JP2019101299A - 光偏向装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】平面光導波路回路を利用した簡易な構造の光偏向装置について、二次元的な制御が可能な光偏向装置を提供する。【解決手段】光偏向装置10は、正方格子状に4×4に二次元配列されて放射部20を構成する放射素子12と、放射素子12のそれぞれに放射部20の外から接続する光導波路11を備える。放射素子12およびこれに接続する光導波路11の部分は、2×4ずつに二分されてx方向中心で対称に、一定の角度Hに傾斜して設けられている。この角度Hは、放射部20のx方向における片側半分の放射素子12の配列数2より、0°<H≦tan-1(1/2)<90°で表される。【選択図】図3

Description

本発明は、光フェーズドアレイ技術を用いた光偏向装置に関する。
空間光通信や距離センサ、レーダー、立体ディスプレイ等への応用を目的に、ビームの方向を制御するデバイス(光偏向装置)の研究開発が進められている。特に、光フェーズドアレイを用いたものは、機械的な操作なしでビームを掃引することができることから、小型・軽量なデバイスに応用できるものと期待されている。このような光偏向装置は、複数本の光導波路を基板上に並設した平面光導波路回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)を利用し、これに光導波路毎の光の位相調整手段を備えることで実現することができる。光の位相調整手段は、例えば、光導波路を両面や両側から挟んで電界を印加する一対の電極(特許文献1)や熱を加える抵抗ヒータである。光導波路のそれぞれは、電界の印加や加熱によって屈折率が変化し、伝播する光の位相を変化させる。このような構造により、光偏向装置は、光導波路の一端から光を入力されると、それぞれの他端から出射した様々な位相の光が合成されて、光導波路の延設方向(光導波路方向)を軸に所望の角度に偏向したビームを出力する。光偏向装置は、光導波路の本数が多いほど、そして光導波路(出力側の端)のピッチが狭いほど、性能指標である解像点数が高くなる。
また、光導波路にグレーティングカプラを設けることにより、光がグレーティングカプラの表面から光導波路に出入りすることができる(非特許文献1,2)。そこで、光導波路の出力側にグレーティングカプラを形成してこれを放射素子(エミッタ)として、基板に対して垂直等の非平行な所定の方向に出射することにより、光導波路の並設方向(光導波路幅方向)のみの一次元的な偏向制御から、二次元的な制御が可能な光偏向装置が開発されている。例えば、非特許文献3によれば、各々の放射素子からの出射角を二方向それぞれに調整することで、基板上に並設した光導波路で二次元的な制御が可能となる。また、非特許文献4には、二次元配列した放射素子の各々の光の入力側に一対の電極を備えることで、64×64の大型の光偏向装置を実現している。また、非特許文献5では、並設した16本の光導波路について、先端の放射素子の配置を段階的にずらすことを4本ごとに繰り返すことにより、放射素子が4×4に二次元配列される。
特許第3512429号公報
Ralf Waldhausl, Bernd Schnabel, Peter Dannberg, Ernst-Bernhard Kley, Andreas Brauer, Wolfgang Karthe, "Efficient coupling into polymer waveguides by gratings", Applied Optics, Vol.36, No.36, pp.9383-9390, Dec 1997 Dirk Taillaert, Frederik Van Laere, Melanie Ayre, Wim Bogaerts, Dries Van Thourhout, Peter Bienstman, Roel Baets, "Grating Couplers for Coupling between Optical Fibers and Nanophotonic Waveguides", Japanese Journal of Applied Physics, Vol.45, No.8A, pp.6071-6077, 2006 J. K. Doylend, M. J. R. Heck, J. T. Bovington, J. D. Peters, L. A. Coldren, J. E. Bowers, "Two-dimensional free-space beam steering with an optical phased array on silicon-on-insulator", Optics Express, Vol.19, No.22, pp.21595-21604, Oct 2011 Jie Sun, Erman Timurdogan, Ami Yaacobi, Ehsan Shah Hosseini, Michael R.Watts, "Large-scale nanophotonic phased array", Nature, Vol.493, pp.195-199, Jan 2013 Firooz Aflatouni, Behrooz Abiri, Angad Rekhi, Ali Hajimiri, "Nanophotonic projection system", Optics Express, Vol.23, No.16, pp.21012-21022, Aug 2015
非特許文献3に記載された構造では、光導波路方向を軸に放射素子からの出力角を制御するためには、入力する光の波長を変化させる必要があり、実質的に一次元の制御しかできない。非特許文献4に記載された構造では、光導波路の位相調整部分が放射素子の配列ピッチ内に収まるように極めて短く、位相を変化させるために屈折率の変化量を大きくする必要があり、そのための電力消費量が増大する上、電力供給のための配線が微細かつ複雑になる。非特許文献5に記載された構造では、光導波路の並設ピッチに対して、並設方向における放射素子の配列ピッチが配列数倍(4倍)と広くなるので、放射素子の数が多くなると偏向角の制御範囲がさらに狭くなり、また、放射素子が平行四辺形に配列されていることにより出力されるビームの形状が傾斜した楕円形となって、MTF(変調伝達関数:Modulated Transfer Function)が低下する。
本発明は前記問題点に鑑み創案されたものであり、簡易な構造で、二次元的な制御が可能な光偏向装置を提供することを課題とする。
すなわち本発明に係る光偏向装置は、放射素子をxy面に(M×N)配列してなる放射部と(M,Nはそれぞれ2以上の自然数)、一端に前記放射素子のそれぞれを接続する(M×N)本の光導波路と、前記光導波路毎に当該光導波路を伝播する光の位相を調整する位相調整手段と、を備え、前記(M×N)本の光導波路の他端から光を入力されて、xy面に対して非平行な方向にビームを前記放射部から出力するものであって、前記放射部は、それぞれの前記放射素子の中心がx方向とy方向とに沿った格子状に配置され、前記光導波路が、前記一端側に、x方向に対して、下式(1)で表される一定の角度Hで傾斜した直線状に形成された傾斜部を有する構成とする。
0°<H≦tan-1[(dy/dx)/M]<90° ・・・(1)
(dx:前記放射部のx方向における放射素子のピッチ、dy:前記放射部のy方向における放射素子のピッチ、M:前記放射部のx方向における放射素子の配列数)
かかる構成により、光偏向装置は、矩形格子状に配列された放射素子により、出力されるビームの形状が傾斜せず、また、それぞれの放射素子に接続する光導波路を配列数等に基づいた所定の角度で傾斜させて並設することにより、放射素子をより狭い間隔で配列することができる。
本発明に係る光偏向装置によれば、簡易な構造であって、偏向制御範囲を狭くせず、かつ消費電力量を増大させずに、等方的な形状のビームの二次元的な制御が可能となる。
本発明に係る光偏向装置の外観図である。 図1に示す光偏向装置の構造を説明する模式図であり、(a)は光導波路の幅方向の、(b)は光導波路方向の、光導波路の位相調整領域における断面図である。 本発明の第1実施形態に係る光偏向装置の放射部の平面図である。 本発明に係る光偏向装置の放射部の放射素子の構造を説明する模式図である。 本発明の第2実施形態に係る光偏向装置の放射部の平面図である。 本発明の第3実施形態に係る光偏向装置の放射部の平面図である。 本発明の第4実施形態に係る光偏向装置の放射部の部分平面図である。 図7に示す光偏向装置の構造を説明する模式図であり、放射部とその近傍の部分の斜視断面図である。 図7および図8に示す光偏向装置の製造方法を説明する模式図であり、光導波路の幅方向の断面図である。 シミュレーションによる、本発明に係る光偏向装置から出力されるビームのパターン像であり、(a)は偏向角0°、(b)はx方向の最大偏向角、(c)はy方向の最大偏向角である。
本発明に係る光偏向装置を実現するための形態について、図面を参照して説明する。
本発明に係る光偏向装置は、可視光放射や赤外線通信等を行うものであり、スキャニングデバイスやレーザープリンタ等に適用される。図面に示す光偏向装置およびその要素は、明確に説明するために、大きさや位置関係等を誇張していることがあり、また、形状や構造を単純化していることがある。
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態に係る光偏向装置10は、図1に示すように、16個の放射素子12を(4×4)に配列してなる放射部(合成放射部)20と、末端に放射素子12のそれぞれを接続する16本の光導波路11と、光導波路11毎に当該光導波路11を伝播する光の位相を調整する一対の電極4,5(位相調整手段)と、を備え、放射素子12のそれぞれの中心がx方向とy方向とに沿った正方格子状に配置され、光導波路11の放射素子12に接続する部分(光出力部1o、図3参照)が、x方向に対して一定の角度H(0°<H<90°)で傾斜して直線状に形成された構造である。ここでは説明を簡潔にするために、光偏向装置10が4×4の16個の放射素子12を備える構成で例示している。そして、光偏向装置10は、光導波路11の先端から光を入射されて、放射部20から+z方向(真上)を中心とした所望の方向へビーム(出力光)Loを出力する。光偏向装置10は、16本の光導波路11にその先端から光を入射するために、外部から入力光Liを入力されるように光偏向装置10の側面に先端が露出して設けられた光入力部1i、および光入力部1iから16本の光導波路11の先端に分岐して接続する分配器1dを備え、さらに、光導波路11およびこれに接続する放射素子12等の周囲を埋めるクラッド層3、ならびにすべての部品を最上層で支持する基板6を備える。詳しくは、図2に示すように、光偏向装置10は、下から、電極5、クラッド層3、光導波路11、クラッド層3、電極4、基板6、の順に配置されている。また、光偏向装置10は、平面(xy面を指す)視で長方形の平板形状であり、長手方向をy方向として、x方向に(y軸)対称(左右対称)な構造である。以下、本実施形態に係る光偏向装置を構成する各要素を詳細に説明する。
(光入力部、分配器)
光入力部1iは、光導波路11を伝播する光を外部から入力するための入力ポートであり、光偏向装置10の側面(端面)の1箇所、図1ではy方向の一端側の側面の中心に、露出して形成される。光偏向装置10は、この光入力部1iの端面に、赤外線等の所定の波長の光源(図示省略)を対向させて使用される。光源としては、レーザー光源が好ましく、あるいは発光ダイオード(LED)等の一般光源を適用することもできる。光偏向装置10は、さらに必要に応じて、光源と光入力部1iの間に、ボールレンズやシリンドリカルレンズ等の光学素子(図示省略)が設けられる。光偏向装置10はさらに、その他の光学素子として、光入力部1iにおける入射光Liの偏光を特定方向に揃えるために、光の偏光方向を保持する偏波保持ファイバを光源に接続し、あるいは、光入力部1iに入射する光の偏光方向を選別するフィルタを設置することが好ましい。入射光Liの偏光方向については、後記の光導波路11の説明において説明する。分配器1dは、1本の光入力部1iから入力された光をすべての(16本の)光導波路11に等分配する光学素子であり、公知の構造を適用することができる。具体的には、図1に示すような、光を2分岐ずつ分配する3dBカプラ(結合器)や、多モード干渉(MMI:Multi Mode Interference)型カプラと呼ばれる1入力多出力の光ビームスプリッタが挙げられる。光入力部1iおよび分配器1dは、光導波路11、さらに放射素子12と同一の光学材料で連続して一体に形成され(適宜まとめて、コア層1と称する)、その材料については、後記の光導波路11の説明において記載する。
(光導波路)
光導波路11は、先端(光の入射側を指す)に分配器1dが、末端(光の出射側を指す)に放射素子12がそれぞれ接続され、光入力部1iおよび分配器1dを経由して入力された光Liを伝播させて放射素子12へ導く。また、光導波路11は、屈折率が変化することによって、伝播する光の位相を調整する。そのために、光導波路11は、入力光Liの波長λの光を透過させ、波長λでの屈折率が電気的なまたは熱的な手段により変化させられる電気光学(EO)材料や熱光学(TO)材料からなる。以下、本明細書においては、別途記載のない限り、光とは波長λの光を指し、屈折率とは波長λの光の屈折率を指す。このような材料は公知の光偏向装置のコア層の材料が適用され、無機材料としては、LiNbO3(LN)、LiTaO3(LT)、(Pb,La)(Zr,Ti)O3(PLZT)、NH42PO4(ADP)、KH2PO4(KDP)、Bi12SiO20(BSO)、Bi12GeO20(BGO)、TiO2,SrTiO3,GaAs,InP,Siのような誘電体材料、半導体材料等から選択される一種または二種以上の混合物(例えばTi拡散LN結晶)が挙げられる。有機材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)や非晶質ポリカーボネート(APC)等の光を透過するポリマーに電気光学(EO)効果を有する低分子化合物(EO色素分子)を分散させたEOポリマーが挙げられる。EO色素分子は、アゾ色素やメロシアニン系色素、例えば、4−[N−(2−ヒドロキシエチル)−N−エチルアミノ]−4'−ニトロアゾベンゼン(DR−1:Disperse Red 1)、2−メチル−6−(4−N,N−ジメチルアミノベジリデン)−4H−ピラン−4−イリデンプロパンジニトリル、4−{[4−(ジメチルアミノ)フェニル]イミノ}−2、5−シクロヘキサジエン−1−オン、およびトリシアノフラン(TCF)をアクセプタとするFTC(Furan-Thiophene Chromophore)等が挙げられる。
光導波路11は、基板6上(xy面)に概ね一定の太さ(幅および厚さ)の線状に形成される。光導波路11は、本実施形態においては、図2に示すように、断面が略正方形であるが、幅または厚さの方が大きい長方形や台形等でもよく、特に規定されない。また、光導波路11の断面形状、幅および厚さは、局所的に変化していてもよい。光導波路11は、光を伝播させるために、径(幅、厚さ)を(λ/2nMIN)以上とすることが好ましい。なお、nMINは、光導波路11の最小屈折率で、後記するように、電界を印加されて位相の変化量が最大となるときの屈折率である。また、隣り合う光導波路11,11は、一方からクラッド層3に漏れた光が他方まで到達しない程度に間隔を空けることが好ましく、具体的には、幅やクラッド層3との屈折率の差によって決まる実効幅(光の強度が中心に対して13.5%まで減少する幅)以上の間隔とすることが好ましい。光導波路11は、主に直線状に形成され、必要に応じて曲線部分を有するが、伝播する光の損失(屈曲損)を抑制するように曲げ半径が十分に大きいことが好ましい。
EO材料からなる光導波路11は、第1電極4と第2電極5から厚さ方向(z方向)に印加される電界Eの強さに応じて屈折率nが変化して、この領域を伝播する光の位相を変化させる。光導波路11の電極4,5に挟まれた領域を、位相調整領域1tと称する。光偏向装置10において、位相調整領域1tは、光導波路11の光の入射側近傍のy方向に沿った直線状の部分に設けられ、第1電極4の形状に合わせて互いの間隔を十分に空けている。光導波路11の屈折率を、電界を印加されていないときにおいてn0とすると、電界Eを印加されたときの変化量Δnは、下式(2)で表される。r33は、光導波路11(コア層1)を構成するEO材料の電気光学(EO)効果の高さを示す物性値EO係数である。そして、光が光導波路11の長さLtの位相調整領域1tを伝播する際の位相の変化量φは、下式(3)で表される。必要な位相の変化量、例えば最大でπ(半波長分)が得られるように、光導波路11の屈折率n0およびEO係数r33ならびに入力光Liの波長λに応じて、電界Eや位相調整領域1tの長さLtを設計する。
Δn=−0.5n0 333E ・・・(2)
φ=nLt/λ ・・・(3)
ここで、多くのEO材料、具体的にはEOポリマー全般やLN,LT,PLZT等においては、式(2)に示す屈折率の変化は電界Eに沿った方向にのみ生じる。すなわち、図2に示すように、位相調整領域1tにおいて第1電極4と第2電極5が光導波路11を挟んで上下に配置されているので、光導波路11の印加電圧による屈折率変化はz方向に生じる。そこで、光導波路11に入射する光がz方向に主たる電界ベクトルを有するように、前記したように、光偏向装置10は、光源と光入力部1iの間に偏波保持ファイバや偏光フィルタのような光学素子を設置して、入射光Liの偏光が特定方向に揃えられることが好ましい。また、第1電極4と第2電極5が光導波路11を挟んでx方向に配置されている場合には、印加電圧による屈折率変化はx方向に生じるため、入射光Liがx方向に主たる電界ベクトルを有するように、前記光学素子を設置することが好ましい。
図3に示すように、放射部20に二次元配列された放射素子12の、最外列以外も含めたそれぞれに光を入力するために、光導波路11は、放射部20に、そのx方向外側から、x方向に対して一様な角度H(0°<H<90°)で傾斜して進入して、放射素子12に接続する。光導波路11の、この角度Hで傾斜した直線状の領域を、光出力部(傾斜部)1oと称する。光出力部1oは、一様な角度で傾斜した直線状に形成されることにより、効率的に並設されて、その並設ピッチaに対して放射素子12の配列ピッチdx,dyをより狭くすることができる。なお、図3では、基板6は輪郭のみを表し、クラッド層3は省略する。また、放射部20に配列された16個の放射素子12は、x方向に二分して、すなわち(2×4)個ずつがx方向中心(図3に一点鎖線で表す)で対称に傾斜して設けられている。したがって、光導波路11の光出力部1oも、8本ずつx方向両外側から放射素子12に接続する。そのため、光導波路11は、等間隔で並設されたy方向に沿った直線状の位相調整領域1tから、屈曲して光出力部1oへ連続する。光出力部1oの傾斜角Hや配置については、後記の放射部20の説明において放射素子12と共に詳細に説明する。
なお、光導波路11は、光出力部1o以外の、すなわち位相調整領域1t等のxy面内における向き(光導波路方向)は特に規定されず、放射素子12の配列方向(x,y方向)に制限されない。光入力部1iおよび分配器1dの向きおよび配置も同様であり、さらには、光偏向装置10も平面視形状がy方向を長手とする長方形に規定されない。
(放射素子)
放射素子12は、xy面上に設けられた光導波路11で伝播された光を上方(+z方向寄り)へ向けて出力するために設けられ、光導波路11(光出力部1o)の末端に接続される。そのために、前記したように、放射素子12は光導波路11と共にコア層1の一部として連続して形成されていて、光導波路11の末端近傍が放射素子12の形状に加工されているともいえる。このような放射素子12は、図4に示すように、光の出力面である上面に、放射素子12に入射した光liの進行方向(光導波路11の光出力部1oの向き、H方向と称する)を横切るスリットを2以上(図3および図4では、7つ)形成された公知の構造のグレーティングカプラである。なお、図3においては、放射素子12のスリット部分に網掛けを付して表す。放射素子12は、下式(4)で表されるように、スリットの周期Λに応じて、z方向からH方向に角度θ傾斜した方向へ光loを出射する。neffは、放射素子12(コア層1)の実効屈折率であり、等価屈折率法によって、放射素子12の屈折率n0とクラッド層3の屈折率nclから算出される。本実施形態においては、θ=0°(+z方向)となるように、放射素子12が設計される。放射素子12の長さ(H方向長)は、スリットの周期Λの倍数であって、(dx×dy)角に収まる範囲であればよく、光loの光量を多くするために長いことが好ましい。また、光偏向装置10においては、放射素子12は、幅、およびスリット部分以外の厚さが光導波路11と同一に形成されている。放射素子12は、光出力部1oに連続した直線状に同じ幅で形成されることにより、配列ピッチdx,dyをより狭くすることができる。放射素子12の放射部20における配置等については、後記の放射部20の説明において説明する。
θ=sin-1(neff−λ/Λ) ・・・(4)
(クラッド層)
クラッド層3は、光導波路11等のコア層1を被覆して設けられ、適宜、コア層1の下側を下部(アンダー)クラッド、コア層1と同じ高さ位置およびコア層1の上側(ビームの出力側)を上部(オーバー)クラッドと称する。クラッド層3は、入力光Liの波長λの光においてコア層1よりも屈折率の低い誘電体や絶縁体からなり、さらにコア層1との屈折率の差が大きいことがコア層1の光閉込め効果を高くするので好ましい。したがって、クラッド層3は、コア層1を構成するEO材料の屈折率、さらにその形成方法等に応じて選択される。具体的には、SiO2、Al23、Si窒化物(Si34等)、MgF2のような半導体素子の絶縁体に適用される無機化合物、ガラス、樹脂、ならびに前記の光導波路11(コア層1)に挙げた材料から選択される。例えば、コア層1がEOポリマーからなり、クラッド層3を樹脂で形成する場合には、先に形成したコア層1または当該クラッド層3が溶解しないように、光硬化型樹脂のような無溶剤の樹脂、水溶性の樹脂、または架橋性ポリマーのような硬化後に有機溶剤に不溶となる樹脂を選択する。また、クラッド層3は、光偏向装置10の全体で同一材料でなくてもよく、アンダークラッドとオーバークラッド、さらにオーバークラッドにおけるコア層1の高さ位置と上側とで異なる材料を適用することができ、また、空隙(空気、不活性ガス、真空等)を含んでいてもよい。
(電極)
第1電極4および第2電極5(適宜まとめて、電極4,5と表す)は、光導波路11毎にその屈折率を変化させる位相調整手段である。本実施形態において、第1電極4および第2電極5は対となって、光導波路11毎にその位相調整領域1tで垂直方向(z方向、上向きまたは下向き)に所望の強さの電界を印加するために設けられる。光偏向装置10においては、第1電極4が、それぞれの光導波路11の位相調整領域1tにおける上側に、クラッド層3を挟んで設けられ、そのため、幅が光導波路11以上のy方向に沿った帯状に形成される。一方、第2電極5は、すべての光導波路11の位相調整領域1tを内包する1つの膜状に形成され、クラッド層3を挟んで光導波路11の下側に設けられる。したがって、第2電極5はすべての光導波路11の共通の電位(例えば0V)であり、これに対して第1電極4は、それぞれ個別の可変電源の電位に接続される。また、平面視で、光導波路11の、第1電極4と第2電極5が共に重複する領域が位相調整領域1tであり、その長さ(ここではy方向長)がLtになるように第1電極4および第2電極5が設計される。光偏向装置10においては、図2(b)に示すように、第2電極5の光導波路方向(y方向)長がLtであり、第1電極4は、第2電極5に対して光導波路方向に長く形成されている。第1電極4はさらに、外部電源(可変電源)との接続のために、図1に示すように、位相調整領域1t外でx方向外側へ屈曲させたL字型に形成されている。第1電極4および第2電極5は、後記するそれぞれの材料の抵抗や印加する電界の強さ等に応じた寸法および間隔に形成される。
第1電極4および第2電極5は、Cu,Al,Au,Ag,Ta,Cr,Pt,Ru等の金属やその合金のような一般的な金属電極材料、また、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:IZO)、インジウム−スズ酸化物(Indium Tin Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化アンチモン−酸化スズ系(ATO)、酸化亜鉛(ZnO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化インジウム(In23)等の導電性酸化物、あるいはSi等の半導体で形成することができ、これらの材料の2種類以上を積層してもよい。これらの材料は、スパッタリング法、真空蒸着法、塗布法等の、当該材料に応じた公知の方法によって成膜される。さらに、第1電極4は、フォトリソグラフィ、およびエッチングやリフトオフ法等によって、所定の形状に加工される。一方、後記の光偏向装置の製造方法にて説明するように、コア層1やクラッド層3を形成した後に形成される第2電極5は、成膜や加工の条件(温度等)が、コア層1等の特性を損なわないような材料を選択する。
(基板)
基板6は、光導波路11等のコア層1、クラッド層3、および電極4,5等を形成するための、また、光偏向装置10全体を支持するための土台である。そのために、基板6は、公知の基板材料、具体的には、表面に熱酸化膜を形成されたSi(シリコン)基板、SiO2、Si窒化物(Si34等)、ガラス、コア層1やクラッド層3に挙げた結晶材料、メチルアクリレート等の樹脂から、前記コア層1等の成膜、加工条件に適応したものが選択される。さらに、本実施形態に係る光偏向装置10は、以下の光偏向装置の製造方法で説明するように、上面(ビームの出力側)を下に向けて製造されたものをひっくり返して使用されるため、基板6が最上層に設けられる。したがって、放射部20から出力されるビームLoを遮らないように、基板6は、光透過率の高い材料が選択され、例えば、光が赤外線であれば、石英や、特に赤外線の透過率の高いガラスが挙げられる。
(放射部)
放射素子12は、x方向とy方向とに二次元配列され、すなわち矩形格子状に配列されて放射部20を構成する。詳しくは、放射素子12のそれぞれの中心が矩形格子状に配置されるように配列されている。また、本実施形態に係る光偏向装置10においては、x方向のピッチdxとy方向のピッチdyとが同一(dx=dy=d)の正方格子状に配列されている。図3では、放射部20の上半分の8個(4×2)の放射素子12の中心間を結ぶ破線を示す。放射部20は、下式(5)で表されるように、放射素子12の配列ピッチdが狭いほど、出力するビームの偏向角ψを位相の変化量φに対して大きくすることができる。ただし、後記するように、放射素子12の配列ピッチdの最小値は、放射素子12および光出力部1oの幅方向(H方向に直交する方向)のピッチaによって収束する。
ψ=sin-1[λφ/(2πd)] ・・・(5)
また、前記したように、16個の放射素子12は、x方向に(2×4)個ずつ二分されて、x方向中心(図3に一点鎖線で表す)で対称に傾斜して設けられている。放射素子12は、光導波路11の光出力部1oから連続して形成されているため、平面視で、光出力部1oと同じ線幅の細長い長方形で、x方向に対して一定の角度H(0°<H<90°)傾斜している。放射素子12は、このような形状および配置とすることによって、他の放射素子12やそれに接続する光出力部1oと一定以上の間隙で離間しつつ、放射部20に効率よく配列される。また、光出力部1oを狭い領域内で屈曲させる必要がないので、小さな曲げ半径による光の損失がない。この傾斜角Hは、放射部20における、放射素子12のx方向の配列数M、およびx,y各方向のピッチdx,dyに基づいて、下式(1)で表される範囲に設計される。
0°<H≦tan-1[(dy/dx)/M]<90° ・・・(1)
また、8本ずつ並設された光出力部1oの、幅方向すなわちx方向に対して角度(90°−H)傾斜した方向におけるピッチaは、下式(6)で表される。傾斜角Hが大きいほど、放射素子12の配列ピッチdx(=d)に対して光出力部1oの並設ピッチaを広くすることができる。言い換えると、入力光Liの回折限界やコア層1の加工精度等のために、狭ピッチ化に限界のある光出力部1oの並設ピッチaに対して、放射部20を高精細化し易い。
a=dx・sinH ・・・(6)
本実施形態において、放射部20は、16個の放射素子12が4×4で配列されているが、x方向に二分して両外側から光出力部1oを接続しているため、M=4/2=2となる。また、放射素子12が正方格子状に配列されているから、dy/dx=1である。したがって、H≦tan-1(1/2)≒26.565°となる。放射部20は、放射素子12および光出力部1oをx方向に二分して配置することで、x方向の配列数Mを半減して傾斜角Hを大きくすることができる。傾斜角Hを式(1)における最大値HMAXとすると、図3に示すように、すべての光出力部1oがピッチaで均等に並設された効率的な構造となる。本実施形態においては、HMAX=26.565°であるので、a=0.447dとなり、光出力部1oのピッチaが放射素子12の配列ピッチdの1/2弱で収まる。例えば、λ=1.55μmとして、d=3λ=4.65μmの放射部20を設計するとき、a=2.08μmとなる。したがって、光導波路11を幅1.0μmに設計することができる。なお、傾斜角Hを最大値HMAXよりも小さく設計すると、光導波路11の光出力部1oがM本ずつピッチaで並設され、M本ごとに間隔が広く空けられる(後記図6に示す第3実施形態参照)。
ここで、放射素子12は、光導波路11からH方向に入射した光liの一部が、上面から光loとして出射せずに、そのままH方向に直進して末端面から出射する。そのため、光偏向装置10のように、放射素子12がx方向中心で二分されて対称に配列された放射部20である場合には、傾斜角Hが小さいと、放射素子12の末端面からH方向に出射した光が、クラッド層3を伝播し、対向する放射素子12や光出力部1oに進入し易く、位相に影響を与える虞がある。具体的には、傾斜角Hが5°超であることが好ましく、10°以上であることがより好ましい。
(変形例)
光偏向装置10は、放射部20における放射素子12の配列数が多いほど、ビームLoの広がり角が小さくなって解像点数が向上するが、x方向の配列数Mが多いと傾斜角Hが小さくなって配列ピッチdの微細化が困難になる。したがって、放射素子12の配列数が2方向で異なる場合は、少ない方をx方向にして設計することが好ましい。また、光偏向装置10は、dx≠dyの非正方格子の矩形格子配列とすることもできる。この場合、後記第2実施形態で説明するように、dx<dyとなるようにxy方向を設定することが好ましい。
第1実施形態に係る光偏向装置10においては、前記したように、放射素子12の傾斜角Hが小さいと、放射素子12の末端面からH方向に直進して出射した光が、放射部20のx方向中心を挟んで対向する放射素子12に進入し得る。しかし、例えば放射素子12のx方向の配列数Mが多いと、傾斜角Hを小さく設計せざるを得ない。そこで、放射素子12の末端面から出射される光を抑制するために、入力光Liの波長λの光の吸収率の高い(透過率の低い)材料からなる光吸収膜を末端面に設けることが好ましい。または、放射部20のx方向中心線に沿って、前記光吸収膜をクラッド層3に埋め込んでもよい。また、真上(+z方向)に光loを出射する(θ=0°)放射素子12においては、末端面を反射面として、放射素子12内で光を逆向き(−H方向)に伝播させる構造とすることができる。そのために、放射素子12の末端面をH方向に垂直な面に形成し、さらに、末端面に接するクラッド層3が放射素子12(コア層1)よりも大幅に低い屈折率となるように、例えばこの部分を屈折率がほぼ1.0の空隙に形成する。放射素子12は、このような構造とすることにより、上面から出射する光loの光量が増大する。あるいは、光loの出射角θにかかわらず、光が放射素子12の末端面で屈折して出射して、クラッド層3内を傾斜角Hよりも大きな角度で進行したり下方へ進行するように、末端面を平面視または断面視で斜めに切欠いた形状に形成してもよい。
光偏向装置10は、放射部20の放射素子12および光出力部1oを、x方向中心で対称に傾斜して配置しているが、すべての放射素子12を同じ方向に傾斜して配置することもできる。具体的には、図3において、放射部20の右半分に配列された放射素子12が、左半分と同じ右上(左下)に傾斜して配置され、放射部20の右側斜め上から光出力部1oがこれら右半分の放射素子12に接続する。すなわち、放射部20のx方向中心を挟んで180°対称な構造となる(図示せず)。このような光偏向装置10においては、光出力部1oの傾斜角Hにかかわらず、放射素子12は、前記したように、末端面から光が出射しないように、または末端面で光を屈折させる構成とすることが好ましい。
(光偏向装置の製造方法)
本実施形態に係る光偏向装置の製造方法について、その一例として、コア層1にEOポリマーを適用し、また、ナノインプリント法で成形する場合を説明する。まず、基板6上に、第1電極4が設けられる領域を空けたパターンのレジストマスクをフォトリソグラフィで形成し、その上からスパッタリング法等で金属電極材料を成膜して第1電極4を形成し、レジストマスクを除去する(リフトオフ)。この第1電極4を形成した基板6の上に、クラッド層3を構成する光硬化性樹脂をスピンコート法等で塗布する。光硬化性樹脂の塗膜に、放射素子12のスリットを含めたコア層1の形状に突出した石英製のモールドを押圧し、紫外線等の所定の波長の光をモールド越しに照射して硬化させた後、モールドを離型する。これにより、コア層1の形状の溝(トレンチ)が形成されたクラッド層3(オーバークラッド)となる。次に、EOポリマーを塗布して、このクラッド層3の溝に充填して硬化させ、コア層1を形成する。さらにその上に、光硬化性樹脂を所定の厚さに塗布して硬化させて、クラッド層3(アンダークラッド)を形成する。クラッド層3の上に、第2電極5が設けられる領域を空けたステンレス板やポリイミドフィルム等からなるマスクを被覆し、その上から導電性材料を含有する塗料を塗布して硬化させて第2電極5を形成した後、マスクを外す。第2電極5を構成する導電性材料は、クラッド層3およびコア層1の耐熱温度以下の処理で形成することのできるものであり、例えば、Agや導電性酸化物の微粒子を有機溶剤に分散させた塗料で形成される。
このように、有機溶剤を塗料に使用せずかつ有機溶剤に不溶な樹脂をクラッド層3に適用することにより、コア層1を形成する際に溶解せず、かつ形成したコア層1を溶解させない。また、クラッド層3のオーバークラッドをナノインプリント法で成形することにより、モールドを作製しておけば、コア層1を、放射素子12のスリットも含めて、少ない工程で容易に形成することができる。モールドは、電子線リソグラフィ等で加工して作製することができる。なお、この製造方法では、放射素子12の下面にスリットが形成されるため、製造時における下側が光偏向装置10におけるビームの出力側となる。
架橋性ポリマーをホストとするEOポリマーを適用する場合には、さらに以下のポーリング(電場配向)処理を行ってEOポリマーのEO効果を発現させる。そのために、クラッド層3には、耐有機溶媒性の他に、ポーリング処理の加熱温度に対する耐熱性を有する、架橋性ポリマーや光硬化性樹脂を適用する。ポーリング処理は、コア層1を構成するEOポリマーのホストポリマーのガラス転移温度近傍に加熱して、この温度でコア層1に電界を印加することにより、EOポリマーの側鎖のEO色素分子の極性を揃え、印加した状態で室温に冷却する。ポーリング処理は、少なくとも光導波路11の位相調整領域1tに施されればよいので、電界の印加には電極4,5を使用することができ、また、例えば2枚の板状の電極(図示せず)を使用して光偏向装置10の両面全体を挟んでもよい。
光偏向装置10は、クラッド層3のオーバークラッドを無機材料で形成することもできる。この場合、一例として、前記のナノインプリント法を用いた製造方法と同様に、オーバークラッドにコア層1の形状の溝(トレンチ)を形成する。コア層1を構成するEOポリマーにもよるが、クラッド層3のオーバークラッドを構成する無機材料には、特に低屈折率、かつエッチングによる加工の容易なSiO2が好ましい。
まず、基板6上に、SiO2を第1電極4と同じ厚さに成膜する。SiO2膜上に、第1電極4の形状に空けたパターンのレジストマスクを形成し、SiO2膜を反応性イオンエッチング(RIE)等でエッチングする。この上から金属電極材料を成膜して、SiO2膜のエッチング跡に埋め込んで第1電極4を形成し、レジストマスクを除去する。これにより、基板6表面に第1電極4と、第1電極4の設けられていない領域のSiO2膜とが形成されて、表面が平坦となる。第1電極4とSiO2膜の上に、クラッド層3のオーバークラッドを構成するSiO2膜を成膜する。
SiO2膜上に、放射素子12のスリット部分を覆うパターンのレジストマスクを形成する。このレジストマスクのパターンは、マージンとして、スリット部分から放射素子12の幅方向両側に、隣り合う放射素子12や光導波路11(光出力部1o)に掛からない程度に張り出していることが好ましい。そして、SiO2膜を放射素子12のスリット深さにRIEでエッチングして、レジストマスクを除去する。次に、SiO2膜上に、コア層1の平面視形状を空けたパターンのレジストマスクを形成して、再びRIEでSiO2膜をエッチングして、放射素子12のスリット部分以外におけるエッチング深さを光導波路11(コア層1)の厚さと同じとし、レジストマスクを除去する。これにより、コア層1の形状の溝(トレンチ)がSiO2膜に形成された、クラッド層3のオーバークラッドとなる。
以降は前記のナノインプリント法を用いた製造方法と同様に、EOポリマーをクラッド層3(オーバークラッド)の溝に充填してコア層1を形成し、コア層1に対応した光硬化性樹脂等でクラッド層3のアンダークラッドを形成し、クラッド層3上に第2電極5を形成する。さらに必要に応じてポーリング処理を行って、光偏向装置10が得られる。なお、基板6上にSiO2を成膜する前に第1電極4をリフトオフ法等で形成してもよく、この場合には、次にSiO2を成膜して、CMP(化学機械研磨:Chemical Mechanical Polishing)法等で第1電極4上のSiO2膜を所定の厚さまで研削し、かつ表面を平坦化する。
クラッド層3のオーバークラッドは、コア層1の上側(製造時における下側)の部分において、SiO2よりもさらに低屈折率のMgF2を適用してもよく、その上に成膜される、コア層1の高さ位置部分を構成するSiO2膜のエッチングストッパ膜とすることができる。そのために、平坦に形成した第1電極4とSiO2膜の上に、MgF2、SiO2を順次成膜して積層する。上のSiO2膜は、光導波路11の厚さと放射素子12のスリット深さとの和を超える厚さに成膜する。そして、1回目のSiO2膜のエッチングで、SiO2膜を光導波路11の厚さになるまでエッチングする。2回目のSiO2膜のエッチングでは、放射素子12のスリット部分以外においてMgF2膜を露出させ、かつ、スリット部分のSiO2膜の残厚をスリット深さとする。エッチングストッパ膜を設けることで、光導波路11の厚さ(クラッド層3の溝の深さ)および放射素子12のスリット深さを制御し易い。
前記のように、クラッド層3のオーバークラッドが、SiO2膜のような十分な耐熱性、耐有機溶剤性の材料で形成されている場合には、エッチングのマスクに、ナノインプリント法で形成した樹脂マスクを使用することができる。この樹脂マスクは、コア層1外のエッチングしない領域を最も厚く、放射素子12のスリット部分をその次に厚く形成する。そして、O2ドライエッチングを行って、樹脂マスクの最薄部(残膜)であるコア層1の平面視形状からスリット部分を除いた領域のみを完全に除去してSiO2膜を露出させる。そして、RIEでSiO2膜をスリット深さ分エッチングし、次に、再びO2ドライエッチングで樹脂マスクのスリット部分のみを完全に除去する。そして、再びRIEでSiO2膜をエッチングすることにより、コア層1の形状の溝が形成される。このように、1つのマスクで放射素子12のスリットも含めたコア層1の形状の溝を形成することができ、工程を低減し、さらに位置合わせが不要となる。
(製造方法による変形例)
前記のように、クラッド層3のオーバークラッドが無機材料で形成されている場合には、コア層1にも無機材料を適用することができる。コア層1の形状の溝を形成したオーバークラッド上に、スパッタリング法や真空蒸着法等によりコア層1の材料を、光導波路11の厚さに成膜して、溝に埋め込む。このように製造されると、放射素子12は、上面(光の出力面)にスリットを形成された部分が下面へ突出する(図8に示す放射素子12A参照)。また、第1電極4は、コア層1やクラッド層3が溶解、変形、変質等しないように形成することができる導電性材料であれば、コア層1およびクラッド層3を形成した後に形成してもよい。すなわち、第2電極5を基板6の表面に形成し、その結果、第1電極4と第2電極5の上下の配置が入れ替わる。
平坦なアンダークラッド上にコア層1を構成する材料を成膜して、これを加工してコア層1に成形してもよい。このように形成されたコア層1は、製造時の上面に放射素子12のスリットが形成されるので、製造時の上側がそのままビームの出力側となり、基板6が最下層に設けられる。したがって、基板6は、波長λの光を透過する材料でなくてもよく、ただし、光導波路11や放射素子12から下方へ漏れた光が反射して放射部20から出射しないように、光反射率が高くない材料を選択することが好ましい。あるいは、基板6に反射膜を設けて、下方へ漏れた光を反射させて光利用効率を向上させることもできる。そのために、放射素子12上面において、反射光が放射素子12から上方へ出射した光と同じ位相になるように、反射光の光路長を調整する。反射膜は、基板6の上面(クラッド層3との界面)または下面に、例えば金属薄膜を蒸着して形成され、または、基板6自体が光反射率の高い材料で形成されていてもよい。光路長は、アンダークラッドの厚さ等、反射膜と放射素子12との距離の設定で調整される。あるいは、反射膜として作用する回折格子を基板6の片面に形成して、回折格子の深さと周期等を調整することで調整される。回折格子は基板6にエッチングなどで形成した微細な周期構造物によって形成することができる。さらに基板6は、金属板等の導電性材料を適用して、第2電極5と一体とすることもできる。この場合、第2電極5は下側でxy面全体に形成されるので、上側に設けられる第1電極4は、光導波路方向長をLtとして、その上に絶縁膜を介して外部電源との接続端子を形成する(図示せず)。
エッチングで加工することの可能なコア層1の材料として、半導体材料等の無機材料や、前記の架橋性ポリマーをホストとするEOポリマーを適用することができる。架橋性ポリマーは、硬化後にレジストの有機溶剤や現像液、剥離液に不溶となるので、レジストマスクを用いてエッチングで加工することができる。
EOポリマーをコア層1に適用した本変形例に係る光偏向装置10は、まず、EOポリマーをコア層1に適用した第1実施形態に係る光偏向装置10と同様に、基板6上に第1電極4を形成し、その上に光硬化性樹脂を塗布して、クラッド層3のアンダークラッドを、第1電極4上において所定の厚さに、かつ表面を平坦に形成して硬化させる。そして、アンダークラッドの上に、コア層1を構成するEOポリマーを所定の厚さに塗布して硬化させる。このEOポリマー膜上に、放射素子12のスリット部分とその両側のマージン部分とを空けたパターンのレジストマスクを形成して、反応性イオンエッチング(RIE)でEOポリマーを放射素子12のスリット深さまでエッチング(ハーフエッチ)した後、レジストマスクを除去する。次に、コア層1の平面視形状のパターンのレジストマスクを形成し、再びRIEでEOポリマーをエッチングしてその下のアンダークラッドを露出させた後、レジストマスクを除去して、コア層1が形成される。この上に、アンダークラッドと同様に樹脂材料を塗布して、クラッド層3のオーバークラッドを形成し、次に、前記実施形態と同様に、クラッド層3の上に第2電極5を形成する。さらに、ポーリング処理を行って、光偏向装置10が得られる。なお、コア層1全体の平面視形状の成形と放射素子12のスリットの形成とは、順序を入れ替えてもよい。
本変形例に係る光偏向装置の製造方法について、コア層1に無機材料を適用しても、同様に、レジストマスクを替えた2段階のエッチングでコア層1を成形する。この場合、クラッド層3の少なくともアンダークラッドも無機絶縁材料で形成することが好ましい。このような光偏向装置10は、第1電極4を形成して第1電極4,4間を無機絶縁材料で平坦にした基板6の上に、アンダークラッド、コア層1のそれぞれを構成する無機材料を順次成膜して製造することができる。あるいは、光偏向装置10は、SOI(Silicon on Insulator)MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)製造用のSi基板(SOI基板)を利用して製造することができる。SOI基板は、MOSFETとなる表層のSiの下に、埋込み酸化膜(SiO2膜)であるBOX(Buried Oxide)層が形成されていて、それぞれコア層1とアンダークラッドとすることができる。また、BOX層の下のSiは、基板6であると共に、xy面全体に形成された第2電極5とすることができる。したがって、成形したコア層1の上に無機絶縁材料を成膜してオーバークラッドとして、その上に光導波路方向長がLtの第1電極4を形成する。あるいは、SOI基板の表層のSiを、コア層1に加えて、位相調整領域1tにおいてコア層1の両側を挟む第1電極4と第2電極5に成形してもよい。
以上のように、本発明の第1実施形態に係る光偏向装置によれば、二次元的かつ広範囲の偏向角の制御が可能となり、また、簡易な構造であるので製造が容易である。
〔第2実施形態〕
第1実施形態に係る光偏向装置は、放射素子を正方格子状に配列して備えているが、用途によってはこれに限られない。また、出力光(ビーム)の制御範囲等によっては、光導波路を二分して両外側から放射素子に接続する構成でなくてよい。以下、第2実施形態に係る光偏向装置について説明する。第1実施形態と同じ要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第2実施形態に係る光偏向装置10Aは、図5に示す放射部20Aにおける放射素子12の配列およびこれに接続する光導波路11の部分を除いて、図1に示す第1実施形態に係る光偏向装置10と同様の構造である。すなわち、光偏向装置10Aは、16本の光導波路11、光入力部1i、光入力部1iからすべての光導波路11に分岐してその一端に接続した分配器1d、光導波路11の他端に接続した放射素子12、光導波路11等の周囲を埋めるクラッド層3、光導波路11を上下からクラッド層3を介して挟む第1電極4と第2電極5、およびこれらを支持する基板6を備える。また、16個の放射素子12は、4×4に二次元配列されて放射部20Aを構成する。なお、図5では、基板6は輪郭のみを表し、クラッド層3は省略する。以下に、放射部20Aについて説明する。
光偏向装置10Aにおいて、16個の放射素子12は、xy方向に4×4の二次元配列され、すなわち矩形格子状に配列されて放射部20Aを構成する。本実施形態においては、x方向のピッチdxとy方向のピッチdyとがdx:dy=3:4の非正方格子状に配列されている。また、光偏向装置10Aにおいて、光導波路11の光出力部1oは、16本すべてが放射部20Aの外側の一方から放射素子12に接続する。すなわち、放射素子12とこれに接続する光出力部1oの16本すべてが平行で、x方向に対して角度H(0°<H<90°)で傾斜し、また、ピッチaで均等に並設されている。
このような放射部20Aにおいて、第1実施形態で説明したように、光出力部1oおよび放射素子12の傾斜角Hは、放射部20Aにおける、放射素子12のx方向の配列数M、およびx,y各方向のピッチdx,dyに基づいて、下式(1)で表される範囲に設計される。また、光出力部1oのピッチaは下式(6)で表される。本実施形態においては、M=4、dy/dx=4/3であるので、H≦tan-1(1/3)≒18.435°となる。また、傾斜角Hは式(1)における最大値HMAXであるから、a=0.316dxである。
0°<H≦tan-1[(dy/dx)/M]<90° ・・・(1)
a=dx・sinH ・・・(6)
このように、放射部20Aはdx<dyの非正方格子配列であるから、放射素子12の配列数Mに対して傾斜角Hが大きく、光出力部1oを両外側へ二分しなくても、配列ピッチdxに対して光出力部1oの狭ピッチ化が抑制される。言い換えると、非正方格子配列においては、配列ピッチの狭い方、すなわち偏向角の制御範囲の広い方をx方向にして設定することが好ましい。なお、第1実施形態で説明したように、配列数が2方向で異なる場合には少ない方をx方向にすることが好ましいが、さらに非正方格子配列においては、式(1)に基づいて傾斜角H(最大値HMAX)がより大きくなるようにxy方向を設定することが好ましい。また、本実施形態においては、16本すべての光導波路11を一方向から放射素子12に接続することにより、光導波路11の位相調整領域1tから光出力部1oまでの長さを抑えて、光偏向装置10Aの平面視サイズを小さく設計することができる。さらに、光出力部1oの傾斜角Hにかかわらず、放射素子12の末端面からH方向に直進して出射した光が、他の放射素子12に進入することがない。
本実施形態に係る光偏向装置10Aは、コア層1の材料等に応じて、第1実施形態で説明した製造方法で製造することができる。
以上のように、本発明の第2実施形態に係る光偏向装置によれば、第1実施形態と同様に、簡易な構造であるので製造が容易であり、また、二次元的かつ必要な範囲の偏向角の制御が可能となる。
〔第3実施形態〕
第1、第2実施形態に係る光偏向装置は、光導波路から延長するように同じ幅の放射素子を備えるが、このような放射素子に限られず、例えば非特許文献1,4に記載されているような、光導波路よりも幅の広がったグレーティングカプラを放射素子に備えることもできる。以下、第3実施形態に係る光偏向装置について説明する。第1、第2実施形態と同じ要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第3実施形態に係る光偏向装置10Bは、図6に示す放射素子12Bとその放射部20Bにおける配列およびこれに接続する光導波路11の部分を除いて、図1に示す第1実施形態に係る光偏向装置10と同様の構造である。すなわち、光偏向装置10Bは、16本の光導波路11、光入力部1i、光入力部1iからすべての光導波路11に分岐してその一端に接続した分配器1d、光導波路11の他端に接続した放射素子12B、光導波路11等の周囲を埋めるクラッド層3、光導波路11を上下からクラッド層3を介して挟む第1電極4と第2電極5、およびこれらを支持する基板6を備える。また、16個の放射素子12Bは、4×4の正方格子状(dx=dy=d)に二次元配列されて放射部20Bを構成する。なお、図6では、基板6は輪郭のみを表し、クラッド層3は省略する。以下、本実施形態に係る光偏向装置を構成する各要素について、第1実施形態と異なるものについて詳細に説明する。
(放射素子)
放射素子12Bは公知のグレーティングカプラである。放射素子12Bは、光導波路11よりも幅広で、スリット(図6では、4つ)が平面視で弧状で、その1つ目(図6では、網掛けを付して表す)を除いて完全に離間されている。放射素子12Bは、これらの形状以外は、第1実施形態で説明した図4に示す放射素子12と同様の構造であり、光を上方へ向けて出力する。
(光導波路)
光導波路11は、図5に示す第2実施形態と同様に、16本すべてが放射部20Bの外側の一方から放射素子12Bに接続し、光出力部1oがx方向に対して、下式(1)で表される範囲の角度Hで傾斜している。本実施形態においては、光出力部1oは、傾斜角Hが式(1)における最大値HMAXよりも小さく、したがって、ピッチが下式(6)で表されるaで4本ずつ並設され、4本ごとに間隔がaよりも広く空けられる。傾斜角Hが小さいほどピッチaが狭くなる一方、前記間隔が広くなるので、光導波路11よりも幅広の放射素子12Bを放射部20Bに配列することができる。すなわち、放射素子12Bの寸法に応じて、傾斜角Hを設計する。光導波路11はさらに、光出力部1oの末端(放射素子12Bとの接続側)から屈曲して傾斜角Hよりも大きな角度に傾斜して、放射素子12Bに接続する。したがって、放射素子12Bは前記角度で傾斜して配置されている。この角度は、光出力部1oの傾斜角Hよりも大きければ特に規定されず、図6における下からM本目の光導波路11に接続する放射素子12B(図6における放射部20Bの左下隅に配置)が、(M−1)本目と(M+1)本目の光導波路11(光出力部1o)の間隙に収まるように設計される。
0°<H≦tan-1[(dy/dx)/M]<90° ・・・(1)
a=dx・sinH ・・・(6)
(変形例)
放射素子12Bを二次元配列して備える光偏向装置10Bは、第2実施形態のように非正方格子の矩形格子配列とすることもでき、第2実施形態で説明したように、dx<dyとなるようにxy方向を設定することが好ましい。さらに、配列数が2方向で異なる場合には、式(1)に基づいて傾斜角H(最大値HMAX)がより大きくなるように、xy方向を設定することが好ましい。また、放射素子12Bのx方向の配列数が多い場合等は、第1実施形態と同様に、光出力部1oを両外側へ二分して配置すればよい。
本実施形態に係る光偏向装置10Bは、コア層1の材料等に応じて、第1実施形態で説明した製造方法で製造することができる。
以上のように、本発明の第3実施形態に係る光偏向装置によれば、所望の形状の放射素子を矩形格子状に二次元配列して備えることができ、第1実施形態と同様に、二次元的かつより広範囲の偏向角の制御が可能となり、簡易な構造であるので製造が容易である。
〔第4実施形態〕
第1、第2実施形態に係る光偏向装置は、隣り合う光導波路およびこれに接続する放射素子同士でクラッド層を経由して光が進入しないように、平面視で一定以上の間隔を空けて配置しているが、光導波路をいっそうの狭ピッチとして、放射素子の配列数を多くしたり高精細化することができる。以下、第4実施形態に係る光偏向装置について説明する。第1、第2実施形態と同じ要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
本発明の第4実施形態に係る光偏向装置10Cは、図7に示す放射素子12Aとその放射部20Cにおける配列およびこれに接続する光導波路11の部分を除いて、図1に示す第1実施形態に係る光偏向装置10と同様の構造である。すなわち、光偏向装置10Cは、256本の光導波路11、光入力部1i、光入力部1iからすべての光導波路11に分岐してその一端に接続した分配器1d、光導波路11の他端に接続した放射素子12A、光導波路11等の周囲を埋めるクラッド層3、光導波路11を上下からクラッド層3を介して挟む第1電極4と第2電極5、およびこれらを最上層で支持する基板6を備える。また、256個の放射素子12Aは、16×16の正方格子状(dx=dy=d)に二次元配列されて放射部(合成放射部)20Cを構成する。図7には、放射素子12Aを、放射部20Cにおける左下の(9×4)個のみ示し、また、クラッド層3は省略する。以下、本実施形態に係る光偏向装置を構成する各要素について、第1実施形態と異なるものについて詳細に説明する。
(光導波路)
光導波路11は、図1に示す第1実施形態と同様に、分配器1dで分岐されて、位相調整領域1tから曲線部分を経由して、二分され、光出力部1oにおいてx方向中心(図7に一点鎖線で表す)で対称に、角度H(0°<H<90°)で傾斜して設けられている。さらに本実施形態においては、光出力部1oが平面視で間隙なく並設され、すなわち光導波路11の幅が光出力部1oの並設ピッチaとなる。このような光偏向装置10Cは、図8に示すように、光導波路11が1本ずつ交互に段違いで配置されている。なお、図8では、クラッド層3および基板6は省略する。段違いに並設された光導波路11(光出力部1o)は、それぞれの高さ位置で放射素子12Aに接続する。このような配置により、隣り合う光導波路11,11間や光導波路11、放射素子12A間に十分な間隙を有しつつ、平面視でのピッチaを最小(間隙0)とすることができる。そのために、隣り合う光導波路11,11の段差hは、光導波路11の厚さよりも大きく、さらにクラッド層3へ漏れた光が進入しないように、光導波路11の厚さの2倍以上とすることが好ましい。
光導波路11は、少なくとも位相調整領域1tにおいては、隣り合う第1電極4,4の間隙に合わせて平面視で十分な間隙を有して配置されるため、このような部分では、第1、第2実施形態と同様に同じ高さ位置に設けられていてもよい。そして、光導波路11は、光出力部1oまでの中継部分(例えば図1に示す光導波路11の曲線部分)で平面視での間隙を狭めるので、この中継部分において、1本おきに半数(128)本を緩やかに上方または下方へ傾斜させて段差を設ける。あるいは、分配器1dの3dBカプラの最後の分岐で、光導波路11,11を上下に段差を設けて配置してもよく、この場合、光導波路11は、光偏向装置10C全体において1本ずつ交互に段違いで配置される。このように配置された光導波路11を含むコア層1は、後記製造方法で説明するように、一様な厚さに成膜することのできる材料で形成され、半導体材料等の無機材料を適用することが好ましい。また、放射素子12Aの配列数Mが多い、配列ピッチdxが小さい等、光導波路11の幅(ピッチa)を特に狭く設計するためには、屈折率の高い材料を適用することが好ましい。
(放射素子)
放射素子12Aは、図4に示す放射素子12と同様に、光導波路11(光出力部1o)の末端に連続して形成されて、スリット(図7で網掛けを付した部分)を形成されたグレーティングカプラであり、上面から光loを出射する。ただし、放射素子12Aは、図8に示すように、上面にスリットを形成された部分が下面へ突出して、厚さ(z方向長)が光導波路11の厚さと同じに一定に形成されている。放射素子12Aのこのような形状は、後記製造方法によるものである。
前記したように、放射部20Cにおいて、放射素子12Aおよびこれに接続する光出力部1oは、高さ(z方向)位置を交互に変えて、幅方向に間隙なく並設されている。その段差hは、高さ位置の異なる放射素子12A,12A間で光路長の差(h/cosθ)による位相のずれを生じさせないように、下式(7)に設計されることが好ましい。なお、mは自然数、nclは放射素子12A上のクラッド層3の屈折率である。
h=m×cosθ×λ/ncl ・・・(7)
(放射部)
放射部20Cにおいて、第1実施形態で説明したように、光出力部1oおよび放射素子12Aの傾斜角Hは、放射部20Cにおける、片側半分の放射素子12Aのx方向の配列数M、およびx,y各方向のピッチdx,dyに基づいて、下式(1)で表される範囲に設計される。また、光出力部1oのピッチaは下式(6)で表される。本実施形態においては、16×16で配列されている放射素子12Aが、x方向に二分して両外側から光出力部1oを接続しているため、M=16/2=8となる。また、dy/dx=1であるので、H≦tan-1(1/8)≒7.125°となる。また、傾斜角Hは式(1)における最大値HMAXであるから、a=0.124dである。したがって、例えば第1実施形態と同様に、λ=1.55μmとして、d=3λ=4.65μmの放射部20Cを設計するとき、a=0.57μmとなる。本実施形態においては、ピッチaがそのまま光導波路11の幅であり、最小屈折率nMINが約1.8以上の材料であればコア層1に適用することができる。より高屈折率の材料をコア層1に適用することにより、放射素子12Aの配列ピッチdをさらに狭くしたり、配列数Mを増やすことができる。
0°<H≦tan-1[(dy/dx)/M]<90° ・・・(1)
a=dx・sinH ・・・(6)
(変形例)
本実施形態に係る光偏向装置10Cは、第1、第2実施形態で説明したように、非正方格子の矩形格子配列とすることもでき、また、2方向の配列数が異なっていてもよい。また、放射素子12Aの配列数等によっては、光出力部1oを二分せずに放射部20Cの外側の一方から放射素子12Aに接続してもよい。また、第3実施形態に係る光偏向装置10B(図6参照)について、光導波路11の光出力部1oを、1本ずつ交互に段違いで配置して、平面視で間隙なく並設することもできる。
(光偏向装置の製造方法)
本実施形態に係る光偏向装置10Cは、第1実施形態で説明したように、クラッド層3のオーバークラッドに、コア層1の形状の溝(トレンチ)をナノインプリント法で形成することによって製造することができる。ただし、コア層1に無機材料を適用するために、クラッド層3のオーバークラッドは、コア層1の成膜条件に対応した、具体的には耐熱性を有する材料を適用する。本実施形態においては、放射素子12Aのスリットとは別に、図9(a)、(b)に示すように、2通りの深さの溝をオーバークラッド(クラッド層3)に形成し、その上から、コア層1の材料を真空蒸着法等により光導波路11の厚さに成膜してクラッド層3の溝に埋め込む。図9(a)は光出力部1oの、図9(b)は光出力部1o以外の(平面視で間隙を有して配列された)光導波路11の部分の断面図である。そして、コア層1を被覆するようにアンダークラッドを形成し、必要に応じてCMP法等で表面を平坦化処理した後、第2電極5を形成する。なお、図9(b)に示すように、光導波路11,11の間隙のクラッド層3上にコア層1が形成されるが、上側の光導波路11との間隙が十分であれば残存させてもよく、あるいはアンダークラッド形成後の平坦化処理で除去することができる。
以上のように、本発明の第4実施形態に係る光偏向装置によれば、二次元的かつより広範囲の偏向角の制御が可能となり、また、簡易な構造であるので、第1実施形態と同様に製造が容易である。
本発明の効果を確認するために、本発明の第1実施形態に係る光偏向装置を模擬したサンプルでシミュレーションを実行し、放射部における光振幅・位相分布を基に計算して、放射部から出力されるビームのパターンを求めた。入力光の波長λは1.55μmに設定した。コア層は、FTCを24%混合したPMMAを模擬した、屈折率n0=1.608、EO係数r33=95pm/Vの誘電体であり、幅2μm×厚さ2μmの光導波路とした。また、クラッド層は、FTCを5%混合したPMMAを模擬した屈折率ncl=1.58の誘電体であり、光導波路の上と下にそれぞれ6μmの厚さとした。また、第1電極および第2電極は、それぞれ厚さ100nmのAuとした。放射素子は、長さ8μmとし、出射角θ≒0となるように、コア層の実効屈折率neff=1.587より、スリット周期Λ=0.975μmとした。図3に示すように、16個の放射素子を4×4の正方格子状にピッチd(=dx=dy)=8μmで配列し、その際、x方向に二分して、x方向中心で対称に、角度H=22.5°で傾斜させた。
シミュレーションは、放射素子までの光導波路においては、ビーム伝搬法を用いたシミュレータ(Optiwave社製Optiwave)で解析した。放射素子(放射部)から界面までは、有限差分時間領域(FDTD)法により解析した(左貝潤一,“光導波路の電磁界数値解析法”,森北出版株式会社,2015年)。シミュレーション条件は、計算領域:200μm3、グリッドサイズ:50nm、境界条件:16層PMLとした。界面からビームパターンまでは、シフト角スペクトル法により解析した(K. Matsushima, "Shifted angular spectrum method for off-axis numerical propagation", Optics Express, Vol.18, No.17, pp.18453-18463, Aug 2010)。シミュレーション条件は、計算領域(界面):1mm、グリッドサイズ:1μmとした。図10に、ビームパターン像を示す。
図10(a)に示すように、正方格子状に配列した放射素子により、真円状のビームパターンが得られた。すなわち、放射素子自体が傾斜して配置されていても、ビームパターンには影響しないといえる。また、図10(b)、(c)にそれぞれ示すように、x方向の偏向角ψxが最大5.4°、y方向の偏向角ψyが最大5.5°となった。これは、光導波路の位相の変化量φがπ(半波長分)であることによる(式(5)より)。本実施例では、光導波路の幅が2μmと比較的太く、放射素子の配列ピッチdが波長λの5倍超と大きいため、このような偏向角となったが、微細化により、偏向角の制御範囲を広くすることが可能である。
以上、本発明の光偏向装置を実施するための各実施形態について述べてきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
10,10A,10B,10C 光偏向装置
11 光導波路
12,12A,12B 放射素子
1o 光出力部(傾斜部)
20,20C 放射部(合成放射部)
20A,20B 放射部
3 クラッド層
4 第1電極(位相調整手段)
5 第2電極(位相調整手段)
6 基板

Claims (4)

  1. 放射素子をxy面に(M×N)配列してなる放射部と(M,Nはそれぞれ2以上の自然数)、一端に前記放射素子のそれぞれを接続する(M×N)本の光導波路と、前記光導波路毎に当該光導波路を伝播する光の位相を調整する位相調整手段と、を備え、前記(M×N)本の光導波路の他端から光を入力されて、xy面に対して非平行な方向にビームを前記放射部から出力する光偏向装置であって、
    前記放射部は、それぞれの前記放射素子の中心がx方向とy方向とに沿った格子状に配置され、
    前記光導波路は、前記一端側に、x方向に対して、下式(1)で表される一定の角度Hで傾斜した直線状に形成された傾斜部を有することを特徴とする光偏向装置。
    0°<H≦tan-1[(dy/dx)/M]<90° ・・・(1)
    (dx:前記放射部のx方向における放射素子のピッチ、dy:前記放射部のy方向における放射素子のピッチ、M:前記放射部のx方向における放射素子の配列数)
  2. 前記放射部をx方向に2つ並べて前記放射素子を(2M×N)配列してなる合成放射部を備え、前記ビームを前記合成放射部から出力し、
    前記放射部のそれぞれの前記放射素子に接続する(M×N)本の光導波路が、前記合成放射部の対向する両外側から前記放射素子に接続していることを特徴とする請求項1に記載の光偏向装置。
  3. 前記放射部は、それぞれの前記放射素子の中心が正方格子状に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光偏向装置。
  4. 前記光導波路の前記傾斜部およびこれに接続する前記放射素子は、隣り合う2本がz方向に段差を有するように1本ずつ交互に段違いで配置され、入力された光の前記段差における光路長が、前記光の波長の倍数であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の光偏向装置。
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