JP2019094816A - 過給機のサージング回避制御システム、過給機、サージング回避制御補助システム、サージング回避制御方法、及びサージング回避制御補助方法 - Google Patents

過給機のサージング回避制御システム、過給機、サージング回避制御補助システム、サージング回避制御方法、及びサージング回避制御補助方法 Download PDF

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Abstract

【課題】より効果的にサージングを回避することのできる過給機のサージング回避制御システム、過給機、及びサージング回避制御補助システムを提供することを目的とする。【解決手段】内燃機関4へ空気を圧送する圧縮機7と、圧縮機7を駆動する電動モータ8と、圧縮機7をバイパスするバイパス管9と、バイパス管9の空気の流量を調整する調整弁10とを備える過給機のサージング回避制御システムであって、圧縮機7においてサージングが発生する条件に係る情報を格納する記憶部と、圧縮機7におけるロータの回転数、圧縮機7を流れる空気流量、及び圧縮機7における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比の少なくともいずれか2つを検出する検出部11と、圧縮機7にサージングが発生する可能性があるか否かを判定する判定部と、調整弁の開度を制御する調整弁制御部と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、過給機のサージング回避制御システム、過給機、サージング回避制御補助システム、サージング回避制御方法、及びサージング回避制御補助方法に関するものである。
内燃機関が吸入する空気の圧力を高め、より高い燃焼エネルギーを得るために、内燃機関の吸入口側には過給機(圧縮機)が用いられている。過給機として用いられる圧縮機において、例えば、圧縮機におけるロータの回転数に対して吸込み空気量(空気流量)が極端に減少すると、圧縮機内部に渦流を生じ、激しい圧力振動が誘起される可能性がある。このような振動はサージングと呼ばれ、圧縮機の振動、騒音、または圧縮機の破損を招く恐れがある。圧縮機の運転状態とサージングとの関係は、圧縮機の性能曲線(所謂コンプレッサマップ)によって表される。
特許文献1では、電動モータアシスト付きの排気タービン式過給機において、コンプレッサマップを用いてサージングの発生を判定し、サージングの発生が判定された場合には、電動モータを発電機として動作させ、制動作用によって圧縮機の回転数を落とし、サージングを回避することが開示されている。
特表2017−509822号公報
しかしながら、近年、排気タービン式のアシストとしてではなく、電動モータのみによって過給機を駆動する電動過給機が登場しており、電動過給機に用いられる圧縮機のサージングが課題となっている。具体的には、排気タービン式では、タービンと圧縮機が同軸で接続されており、内燃機関の排気によってタービンが受ける仕事があるため、圧縮機が急に停止することがない。
一方で、電動過給機では、駆動源である電動モータが停止すると、圧縮機を駆動する力がなくなってしまうため、排気タービン式と比較して、圧縮機の回転数が急速に低下して停止する(急停止)。
また、電動過給機では、電動モータが停止すると圧縮機が停止し、内燃機関への給気ができなくなることから、圧縮機に対してバイパス管が設けられる。そして、圧縮機が停止しているときには、バイパス管を介して内燃機関へ空気が供給される。しかし、圧縮機が停止する場合に、バイパス管へ空気を流しすぎると、圧縮機の空気流量が激減してサージングが発生する可能性がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、より効果的にサージングを回避することのできる過給機のサージング回避制御システム、過給機、サージング回避制御補助システム、サージング回避制御方法、及びサージング回避制御補助方法を提供することを目的とする。
本発明の第1態様は、内燃機関へ空気を圧送する圧縮機と、前記圧縮機を駆動する電動モータと、前記圧縮機における吸気側と吐出側とをバイパスするバイパス管と、前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管を流れる空気の流量を調整する調整弁と、を備える過給機のサージング回避制御システムであって、前記圧縮機においてサージングが発生する条件に係る情報を格納する記憶部と、前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比の少なくともいずれか2つを検出する検出部と、前記検出部による検出結果と前記記憶部に格納された情報とに基づいて、前記圧縮機にサージングが発生する可能性があるか否かを判定する判定部と、前記判定部による判定結果に基づいて、前記調整弁の開度を制御する調整弁制御部と、を備える過給機のサージング回避制御システムである。
上記のような構成によれば、より安定的にサージングの発生を回避することが可能となる。すなわち、一般的に、圧縮機に発生するサージングは、圧縮機におけるロータの回転数、圧縮機を流れる空気流量、及び圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比に依存している。一方で、バイパス管に設けられた調整弁を制御することで、圧縮機を流れる空気流量を制御することができる。このため、圧縮機におけるロータの回転数、圧縮機を流れる空気流量、及び圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比を検出し、該検出の結果とサージングが発生する条件に係る情報とに基づいて、圧縮機にサージングが発生する可能性があるか否かを判定し、該判定の結果を用いて調整弁の開度を制御することで、適切に圧縮機の空気流量を制御することができ、圧縮機にサージングが発生することを効果的に回避することができる。
上記サージング回避制御システムにおいて、前記圧縮機においてサージングが発生する条件に係る情報とは、前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比をパラメータとして、安定動作領域、サージング領域、及び前記安定動作領域内における前記サージング領域側に予め設定された準安定動作領域が示されたマップであり、前記判定部は、前記検出部による検出結果を用いて、現在の前記圧縮機の動作点を特定し、前記動作点が準安定動作領域内にあるか否かを判定することによって、前記圧縮機にサージングが発生する可能性があるか否かを判定することとしてもよい。
上記のような構成によれば、圧縮機におけるロータの回転数、圧縮機を流れる空気流量、及び圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比をパラメータとして安定動作領域、サージング領域とが示されたマップ(所謂コンプレッサマップ)を用い、圧縮機にサージングが発生する可能性があるか否かを簡便に判定することができる。
上記サージング回避制御システムにおいて、前記圧縮機においてサージングが発生する条件に係る情報とは、前記圧縮機の仮想モデルであり、前記判定部は、前記検出部による検出結果を用いて、現在の前記圧縮機の動作点を特定し、前記仮想モデルを前記動作点にて仮想的に動作させ、前記圧縮機にサージングが発生する可能性があるか否かを判定することとしてもよい。
上記のような構成によれば、圧縮機におけるロータの回転数、圧縮機を流れる空気流量、及び圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比を検出して現在の圧縮機の動作点を特定し、仮想モデルを該動作点にて仮想的に動作させさせることで、圧縮機にサージングが発生する可能性があるか否かを簡便に判定することができる。
上記サージング回避制御システムにおいて、前記電動モータを停止させる電動モータ停止制御部を備え、前記調整弁制御部は、前記電動モータ停止制御部によって停止させる場合に、前記判定部による判定結果に基づいて、前記調整弁を開く速度を制御することとしてもよい。
上記のような構成によれば、圧縮機の空気流量を適切に減少させることができ、より安定的にサージングの発生を回避しつつ、圧縮機を安全に停止させることができる。すなわち、圧縮機を停止させる場合には、圧縮機の回転数が低下するが、調整弁を開きすぎると圧縮機の回転数に対して圧縮機の空気流量が低下しすぎて、サージングが発生する可能性がある。このため、圧縮機を停止させる場合には、判定部による判定結果に基づいて調整弁を開く速度を制御することで、圧縮機の空気流量を適切に減少させることができ、より安定的にサージングの発生を回避しつつ、圧縮機を安全に停止させることができる。また、調整弁の制御によって圧縮機の空気流量を適切に減少させることができるため、電動モータを急停止させる場合であっても、安定的にサージングを回避することができる。
上記サージング回避制御システムにおいて、前記電動モータ停止制御部は、前記判定部による判定結果に基づいて、前記電動モータの回転数を低下させ、前記電動モータを停止させることとしてもよい。
上記のような構成によれば、圧縮機を停止させる場合に、判定部による判定結果に基づいて、バイパス管に設けられた調整弁を制御するとともに、電動モータの回転数についても制御することで、電動モータが急停止することを抑制しつつ、安全にサージングを回避することができる。電動モータの急停止を抑制することで、内燃機関へ供給される空気の流量の変動を抑得ることができ、内燃機関の効率低下を抑制することができる。
上記サージング回避制御システムにおいて、前記電動モータを始動させる電動モータ始動制御部を備え、前記調整弁制御部は、前記電動モータ始動制御部によって始動させる場合に、前記判定部による判定結果に基づいて、前記調整弁を閉じる速度を制御することとしてもよい。
上記のような構成によれば、圧縮機の空気流量を適切に増加させることができ、より安定的にサージングの発生を回避しつつ、圧縮機を安全に始動させることができる。すなわち、圧縮機の始動直後は回転数がとても低い状態となっており、このような状態においては、サージングが発生しない安定動作領域が極めて狭い。このため、圧縮機を始動させる場合には、判定部による判定結果に基づいて調整弁を閉じる速度を制御することで、圧縮機の空気流量を制御でき、より安定的にサージングの発生を回避することが可能となる。また、調整弁の制御によって圧縮機の空気流量を適切に増加させることができるため、電動モータを急始動させる場合であっても、安定的にサージングを回避することができる。
上記サージング回避制御システムにおいて、前記電動モータ始動制御部は、前記判定部による判定結果に基づいて、前記電動モータの回転数を上昇させ、前記電動モータを始動させることとしてもよい。
上記のような構成によれば、圧縮機を始動させる場合に、判定部による判定結果に基づいて、バイパス管に設けられた調整弁を制御するとともに、電動モータの回転数についても制御することで、電動モータが急始動することを抑制しつつ、安全にサージングを回避することができる。電動モータの急始動を抑制することで、内燃機関へ供給される空気の流量の変動を抑得ることができ、内燃機関の効率低下を抑制することができる。
本発明の第2態様は、内燃機関へ空気を圧送する圧縮機と、前記圧縮機を駆動する電動モータと、前記圧縮機における吸気側と吐出側とをバイパスするバイパス管と、前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管を流れる空気の流量を調整する調整弁と、上記の過給機のサージング回避制御システムと、を備える過給機である。
本発明の第3態様は、内燃機関へ空気を圧送する圧縮機と、前記圧縮機を駆動する電動モータと、前記圧縮機における吸気側と吐出側とをバイパスするバイパス管と、前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管を流れる空気の流量を調整する調整弁と、前記内燃機関の動作に係る要求に応じて前記電動モータ及び前記調整弁を制御する制御装置とを備える過給機のサージング回避制御補助システムであって、前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比の少なくともいずれか2つを検出する検出部と、前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比をパラメータとして、安定動作領域、サージング領域が示されたマップを格納する記憶部と、前記検出部による検出結果を用いて、現在の前記圧縮機の動作点を特定し、前記動作点と前記マップとに基づいて、前記圧縮機におけるロータの回転数の上限値と前記圧縮機を流れる空気流量の下限値を決定し、前記制御装置へ出力する出力部と、を備える過給機のサージング回避制御補助システムである。
上記のような構成によれば、内燃機関の動作に係る要求に応じて電動モータ及び調整弁を制御する制御装置が既に過給機に備えられている場合であっても、圧縮機におけるロータの回転数の上限値と圧縮機を流れる空気流量の下限値とをサージング回避制御補助システム側で決定し、決定した回転数の上限値と空気流量の下限値を過給機の制御装置へ補助情報として出力することが可能である。このため、電動モータと調整弁の制御則が他の要因(内燃機関の動作に係る要求)に応じて既に決定されている場合であっても、サージングの発生を回避するための圧縮機におけるロータの回転数の上限値と圧縮機を流れる空気流量の下限値を付加的に与えることができ、効果的にサージングを回避することができる。
本発明の第4態様は、内燃機関へ空気を圧送する圧縮機と、前記圧縮機を駆動する電動モータと、前記圧縮機における吸気側と吐出側とをバイパスするバイパス管と、前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管を流れる空気の流量を調整する調整弁と、を備える過給機のサージング回避制御方法であって、前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比の少なくともいずれか2つを検出する検出工程と、前記検出工程による検出結果と前記圧縮機においてサージングが発生する条件に係る情報とに基づいて、前記圧縮機にサージングが発生する可能性があるか否かを判定する判定工程と、前記判定工程による判定結果に基づいて、前記調整弁の開度を制御する調整弁制御工程と、を有する過給機のサージング回避制御方法である。
本発明の第5態様は、内燃機関へ空気を圧送する圧縮機と、前記圧縮機を駆動する電動モータと、前記圧縮機における吸気側と吐出側とをバイパスするバイパス管と、前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管を流れる空気の流量を調整する調整弁と、前記内燃機関の動作に係る要求に応じて前記電動モータ及び前記調整弁を制御する制御装置と、を備える過給機のサージング回避制御補助方法であって、前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比の少なくともいずれか2つを検出する検出工程と、前記検出工程による検出結果を用いて、現在の前記圧縮機の動作点を特定し、前記動作点と、前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比をパラメータとして、安定動作領域、サージング領域が示されたマップとに基づいて、前記圧縮機におけるロータの回転数の上限値と前記圧縮機を流れる空気流量の下限値を決定し、前記制御装置へ出力する出力工程と、を有する過給機のサージング回避制御補助方法である。
本発明によれば、より効果的にサージングを回避することができるという効果を奏する。
本発明の第1実施形態に係るサージング回避制御システムを備えた過給機を有するエンジンシステムの概略構成を示す図である。 本発明の第1実施形態に係るサージング回避制御システムにおける制御装置が備える機能を示した機能ブロック図である。 本発明の第1実施形態に係るサージング回避制御システムにおけるコンプレッサマップの例を示した図である。 本発明の第1実施形態に係る制御装置の調整弁の制御(過給モードから無過給モードへモードを切り替える場合)を示したフローチャートである。 本発明の第1実施形態に係る制御装置の調整弁の制御(無過給モードから過給モードへモードを切り替える場合)を示したフローチャートである。 本発明の第3実施形態に係るサージング回避制御補助システムの概略構成図である。
〔第1実施形態〕
以下に、本発明に係るサージング回避制御システムを備えた過給機の第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るサージング回避制御システムを備えた過給機6を有するエンジンシステム1の概略構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係るエンジンシステム1は、ターボ過給機2と、インタークーラ3と、内燃機関(以下、「エンジン4」という。)と、タービン5と、サージング回避制御システムを備えた過給機(以下、「電動過給機6」という。)とを主な構成として備えている。なお、本実施形態に係るエンジンシステム1では、ターボ過給機2及びインタークーラ3を用いる構成としているが、ターボ過給機2及びインタークーラ3の一方又は両方を備えない構成とすることも可能である。
また、本実施形態では、空気流れの上流側から、電動過給機6、ターボ過給機2、インタークーラ3、エンジン4、タービン5の順に接続されている例について説明する。しかしながら、各機器の接続順は、図1に示す例に限らず、エンジン4の空気流れの上流側に電動過給機6が設けられる構成であれば、様々な構成が適宜設計可能である。
ターボ過給機2は、排気タービン式の過給機(圧縮機)であり、タービン5と同軸で接続されている。エンジン4からの排気によってタービン5が回転し、タービン5の回転力が該同軸を介してターボ過給機2に伝達されることでターボ過給機2が駆動される。ターボ過給機2では、電動過給機6によって圧縮された空気を更に高圧状態にしてインタークーラ3へ供給する。
インタークーラ3では、ターボ過給機2より供給された高温高圧状態の空気を冷却し、冷却した空気をエンジン4へ供給する。ターボ過給機2からの高温高圧空気は密度が低下してしまっているため、ターボ過給機2からの高温高圧空気を冷却して密度を高め、より大きい質量流量とされた酸素を供給することで、エンジン4の効率の低下を防止している。
エンジン4では、電動過給機6及びターボ過給機2よりインタークーラ3を介して供給された高圧空気を用いて内部で燃料を燃焼することによって、熱エネルギーを機械的エネルギーへ変換する。燃焼された空気は、排気としてタービン5へ供給される。
タービン5では、エンジン4からの排気のエネルギーを回転力に変換し、同軸を介してターボ過給機2を駆動する。
電動過給機6は、外気を取り込んで圧縮し、高圧状態の空気を作り出す。このため、電動過給機6は、圧縮機7と、電動モータ8と、バイパス管9と、調整弁10と、検出器11と、制御装置12とを備えている。なお、本実施形態に係る電動過給機6では、空気をバイパスさせず圧縮機7を用いて過給を行う場合(以下、「過給モード」という)と、圧縮機7を停止させ、空気をすべてバイパスさせる場合(以下、「無過給モード」という)とが選択可能となっている。
圧縮機7は、電動モータ8によって駆動され外気から取り込んだ空気を加圧してターボ過給機2へ供給する。なお、圧縮機7としては、電動モータ8によって駆動されればどのような方式の圧縮機7も適用することが可能である。
電動モータ8は、制御装置12からの指令(例えば、電圧や電流等)に基づいて回転し、圧縮機7を駆動する。なお、電動モータ8では、該指令によってモータ回転数が制御される。
バイパス管9は、圧縮機7における吸気側と吐出側とをバイパスする管であり、外気から取り込んだ空気(圧縮機7の吸気側における空気)の一部または全部を圧縮機7の吐出側へ直接バイパスし、ターボ過給機2へ供給する経路を形成している。
調整弁10は、バイパス管9に設けられ、バイパス管9を流れる空気の量(以下、「バイパス空気流量」という)を調整する。調整弁10の開度を制御することによって、外気から取り込んだ空気のうち、バイパス空気流量を制御することができる。このため、調整弁10を制御することで、圧縮機7の空気流量(以下、単に「空気流量」という)についても制御することが可能となる。なお、外気から取り込んだ空気の流量は、バイパス空気流量と圧縮機7の空気流量との和となる。本実施形態では、調整弁10は、制御装置12からの指令に基づいて開度が調整される。本実施形態における調整弁10は、過給モードにおける定常状態では全閉とされ、無過給モードにおける定常状態では全開とされる。そして、特に、過給モードと無過給モードの切り替え時(過渡時)において、調整弁10の開度を制御することによって、圧縮機7のサージング発生を防止する。
検出器11は、圧縮機7におけるロータの回転数(以下、単に「回転数」という)、圧縮機7を流れる空気流量、及び圧縮機7における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比(吐出空気圧力/吸入空気圧力)(以下、単に「圧力比」という)の少なくとも2つを検出する。なお、本実施形態では、空気流量と圧縮比を検出する場合について説明するが、回転数と空気流量を検出する場合及び回転数と圧力比を検出する場合についても同様に適用可能である。本実施形態における検出器11は、圧縮機7の吸込口付近に設けられた空気流量計(不図示)、及び圧縮機7の吸込口と吐出口に対して設けられた圧力計(不図示)とから構成されている。なお、圧縮機7におけるロータの回転数を検出する場合には、圧縮機7のロータに対して回転数を計測する回転数計を設ければよい。
制御装置12は、検出器11からの検出結果を用いて、サージングが発生する可能性があるか否かを判定し、該判定の結果に基づいて、調整弁10を制御する。なお、本実施形態では、検出器11からの検出結果に基づいて調整弁10のみを制御する場合について説明するが、検出器11からの検出結果に基づいて調整弁10及び電動モータ8の両方を制御することとしてもよい。
制御装置12は、例えば、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)等のメモリ、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等かを備えている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。
図2は、制御装置12が備える機能を示した機能ブロック図である。図2に示されるように、制御装置12は、記憶部21と、判定部22と、電動モータ停止制御部23と、電動モータ始動制御部24と、調整弁制御部25と、を備えている。なお、本実施形態では、電動モータ停止制御部23と、電動モータ始動制御部24とを備える構成としているが、いずれか一方を備える構成とすることも可能である。
記憶部21は、圧縮機7においてサージングが発生する条件に係る情報を格納する。圧縮機7においてサージングが発生する条件に係る情報とは、圧縮機7の運転状態とサージング発生条件とが互いに関連付けられた情報である。より具体的には、圧縮機7においてサージングが発生する条件に係る情報とは、圧縮機7におけるロータの回転数、圧縮機7を流れる空気流量、及び圧縮機7における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比をパラメータとして、サージング領域A、安定動作領域B、及び安定動作領域B内におけるサージング領域A側に予め設定された準安定動作領域Cが示されたマップである。このマップは、所謂コンプレッサマップと呼ばれるもので、一例を図3に示す。コンプレッサマップでは、横軸を圧縮機7の空気流量、縦軸を圧縮機7における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比とし、圧縮機7の動作領域及び効率を示している。また、コンプレッサマップでは、回転数が一定の線をスピードライン(R1、R2、R3)として示しており、R1、R2、R3の順に回転数が低下する。さらに、コンプレッサマップでは、圧縮機7の動作領域において安定動作が可能な領域である安定動作領域Bと、サージングが発生する可能性のある領域であるサージング領域Aとを、サージラインSLを境界線として示している。なお、本実施形態では、安定動作領域B内において、サージング領域A側に、サージング領域Aに入る可能性があることを示す準安定動作領域Cを予め設定している。なお、準安定動作領域Cは、サージラインSLに対して安定動作領域B側に所定の余裕度をもたせた領域として設定される。つまり、準安定領域とは、安定動作領域Bではあるものの、これ以上動作点が変化した場合にはサージングが発生する可能性がある領域として設定される。例えば、図3において、圧縮機7が動作点OP1で運転している場合には、サージングが発生する運転状態であり、圧縮機7が動作点OP2で運転している場合には、安定的に運転を行うことがでる運転状態であり、圧縮機7が動作点OP3で運転している場合には、安定的に運転できるもののサージングが発生し易い運転状態であることを示している。また、コンプレッサマップにおける領域E1−E5は、圧縮機7の効率を示している。例えば、図3に示す例では、E1が最も効率がよく、E2、E3、E4、E5の順に効率が悪化することを示している。
記憶部21が格納する情報としては、図3に示すマップを数値化したもの、すなわち、安定動作領域Bにおける回転数と空気流量と圧力比との組み合わせ、準安定動作領域Cにおける回転数と空気流量と圧力比との組み合わせ、サージング領域Aにおける回転数と空気流量と圧力比との組み合わせを格納してもよい。又は、サージラインSL等の図3に記載の各ラインを関数化したものを格納することとしてもよい。
なお、記憶部21に格納される圧縮機7においてサージングが発生する条件に係る情報とは、サージングが発生する可能性があるか否かを判定することが可能な情報であればコンプレッサマップに限られない。例えば、圧縮機7の仮想モデルを格納することとしてもよい。記憶部21が圧縮機7の仮想モデルを格納する場合については、後段の第2実施形態にて説明する。
判定部22は、検出器11による検出結果と記憶部21に格納された情報とに基づいて、圧縮機7にサージングが発生する可能性があるか否かを判定する。具体的には、判定部22は、検出器11による検出結果を用いて、現在の圧縮機7の動作点を特定し、動作点が準安定動作領域C内にあるか否かを判定することによって、圧縮機7にサージングが発生する可能性があるか否かを判定する。圧縮機7の動作点が準安定領域にある場合には、動作点がサージラインSLを越えてサージング領域Aに移る可能性がるため、サージラインSLを超える前(準安定動作領域Cからサージング領域Aへ動作点が移る前)に、サージング発生の可能性を検知する。なお、本実施形態では、圧縮機7の動作点が準安定動作領域C内にあるか否かを判定することとしているが、一時的なサージングの発生が許容できる場合には、圧縮機7の動作点がサージング領域A内にあるか否か、すなわち、圧縮機7の動作点がサージラインSLを越えたか否かを判定することとしてもよい。
なお、本実施形態では、検出器11によって、圧力比と空気流量を検出しているため、判定部22は、検出された圧力比と空気流量から現在の圧縮機7の動作点を特定し、該動作点が準安定領域にあるか否かを判定する。本実施形態では、判定部22による判定結果は、調整弁制御部25へ出力される。
電動モータ停止制御部23は、過給モードから無過給モードへ切替えを行う場合に、圧縮機7を停止させるために、電動モータ8を停止させる。具体的には、電動モータ停止制御部23は、エンジンシステム1全体の制御を担う上位制御装置等から、過給モードから無過給モードへの切替えに係る信号(例えば、切替信号や圧縮機7停止信号等)を受け取った場合には、電動モータ8を停止させることで、圧縮機7を停止させる。なお、本実施形態では、電動モータ8に流れる電流を止める(零とする)ことで電動モータ8を停止させ、圧縮機7を停止させる場合について説明する。つまり、本実施形態における電動モータ停止制御部23は、後述する判定部22の判定結果に依らず、電動モータ8を単に停止させる。つまり、急停止等も含まれる。
なお、本実施形態では、電動モータ停止制御部23は、判定部22の判定結果に依らず、電動モータ8を単に停止させる場合について説明するが、電動モータ停止制御部23による電動モータ8の停止方法は、適宜変更可能である。例えば、電動モータ停止制御部23は電動モータ8に流れる電流を制御することによって、所定の割合で回転数を低下させ、電動モータ8を停止させることとしてもよい。なお、回転数を低下させる所定の割合とは、圧縮機7を停止させる場合に許容される時間(許容されるモードの切り替え時間)に基づいて設定される。
また、電動モータ停止制御部23は、判定部22による判定結果に基づいて、電動モータ8の回転数を低下させ、電動モータ8を停止させることとしてもよい。この場合には、電動モータ停止制御部23は、所定の割合で回転数を低下させるとともに、判定部22による判定結果が肯判定であり、圧縮機7にサージングが発生する可能性がある場合には、一時的(所定の期間)に回転数を低下させる割合を増加させることとすればよい。このようにすることで、圧縮機7にサージングが発生する可能性がある場合には、回転数をより低下させることができるため、圧縮機7の動作点を準安定動作領域Cから安定動作領域B(準安定領域でない領域)へ移動させることができる。また、電動モータ8が無理に急停止することを抑制することができるため、エンジン4へ供給される空気の流量の変動を抑得ることができ、エンジン4の効率低下を抑制することができる。
電動モータ始動制御部24は、無過給モードから過給モードへ切替えを行う場合に、圧縮機7を始動させるために、電動モータ8を始動させる。具体的には、電動モータ始動制御部24は、エンジンシステム1全体の制御を担う上位制御装置等から、無過給モードから過給モードへの切替えに係る信号(例えば、切替信号や圧縮機7停止信号等)を受け取った場合には、電動モータ8を始動させることで、圧縮機7を始動させる。なお、本実施形態では、電動モータ8に流れる電流を流すことで電動モータ8を始動させ、圧縮機7を始動させる場合について説明する。
なお、本実施形態では、電動モータ始動制御部24は、判定部22の判定結果に依らず、電動モータ8を単に始動させる場合について説明するが、電動モータ始動制御部24による電動モータ8の始動方法は、適宜変更可能である。例えば、電動モータ始動制御部24は電動モータ8に流れる電流を制御することによって、所定の割合で回転数を増加させ、電動モータ8を始動させることとしてもよい。なお、回転数を上昇させる所定の割合とは、圧縮機7を始動させる場合に許容される時間(許容されるモードの切り替え時間)に基づいて設定される。
また、電動モータ始動制御部24は、判定部22による判定結果に基づいて、電動モータ8の回転数を低下させ、電動モータ8を始動させることとしてもよい。この場合には、電動モータ始動制御部24は、所定の割合で回転数を上昇させるとともに、判定部22による判定結果が肯判定であり、圧縮機7にサージングが発生する可能性がある場合には、一時的(所定の期間)に回転数を上昇させる割合を減らす又は回転数の上昇を一時的に中断することとすればよい。このようにすることで、圧縮機7にサージングが発生する可能性がある場合には、回転数の上昇が緩やかになる又は上昇が中断されるため、圧縮機7の動作点が準安定動作領域Cからサージング領域Aへ移動することを抑制することができる。また、電動モータ8が無理に急始動することを抑制することができるため、エンジン4へ供給される空気の流量の変動を抑得ることができ、エンジン4の効率低下を抑制することができる。
調整弁制御部25は、過給モードから無過給モードへモードを切り替える場合、又は無過給モードから過給モードへモードを切り替える場合に、判定部22による判定結果に基づいて、調整弁10の開度を制御する。過給モードから無過給モードへモードを切り替える場合には、圧縮機7において回転数が減少するが、モード切替に伴って調整弁10を開くことから、圧縮機7の空気流量が減少する。つまり、過給モードから無過給モードへモードを切り替える場合には圧縮機7の動作点が大きく動くため、圧縮機7の回転数に対して空気流量が減少しすぎてしまうと、圧縮機7の動作点がサージング領域Aは入る可能性がある。また、無過給モードから過給モードへモードを切り替える場合には、圧縮機7において回転数が増加するが、モード切替に伴って調整弁10を閉じることから、圧縮機7の空気流量が増加する。つまり、無過給モードから過給モードへモードを切り替える場合においても圧縮機7の動作点が大きく動くため、圧縮機7の回転数に対して空気流量が少なすぎると、圧縮機7の動作点がサージング領域Aは入る可能性がある。このように、モード切替を行う過渡期間は、サージングが発生する可能性が高い期間であるため、調整弁10の開度を調整して圧縮機7の空気流量を制御することによって、圧縮機7の動作点を適切に制御する。
調整弁制御部25は、電動モータ停止制御部23によって電動モータ8を停止させる場合(過給モードから無過給モードへモードを切り替える場合)に、判定部22による判定結果に基づいて、調整弁10を開く速度を制御する。具体的には、調整弁制御部25は、過給モードから無過給モードへモードを切り替える場合には、所定の割合で調整弁10を開く(開度を増加させる)とともに、判定部22による判定結果が肯判定であり、圧縮機7にサージングが発生する可能性がある場合には、一時的に調整弁10を開く割合を減らす又は調整弁10を開くことを一時的に中断する。なお、一時的にとは、判定部22による判定結果が肯判定となってから、予め設定された期間としてもよいし、判定部22による判定結果が否判定(圧縮機7の動作点が準安定領域から脱した状態)となるまでとしてもよい。このようにすることによって、圧縮機7にサージングが発生する可能性がある場合には、圧縮機7の空気流量の減少が抑制されるため、圧縮機7の動作点が準安定動作領域Cからサージング領域Aへ移動することを抑制することができる。
なお、過給モードから無過給モードへモードを切り替える場合の調整弁制御部25の制御では、判定部22による判定結果が肯判定であり、圧縮機7にサージングが発生する可能性がある場合には、一時的に調整弁10を所定の開度だけ閉じることで、一時的に圧縮機7の空気流量を増加させることとしてもよい。
また、調整弁制御部25は、電動モータ始動制御部24によって電動モータ8を始動させる場合(無過給モードから過給モードへモードを切り替える場合)に、判定部22による判定結果に基づいて、調整弁10を閉じる速度を制御する。具体的には、調整弁制御部25は、無過給モードから過給モードへモードを切り替える場合には、所定の割合で調整弁10を閉じる(開度を減少させる)とともに、判定部22による判定結果が肯判定であり、圧縮機7にサージングが発生する可能性がある場合には、一時的に調整弁10を閉じる割合を増加させる。なお、一時的にとは、判定部22による判定結果が肯判定となってから、判定部22による判定結果が否判定(圧縮機7の動作点が準安定領域から脱した状態)となるまでとしてもよいし、予め設定された期間とすることとしてもよい。このようにすることによって、圧縮機7にサージングが発生する可能性がある場合には、圧縮機7の空気流量が増加するため、圧縮機7の動作点が準安定動作領域Cから安定動作領域B(準安定領域でない領域)へ移動させることができる。
次に、上述の制御装置12による調整弁10の制御(過給モードから無過給モードへモードを切り替える場合)について図4を参照して説明する。図4に示すフローは、運転モードを過給モードから無過給モードへ切り替える場合(圧縮機7を停止させる場合)に開始される。なお、調整弁制御部25は、上述したように、過給モードから無過給モードへモードを切り替える場合には、所定の割合で調整弁10を開く(開度を増加させる)とともに、圧縮機7にサージングが発生する可能性がある場合(判定部22による判定結果が肯判定の場合)には、一時的に調整弁10を開く割合を減らす又は調整弁10を開くことを一時的に中断する制御を行っているが、図4に記載のフローチャートでは、特に圧縮機7にサージングが発生する可能性がある場合(判定部22による判定結果が肯判定の場合)に係る制御について説明する。つまり、調整弁制御部25は、所定の割合で調整弁10を開く(開度を増加させる)制御を行うとともに、判定部22による判定結果を参照して図4のフローチャートの制御を行っているものとする。
まず、検出器11より各検出結果を取得する(S101)。本実施形態においては、圧縮機7を流れる空気流量、及び圧縮機7における吸入空気圧力と吐出空気圧力を検出する。なお、他のパラメータを参照する場合(回転数と空気流量を検出する場合及び回転数と圧力比を検出する場合)には、S101のステップを設計変更すればよい。
次に、取得した検出結果に基づいて、圧縮機7の動作点を特定する(S102)。本実施形態では、圧縮機7を流れる空気流量、及び圧縮機7における吸入空気圧力と吐出空気圧力から、圧縮機7の動作点を特定する。
次に、特定した動作点が準安定動作領域C内にあるか否かを判定する(S103)。なお、特定した動作点が準安定動作領域C内にない場合(S103のNO判定)には、S105へ移行する。
特定した動作点が準安定動作領域C内にある場合(S103のYES判定)には、一時的に調整弁10を開く割合を減らす(S104)。なお、S104において、調整弁10を開くことを一時的に中断することとしてもよい。
次に、圧縮機7が停止(回転数が零)したか否かを判定する(S105)。圧縮機7が停止していない場合(S105のNO判定)には、S101へ戻って上記の処理が再度実行される。また、圧縮機7が停止した場合(S105のYES判定)には、処理を終了する。
次に、上述の制御装置12による調整弁10の制御(無過給モードから過給モードへモードを切り替える場合)について図5を参照して説明する。図5に示すフローは、無運転モードを過給モードから過給モードへ切り替える場合(圧縮機7を始動させる場合)に開始される。なお、調整弁制御部25は、無過給モードから過給モードへモードを切り替える場合には、所定の割合で調整弁10を閉じる(開度を減少させる)とともに、圧縮機7にサージングが発生する可能性がある場合(判定部22による判定結果が肯判定の場合)には、一時的に調整弁10を閉じる割合を増加させる制御を行っているが、図5に記載のフローチャートでは、特に圧縮機7にサージングが発生する可能性がある場合(判定部22による判定結果が肯判定の場合)に係る制御について説明する。つまり、調整弁制御部25は、所定の割合で調整弁10を閉じる(開度を減少させる)制御を行うとともに、判定部22による判定結果を参照して図5のフローチャートの制御を行っているものとする。また、無過給モードから過給モードへモードを切り替える場合とは、圧縮機7を始動させる場合であるため、本実施形態では、圧縮機7の回転数が零の状態から所定の回転数に達することを圧縮機7の始動として説明する。なお、圧縮機7の始動に係る所定の回転数とは、始動後に所望される圧縮機7の運転状態等に基づいて予め設定される。
まず、検出器11より各検出結果を取得する(S201)。本実施形態においては、圧縮機7を流れる空気流量、及び圧縮機7における吸入空気圧力と吐出空気圧力を検出する。なお、他のパラメータを参照する場合(回転数と空気流量を検出する場合及び回転数と圧力比を検出する場合)には、S201のステップを設計変更すればよい。
次に、取得した検出結果に基づいて、圧縮機7の動作点を特定する(S202)。本実施形態では、圧縮機7を流れる空気流量、及び圧縮機7における吸入空気圧力と吐出空気圧力から、圧縮機7の動作点を特定する。
次に、特定した動作点が準安定動作領域C内にあるか否かを判定する(S203)。なお、特定した動作点が準安定動作領域C内にない場合(S203のNO判定)には、S205へ移行する。
特定した動作点が準安定動作領域C内にある場合(S203のYES判定)には、一時的に調整弁10を閉じる割合を増加させる(S204)。
次に、圧縮機7が所定の回転数に達したか否かを判定する(S205)。圧縮機7が所定の回転数に達していない場合(S205のNO判定)には、S201へ戻って上記の処理が再度実行される。また、圧縮機7が所定の回転数に達した場合(S205のYES判定)には、処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態に係る過給機のサージング回避制御システムによれば、圧縮機7にサージが発生する可能性があるか否かを判定し、該判定の結果に基づいて調整弁10の開度を制御することとしたため、より安定的にサージの発生を回避することが可能となる。すなわち、一般的に、圧縮機7に発生するサージは、圧縮機7におけるロータの回転数、圧縮機7を流れる空気流量、及び圧縮機7における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比に依存している。一方で、バイパス管9に設けられた調整弁10を制御することで、圧縮機7を流れる空気流量を制御することができる。このため、圧縮機7におけるロータの回転数、圧縮機7を流れる空気流量、及び圧縮機7における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比のうち少なくとも2つを検出し、該検出の結果とサージが発生する条件に係る情報とに基づいて、圧縮機7にサージが発生する可能性があるか否かを判定し、該判定の結果を用いて調整弁10の開度を制御することで、適切に圧縮機7の空気流量を制御することができ、圧縮機7にサージが発生することを効果的に回避することができる。
また、圧縮機7におけるロータの回転数、圧縮機7を流れる空気流量、及び圧縮機7における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比をパラメータとして安定動作領域B、サージング領域Aとが示されたマップ(所謂コンプレッサマップ)予め記憶部21に格納しておくことで、圧縮機7にサージが発生する可能性があるか否かを簡便に判定することができる。
また、過給モードから無過給モードへモード切替を行う場合に、判定部22による判定結果に基づいて、調整弁10を開く速度を制御することとしたため、圧縮機7の空気流量を適切に減少させることができ、より安定的にサージの発生を回避することができる。すなわち、圧縮機7を停止させる場合には、圧縮機7の回転数が低下するが、調整弁10を開きすぎると圧縮機7の回転数に対して圧縮機7の空気流量が低下しすぎて、サージが発生する可能性がある。このため、圧縮機7を停止させる場合には、判定部22による判定結果に基づいて調整弁10を開く速度を制御することで、圧縮機7の空気流量を適切に減少させることができ、より安定的にサージの発生を回避しつつ、圧縮機7を安全に停止させることができる。また、調整弁10の制御によって圧縮機7の空気流量を適切に減少させることができるため、電動モータ8を急停止させる場合であっても、安定的にサージを回避することができる。
また、無過給モードから過給モードへモード切替を行う場合に、判定部22による判定結果に基づいて、調整弁10を閉じる速度を制御することとしたため、圧縮機7の空気流量を適切に増加させることができ、より安定的にサージの発生を回避しつつ、圧縮機7を安全に始動させることができる。すなわち、圧縮機7の始動直後は回転数がとても低い状態となっており、このような状態においては、サージが発生しない安定動作領域Bが極めて狭い。このため、圧縮機7を始動させる場合には、判定部22による判定結果に基づいて調整弁10を閉じる速度を制御することで、圧縮機7の空気流量を制御でき、より安定的にサージの発生を回避することが可能となる。また、調整弁10の制御によって圧縮機7の空気流量を適切に増加させることができるため、電動モータ8を急始動させる場合であっても、安定的にサージを回避することができる。
つまり、本実施形態に係る過給機のサージング回避制御システムによれば、より効果的にサージングを回避することができる。
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るサージング回避制御システムを備えた過給機6について説明する。
上述した第1実施形態では、記憶部21が圧縮機7においてサージングが発生する条件に係る情報として、図3に示すようなコンプレッサマップを格納していたが、本実施形態における記憶部21は、圧縮機7においてサージングが発生する条件に係る情報として、圧縮機7の仮想モデルを格納する。以下、本実施形態に係るサージング回避制御システムを備えた過給機6について、第1実施形態と異なる点について主に説明する。
本実施形態に係る記憶部21は、圧縮機7においてサージングが発生する条件に係る情報として圧縮機7の仮想モデルを格納している。この仮想モデルは、圧縮機7を理論的にモデリングしたものであり、例えば、圧縮機7の動作点が設定されると、圧縮機7の挙動(サージング等)がシミュレーションできるモデルである。圧縮機7の仮想モデルは、事前に実験等で取得された圧縮機7の各種データ(特にサージングに係る圧縮機7の運転状態に係るデータ)に基づいて構築されているものとする。
本実施形態に係る判定部22は、上記第1実施形態と同様に、検出器11による検出結果を用いて、現在の圧縮機7の動作点を特定する。そして、特定した動作点と記憶部21に格納した仮想モデルとに基づいて、圧縮機7にサージが発生する可能性があるか否かを判定する。具体的には、判定部22は、仮想モデルを記憶部21から読み出し、特定した動作点にて仮想モデルを動作(シミュレーション)させる。つまり、検出器11による検出結果から特定した動作点を用いることで、現在の圧縮機7の運転状態と略等しい運転状態で仮想モデルを模擬動作させる。そして、模擬動作させた仮想モデルを用いて、現在の動作点において、圧縮機7にサージが発生する可能性があるか否かを判定する。
模擬動作させた仮想モデルにより圧縮機7にサージが発生する可能性があるか否かを判定する方法としては、例えば、圧縮機7の微小振動等といった実際に設置した計測器からは得られない情報を仮想モデルから得て、圧縮機7におけるサージングの可能性を推定する方法等がある。また、圧縮機7の動作点の推移を予測し、推移後の動作点にて仮想モデルを模擬動作させ、サージングが発生するか否かを検知することとしてもよい。
以上説明したように、本実施形態に係る過給機のサージング回避制御システムによれば、サージングが発生する条件に係る情報として記憶部21に圧縮機7の仮想モデルを格納し、判定部22において、該仮想モデルと圧縮機7の動作点とに基づいて圧縮機7にサージが発生する可能性があるか否かを判定することとした。このようにすることで、圧縮機7にサージが発生する可能性があるか否かを簡便に判定することができる。
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係るサージング回避制御補助システム30について説明する。
上述した第1実施形態及び第2実施形態では、検出器11による検出結果を用いて圧縮機7の動作点を特定し、圧縮機7にサージが発生する可能性があるか否かを判定し、該判定の結果に応じて調整弁10の開度を制御していたが、本実施形態では、検出部31による検出結果を用いて圧縮機61の動作点を特定し、該動作点に応じて圧縮機61におけるロータの回転数の上限値と圧縮機61を流れる空気流量の下限値を決定し、エンジン65の動作に係る要求に応じて電動モータ62及び調整弁64を制御する上位制御装置66へ出力する。以下、本実施形態に係るサージング回避制御補助システム30について、第1実施形態及び第2実施形態と異なる点について主に説明する。
図6は、本実施形態に係るサージング回避制御補助システム30の概略構成を示す図である。図6に示すように、本実施形態に係るサージング回避制御補助システム30は、構築済のエンジンシステム60に適用される。なお、構築済のエンジンシステム60とは、エンジン65へ空気を圧送する圧縮機61と、圧縮機61を駆動する電動モータ62と、圧縮機61における吸気側と吐出側とをバイパスするバイパス管63と、バイパス管63に設けられ、バイパス管63を流れる空気の流量を調整する調整弁64と、を備える過給機に対して、エンジン65の動作に係る要求に応じて電動モータ62及び調整弁64を制御する上位制御装置66が既に設けられているものとする。へ空気を圧送する圧縮機61と、圧縮機61を駆動する電動モータ62と、圧縮機61における吸気側と吐出側とをバイパスするバイパス管63と、バイパス管63に設けられ、バイパス管63を流れる空気の流量を調整する調整弁64と、を備える過給機に対して、エンジン65の動作に係る要求に応じて電動モータ62及び調整弁64を制御する上位制御装置66が既に設けられているものとする。
つまり、エンジンシステム60では、エンジン65の動作に係る要求に応じた制御則(例えば、エンジン65の出力増加に伴う空気流量増加)が既に構成されているものとする。本実施形態に係るサージング回避制御補助システム30では、構築済の上位制御装置66に対して、圧縮機61におけるロータの回転数の上限値と圧縮機61を流れる空気流量の下限値を与えることによって、圧縮機61のサージングを回避するというものである。
本実施形態に係るサージング回避制御補助システム30は、検出部31と、記憶部32と、出力部33とを備える。なお、検出部31及び記憶部32は、第1実施形態及び第2実施形態に記載の検出器11及び制御装置12の記憶部32と同様である。
出力部33は、まず、検出部31からの検出結果に基づいて、圧縮機61の動作点を特定する。そして、特定した動作点と、記憶部32に格納されている情報とに基づいて、圧縮機61におけるロータの回転数の上限値と圧縮機61を流れる空気流量の下限値を決定し、既に構成されている上位制御装置66へ出力する。具体的には、出力部33は、特定した動作点において、回転数を一定とした場合の空気流量の下限値と、空気流量を一定とした場合の回転数の上限値を、記憶部32に格納されている情報から算出し、既に構成されている上位制御装置66へ出力する。
以上説明したように、本実施形態に係るサージング回避制御補助システム30によれば、エンジン65の動作に係る要求に応じて電動モータ62及び調整弁64を制御する上位制御装置66が既に過給機に備えられている場合であっても、圧縮機61におけるロータの回転数の上限値と圧縮機61を流れる空気流量の下限値とをサージ回避制御補助システム側で決定し、決定した回転数の上限値と空気流量の下限値を過給機の上位制御装置66へ補助情報として出力することが可能である。このため、電動モータ62と調整弁64の制御則が他の要因(エンジン65の動作に係る要求)に応じて既に決定されている場合であっても、サージの発生を回避するための圧縮機61におけるロータの回転数の上限値と圧縮機61を流れる空気流量の下限値を付加的に与えることができ、効果的にサージを回避することができる。
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。なお、各実施形態を組み合わせることも可能である。
1、60 :エンジンシステム
2 :ターボ過給機
3 :インタークーラ
4、65 :エンジン
5 :タービン
6 :電動過給機(サージング回避制御システムを備えた過給機)
7、61 :圧縮機
8、62 :電動モータ
9、63 :バイパス管
10、64 :調整弁
11、31 :検出器(検出部)
12 :制御装置
21、32 :記憶部
22 :判定部
23 :電動モータ停止制御部
24 :電動モータ始動制御部
25 :調整弁制御部
30 :サージング回避制御補助システム
33 :出力部
66 :上位制御装置


Claims (11)

  1. 内燃機関へ空気を圧送する圧縮機と、前記圧縮機を駆動する電動モータと、前記圧縮機における吸気側と吐出側とをバイパスするバイパス管と、前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管を流れる空気の流量を調整する調整弁と、を備える過給機のサージング回避制御システムであって、
    前記圧縮機においてサージングが発生する条件に係る情報を格納する記憶部と、
    前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比の少なくともいずれか2つ
    を検出する検出部と、
    前記検出部による検出結果と前記記憶部に格納された情報とに基づいて、前記圧縮機にサージングが発生する可能性があるか否かを判定する判定部と、
    前記判定部による判定結果に基づいて、前記調整弁の開度を制御する調整弁制御部と、
    を備える過給機のサージング回避制御システム。
  2. 前記圧縮機においてサージングが発生する条件に係る情報とは、前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比をパラメータとして、安定動作領域、サージング領域、及び前記安定動作領域内における前記サージング領域側に予め設定された準安定動作領域が示されたマップであり、
    前記判定部は、前記検出部による検出結果を用いて、現在の前記圧縮機の動作点を特定し、前記動作点が準安定動作領域内にあるか否かを判定することによって、前記圧縮機にサージングが発生する可能性があるか否かを判定する請求項1に記載の過給機のサージング回避制御システム。
  3. 前記圧縮機においてサージングが発生する条件に係る情報とは、前記圧縮機の仮想モデルであり、
    前記判定部は、前記検出部による検出結果を用いて、現在の前記圧縮機の動作点を特定し、前記仮想モデルを前記動作点にて仮想的に動作させ、前記圧縮機にサージングが発生する可能性があるか否かを判定する請求項1に記載の過給機のサージング回避制御システム。
  4. 前記電動モータを停止させる電動モータ停止制御部を備え、
    前記調整弁制御部は、前記電動モータ停止制御部によって停止させる場合に、前記判定部による判定結果に基づいて、前記調整弁を開く速度を制御する請求項1から3のいずれか1項に記載の過給機のサージング回避制御システム。
  5. 前記電動モータ停止制御部は、前記判定部による判定結果に基づいて、前記電動モータの回転数を低下させ、前記電動モータを停止させる請求項4に記載の過給機のサージング回避制御システム。
  6. 前記電動モータを始動させる電動モータ始動制御部を備え、
    前記調整弁制御部は、前記電動モータ始動制御部によって始動させる場合に、前記判定部による判定結果に基づいて、前記調整弁を閉じる速度を制御する請求項1から5のいずれか1項に記載の過給機のサージング回避制御システム。
  7. 前記電動モータ始動制御部は、前記判定部による判定結果に基づいて、前記電動モータの回転数を上昇させ、前記電動モータを始動させる請求項6に記載の過給機のサージング回避制御システム。
  8. 内燃機関へ空気を圧送する圧縮機と、
    前記圧縮機を駆動する電動モータと、
    前記圧縮機における吸気側と吐出側とをバイパスするバイパス管と、
    前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管を流れる空気の流量を調整する調整弁と、
    請求項1から7のいずれか1項に記載の過給機のサージング回避制御システムと、
    を備える過給機。
  9. 内燃機関へ空気を圧送する圧縮機と、前記圧縮機を駆動する電動モータと、前記圧縮機における吸気側と吐出側とをバイパスするバイパス管と、前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管を流れる空気の流量を調整する調整弁と、前記内燃機関の動作に係る要求に応じて前記電動モータ及び前記調整弁を制御する制御装置とを備える過給機のサージング回避制御補助システムであって、
    前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比の少なくともいずれか2つを検出する検出部と、
    前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比をパラメータとして、安定動作領域、サージング領域が示されたマップを格納する記憶部と、
    前記検出部による検出結果を用いて、現在の前記圧縮機の動作点を特定し、前記動作点と前記マップとに基づいて、前記圧縮機におけるロータの回転数の上限値と前記圧縮機を流れる空気流量の下限値を決定し、前記制御装置へ出力する出力部と、
    を備える過給機のサージング回避制御補助システム。
  10. 内燃機関へ空気を圧送する圧縮機と、前記圧縮機を駆動する電動モータと、前記圧縮機における吸気側と吐出側とをバイパスするバイパス管と、前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管を流れる空気の流量を調整する調整弁と、を備える過給機のサージング回避制御方法であって、
    前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比の少なくともいずれか2つを検出する検出工程と、
    前記検出工程による検出結果と前記圧縮機においてサージングが発生する条件に係る情報とに基づいて、前記圧縮機にサージングが発生する可能性があるか否かを判定する判定工程と、
    前記判定工程による判定結果に基づいて、前記調整弁の開度を制御する調整弁制御工程と、
    を有する過給機のサージング回避制御方法。
  11. 内燃機関へ空気を圧送する圧縮機と、前記圧縮機を駆動する電動モータと、前記圧縮機における吸気側と吐出側とをバイパスするバイパス管と、前記バイパス管に設けられ、前記バイパス管を流れる空気の流量を調整する調整弁と、前記内燃機関の動作に係る要求に応じて前記電動モータ及び前記調整弁を制御する制御装置と、を備える過給機のサージング回避制御補助方法であって、
    前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比の少なくともいずれか2つを検出する検出工程と、
    前記検出工程による検出結果を用いて、現在の前記圧縮機の動作点を特定し、前記動作点と、前記圧縮機におけるロータの回転数、前記圧縮機を流れる空気流量、及び前記圧縮機における吸入空気圧力と吐出空気圧力の圧力比をパラメータとして、安定動作領域、サージング領域が示されたマップとに基づいて、前記圧縮機におけるロータの回転数の上限値と前記圧縮機を流れる空気流量の下限値を決定し、前記制御装置へ出力する出力工程と、
    を有する過給機のサージング回避制御補助方法。
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CN118088483A (zh) * 2024-03-11 2024-05-28 佛山市清极能源科技有限公司 一种燃料电池空压机保护方法、系统、计算机设备及储存介质

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