JP2019094255A - 硫化リチウム粉体、及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
現在市販されているリチウム電池は、可燃性の有機溶媒を含む電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付け及び短絡防止のための構造、材料面での改善が必要となる。これに対し、電解液を固体電解質層にかえて、電池を全固体化したリチウム電池は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。更に、このような固体電解質層に用いられる固体電解質として、硫化物固体電解質が知られている。
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法は、溶媒又は水溶液を用いるため、純度が低下する、また溶媒を除去しきれない又は除去するのに大規模な設備が必要となることがあり、近年益々高まる要求性能を満足できない場合がある。また、特許文献3に記載の方法は、溶媒等を用いないため高純度の要求には対応でき、かつ溶媒を含まないものが得られるが、高比表面積の要求には対応できない場合がある。
2.水酸化リチウムの含有量が、0.3質量%以下である上記1に記載の硫化リチウム粉体。
3.硫化リチウムの含有量が98.0質量%以上である上記1又は2に記載の硫化リチウム粉体。
4.溶媒の不存在下で硫化リチウム粉体と硫化水素とを接触させること、前記接触により得られた生成物を脱硫化水素処理すること、を含む改質硫化リチウム粉体の製造方法。
5.溶媒の存在下又は不存在下で水酸化リチウムと少なくとも硫黄元素を含む物質とを反応させて硫化リチウム粉体を得ることを含み、該硫化リチウム粉体を前記硫化水素との接触に用いる上記4に記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
6.前記接触が、20℃以上120℃以下の温度条件で少なくとも一回行われる上記4又は5に記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
7.前記接触が、異なる温度条件で二回以上行われる上記4〜6のいずれか1つに記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
8.前記接触が、140℃以上で行われた後、20℃以上120℃以下で行われる上記7に記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
9.前記生成物の脱硫化水素処理が、不活性ガスの存在下で、130℃以上で行われる上記4〜8のいずれか1に記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
本実施形態の硫化リチウム粉体は、溶媒を含まず、比表面積が10m2/g以上であり、平均粒子径が0.1mm以上1.5mm以下のものである。以下、本実施形態の硫化リチウム粉体の各性状について説明する。
本実施形態の硫化リチウム粉体は、溶媒を含まない。従来、硫化リチウムの製造には、様々な溶媒が用いられており、乾燥、蒸留等による除去処理を行っても、溶媒が残存することがあり、これを原料として硫化物固体電解質を得ようとすると、残存した溶媒に起因して硫化物固体電解質の電池性能が低下する場合があった。
本実施形態の硫化リチウム粉体は、このような製造過程に起因する、硫化リチウムの製造において用い得る溶媒、例えば、ヘキサン、ペンタン、2−エチルヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素溶媒;ヘキセン、シクロヘキセン等の不飽和炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル溶媒;エタノール、ブタノール、ヘキサノール、メチルヘキサノール、エチルヘキサノール等のアルコール溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;ジクロロメタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルピロリドン等のアミド溶媒;アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、イソブチロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒等の溶媒を含まない。
本明細書において、「溶媒を含まない」とは実質的に含まないことを意味し、硫化リチウム中の溶媒の含有量が0質量%である態様、また、測定限界値である0.1質量%以下の範囲で溶媒を含む態様も包含する概念である。溶媒の含有量は、硫化リチウムをメタノールに溶解して、ガスクロマトグラフィーにより溶媒量を定量することで測定することができる。
本実施形態の硫化リチウム粉体の比表面積は、10m2/g以上である。本実施形態の硫化リチウム粉体は、このような高比表面積を有していることから、固体電解質の原料として用いる場合、優れた反応性を有するため、効率的に固体電解質を得ることができる。これと同様の観点から、硫化リチウム粉体の比表面積は、好ましくは12m2/g以上、より好ましくは15m2/g以上、更に好ましくは20m2/g以上である。また、上限としては特に制限はないが、通常50m2/g以下程度である。
本明細書において、比表面積は、BET法(気体吸着法)により測定される値であり、気体として窒素を用いてもよいし(窒素法)、クリプトンを用いてもよく(クリプトン法)、比表面積の大きさに応じて適宜選択して測定される。比表面積は、例えば、ガス吸着量測定装置(例えば、AUTOSORB6(シスメックス(株)製)等)等の市販の装置を用いて測定することができる。
本実施形態の硫化リチウム粉体の平均粒子径は0.1mm以上1.5mm以下である。固体電解質の製造のための原料として用いる場合、硫化リチウム粉体の平均粒子径は小さければ小さいほど、反応性が向上するため好ましいが、一方小さくなるほどハンドリング時に静電気、分子間力等による凝集、付着、飛散等が生じやすくなるため、取扱いが困難となる。本実施形態の硫化リチウム粉体の平均粒子径は上記範囲内であることで、優れた反応性と取扱容易性とを兼ね備えたものとなる。これと同様の観点から、硫化リチウム粉体の平均粒子径は0.15mm以上が好ましく、0.25mm以上がより好ましく、また上限として1.3mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましい。
本明細書において、平均粒子径は、レーザー回折法で測定される粒度分布において、累積体積百分率が50%のときの粒子径D50のことである。具体的には、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、「SALD−1000(商品名)」((株)島津製作所製)、「マスターサイザー2000(商品名)」(Malvern Instruments Ltd製)、「LA−950(商品名)」((株)堀場製作所製)等)等の市販の装置を用いて測定することができる。
本実施形態の硫化リチウム粉体の細孔容積は、特に制限はないが、固体電解質の原料として用いる場合等を考慮すると、好ましくは0.005ml/g以上、より好ましくは0.01ml/g以上であり、上限としては通常1.0ml/g以下である。細孔容積は、比表面積の測定に用いる装置と同じものを用いて測定することができ、相対圧P/P0が0.99以上の測定点から、0.99に内挿して求めた数値とすればよい。装置の測定下限値は、0.001ml/gである。
本明細書において、硫化リチウム粉体中の水分量は、カールフィッシャー水分計を用いて、気化法、280℃の条件で測定した値である。
本実施形態の硫化リチウム粉体を製造する方法としては、特に制限はないが、例えば、後述する本実施形態の改質硫化リチウム粉体の製造方法により製造することができる。すなわち、本実施形態の硫化リチウム粉体は、本実施形態の改質硫化リチウム粉体の製造方法により得られる改質硫化リチウム粉体と同じものである。
本実施形態の硫化リチウム粉体は、溶媒を含まず、高純度かつ高比表面積であり、優れた反応性と取扱容易性とを兼ね備えることから、固体電解質の原料として好適に用いることができる。得られる固体電解質は、リチウムイオン二次電池等に、より具体的には全固体リチウムイオン二次電池の固体電解層に、また正極、負極合材に混合する固体電解質等として好適に用いられる。例えば、正極と、負極と、正極及び負極の間に固体電解質からなる層を設けることで、全固体リチウムイオン二次電池が得られる。
本実施形態の改質硫化リチウム粉体の製造方法は、溶媒の不存在下で硫化リチウム粉体と硫化水素とを接触させること、前記接触により得られた生成物を脱硫化水素処理すること、を含むものである。本明細書において、「改質」とは、粉体の比表面積、細孔容積等の少なくとも何れかの性状を向上させることを意味する。よって、本実施形態の製造方法によれば、上記接触に用いられた硫化リチウム粉体の比表面積、細孔容積等の少なくとも何れかの性状を向上させて、改質硫化リチウム粉体が得られる、といえる。本実施形態の改質硫化リチウムの製造方法により、上記の本実施形態の硫化リチウム粉体を製造することができる。
本実施形態の製造方法において、上記接触に用いられる硫化リチウム粉体としては、特に制限なく使用でき、例えば、市販品をそのまま用いてもよいし、後述する水酸化リチウムと少なくとも硫黄元素を含む物質とを反応させることにより得られたものを用いてもよい。
上記接触に用いられる硫化リチウム粉体としては、水酸化リチウムと少なくとも硫黄元素を含む物質とを反応させることにより得られる硫化リチウム粉体を用いることができる(以下、水酸化リチウムと少なくとも硫黄元素を含む物質との反応を、単に「反応」と称することがある。)。すなわち、本実施形態の製造方法は、水酸化リチウムと少なくとも硫黄元素を含む物質とを反応させて硫化リチウムを得ること、を含み、該硫化リチウムを上記接触に用いることができる。水酸化リチウムと少なくとも硫黄元素を含む物質との反応の方法は特に制限はなく、例えば、従来から慣用される、以下の方法等に従って行うことができる。なお、本実施形態においては、水酸化リチウムと少なくとも硫黄元素を含む物質との反応の方法は以下の方法に限られるものではない。
b.水酸化リチウムと炭化水素系有機溶媒(例えばトルエン)とからなるスラリー中に、硫化水素ガスを吹き込み、上記水酸化リチウムと硫化水素とを反応させ、上記反応により生じる水を、上記スラリーから除去しながら反応を継続し、系内の水分が実質的になくなった後、硫化水素の吹き込みを止め、不活性ガスを吹き込むことによる方法(特開2010−163356号公報参照)。
d.溶媒の不存在下において、使用する反応容器に対して所定量の水酸化リチウム粉体と硫化水素ガスとを投入し、撹拌しながら反応させる方法(国際公開第2016/098351号パンフレット参照)。
硫化水素は、例えば、工業的に市販されているものをそのまま用いることができる。硫化水素は、脱水してもしなくてもよいが、反応への影響をより低減する観点から、水分量は少ないことが好ましく、その水分量としては例えば50質量ppm以下程度であればよい。
水酸化リチウム無水物の場合、水分量は、通常5質量%以下、3質量%以下、あるいは1.5質量%以下のものである。ここで、水酸化リチウム中の水分量は、上記硫化リチウム粉体中の水分量の測定と同じく、カールフィッシャー水分計を用いて測定することができる。
なお、本実施形態の製造方法において、水酸化リチウムと少なくとも硫黄元素を含む物質との反応で溶媒を用いる場合、用いられ得る溶媒としては、上記の公報に記載される溶媒を含め、本実施形態の硫化リチウム粉体に含まれない溶媒として例示した溶媒、すなわち上記の飽和炭化水素溶媒、不飽和炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、アルコール溶媒、エステル溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒等の溶媒を用いることが可能である。
また、流通系とする場合、硫化水素の供給量は上記反応を流通系で行った際の供給量と同じであってもよいし、異なっていてもよい。硫化水素の具体的な供給量は、硫化リチウムの量、反応容器の容量等に応じて変動し得るため一概に規定することはできないが、後述する硫化リチウム粉体と硫化水素との接触による改質効果をより効率的に向上させる観点から、硫化リチウム粉体100gに対して、好ましくは5N−mL/分以上、より好ましくは50N−mL/分以上、更に好ましくは100N−mL/分以上であり、上限として好ましくは1500N−mL/分以下、より好ましくは500N−mL/分以下、更に好ましくは200N−mL/分以下である。
後処理時間は、特に制限はなく、後処理する硫化リチウムの量、硫化水素の供給量等に応じて適宜設定すればよく一概に規定することはできないが、通常5分以上10時間以下程度とすればよく、より効率的に後処理を行う観点から、好ましくは10分以上5時間以下、より好ましくは15分以上3時間以下である。
また、上記反応により得られる硫化リチウム粉体の平均粒子径は、反応に用いられる水酸化リチウムの平均粒子径にもよるが、0.1mm以上1.5mm以下程度となる。
本実施形態の改質硫化リチウム粉体の製造方法は、溶媒の不存在下で、硫化リチウム粉体と硫化水素とを接触(以下、単に「接触」と称することがある。)させること、を含む。本接触により、硫化リチウム粉体は硫化水素と反応し、その少なくとも一部に水硫化リチウム(LiSH)が生成し、該水硫化リチウムを更に脱硫化水素処理して硫化リチウムとすることにより、改質が行われる。本実施形態における改質の機構は不明であるが、硫化リチウム粉体の、硫化水素との接触により水硫化リチウムが生成した部分が、脱硫化水素処理により硫化リチウムに戻ることで、元々の硫化リチウムであった部分とは異なる状態となり、結果として比表面積等が向上した改質された硫化リチウム粉体になると考えられる。
よって、本実施形態の製造方法において、より高純度かつ高比表面積である改質硫化リチウム粉体を得るためには、接触を行うことにより、水硫化リチウムをより多く生成させることが肝要である。また、硫化リチウム粉体に未反応の水酸化リチウムが含まれる場合は、接触を行うことで水酸化リチウムと硫化水素との反応により硫化リチウムが生成するため、より高い純度の硫化リチウム粉体が得られるという効果も得られる。
上記接触は、20℃以上120℃以下の温度条件で少なくとも一回行われることが好ましい。上記温度条件で少なくとも一回の接触を行うことで、水硫化リチウムをより効率的により多く生成させることができる。これと同様の観点から、温度条件としては、30℃以上110℃以下がより好ましく、40℃以上110℃以下が更に好ましく、50℃以上80℃以下が特に好ましい。
この場合、上記20℃以上120℃以下の温度条件と組み合わせる、異なる温度条件としては、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上、特に好ましくは190℃以上、上限として特に制限はないが、230℃以下程度とすればよい。本実施形態の製造方法においては、より多くの水硫化リチウムを効率的に生成させる観点から、より高い温度条件で接触を行った後、より低い温度条件で接触を行うことが好ましく、具体的には、接触は140℃以上で行い(以下、1回目の接触を「第1の接触」と称することがあり、2回目以降の接触も同様に称することとする。)、次いで20℃以上120℃以下で第2の接触を行うことが好ましい。溶媒不存在下において、このような温度で接触を行うことにより、硫化リチウム粉体が溶媒を伴う場合は、該溶媒の含有量を更に低減することが可能となる。
また、各回の接触における温度は、上記の所定の温度条件範囲内であれば変動してもよいが、より安定した改質効果を得る観点からは、同じ温度で上記接触時間保持することが好ましい。また、第1の接触から第2の接触に移行する時間(次の接触の温度条件に以降する時間)は、接触の時間として考慮しないものとし、なるべく早く次の接触の温度条件とすることが好ましく、より容易に移行させることも考慮すると、例えば100℃の移行を30分以上1時間半以内程度で行えばよい。
生成物中の水硫化リチウムの含有量は、通常5質量%以上100質量%以下、更には20質量%以上75質量%以下、更には30質量%以上50質量%以下である。このように、上記接触により得られる生成物は、硫化リチウムが残存せず実質的に水硫化リチウム粉体となる場合もある。本実施形態の製造方法においては、上記の接触を行うことで、水硫化リチウムの含有量はより多くなり、優れた改質効果が得られる。
本実施形態の改質硫化リチウム粉体の製造方法は、上記接触により得られた生成物を脱硫化水素処理すること、を含む。上記接触により得られた生成物は、その少なくとも一部が水硫化リチウムとなった硫化リチウム粉体であり、これを脱硫化水素処理することにより、水硫化リチウムを硫化リチウムとし、改質硫化リチウム粉体が得られる。
また、不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス、窒素、二酸化炭素等が挙げられ、これらの中でも、より安価かつ入手が容易である観点から、窒素が好ましい。
本実施形態の製造方法により得られる硫化リチウム粉体は、溶媒を含まず、高純度かつ高比表面積であり、優れた反応性と取扱容易性とを兼ね備えることから、固体電解質の原料として好適に用いることができる。得られる固体電解質は、リチウムイオン二次電池等に、より具体的には全固体リチウムイオン二次電池の固体電解層に、また正極、負極合材に混合する固体電解質等として好適に用いられる。例えば、正極と、負極と、正極及び負極の間に固体電解質からなる層を設けることで、全固体リチウムイオン二次電池が得られる。
本実施形態の水硫化リチウム含有粉末は、溶媒を含まず、水硫化リチウムと硫化リチウムとを含み、該水硫化リチウムの含有量が、水硫化リチウムと硫化リチウムの合計に対して、5質量%以上100質量%以下であることを特徴とするものである。
本実施形態の水硫化リチウム含有粉末は、上記本実施形態の改質硫化リチウム粉体の製造方法において、接触させることにより得られる生成物である、硫化リチウム粉体と硫化水素との反応により、その少なくとも一部が水硫化リチウムとなった硫化リチウム粉体である。また、本実施形態の製造方法の接触させることは、溶媒の不存在下で行われることから、本実施形態の水硫化リチウム含有粉末は、溶媒を含まないものである。
硫化リチウム粉体中の硫化リチウムの含有量、水酸化リチウムの含有量、水硫化リチウムの含有量は、塩酸滴定、及び硝酸銀滴定により分析し、測定した。具体的には、実施例及び比較例で得られた硫化リチウム粉体を、グローブボックス(露点:−100℃程度、窒素雰囲気)内で秤量後、水に溶解し、電位差滴定装置(「COM−980(型番)」、平沼産業(株)製)を用いて測定し、算出した。
(溶媒の含有量の測定)
硫化リチウム粉体中の溶媒の有無、及びその含有量は、硫化リチウム粉体をメタノールに溶解して、ガスクロマトグラフィーにより確認し、定量して求めた。
(水分量の測定)
無水水酸化リチウム、硫化リチウム粉体中の水分量は、カールフィッシャー水分計を用いて測定した。
(平均粒子径の測定)
レーザー回折式粒度分布測定装置(「LA−950(商品名)」((株)堀場製作所製)を用いて、累積体積百分率が50%のときの粒子径D50を測定し、平均粒子径とした。
(比表面積の測定)
ガス吸着量測定装置を用いて比表面積を測定した。
500mLのセパラブルフラスコ(アンカー撹拌翼装備)に、窒素気流下で水酸化リチウム無水物(本荘ケミカル(株)製、粒子径範囲:0.1mm以上1.5mm以下、水分量:1質量%以下)200gを投入、60rpmで撹拌しながら、オイルバスを用いて200℃に昇温し、保持した。また、セパラブルフラスコの上部をリボンヒーターで100℃に保持した。窒素を硫化水素((株)巴商会製)に切り替えて、500N−mL/分の流量で供給しながら、水酸化リチウムと硫化水素との反応を行った。反応の進行により発生した水分はコンデンサーにより凝縮して回収し、6時間の反応を行ったところで144mLの水が回収され、更に3時間継続したが、水の発生はなかった。
次いで、温度を200℃に保持したまま、硫化水素を窒素に切り替え、20分窒素を通気し、フラスコ内の硫化水素を窒素に置換した。
得られた硫化リチウムを電位差滴定により測定したところ、硫化リチウムの含有量は98.5質量%、水酸化リチウムの含有量は0.1質量%以下(検出限界以下)であった。また、比表面積、平均粒子径を測定したところ、比表面積は8m2/g、平均粒子径は350μm(0.35mm)となった。
600mlセパラブルフラスコに、窒素気流下でトルエン(広島和光(株)製試薬)270gを加え、続いて無水水酸化リチウム(本荘ケミカル(株)製、粒子径範囲:0.1mm以上1.5mm以下、水分量:1質量%以下)30gを投入し、フルゾーン撹拌翼300rpmで撹拌しながら、95℃に保持した。
上記反応により得られたスラリー溶液中に、硫化水素((株)巴商会製)を供給速度300ml/分で吹き込みながら104℃まで昇温した。上記セパラブルフラスコからは、水とトルエンとの共沸ガスが連続的に排出された。この共沸ガスを、系外のコンデンサーで凝縮させることにより脱水した。この間、留出するトルエンと同量のトルエンを連続的に供給し、上記スラリー溶液の量を一定に保持した。
凝縮液中の水分量は徐々に減少し、硫化水素導入後6時間で水の留出は認められなくなった(水分量は総量で22mlであった)。尚、反応の間は、トルエン中に固体が分散して撹拌された状態であり、トルエンから分層した水分はなかった。
この後、硫化水素を窒素に切り替え300N−ml/分で1時間流通した。
次いで、上記スラリー溶液をろ過処理した。ろ過後、200℃で真空乾燥を行い、硫化リチウム粉体を得た。
得られた硫化リチウム粉体を電位差滴定により測定したところ、硫化リチウムの含有量は97.7質量%、水酸化リチウムの含有量は0.7質量%であった。また、比表面積、平均粒子径を測定したところ、比表面積は15m2/g、平均粒子径は350μm(0.35mm)となった。
製造例1で得られた硫化リチウム粉体4.0gを、グローブボックス内で、不活性ガス及び硫化水素を流通可能な設備を備え、かつ密閉も可能であるシュレンク瓶に入れ、窒素を流通(流通量:100N−mL/分)させながらオイルバスに投入し、200℃まで昇温した。粉体の温度が200℃で安定したところで、窒素を硫化水素に切り替えて、流通量:50N−mL/分で30分間、硫化リチウム粉体と硫化水素との接触(第1の接触)を行った後、温度を200℃から60℃に1時間かけて降温させて、流通量:50N−mL/分で60℃で8時間保持して、硫化リチウム粉体と硫化水素との2回目の接触(第2の接触)を行った。その後硫化水素ガスを止め、一部サンプリングをした。
ここで、硫化水素ガスを止めた後のサンプリングにより得られた粉末(脱硫化水素処理前の粉末)を分析したところ、水硫化リチウムが含有されることが確認され、その含有量は34.1質量%であった。
その後、硫化水素を窒素に切り替えて流通(流通量:100N−mL/分)させながら、温度を60℃から160℃まで30分かけて上昇させて、30分間保持して、脱硫化水素処理を行った。
得られた硫化リチウム粉体を、電位差滴定により測定したところ、硫化リチウムの含有量は98.6質量%、水酸化リチウムの含有量は0.2質量%となり、溶媒の含有量を測定したところ検出されなかった(0.1質量%以下)。また、比表面積、平均粒子径を測定したところ、比表面積は21m2/g、平均粒子径は437μm(0.437mm)となった。これらの結果を第1表に示す。
実施例1において、第2の接触の温度を60℃から40℃とした以外は、実施例1と同様にして硫化リチウム粉体を得た。
得られた硫化リチウム粉体を、電位差滴定により測定したところ、硫化リチウムの含有量は99.0質量%、水酸化リチウムの含有量は0.1質量%となり、溶媒の含有量を測定したところ検出されなかった(0.1質量%以下)。また、比表面積、平均粒子径を測定したところ、比表面積は17m2/g、平均粒子径は386μm(0.386mm)となった。また、脱硫化水素処理前の粉末について、実施例1と同様にして水硫化リチウムの含有量を測定すると、その含有量は20.4質量%であった。これらの結果を第1表に示す。
実施例1において、第2の接触の温度を60℃から25℃とした以外は、実施例1と同様にして硫化リチウム粉体を得た。
得られた硫化リチウム粉体を、電位差滴定により測定したところ、硫化リチウムの含有量は98.3質量%、水酸化リチウムの含有量は0.2質量%となり、溶媒の含有量を測定したところ検出されなかった(0.1質量%以下)。また、比表面積、平均粒子径を測定したところ、比表面積は13m2/g、平均粒子径は410μm(0.410mm)となった。これらの結果を第1表に示す。また、脱硫化水素処理前の粉末について、実施例1と同様にして水硫化リチウムの含有量を測定すると、その含有量は8.8質量%であった。
製造例1で得られた硫化リチウム粉体4.0gを、不活性ガス及び硫化水素を流通可能な設備を備え、かつ密閉も可能であるシュレンク瓶に入れ、窒素を流通(流通量:100mL/分)させながら、粉体の温度が室温(25℃)で安定したところで、窒素を硫化水素に切り替えて、流通量:50mL/分で16時間、硫化リチウム粉体と硫化水素との接触を行った。
その後、硫化水素を窒素に切り替えて流通(流通量:100mL/分)させながら、温度を60℃から160℃まで1時間かけて上昇させて、30分間保持して、脱硫化水素処理を行った。
得られた硫化リチウム粉体を、電位差滴定により測定したところ、硫化リチウムの含有量は99.0質量%、水酸化リチウムの含有量は0.1質量%となり、溶媒の含有量を測定したところ検出されなかった(0.1質量%以下)。また、比表面積、平均粒子径を測定したところ、比表面積は13m2/g、平均粒子径は393μm(0.393mm)となった。また、脱硫化水素処理前の粉末について、実施例1と同様にして水硫化リチウムの含有量を測定すると、その含有量は11.3質量%であった。これらの結果を第1表に示す。
500mLのセパラブルフラスコ(アンカー撹拌翼装備)に、窒素気流下で水酸化リチウム無水物(本荘ケミカル(株)製、粒子径範囲:0.1mm以上1.5mm以下、水分量:1質量%以下)200gを投入、60rpmで撹拌しながら、オイルバスを用いて200℃に昇温し、保持した。また、セパラブルフラスコの上部をリボンヒーターで100℃に保持した。窒素を硫化水素((株)巴商会製)に切り替えて、500N−mL/分の流量で供給しながら、水酸化リチウムと硫化水素との反応を行った。反応の進行により発生した水分はコンデンサーにより凝縮して回収し、6時間の反応を行ったところで144mLの水が回収され、その後、温度を200℃に保持して更に3時間継続して硫化水素を供給(第1の接触に該当)したが、水の発生はなかった。次いで、硫化水素を供給しながら温度を200℃から60℃に1時間かけて降温させて、流通量100N−mL/分で60℃で8時間保持して、反応物(硫化リチウム粉体)と硫化水素との接触(第2の接触)を行った。
その後、硫化水素を窒素に切り替えて、流通(流通量:100N−mL/分)させながら、温度を60℃から160℃まで1時間かけて上昇させて、30分間保持して、脱硫化水素処理を行った。
得られた硫化リチウムを電位差滴定により測定したところ、硫化リチウムの含有量は98.6質量%、水酸化リチウムの含有量は0.2質量%であり、また溶媒は検出されなかった(0.1質量%以下)。また、比表面積、平均粒子径を測定したところ、比表面積は21m2/g、平均粒子径は436μm(0.436mm)となった。また、脱硫化水素処理前の粉末について、実施例1と同様にして水硫化リチウムの含有量を測定すると、その含有量は29.5質量%であった。これらの結果を第1表に示す。
実施例1において、第2の接触の時間を8時間から16時間とした以外は、実施例1と同様にして硫化リチウム粉体を得た。
得られた硫化リチウム粉体を、電位差滴定により測定したところ、硫化リチウムの含有量は99.0質量%、水酸化リチウムの含有量は0.1質量%となり、溶媒の含有量を測定したところ検出されなかった(0.1質量%以下)。また、比表面積、平均粒子径を測定したところ、比表面積は24m2/g、平均粒子径は350μm(0.350mm)となった。また、脱硫化水素処理前の粉末について、実施例1と同様にして水硫化リチウムの含有量を測定すると、その含有量は41.5質量%であった。これらの結果を第1表に示す。
製造例2で得られた硫化リチウム6.0gを、グローブボックス内でシュレンク瓶に秤量した。これに窒素雰囲気下、脱水トルエン(和光純薬工業(株)製)120mlを加えた。硫化水素を100ml/分で流通させながら、50℃、常圧の条件下で2時間、テフロン(登録商標)製アンカー翼で攪拌した。硫化水素を止め、一部サンプリングをした。次いで、オイルバス温度を110℃まで昇温して、110℃、常圧の条件下で2時間加熱処理を行った。昇温後、窒素を流通させて、改質した硫化リチウムを回収した。200℃で真空乾燥を行い、硫化リチウム粉体を得た。
得られた改質硫化リチウムを電位差滴定により測定したところ、硫化リチウムの純度は97.8質量%、水酸化リチウムの含有量は0.4質量%であり、トルエンの含有量は0.2質量%となった。また、比表面積、平均粒子径を測定したところ、比表面積は27m2/g、平均粒子径は394μm(0.394mm)となった。また、脱硫化水素処理前の粉末について、実施例1と同様にして水硫化リチウムの含有量を測定すると、その含有量は44.4質量%であった。これらの結果を第1表に示す。
製造例2で得られた硫化リチウム6.0gを、グローブボックス内でシュレンク瓶に秤量した。これに窒素雰囲気下、脱水エタノール(和光純薬工業(株)製)120mlを加えた。硫化水素を100ml/分で流通させながら、50℃、常圧の条件下で2時間、テフロン(登録商標)製アンカー翼で攪拌した。硫化水素を止め、一部サンプリングをした。次いで、オイルバス温度を110℃まで昇温して、110℃、常圧の条件下で2時間加熱処理を行った。昇温後、窒素を流通させて、改質した硫化リチウムを回収した。200℃で真空乾燥を行い、硫化リチウム粉体を得た。
得られた改質硫化リチウムを電位差滴定により測定したところ、硫化リチウムの純度は96.5質量%、水酸化リチウムの含有量は0.7質量%であり、トルエンの含有量は0.4質量%、エタノールの含有量は0.8質量%となった。また、比表面積、平均粒子径を測定したところ、比表面積は40m2/g、平均粒子径は10μm(0.010mm)となった。また、脱硫化水素処理前の粉末について、実施例1と同様にして水硫化リチウムの含有量を測定すると、検出されなかった。これらの結果を第1表に示す。
Claims (14)
- 溶媒を含まず、比表面積が10m2/g以上であり、平均粒子径が0.1mm以上1.5mm以下である硫化リチウム粉体。
- 水酸化リチウムの含有量が、0.3質量%以下である請求項1に記載の硫化リチウム粉体。
- 硫化リチウムの含有量が98.0質量%以上である請求項1又は2に記載の硫化リチウム粉体。
- 溶媒の不存在下で硫化リチウム粉体と硫化水素とを接触させること、前記接触により得られた生成物を脱硫化水素処理すること、を含む改質硫化リチウム粉体の製造方法。
- 前記接触が、硫化リチウム粉体を硫化水素の存在下で加熱することにより行われる請求項4に記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
- 溶媒の存在下又は不存在下で水酸化リチウムと少なくとも硫黄元素を含む物質とを反応させて硫化リチウム粉体を得ることを含み、該硫化リチウム粉体を前記硫化水素との接触に用いる請求項4又は5に記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
- 前記接触が、20℃以上120℃以下の温度条件で少なくとも一回行われる請求項4〜6のいずれか1項に記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
- 前記接触が、異なる温度条件で二回以上行われる請求項4〜7のいずれか1項に記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
- 前記接触が、140℃以上で行われた後、20℃以上120℃以下で行われる請求項8に記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
- 前記接触が、硫化リチウム粉体に内包される気体を減圧除去した後に行われる請求項4〜9のいずれか1項に記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
- 前記生成物の脱硫水素処理が、不活性ガスの存在下で、加熱することにより行われる、請求項4〜10のいずれか1項に記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
- 前記生成物の脱硫化水素処理が、不活性ガスの存在下で、130℃以上で行われる請求項4〜11のいずれか1項に記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
- 前記生成物が、水硫化リチウムを含む請求項4〜12のいずれか1項に記載の改質硫化リチウム粉体の製造方法。
- 溶媒を含まず、水硫化リチウムと硫化リチウムとを含み、該水硫化リチウムの含有量が、水硫化リチウムと硫化リチウムの合計に対して、5質量%以上100質量%以下である水硫化リチウム含有粉末。
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