以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。以下の実施形態において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
先ず、本発明の第1実施形態について、図1〜図3を参照しつつ説明する。第1実施形態では、本発明に係るヒートポンプシステム1を、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る電気自動車に適用している。当該ヒートポンプシステム1は、電気自動車において、空調対象空間である車室内の空調を行う機能や、バッテリ等を含む車載機器32の温度を適切な温度に調整する機能を果たす。
そして、当該ヒートポンプシステム1は、車室内の空調を行う運転モードとして、冷房モードと、暖房モードと、除湿暖房モードとを切り替えることができる。冷房モードは、車室内へ送風される送風空気を冷却して車室内へ吹き出す運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。除湿暖房モードは、冷却して除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。
尚、当該ヒートポンプサイクル10では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には、圧縮機11を潤滑する為の冷凍機油が混入されている。冷凍機油としては、液相冷媒に相溶性を有するPAGオイル(ポリアルキレングリコールオイル)が採用されている。冷凍機油の一部は、冷媒と共にサイクルを循環している。
次に、第1実施形態に係るヒートポンプシステム1の具体的構成について、図1を参照しつつ説明する。当該ヒートポンプシステム1は、ヒートポンプサイクル10と、高温側熱媒体回路20と、低温側熱媒体回路30と、室内空調ユニット50と、制御装置60を有している。
初めに、ヒートポンプシステム1におけるヒートポンプサイクル10を構成する各構成機器について説明する。当該ヒートポンプサイクル10は、蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置である。
圧縮機11は、ヒートポンプサイクル10において、冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものであり、本発明における圧縮機に相当する。圧縮機11は、車両ボンネット内に配置されている。
圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する制御装置60から出力される制御信号によって、回転数(即ち、冷媒吐出能力)が制御される。尚、圧縮機11の外側には、圧縮機11の排熱を回収する為に、本発明における回収部に相当する構成が配置されている。この点については後に詳細に説明する。
当該圧縮機11の吐出口には、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。水−冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と高温側熱媒体回路20を循環する高温側熱媒体とを熱交換させ、高温側熱媒体を加熱する熱交換器である。
当該水−冷媒熱交換器12は、本発明における放熱器に相当する。そして、高温側熱媒体としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口には、冷媒分岐部14aの冷媒流入口側が接続されている。冷媒分岐部14aは、水−冷媒熱交換器12から流出した高圧冷媒の流れを分岐するものである。冷媒分岐部14aは、互いに連通する3つの冷媒流入出口を有する三方継手構造となるように形成されており、3つの流入出口の内の1つを冷媒流入口とし、残りの2つを冷媒流出口としたものである。
冷媒分岐部14aの一方の冷媒流出口には、冷却用膨張弁15aを介して、室内蒸発器16の冷媒入口側が接続されている。冷媒分岐部14aの他方の冷媒流出口には、吸熱用膨張弁15bを介して、チラー18の冷媒入口側が接続されている。
冷却用膨張弁15aは、少なくとも冷房モード時及び除湿暖房モード時に、冷媒分岐部14aの一方の冷媒流出口から流出した冷媒を減圧させる冷却用減圧部である。当該冷却用膨張弁15aは、本発明における減圧部を構成する。又、冷却用膨張弁15aは、室内蒸発器16へ流入する冷媒の流量を調整する冷却用流量調整部としても機能する。
冷却用膨張弁15aは、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。即ち、冷却用膨張弁15aは、いわゆる電気式膨張弁によって構成されている。当該冷却用膨張弁15aの弁体は、冷媒通路の通路開度(換言すれば絞り開度)を変更可能に構成されている。電動アクチュエータは、弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータを有している。
当該冷却用膨張弁15aは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。そして、当該冷却用膨張弁15aは、絞り開度を全開した際に冷媒通路を全開する全開機能と、絞り開度を全閉した際に冷媒通路を閉塞する全閉機能を有する可変絞り機構で構成されている。
つまり、冷却用膨張弁15aは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。又、当該冷却用膨張弁15aは、冷媒通路を閉塞することで、室内蒸発器16に対する冷媒の流入を遮断することができる。即ち、冷却用膨張弁15aは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える回路切替部としての機能とを兼ね備えている。
冷却用膨張弁15aの出口には、室内蒸発器16の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器16は、少なくとも冷房モード時及び除湿暖房モード時に、冷却用膨張弁15aにて減圧された低圧冷媒と送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、送風空気を冷却する冷却用蒸発器である。
そして、室内蒸発器16は、室内空調ユニット50のケーシング51内に配置されている。即ち、室内蒸発器16は、本発明における吸熱器を構成し、本発明における第1吸熱器又は第2吸熱器の何れか一方に相当する。
当該室内蒸発器16の冷媒出口には、蒸発圧力調整弁17の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁17は、室内蒸発器16における冷媒蒸発圧力を予め定めた基準圧力以上に維持する蒸発圧力調整部である。蒸発圧力調整弁17は、室内蒸発器16の出口側の冷媒圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構によって構成されている。
尚、当該蒸発圧力調整弁17は、室内蒸発器16における冷媒蒸発温度を、室内蒸発器16の着霜を抑制可能な基準温度(本実施形態では、1℃)以上に維持するように構成されている。
当該蒸発圧力調整弁17の出口には、冷媒合流部14bの一方の冷媒流入口側が接続されている。冷媒合流部14bは、冷媒分岐部14aと同様の三方継手構造のもので、3つの流入出口のうち2つを冷媒流入口とし、残りの1つを冷媒流出口としたものである。図1に示すように、当該冷媒合流部14bは、蒸発圧力調整弁17から流出した冷媒の流れとチラー18から流出した冷媒の流れとを合流させるものである。
ここで、冷媒分岐部14aにおける他方の冷媒流出口には、吸熱用膨張弁15bが接続されている。吸熱用膨張弁15bは、少なくとも暖房モード時及び除湿暖房モードに、冷媒分岐部14aにおける他方の冷媒流出口から流出した液相冷媒を減圧膨張させる吸熱用減圧部である。当該吸熱用膨張弁15bは、本発明における減圧部として機能する。
そして、吸熱用膨張弁15bは、チラー18へ流入する冷媒の流量を調整する吸熱用流量調整部として機能する。当該吸熱用膨張弁15bの基本的構成は、冷却用膨張弁15aと同様である。つまり、吸熱用膨張弁15bは、電気式の可変絞り機構であり、弁体と電動アクチュエータとを有している。そして、吸熱用膨張弁15bは、冷却用膨張弁15aと同様に、全開機能と全閉機能を有している。
つまり、吸熱用膨張弁15bは、冷媒通路を全開にすることで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができ、冷媒通路を閉塞することでチラー18に対する冷媒の流入を遮断することができる。即ち、吸熱用膨張弁15bは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える回路切替部としての機能とを兼ね備えている。
吸熱用膨張弁15bの出口には、チラー18の冷媒入口側が接続されている。チラー18は、吸熱用膨張弁15bにて減圧された低圧冷媒と低温側熱媒体回路30を循環する低温側熱媒体とを熱交換させる熱交換器である。チラー18は、吸熱用膨張弁15bにて減圧された低圧冷媒を流通させる冷媒通路と、低温側熱媒体回路30を循環する低温側熱媒体を流通させる水通路とを有している。
チラー18は、少なくとも暖房モード及び除湿暖房モード時に、冷媒通路を流通する低圧冷媒と水通路を流通する低温側熱媒体とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させる蒸発部である。つまり、チラー18は、少なくとも暖房モード及び除湿暖房モード時に、低圧冷媒を蒸発させて低温側熱媒体の有する熱を冷媒に吸熱させる吸熱用の熱交換器である。
即ち、チラー18は、本発明における吸熱器を構成し、本発明における第1吸熱器又は第2吸熱器の何れか他方に相当する。そして、チラー18の冷媒通路の出口には、冷媒合流部14bにおける他方の冷媒流入口側が接続されている。そして、冷媒合流部14bの冷媒流出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、当該ヒートポンプシステム1における高温側熱媒体回路20について説明する。高温側熱媒体回路20は、高温側熱媒体を循環させる回路である。高温側熱媒体としては、エチレングリコールを含む溶液、不凍液等を採用することができる。高温側熱媒体回路20には、水−冷媒熱交換器12の水通路、高温側熱媒体ポンプ21、ヒータコア22、高温側ラジエータ23、高温側流量調整弁24等が配置されている。
高温側熱媒体ポンプ21は、高温側熱媒体を水−冷媒熱交換器12の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。高温側熱媒体ポンプ21は、制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、圧送能力)が制御される電動ポンプである。
水−冷媒熱交換器12の水通路の出口には、高温側流量調整弁24の1つの流入出口が接続されている。高温側流量調整弁24は、3つの流入出口を有し、そのうち2つの流入出口の通路面積比を連続的に調整可能な電気式の三方流量調整弁である。高温側流量調整弁24は、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
高温側流量調整弁24の別の流入出口には、ヒータコア22の流入口側が接続されている。高温側流量調整弁24のさらに別の流入出口には、高温側ラジエータ23の流入口側が接続されている。
そして、高温側流量調整弁24は、高温側熱媒体回路20において、水−冷媒熱交換器12の水通路から流出した高温側熱媒体のうち、ヒータコア22へ流入させる高温側熱媒体の流量と高温側ラジエータ23へ流入させる高温側熱媒体の流量との流量比を連続的に調整する機能を果たす。
ヒータコア22は、水−冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体と室内蒸発器16を通過した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する熱交換器である。当該ヒータコア22は、本発明におけるヒータコアに相当する。そして、ヒータコア22は、室内空調ユニット50のケーシング51内に配置されている。ヒータコア22における水通路の出口側には、高温側熱媒体ポンプ21の吸入口側が接続されている。
高温側ラジエータ23は、水−冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体と図示しない外気ファンから送風された外気とを熱交換させて、高温側熱媒体の有する熱を外気に放熱させる熱交換器である。
高温側ラジエータ23は、車両ボンネット内の前方側に配置されている。このため、車両走行時には、高温側ラジエータ23に走行風を当てることができる。高温側ラジエータ23は、水−冷媒熱交換器12等と一体的に形成されていてもよい。高温側ラジエータ23の流出口側には、高温側熱媒体ポンプ21の吸入口側が接続されている。
図1に示すように、高温側熱媒体回路20において、ヒータコア22と高温側ラジエータ23は、高温側熱媒体の流れに対して並列に接続されている。従って、高温側熱媒体回路20では、高温側流量調整弁24が、ヒータコア22へ流入する高温側熱媒体の流量を調整することによって、ヒータコア22における高温側熱媒体の送風空気への放熱量、すなわち、ヒータコア22における送風空気の加熱量を調整することができる。
又、高温側熱媒体回路20は、ヒートポンプサイクル10における圧縮機11の排熱を回収して受容する為の高温側回収部25を有している。従って、当該高温側熱媒体回路20は、本発明における高温側熱受容部に相当すると共に、本発明における高温側熱媒体回路に相当する。高温側回収部25の具体的構成については、後に詳細に説明する。
続いて、ヒートポンプシステム1における低温側熱媒体回路30について説明する。低温側熱媒体回路30は、低温側熱媒体を循環させる熱媒体循環回路である。低温側熱媒体としては、高温側熱媒体と同様の流体を採用することができる。低温側熱媒体回路30には、チラー18の水通路、低温側熱媒体ポンプ31、車載機器32、低温側ラジエータ33、低温側流量調整弁34等が配置されている。
低温側熱媒体ポンプ31は、低温側熱媒体をチラー18の水通路の入口側へ圧送する水ポンプである。低温側熱媒体ポンプ31の基本的構成は、高温側熱媒体ポンプ21と同様である。
そして、チラー18における水通路の出口側には、低温側流量調整弁34の流出入口の一つが接続されている。低温側流量調整弁34の基本的構成は、高温側流量調整弁24と同様である。即ち、低温側流量調整弁34は、電気式の三方流量調整弁によって構成されている。
低温側流量調整弁34の別の流入出口には、車載機器32における水通路の入口側が接続されている。低温側流量調整弁34のさらに別の流入出口には、低温側ラジエータ33の流入口側が接続されている。
車載機器32は、当該電気自動車に搭載され、作動時に発熱する機器によって構成されている。当該車載機器32は、本発明における発熱機器に相当する。車載機器32は、例えば、バッテリ、インバータ、充電器、モータジェネレータ等を含んでいる。
バッテリは、車両に搭載された各種電気機器に電力を供給するものであり、例えば、充放電可能な二次電池(本実施形態では、リチウムイオン電池)によって構成されている。インバータは、直流電流を交流電流に変換する電力変換部である。
そして、充電器は、バッテリに電力を充電する充電器である。モータジェネレータは、電力を供給されることによって走行用の駆動力を出力すると共に、減速時等には回生電力を発生させるものである。
この為、車載機器32における冷却水通路は、低温側熱媒体を流通させることで、それぞれの機器を冷却できるように形成されている。そして、車載機器32における冷却水通路の出口側には、低温側熱媒体ポンプ31の吸入口側が接続されている。
当該車載機器32に含まれる各構成機器の温度は、それぞれ充分な性能を発揮できる適正な温度帯の範囲内に調整されている必要がある。この為、当該ヒートポンプシステム1は、車載機器32の水通路に対する低温側熱媒体の流量を調整することで、車載機器32の各機器を適正な温度帯に調整することができる。
そして、低温側ラジエータ33は、低温側流量調整弁34から流出した低温側熱媒体と図示しない外気ファンから送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。低温側ラジエータ33は、低温側熱媒体の温度が外気よりも高くなっている場合には、低温側熱媒体の有する熱を外気に放熱させる放熱用の熱交換器として機能する。
又、低温側流量調整弁34は、低温側熱媒体の温度が外気よりも低くなっている場合には、外気の有する熱を低温側熱媒体に吸熱させる吸熱用の熱交換器として機能する。当該低温側ラジエータ33の流出口側には、低温側熱媒体ポンプ31の吸入口側が接続されている。つまり、低温側ラジエータ33は、低温側熱媒体回路30における低温側熱媒体の流れに関して、車載機器32と並列に配置されている。
当該ヒートポンプシステム1は、低温側熱媒体回路30を利用することで、車載機器32の冷却や温度調整を行うと共に、車載機器32で生じた熱を熱源として活用することができる。又、当該ヒートポンプシステム1は、低温側熱媒体回路30の低温側ラジエータ33を利用することで、外気を熱源として利用したり、外気に放熱したりすることができる。
次に、ヒートポンプシステム1を構成する室内空調ユニット50について説明する。室内空調ユニット50は、ヒートポンプシステム1において、ヒートポンプサイクル10によって温度調整された送風空気を車室内の適切な箇所へ吹き出すためのユニットである。室内空調ユニット50は、車室内最前部の計器盤(即ち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。
室内空調ユニット50は、その外殻を形成するケーシング51の内部に形成される空気通路に、送風機52、室内蒸発器16、ヒータコア22等を収容して構成されている。ケーシング51は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて成形されている。
図1に示すように、ケーシング51の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置53が配置されている。内外気切替装置53は、ケーシング51内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入するものである。
内外気切替装置53は、ケーシング51内へ内気を導入させる内気導入口及び外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させることができる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置53の送風空気流れ下流側には、送風機52が配置されている。送風機52は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機によって構成されており、内外気切替装置53を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する機能を果たす。当該送風機52は、制御装置60から出力される制御電圧によって、回転数(即ち、送風能力)が制御される。
送風機52の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器16及びヒータコア22が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器16は、ヒータコア22よりも送風空気流れ上流側に配置されている。又、ケーシング51内には、室内蒸発器16を通過した送風空気を、ヒータコア22を迂回させて下流側へ流す冷風バイパス通路55が形成されている。
室内蒸発器16の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア22の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア54が配置されている。エアミックスドア54は、室内蒸発器16を通過後の送風空気のうち、ヒータコア22を通過させる風量と冷風バイパス通路55を通過させる風量との風量割合を調整するものである。
エアミックスドア54は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号により、その作動が制御される。
ヒータコア22の送風空気流れ下流側には、混合空間56が設けられている。混合空間56では、ヒータコア22にて加熱された送風空気と冷風バイパス通路55を通過してヒータコア22にて加熱されていない送風空気とが混合される。
更に、ケーシング51の送風空気流れ最下流部には、混合空間にて混合された送風空気(空調風)を車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。
フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、エアミックスドア54が、ヒータコア22を通過させる風量と冷風バイパス通路55を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度も調整される。
そして、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス開口穴の開口面積を調整するフェイスドア、フット開口穴の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ開口穴の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、空調風が吹き出される吹出口を切り替える吹出モード切替装置を構成する。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、制御装置60から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
ここで、第1実施形態に係るヒートポンプシステム1において、高温側熱媒体回路20は、ヒートポンプサイクル10における圧縮機11の排熱を回収する為に、高温側回収部25を有している。この高温側回収部25の構成について、図1、2を参照しつつ説明する。
高温側回収部25は、高温側熱媒体回路20を循環する高温側熱媒体に対して圧縮機11の排熱を吸熱させることで回収し、当該圧縮機11の排熱を高温側熱媒体回路20に受容させる。
図2に示すように、高温側回収部25は、収容部25aと、高温側流入配管26と、高温側流出配管27とを有している。収容部25a、高温側流入配管26、高温側流出配管27は、相互に接続されており、高温側熱媒体回路20を循環する高温側熱媒体が流れる流路を構成している。
図1に示すように、高温側流入配管26は、水−冷媒熱交換器12における水通路の出口側に配置された高温側分岐部26aから分岐する配管である。当該高温側流入配管26は、上述したように、収容部25aに接続されている。従って、高温側熱媒体回路20において、高温側分岐部26aで分岐した高温側熱媒体の流れは収容部25aの内部に到達する。
又、高温側流出配管27は、収容部25aから伸びており、高温側熱媒体回路20における循環回路に配置された高温側合流部27aに接続されている。当該高温側合流部27aは、水−冷媒熱交換器12における水通路の出口側において、高温側分岐部26aよりも高温側熱媒体の流れ方向下流側に位置している。
従って、収容部25aから流出した高温側熱媒体は、水−冷媒熱交換器12における水通路の出口側において、高温側熱媒体回路20にてヒータコア22等を循環する高温側熱媒体と合流する。
ここで、図2に示すように、高温側回収部25における収容部25aは、圧縮機11の外表面を覆うように形成されている。即ち、収容部25aは、圧縮機11及び圧縮機11に接続された冷媒配管の一部を内部に収容している。
従って、高温側流入配管26を流れた高温側熱媒体は、収容部25aの内部に流入し、圧縮機11の外表面に沿って流れる。この時、高温側熱媒体は、圧縮機11の排熱を吸熱して回収する。
その後、高温側熱媒体は、収容部25aから流出して、高温側流出配管27を介して、高温側熱媒体回路20の循環回路に合流する。これにより、高温側熱媒体回路20は、高温側回収部25における高温側熱媒体の流れを介して、圧縮機11の排熱を回収して受容することができる。
図2に示すように、当該高温側回収部25における収容部25aの内部には、蓄熱材25bが配置されている。当該蓄熱材25bは、蓄熱時に相変化を伴う潜熱蓄熱材である。当該蓄熱材25bの相変化温度は、収容部25aに流入する高温側熱媒体の温度よりも高く、圧縮機11の温度よりも低い範囲内にて定められる。
当該蓄熱材25bは、圧縮機11の排熱を蓄え、高温側熱媒体の温度が予め定められた温度よりも低下した場合に、当該高温側熱媒体に対して蓄熱した熱を放熱するように構成されている。
そして、当該蓄熱材25bは、球状の樹脂製或いは金属製の複数のカプセルに封入された状態で、収容部25a内の圧縮機11の周囲に配置されている。高温側流入配管26から収容部25aに流入した高温側熱媒体は、カプセルの隙間を流通して、高温側流出配管27へ流れる。
高温側回収部25における蓄熱材25bとしては、例えば、(水系の蓄熱材、パラフィンワックス系の蓄熱材、高級アルコール系の蓄熱材、無機塩系の蓄熱材)等を採用することができる。水系の蓄熱材としては、例えば、酢酸ナトリウム三水塩、塩化マグネシウム四水塩を採用することができる。
そして、パラフィンワックス系の蓄熱材としては、例えば、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、ステアリン酸ステアリルを採用することができる。又、高級アルコール系の蓄熱材としては、例えば、キシリトールを用いることができる。又、蓄熱材25bとして、これらの混合材料を採用することができる。
従って、圧縮機11の排熱によって周囲が蓄熱温度よりも高くなると、蓄熱材25bは周囲から吸熱して相変化する。これにより、蓄熱材25bに圧縮機11の排熱が蓄えられる。そして、熱を蓄えた蓄熱材25bは、高温側熱媒体の温度に近づくように顕熱変化する。又、高温側熱媒体の温度が蓄熱温度よりも低くなると、蓄熱材25bは、高温側熱媒体に対して、蓄えていた圧縮機11の排熱を放熱して相変化する。
つまり、第1実施形態においては、高温側回収部25の収容部25a内に、蓄熱材25bを配置することにより、蓄熱部40を構成することができる。当該蓄熱部40は、圧縮機11の排熱を蓄熱しておき、高温側熱媒体の温度が予め定められた蓄熱温度よりも低くなると、蓄熱していた熱を高温側熱媒体に放熱する。即ち、蓄熱部40は、本発明における蓄熱部に相当する。
次に、第1実施形態に係るヒートポンプシステム1の制御系について、図3を参照しつつ説明する。制御装置60は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
そして、当該制御装置60は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。第1実施形態における制御対象機器には、圧縮機11と、冷却用膨張弁15aと、吸熱用膨張弁15bと、高温側熱媒体ポンプ21と、高温側流量調整弁24と、低温側熱媒体ポンプ31、低温側流量調整弁34と、送風機52等が含まれている。
図3に示すように、制御装置60の入力側には、空調制御用のセンサ群が接続されている。当該空調制御用のセンサ群は、内気温センサ62a、外気温センサ62b、日射センサ62c、高圧センサ62d、蒸発器温度センサ62e、空調風温度センサ62fを含んでいる。制御装置60には、これらの空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ62aは、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ62bは、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ62cは、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。高圧センサ62dは、圧縮機11の吐出口側から冷却用膨張弁15a或いは吸熱用膨張弁15bの入口側へ至る冷媒流路の高圧冷媒圧力Pdを検出する冷媒圧力検出部である。
蒸発器温度センサ62eは、室内蒸発器16における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。空調風温度センサ62fは、車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
更に、制御装置60の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル61が接続されている。当該操作パネル61には、複数の操作スイッチが配置されている。従って、制御装置60には、この複数の操作スイッチからの操作信号が入力される。
操作パネル61における各種操作スイッチとしては、具体的に、ヒートポンプシステム1の自動制御運転を設定或いは解除するオートスイッチ、車室内の冷房を行うことを要求する冷房スイッチ、送風機52の風量をマニュアル設定する風量設定スイッチ、車室内の目標温度Tsetを設定する温度設定スイッチ等がある。
尚、当該制御装置60では、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されているが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェア及びソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、制御装置60のうち、圧縮機11の作動を制御する構成は、吐出能力制御部60aである。制御装置60のうち、回路切替部として、冷却用膨張弁15a及び吸熱用膨張弁15bの作動を制御する構成は、回路切替制御部60bである。
続いて、第1実施形態におけるヒートポンプシステム1の作動について説明する。上述したように、第1実施形態に係るヒートポンプシステム1では、複数の運転モードから適宜運転モードを切り替えることができる。これらの運転モードの切り替えは、制御装置60に予め記憶された制御プログラムが実行されることによって行われる。
より具体的には、制御プログラムでは、空調制御用のセンサ群によって検出された検出信号および操作パネル61から出力される操作信号に基づいて、車室内へ送風させる送風空気の目標吹出温度TAOを算出する。そして、目標吹出温度TAOおよび検出信号に基づいて、運転モードを切り替える。以下に、複数の運転モードの内、冷房モードにおける作動と、暖房モードにおける作動と、除湿暖房モードにおける作動を説明する。
(a)冷房モード
冷房モードは、熱交換対象流体である送風空気を冷却して車室内に送風する運転モードである。当該冷房モードでは、制御装置60が、冷却用膨張弁15aを所定の絞り開度で開き、吸熱用膨張弁15bを全閉状態とする。
従って、冷房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部14a→冷却用膨張弁15a→室内蒸発器16→蒸発圧力調整弁17→冷媒合流部14b→圧縮機11の順で冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、冷房モードでは、室内蒸発器16へ冷媒を流入させ、送風空気との熱交換により送風空気を冷却する冷媒回路に切り替えられる。
そして、このサイクル構成で、制御装置60は、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。
例えば、制御装置60は、蒸発器温度センサ62eによって検出された冷媒蒸発温度Tefinが目標蒸発温度TEOとなるように圧縮機11の作動を制御する。目標蒸発温度TEOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置60に記憶された冷房モード用の制御マップを参照して決定される。
具体的には、この制御マップでは、空調風温度センサ62fによって検出された送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、目標吹出温度TAOの上昇に伴って目標蒸発温度TEOを上昇させる。さらに、目標蒸発温度TEOは、室内蒸発器16の着霜を抑制可能な範囲(具体的には、1℃以上)の値に決定される。
又、制御装置60は、予め定めた冷房モード時の水圧送能力を発揮するように、高温側熱媒体ポンプ21を作動させる。又、制御装置60は、水−冷媒熱交換器12の水通路から流出した高温側熱媒体の全流量が高温側ラジエータ23へ流入するように、高温側流量調整弁24の作動を制御する。
当該制御装置60は、冷房モード時の水圧送能力を発揮するように、低温側熱媒体ポンプ31を作動させる。この時、制御装置60は、低温側流量調整弁34の作動を制御し、チラー18の水通路から流出した低温側熱媒体の流量バランスが、車載機器32側と低温側ラジエータ33側とで任意のバランスとなるように調整する。
そして、当該制御装置60は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置60に記憶された制御マップを参照して送風機52の制御電圧(送風能力)を決定する。具体的には、この制御マップでは、目標吹出温度TAOの極低温域(最大冷房域)及び極高温域(最大暖房域)で送風機52の送風量を最大とし、中間温度域に近づくに伴って送風量を減少させる。
又、制御装置60は、冷風バイパス通路55を全開としてヒータコア22側の通風路を閉塞するように、エアミックスドア54の作動を制御する。尚、当該制御装置60は、その他の各種制御対象機器についても、適宜その作動を制御する。
従って、冷房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水−冷媒熱交換器12へ流入する。水−冷媒熱交換器12では、高温側熱媒体ポンプ21が作動しているので、高圧冷媒と高温側熱媒体が熱交換して、高圧冷媒が冷却されて凝縮し、高温側熱媒体が加熱される。
高温側熱媒体回路20では、水−冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体が、高温側流量調整弁24を介して、高温側ラジエータ23へ流入する。高温側ラジエータ23へ流入した高温側熱媒体は、外気と熱交換して放熱する。これにより、高温側熱媒体が冷却される。高温側ラジエータ23にて冷却された高温側熱媒体は、高温側熱媒体ポンプ21に吸入されて再び水−冷媒熱交換器12の水通路へ圧送される。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路にて冷却された高圧冷媒は、冷媒分岐部14aを介して、冷却用膨張弁15aへ流入して減圧される。冷却用膨張弁15aの絞り開度は、室内蒸発器16の出口側の冷媒の過熱度が概ね3℃となるように調整される。
冷却用膨張弁15aにて減圧された低圧冷媒は、室内蒸発器16へ流入する。室内蒸発器16へ流入した冷媒は、送風機52から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、熱交換対象流体である送風空気が冷却される。室内蒸発器16から流出した冷媒は、蒸発圧力調整弁17及び冷媒合流部14bを介して、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
従って、冷房モードでは、室内蒸発器16にて冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
この冷房モードにおいても、圧縮機11の作動に伴い、圧縮機11の排熱が発生する。上述したように、高温側回収部25では、圧縮機11の排熱を高温側熱媒体で吸熱して回収することができ、更に、蓄熱材25bにて圧縮機11の排熱を蓄熱しておくことができる。つまり、当該ヒートポンプシステム1によれば、高温側回収部25の高温側熱媒体や蓄熱材25bによって、圧縮機11の排熱を回収して蓄熱しておき、高圧冷媒側に放熱して適宜利用することができる。
(b)暖房モード
暖房モードは、チラー18にて低温側熱媒体回路30の低温側熱媒体から吸熱して、熱交換対象流体である送風空気を加熱して車室内に送風する運転モードである。当該暖房モードでは、制御装置60が、冷却用膨張弁15aを全閉状態とし、吸熱用膨張弁15bを所定の絞り開度で開く。
暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部14a→吸熱用膨張弁15b→チラー18→冷媒合流部14b→圧縮機11の順で冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、暖房モードでは、チラー18へ冷媒を流入させ、低温側熱媒体との熱交換により吸熱した熱を利用して、送風空気を加熱する冷媒回路に切り替えられる。
ここで、低温側熱媒体回路30における低温側熱媒体は、車載機器32を通過する場合には車載機器32に生じた排熱によって加熱される。又、当該低温側熱媒体は、低温側ラジエータ33を通過する場合、外気との熱交換によって加熱される。つまり、当該ヒートポンプシステム1は、暖房モードにおいて、車載機器32や外気を暖房用の熱源として利用することができる。
そして、このサイクル構成で、制御装置60は、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。
例えば、制御装置60は、高圧センサ62dによって検出された高圧冷媒圧力Pdが目標高圧PCOとなるように圧縮機11の作動を制御する。目標高圧PCOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置60に記憶された暖房モード用の制御マップを参照して決定される。
具体的には、この制御マップでは、送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、目標吹出温度TAOの上昇に伴って目標高圧PCOを上昇させる。
又、制御装置60は、予め定めた暖房モード時の水圧送能力を発揮するように、高温側熱媒体ポンプ21を作動させる。当該制御装置60は、水−冷媒熱交換器12の水通路から流出した高温側熱媒体の全流量がヒータコア22へ流入するように、高温側流量調整弁24の作動を制御する。
当該制御装置60は、暖房モード時の水圧送能力を発揮するように、低温側熱媒体ポンプ31を作動させる。この時、制御装置60は、低温側流量調整弁34の作動を制御し、チラー18の水通路から流出した低温側熱媒体の流量バランスが、車載機器32側と低温側ラジエータ33側とで任意のバランスとなるように調整する。
そして、当該制御装置60は、冷房モードと同様に、送風機52の制御電圧(送風能力)を決定する。又、制御装置60は、ヒータコア22側の通風路を全開として冷風バイパス通路55を閉塞するように、エアミックスドア54の作動を制御する。尚、制御装置60は、その他の各種制御対象機器についても、適宜その作動を制御する。
従って、暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水−冷媒熱交換器12へ流入する。水−冷媒熱交換器12では、高温側熱媒体ポンプ21が作動しているので、高圧冷媒と高温側熱媒体が熱交換して、高圧冷媒が冷却されて凝縮し、高温側熱媒体が加熱される。
高温側熱媒体回路20では、水−冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体が、高温側流量調整弁24を介して、ヒータコア22へ流入する。ヒータコア22へ流入した高温側熱媒体は、エアミックスドア54がヒータコア22側の通風路を全開としているので、室内蒸発器16を通過した送風空気と熱交換して放熱する。
これにより、熱交換対象流体である送風空気が加熱されて、送風空気の温度が目標吹出温度TAOに近づく。ヒータコア22から流出した高温側熱媒体は、高温側熱媒体ポンプ21に吸入されて再び水−冷媒熱交換器12の水通路へ圧送される。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した高圧冷媒は、冷媒分岐部14aを介して、吸熱用膨張弁15bへ流入して減圧される。吸熱用膨張弁15bの絞り開度は、チラー18の出口側の冷媒が気液二相状態となるように調整される。
この時、低温側熱媒体回路30では、低温側熱媒体ポンプ31の作動によって、低温側熱媒体が循環回路を循環している。当該低温側熱媒体は、車載機器32の水通路を通過する際に、車載機器32に生じている熱を吸熱する。
又、低温側熱媒体は、低温側ラジエータ33を通過する際に、外気ファンによって送風される外気から吸熱する。低温側熱媒体は、車載機器32や低温側ラジエータ33にて吸熱した状態で、チラー18の水通路に流入している。
ヒートポンプサイクル10において、吸熱用膨張弁15bにて減圧された低圧冷媒はチラー18へ流入する。チラー18へ流入した冷媒は、当該チラー18の水通路を流通する低温側熱媒体から吸熱して蒸発する。チラー18から流出した冷媒は、冷媒合流部14bを介して、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
従って、暖房モードでは、熱交換対象流体である送風空気を、ヒータコア22で加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。即ち、当該ヒートポンプシステム1は、暖房モードにおいて、低温側熱媒体回路30にて車載機器32又は外気から吸熱した熱を、ヒートポンプサイクル10で汲み上げて、高温側熱媒体回路20を介して、送風空気の加熱に利用することができる。
そして、当該暖房モードにおいても、ヒートポンプサイクル10における圧縮機11の作動が必要となる。この為、暖房モードにおいても、圧縮機11の排熱が発生する。当該ヒートポンプシステム1は、高温側熱媒体回路20の高温側回収部25にて、高温側熱媒体を介して、圧縮機11の排熱を回収することができる。
具体的に説明すると、高温側熱媒体回路20における高温側熱媒体の一部は、高温側熱媒体回路20における循環回路から分岐して、高温側流入配管26を介して、収容部25a内に流入する。収容部25a内において、高温側熱媒体は、圧縮機11の排熱を吸熱して、高温側流出配管27を介して、高温側熱媒体回路20の循環回路に合流する。このようにして、高温側熱媒体回路20は、圧縮機11の排熱を回収し、圧縮機11の排熱を高温側熱媒体回路20の循環回路側に輸送することができる。
当該ヒートポンプシステム1によれば、低温側熱媒体回路30から汲み上げた熱を含む高圧冷媒の熱に加え、圧縮機11の排熱を用いて、高温側熱媒体回路20の高温側熱媒体を加熱し、ヒータコア22にて送風空気へ放熱させることができる。
これにより、当該ヒートポンプシステム1は、暖房モードにおける熱源として、水−冷媒熱交換器12における高圧冷媒の熱に加えて、圧縮機11の排熱を利用して高圧冷媒側に放熱させることができるので、ヒートポンプシステム1における暖房能力を向上させることができる。
(c)除湿暖房モード
除湿暖房モードは、室内蒸発器16にて冷却された送風空気を、チラー18にて低温側熱媒体回路30の低温側熱媒体から吸熱した熱等を用いて加熱して車室内に送風する運転モードである。当該除湿暖房モードでは、制御装置60が、冷却用膨張弁15a及び吸熱用膨張弁15bを、それぞれ所定の絞り開度で開く。
従って、除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷媒分岐部14aまで流れ、冷媒分岐部14aの一方側→冷却用膨張弁15a→室内蒸発器16へ流れると共に、冷媒分岐部14aの他方側→吸熱用膨張弁15b→チラー18へ流れる。そして、室内蒸発器16から流出した冷媒及びチラー18から流出した冷媒は冷媒合流部14bにて合流した後、圧縮機11の順で流れて循環する。即ち、除湿暖房モードでは、室内蒸発器16及びチラー18に冷媒が並列に流れる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
そして、このサイクル構成で、制御装置60は、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を、予め制御装置60に記憶された除湿暖房モード用の制御マップ等を参照して制御する。
除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水−冷媒熱交換器12へ流入する。水−冷媒熱交換器12では、高温側熱媒体ポンプ21が作動しているので、高圧冷媒と高温側熱媒体が熱交換して、高圧冷媒が冷却されて凝縮し、高温側熱媒体が加熱される。
高温側熱媒体回路20では、水−冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体が、高温側流量調整弁24を介して、ヒータコア22へ流入する。ヒータコア22へ流入した高温側熱媒体は、エアミックスドア54がヒータコア22側の通風路を全開としているので、室内蒸発器16にて冷却された送風空気と熱交換して放熱する。
これにより、送風空気が冷却された状態から再加熱されて、送風空気の温度が目標吹出温度TAOに近づく。ヒータコア22から流出した高温側熱媒体は、高温側熱媒体ポンプ21に吸入されて再び水−冷媒熱交換器12の水通路へ圧送される。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した高圧冷媒は、冷媒分岐部14aを介して、冷却用膨張弁15aへ流入して減圧される。冷却用膨張弁15aの絞り開度は、室内蒸発器16の出口側の冷媒の過熱度が概ね3℃となるように調整される。
冷却用膨張弁15aにて減圧された低圧冷媒は、室内蒸発器16へ流入する。室内蒸発器16へ流入した冷媒は、送風機52から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、熱交換対象流体である送風空気が冷却される。室内蒸発器16から流出した冷媒は、蒸発圧力調整弁17及び冷媒合流部14bを介して、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
冷媒分岐部14aにて分岐した高圧冷媒は、吸熱用膨張弁15bへ流入して減圧される。吸熱用膨張弁15bの絞り開度は、チラー18の出口側の冷媒が気液二相状態となるように調整される。
除湿暖房モードにおいても、低温側熱媒体回路30では、低温側熱媒体ポンプ31の作動によって、低温側熱媒体が循環回路を循環している。当該低温側熱媒体は、車載機器32の水通路を通過する際に、車載機器32に生じている熱を吸熱する。
又、低温側熱媒体は、低温側ラジエータ33を通過する際に、外気ファンによって送風される外気から吸熱する。低温側熱媒体は、車載機器32や低温側ラジエータ33にて吸熱した状態で、チラー18の水通路に流入している。
ヒートポンプサイクル10において、吸熱用膨張弁15bにて減圧された低圧冷媒はチラー18へ流入する。チラー18へ流入した冷媒は、当該チラー18の水通路を流通する低温側熱媒体から吸熱して蒸発する。チラー18から流出した冷媒は、冷媒合流部14bを介して、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
上述したように、ケーシング51内部において、室内蒸発器16の送風空気流れ下流側にヒータコア22が配置されている為、除湿暖房モードでは、室内蒸発器16にて冷却された送風空気を、低温側熱媒体回路30にて吸熱した熱を利用してヒータコア22で加熱することができる。従って、除湿暖房モードでは、室内蒸発器16に冷却された送風空気を、ヒータコア22で加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
即ち、当該ヒートポンプシステム1は、除湿暖房モードにおいても、低温側熱媒体回路30にて車載機器32又は外気から吸熱した熱を、ヒートポンプサイクル10で汲み上げて、高温側熱媒体回路20を介して、送風空気の加熱に利用することができる。
そして、当該除湿暖房モードにおいても、ヒートポンプサイクル10における圧縮機11の作動が必要となる。この為、除湿暖房モードにおいても、圧縮機11の排熱が発生する。当該ヒートポンプシステム1は、高温側熱媒体回路20の高温側回収部25にて、高温側熱媒体を介して、圧縮機11の排熱を回収することができる。当該高温側熱媒体回路20は、暖房モード時と同様に、圧縮機11の排熱を回収し、圧縮機11の排熱を高温側熱媒体回路20の循環回路側に輸送することができる。
当該ヒートポンプシステム1によれば、低温側熱媒体回路30から汲み上げた熱を含む高圧冷媒の熱に加え、圧縮機11の排熱を用いて、高温側熱媒体回路20の高温側熱媒体を加熱し、室内蒸発器16にて冷却された空気をヒータコア22にて加熱することができる。
これにより、当該ヒートポンプシステム1は、除湿暖房モードにおける熱源として、水−冷媒熱交換器12における高圧冷媒の熱に加えて、圧縮機11の排熱を利用して高圧冷媒側に放熱させることができるので、除湿暖房モード時におけるヒートポンプシステム1の暖房能力を向上させることができる。
以上説明したように、第1実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、ヒートポンプサイクル10の冷媒回路を切り替えることによって、複数の運転モードの内、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モードを実現することができ、車室内の快適な空調を行うことができる。
そして、当該ヒートポンプサイクル10では、同一の熱交換器へ高圧冷媒を流入させる冷媒回路と低圧冷媒を流入させる冷媒回路とを切り替えることがない。つまり、いずれの冷媒回路に切り替えても室内蒸発器16及びチラー18へ高圧冷媒を流入させる必要がないので、サイクル構成の複雑化を招くことなく簡素な構成で冷媒回路を切り替えることができる。
この運転モードの何れにおいても、ヒートポンプサイクル10における圧縮機11が作動される為、圧縮機11の排熱が発生する。当該ヒートポンプシステム1によれば、高温側熱媒体回路20の高温側回収部25を介して、圧縮機11の排熱を回収して、高温側熱媒体回路20にて利用することができる。
当該ヒートポンプシステム1において、高温側熱媒体回路20は、本発明における高温側熱受容部に相当し、高温側回収部25は、本発明における回収部に相当している。
このように構成することで、当該ヒートポンプシステム1は、高温側回収部25における圧縮機11の排熱の回収、回収した熱の輸送や、高温側熱媒体回路20における回収した熱の利用に際して、高温側熱媒体を介在させることができ、より効率良く、圧縮機11の発熱を取り扱うことができる。
又、高温側熱媒体回路20は、ヒータコア22を有している。従って、ヒートポンプシステム1は、暖房モード時や除湿暖房モード時において、高温側回収部25を介して回収した圧縮機11の排熱を、熱交換対象流体である送風空気の加熱に用いることができ、熱交換対象流体に対する加熱能力を向上させることができる。
尚、当該ヒートポンプシステム1において、当該高温側熱媒体回路20は、高温側ラジエータ23を有している為、高温側熱媒体が有する熱を外気に放熱させることができる。即ち、高温側ラジエータ23により、高温側熱媒体の熱量を調整することができる。
従って、当該ヒートポンプシステム1は、熱交換対象流体である送風空気に対する加熱能力(即ち、暖房能力)を調整できる。当該ヒートポンプシステム1は、圧縮機11の排熱を有効に活用して暖房を行いつつ、所望の暖房能力に調整することができる。
図1に示すように、当該ヒートポンプシステム1において、ヒートポンプサイクル10は、室内蒸発器16と、チラー18とを有している。室内蒸発器16は、冷却用膨張弁15aで減圧された冷媒と送風空気との熱交換により蒸発させ、送風空気から吸熱して冷却する。チラー18は、吸熱用膨張弁15bで減圧された冷媒と低温側熱媒体回路30の低温側熱媒体との熱交換により、低温側熱媒体から吸熱する。
当該ヒートポンプシステム1によれば、ヒートポンプサイクル10にこれらの2つの吸熱器を配置することで、例えば、低温側熱媒体と送風空気のような異なる2つの熱媒体と冷媒との熱交換を可能にすることができ、種々の用途に対応することができる。
更に、図2に示すように、当該ヒートポンプシステム1の高温側熱媒体回路20において、高温側回収部25は、複数の蓄熱材25bを収容部25a内に配置して構成されている。即ち、高温側回収部25は、本発明に係る蓄熱部の機能を有している。
当該ヒートポンプシステム1によれば、収容部25aにおいて、圧縮機11の排熱を蓄熱材25bに蓄熱することができる。そして、蓄熱部40を構成する各蓄熱材25bは、高温側熱媒体の温度が予め定められていた温度よりも低下すると、蓄熱していた熱を高温側熱媒体に放熱する。
従って、当該ヒートポンプシステム1によれば、高温側熱媒体の温度状況に応じて、蓄熱部40に蓄えられていた熱を、高温側熱媒体回路20にて利用することができる。つまり、当該ヒートポンプシステム1は、高温側熱媒体の状況に応じて、圧縮機11の排熱を柔軟に活用することができる。
(第1変形例)
第1実施形態においては、高温側熱媒体回路20における高温側分岐部26a及び高温側合流部27aを、水−冷媒熱交換器12における水通路の出口側に配置していたが、図4に示すように、高温側分岐部26a及び高温側合流部27aを、水−冷媒熱交換器12における水通路の入口側に配置してもよい。尚、図4では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
図4に示すように、水−冷媒熱交換器12の水通路の入口側にて、高温側合流部27aは、高温側熱媒体の流れに関して高温側分岐部26aよりも下流側に配置される。この第1変形例において、高温側分岐部26a及び高温側合流部27aの配置が第1実施形態との相違点にあたる。
従って、この点を除いた他の構成は、第1実施形態と同様である。そして、第1変形例におけるヒートポンプサイクル10、高温側熱媒体回路20、低温側熱媒体回路30の作動は、上述した実施形態と同様である。
これにより、第1変形例においては、ヒートポンプシステム1は、水−冷媒熱交換器12に流入する前の高温側熱媒体を用いて、高温側回収部25にて圧縮機11の排熱を回収することができる。そして、当該ヒートポンプシステム1では、圧縮機11の排熱を回収した後の高温側熱媒体が、水−冷媒熱交換器12にて高圧冷媒で加熱される。
当該第1変形例に係るヒートポンプシステム1によれば、上述した第1実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。つまり、当該ヒートポンプシステム1は、高温側熱媒体回路20及び高温側回収部25を用いて、圧縮機11の排熱を回収して有効に活用することができる。
又、第1実施形態と第1変形例については、圧縮機11から吐出される高圧冷媒の温度や高温側合流部27aにて合流する際の高温側熱媒体の温度等の条件に応じて、適宜選択することができる。これらの条件に応じて選択することで、圧縮機11の排熱を更に有効に活用することが可能となる。
(第2変形例)
又、第1実施形態においては、ヒートポンプシステム1は、ヒートポンプサイクル10と、高温側熱媒体回路20と、低温側熱媒体回路30とを有していたが、この構成に限定されるものではない。即ち、図5に示すように、第1実施形態に係るヒートポンプシステム1にて、低温側熱媒体回路30を廃止した構成にすることができる。
この場合、ヒートポンプサイクル10におけるチラー18に替えて、室外熱交換器18aが配置される。当該室外熱交換器18aは、少なくとも暖房モード及び除湿暖房モード時に、冷媒通路を流通する低圧冷媒と外気とを熱交換させて、低圧冷媒を蒸発させる蒸発部である。
つまり、室外熱交換器18aは、少なくとも暖房モード及び除湿暖房モード時に、低圧冷媒を蒸発させて外気の有する熱を冷媒に吸熱させる吸熱用の熱交換器である。この室外熱交換器18aは、本発明における吸熱器として機能し、第1吸熱器と第2吸熱器の何れか一方に相当する。
図5に示すように、第2変形例に係るヒートポンプシステム1は、低温側熱媒体回路30を有していない為、車載機器32の温度調整機能を有していないが、車室内の空調機能を保持している。第2変形例におけるヒートポンプサイクル10及び高温側熱媒体回路20の制御内容については、第1実施形態と同様である為、その説明を省略する。
従って、第2変形例に係るヒートポンプシステム1は、上述した第1実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。即ち、当該ヒートポンプシステム1は、高温側熱媒体回路20及び高温側回収部25を用いて、圧縮機11の排熱を回収して有効に活用することができる。
(第3変形例)
続いて、第1実施形態の第3変形例について説明する。図6に示すように、第3変形例では、高温側分岐部26a及び高温側合流部27aが水−冷媒熱交換器12における水通路の入口側に配置されている。
更に、第3変形例においては、ヒートポンプサイクル10のチラー18に替えて室外熱交換器18aが配置され、低温側熱媒体回路30が廃止されている。つまり、第3変形例は、第1実施形態に対して、第1変形例の相違点と第2変形例の相違点の両者を適用した変形例である。
従って、第3変形例に係るヒートポンプシステム1は、上述した第1変形例及び第2変形例と同様に、第1実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。即ち、当該ヒートポンプシステム1は、高温側熱媒体回路20及び高温側回収部25を用いて、圧縮機11の排熱を回収して有効に活用することができる。
(第2実施形態)
続いて、上述した第1実施形態とは異なる第2実施形態について、図7を参照しつつ説明する。
第2実施形態に係るヒートポンプシステム1は、第1実施形態と同様に、電気自動車に搭載されている。図7に示すように、当該ヒートポンプシステム1は、ヒートポンプサイクル10と、高温側熱媒体回路20と、低温側熱媒体回路30とを有しており、更に、室内空調ユニット50と、制御装置60等を有している。
第2実施形態においては、高温側熱媒体回路20及び低温側熱媒体回路30の構成が第1実施形態と相違している。即ち、第2実施形態において、ヒートポンプサイクル10、室内空調ユニット50、制御装置60に係る構成は第1実施形態と同様である。
第2実施形態に係る高温側熱媒体回路20は、第1実施形態と同様に、高温側熱媒体ポンプ21と、ヒータコア22と、高温側ラジエータ23と、高温側流量調整弁24とを有しており、高温側熱媒体回路20の循環回路に係る構成は同様である。しかしながら、第2実施形態に係る高温側熱媒体回路20は、第1実施形態と異なり、高温側回収部25を有していない。
一方、第2実施形態に係る低温側熱媒体回路30は、第1実施形態と同様に、低温側熱媒体ポンプ31と、車載機器32と、低温側ラジエータ33と、低温側流量調整弁34とを有しており、低温側熱媒体回路30の循環回路としての構成は同様である。
図7に示すように、当該低温側熱媒体回路30は、第1実施形態と異なり、圧縮機11の排熱を回収して利用する為の低温側回収部35を有している。低温側回収部35は、低温側流入配管36と、低温側流出配管37を有している。
低温側回収部35は、低温側熱媒体回路30を循環する低温側熱媒体に対して圧縮機11の排熱を吸熱させることで回収し、当該圧縮機11の排熱を低温側熱媒体回路30に受容させる。
当該低温側回収部35は、図示しない収容部と、低温側流入配管36と、低温側流出配管37とを有しており、相互に接続されている。従って、低温側回収部35における収容部、低温側流入配管36、低温側流出配管37は、低温側熱媒体回路30を循環する低温側熱媒体が流れる流路を構成している。
図7に示すように、低温側流入配管36は、チラー18における水通路の入口側に配置された低温側分岐部36aから分岐する配管である。当該低温側流入配管36は、低温側熱媒体回路30の収容部に接続されている。従って、低温側熱媒体回路30において、低温側分岐部36aで分岐した低温側熱媒体の流れは、低温側回収部35における収容部の内部に到達する。
そして、低温側流出配管37は、低温側回収部35の収容部から伸びており、低温側熱媒体回路30の循環回路に配置された低温側合流部37aに接続されている。当該低温側合流部37aは、チラー18における水通路の入口側において、低温側分岐部36aよりも低温側熱媒体の流れ方向下流側に位置している。
従って、低温側回収部35の収容部から流出した低温側熱媒体は、チラー18における水通路の入口側において、低温側熱媒体回路30にて車載機器32等を循環する低温側熱媒体と合流する。
当該低温側回収部35の収容部は、図2を用いて説明した高温側回収部25の収容部25aと同様に、圧縮機11の外表面を覆うように形成されており、圧縮機11及び圧縮機11に接続された冷媒配管の一部を内部に収容している。
従って、低温側流入配管36を流れた低温側熱媒体は、低温側回収部35の収容部の内部に流入して、圧縮機11の外表面に沿って流れる。この時、低温側熱媒体は、圧縮機11の排熱を吸熱して回収する。
その後、低温側熱媒体は、低温側回収部35の収容部から流出して、低温側流出配管37を介して、低温側熱媒体回路30の循環回路に合流する。これにより、低温側熱媒体回路30は、低温側回収部35における低温側熱媒体の流れを介して、圧縮機11の排熱を回収して受容することができる。
ここで、低温側回収部35の収容部には、図示しない蓄熱材が配置されている。当該蓄熱材は、蓄熱時に相変化を伴う潜熱蓄熱材であり、球状の樹脂製或いは金属製の複数のカプセルに封入されている。
当該低温側回収部35における蓄熱材の相変化温度は、所定の温度差を有した状態で、低温側回収部35の収容部に流入する低温側熱媒体の温度より高くなるように定められている。
そして、低温側回収部35における蓄熱材は、圧縮機11の排熱を蓄え、低温側熱媒体の温度が予め定められた温度よりも低下した場合に、当該低温側熱媒体に対して蓄熱した熱を放熱するように構成されている。
低温側回収部35における収容部の内部では、収容部の外殻と圧縮機11の外表面の間に、カプセルに封入された蓄冷材が多数配置されている。この為、低温側熱媒体は、低温側回収部35の収容部内部において、カプセルの隙間を流通して低温側流出配管37へ流れる。
低温側回収部35における蓄熱材としては、例えば、(水系の蓄熱材、パラフィンワックス系の蓄熱材、高級アルコール系の蓄熱材、無機塩系の蓄熱材)等を採用できる。水系の蓄熱材は、水や水和物等を含んでいる。そして、パラフィンワックス系の蓄熱材としては、例えば、C12ドデカン、C14テトラデカン、C16ペンタデカンを採用することができる。
又、高級アルコール系の蓄熱材としては、例えば、Diethylene glycol、Triethylene glycol、Tetrahydrofuranを用いることができる。そして、無機塩系の蓄熱材としては、例えば、Tetrahydrofuran clathrate hydrate、KCl (19.5 wt%) + H2O、Dioctylammonium iodide等を採用することができる。又、蓄熱材25bとして、これらの混合材料を採用することができる。
従って、圧縮機11の排熱によって周囲が蓄熱温度よりも高くなると、低温側回収部35の蓄熱材は、周囲から吸熱して相変化する。これにより、低温側回収部35における蓄熱材に対して、圧縮機11の排熱が蓄えられる。そして、当該蓄熱材は、低温側熱媒体の温度に近づくように顕熱変化する。低温側熱媒体の温度が蓄熱温度よりも低くなると、当該蓄熱材は、低温側熱媒体に対して、蓄えていた圧縮機11の排熱を放熱し相変化する。
従って、第2実施形態においては、低温側回収部35の収容部内に蓄熱材を配置することによって、当該低温側回収部35を蓄熱部40として構成している。第2実施形態におおける蓄熱部40は、圧縮機11の排熱を蓄熱しておき、低温側熱媒体の温度が予め定められた蓄熱温度よりも低くなると、蓄熱していた熱を低温側熱媒体に放熱する。つまり、第2実施形態に係る蓄熱部40も、本発明における蓄熱部として機能する。
続いて、第2実施形態におけるヒートポンプシステム1の作動について説明する。第2実施形態に係るヒートポンプシステム1においても、第1実施形態と同様に、複数の運転モードから適宜運転モードを切り替えることができる。これらの運転モードの切り替えは、制御装置60に予め記憶された制御プログラムが実行されることによって行われる。
図1、図7からわかるように、第2実施形態に係るヒートポンプサイクル10は、第1実施形態におけるヒートポンプサイクル10と同様の回路構成である。又、第2実施形態に係る高温側熱媒体回路20は、高温側回収部25を有していない点を除き、第1実施形態と同様の回路構成である。そして、第2実施形態に係る低温側熱媒体回路30は、低温側回収部35を有している点を除き、第1実施形態と同様の回路構成である。
従って、第2実施形態に係るヒートポンプシステム1は、第1実施形態と同様の制御を行うことで、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モードを実現することができる。当該ヒートポンプシステム1において、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モードで作動する際に、圧縮機11が作動される。
これにより、第2実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、何れの運転モードにおいても、低温側回収部35にて、圧縮機11の排熱を低温側熱媒体で吸熱して回収することができ、低温側回収部35内の蓄熱材にて圧縮機11の排熱を蓄熱することができる。
つまり、当該ヒートポンプシステム1によれば、低温側回収部35の低温側熱媒体や蓄熱材によって、圧縮機11の排熱を回収して蓄熱しておくことで、圧縮機11の排熱を無駄にすることなく、ヒートポンプサイクル10を介して有効に活用することができる。
低温側熱媒体回路30において、低温側分岐部36a及び低温側合流部37aが、チラー18における水通路の入口側に配置されている。即ち、チラー18に流入する低温側熱媒体の温度を圧縮機11の排熱によって高めることができる。
この結果、第2実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、暖房モードや除湿暖房モードにおいて、圧縮機11の排熱を有効に活用して、チラー18における吸熱量を増加させることができる。
以上説明したように、第2実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、ヒートポンプサイクル10の冷媒回路を切り替えることによって、複数の運転モードの内、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モードを実現することができ、車室内の快適な空調を行うことができる。
そして、当該ヒートポンプサイクル10では、同一の熱交換器へ高圧冷媒を流入させる冷媒回路と低圧冷媒を流入させる冷媒回路とを切り替えることがない。つまり、いずれの冷媒回路に切り替えても室内蒸発器16及びチラー18へ高圧冷媒を流入させる必要がないので、サイクル構成の複雑化を招くことなく簡素な構成で冷媒回路を切り替えることができる。
この運転モードの何れにおいても、ヒートポンプサイクル10における圧縮機11が作動される為、圧縮機11の排熱が発生する。当該ヒートポンプシステム1によれば、低温側熱媒体回路30の低温側回収部35を介して、圧縮機11の排熱を回収して、低温側熱媒体回路30にて利用することができる。
当該ヒートポンプシステム1において、低温側熱媒体回路30は、本発明における低温側熱受容部に相当し、低温側回収部35は、本発明における回収部に相当している。
このように構成することで、当該ヒートポンプシステム1は、低温側回収部35における圧縮機11の排熱の回収、回収した熱の輸送や、低温側熱媒体回路30における回収した熱の利用に際して、低温側熱媒体を介在させることができ、より効率良く、圧縮機11の発熱を取り扱うことができる。
そして、低温側熱媒体回路30は、車載機器32を有しており、作動に伴い生じる車載機器32の熱を低温側熱媒体に吸熱させ、車載機器32を冷却することができる。即ち、当該ヒートポンプシステム1によれば、ヒートポンプサイクル10及び低温側熱媒体回路30を用いることで、車載機器32の温度調整を行いつつ、車載機器32に生じた熱を有効に活用することができる。
又、低温側熱媒体回路30は、低温側ラジエータ33を有しており、外気の有する熱を低温側熱媒体に吸熱させることができる。これにより、当該ヒートポンプシステム1は、外気を熱源として利用することができる。
そして、チラー18における水通路の入口側に低温側分岐部36a及び低温側合流部37aが配置されている為、低温側回収部35は、低温側熱媒体回路30において、チラー18における水通路の入口側に配置されている。
これにより、当該ヒートポンプシステム1によれば、圧縮機11の排熱を回収した低温側熱媒体がチラー18に流入することになる為、チラー18における吸熱量を増大させることができる。
図7に示すように、第2実施形態に係るヒートポンプシステム1において、ヒートポンプサイクル10は、室内蒸発器16と、チラー18とを有している。室内蒸発器16は、冷却用膨張弁15aで減圧された冷媒と送風空気との熱交換により蒸発させ、送風空気から吸熱して冷却する。チラー18は、吸熱用膨張弁15bで減圧された冷媒と低温側熱媒体回路30の低温側熱媒体との熱交換により、低温側熱媒体から吸熱する。
当該ヒートポンプシステム1によれば、ヒートポンプサイクル10にこれらの2つの吸熱器を配置することで、例えば、低温側熱媒体と送風空気のような異なる2つの熱媒体と冷媒との熱交換を可能にすることができ、種々の用途に対応することができる。
更に、第2実施形態に係るヒートポンプシステム1の低温側熱媒体回路30において、低温側回収部35は、第1実施形態に係る高温側回収部25と同様に、収容部の内部に複数の蓄熱材を配置して構成されている。即ち、第2実施形態に係る低温側回収部35は、本発明に係る蓄熱部の機能を有している。
当該ヒートポンプシステム1によれば、低温側回収部35の収容部に配置された蓄熱材に対して、圧縮機11の排熱を蓄熱しておくことができ、低温側熱媒体の温度が予め定められていた温度よりも低下すると、蓄熱していた熱を低温側熱媒体に放熱させることができる。
従って、当該ヒートポンプシステム1によれば、低温側熱媒体の温度状況に応じて、蓄熱部40に蓄えられていた熱を、低温側熱媒体回路30にて利用することができる。つまり、当該ヒートポンプシステム1は、低温側熱媒体の状況に応じて、圧縮機11の排熱を柔軟に活用することができる。
(変形例)
第2実施形態に係るヒートポンプシステム1は、ヒートポンプサイクル10と、高温側熱媒体回路20と、低温側熱媒体回路30とを有していたが、この構成に限定されるものではない。即ち、図8に示すように、第2実施形態に係るヒートポンプシステム1にて、高温側熱媒体回路20を廃止した構成にすることができる。
この場合、ヒートポンプサイクル10における水−冷媒熱交換器12に替えて、室内凝縮器12aが配置される。当該室内凝縮器12aは、室内空調ユニット50のケーシング51内であって、第1実施形態におけるヒータコア22と同様の位置に配置されている。
当該室内凝縮器12aは、少なくとも暖房モード及び除湿暖房モード時に、送風機52にて送風された送風空気に対して、高圧冷媒の有する熱を放熱し送風空気を加熱する熱交換器である。
図8に示すように、当該変形例に係るヒートポンプシステム1は、車載機器32の温度調整機能を有しており、車室内の空調機能のうち、暖房モード及び除湿暖房モードを実現することができる。当該変形例におけるヒートポンプサイクル10及び低温側熱媒体回路30の制御内容については、既に説明済みである為、その説明を省略する。
従って、変形例に係るヒートポンプシステム1は、上述した第2実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第2実施形態と同様に得ることができる。即ち、当該ヒートポンプシステム1は、低温側熱媒体回路30及び低温側回収部35を用いて、圧縮機11の排熱を回収して有効に活用することができる。
(第3実施形態)
次に、上述した各実施形態とは異なる第3実施形態について、図9を参照しつつ説明する。
第3実施形態に係るヒートポンプシステム1は、上述した各実施形態と同様に、電気自動車に搭載されている。図9に示すように、当該ヒートポンプシステム1は、ヒートポンプサイクル10と、高温側熱媒体回路20と、低温側熱媒体回路30とを有しており、更に、室内空調ユニット50と、制御装置60等を有している。
第3実施形態においては、高温側熱媒体回路20及び低温側熱媒体回路30の構成が相違している。即ち、第3実施形態において、ヒートポンプサイクル10、室内空調ユニット50、制御装置60に係る構成は上述した実施形態と同様である。
第3実施形態に係る高温側熱媒体回路20は、上述した実施形態と同様に、高温側熱媒体ポンプ21と、ヒータコア22と、高温側ラジエータ23と、高温側流量調整弁24とを有しており、高温側熱媒体回路20の循環回路に係る構成は同様である。
第3実施形態に係る高温側熱媒体回路20は、第1実施形態と同様に、高温側回収部25を有している。当該高温側回収部25は、収容部25aと、高温側流入配管26と、高温側流出配管27とを有している。
図9に示すように、第3実施形態に係る高温側回収部25の収容部25aは、圧縮機11の外表面の半分程を覆うように構成されており、その内部に複数の蓄熱材25bが配置されている。第3実施形態に係る高温側回収部25の蓄熱材は、基本的に、第1実施形態における蓄熱材25bと同様の構成である。
そして、第3実施形態において、高温側分岐部26a及び高温側合流部27aは、高温側熱媒体回路20において、水−冷媒熱交換器12における水通路の入口側に配置されている。従って、水−冷媒熱交換器12における水通路の入口側において、高温側熱媒体が高温側流入配管26を介して、高温側回収部25の収容部へ流入し、圧縮機11の排熱を吸熱する。
そして、圧縮機11の排熱を吸熱した高温側熱媒体は、高温側流出配管27を介して流出し、高温側合流部27aにて合流して水−冷媒熱交換器12へ流入する。従って、第3実施形態においても、高温側回収部25は、高温側熱媒体を介して、圧縮機11の排熱の一部を回収して、高温側熱媒体回路20に受容させることができる。
又、第3実施形態に係る低温側熱媒体回路30は、上述した実施形態と同様に、低温側熱媒体ポンプ31と、車載機器32と、低温側ラジエータ33と、低温側流量調整弁34とを有しており、低温側熱媒体回路30の循環回路としての構成は同様である。
そして、第3実施形態に係る低温側熱媒体回路30は、第2実施形態と同様に、低温側回収部35を有している。当該低温側回収部35は、収容部と、低温側流入配管36と、低温側流出配管37とを有している。
第3実施形態に係る低温側回収部35の収容部は、圧縮機11の外表面のうち、高温側回収部25の収容部25aで覆われていない部分(即ち、圧縮機11の外表面における残りの半分程)を覆うように構成されており、その内部に複数の蓄熱材が配置されている。第3実施形態に係る低温側回収部35の蓄熱材は、基本的に、第2実施形態における蓄熱材と同様の構成である。
そして、第3実施形態において、低温側分岐部36a及び低温側合流部37aは、低温側熱媒体回路30において、チラー18における水通路の入口側に配置されている。従って、チラー18における水通路の入口側において、低温側熱媒体が低温側流入配管36を介して、低温側回収部35の収容部へ流入し、圧縮機11の排熱を吸熱する。
そして、圧縮機11の排熱を吸熱した低温側熱媒体は、低温側流出配管37を介して流出し、低温側合流部37aにて合流してチラー18へ流入する。従って、第3実施形態においても、低温側回収部35は、低温側熱媒体を介して、圧縮機11の排熱の一部を回収して、低温側熱媒体回路30に受容させることができる。
続いて、第3実施形態におけるヒートポンプシステム1の作動について説明する。第3実施形態に係るヒートポンプシステム1においても、上述した実施形態と同様に、複数の運転モードから適宜運転モードを切り替えることができる。これらの運転モードの切り替えは、制御装置60に予め記憶された制御プログラムが実行されることで行われる。
図9からわかるように、第3実施形態に係るヒートポンプサイクル10は、上述した実施形態におけるヒートポンプサイクル10と同様の回路構成である。又、第3実施形態に係る高温側熱媒体回路20は、第1実施形態と同様の回路構成である。そして、第3実施形態に係る低温側熱媒体回路30は、第2実施形態と同様の回路構成である。
従って、第3実施形態に係るヒートポンプシステム1は、上述した実施形態と同様の制御を行うことで、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モードを実現することができる。当該ヒートポンプシステム1において、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モードで作動する際に、圧縮機11が作動される。
これにより、第3実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、何れの運転モードにおいても、高温側回収部25にて、圧縮機11の排熱を高温側熱媒体で吸熱して回収すると共に、低温側回収部35にて、圧縮機11の排熱を低温側熱媒体で吸熱して回収することができる。
そして、当該ヒートポンプシステム1によれば、高温側回収部25内の蓄熱材にて、圧縮機11の排熱を蓄熱しておき、高温側熱媒体の温度状況に応じて、蓄熱していた熱を活用することができる。同時に、当該ヒートポンプシステム1は、低温側回収部35内の蓄熱材にて、圧縮機11の排熱を蓄熱することができ、低温側熱媒体の温度状況に応じて、蓄熱していた熱を活用することができる。
つまり、第3実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、高温側熱媒体回路20と低温側熱媒体回路30において、圧縮機11の排熱を無駄にすることなく、それぞれ、ヒートポンプサイクル10を介して有効に活用することができる。
高温側熱媒体回路20側では、高温側熱媒体の温度は、高温側回収部25にて回収した圧縮機11の排熱によって上昇する。つまり、当該ヒートポンプシステム1によれば、暖房モードや除湿暖房モードにおける熱源として、水−冷媒熱交換器12における高圧冷媒の熱に加えて、圧縮機11の排熱を利用することができるので、暖房モードや除湿暖房モード時におけるヒートポンプシステム1の暖房能力を向上させることができる。
又、低温側熱媒体回路30側においては、チラー18に流入する低温側熱媒体の温度が低温側回収部35で回収された圧縮機11の排熱によって高められる。当該ヒートポンプシステム1によれば、暖房モードや除湿暖房モードにおいて、圧縮機11の排熱を有効に活用して、チラー18における吸熱量を増加させることができる。
以上説明したように、第3実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、上述した第1実施形態及び第2実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態及び第2実施形態と同様に得ることができる。
即ち、当該ヒートポンプシステム1は、高温側熱媒体回路20及び高温側回収部25を用いて圧縮機11の排熱を回収して、高温側熱媒体回路20にて有効に活用することができる。同時に、当該ヒートポンプシステム1は、低温側熱媒体回路30及び低温側回収部35を用いて圧縮機11の排熱を回収して、低温側熱媒体回路30にて有効に活用することができる。
又、当該ヒートポンプシステム1によれば、高温側熱媒体回路20側における圧縮機11の排熱の活用と、低温側熱媒体回路30側における圧縮機11の排熱の活用とを並行して実現することができるので、圧縮機11の排熱をより有効に活用することができる。
(第4実施形態)
次に、上述した各実施形態とは異なる第4実施形態について、図10を参照しつつ説明する。
第4実施形態に係るヒートポンプシステム1は、上述した各実施形態と同様に、電気自動車に搭載されている。図10に示すように、当該ヒートポンプシステム1は、ヒートポンプサイクル10と、高温側熱媒体回路20と、低温側熱媒体回路30とを有しており、更に、室内空調ユニット50と、制御装置60等を有している。
第4実施形態においては、ヒートポンプサイクル10の構成が相違している。即ち、第4実施形態において、高温側熱媒体回路20、低温側熱媒体回路30、室内空調ユニット50、制御装置60に係る構成は上述した第1実施形態と同様である。
図10に示すように、第4実施形態に係るヒートポンプサイクル10においては、冷却用膨張弁15a、吸熱用膨張弁15b、室内蒸発器16、チラー18の配置が上述した第1実施形態と異なっている。即ち、第4実施形態においても、圧縮機11の吐出口には、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。
水−冷媒熱交換器12の冷媒出口側には、冷却用膨張弁15aが接続されている。冷却用膨張弁15aは、第1実施形態と同様に、電気式膨張弁によって構成されており、全開機能と全閉機能とを有している。当該冷却用膨張弁15aは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える回路切替部としての機能とを兼ね備えている。
第4実施形態において、冷却用膨張弁15aの出口には、三方弁16bを介して、室内蒸発器16の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器16は、低圧冷媒と送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、送風空気を冷却する冷却用蒸発器である。
図10に示すように、室内蒸発器16の冷媒出口には、吸熱用膨張弁15bが接続されている。当該吸熱用膨張弁15bは、第1実施形態と同様に、電気式膨張弁によって構成されており、全開機能と全閉機能とを有している。吸熱用膨張弁15bは、冷媒を減圧させる減圧部としての機能と、冷媒回路を切り替える回路切替部としての機能とを兼ね備えている。
ここで、冷却用膨張弁15aの出口から室内蒸発器16の冷媒入口側の間には、三方弁16bが配置されている。三方弁16bにおける一つの流出口には、バイパス流路16aが接続されている。当該バイパス流路16aの他端側は、室内蒸発器16の冷媒出口側から吸熱用膨張弁15bの入口までの間に接続されている。
従って、三方弁16bの作動を制御することによって、冷媒が室内蒸発器16を通過する流路と、冷媒が室内蒸発器16を迂回する流路とを切り替えることができる。当該三方弁16bは、回路切替制御部60bによって制御される。
そして、吸熱用膨張弁15bの出口には、チラー18の冷媒入口側が接続されている。チラー18は、暖房モード時や除湿暖房モード時等において、吸熱用膨張弁15bにて減圧された低圧冷媒と、低温側熱媒体回路30の低温側熱媒体とを熱交換させ、低圧冷媒を蒸発させて冷媒に吸熱作用を発揮させる吸熱用蒸発器である。
そして、チラー18の冷媒出口側には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。つまり、第4実施形態に係るヒートポンプサイクル10では、室内蒸発器16とチラー18が直列的に接続されている。尚、第4実施形態に係るヒートポンプシステム1の制御系についても、基本的に第1実施形態と同様である為、その説明を省略する。
続いて、第4実施形態におけるヒートポンプシステム1の作動について説明する。当該ヒートポンプシステム1は、上述した実施形態と同様に、予め記憶された空調制御プログラムに従って、冷房モード、暖房モード、除湿暖房モードを切り替える。
以下に、第4実施形態に係る冷房モードにおける作動、暖房モードにおける作動、除湿暖房モードにおける作動について説明する。
(a)冷房モード
当該冷房モードでは、制御装置60が、冷却用膨張弁15aを所定の絞り開度で開き、吸熱用膨張弁15bを全開状態とする。又、三方弁16bは、バイパス流路16aを閉塞するように制御される。この結果、冷却用膨張弁15aから流出した冷媒は室内蒸発器16に流入する。
従って、第4実施形態に係る冷房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷却用膨張弁15a→三方弁16b→室内蒸発器16→吸熱用膨張弁15b→チラー18→圧縮機11の順で冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
そして、このサイクル構成で、制御装置60は、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号に基づいて、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。
例えば、制御装置60は、第1実施形態と同様に、高温側熱媒体回路20における高温側熱媒体ポンプ21及び高温側流量調整弁24の作動を制御する。これにより、高温側熱媒体回路20では、水−冷媒熱交換器12の水通路から流出した高温側熱媒体の全流量が高温側ラジエータ23へ流入する状態となる。
又、当該制御装置60は、低温側熱媒体回路30における低温側熱媒体ポンプ31及び低温側流量調整弁34についても、第1実施形態と同様に制御する。尚、当該制御装置60は、その他の各種制御対象機器についても、適宜その作動を制御する。
従って、第4実施形態においても、冷房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水−冷媒熱交換器12へ流入する。水−冷媒熱交換器12では、高温側熱媒体ポンプ21が作動しているので、高圧冷媒と高温側熱媒体が熱交換して、高圧冷媒が冷却されて凝縮し、高温側熱媒体が加熱される。
高温側熱媒体回路20では、水−冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体が、高温側流量調整弁24を介して、高温側ラジエータ23へ流入する。高温側ラジエータ23へ流入した高温側熱媒体は、外気と熱交換して放熱する。これにより、高温側熱媒体が冷却される。高温側ラジエータ23にて冷却された高温側熱媒体は、高温側熱媒体ポンプ21に吸入されて再び水−冷媒熱交換器12の水通路へ圧送される。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路にて冷却された高圧冷媒は、冷却用膨張弁15aへ流入して減圧される。冷却用膨張弁15aの絞り開度は、室内蒸発器16の出口側の冷媒の過熱度が概ね3℃となるように調整される。
冷却用膨張弁15aにて減圧された低圧冷媒は、室内蒸発器16へ流入する。室内蒸発器16へ流入した冷媒は、送風機52から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、熱交換対象流体である送風空気が冷却される。
室内蒸発器16から流出した冷媒は、吸熱用膨張弁15bで減圧されることなく、チラー18へ流入する。そして、当該冷媒は、チラー18においてほとんど熱交換することなく、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
従って、第4実施形態における冷房モードでは、室内蒸発器16にて冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
第4実施形態に係る冷房モードにおいても、圧縮機11の作動に伴い、圧縮機11の排熱が発生する。上述した実施形態と同様に、高温側回収部25では、圧縮機11の排熱を高温側熱媒体で吸熱して回収することができ、更に、蓄熱材25bにて圧縮機11の排熱を蓄熱しておくことができる。
つまり、当該ヒートポンプシステム1によれば、高温側回収部25の高温側熱媒体や蓄熱材25bによって、圧縮機11の排熱を回収して蓄熱しておき、適宜利用することができる。
(b)暖房モード
暖房モードにおいて、当該制御装置60は、冷却用膨張弁15aを全開とし、吸熱用膨張弁15bを所定の絞り開度で開く。この時、三方弁16bは、バイパス流路16aを全開にするように制御される。これにより、冷却用膨張弁15aを通過した冷媒は、室内蒸発器16に流入することなく、バイパス流路16aを介して、吸熱用膨張弁15bに流入する。
従って、暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→三方弁16b→バイパス流路16a→吸熱用膨張弁15b→チラー18→圧縮機11の順で冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。つまり、暖房モードでは、チラー18で吸熱した熱を利用して送風空気を加熱することを目的とした冷媒回路に切り替えられる。
そして、このサイクル構成で、制御装置60は、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号に基づいて、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、吸熱用膨張弁15bの絞り開度は、目標吹出温度TAO等に基づいて、暖房モードに関する制御マップを参照して定められる。
又、制御装置60は、第1実施形態と同様に、高温側熱媒体回路20における高温側熱媒体ポンプ21及び高温側流量調整弁24の作動を制御する。これにより、高温側熱媒体回路20では、水−冷媒熱交換器12の水通路から流出した高温側熱媒体の全流量がヒータコア22へ流入する状態となる。
又、当該制御装置60は、低温側熱媒体回路30における低温側熱媒体ポンプ31及び低温側流量調整弁34についても、第1実施形態と同様に制御する。尚、当該制御装置60は、その他の各種制御対象機器についても、適宜その作動を制御する。
暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水−冷媒熱交換器12へ流入する。水−冷媒熱交換器12では、高温側熱媒体ポンプ21が作動しているので、高圧冷媒と高温側熱媒体が熱交換して、高圧冷媒が冷却されて凝縮し、高温側熱媒体が加熱される。
高温側熱媒体回路20では、水−冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体が、高温側流量調整弁24を介して、ヒータコア22へ流入する。ヒータコア22へ流入した高温側熱媒体は、エアミックスドア54がヒータコア22側の通風路を全開としているので、室内蒸発器16を通過した送風空気と熱交換して放熱する。
これにより、熱交換対象流体である送風空気が加熱されて、送風空気の温度が目標吹出温度TAOに近づく。ヒータコア22から流出した高温側熱媒体は、高温側熱媒体ポンプ21に吸入されて再び水−冷媒熱交換器12の水通路へ圧送される。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した高圧冷媒は、冷却用膨張弁15aへ流入する。この時、冷却用膨張弁15aが全開となっている為、高圧冷媒は減圧されることなく、三方弁16bに流入してバイパス流路16aを流通する。従って、暖房モードにおいて、高圧冷媒は、室内蒸発器16を迂回して吸熱用膨張弁15bに流入する。
そして、吸熱用膨張弁15bに流入した高圧冷媒は、所定の絞り開度に制御されている為、低圧冷媒となるまで減圧される。吸熱用膨張弁15bにて減圧された低圧冷媒は、チラー18へ流入する。
ここで、低温側熱媒体回路30では、低温側熱媒体ポンプ31の作動によって、低温側熱媒体が循環回路を循環している。当該低温側熱媒体は、車載機器32の水通路を通過する際に、車載機器32に生じている熱を吸熱している。
又、低温側熱媒体は、低温側ラジエータ33を通過する際に、外気ファンによって送風される外気から吸熱している。つまり、低温側熱媒体は、車載機器32や低温側ラジエータ33にて吸熱した状態で、チラー18の水通路に流入している。
従って、チラー18に流入した低圧冷媒は、車載機器32の熱や外気の熱を有する低温側熱媒体から吸熱して蒸発する。チラー18から流出した冷媒は、そのまま圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
従って、暖房モードでは、ヒータコア22で送風空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。即ち、当該ヒートポンプシステム1は、暖房モードにおいて、低温側熱媒体回路30にて車載機器32又は外気から吸熱した熱を、ヒートポンプサイクル10で汲み上げて、高温側熱媒体回路20を介して、送風空気の加熱に利用することができる。
そして、第4実施形態に係る暖房モードにおいても、ヒートポンプサイクル10における圧縮機11の作動が必要となり、圧縮機11の排熱が発生する。当該ヒートポンプシステム1は、高温側熱媒体回路20の高温側回収部25にて、高温側熱媒体を介して、圧縮機11の排熱を回収することができる。
第4実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、第1実施形態と同様に、低温側熱媒体回路30から汲み上げた熱を含む高圧冷媒の熱に加え、圧縮機11の排熱を利用して、高温側熱媒体回路20の高温側熱媒体を加熱し、ヒータコア22にて送風空気へ放熱させることができる。
これにより、当該ヒートポンプシステム1は、暖房モードにおける熱源として、水−冷媒熱交換器12における高圧冷媒の熱に加えて、圧縮機11の排熱を利用することができるので、ヒートポンプシステム1における暖房能力を向上させることができる。
(c)除湿暖房モード
除湿暖房モードにおいて、当該制御装置60は、冷却用膨張弁15a及び吸熱用膨張弁15bをそれぞれ所定の絞り開度で開く。この時、三方弁16bは、バイパス流路16aを閉塞するように制御される。これにより、冷却用膨張弁15aを通過した冷媒は、バイパス流路16aに流入することなく、室内蒸発器16に流入する。
従って、除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→冷却用膨張弁15a→三方弁16b→室内蒸発器16→吸熱用膨張弁15b→チラー18→圧縮機11の順で冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、除湿暖房モードでは、室内蒸発器16にて冷却された送風空気を、チラー18で吸熱した熱を利用して加熱することを目的とした冷媒回路に切り替えられる。
そして、このサイクル構成で、制御装置60は、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号に基づいて、出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、冷却用膨張弁15a、吸熱用膨張弁15bの絞り開度は、目標吹出温度TAO等に基づいて、それぞれ除湿暖房モードに関する制御マップを参照して定められる。
又、制御装置60は、第1実施形態と同様に、高温側熱媒体回路20における高温側熱媒体ポンプ21及び高温側流量調整弁24の作動を制御する。又、当該制御装置60は、低温側熱媒体回路30における低温側熱媒体ポンプ31及び低温側流量調整弁34についても、第1実施形態と同様に制御する。尚、当該制御装置60は、その他の各種制御対象機器についても、適宜その作動を制御する。
除湿暖房モードのヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水−冷媒熱交換器12へ流入する。水−冷媒熱交換器12では、高温側熱媒体ポンプ21が作動しているので、高圧冷媒と高温側熱媒体が熱交換して、高圧冷媒が冷却されて凝縮し、高温側熱媒体が加熱される。
高温側熱媒体回路20では、水−冷媒熱交換器12にて加熱された高温側熱媒体が、高温側流量調整弁24を介して、ヒータコア22へ流入する。ヒータコア22へ流入した高温側熱媒体は、エアミックスドア54がヒータコア22側の通風路を全開としているので、室内蒸発器16を通過した送風空気と熱交換して放熱する。
これにより、熱交換対象流体である送風空気が加熱されて、送風空気の温度が目標吹出温度TAOに近づく。ヒータコア22から流出した高温側熱媒体は、高温側熱媒体ポンプ21に吸入されて再び水−冷媒熱交換器12の水通路へ圧送される。
又、高温側流量調整弁24の作動によって、高温側熱媒体の一部は、高温側ラジエータ23に流入する。高温側ラジエータ23へ流入した高温側熱媒体は、外気と熱交換して放熱する。当該高温側熱媒体は、高温側熱媒体ポンプ21に吸入されて再び水−冷媒熱交換器12の水通路へ圧送される。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した高圧冷媒は、冷却用膨張弁15aへ流入して減圧される。冷却用膨張弁15aにて減圧された低圧冷媒は、三方弁16bを通過して室内蒸発器16へ流入し、送風機52から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、熱交換対象流体である送風空気が冷却される。
そして、室内蒸発器16から流出した低圧冷媒は、吸熱用膨張弁15bへ流入して更に減圧される。吸熱用膨張弁15bにて減圧された低圧冷媒は、チラー18へ流入する。
ここで、除湿暖房モードにおいても、低温側熱媒体回路30では、低温側熱媒体ポンプ31の作動によって、低温側熱媒体が循環回路を循環している。当該低温側熱媒体は、車載機器32の水通路を通過する際に、車載機器32に生じている熱を吸熱している。
又、低温側熱媒体は、低温側ラジエータ33を通過する際に、外気ファンによって送風される外気から吸熱している。つまり、低温側熱媒体は、車載機器32や低温側ラジエータ33にて吸熱した状態で、チラー18の水通路に流入している。
従って、チラー18に流入した低圧冷媒は、車載機器32の熱や外気の熱を有する低温側熱媒体から吸熱して蒸発する。チラー18から流出した冷媒は、そのまま圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
従って、除湿暖房モードでは、室内蒸発器16で冷却された送風空気を、ヒータコア22で加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。即ち、当該ヒートポンプシステム1は、除湿暖房モードにおいても、低温側熱媒体回路30にて車載機器32又は外気から吸熱した熱を、ヒートポンプサイクル10で汲み上げて、高温側熱媒体回路20を介して、送風空気の加熱に利用することができる。
そして、当該除湿暖房モードにおいても、ヒートポンプサイクル10における圧縮機11の作動が必要となり、圧縮機11の排熱が発生する。当該ヒートポンプシステム1は、高温側熱媒体回路20の高温側回収部25にて、高温側熱媒体を介して、圧縮機11の排熱を回収することができる。
当該ヒートポンプシステム1によれば、低温側熱媒体回路30から汲み上げた熱を含む高圧冷媒の熱に加え、圧縮機11の排熱を用いて、高温側熱媒体回路20の高温側熱媒体を加熱し、室内蒸発器16にて冷却された空気をヒータコア22にて加熱することができる。
これにより、当該ヒートポンプシステム1は、除湿暖房モードにおける熱源として、水−冷媒熱交換器12における高圧冷媒の熱に加えて、圧縮機11の排熱を利用することができるので、除湿暖房モード時におけるヒートポンプシステム1の暖房能力を向上させることができる。
以上説明したように、第4実施形態に係るヒートポンプシステム1によれば、上述した第1実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。
即ち、第4実施形態に係るヒートポンプシステム1は、ヒートポンプサイクル10の構成を室内蒸発器16とチラー18が直列に接続された構成とした場合であっても、高温側熱媒体回路20及び高温側回収部25を用いて、圧縮機11の排熱を回収して有効に活用することができる。
尚、第4実施形態におけるヒートポンプサイクル10では、暖房モード時等において室内蒸発器16での熱交換(即ち、送風空気の冷却)を抑制する為に、バイパス流路16a及び三方弁16bを配置して、室内蒸発器16を迂回させて冷媒を流す構成であったが、この態様に限定されるものではない。
例えば、室内蒸発器16における送風空気との熱交換を防止することができればよく、送風空気の流路を切り替えて、送風空気が室内蒸発器16を迂回するように構成しても良い。具体的には、送風機52と室内蒸発器16の間に開閉可能なシャッター装置を配置すると共に、ケーシング51において室内蒸発器16を迂回するバイパス流路を形成しても良い。
又、第4実施形態に係るヒートポンプシステム1は、第1実施形態におけるヒートポンプサイクル10の構成を変更した例であったが、第4実施形態に係るヒートポンプサイクル10の構成を上述した実施形態等に適用することも可能である。即ち、第4実施形態に係るヒートポンプサイクル10を、図4〜図6に示す第1実施形態の第1変形例〜第3変形例におけるヒートポンプサイクル10に適用しても良い。
又、第4実施形態に係るヒートポンプサイクル10を、図7、図8に示す第2実施形態及びその変形例におけるヒートポンプサイクル10に適用したり、図9に示す第3実施形態に係るヒートポンプサイクル10に適用したりすることも可能である。何れの場合についても、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した各実施形態を適宜組み合わせても良いし、上述した実施形態を種々変形することも可能である。
(1)上述した実施形態においては、本発明における熱回収部としての高温側回収部25は、高温側分岐部26aにて高温側熱媒体を分岐させる高温側流入配管26と、高温側合流部27aにて高温側熱媒体を合流させる高温側流出配管27とを有している。
又、低温側回収部35は、低温側分岐部36aにて低温側熱媒体を分岐させる低温側流入配管36と、低温側合流部37aにて低温側熱媒体を合流させる低温側流出配管37とを有している。
即ち、上述した実施形態においては、熱回収部にて圧縮機11の排熱を回収する為の熱媒体の流れと、熱媒体回路を循環する熱媒体の流れが並列になるように構成していたが、この態様に限定されるものではない。例えば、熱媒体回路を流れる熱媒体の全量が熱回収部の収容部に流入し、収容部にて圧縮機11の排熱を回収した後、熱媒体回路の構成機器に流入するように構成してもよい。
この構成を第2実施形態に適用した例を図11に示す。図11に示すように、低温側熱媒体ポンプ31の吐出口側には、低温側流入配管36が接続されている。この時、第2実施形態のように、低温側分岐部36aは配置されていない為、低温側熱媒体の全量が低温側流入配管36に流入する。
低温側流入配管36は、低温側回収部35の収容部に接続されている為、収容部に流入した低温側熱媒体は圧縮機11の排熱を吸熱して、低温側流出配管37へ流出する。当該低温側流出配管37は、チラー18における水通路の入口側に接続されている。
つまり、図11に示す例によれば、低温側熱媒体回路30における低温側熱媒体の全量が、低温側流入配管36、低温側流出配管37を経由して、低温側回収部35にて圧縮機11の排熱を吸熱する。このように構成した場合であっても、上述した各実施形態と同様の効果を発揮する。
尚、図11では、図7に示す第2実施形態に対して適用した場合について説明したが、この態様に限定されるものではない、上述した各実施形態及び各変形例に対して適用することも可能である。
(2)又、上述した実施形態における高温側熱媒体回路20は、高温側熱媒体の流れに関して、ヒータコア22と高温側ラジエータ23とを並列に接続していたが、この態様に限定されるものではない。
例えば、高温側熱媒体回路20として、図12に示す構成を採用することも可能である。図12に示す高温側熱媒体回路20において、高温側熱媒体ポンプ21の吐出口側には、水−冷媒熱交換器12における水通路の入口側が接続されている。水−冷媒熱交換器12における水通路の出口側には、ヒータコア22の入口側が接続されている。
ヒータコア22の出口側には、高温側流量調整弁24の流入口が接続されている。高温側流量調整弁24における流出口の一方には、高温側ラジエータ23の入口側が接続されており、高温側流量調整弁24における流出口の他方には、高温側バイパス流路24aが接続されている。
高温側バイパス流路24aの他端側は、高温側ラジエータ23の出口側に接続されている。高温側バイパス流路24aの他端側と高温側ラジエータ23の出口側は、高温側熱媒体ポンプ21の吸入口側に接続されている。
つまり、図12に示すように、高温側熱媒体回路20として、ヒータコア22及び高温側ラジエータ23を直列的に接続した構成を採用することができる。上述した各実施形態に係る高温側熱媒体回路20を、図12に示す構成とした場合であっても、各ヒートポンプシステム1は、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、各実施形態と同様に得ることができる。
(3)そして、上述した実施形態においては、例えば、図2に示す高温側回収部25のように、熱回収部を構成する収容部の内部に対して、複数の蓄熱材を配置することで蓄熱部40を構成していたが、この態様に限定されるものではない。本発明における蓄熱部40は、圧縮機11の排熱を蓄熱可能であれば様々な態様を採用することができる。
例えば、図2と同様に高温側回収部25を例に挙げて説明する。図13に示すように、高温側回収部25における高温側流出配管27に蓄熱器45を配置しても良い。当該蓄熱器45は、高温側流出配管27が接続された容器45aと、容器45a内に配置された複数の蓄熱材45bによって構成されている。当該蓄熱材45bは、第1実施形態における蓄熱材25bと同様の構成である。
従って、図11に示す構成によれば、高温側流入配管26を流通した高温側熱媒体は、収容部25a内において、圧縮機11の周囲を流れることで、圧縮機11の排熱を吸熱する。そして、当該高温側熱媒体は、収容部25aから高温側流出配管27へ流出する。
高温側流出配管27を流通した高温側熱媒体は、蓄熱器45の容器45a内部に流入する。高温側熱媒体は、蓄熱器45の容器45aにおいて、カプセル状の蓄熱材45bの隙間を通過して、高温側流出配管27から高温側熱媒体回路20へ流れていく。
この時、当該高温側熱媒体は、収容部25a内にて圧縮機11の排熱で加熱されている為、蓄熱温度の条件を満たせば、蓄熱器45における各蓄熱材45bに圧縮機11の排熱を蓄熱させることができる。つまり、図11に示す蓄熱器45は、本発明における蓄熱部として機能する。
尚、図11では、蓄熱器45を、高温側熱媒体回路20における蓄熱部として採用した場合について説明しているが、低温側熱媒体回路30における蓄熱部として採用することも可能である。この場合、蓄熱器45の容器45aは、低温側流出配管37に配置することが望ましい。又、この場合における蓄熱材45bとしては、第2実施形態に係る蓄熱材が採用される。
(4)又、上述した実施形態においては、本発明に係る高温側熱受容部として、高温側熱媒体回路20を採用すると共に、本発明に係る低温側熱受容部として、低温側熱媒体回路30を採用していたが、この態様に限定されるものではない。
本発明に係る高温側熱受容部及び低温側熱受容部は、回収部によって回収された圧縮機11の排熱を受容可能であればよく、熱媒体回路に限定されるものではない。例えば、高温側熱受容部や低温側熱受容部として、金属ブロック等を用いることも可能である。
(5)そして、上述した実施形態においては、図2、図13に示すように、回収部を構成する収容部25aの内部に、圧縮機11の少なくとも一部を配置して、当該圧縮機11の周囲を流れる熱媒体によって圧縮機11の排熱を回収していたが、この態様に限定されるものではない。
例えば、本発明に係る回収部の構成として、圧縮機11の外表面に対して熱媒体配管を接触させるように配置して、熱媒体配管を介して、圧縮機11の排熱を熱媒体に回収させるように構成することも可能である。
この時、圧縮機11の排熱をより多く回収する為に、圧縮機11の外表面と熱媒体配管との接触面積を大きくすることが望ましい。例えば、圧縮機11の外表面に対して熱媒体配管を巻きつけるように配置しても良いし、圧縮機11の外表面に対してサーペンタイン状に熱媒体配管を配置しても良い。