JP2018109077A - 緑色蛍光体、発光素子及び発光装置 - Google Patents

緑色蛍光体、発光素子及び発光装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、より輝度の高いγ−AlON系緑色蛍光体、及び前記蛍光体を含む発光素子、前記発光素子を用いた発光装置を提供することを目的とする。
【解決手段】立方晶スピネル型AlON結晶と同一の結晶構造を有する母体結晶に、元素M(但し元素Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Tm、Ybから選ばれる1種以上の元素)と、元素A(但し元素Aは、元素MおよびAl以外の1種以上の金属元素)とが固溶している緑色蛍光体で、前記蛍光体の外部量子効率の値W(%)の数値部と、色度Xの値Fを用いて、I=(0.7333×F+0.05)×100の式から算出される指標値Iとが、W>Iである関係を満たす緑色蛍光体とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、緑色蛍光体、及び前記蛍光体を用いた発光素子及び発光装置に関する。より詳しくは、輝度に優れ、LED(発光ダイオードともいう)又はLD(レーザーダイオードともいう)向けに好ましく用いることができる緑色蛍光体、及び前記蛍光体を用いた発光素子及び発光装置に関する。
白色LEDは、半導体発光素子と蛍光体との組み合わせにより疑似白色光を発光するデバイスであり、その代表的な例として、青色LEDとYAG黄色蛍光体の組み合わせが知られている。しかし、この方式の白色LEDは、その色度座標値としては白色領域に入るものの、緑色発光成分、赤色発光成分が不足しているために、照明用途では演色性が低く、液晶バックライトのような画像表示装置では色再現性が悪いという問題がある。そこで、不足している発光成分を補うために、青色LEDと緑色蛍光体及び赤色蛍光体を組み合わせた発光装置が提案されている。緑色を発光する蛍光体の代表例として、窒化ケイ素のケイ素、窒素の一部をアルミニウム、酸素が置換固溶したβサイアロンに、さらに発光中心となる元素を固溶させたβサイアロン蛍光体が知られている。
その他の緑色を発光する蛍光体として、特許文献1、2には、立方晶スピネル型AlON結晶(γ−AlONとも呼称される)と同一の結晶構造を有する無機結晶を母体結晶とし、例えばMnとMg、またはMnとEuとMg、またはMnとSiといった元素の組み合わせを前記母体結晶にさらに固溶させた蛍光体(以降、γ−AlON系蛍光体とも記載する)が開示されている。γ−AlON系蛍光体は、一般に発光スペクトルの半値幅が狭く、また緑色蛍光体としての発光ピーク波長が、βサイアロン蛍光体の発光ピーク波長よりもさらに短波長側にあるため、原理的には高効率及び色再現性がより広い発光装置を得ることができる。特許文献3、4には、γ−AlON系蛍光体と赤色蛍光体及び光源を組み合わせた発光装置についても提案されている。
しかしγ−AlON系蛍光体は、発光波長の面ではβサイアロン蛍光体より有利であるものの、発光装置として使用するには発光輝度が幾分不足しており、この点において改良の余地が残されていた。そのため、業界では高い発光輝度の発光素子、発光装置を提供できるように、γ−AlON系蛍光体の高輝度化が期待されていた。
国際公報第2007/099862号パンフレット 特開2009−096854号公報 特開2009−218422号公報 特開2010−093132号公報
本発明は、より輝度の高いγ−AlON系緑色蛍光体、及び前記蛍光体を含む発光素子、前記発光素子を用いた発光装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、立方晶スピネル型AlON結晶と同一の結晶構造を有する母体結晶に、さらに複数の元素を固溶させたγ−AlON系緑色蛍光体において、同じ色度を有する複数の前記蛍光体を比較した場合、前記蛍光体の外部量子効率(%)の数値部(即ちW)と、色度Xの値(即ちF)を基にして算出される指標値(即ちI)との数的大小関係が、特定の条件を満たす場合に限り、蛍光体の輝度がさらに高いγ−AlON系緑色蛍光体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)立方晶スピネル型AlON結晶と同一の結晶構造を有する母体結晶に、元素M(但し元素Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Tm、Ybから選ばれる1種以上の元素)と、元素A(但し元素Aは、元素MおよびAl以外の1種以上の金属元素)とが固溶している緑色蛍光体で、外部量子効率(%)の数値部Wと、色度Xの値Fを用いて、I=(0.7333×F+0.05)×100の式から算出される指標値Iとが、W>Iである関係を満たす緑色蛍光体である。
(2)前記(1)記載の緑色蛍光体は、内部量子効率が70%以上であることが好ましい。
(3)前記(1)または(2)記載の緑色蛍光体は、組成式がMaAbAlcOdNe(但し、Mは元素M、Aは元素A、Alはアルミニウム、Oは酸素、Nは窒素であり、a+b+c+d+e=1を満たす)で示され、0.00001≦a≦0.1であることが好ましい。
(4)前記(1)〜(3)いずれか一項記載の緑色蛍光体は、組成式がMaAbAlcOdNe(但し、Mは元素M、Aは元素A、Alはアルミニウム、Oは酸素、Nは窒素であり、a+b+c+d+e=1を満たす)で示され、0.001≦b≦0.40の蛍光体であることが好ましい。
(5)前記(1)〜(4)いずれか一項記載の緑色蛍光体は、元素MがMnであることが好ましい。
(6)前記(1)〜(5)いずれか一項記載の緑色蛍光体は、元素Aが少なくともMgを含むことが好ましい。
(7)また本発明は、前記(1)〜(6)いずれか一項記載の緑色蛍光体を用いた発光素子である。
(8)また本発明は、前記(7)記載の発光素子を用いた発光装置である。
本発明の実施により、従来より輝度の高い緑色蛍光体を得ることができ、本発明の蛍光体を励起できる例えば青色LED等に、本発明の緑色蛍光体と、必要に応じてさらに別の色を発光する蛍光体(例えば赤色蛍光体)とを組み合わせて含む、例えば白色LED等の発光素子や、さらにこれら発光素子を用いた発光装置と提供することができる。発光装置としては、例えば照明装置、バックライト装置、画像表示装置及び信号装置が挙げられる。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
本発明の実施により立方晶スピネル型AlON結晶と同一の結晶構造を有する母体結晶に、元素M(但し元素Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Tm、Ybから選ばれる1種以上の元素)と、元素A(但し元素Aは、元素MおよびAl以外の1種以上の金属元素)とが固溶している緑色蛍光体が得られる。本発明でいう立方晶スピネル型AlON結晶と同一の結晶構造を有する母体結晶とは、さらに具体的には、立方晶スピネル型のAlON結晶、AlON固溶体結晶、及び前記AlON結晶、前記AlON固溶体結晶を除く、立方晶スピネル型AlON結晶と同一の結晶構造を有する結晶の総称である。立方晶スピネル型のAlON結晶はより一般的にγ−AlONとも呼ばれている。また前記AlON固溶体結晶とは、前記AlONと同じ結晶構造を有するが、酸素/窒素の比率がAlONとは異なっている、またはケイ素やMnなど他の元素が添加されている結晶である。さらに立方晶スピネル型AlON結晶と同一の結晶構造を有する結晶とは、前記AlONと同じ結晶構造を有するが、Al、O、Nの一部または全てが他の元素に置き換わった結晶である。これらの中ではγ−AlONが最も代表的な結晶である。
本明細書では便宜上、蛍光体の主結晶構造が例えばγ−AlONで示されると記載するが、そのような組成の蛍光体が得られるように原料を配合しても、原料中の不純物や焼成時の雰囲気等の影響により、蛍光体の組成が変動する可能性がある。本発明の緑色蛍光体の組成は、そのような変動分をも包摂した表現である。
本発明の緑色蛍光体の母体結晶が、γ−AlONと同一の結晶構造を有しているか否かは、粉末X線回折測定により確認することができる。本発明の蛍光体の母体結晶が、γ−AlONと同一の結晶構造を有してない場合には、発光色が緑色ではなくなったり、蛍光強度が大きく低下したりするので、好ましくない。本発明の緑色蛍光体において、γ−AlONと同一の結晶構造である母体結晶は、単相の結晶であることが好ましいが、蛍光体特性に大きな影響がない限り、異相の結晶を含んでいても構わない。異相の結晶の有無もまた、粉末X線回折測定により目的の結晶相によるもの以外のピークの有無により判別することができる。また、γ−AlONの構成元素が一部他の元素と置き換わることにより、格子定数が変化したものも本発明として含まれる。
本発明の緑色蛍光体は、立方晶スピネル型AlON(即ちγ−AlON)結晶と同一の結晶構造を有する母体結晶に、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Tm、Ybから選ばれる1種以上の元素Mが固溶している蛍光体である。元素Mは、蛍光体の発光中心となる元素であり、本発明の蛍光体では特にMnが好ましい。
本発明の緑色蛍光体は、前記元素Mに加え、さらに元素Aが固溶している蛍光体である。元素Aは、元素M及びAl以外の1種以上の金属元素であり、Mgを含むことが好ましい。
本発明の緑色蛍光体は、外部量子効率(%)の数値部Wと、色度Xの値Fを用いて、I=(0.7333×F+0.05)×100の式から算出される指標値Iとが、W>Iである関係を満たす緑色蛍光体である。前記WとIの値が、W>Iの関係を満たさないと、所望する色度に調整した場合でも、前記蛍光体を含む発光素子、さらに前記発光素子を用いた発光装置の輝度は従来よりも低下する。
また本発明の緑色蛍光体では、内部量子効率は70%以上であることが好ましい。内部量子効率が70%未満であると、この蛍光体を含む発光素子、さらに前記発光素子を用いた発光装置の輝度が低下する傾向にある。
また本発明の緑色蛍光体は、その組成式がMaAbAlcOdNe(但し、Mは元素M、Aは元素A、Alはアルミニウム、Oは酸素、Nは窒素であり、a+b+c+d+e=1を満たす)で示すことができ、0.00001≦a≦0.1であることが好ましい。aが0.00001より小さいと発光中心となる元素Mが少ないため輝度が低下する。またaが0.1より大きいと、濃度消光と呼ばれる元素M同士間の干渉現象により輝度が低下する。
また本発明の緑色蛍光体は、前記本発明の組成式において、0.001≦b≦0.40であることが好ましい。bがこの範囲を外れると蛍光体の母体結晶が化学的に不安定になり、γ−AlONで示される結晶相以外の結晶相(即ち異相)の割合が増えるため、輝度が低下する。
本発明の緑色蛍光体の製造方法は、従来のγ−AlON系蛍光体の製造方法と同様の製造方法を用いることができる。ここでは、本発明の一つの実施形態であるγ−AlON結晶中に元素Mと元素Aとが固溶した結晶を得る方法として、結晶を構成しうる原料を混合した粉末を、窒素雰囲気中において所定の温度範囲で焼成する方法を例示するが、特にこの方法に限定されるものではない。
前記の製造方法は、本発明の緑色蛍光体の原料として、元素M、元素A、アルミニウム、酸素、及び窒素を含む単体及び/または化合物を用意して、目的の蛍光体が得られるような配合で前記原料を混合する準備工程と、これを焼成して本発明の緑色蛍光体を得る焼成工程を含む製造方法である。なお、前記元素Mを含む単体または化合物とは、元素Mを含む金属、元素Mの酸化物、炭酸塩、窒化物、フッ化物、塩化物、酸窒化物、またはこれらを組み合わせたものである。また前記元素Aを含む単体または化合物とは、元素Aを含む金属、元素Aの酸化物、炭酸塩、窒化物、フッ化物、塩化物、酸窒化物、またはこれらを組み合わせたものである。さらに前記アルミニウムを含む単体または化合物とは、アルミニウム、アルミニウム合金、酸化アルミニウムや窒化アルミニウム、またはこれらを組み合わせたものである。本発明の緑色蛍光体の原料となる酸素や窒素は、前記酸化物及び窒化物、また焼結する炉内中の雰囲気ガス(窒素ガス)から供給することができる。これら各原料は、固体であれば粉末状であることが好ましく、焼成する前に予め均一に混合することが好ましい。
前記予め均一に混合した原料(以降、原料混合粉末という)は、焼成容器内に充填して焼成する。焼成容器は、少なくとも焼成温度の窒素雰囲気下において十分化学的、物理的(機械的)に安定で、原料混合粉末及びその反応生成物と反応しにくい材質で構成されることが好ましく、例えば窒化ホウ素製、カーボン製などが挙げられる。
原料混合粉末を充填した焼成容器は焼成炉にセットし、好ましくは1500℃以上2200℃以下の窒素雰囲気中で焼成する。焼成温度が1500℃より低いと未反応残存量が多くなり、焼成温度が2200℃より高くなると目的とする蛍光体の母体結晶が分解するので好ましくない。
焼成時間は、未反応の原料が多く残存したり、蛍光体の粒子の成長が不足したり、或いは実用的な面での生産性の低下という不都合が生じない時間範囲が選択される。本発明の好ましい実施形態では、焼成時間は1時間以上24時間以下としてよい。
焼成雰囲気の圧力は、焼成温度に応じて選択される。雰囲気圧力が高いほど、本発明の緑色蛍光体の母体結晶の分解開始温度は高くすることが可能であるが、工業的生産性を考慮すると1MPa未満とすることが好ましい。
原料混合粉末を焼成して得られる焼成物の状態は、原料混合粉末の配合割合や焼成条件により、粉体状、塊状、焼結体と様々である。蛍光体として使用する場合には、解砕や粉砕及び/又は分級操作を組み合わせて焼成物を所定の粒子サイズとすることができる。
本発明の緑色蛍光体の製造にあっては、蛍光体中の不純物を除去するための酸処理工程を、また蛍光体の結晶性を向上させることを目的とするアニール処理工程を更に設け、実施しても良い。
本発明の緑色蛍光体は、発光光源と本発明の蛍光体を含む発光素子に使用することができる。特に発光光源として、350nm以上500nm以下の波長を含有する紫外光や可視光を放射するLEDを用い、本発明の蛍光体に照射すると、波長510nmから550nmに蛍光ピークのある緑色光を発する。このため、例えば紫外LEDや青色LEDを発光光源として用い、本発明の緑色蛍光体と、さらに赤色の蛍光体とを組み合わせて含む発光素子となすことにより、容易に白色光の発光素子を得ることができる。
以下に本発明を実施例及び比較例によりさらに詳しく説明する。但し本発明は、これら実施例の記載のみに限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1の蛍光体の原料として、酸化アルミニウム粉末(Al、TM−DARグレード、大明化学株式会社製)、窒化アルミニウム粉末(AlN、Eグレード、株式会社トクヤマ社製)、酸化マグネシウム粉末(MgO、和光純薬工業社製)、酸化マンガン粉末(MnO、高純度化学研究所製)を用い、Mn:Mg:Al:O:N=0.0179:0.0625:0.3482:0.5089:0.0625のモル比率となるように10分間乾式混合した。混合後の原料を目開き250μmのナイロン製篩で分級して大きさを揃え、原料混合粉末とした。分級した原料混合粉末の300gを、蓋付きの円筒型窒化ホウ素製容器(N−1グレード、デンカ社製)に充填した。
原料混合粉末を充填した前記窒化ホウ素製容器をカーボンヒーターの電気炉内に速やかにセットし、炉内は0.1Pa以下まで十分に真空排気した。真空排気したまま、毎時300℃の昇温速度で加熱を開始し、1000℃到達後からは炉内に窒素ガスを導入し、炉内雰囲気圧力を0.8MPaとした。炉の内容積を1とした場合に1分間に炉内に流す窒素ガスの体積は0.02の比でガス導入を行い、圧力が一定となる様に窒素ガスの排気も並行して行った。窒素ガス導入開始後も、そのまま毎時300℃の昇温速度で加熱し続けて1900℃まで昇温し、1900℃の温度を保ちながら4時間の原料混合物を焼成した。
所定時間経過して冷却後、炉から回収した窒化ホウ素製容器内からは緑色の塊状物が回収されたが、前記塊状物をさらに乳鉢で解砕して、最終的に目開き45μmの篩を全通させた粉末を得た。
前記の目開き45μmの篩を全通させた粉末に対して、フッ化水素酸及び硝酸の混合液(80℃)で洗浄する酸処理工程を実施し、さらに水とヘキサメタリン酸ナトリウム(分散剤)の混合溶媒中で10分間静置してデカンテーションにより微粉を除去してから乾燥して、実施例1の蛍光体サンプルを得た。
(実施例2)
実施例1の蛍光体で使用した原料と同じ原料を用い、但し、Mn:Mg:Al:O:N=0.0269:0.0448:0.3552:0.5104:0.0627のモル比率となるように原料混合粉末を調製した以外は、実施例1と同じ操作を実施して、実施例2の蛍光体サンプルを得た。
(実施例3)
実施例1の蛍光体で使用した原料と同じ原料を用い、但し、Mn:Mg:Al:O:N=0.0267:0.0445:0.3591:0.4896:0.0801のモル比率となるように原料混合粉末を調製した以外は、実施例1と同じ操作を実施して、実施例3の蛍光体サンプルを得た。
(比較例1)
実施例1の蛍光体で使用した原料と同じ原料を用い、但し、Mn:Mg:Al:O:N=0.0179:0.0625:0.3482:0.5089:0.0625のモル比率となるように原料混合粉末を調製した以外は、実施例1と同じ操作を実施して、比較例1の蛍光体サンプルを得た。
(比較例2)
実施例1の蛍光体で使用した原料と同じ原料を用い、但し、Mn:Mg:Al:O:N=0.0269:0.0448:0.3552:0.5104:0.0627のモル比率となるように原料混合粉末を調製した以外は、実施例1と同じ操作を実施して、比較例2の蛍光体サンプルを得た。
(比較例3)
実施例1の蛍光体で使用した原料と同じ原料を用い、但し、Mn:Mg:Al:O:N=0.0267:0.0445:0.3591:0.4896:0.0801のモル比率となるように原料混合粉末を調製した以外は、実施例1と同じ操作を実施して、比較例3の蛍光体サンプルを得た。
(結晶構造の確認)
実施例1〜3、比較例1〜3の各蛍光体サンプルに対して、X線回折装置(UltimaIV、リガク社製)を用い、CuKα線を用いた粉末X線回折を行った。得られたX線回折パターンは、全てのサンプルでAlON結晶と同一の回折パターンが認められ、主結晶相がAlON結晶と同一の結晶構造を有することが確認された。
(蛍光スペクトルの測定)
実施例1〜3、比較例1〜3の蛍光体サンプルに対して、ローダミンBと副標準光源により補正した分光蛍光光度計(F−7000、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて蛍光スペクトルを測定した。測定には、光度計に付属の固体試料ホルダーを使用し、励起波長445nmでの蛍光スペクトルを求めた。その結果、蛍光スペクトルのピーク波長は全てのサンプルで520nmであった。
(蛍光体の量子効率、色度Xの測定)
本発明の蛍光体は、外部量子効率(%)の数値部Wと、色度Xの値Fを用いて、I=(0.7333×F+0.05)×100の式から算出される指標値Iとの数的大小関係を規定することにより、輝度の向上を見出すに至った発明であり、実施例1〜3及び比較例1〜3の、波長445nmの青色光で励起した時の蛍光特性、即ち、蛍光体の内部量子効率、外部量子効率、色度Xを、一般的に知られている分光光度計に積分球を搭載した測定システムを用いて評価した。即ち、反射率99%の標準反射板(スペクトラロン、Labsphere社製)が、その側面開口部(φ10mm)にセットしてある積分球(φ60mm)内に、発光光源であるXeランプから、445nmの波長に分光した単色光を光ファイバーにより導入し、前記標準反射板からの反射光のスペクトルを、分光光度計(MCPD−7000、大塚電子社製)により測定した。なお本測定に際し、測定時の環境温度は25±2℃とし、450〜465nmの波長範囲のスペクトルから励起光フォトン数(Qexとする)を得た。次に、表面が平滑になるように実施例1の蛍光体サンプルを充填した凹型セルを積分球の開口部にセットし、波長445nmの単色光を照射して、励起の反射光及び蛍光のスペクトルを分光光度計により測定した。得られたスペクトルデータから励起反射光フォトン数(Qrefとする)及び蛍光フォトン数(Qemとする)を得た。なお、励起反射光フォトン数は、励起光フォトン数と同じ波長範囲で、蛍光フォトン数は、465〜800nmの波長範囲で求めた値である。得られた三種類のフォトン数から、内部量子効率(%)=Qem/(Qex−Qref)×100、外部量子効率(%)=Qem/Qex×100の値を算出した。なお、本発明でいう外部量子効率(%)の数値部Wとは、前記外部量子効率(%)の数値そのものを指している。また、色度Xの値Fは蛍光スペクトルの465nmから780nmの波長範囲のデータから、JIS Z 8724に準じ、JIS Z 8701で規定されるXYZ表色系におけるCIE色度座標x値(色度X)を算出した。なお本測定で、緑色蛍光体標準試料(NIMS Standard Green、lot NSG1301、株式会社サイアロン販売)を測定した場合、外部量子効率は55.6%、内部量子効率74.8%、色度Xは0.356であった。実施例2、3、比較例1〜3の各蛍光体サンプルについても同様の方法で、内部量子効率、外部量子効率、色度Xの値をそれぞれ求め、表1〜3に併せて示した。また、外部量子効率(%)の数値部Wと、色度Xの値Fを、I=(0.7333×F+0.05)×100の式に代入して算出した指標値Iとの大小関係を比較し、その結果を併せて表1〜3に記載した。なお、表1〜3はそれぞれ同じ色度のものを比較している。
(発光素子の作製と輝度の評価)
実施例1〜3及び比較例1〜3のそれぞれの蛍光体と、KSiF:Mn赤色蛍光体(KSF)(KR−101G、デンカ社製)とを組み合わせ、白色LED化した場合に色度X0.272、色度Y0.278となる割合でビニル袋内で混合し、蛍光体混合物を得た。各蛍光体混合物2.5gに対して、シリコーン樹脂(OE6656、東レダウコーニング社製)47.5gをさらに加え、自転公転式の混合機(あわとり練太郎(登録商標)ARE−310、シンキー社製)で両者を混合し、蛍光体樹脂混合物を得た。実施例1、2及び比較例1、2の蛍光体をそれぞれ含む、前記の各蛍光体樹脂混合物は、マイクロシリンジを用い、発光ピーク波長が448nmで、表面寸法が1.0mm×0.5mmである未封止状態(但し、電極配線は済み)のLEDチップの表面上にポッテイングし、その後シリコーン樹脂を150℃で硬化させた後、さらに110℃で10時間のポストキュアを実施して封止し、実施例1〜3及び比較例1〜3の発光素子とした。発光素子はそれぞれ10個作製した。前記発光素子にそれぞれ通電し、それらの全光束を測定し、その結果を表1〜3に示した。なお比較例1の発光素子の全光束の値(平均値)は、実施例1の発光素子の全光束の値(平均値)を100%としたときの相対値、比較例2の発光素子の全光束の値(平均値)は、実施例2の発光素子の全光束の値(平均値)を100%としたときの相対値、比較例3の発光素子の全光束の値(平均値)は、実施例3の発光素子の全光束の値(平均値)を100%としたときの相対値で示した。その結果、同じ色度Xを有する蛍光体にて比較したとき、本発明で規定するW>Iの関係を満たす蛍光体の方が輝度が高く、この蛍光体を用いた発光素子及び発光装置がより高い全光束が得られることが分かった。
表1〜3に示した結果から、本発明の実施により、より輝度の高いγ−AlON系緑色蛍光体、前記蛍光体を含む発光素子、及び前記発光素子を用いた発光装置を提供することが可能であることが示された。
Figure 2018109077

Figure 2018109077

Figure 2018109077

Claims (8)

  1. 立方晶スピネル型AlON結晶と同一の結晶構造を有する母体結晶に、元素M(但し元素Mは、Mn、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Tm、Ybから選ばれる1種以上の元素)と、元素A(但し元素Aは、元素MおよびAl以外の1種以上の金属元素)とが固溶している緑色蛍光体で、外部量子効率(%)の数値部Wと、色度Xの値Fを用いて、I=(0.7333×F+0.05)×100の式から算出される指標値Iとが、W>Iである関係を満たす緑色蛍光体。
  2. 内部量子効率が70%以上である、請求項1記載の緑色蛍光体。
  3. 組成式がMaAbAlcOdNe(但し、Mは元素M、Aは元素A、Alはアルミニウム、Oは酸素、Nは窒素であり、a+b+c+d+e=1を満たす)で示され、0.00001≦a≦0.1である、請求項1または2記載の緑色蛍光体。
  4. 組成式がMaAbAlcOdNe(但し、Mは元素M、Aは元素A、Alはアルミニウム、Oは酸素、Nは窒素であり、a+b+c+d+e=1を満たす)で示され、0.001≦b≦0.40である、請求項1〜3いずれか一項記載の緑色蛍光体。
  5. 元素MがMnである、請求項1〜4いずれか一項記載の緑色蛍光体。
  6. 元素Aが少なくともMgを含む、請求項1〜5いずれか一項記載の緑色蛍光体。
  7. 請求項1〜6いずれか一項記載の緑色蛍光体を用いた発光素子。
  8. 請求項7記載の発光素子を用いた発光装置。
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