輝度が高いことを示している。なお本発明では、元の実施例も比較例も、元は同じβ型サイアロン蛍光体の粒子を用いていることに鑑み、比較例1の相対全光束(100%)に対して、少なくとも1%以上向上すれば、本発明の製造方法の効果が明確に発現されている。
Claims (7)
- 一般式:Si6-zAlzOzN8-z:Eu(0<z<4.2)で示されるβ型サイアロン蛍光体の製造方法であって、
前記β型サイアロン蛍光体を得るための原料混合粉末を焼成して焼成物を得る焼成工程と、前記焼成物の粉末をアルコキシシランと混合処理する混合工程を含み、レーザー回折・散乱法にて測定した、前記β型サイアロン蛍光体の平均粒子径D50が、前記混合工程前の焼成物の粉末の平均粒子径D50に対し1.2倍以上であることを特徴とする、β型サイアロン蛍光体の製造方法。 - 前記アルコキシシランが、一般式:R1Si(OR2)3(R1は炭素数が1〜12の置換又は非置換の一価炭化水素基、R2は炭素数が1〜12の非置換の一価炭化水素基である。)、又は一般式:R1Si(OR2)2R3(R1は炭素数が1〜12の置換又は非置換の一価炭化水素基、R2、R3は炭素数が1〜12の非置換の一価炭化水素基である。)で表されることを特徴とする請求項1記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
- レーザー回折・散乱法にて測定した、前記β型サイアロン蛍光体の平均粒子径D50が、前記混合工程前の焼成物の粉末の平均粒子径D50に対し8.0倍以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
- レーザー回折・散乱法にて測定した、前記混合工程前の焼成物の粉末の平均粒子径D50が1〜25μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
- 前記アルコキシシランの1分子に含まれる炭素数が4以上であることを特徴とする請求項1〜4いずれか一項記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
- 前記アルコキシシランの1分子に含まれる炭素数が15以下であることを特徴とする請求項1〜5いずれか一項記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
- 前記混合工程は、混合工程前の前記焼成物の粉末100質量部に対し、前記アルコキシシランが1.0〜10.0質量部の比率になるように混合する操作と、混合後に乾燥する操作とを含むことを特徴とする請求項1〜6いずれか一項記載のβ型サイアロン蛍光体の製造方法。
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