JP2019092506A - デバイス、調製者の技能評価方法、調製者の技能評価プログラム、及び調製者の技能評価装置 - Google Patents

デバイス、調製者の技能評価方法、調製者の技能評価プログラム、及び調製者の技能評価装置 Download PDF

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Abstract

【課題】試薬組成物を調製する調製者の技能を適正に評価するのに用いられるデバイスを提供する。【解決手段】デバイス1において、複数のウェル3を有し、特定コピー数の増幅可能な試薬4を含む試薬組成物を配したウェルの群であって、ウェルに配される増幅可能な試薬は、特定コピー数が同一であり、かつ、試薬組成物が特定コピー数以外の組成を異ならせたウェルの群を2以上有する。増幅可能な試薬の特定コピー数以外の組成が、プライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを含む態様が好ましく、増幅可能な試薬の特定コピー数が互いに異なる2以上の群を有する態様がより好ましく、ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、増幅可能な試薬の特定コピー数が検出限界付近である群である態様が更に好ましい。【選択図】図2

Description

本発明は、デバイス、調製者の技能評価方法、調製者の技能評価プログラム、及び調製者の技能評価装置に関する。
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、及び定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)は、核酸の定性評価、定量評価などに用いられている。また、近年では、PCRは遺伝子組み換え作物・食品(GMO)否定試験、ウイルス混入否定試験などにも利用されていることから、結果に対する信頼性を保証することが求められている。
これらの結果を保証するための、装置性能保証及び測定系の管理は、装置の温度制御管理やユーザーのメンテナンス管理によって担われていた。
核酸の定性評価及び定量評価に用いられる核酸試料系列は、既知濃度の核酸試料の系列希釈法により作製されている。例えば、特定の塩基配列を有するDNA断片を限界希釈し、得られた希釈液のリアルタイムPCRの結果から、目的とするコピー数を含む希釈液を選別する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、異なる濃度に系列希釈した標準核酸溶液を複数の試料充填部に密封した標準核酸キットが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
更に、測定系の管理には、PCR反応時の温度管理によって測定結果の保証を行うことが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
本発明は、試薬組成物を調製する調製者の技能を適正に評価するのに用いられるデバイスを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段としての本発明のデバイスは、複数のウェルを有し、特定コピー数の増幅可能な試薬を含む試薬組成物を配した前記ウェルの群であって、前記ウェルに配される前記増幅可能な試薬は、前記特定コピー数が同一であり、かつ前記試薬組成物が前記特定コピー数以外の組成を異ならせた前記ウェルの群を2以上有する。
本発明によると、試薬組成物を調製する調製者の技能を適正に評価するのに用いられるデバイスを提供することができる。
図1は、本発明のデバイスの一例を示す斜視図である。 図2は、本発明のデバイスの一例を示す側面図である。 図3は、DNA複製済みの細胞の頻度と、蛍光強度との関係の一例を示すグラフである。 図4Aは、電磁バルブ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。 図4Bは、ピエゾ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。 図4Cは、図4Bにおけるピエゾ方式の吐出ヘッドの変形例の模式図である。 図5Aは、圧電素子に印加する電圧の一例を示す模式図である。 図5Bは、圧電素子に印加する電圧の他の一例を示す模式図である。 図6Aは、液滴の状態の一例を示す模式図である。 図6Bは、液滴の状態の一例を示す模式図である。 図6Cは、液滴の状態の一例を示す模式図である。 図7は、ウェル内に順次液滴を着弾させるための分注装置の一例を示す概略図である。 図8は、液滴形成装置の一例を示す模式図である。 図9は、図8の液滴形成装置の制御手段のハードウェアブロックを例示する図である。 図10は、図8の液滴形成装置の制御手段の機能ブロックを例示する図である。 図11は、液滴形成装置の動作の一例を示すフローチャートである。 図12は、液滴形成装置の変形例を示す模式図である。 図13は、液滴形成装置の他の変形例を示す模式図である。 図14Aは、飛翔する液滴に2個の蛍光粒子が含まれる場合を例示する図である。 図14Bは、飛翔する液滴に2個の蛍光粒子が含まれる場合を例示する図である。 図15は、粒子同士の重なりが生じない場合の輝度値Liと、実測される輝度値Leとの関係を例示する図である。 図16は、液滴形成装置の他の変形例を示す模式図である。 図17は、液滴形成装置の他の一例を示す模式図である。 図18は、マイクロ流路中を通過してきた細胞をカウントする方法の一例を示す模式図である。 図19は、吐出ヘッドのノズル部近傍の画像を取得する方法の一例を示す模式図である。 図20は、確率P(>2)と平均細胞数の関係を表すグラフである。 図21は、調製者の技能評価装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。 図22は、調製者の技能評価装置の機能構成の一例を示す図である。 図23は、調製者の技能評価プログラム処理の一例を示すフローチャートである。 図24は、リアルタイムPCRの温度制御方法の一例を示す図である。 図25は、リアルタイムPCRを行うプレートの一例を示す図である。 図26は、図25における結果の一例を示す図である。 図27は、図25における結果の一例を示す図である。 図28は、図25における結果の一例を示す図である。 図29は、ポアソン分布に基づくばらつきを持ったコピー数と変動係数CVとの関係を示すグラフである。
(デバイス)
本発明のデバイスは、複数のウェルを有し、特定コピー数の増幅可能な試薬を含む試薬組成物を配した前記ウェルの群であって、前記ウェルに配される前記増幅可能な試薬は、前記特定コピー数が同一であり、かつ前記試薬組成物が前記特定コピー数以外の組成を異ならせた前記ウェルの群を2以上有し、基材及び識別手段を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の部材を有する。
本発明のデバイスは、従来の希釈法では、確率的に充填されていない部分があることや配置絶対数が1コピーのみであり設計値どおりに配置できないため、測定系の性能評価を高精度に行うことができないという知見に基づくものである。
また、本発明のデバイスは、従来の標準核酸キットでは、低コピー数領域における試料核酸の確率的なばらつきを考慮していないという課題が解決できていないという知見に基づくものである。
更に、本発明のデバイスは、従来の測定系の評価方法では、温度という間接的な要因でしか測定系の評価を行っていないため、手技による測定系への影響を適正に評価することができないという知見に基づくものである。
本発明のデバイスによると、試薬組成物に含まれる増幅可能な試薬の特定コピー数が同一であり、かつ試薬組成物の特定コピー数以外の組成を異ならせたウェルの群を2以上有することにより、試薬組成物を調製する調製者の技能を適正に評価するのに用いることができる。
本発明のデバイスにおける増幅可能な試薬の特定コピー数としては、1,000以下であり、500以下が好ましく、200以下がより好ましく、100以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましい。
<ウェル>
ウェルは、その形状、数、容積、材質、色などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ウェルの形状としては、特定コピー数の増幅可能な試薬を含む試薬組成物を配することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平底、丸底、U底、V底等の凹部、基板上の区画などが挙げられる。
ウェルの数は、2以上の複数であることが好ましく、5以上がより好ましく、50以上が更に好ましい。
ウェルの数が2以上であるマルチウェルプレートが好適に用いられる。
マルチウェルプレートとしては、例えば、24、48、96、384、又は1,536のウェルプレートが挙げられる。
ウェルの容積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一般的な核酸検査装置に用いられる試料量を考慮すると、10μL以上1,000μL以下が好ましい。
ウェルの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ふっ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
ウェルの色としては、例えば、透明、半透明、着色、完全遮光などが挙げられる。
ウェルの濡れ性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、撥水性であることが好ましい。ウェルの濡れ性が、撥水性であると、ウェル内壁への増幅可能な試薬の吸着を低減化できる。また、ウェルの濡れ性が、撥水性であると、ウェル内の増幅可能な試薬及びプライマー、増幅試薬を溶液状態で移動することができる。
ウェル内壁の撥水化の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ふっ素系樹脂被膜を形成する方法、ふっ素プラズマ処理、エンボス加工が挙げられる。特に、接触角が100°以上となる撥水化処理を施すことで、液体の取りこぼしによる増幅可能な試薬の減少及び不確かさ(又は変動係数)の増大を抑えることができる。
<基材>
デバイスは、ウェルが基材に設けられたプレート状のものが好ましいが、8連チューブ等の連結タイプのウェルチューブであってもよい。
基材としては、その材質、形状、大きさ、構造などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、半導体、セラミックス、金属、ガラス、石英ガラス、プラスチックスなどが挙げられる。これらの中でも、プラスチックスが好ましい。
プラスチックスとしては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ふっ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、板状、プレート状などが好ましい。
基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造であっても複数層構造であっても構わない。
<識別手段>
デバイスは、増幅可能な試薬の特定コピー数の情報を識別可能な識別手段を有することが好ましい。
識別手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メモリ、ICチップ、バーコード、QRコード(登録商標)、Radio Frequency Identifier(以下、「RFID」とも称することがある)、色分け、印刷などが挙げられる。
識別手段を設ける位置及び識別手段の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
識別手段に記憶させる情報としては、増幅可能な試薬の特定コピー数の情報以外にも、例えば、分析結果(例えば、活性値、発光強度等)、増幅可能な試薬の数(例えば、細胞の数)、細胞の生死、特定塩基配列のコピー数、複数のウェルのうちどのウェルに増幅可能な試薬が充填されているのか、増幅可能な試薬の種類、測定日時、測定者の氏名などが挙げられる。
識別手段に記憶された情報は、各種読取手段を用いて読み取ることができ、例えば、識別手段がバーコードであれば読取手段としてバーコードリーダーが用いられる。
識別手段に情報を書き込む方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、手入力、ウェルに増幅可能な試薬を分注する際に増幅可能な試薬の個数を計数する液滴形成装置から直接データを書き込む方法、サーバに保存されているデータの転送、クラウドに保存されているデータの転送などが挙げられる。
<その他の部材>
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、密閉部材などが挙げられる。
−密閉部材−
デバイスは、ウェルへの異物混入は充填物の流出などを防ぐために、密閉部材を有することが好ましい。
密閉部材としては、少なくとも1つのウェルを密閉可能であり、1つ1つのウェルを個別に密閉乃至開封できるように、切り取り線により切り離し可能に構成することが好ましい。
密閉部材の形状としては、ウェル内壁径と一致するキャップ状、又はウェル開口部を被覆するフィルム状であることが好ましい。
密閉部材の材質としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
密閉部材としては、全てのウェルを一度に密閉可能なフィルム状であることが好ましい。また、使用者の誤使用を低減化できるように再開封が必要なウェルと不必要なウェルとの接着強度が異なるように構成されていることが好ましい。
前記ウェル内の増幅可能な試薬、後述するプライマー、及び後述する増幅試薬の状態は、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶液又は固体のいずれかの状態であってもよい。使用性の観点からは、特に、溶液状態であることが好ましい。溶液状態であると、使用者はすぐに試験に用いることができる。輸送上の観点からは、特に、固体状態であることが好ましく、乾燥状態がより好ましい。固体乾燥状態であると、分解酵素等による増幅試薬可能な試薬の分解の反応速度を低減化することができ、増幅可能な試薬、プライマー、及び増幅試薬の保存性を向上させることができる。
また、固体乾燥状態のデバイスの使用直前に、バッファーや水に溶解させることで、すぐに反応液として用いることができるよう、適正量の増幅可能な試薬、プライマー、及び増幅試薬が充填されていることが望ましい。
乾燥方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、凍結乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、蒸気乾燥、吸引乾燥、赤外線乾燥、バレル乾燥、スピン乾燥などが挙げられる。
本発明のデバイスは、複数のウェルを有し、特定コピー数の増幅可能な試薬を含む試薬組成物を複数のウェルに配している。
コピー数とは、前記ウェルに含まれる増幅可能な試薬中の標的もしくは特定の塩基配列の数を意味している。
標的の塩基配列とは、少なくともプライマー及びプローブ領域の塩基配列が決まっているものを指し、特に、塩基配列の全長が定められているものを特定の塩基配列とも呼称する。
特定コピー数とは、前記コピー数のうち、標的の塩基配列の数が一定以上の精度で特定されていることを意味する。
すなわち、実際にウェルに含まれている標的の塩基配列の数として既知ということができる。つまり、本願における特定コピー数は、従来の系列希釈により得られる所定のコピー数(算出推定値)よりも、数としての精度、信頼性が高く、特に、1,000以下の低コピー数領域であってもポアソン分布によらない制御された値となる。制御された値は、概ね、不確かさを表す変動係数CVが平均コピー数xに対し、CV<1/√xもしくはCV≦20%のどちらか値の大きさの中に収まっていることが好ましい。それゆえ、当該特定コピー数の標的の塩基配列を含むウェルを有するデバイスを用いることで、従来よりも正確に標的の塩基配列を有する試料の定性的、定量的な検査を行うことが可能となる。
なお、ここで標的の塩基配列の数とその配列を有する核酸の分子数とが一致する場合には、「コピー数」と「分子数」は対応付けられる場合もある。
具体的には、例えば、ノロウイルスの場合は、ウイルスの個数=1なら核酸分子数=1、コピー数=1で、GI期の酵母の場合は、酵母数=1なら核酸分子数(同一の染色体数)=1、コピー数=1で、G0/GI期のヒト細胞の場合は、ヒト細胞数=1なら核酸分子数(同一の染色体数)=2、コピー数=2である。
さらに、標的の塩基配列を2箇所に導入したGI期の酵母の場合は、酵母数=1なら核酸分子数(同一の染色体数)=1、コピー数=2となる。
また、本発明においては、増幅可能な試薬の特定コピー数は、増幅可能な試薬の絶対数と称することもある。
増幅可能な試薬を含むウェルが複数存在する場合には、各ウェル内に含まれる増幅可能な試薬の特定コピー数は同一であればよい。
増幅可能な試薬の特定コピー数が同一であるとは、デバイスに増幅可能な試薬を充填する際に生じる増幅可能な試薬の数のばらつきが許容範囲内であることを意味する。増幅可能な試薬の数のばらつきが許容範囲内にあるか否かについては、以下に示す不確かさの情報に基づいて判断することができる。
増幅可能な試薬の特定コピー数に関する情報としては、デバイスにおける増幅可能な試薬に関わる情報であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、不確かさの情報、後述する担体の情報、増幅可能な試薬の情報などが挙げられる。
「不確かさ」とは、「測定の結果に付随した、合理的に測定量に結びつけられ得る値のばらつきを特徴づけるパラメータ」であるとISO/IEC Guide99:2007[国際計量計測用語−基本及び一般概念並びに関連用語(VIM)]に定義されている。
ここで、「合理的に測定量に結びつけられ得る値」とは、測定量の真の値の候補を意味する。即ち、不確かさとは、測定対象の製造に係る操作、機器などに起因する測定結果のばらつきの情報を意味する。不確かさが大きいほど、測定結果として予想されるばらつきが大きくなる。
不確かさとしては、例えば、測定結果から得られる標準偏差であってもよく、真の値が所定の確率以上で含まれている値の幅として表す信頼水準の半分の値としてもよい。
不確かさを算出する方法としては、Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement(GUM:ISO/IEC Guide98−3)、及びJapan Accreditation Board Note 10 試験における測定の不確かさに関するガイドラインなどに基づき算出することができる。不確かさを算出する方法としては、例えば、測定値などの統計を用いたタイプA評価法と、校正証明書、製造者の仕様書、公表されている情報などから得られる不確かさの情報を用いたタイプB評価法の2つの方法を適用することができる。
不確かさは、操作及び測定などの要因から得られる不確かさを全て標準不確かさに変換することにより、同じ信頼水準で表現することができる。標準不確かさとは、測定値から得られた平均値のばらつきを示す。
不確かさを算出する方法の一例としては、例えば、不確かさを引き起こす要因を抽出し、それぞれの要因の不確かさ(標準偏差)を算出する。さらに、算出したそれぞれの要因の不確かさを平方和法により合成し、合成標準不確かさを算出する。合成標準不確かさの算出において、平方和法を用いるため、不確かさを引き起こす要因の中で不確かさが十分に小さい要因については無視することができる。
さらに、本発明のデバイスにおいては、不確かさの情報としては、ウェル内に充填される増幅可能な試薬の変動係数を用いてもよい。
変動係数とは、細胞を凹部に充填する際に生じる各凹部に充填される細胞数(又は、増幅可能な試薬の数)のばらつきの相対値を意味する。即ち、変動係数とは、凹部に充填した細胞(又は、増幅可能な試薬)の数の充填精度を意味する。変動係数とは、標準偏差σを平均値xで除した値である。ここでは、標準偏差σを平均コピー数(平均充填コピー数)xで除した値を変動係数CVとすると、下記式1の関係式になる。
一般的に、細胞(又は、増幅可能な試薬)は分散液中でポアソン分布のランダムな分布状態を取っています。そのため、段階希釈法、即ち、ポアソン分布におけるランダムな分布状態では、標準偏差σは、平均コピー数xと下記式2の関係式を満たすとみなすことができる。これより、細胞(又は、増幅可能な試薬)の分散液を段階希釈法により希釈した場合、標準偏差σと平均コピー数xとから平均コピー数xの変動係数CV(CV値)を、上記式1及び式2から導出された下記式3を用いて求めると、表1及び図29に示すようになる。なお、ポアソン分布に基づくばらつきを持ったコピー数の変動係数のCV値は図29から求めることができる。
表1及び図29の結果から、例えば、ウェルに100コピー数の増幅可能な試薬を段階希釈法により充填する場合には、最終的に反応溶液中に充填される増幅可能な試薬のコピー数はその他の精度を無視しても、少なくとも10%の変動係数(CV値)を持つことがわかる。
増幅可能な試薬のコピー数としては、変動係数のCV値と、増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV<1/√xを満たすことが好ましく、CV<1/2√xを満たすことがより好ましい。
不確かさの情報としては、増幅可能な試薬を含むウェルが複数存在し、ウェルに含まれる増幅可能な試薬の特定コピー数に基づく、デバイス全体としての不確かさの情報を有することが好ましい。
不確かさを引き起こす要因としてはいくつか考えられ、例えば、目的の増幅可能な試薬を細胞に導入して当該細胞を計数及び分注して作製する場合には、細胞内の増幅可能な試薬の数(例えば、細胞の細胞周期など)、細胞をデバイスに配置する手段(インクジェット装置、又はその装置の動作のタイミングなどの装置における各部位の動作による結果を含む。例えば、細胞懸濁液を液滴化した時の液滴に含まれる細胞数など)、細胞がデバイスの適切な位置に配置された頻度(例えば、ウェル内に配置された細胞数など)、細胞が細胞懸濁液中で破壊されることにより増殖可能な試薬が細胞懸濁液中に混入することによるコンタミネーション(夾雑物の混入、以下、「コンタミ」と記載することがある)などが挙げられる。
増幅可能な試薬の情報としては、例えば、増幅可能な試薬の数に関する情報としては、デバイスに含まれる増幅可能な試薬の数の不確かさの情報などが挙げられる。
試薬組成物は、特定コピー数の増幅可能な試薬以外にも、増幅可能な試薬(例えば、核酸)の増幅に必要な要素を含み、例えば、プライマー、増幅試薬などを含有する。
プライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、鋳型DNAに特異的な18塩基以上30塩基以下の相補的塩基配列を持つ合成オリゴヌクレオチドであり、増幅したい領域を挟むようにフォワードプライマーとリバースプライマーとの2か所(一対)設定される。
増幅試薬としては、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、酵素としてDNAポリメラーゼ、基質として4種の塩基(dGTP、dCTP、dATP、dTTP)、Mg2+(2mMの塩化マグネシウム)、最適pH(pH7.5〜9.5)を保持するバッファーなどが挙げられる。
デバイスにおいて、増幅可能な試薬の特定コピー数が同一であり、かつ前記試薬組成物が前記特定コピー数以外の組成を異ならせたウェルグループ(群)を2以上有する。例えば、デバイスの基材が、複数のウェルを有するプレートの場合には、プレート上で各グループにより各グループ「領域」が形成される。なお、試薬組成物における増幅可能な試薬の特定コピー数が異なる2以上の領域は、隣接していてもよく、離れていても構わない。
増幅可能な試薬の特定コピー数以外の組成が異なるとは、例えば、増幅可能な試薬としての核酸以外のプライマー及び増幅試薬が入っているか否かの組合せを設けることができることを意味する。例えば、デバイスの第1の群には(1)核酸、プライマー、及び増幅試薬の組成、また第2の群には(2)核酸及びプライマーの組成、更に第3の群には(3)核酸のみの組成とする。(2)及び(3)の組成には、調製者が手技によりプライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを加え、試薬組成物を調製し、PCR反応を行う。これにより、デバイスは、例えば、試薬組成物を調製する調製者の技能を評価することができる。
調製者の技能としては、増幅可能な試薬として核酸を用いた場合では、例えば、ピペッティング操作、増幅試薬の調製量、及びウェルプレートへの試薬の添加などが挙げられる。
なお、調製者は、調製を行う際に、使用するデバイスの各々の群に含まれる核酸、プライマー(もしくは複数種類のプライマーからなるプライマーセット)、増幅試薬について、予め、それぞれの種類、量や濃度を把握しておく。その上で、調製者は、それぞれの群において、各々の群で、種類、量や濃度を合わせるように調製し、PCR反応を行うことも可能である。このようにすることで、調製者の技能をより適切に評価することが可能となる。
更に、デバイスは、複数のウェルを有し、増幅可能な試薬、プライマー、及び増幅試薬の少なくともいずれかの組成を含む試薬組成物を前記複数のウェルに配しており、前記試薬組成物は前記組成を異ならせてなる2以上の群である態様としてもよい。
上記の構成のようにすることで、任意の組成を調整する調製者の技能を評価することができる。
更に、デバイスは、増幅可能な試薬の特定コピー数が互いに異なる2以上の群を有することが好ましい。これにより、例えば、本発明のデバイスを用いて検査装置の性能評価の一つであるリアルタイムPCRを行って得られた結果において、異なる位置の特定コ分子数が同じウェルを比較し使用に適さないウェル(不適合ウェル)があった場合に、再度リアルタイムPCRの校正を行うか、実際のサンプルでは不適合ウェルにおけるサンプルは適用除外として運用するかの判断ができる。また、本発明のデバイスを用いて、定期的に検査装置の計測を行うことにより、検査装置の面内位置におけるCt値の経時変化の情報を得ることができ、それによって、検査装置の面内特性を評価することができる。更に、同じ特定コピー数を配置したデバイスを用いることにより、測定を行った検査装置、及び異なる検査装置間の比較をすることができる。
増幅可能な試薬の特定コピー数が互いに異なる2以上の群としては、増幅可能な試薬の特定コピー数が検出限界付近である群を少なくとも有することが好ましい。
検出限界(Limit of Detection;LOD)とは、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を検出できる手法において、検出できる最少の増幅可能な試薬のコピー数を表し、特に制限はなく、測定法に応じて適宜選択することができ、例えば、平均値+3σなどが挙げられる。
本明細書においては、特定コピー数のサンプル21個のサンプル中の未検出が1個の場合のうち、最少のコピー数に相当するものを検出限界として用いることができる。
検出限界付近とは、上記検出限界のコピー数の±1までの範囲のコピー数を意味する。
本発明のデバイスが、増幅可能な試薬の特定コピー数が検出限界付近である群を少なくとも有する場合には、例えば、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が、それぞれ「1」、「2」、「3」、「4」、「5」である群を有する場合には、ある検査装置について性能評価を行うと、当該検査装置では「3」以上の群では前記増幅可能な試薬を増幅可能であるが、「2」以下の群では前記増幅可能な試薬を増幅不能であって、当該検査装置における前記増幅可能な試薬の特定コピー数についての検出限界の下限値が「3」であることを明らかにすることができる。また、同様の別の検査装置について性能評価を行うと、当該検査装置では「4」以上の群では前記増幅可能な試薬を増幅可能であるが、「3」以下の群では前記増幅可能な試薬を増幅不能であって、当該検査装置における前記増幅可能な試薬の特定コピー数についての検出限界の下限値が「4」であることを明らかにすることができ、検査装置の検出可能な最少の増幅可能な試薬の特定コピー数を判断することができる。
また、増幅可能な試薬を特定コピー数で配したウェルの群の内の少なくとも1つの群は、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が定量下限を超えるコピー数である群であることが好ましい。
定量下限(Limit of qualification;LOQ)とは、増幅可能な試薬(例えば、核酸)の定量が可能な手法において、定量が可能な(定量結果が十分な信頼性を有することのできる)最少の増幅可能な試薬のコピー数を表し、特に制限はなく、測定法に応じて適宜選択することができる。
本明細書においては、複数のコピー種からなるサンプル(例えば、特定コピー数が異なる複数の核酸試料)より、検量線を作成し、その検量線の直線性から外れるコピー数の値を定量下限としてもよい。もしくは検量線の不確かさをCV値で表し、横軸にコピー数をとり、縦軸にCt値をとってCV値をプロットしたグラフにおいて、例えば、CV値が5%又は10%を切る値(コピー数)を定量下限とすることができる。
また、定量的な評価の場合には、Ct値そのものではなく、校正曲線及びPCR効率からCt値に対応したコピー数(分子数又は濃度)を求めることができるため、コピー数(分子数又は濃度)に換算したCV値から定量下限を設定してもよい。
本発明のデバイスが、増幅可能な試薬(例えば、核酸)の特定コピー数が定量下限を超えるコピー数である群を少なくとも有する場合には、例えば、ある検査装置では増幅可能な試薬の特定コピー数が10以上であれば定量的な検出を保証できることがわかり、別の検査装置では核酸の特定コピー数が20以上であれば定量的な検出を保証できることがわかるといったように、検査装置の定量的な検出を保証できる最少の増幅可能な試薬の特定コピー数を判断することができる。
本発明のデバイスは、ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、増幅可能な試薬の特定コピー数が0であるネガティブコントロール群であることがより好ましい。
本発明のデバイスにおいて、ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、増幅可能な試薬の特定コピー数が0であるネガティブコントロール群であることにより、ネガティブコントロール群で、増幅可能な試薬の検出がなされたときは、検出系(試薬や装置)に異常があることが示唆される。デバイス内にネガティブコントロール群を設けておくことにより、問題が生じたときにユーザーは直ちに問題に気づくことができ、測定を中止して問題がどこにあるかの点検を行うことができる。
また、本発明のデバイスは、ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるポジティブコントロール群であることが好ましい。
本発明のデバイスにおいて、ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるポジティブコントロール群であることにより、ポジティブコントロール群で増幅可能な試薬が不検出とされたときは、検出系(試薬や装置)に異常があることが示唆される。デバイス内にポジティブコントロール群を設けておくことにより、問題が生じたときにユーザーは直ちにそれに気づくことができ、測定を中止して問題がどこにあるかの点検を行うことができる。
増幅可能な試薬は核酸であることが好ましい。核酸は細胞の核中に組み込まれていることが好ましい。
−核酸−
核酸とは、プリン又はピリミジンから導かれる含窒素塩基、糖、及びリン酸が規則的に結合した高分子の有機化合物を意味し、核酸の断片、あるいはこれら核酸又はその断片のアナログなども含まれる。
核酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNA、RNA、cDNAなどが挙げられる。
核酸又は核酸断片としては、生物から得られる天然物又はそれらの加工物であってもよく、また、遺伝子組換技術を利用して製造されたもの、化学的に合成された人工合成核酸分子などでもよい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。人工合成核酸分子とすることにより、不純物が少なくなり、低分子化することが可能となるため、初期反応効率を向上させることができる。
なお、人工合成核酸としては、天然に存在するDNA又はRNAと同様の構成成分(塩基、デオキシリボース、リン酸)からなる核酸を人工的に合成した核酸を意味する。人工合成核酸としては、例えば、タンパク質をコードする塩基配列を有する核酸に限らず、任意の塩基配列を有する核酸を含む。
核酸又は核酸断片のアナログとしては、核酸又は核酸断片に非核酸成分を結合させたもの、核酸又は核酸断片を蛍光色素や同位元素等の標識剤で標識したもの(例えば、蛍光色素や放射線同位体で標識されたプライマーやプローブ)、核酸又は核酸断片を構成するヌクレオチドの一部の化学構造を変化させた人工核酸(例えば、PNA、BNA、LNAなど)などが挙げられる。
核酸の形態としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、二本鎖核酸、一本鎖核酸、部分的に二本鎖又は一本鎖核酸などが挙げられ、環状又は直鎖状のプラスミドも使用することができる。
また、核酸は修飾又は変異されていてもよい。
核酸は、標的の塩基配列を有することが好ましい。
標的の塩基配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感染症検査に用いられる塩基配列、自然界には存在しない非天然の塩基配列、動物細胞由来の塩基配列、植物細胞由来の塩基配列、真菌の細胞由来の塩基配列、細菌由来の塩基配列、ウイルス由来の塩基配列などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
非天然の塩基配列を用いる場合、GC含有率が標的の塩基配列の30%以上70%以下であることが好ましく、GC含量が一定であることが好ましい(例えば、配列番号1など参照)。
標的の塩基配列の塩基長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、20塩基対(又はmer)以上10,000塩基対(又はmer)以下の塩基長などが挙げられる。
感染症検査に用いられる塩基配列を用いる場合、その感染症特有の塩基配列を含んでいれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公定法や通知法で指定されている塩基配列を含んでいることが好ましい(例えば、配列番号2及び3など参照)。
核酸としては、使用する細胞由来の核酸であってもよく、遺伝子導入により導入された核酸であってもよい。核酸として、遺伝子導入により導入された核酸、及びプラスミドを使用する場合は、1細胞に1コピーの核酸が導入されていることを確認することが好ましい。1コピーの核酸が導入されていることの確認方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シーケンサー、PCR法、サザンブロット法などを用いて確認することができる。
遺伝子導入により導入される標的の塩基配列を有する核酸の種類は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。なお、遺伝子導入により導入される核酸の数が1種類の場合にも、目的に応じてタンデムに同様の塩基配列を導入してもよい。
遺伝子導入の方法としては、標的の塩基配列が狙いの場所に狙いのコピー数導入できれば特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、相同組換え、CRISPR/Cas9、CRISPR/Cpf1、TALEN、Zinc finger nuclease、Flip−in、Jump−inなどが挙げられる。これらの中でも、酵母菌の場合は、効率の高さ、及び制御のしやすさの点から、相同組換えが好ましい。
−担体−
増幅可能な試薬は、担体に担持された状態で扱われることが好ましい。なお、増幅可能な試薬が核酸である場合には、核酸が粒子形状をした担体(担体粒子)に担持(より好ましくは内包)されている態様などが好ましい。
担体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞、樹脂、リポソーム、マイクロカプセルなどが挙げられる。
−細胞−
細胞は、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を有し、生物体を形成する構造的及び機能的単位を意味する。
細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞を問わず、すべての細胞について使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
真核細胞としては、特に制限はなく、目的応じて適宜選択することができ、例えば、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌、藻類、原生動物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、動物細胞、真菌が好ましい。
接着性細胞としては、組織や器官から直接採取した初代細胞でもよく、組織や器官から直接採取した初代細胞を何代か継代させたものでもよく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分化した細胞、未分化の細胞などが挙げられる。
分化した細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、肝臓の実質細胞である肝細胞;星細胞;クッパー細胞;血管内皮細胞;類道内皮細胞、角膜内皮細胞等の内皮細胞;繊維芽細胞;骨芽細胞;砕骨細胞;歯根膜由来細胞;表皮角化細胞等の表皮細胞;気管上皮細胞;消化管上皮細胞;子宮頸部上皮細胞;角膜上皮細胞等の上皮細胞;乳腺細胞;ペリサイト;平滑筋細胞、心筋細胞等の筋細胞;腎細胞;膵ランゲルハンス島細胞;末梢神経細胞、視神経細胞等の神経細胞;軟骨細胞;骨細胞などが挙げられる。
未分化の細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、未分化細胞である胚性幹細胞、多分化能を有する間葉系幹細胞等の多能性幹細胞;単分化能を有する血管内皮前駆細胞等の単能性幹細胞;iPS細胞などが挙げられる。
真菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カビ、酵母菌などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞周期を調節することができ、1倍体を使用することができる点から、酵母菌が好ましい。
細胞周期とは、細胞が増えるとき、細胞分裂が生じ、細胞分裂で生じた細胞(娘細胞)が再び細胞分裂を行う細胞(母細胞)となって新しい娘細胞を生み出す過程を意味する。
酵母菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、G0/G1期に同調して同調培養され、G1期で固定されているものが好ましい。
また、酵母菌としては、例えば、細胞周期をG1期に制御するフェロモン(性ホルモン)の感受性が増加したBar−1欠損酵母が好ましい。酵母菌がBar−1欠損酵母であると、細胞周期が制御できていない酵母菌の存在比率を低くすることができるため、ウェル内に収容された細胞の特定の核酸の数の増加等を防ぐことができる。
原核細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真正細菌、古細菌などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
細胞としては、死細胞が好ましい。死細胞であると、分取後に細胞分裂が起こることを防ぐことができる。
細胞としては、光を受光したときに発光可能な細胞であることが好ましい。光を受光したときに発光可能な細胞であると、細胞の数を高精度に制御してウェル内に着弾させることができる。
受光とは、光を受けることを意味する。
光学センサとは、人間の目で見ることができる可視光線と、それより波長の長い近赤外線や短波長赤外線、熱赤外線領域までの光のいずれかの光をレンズで集め、対象物である細胞の形状などを画像データとして取得する受動型センサを意味する。
−−光を受光したときに発光可能な細胞−−
光を受光したときに発光可能な細胞としては、光を受光したときに発光可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、蛍光色素によって染色された細胞、蛍光タンパク質を発現した細胞、蛍光標識抗体により標識された細胞などが挙げられる。
細胞における蛍光色素による染色部位、蛍光タンパク質の発現部位、又は蛍光標識抗体による標識部位としては、特に制限はなく、細胞全体、細胞核、細胞膜などが挙げられる。
−−蛍光色素−−
蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類、クマリン類、ピレン類、シアニン類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類が好ましく、エオシン、エバンスブルー、トリパンブルー、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン123がより好ましい。
蛍光色素としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、商品名:EosinY(和光純薬工業株式会社製)、商品名:エバンスブルー(和光純薬工業株式会社製)、商品名:トリパンブルー(和光純薬工業株式会社製)、商品名:ローダミン6G(和光純薬工業株式会社製)、商品名:ローダミンB(和光純薬工業株式会社製)、商品名:ローダミン123(和光純薬工業株式会社製)などが挙げられる。
−−蛍光タンパク質−−
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami−Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP−m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed−Express、DsRed2、TagRFP、DsRed−Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、mPlum、PS−CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
−−蛍光標識抗体−−
蛍光標識抗体としては、蛍光標識されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CD4−FITC、CD8−PEなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
細胞の体積平均粒径としては、遊離状態において、30μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、7μm以下が特に好ましい。体積平均粒径が、30μm以下であれば、インクジェット法やセルソーターなどの液滴吐出手段に好適に用いることができる。
細胞の体積平均粒径としては、例えば、下記の測定方法で測定することができる。
作製した染色済み酵母分散液から10μL取り出してPMMA製プラスチックスライドに載せ、自動セルカウンター(商品名:Countess Automated Cell Counter、invitrogen社製)を用いることにより体積平均粒径を測定することができる。なお、細胞数も同様の測定方法により求めることができる。
細胞懸濁液における細胞の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5×10個/mL以上5×10個/mL以下が好ましく、5×10個/mL以上5×10個/mL以下がより好ましい。細胞数が、5×10個/mL以上5×10個/mL以下であると、吐出した液滴中に細胞を確実に含むことができる。細胞数としては、体積平均粒径の測定方法と同様にして、自動セルカウンター(商品名:Countess Automated Cell Counter、invitrogen社製)を用いて測定することができる。
核酸を有する細胞の細胞数は、複数であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−樹脂−
樹脂としては、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を担持することができれば、その材質、形状、大きさ、構造については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
−リポソーム−
リポソームとは、脂質分子を含む脂質二重層から形成される脂質小胞体であり、具体的には、脂質分子の疎水性基と親水性基の極性に基づいて生じる脂質二重層により外界から隔てられた空間を有する閉鎖された脂質を含む小胞体を意味する。
リポソームは、脂質を用いた脂質二重膜で形成される閉鎖小胞体であり、その閉鎖小胞の空間内に水相(内水相)を有する。内水相には、水等が含まれる。リポソームはシングルラメラ(単層ラメラ、ユニラメラ、二重層膜が一重)であっても、多層ラメラ(マルチラメラ、タマネギ状の構造をした多数の二重層膜で、個々の層は水様の層で仕切られている)であってもよい。
リポソームとしては、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を内包することのできるリポソームが好ましく、その形態は特に限定されない。「内包」とは、リポソームに対して核酸が内水相および膜自体に含まれる形態をとることを意味する。例えば、膜で形成された閉鎖空間内に核酸を封入する形態、膜自体に内包する形態などが挙げられ、これらの組合せでもよい。
リポソームの大きさ(平均粒子径)は、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を内包することができれば特に限定されないが、球状またはそれに近い形態をとることが好ましい。
リポソームの脂質二重層を構成する成分(膜成分)は、脂質から選ばれる。脂質として、水溶性有機溶媒及びエステル系有機溶媒の混合溶媒に溶解するものであれば任意に使用することができる。脂質として、具体的には、リン脂質、リン脂質以外の脂質、コレステロール類及びそれらの誘導体等が挙げられる。これらの成分は、単一種又は複数種の成分から構成されてよい。
−マイクロカプセル−
マイクロカプセルとは、壁材と中空構造とを有する微小な粒体を意味し、中空構造に増幅可能な試薬(例えば、核酸)を内包することができる。
マイクロカプセルとしては、特に制限はなく、適宜目的に応じて、壁材、大きさ等を選択することができる。
マイクロカプセルの壁材としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ尿素、ポリ尿素−ポリウレタン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホンアミド、ポリカーボネート、ポリスルフィネート、エポキシリ、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、ゼラチンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
マイクロカプセルの大きさとしては、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を内包することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
マイクロカプセルの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、in−situ法、界面重合法、コアセルベーション法などが挙げられる。
ここで、図1は、本発明のデバイスの一例を示す斜視図である。図2は、図1のデバイスの側面図である。デバイス1は、基材2に複数のウェル3が設けられており、ウェル3内(ウェルを構成するウェル壁面で囲まれる内側の空間領域)に増幅可能な試薬としての核酸4が特定コピー数で充填されている。なお、図1及び図2中5は、密閉部材である。
例えば、図1及び図2に示すように、各ウェル3に充填する試薬の数とその数の不確かさ(確からしさ)の情報、もしくはこれらの情報と関連付けられた情報を記憶するICチップまたはバーコード(識別手段6)が、密閉部材5と基材2との間で且つウェルの開口部以外の位置に配置されている。これは、識別手段の意図しない改変等を防止するのに好適である。
また、検査デバイスが識別手段を有することで、識別手段を有しない一般のウェルプレートとの区別可能である。このため、取り違えを防止することが可能である。
<デバイスの製造方法>
以下、特定の核酸を有する細胞を用いたデバイスの製造方法について説明する。
本発明のデバイスの製造方法は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含む細胞懸濁液を生成する細胞懸濁液生成工程と、細胞懸濁液を液滴として吐出することによりプレートのウェル内に液滴を順次着弾させる液滴着弾工程と、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、前記液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数する細胞数計数工程と、ウェル内の細胞から核酸を抽出する核酸抽出工程とを含み、細胞懸濁液生成工程、液滴着弾工程、及び細胞計数工程における推定する核酸の数の確からしさを算出する工程、出力工程、記録工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
<<細胞懸濁液生成工程>>
細胞懸濁液生成工程は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含む細胞懸濁液を生成する工程である。
溶剤とは、細胞を分散させるために用いる液体を意味する。
細胞懸濁液における懸濁とは、細胞が溶剤中に分散して存在する状態を意味する。
生成とは、作り出すことを意味する。
−細胞懸濁液−
細胞懸濁液は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含み、添加剤を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含む。
特定の核酸を有する複数の細胞については、上述したとおりである。
−−溶剤−−
溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、培養液、分離液、希釈液、緩衝液、有機物溶解液、有機溶剤、高分子ゲル溶液、コロイド分散液、電解質水溶液、無機塩水溶液、金属水溶液、又はこれらの混合液体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水、緩衝液が好ましく、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Tris−EDTA緩衝液(TE)がより好ましい。
−−添加剤−−
添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、核酸、樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、細胞同士の凝集を防止し、連続吐出安定性を向上することができる。
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、添加量にもよるが、タンパク質を変性及び失活させない点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。
イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、脂肪酸ナトリウムが好ましく、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)がより好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルグリコシド、アルキルポリオキシエチレンエーテル(Brijシリーズ等)、オクチルフェノールエトキシレート(Triton Xシリーズ、Igepal CAシリーズ、Nonidet Pシリーズ、Nikkol OPシリーズ等)、ポリソルベート類(Tween20等のTweenシリーズなど)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルマルトシド、ショ糖脂肪酸エステル、グリコシド脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリソルベート類が好ましい。
界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、細胞懸濁液全量に対して、0.001質量%以上30質量%以下が好ましい。含有量が、0.001質量%以上であると、界面活性剤の添加による効果を得ることができ、30質量%以下であると、細胞の凝集を抑制することができるため、細胞懸濁液中の核酸のコピー数を厳密に制御することができる。
核酸としては、検出対象の核酸の検出に影響しないものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ColE1 DNAなどが挙げられる。核酸であると、標的の塩基配列を有する核酸が、ウェルの壁面などに付着することを防ぐことができる。
樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンイミドなどが挙げられる。
−−その他の材料−−
その他の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、浸透圧調整剤、湿潤剤、分散剤などが挙げられる。
[細胞を分散する方法]
細胞を分散する方法としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビーズミル等のメディア方式、超音波ホモジナイザー等の超音波方式、フレンチプレス等の圧力差を利用する方式などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞へのダメージが少ないことから超音波方式がより好ましい。メディア方式では、解砕能力が強く、細胞膜や細胞壁を破壊する可能性やメディアがコンタミとして混入することがある。
[細胞のスクリーニング方法]
細胞のスクリーニング方法としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式分級、セルソーター、フィルタによるスクリーニングなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞へのダメージが少ないことから、セルソーター、フィルタによるスクリーニングが好ましい。
細胞は、細胞の細胞周期を測定することにより、細胞懸濁液に含まれる細胞数から標的の塩基配列を有する核酸の数を推定することが好ましい。
細胞周期を測定するとは、細胞分裂による細胞数を数値化することを意味する。
核酸の数を推定するとは、細胞数から、核酸のコピー数を求めることを意味する。
計数対象が細胞数ではなく標的の塩基配列が何個入っているかであってもよい。通常は、標的の塩基配列は細胞1個につき1つの領域が入っていないものを選択する、あるいは遺伝子組み換えにより導入するため、標的の塩基配列の数は細胞数と等しいと考えてよい。ただし、細胞は特定の周期で細胞分裂を起こすために細胞内で核酸の複製が行われる。細胞周期は細胞の種類によって異なるが、細胞懸濁液から所定量の溶液を抜き取り複数細胞の周期を測定することによって、細胞1個中に含まれる標的の塩基配列数に対する期待値及びその確からしさを算出することが可能である。これは、例えば、核染色した細胞をフローサイトメーターによって観測することによって可能である。
確からしさとは、いくつかの事象の生じる可能性がある時、特定の1つの事象が起こる可能性の程度を事前に予測して、その事象の起こる確率を意味する。
算出とは、計算して求める数値を出すことを意味する。
図3は、DNA複製済みの細胞の頻度と、蛍光強度との関係の一例を示すグラフである。図3に示すように、ヒストグラム上で標的の塩基配列の複製有無により2つのピークが現れるため、DNA複製済みの細胞がどの程度の割合で存在するかを算出することが可能である。この算出結果から1細胞中に含まれる平均的な標的の塩基配列数を算出することが可能であり、前述の細胞数計数結果に乗じることにより、標的の塩基配列の推定数を算出することが可能である。
また、細胞懸濁液を作製する前に細胞周期を制御する処理を行うことが好ましく、前述のような複製が起きる前、又は後の状態に揃えることによって、標的の塩基配列の数を細胞数からより精度良く算出することが可能になる。
推定する特定コピー数は、確からしさ(確率)を算出することが好ましい。確からしさ(確率)を算出することにより、これらの数値に基づき確からしさを分散又は標準偏差として表現して出力することが可能である。複数因子の影響を合算する場合には、一般的に用いられる標準偏差の二乗和平方根を用いることが可能である。例えば、因子として吐出した細胞数の正答率、細胞内のDNA数、吐出された細胞がウェル内に着弾する着弾率などを用いることができる。これらの中で影響の大きい項目を選択して算出することもできる。
<<液滴着弾工程>>
液滴着弾工程は、細胞懸濁液を液滴として吐出することによりプレートのウェル内に液滴を順次着弾させる工程である。
液滴とは、表面張力によりまとまった液体のかたまりを意味する。
吐出とは、細胞懸濁液を液滴として飛翔させることを意味する。
順次とは、次々に順序どおりにすることを意味する。
着弾とは、液滴をウェルに到達させることを意味する。
吐出手段としては、細胞懸濁液を液滴として吐出する手段(以下、「吐出ヘッド」とも称することがある)を好適に用いることができる。
細胞懸濁液を液滴として吐出する方式としては、例えば、インクジェット法におけるオンデマンド方式、コンティニュアス方式などが挙げられる。これらの中でもコンティニュアス方式の場合、安定的な吐出状態に至るまでの空吐出、液滴量の調整、ウェル間を移動する際にも連続的に液滴形成を行い続ける等の理由から、用いる細胞懸濁液のデッドボリュームが多くなる傾向にある。本発明では細胞数を調整する観点からデッドボリュームによる影響を低減させることが好ましく、そのため上記2つの方式では、オンデマンド方式の方がより好適である。
オンデマンド方式としては、例えば、液体に圧力を加えることによって液体を吐出する圧力印加方式、加熱による膜沸騰によって液体を吐出するサーマル方式、静電引力によって液滴を引っ張ることによって液滴を形成する静電方式等の既知の複数の方式などが挙げられる。これらの中でも、以下の理由から、圧力印加方式が好ましい。
静電方式は、細胞懸濁液を保持して液滴を形成する吐出部に対向して電極を設置する必要がある。デバイスの製造方法では、液滴を受けるためのプレートが対向して配置されており、プレート構成の自由度を上げるため電極の配置は無いほうが好ましい。
サーマル方式は、局所的な加熱が発生するため生体材料である細胞への影響や、ヒーター部への焦げ付き(コゲーション)が懸念される。熱による影響は、含有物やプレートの用途に依存するため、一概に除外する必要はないが、圧力印加方式は、サーマル方式よりヒーター部への焦げ付きの懸念がないという点から好ましい。
圧力印加方式としては、ピエゾ素子を用いて液体に圧力を加える方式、電磁バルブ等のバルブによって圧力を加える方式などが挙げられる。細胞懸濁液の液滴吐出に使用可能な液滴生成デバイスの構成例を図4A〜図4Cに示す。
図4Aは、電磁バルブ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。電磁バルブ方式の吐出ヘッドは、電動機13a、電磁弁112、液室11a、細胞懸濁液300a、及びノズル111aを有する。
電磁バルブ方式の吐出ヘッドとしては、例えば、TechElan社のディスペンサなどを好適に用いることができる。
また、図4Bは、ピエゾ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。ピエゾ方式の吐出ヘッドは、圧電素子13b、液室11b、細胞懸濁液300b、及びノズル111bを有する。
ピエゾ方式の吐出ヘッドとしては、Cytena社のシングルセルプリンターなどを好適に用いることができる。
これらの吐出ヘッドのいずれも用いることが可能であるが、電磁バルブによる圧力印加方式では高速に繰り返し液滴を形成することができないため、プレートの生成のスループットを上げるためにはピエゾ方式を用いることが好ましい。また、一般的な圧電素子13bを用いたピエゾ方式の吐出ヘッドでは、沈降によって細胞濃度のムラが発生することや、ノズル詰まりが生じることがある。
このため、より好ましい構成として図4Cに示した構成などが挙げられる。図4Cは、図4Bにおける圧電素子を用いたピエゾ方式の吐出ヘッドの変形例の模式図である。図4Cの吐出ヘッドは、圧電素子13c、液室11c、細胞懸濁液300c、及びノズル111cを有する。
図4Cの吐出ヘッドでは、図示していない制御装置からの圧電素子13cに対して電圧印加することにより、紙面横方向に圧縮応力が加わりメンブレンを紙面上下方向に変形させることができる。
オンデマンド方式以外の方式としては、例えば、連続的に液滴を形成させるコンティニュアス方式などが挙げられる。コンティニュアス方式では、液滴を加圧してノズルから押し出す際に圧電素子やヒーターによって定期的なゆらぎを与え、それによって微小な液滴を連続的に作り出すことができる。更に、飛翔中の液滴の吐出方向を電圧を印加することによって制御することにより、ウェルに着弾させるか、回収部に回収するかを選ぶことも可能である。このような方式は、セルソーター、又はフローサイトメーターで用いられており、例えば、ソニー株式会社製の装置名:セルソーターSH800Zを用いることができる。
図5Aは、圧電素子に印加する電圧の一例を示す模式図である。また、図5Bは、圧電素子に印加する電圧の他の一例を示す模式図である。図5Aは、液滴を形成するための駆動電圧を示す。電圧(V、V、V)の強弱により、液滴を形成することができる。図5Bは、液滴の吐出を行わずに細胞懸濁液を撹拌するための電圧を示している。
液滴を吐出しない期間中に、液滴を吐出するほどには強くない複数のパルスを入力することによって、液質内の細胞懸濁液を撹拌することが可能であり、細胞沈降による濃度分布の発生を抑制することができる。
本発明において使用することができる吐出ヘッドの液滴形成動作に関して、以下に説明する。
吐出ヘッドは、圧電素子に形成された上下電極に、パルス状の電圧を印加することにより液滴を吐出することができる。図6A〜図6Cは、それぞれのタイミングにおける液滴の状態を示す模式図である。
図6Aは、まず、圧電素子13cに電圧を印加することにより、メンブレン12cが急激に変形することによって、液室11c内に保持された細胞懸濁液とメンブレン12cとの間に高い圧力が発生し、この圧力によってノズル部から液滴が外に押し出される。
次に、図6Bに示すように、圧力が上方に緩和するまでの時間、ノズル部からの液押し出しが続き液滴が成長する。
最後に、図6Cに示すように、メンブレン12cが元の状態に戻る際に細胞懸濁液とメンブレン12cとの界面近傍の液圧力が低下し、液滴310’が形成される。
デバイスの製造方法では、ウェルが形成されたプレートを移動可能なステージ上に固定し、ステージの駆動と吐出ヘッドとからの液滴形成を組み合わせることにより、凹部に順次液滴を着弾させる。ここで、ステージの移動としてプレートを移動させる方法を示したが、当然のことながら吐出ヘッドを移動させてもよい。
プレートとしては、特に制限はなく、バイオ分野において一般的に用いられるウェルが形成されたものを用いることが可能である。
プレートにおけるウェルの数は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単数であってもよく、複数であってもよい。
図7は、プレートのウェル内に順次液滴を着弾させるための分注装置400の一例を示す概略図である。
図7に示すように、液滴を着弾させるための分注装置400は、液滴形成装置401と、プレート700と、ステージ800と、制御装置900とを有している。
分注装置400において、プレート700は、移動可能に構成されたステージ800上に配置されている。プレート700には液滴形成装置401の吐出ヘッドから吐出された液滴310が着滴する複数のウェル710(凹部)が形成されている。制御装置900は、ステージ800を移動させ、液滴形成装置401の吐出ヘッドとそれぞれのウェル710との相対的な位置関係を制御する。これにより、液滴形成装置401の吐出ヘッドからそれぞれのウェル710中に順次、蛍光染色細胞350を含む液滴310を吐出することができる。
制御装置900は、例えば、CPU、ROM、RAM、メインメモリ等を含む構成とすることができる。この場合、制御装置900の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。ただし、制御装置900の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、制御装置900は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。
吐出する液滴としては、ウェル内に細胞懸濁液を着弾させる際に、複数の水準を得るように液滴をウェル内に着弾させることが好ましい。
複数の水準とは、標準となる複数の基準を意味する。
複数の水準としては、ウェル内に特定の核酸を有する複数の細胞が所定の濃度勾配を有することが好ましい。濃度勾配を有することにより、検量線用試薬として好適に使用することができる。複数の水準は、センサによって計数される値を用いて制御することができる。
プレートとしては、1穴マイクロチューブ、8連チューブ、96穴、384穴のウェルプレートなどを用いることが好ましいが、ウェルが複数である場合には、これらのプレートにおけるウェルには同じ個数の細胞を分注することも可能であるし、異なる水準の個数を入れることも可能である。また、細胞が含まれないウェルが存在していてもよい。特に核酸の量を定量的に評価するリアルタイムPCR装置やデジタルPCR装置の評価に用いるプレートを作成する際には、複数水準の数の核酸が分注されたものを用いることが好ましい。例えば、細胞(又は核酸)が、おおよそ1個、2個、4個、8個、16個、32個、64個の7水準で分注したプレートを作製することが考えられる。このようなプレートを用いることによって、リアルタイムPCR装置やデジタルPCR装置の定量性、線形性、評価下限値などを調べることが可能である。
<<細胞数計数工程>>
細胞数計数工程は、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数する工程である。
センサとは、自然現象や人工物の機械的・電磁気的、熱的、音響的、又は化学的性質、或いはそれらにより示される空間情報・時間情報を、何らかの科学的原理を応用して、人間や機械が扱い易い別媒体の信号に置き換える装置を意味する。
計数とは、数を数えることを意味する。
細胞数計数工程としては、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、吐出前に細胞を観測する処理、着弾後の細胞をカウントする処理を含んでもよい。
液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数の計数としては、液滴がプレートのウェルに確実に入ることが予測されるウェル開口部の直上の位置にあるタイミングにて液滴中の細胞を観測することが好ましい。
液滴中の細胞を観測する方法としては、例えば、光学的に検出する方法、電気的・磁気的に検出方法などが挙げられる。
−光学的に検出する方法−
図8、図12、及び図13を用いて、光学的に検出する方法に関して以下に述べる。
図8は、液滴形成装置401の一例を示す模式図である。図12、及び図13は、液滴形成装置401A、401Bの他の一例を示す模式図である。図8に示すように、液滴形成装置401は、吐出ヘッド(液滴吐出手段)10と、駆動手段20と、光源30と、受光素子60と、制御手段70とを有する。
図8では、細胞懸濁液として細胞を特定の色素によって蛍光染色した後に所定の溶液に分散した液を用いており、吐出ヘッドから形成した液滴に光源から発せられる特定の波長を有する光を照射し細胞から発せられる蛍光を受光素子によって検出することによって計数を行う。このとき、蛍光色素によって細胞を染色する方法に加え、細胞中に元々含まれる分子が発する自家蛍光を利用してもよいし、細胞に蛍光タンパク質(例えば、GFP(Green Fluorescent Protein))を生産するための遺伝子を予め導入しておき細胞が蛍光を発するようにしておいてもよい。
光を照射とは、光をあてることを意味する。
吐出ヘッド10は、液室11と、メンブレン12と、駆動素子13とを有しており、蛍光染色細胞350を懸濁した細胞懸濁液300を液滴として吐出することができる。
液室11は、蛍光染色細胞350を懸濁した細胞懸濁液300を保持する液体保持部であり、下面側には貫通孔であるノズル111が形成されている。液室11は、例えば、金属やシリコン、セラミック等から形成することができる。蛍光染色細胞350としては、蛍光色素によって染色された無機微粒子や有機ポリマー粒子などが挙げられる。
メンブレン12は、液室11の上端部に固定された膜状部材である。メンブレン12の平面形状は、例えば、円形とすることができるが、楕円状や四角形等としてもよい。
駆動素子13は、メンブレン12の上面側に設けられている。駆動素子13の形状は、メンブレン12の形状に合わせて設計することができる。例えば、メンブレン12の平面形状が円形である場合には、円形の駆動素子13を設けることが好ましい。
駆動素子13に駆動手段20から駆動信号を供給することにより、メンブレン12を振動させることができる。メンブレン12の振動により、蛍光染色細胞350を含有する液滴310を、ノズル111から吐出させることができる。
駆動素子13として圧電素子を用いる場合には、例えば、圧電材料の上面及び下面に電圧を印加するための電極を設けた構造とすることができる。この場合、駆動手段20から圧電素子の上下電極間に電圧を印加することによって紙面横方向に圧縮応力が加わり、メンブレン12を紙面上下方向に振動させることができる。圧電材料としては、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を用いることができる。この他にも、ビスマス鉄酸化物、ニオブ酸金属物、チタン酸バリウム、或いはこれらの材料に金属や異なる酸化物を加えたもの等、様々な圧電材料を用いることができる。
光源30は、飛翔中の液滴310に光Lを照射する。なお、飛翔中とは、液滴310が液滴吐出手段10から吐出されてから、着滴対象物に着滴するまでの状態を意味する。飛翔中の液滴310は、光Lが照射される位置では略球状となっている。又、光Lのビーム形状は略円形状である。
ここで、光Lのビーム直径は液滴310の直径に対し、10倍〜100倍程度であることが好ましい。これは、液滴310の位置ばらつきが存在する場合においても、光源30からの光Lを確実に液滴310に照射するためである。
ただし、光Lのビーム直径は液滴310の直径に対し、100倍を大きく超えることは好ましくない。これは、液滴310に照射される光のエネルギー密度が下がるため、光Lを励起光として発する蛍光Lfの光量が低下し、受光素子60で検出し難くなるからである。
光源30から発せられる光Lはパルス光であることが好ましく、例えば、固体レーザー、半導体レーザー、色素レーザー等が好適に用いられる。光Lがパルス光である場合のパルス幅は10μs以下が好ましく、1μs以下がより好ましい。単位パルス当たりのエネルギーとしては、集光の有無等、光学系に大きく依存するが、概ね0.1μJ以上が好ましく、1μJ以上がより好ましい。
受光素子60は、飛翔中の液滴310に蛍光染色細胞350が含有されていた場合に、蛍光染色細胞350が光Lを励起光として吸収して発する蛍光Lfを受光する。蛍光Lfは、蛍光染色細胞350から四方八方に発せられるため、受光素子60は蛍光Lfを受光可能な任意の位置に配置することができる。この際、コントラストを向上するため、光源30から出射される光Lが直接入射しない位置に受光素子60を配置することが好ましい。
受光素子60は、蛍光染色細胞350から発せられる蛍光Lfを受光できる素子であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液滴に特定の波長を有する光を照射して液滴内の細胞からの蛍光を受光する光学センサが好ましい。受光素子60としては、例えば、フォトダイオード、フォトセンサ等の1次元素子が挙げられるが、高感度な測定が必要な場合には、光電子増倍管やアバランシェフォトダイオードを用いることが好ましい。受光素子60として、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、ゲートCCD等の2次元素子を用いてもよい。
なお、光源30が発する光Lと比較して蛍光染色細胞350の発する蛍光Lfが弱いため、受光素子60の前段(受光面側)に光Lの波長域を減衰させるフィルタを設置してもよい。これにより、受光素子60において、非常にコントラストの高い蛍光染色細胞350の画像を得ることができる。フィルタとしては、例えば、光Lの波長を含む特定波長域を減衰させるノッチフィルタ等を用いることができる。
また、前述のように、光源30から発せられる光Lはパルス光であることが好ましいが、光源30から発せられる光Lを連続発振の光としてもよい。この場合には、連続発振の光が飛翔中の液滴310に照射されるタイミングで受光素子60が光を取り込み可能となるように制御し、受光素子60に蛍光Lfを受光させることが好ましい。
制御手段70は、駆動手段20及び光源30を制御する機能を有している。また、制御手段70は、受光素子60が受光した光量に基づく情報を入手し、液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数(ゼロである場合も含む)を計数する機能を有している。以下、図9〜図11を参照し、制御手段70の動作を含む液滴形成装置401の動作について説明する。
図9は、図8の液滴形成装置の制御手段のハードウェアブロックを例示する図である。図10は、図8の液滴形成装置の制御手段の機能ブロックを例示する図である。図11は、液滴形成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図9に示すように、制御手段70は、CPU71と、ROM72と、RAM73と、I/F74と、バスライン75とを有している。CPU71、ROM72、RAM73、及びI/F74は、バスライン75を介して相互に接続されている。
CPU71は、制御手段70の各機能を制御する。記憶手段であるROM72は、CPU71が制御手段70の各機能を制御するために実行するプログラムや、各種情報を記憶している。記憶手段であるRAM73は、CPU71のワークエリア等として使用される。また、RAM73は、所定の情報を一時的に記憶することができる。I/F74は、液滴形成装置401を他の機器等と接続するためのインターフェイスである。液滴形成装置401は、I/F74を介して、外部ネットワーク等と接続されてもよい。
図10に示すように、制御手段70は、機能ブロックとして、吐出制御手段701と、光源制御手段702と、細胞数計数手段(細胞数検知手段)703とを有している。
図10及び図11を参照しながら、液滴形成装置401の細胞数(粒子数)計数について説明する。
まず、ステップS11において、制御手段70の吐出制御手段701は、駆動手段20に吐出の指令を出す。吐出制御手段701から吐出の指令を受けた駆動手段20は、駆動素子13に駆動信号を供給してメンブレン12を振動させる。メンブレン12の振動により、蛍光染色細胞350を含有する液滴310が、ノズル111から吐出される。
次に、ステップS12において、制御手段70の光源制御手段702は、液滴310の吐出に同期して(駆動手段20から液滴吐出手段10に供給される駆動信号に同期して)光源30に点灯の指令を出す。これにより、光源30が点灯し、飛翔中の液滴310に光Lを照射する。
なお、ここで、同期するとは、液滴吐出手段10による液滴310の吐出と同時に(駆動手段20が液滴吐出手段10に駆動信号を供給するのと同時に)発光することではなく、液滴310が飛翔して所定位置に達したときに液滴310に光Lが照射されるタイミングで、光源30が発光することを意味する。つまり、光源制御手段702は、液滴吐出手段10による液滴310の吐出(駆動手段20から液滴吐出手段10に供給される駆動信号)に対して、所定時間だけ遅延して発光するように光源30を制御する。
例えば、液滴吐出手段10に駆動信号を供給した際に吐出する液滴310の速度vを予め測定しておく。そして、測定した速度vに基づいて液滴310が吐出されてから所定位置まで到達する時間tを算出し、液滴吐出手段10に駆動信号を供給するタイミングに対して、光源30が光を照射するタイミングをtだけ遅延させる。これにより、良好な発光制御が可能となり、光源30からの光を確実に液滴310に照射することができる。
次に、ステップS13において、制御手段70の細胞数計数手段703は、受光素子60からの情報に基づいて、液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数(ゼロである場合も含む)を計数する。ここで、受光素子60からの情報とは、蛍光染色細胞350の輝度値(光量)や面積値である。
細胞数計数手段703は、例えば、受光素子60が受光した光量と予め設定された閾値とを比較して、蛍光染色細胞350の個数を計数することができる。この場合には、受光素子60として1次元素子を用いても2次元素子を用いても構わない。
受光素子60として2次元素子を用いる場合は、細胞数計数手段703は、受光素子60から得られた2次元画像に基づいて、蛍光染色細胞350の輝度値或いは面積を算出するための画像処理を行う手法を用いてもよい。この場合、細胞数計数手段703は、画像処理により蛍光染色細胞350の輝度値或いは面積値を算出し、算出された輝度値或いは面積値と、予め設定された閾値とを比較することにより、蛍光染色細胞350の個数を計数することができる。
なお、蛍光染色細胞350は、細胞や染色細胞であってもよい。染色細胞とは、蛍光色素によって染色された細胞、又は、蛍光タンパク質を発現可能な細胞を意味する。
染色細胞において、蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルオレセイン類、ローダミン類、クマリン類、ピレン類、シアニン類、アゾ類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エオシン、エバンスブルー、トリパンブルー、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン123がより好ましい。
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami−Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP−m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed−Express、DsRed2、TagRFP、DsRed−Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、mPlum、PS−CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このように、液滴形成装置401では、蛍光染色細胞350を縣濁した細胞懸濁液300を保持する液滴吐出手段10に、駆動手段20から駆動信号を供給して、蛍光染色細胞350を含有する液滴310を吐出させ、飛翔中の液滴310に光源30から光Lを照射する。そして、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350が光Lを励起光として蛍光Lfを発し、蛍光Lfを受光素子60が受光する。更に、受光素子60からの情報に基づいて、細胞数計数手段703が、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数を計数(カウント)する。
つまり、液滴形成装置401では、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数を実際にその場で観察するため、蛍光染色細胞350の個数の計数精度を従来よりも向上することが可能となる。又、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350に光Lを照射して蛍光Lfを発光させて蛍光Lfを受光素子60で受光するため、高いコントラストで蛍光染色細胞350の画像を得ることが可能となり、蛍光染色細胞350の個数の誤計数の発生頻度を低減できる。
図12は、図8の液滴形成装置401の変形例を示す模式図である。図12に示すように、液滴形成装置401Aは、受光素子60の前段にミラー40を配置した点が、液滴形成装置401(図8参照)と相違する。なお、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
このように、液滴形成装置401Aでは、受光素子60の前段にミラー40を配置したことにより、受光素子60のレイアウトの自由度を向上することができる。
例えば、ノズル111と着滴対象物を近づけた際に、図8のレイアウトでは着滴対象物と液滴形成装置401の光学系(特に受光素子60)との干渉が発生するおそれがあるが、図12のレイアウトにすることで、干渉の発生を回避することができる。
図12に示すように、受光素子60のレイアウトを変更することにより、液滴310が着滴する着滴対象物とノズル111との距離(ギャップ)を縮めることが可能となり、着滴位置のばらつきを抑制することができる。その結果、分注の精度を向上することが可能となる。
図13は、図8の液滴形成装置401の他の変形例を示す模式図である。図13に示すように、液滴形成装置401Bは、蛍光染色細胞350から発せられる蛍光Lfを受光する受光素子60に加え、蛍光染色細胞350から発せられる蛍光Lfを受光する受光素子61を設けた点が、液滴形成装置401(図8参照)と相違する。なお、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
ここで、蛍光Lf及びLfは、蛍光染色細胞350から四方八方に発せられる蛍光の一部を示している。受光素子60及び61は、蛍光染色細胞350から異なる方向に発せられる蛍光を受光できる任意の位置に配置することができる。なお、蛍光染色細胞350から異なる方向に発せられる蛍光を受光できる位置に3つ以上の受光素子を配置してもよい。又、各受光素子は同一仕様としてもよいし、異なる仕様としてもよい。
受光素子が1つであると、飛翔する液滴310に複数個の蛍光染色細胞350が含まれる場合に、蛍光染色細胞350同士が重なることに起因して、細胞数計数手段703が液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数を誤計数する(カウントエラーが発生する)おそれがある。
図14A及び図14Bは、飛翔する液滴に2個の蛍光染色細胞が含まれる場合を例示する図である。例えば、図14Aに示すように、蛍光染色細胞350と350とに重なりが発生する場合や、図14Bに示すように、蛍光染色細胞350と350とに重なりが発生しない場合があり得る。受光素子を2つ以上設けることで、蛍光染色細胞が重なる影響を低減することが可能である。
前述のように、細胞数計数手段703は、画像処理により蛍光粒子の輝度値或いは面積値を算出し、算出された輝度値或いは面積値と、予め設定された閾値とを比較することにより、蛍光粒子の個数を計数することができる。
受光素子を2つ以上設置する場合,それぞれの受光素子から得られる輝度値或いは面積値のうち、最大値を示すデータを採択することで、カウントエラーの発生を抑制することが可能である。これに関して、図15を参照して、より詳しく説明する。
図15は、粒子同士の重なりが生じない場合の輝度値Liと、実測される輝度値Leとの関係を例示する図である。図15に示すように、液滴内の粒子同士の重なりがない場合には、Le=Liとなる。例えば、細胞1個の輝度値をLuとすると、細胞数/滴=1個の場合はLe=Luであり、粒子数/滴=n個の場合はLe=nLuである(n:自然数)。
しかし、実際には、nが2以上の場合には粒子同士の重なりが発生し得るため、実測される輝度値はLu≦Le≦nLu(図15の網掛部分)となる。そこで、細胞数/滴=n個の場合、例えば閾値を(nLu−Lu/2)≦閾値<(nLu+Lu/2)と設定することができる。そして、複数の受光素子を設置する場合、それぞれの受光素子から得られたデータのうち最大値を示すものを採択することで、カウントエラーの発生を抑制することが可能となる。なお、輝度値に代えて面積値を用いてもよい。
また、受光素子を複数設置する場合、得られる複数の形状データを基に、細胞数を推定するアルゴリズムにより粒子数を決定づけてもよい。
このように、液滴形成装置401Bでは、蛍光染色細胞350が異なる方向に発した蛍光を受光する複数の受光素子を有しているため、蛍光染色細胞350の個数の誤計数の発生頻度を更に低減できる。
図16は、図8の液滴形成装置401の他の変形例を示す模式図である。図16に示すように、液滴形成装置401Cは、液滴吐出手段10が液滴吐出手段10Cに置換された点が、液滴形成装置401(図8参照)と相違する。なお、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
液滴吐出手段10Cは、液室11Cと、メンブレン12Cと、駆動素子13Cとを有している。液室11Cは、液室11C内を大気に開放する大気開放部115を上部に有しており、細胞懸濁液300中に混入した気泡を大気開放部115から排出可能に構成されている。
メンブレン12Cは、液室11Cの下端部に固定された膜状部材である。メンブレン12Cの略中心には貫通孔であるノズル121が形成されており、液室11Cに保持された細胞懸濁液300はメンブレン12Cの振動によりノズル121から液滴310として吐出される。メンブレン12Cの振動の慣性により液滴310を形成するため、高表面張力(高粘度)の細胞懸濁液300でも吐出が可能である。メンブレン12Cの平面形状は、例えば、円形とすることができるが、楕円状や四角形等としてもよい。
メンブレン12Cの材質としては特に限定はないが、柔らか過ぎるとメンブレン12Cが簡単に振動し、吐出しないときに直ちに振動を抑えることが困難であるため、ある程度の硬さがある材質を用いることが好ましい。メンブレン12Cの材質としては、例えば、金属材料やセラミック材料、ある程度硬さのある高分子材料等を用いることができる。
特に、蛍光染色細胞350として細胞を用いる際には、細胞やタンパク質に対する付着性の低い材料であることが好ましい。細胞の付着性は一般的に材質の水との接触角に依存性があると言われており、材質の親水性が高い又は疎水性が高いときには細胞の付着性が低い。親水性の高い材料としては各種金属材料やセラミック(金属酸化物)を用いることが可能であり、疎水性が高い材料としてはフッ素樹脂等を用いることが可能である。
このような材料の他の例としては、ステンレス鋼やニッケル、アルミニウム等や、二酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニア等を挙げることができる。これ以外にも、材料表面をコーティングすることで細胞接着性を低下させることも考えられる。例えば、材料表面を前述の金属又は金属酸化物材料でコーティングすることや、細胞膜を模した合成リン脂質ポリマー(例えば、日油株式会社製、Lipidure)によってコーティングすることが可能である。
ノズル121は、メンブレン12Cの略中心に実質的に真円状の貫通孔として形成されていることが好ましい。この場合、ノズル121の径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、蛍光染色細胞350がノズル121に詰まることを避けるため、蛍光染色細胞350の大きさの2倍以上とすることが好ましい。蛍光染色細胞350が、例えば、動物細胞、特にヒトの細胞である場合、ヒトの細胞の大きさは一般的に5μm〜50μm程度であるため、ノズル121の径を、使用する細胞に合わせて10μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。
一方で、液滴が大きくなり過ぎると微小液滴を形成するという目的の達成が困難となるため、ノズル121の径は200μm以下であることが好ましい。つまり、液滴吐出手段10Cにおいては、ノズル121の径は、10μm〜200μmの範囲がより好ましい。
駆動素子13Cは、メンブレン12Cの下面側に形成されている。駆動素子13Cの形状は、メンブレン12Cの形状に合わせて設計することができる。例えば、メンブレン12Cの平面形状が円形である場合には、ノズル121の周囲に平面形状が円環状(リング状)の駆動素子13Cを形成することが好ましい。駆動素子13Cの駆動方式は、駆動素子13と同様とすることができる。
駆動手段20は、メンブレン12Cを振動させて液滴310を形成する吐出波形と、液滴310を形成しない範囲でメンブレン12Cを振動させる撹拌波形とを駆動素子13Cに選択的に(例えば、交互に)付与することができる。
例えば、吐出波形及び撹拌波形を何れも矩形波とし、吐出波形の駆動電圧よりも撹拌波形の駆動電圧を低くすることで、撹拌波形の印加により液滴310が形成されないようにすることができる。つまり、駆動電圧の高低により、メンブレン12Cの振動状態(振動の程度)を制御することができる。
液滴吐出手段10Cでは、駆動素子13Cがメンブレン12Cの下面側に形成されているため、駆動素子13Cによりメンブレン12が振動すると、液室11Cの下部方向から上部方向への流れを生じさせることが可能である。
この時、蛍光染色細胞350の動きは下から上への運動となり、液室11C内で対流が発生して蛍光染色細胞350を含有する細胞懸濁液300の撹拌が起きる。液室11Cの下部方向から上部方向への流れにより、沈降、凝集した蛍光染色細胞350が液室11Cの内部に均一に分散する。
つまり、駆動手段20は、吐出波形を駆動素子13Cに加え、メンブレン12Cの振動状態を制御することにより、液室11Cに保持された細胞懸濁液300をノズル121から液滴310として吐出させることができる。又、駆動手段20は、撹拌波形を駆動素子13Cに加え、メンブレン12Cの振動状態を制御することにより、液室11Cに保持された細胞懸濁液300を撹拌することができる。なお、撹拌時には、ノズル121から液滴310は吐出されない。
このように、液滴310を形成していない間に細胞懸濁液300を撹拌することにより、蛍光染色細胞350がメンブレン12C上に沈降、凝集することを防ぐと共に、蛍光染色細胞350を細胞懸濁液300中にムラなく分散させることができる。これにより、ノズル121の詰まり、及び吐出する液滴310中の蛍光染色細胞350の個数のばらつきを抑えることが可能となる。その結果、蛍光染色細胞350を含有する細胞懸濁液300を、長時間連続して安定的に液滴310として吐出することができる。
また、液滴形成装置401Cにおいて、液室11C内の細胞懸濁液300中に気泡が混入する場合がある。この場合でも、液滴形成装置401Cでは、液室11Cの上部に大気開放部115が設けられているため、細胞懸濁液300中に混入した気泡を、大気開放部115を通じて外気に排出できる。これによって、気泡排出のために大量の液を捨てることなく、連続して安定的に液滴310を形成することが可能となる。
即ち、ノズル121の近傍に気泡が混入した場合や、メンブレン12C上に多数の気泡が混入した場合には吐出状態に影響を及ぼすため、長い時間安定的に液滴の形成を行うためには、混入した気泡を排出する必要がある。通常、メンブレン12C上に混入した気泡は、自然に若しくはメンブレン12Cの振動によって上方に移動するが、液室11Cには大気開放部115が設けられているため、混入した気泡を大気開放部115から排出可能となる。そのため、液室11Cに気泡が混入しても不吐出が発生することを防止可能となり、連続して安定的に液滴310を形成することができる。
なお、液滴を形成しないタイミングで、液滴を形成しない範囲でメンブレン12Cを振動させ、積極的に気泡を液室11Cの上方に移動させてもよい。
−電気的又は磁気的な検出する方法−
電気的又は磁気的な検出する方法としては、図17に示すように、液室11’から細胞懸濁液を液滴310’としてプレート700’に吐出する吐出ヘッドの直下に、細胞計数のためのコイル200がセンサとして設置されている。細胞は特定のタンパク質によって修飾され細胞に接着することが可能な磁気ビーズによって覆うことにより、磁気ビーズが付着した細胞がコイル中を通過する際に発生する誘導電流によって、飛翔液滴中の細胞の有無を検出することが可能である。一般的に、細胞はその表面に細胞特有のタンパク質を有しており、このタンパク質に接着することが可能な抗体を磁気ビーズに修飾することによって、細胞に磁気ビーズを付着させることが可能である。このような磁気ビーズとしては既製品を用いることが可能であり、例えば、株式会社ベリタス製のDynabeads(登録商標)が利用可能である。
[吐出前に細胞を観測する処理]
吐出前に細胞を観測する処理としては、図18に示すマイクロ流路250中を通過してきた細胞350’をカウントする方法や、図19に示す吐出ヘッドのノズル部近傍の画像を取得する方法などが挙げられる。図18はセルソーター装置において用いられている方法であり、例えば、ソニー株式会社製のセルソーターSH800を用いることができる。図18では、マイクロ流路250中に光源260からレーザー光を照射して散乱光や蛍光を、集光レンズ265を用いて検出器255により検出することによって細胞の有無や、細胞の種類を識別しながら液滴を形成することが可能である。本方法を用いることによって、マイクロ流路250中に通過した細胞の数から所定のウェル中に着弾した細胞の数を推測することが可能である。
また、図19に示す吐出ヘッド10’としては、Cytena社製のシングルセルプリンターを用いることが可能である。図19では、吐出前において、ノズル部近傍をレンズ265’を介して、画像取得部255’において画像取得した結果からノズル部近傍の細胞350”が吐出されたと推定することや、吐出前後の画像から差分により吐出されたと考えられる細胞の数を推定することによって、所定のウェル中に着弾した細胞の数を推測することができる。図18に示すマイクロ流路中を通過してきた細胞をカウントする方法では、液滴が連続的に生成されるのに対して、図19は、オンデマンドで液滴形成が可能であるため、より好ましい。
[着弾後の細胞をカウントする処理]
着弾後の細胞をカウントする処理としては、プレートにおけるウェルを蛍光顕微鏡などにより観測することにより、蛍光染色した細胞を検出する方法を取ることが可能である。この方法は、例えば、Sangjun et al.,PLoS One,Volume 6(3),e17455などに記載されている。
液滴の吐出前及び着弾後に、細胞を観測する方法では、以下に述べる課題があるが、生成するプレートの種類によっては吐出中の液滴内の細胞を観測することがもっとも好ましい。吐出前に細胞を観測する手法においては、流路中を通過した細胞数や吐出前(及び吐出後)の画像観測から、着弾したと思われる細胞数を計数するため、実際にその細胞が吐出されたのかどうかの確認は行われておらず、思いがけないエラーが発生することがある。例えば、ノズル部が汚れていることにより液滴が正しく吐出せず、ノズルプレートに付着し、それに伴い液滴中の細胞も着弾しない、といったケースが発生する。他にも、ノズル部の狭い領域に細胞が残留することや、細胞が吐出動作によって想定以上に移動し観測範囲外に出てしまうといった課題の発生も起こりうる。
また、着弾後のプレート上の細胞を検出する手法においても課題がある。まず、プレートとして顕微鏡観察が可能であるものを準備する必要がある。観測可能なプレートとして、一般的に底面が透明かつ平坦なプレート、特に底面がガラス製となっているプレートが用いられるが、特殊なプレートとなってしまうため、一般的なウェルを使用することができなくなる課題がある。また、細胞数が数十個など多いときには、細胞の重なりが発生するため正確な計数ができなくなる課題もある。そのため、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサ及び粒子数(細胞数)計数手段によって計数することに加えて、吐出前に細胞を観測する処理、着弾後の細胞をカウントする処理を行うことが好ましい。
また、受光素子としては1又は少数の受光部を有する受光素子、例えば、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管を用いることが可能であるし、その他に2次元アレイ状に受光素子が設けられたCCD(Charge Copuled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、ゲートCCDなど二次元センサを用いることも可能である。
1又は少数の受光部を有する受光素子を用いる際には、蛍光強度から細胞が何個入っているかを予め用意された検量線を用いて決定することも考えられるが、主として飛翔液滴中の細胞有無を二値的に検出することが行われる。細胞懸濁液の細胞濃度が十分に低く、液滴中に細胞が1個又は0個しかほぼ入らない状態で吐出を行う際には、二値的な検出で十分精度よく計数を行うことが可能である。細胞懸濁液中で細胞はランダムに配置していることを前提とすれば、飛翔液滴中の細胞数はポアソン分布に従うと考えられ、液滴中に細胞数が2個以上入る確率P(>2)は下記式(1)で表される。図20は、確率P(>2)と平均細胞数の関係を表すグラフである。ここで、λは液滴中の平均細胞数であり、細胞懸濁液中の細胞濃度に吐出液滴の体積を乗じたものになる。
P(>2)=1−(1+λ)×e−λ ・・・ 式(1)
二値的な検出で細胞計数を行う場合には、確率P(>2)が十分小さい値であることが精度を確保する上では好ましく、確率P(>2)が1%以下となるλ<0.15であることが好ましい。光源としては、細胞の蛍光を励起できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水銀ランプやハロゲンランプなどの一般的なランプに特定の波長を照射するようにフィルタをかけたものや、LED(Light Emitting Diode)、レーザーなどを用いることが可能である。ただし、特に1nL以下の微小な液滴を形成するときには、狭い領域に高い光強度を照射する必要があるため、レーザーを用いるのが好ましい。レーザー光源としては、固体レーザーやガスレーザー、半導体レーザーなど一般的に知られている多種のレーザーを用いることが可能である。また、励起光源としては、液滴が通過する領域を連続的に照射したものであってもよいし、液滴の吐出に同期して液滴吐出動作に対して所定時間遅延を付けたタイミングでパルス的に照射するものであってもよい。
<<細胞懸濁液生成工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程における推定する核酸の数の確からしさを算出する工程>>
細胞懸濁液生成工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程における推定する核酸の数の確からしさを算出する工程は、細胞懸濁液生成工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程それぞれの工程における確からしさを算出する工程である。
当該推定する核酸の数の確からしさの算出は、細胞懸濁液生成工程における確からしさと同様に算出することができる。
なお、確からしさの算出タイミングは、細胞数計数工程の次工程で、纏めて算出してもよいし、細胞懸濁液生成工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程の各工程の最後に算出し、細胞数計数工程の次工程で各不確かさを合成して算出してもよい。言い換えれば、上記各工程での確からしさは、合成算出までに適宜算出しておけばよい。
<<出力工程>>
出力工程は、ウェル内に着弾した細胞懸濁液に含まれる細胞数を、センサにより測定された検出結果に基づいて細胞数計数手段にて計数された値を出力する工程である。
計数された値とは、センサにより測定された検出結果から、細胞数計数手段にて当該ウェルに含まれる細胞数を意味する。
出力とは、原動機、通信機、計算機などの装置が入力を受けて計数された値を外部の計数結果記憶手段としてのサーバに電子情報として送信することや、計数された値を印刷物として印刷することを意味する。
出力工程は、プレートの生成時に、プレートにおける各ウェルの細胞数又は核酸数を観察又は推測し、観測値又は推測値、外部の記憶部に出力する。
出力は、細胞数計数工程と同時に行ってもよく、細胞数計数工程の後に行ってもよい。
<<記録工程>>
記録工程は、出力工程において、出力された観測値又は推測値を記録する工程である。
記録工程は、記録部において好適に実施することができる。
記録は、出力工程と同時に行ってもよく、出力工程の後に行ってもよい。
記録は、記録媒体に情報を付与することだけでなく、記録部に情報を保存することも含む。
<<核酸抽出工程>>
核酸抽出工程は、ウェル内の細胞から核酸を抽出する工程である。
抽出とは、細胞膜や細胞壁などを破壊し、核酸をぬき出すことを意味する。
細胞から核酸を抽出する方法としては、90℃〜100℃で熱処置する方法が知られている。90℃以下で熱処理するとDNAが抽出されない可能性があり、100℃以上で熱処理するとDNAが分解される可能性がある。このとき界面活性剤を添加し熱処理することが好ましい。
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、添加量にもよるが、タンパク質を変性・失活させない点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。
イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、脂肪酸ナトリウムが好ましく、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)がより好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルグリコシド、アルキルポリオキシエチレンエーテル(Brijシリーズ等)、オクチルフェノールエトキシレート(Totiton Xシリーズ、Igepal CAシリーズ、Nonidet Pシリーズ、Nikkol OPシリーズ等)、ポリソルベート類(Tween20等のTweenシリーズなど)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルマルトシド、ショ糖脂肪酸エステル、グリコシド脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリソルベート類が好ましい。
界面活性剤の含有量としては、ウェル中の細胞懸濁液全量に対して、0.01質量%以上5.00質量%以下が好ましい。含有量が、0.01質量%以上であると、DNA抽出に対して効果を発揮でき、5.00質量%以下であると、PCRの際に増幅の阻害を防止することができるため、両方の効果を得られる数値範囲として上記0.01質量%以上5.00質量%以下が好適である。
細胞壁を保有している細胞に関しては、上記の方法で十分にDNA抽出されないことがある。その場合、例えば、浸透圧ショック法、凍結融解法、酵素消化法、DNA抽出用キットの使用、超音波処理法、フレンチプレス法、ホモジナイザーなどの方式などが挙げられる。これらの中でも、抽出DNAのロスが少ないことから、酵素消化法が好ましい。
<<その他の工程>>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酵素失活工程、増幅可能な試薬の特定コピー数以外の組成を変更する工程などが挙げられる。
−酵素失活工程−
酵素失活工程は、酵素を失活させる工程である。
酵素としては、例えば、DNase、RNase、核酸抽出工程において核酸を抽出するために使用した酵素などが挙げられる。
酵素を失活させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の方法を好適に用いることができる。
<<増幅可能な試薬の特定コピー数以外の組成を変更する工程>>
増幅可能な試薬の特定コピー数以外の組成を変更する工程としては、例えば、増幅可能な試薬としての核酸以外のプライマー及び増幅試薬が入っているか否かの組合せを設けることができることを意味する。具体的には、あるウェルには(1)核酸、プライマー、及び増幅試薬の組成、他のウェルには(2)核酸及びプライマーの組成、更に他のウェルには(3)核酸のみの組成とする。(2)及び(3)の組成には、試薬組成物を調製する調製者が手技によりプライマー及び増幅試薬を加え、試薬組成物を調製し、PCR反応を行う。
増幅可能な試薬の特定コピー数以外の組成を変更する工程としては、手技ではなく機械で分注するにより行うことで、プライマー及び増幅試薬を正確に分注することができる。
これにより、デバイスは、例えば、試薬組成物を調製する調製者の技能を評価することができる。
本発明のデバイスは、バイオ関連産業、ライフサイエンス産業、及び医療産業等において幅広く使用され、例えば、装置構成や検量線作成、検査装置の精度管理などに好適に用いることができる。
デバイスとしては、感染症に対して実施する場合は公定法や通知法などに定められている方法に適用することができる。
(調製者の技能評価方法、調製者の技能評価装置、及び調製者の技能評価プログラム)
本発明の調製者の技能評価方法は、試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価方法であって、
本発明のデバイスを用い、デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得工程と、
取得したCt値の情報に基づき調製者の技能を評価する技能評価工程と、を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の調製者の技能評価装置は、試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価装置であって、
本発明のデバイスを用い、デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得部と、
取得したCt値の情報に基づき調製者の技能を評価する技能評価部と、を有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
本発明の調製者の技能評価プログラムは、試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価プログラムであって、
本発明のデバイスを用い、デバイスにおけるCt値の情報を取得し、
取得したCt値の情報に基づき調製者の技能を評価する処理をコンピュータに実行させる。
本発明の調製者の技能評価装置における制御部等が行う制御は、本発明の調製者の技能評価方法を実施することと同義であるので、本発明の調製者の技能評価装置の説明を通じて本発明の調製者の技能評価方法の詳細についても明らかにする。また、本発明の調製者の技能評価プログラムは、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、本発明の調製者の技能評価装置として実現させることから、本発明の調製者の技能評価装置の説明を通じて本発明の調製者の技能評価プログラムの詳細についても明らかにする。
<Ct値情報取得工程及びCt値情報取得部>
Ct値情報取得工程は、本発明のデバイスを用い、デバイスにおけるCt値の情報を取得する工程であり、Ct値情報取得部により実施される。
Ct値は、反応の蛍光シグナルがThreshold Lineと交差する時点のサイクル数である。Ct値はターゲットの初期量に比例するため、DNAの初期コピー数を算出することができる。
Threshold Lineは、算出したベースラインシグナルに対して、統計学的に有意な増加が見られるシグナルレベルであり、リアルタイムPCR反応の閾値を意味する。
ベースラインとは、蛍光シグナルにほとんど変動がない、PCRの初期サイクルにおけるシグナルレベルを意味する。
Ct値の情報としては、例えば、Ct値、平均Ct、標準偏差、CV値[標準偏差/平均Ct)×100]、[(Ct(Max)−Ct(min))/2平均Ct]×100などが挙げられる。
<技能評価工程及び技能評価部>
技能評価工程は、Ct値の情報に基づき調製者の技能を評価する工程であり、技能評価部により実施される。
調製者の技能としては、例えば、調製者がデバイス中の核酸以外の組成について手技により試薬組成物を調製する技能などが挙げられる。
本発明のデバイスを用いて、調製した試薬組成物についてPCR反応を行い、得られるCt値の情報を比較することにより、調製者の技能を評価することができる。
なお、調製者の技能評価を行う際には、調製者のサンプルは比較する標準試料と同一のデバイス上に調製してもよいし、異なるデバイス上に調製してもよい。比較する標準試料と同一のデバイス上に調製者のサンプルを調製して調製者の技能評価を行う方法としては、例えば、自動分注機又は技術認定者によって試薬の調製を行ったウェルと、評価される調製者によって試薬の調製を行ったウェルとを同一のデバイス上の異なるウェル内に調製し、各ウェルにおけるPCR反応から得られるCt値を比較することにより、調製者の技能を評価することができる。また、比較する標準試料と異なるデバイスに調製者のサンプルを調製して調製者の技能評価を行う方法としては、例えば、第一のデバイスは自動分注機又は技術認定者が試薬の調製を行い、第二のデバイスに評価される調製者が試薬の調製を行い、調製した第一及び第二のデバイス用いたPCR反応から得られるCt値を比較することにより、評価される調製者の技能を評価することができる。
<その他の工程及びその他の部>
前記その他の工程及びその他の部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表示工程及び表示部などが挙げられる。
本発明の調製者の技能評価プログラムによる処理は、調製者の技能評価装置を構成する制御部を有するコンピュータを用いて実行することができる。
以下、調製者の技能評価装置のハードウェア構成、及び機能構成について説明する。
<調製者の技能評価装置のハードウェア構成>
図21は、調製者の技能評価装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図21で示すように、調製者の技能評価装置100は、CPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置102、補助記憶装置103、出力装置104、入力装置105、通信インターフェイス(通信I/F)106の各部を有する。これらの各部は、バス107を介してそれぞれ接続されている。
CPU101は、種々の制御や演算を行う処理装置である。CPU101は、主記憶装置102などが記憶するOS(Operating System)やプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。即ち、CPU101は、本実施例では、調製者の技能評価プログラムを実行することにより、調製者の技能評価装置100の制御部130として機能する。
また、CPU101は、調製者の技能評価装置100全体の動作を制御する。なお、本実施例では、調製者の技能評価装置100全体の動作を制御する装置をCPU101としたが、これに限ることなく、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)などとしてもよい。
調製者の技能評価プログラムや各種データベースは、必ずしも主記憶装置102や、補助記憶装置103などに記憶されていなくともよい。インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などを介して、調製者の技能評価装置100に接続される他の情報処理装置などに調製者の技能評価プログラムや各種データベースを記憶させてもよい。調製者の技能評価装置100がこれら他の情報処理装置から調製者の技能評価プログラムや各種データベースを取得して実行するようにしてもよい。
主記憶装置102は、各種プログラムを記憶し、各種プログラムを実行するために必要なデータ等を記憶する。
主記憶装置102は、図示しない、ROM(Reed Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、を有する。
ROMは、BIOS(Basic Input/Output System)等の各種プログラムなどを記憶している。
RAMは、ROMに記憶された各種プログラムがCPU101により実行される際に展開される作業範囲として機能する。RAMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。RAMとしては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが挙げられる。
補助記憶装置103としては、各種情報を記憶できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブなどが挙げられる。また、補助記憶装置103は、例えば、CD(Compact Disc)ドライブ、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ、BD(Blu−ray(登録商標) Disc)ドライブなどの可搬記憶装置としてもよい。
出力装置104は、ディスプレイやスピーカーなどを用いることができる。ディスプレイとしては、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイが挙げられる。
入力装置105は、調製者の技能評価装置100に対する各種要求を受け付けることができれば、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどが挙げられる。
通信インターフェイス(通信I/F)106は、特に制限はなく、適宜公知のものを用いることができ、例えば、無線又は有線を用いた通信デバイスなどが挙げられる。
以上のようなハードウェア構成によって、調製者の技能評価装置100の処理機能を実現することができる。
<調製者の技能評価装置の機能構成>
図22は、調製者の技能評価装置100の機能構成の一例を示す図である。
この図22に示すように、調製者の技能評価装置100は、入力部110、出力部120、制御部130、記憶部140を有する。
制御部130は、Ct値情報取得部131と、技能評価部132とを有する。制御部130は、調製者の技能評価装置100全体を制御する。
記憶部140は、Ct値情報データベース141、技能評価結果データベース142を有する。以下、「データベース」を「DB」と称することもある。
Ct値情報取得部131は、記憶部140のCt値情報DB141で記憶されているCt値の情報のデータを用い、Ct値の情報を取得する。Ct値情報DB141には、例えば、上述したように予め実験により得られたCt値のデータが記憶されている。なお、デバイスに紐付けられているCt値の情報が、Ct値情報DB141に記憶されていてもよい。DBへの入力は、調製者の技能評価装置100に接続される他の情報処理装置から行っても、作業者が行っても構わない。
技能評価部132は、Ct値の情報に基づき、調製者の技能を評価する。なお、調製者の技能を評価する具体的な手法は、例えば、得られたCt値から標準偏差を算出し、算出した標準偏差に基づき評価する方法などが挙げられる。
技能評価部132において求められた調製者の技能評価結果は、記憶部140の技能評価結果DB142へ記憶される。
次に、本発明の調製者の技能評価プログラムの処理手順を示す。図23は、調製者の技能評価装置100の制御部130における調製者の技能評価プログラムの処理手順を示すフローチャートである。
ステップS110では、調製者の技能評価装置100の制御部130のCt値情報取得部131は、記憶部140のCt値情報DB141に記憶されたCt値の情報データを取得し、処理をS111に移行する。
ステップS111では、調製者の技能評価装置100の制御部130の技能評価部132は、取得したCt値情報に基づき調製者の技能を評価し、処理をS112に移行する。
ステップS112では、調製者の技能評価装置100の制御部130は、得られた調製者の技能評価結果を記憶部140の技能評価結果DB142へ保存し、本処理を終了する。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
<デバイスの作製>
以下のようにして、デバイスを作製した。
−遺伝子組換え酵母−
出芽酵母YIL015W BY4741(ATCC社製、ATCC4001408)を1コピーの特定核酸配列のキャリア細胞として組換え体の作製に使用した。特定核酸配列は濃厚核酸試料 DNA600−G(国立研究開発法人産業技術総合研究所製、NMIJ CRM 6205−a、配列番号1参照)とし、選択マーカーとしたURA3とがタンデムに並ぶように作出したプラスミドとして、キャリア細胞のBAR1領域を対象に相同組換えによって1コピーの特定核酸配列を酵母ゲノムDNAに導入し、遺伝子組換え酵母を作製した。
−培養及び細胞周期制御−
50g/LのYPD培地(タカラバイオ株式会社製、CLN−630409)で培養した遺伝子組換え酵母を90mL分取した三角フラスコに、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、14190−144、以下、「DPBS」と称する)を用いて500μg/mLとなるように調製したα1−Mating Factor acetate salt(Sigma−Aldrich社製、T6901−5MG、以下、「αファクター」という)を900μL添加した。
次に、バイオシェイカー(タイテック株式会社製、BR−23FH)を用いて、振盪速度:250rpm、温度:28℃にて2時間インキュベートし、酵母をG0/G1期に同調して酵母懸濁液を得た。同調細胞の細胞周期の確認は、SYTOX Green Nucleic Acid Stain(装置名:S7020、Thermofisher社製)を用いて染色し、フローサイトメーター(装置名:SH800、ソニー株式会社製)を用いたフローサイトメトリーにて、励起波長488nmで、G0/G1期に同調していることを確認した。G1期の割合は99.5%、G2期の割合は0.5%であった。
−固定化−
同調確認済み酵母懸濁液を遠心管(アズワン株式会社製、VIO−50R)に45mL移し、遠心分離機(株式会社日立製作所製、F16RN)を用いて、回転速度:3000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去して酵母ペレットを得た。得られた酵母ペレットにホルマリン(和光純薬工業株式会社製、062−01661)を4mL添加し、5分間静置後、遠心して上澄み液を除去し、エタノールを10mL添加して懸濁させることにより固定化済みの酵母懸濁液を得た。
−染色−
固定化済み酵母懸濁液を1.5mL遮光チューブ(ワトソン株式会社製、131−915BR)に500μL移し、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去し、1mM EDTA(TOCRIS社製、200−449−4)となるように調製したDPBS(1mM EDTA)を400μL添加し、ピペッティングでよく懸濁した後、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmで5分間遠心し、上澄み液を除去することにより酵母ペレットを得た。得られたペレットに1mg/mLに調製したエバンスブルー水溶液(和光純薬工業株式会社製、054−04061)を1mL添加し、ボルテックスを用いて5分間撹拌後、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmで5分間遠心し、上澄み液を除去し、DPBS(1mM EDTA)を添加し、ボルテックスで撹拌することにより、染色済み酵母懸濁液を得た。
−分散−
染色済みの酵母懸濁液を超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150)を用いて、出力:30%、10秒間分散処理し、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去し、DPBSを1mL添加して洗浄した。遠心分離、上澄み液の除去を計2回実施し、再度DPBS 1mLに懸濁して酵母懸濁インクを得た。
−分注及び細胞計測−
以下のようにして、液滴中の酵母菌の数を計数(カウント)して、各ウェルに10細胞ずつ吐出して細胞数が既知のプレートを作製した。具体的には、図13に示す液滴形成装置を用いて、96プレート(商品名:MicroAmp 96−well Reaction plate、Thermofisher社製)の各ウェルに、液滴吐出手段として圧電印加方式の吐出ヘッド(社内製)を用いて10Hzにて酵母懸濁インクを順次吐出した。
吐出された液滴中の酵母の受光手段としては、高感度カメラ(東京インスツルメンツ株式会社製、sCMOS pco.edge)を用いて撮影した。光源としてはYAGレーザー(スペクトラ・フィジックス社製、Explorer ONE−532−200−KE)を用い、撮影した画像の粒子計数手段として画像処理ソフトウェアであるImage Jを用いて画像処理して細胞数を計数し、1細胞数の既知プレートを作製した。
−核酸抽出−
Tris−EDTA(TE) Bufferを用いてColE1 DNA(和光純薬工業株式会社製、312−00434)を5ng/μLとなるようにColE1/TEを調製し、ColE1/TEを用いてZymolyase(R) 100T(ナカライテスク株式会社製、07665−55)を1mg/mLとなるようにZymolyase溶液を調製した。
作製した細胞数既知プレートの各ウェルにZymolyase溶液を4μL添加し、372℃にて30分間インキュベートすることにより、細胞壁溶解(核酸抽出)後、95℃で2分間熱処理して、プレートを作製した。
次に、細胞数既知プレートから得られる結果の信頼性を考慮するために、特定コピー数の細胞をウェルに分注した細胞数既知プレートを製造し、1細胞数における不確かさを算出する。なお、所定数毎に以下に示す方法を用いることにより、様々なコピー数における不確かさを算出することができる。
−不確かさの算出−
本実施例では、不確かさの要因として、液滴中の細胞数、細胞中の増幅可能な試薬のコピー数、ウェル内の細胞数、コンタミネーションを用いた。
液滴中の細胞数は、吐出手段より吐出された液滴の画像を解析し計数した液滴中の細胞数と、吐出手段で吐出した液滴をスライドガラスに着弾させ着弾した液滴毎に顕微鏡観察し得られた細胞数とを用いた。
細胞中の核酸コピー数(細胞周期)は、細胞周期のG1期に該当する細胞の割合(99.5%)、G2期に該当する細胞の割合(0.5%)とを用いて算出した。
ウェル内の細胞数は、吐出した液滴がウェル内に着弾する数を計数したが、96サンプルの計数においてすべての液滴がウェル内に着弾していたため、ウェル内の細胞数の要因は不確かさの計算から除外した。
コンタミネーションは、インクのろ液4μLをリアルタイムPCRで細胞中の増幅可能な試薬以外の核酸がインク液中に混入していないか3回の試行を行い確認した。その結果、3回すべてにおいて検出下限値となったため、コンタミネーションの要因についても不確かさの掲載から除外した。
不確かさは各要因の測定値から標準偏差を求め、感度係数を乗じて測定量の単位に統一した標準不確かさを平方和法により合成標準不確かさを求める。合成標準不確かさでは、正規分布の約68%の範囲の値しか含まれないため、合成標準不確かさを2倍した拡張不確かさとすることにより正規分布の約95%の範囲を考慮した不確かさを得ることができる。下記表2のバジェットシートに結果を示す。
表2中、「記号」とは、不確かさの要因に対応付けた任意の記号を意味する。
表2中、「値(±)」とは、平均値の実験標準偏差であり、算出した実験標準偏差をデータの数の平方根の値で除したものである。
表2中、「確率分布」とは、不確かさの要因がもつ確率分布であり、Aタイプの不確かさ評価の場合には空欄とし、Bタイプの不確かさ評価には、正規分布又は矩形分布のいずれかを記入する。本実施例においてはAタイプの不確かさ評価のみを行っているため、確率分布の欄は空欄となっている。
表2中、「除数」とは、それぞれ要因から得られる不確かさを正規化する数を意味する。
表2中、「標準不確かさ」とは「値(±)」を「除数」で除した値である。
表2中、「感度係数」とは、測定量の単位に統一するために用いられる値を意味する。
次に、ウェルに充填した核酸試料の平均特定コピー数及び不確かさを算出した。結果を表3に示す。変動係数CV値は不確かさの値を平均特定コピー数で除することにより算出した。
インクジェット方式において、特定コピー数が1、即ち、1コピーの核酸試料(1つの酵母)をウェルに分注する精度は、±0.1281コピーであることが得られた。ウェルに1コピー以上を充填する場合には、特定コピー数の核酸試料が充填される精度は、この精度の積み重ねにより決定される
本発明においては、上述のインクジェット方式以外にも、以下に示すセルソーターを使用する方法により特定コピー数の核酸をウェルに分注してもよい。以下にセルソーターを用いた場合について説明する。酵母懸濁液の固定化までは、上述したものと同一の方法を用いたため、記載を省略する。
−核染色−
固定化済み酵母懸濁液を200μL分取し、DPBSで1回洗浄した後、480μLのDPBSに再懸濁した。
次に、20μLの20mg/mL RNase A(株式会社ニッポンジーン製、318−06391)を添加後、バイオシェイカーを用いて37℃で2時間インキュベートした。
次に、25μLの20mg/mLプロテイナーゼK(タカラバイオ株式会社製、TKRー9034)を添加し、プチクール(ワケンビーテック株式会社製、プチクール MiniT−C)を用いて、50℃で2時間インキュベートした。
最後に、6μLの5mM SYTOX Green Nucleic Acid Stain(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、S7020)を加えて、遮光下で30分間染色した。
−分散−
染色済みの酵母懸濁液を超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150)を用いて、出力:30%、10秒間分散処理して、酵母懸濁インクを得た。
<核酸試料の充填>
−酵母懸濁液の個数計測分注−
核酸試料系列は、充填容器(96穴平底プレート(ワトソン株式会社製、4846−96−FS))に予め細胞壁溶解用の溶解液を各ウェルに4μLずつ充填した後に、セルソーター(ソニー株式会社製、SH800Z)により各ウェルに1細胞ずつ分注した。
次に、細胞壁溶解液としてTris−EDTA(TE) Buffer(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、AM9861)を用いて、ColE1 DNA(株式会社ニッポンジーン製、312−00434)を5ng/μLとなるようにColE1/TEを調製し、このColE1/TEを用いて、Zymolyase(R) 100T(ナカライテスク株式会社製、07665−55)を1mg/mLとなるように調製したZymolyase溶液を使用した。
次に、セルソーターによる分注では、励起波長488nmで細胞周期の分析を行い、G0/G1期の領域のみを選択して、シングルセルモードにより規定の酵母数を分注した。
−分注酵母からの核酸抽出−
酵母からの核酸抽出は、充填容器を37℃にて30分間インキュベートすることにより、細胞壁を溶解(核酸抽出)した後、95℃で2分間熱処理した。
<核酸試料系列の不確かさ算出>
充填された核酸試料系列は、以下の不確かさの要因によって特定コピー数水準毎に一定の不確かさを有する。
要因i:吐出液滴毎の酵母数一致率に関する不確かさ
要因iに関する不確かさは、充填方法と同条件にて別容器に吐出し、その着弾液滴内の酵母数と狙いの酵母数の一致率に基づいて算出した。
本実験系においては、セルソーターによって1ウェルあたりに1細胞(特定コピー数=1)の酵母を分注する精度は、99.2%であった。なお、これ以上の細胞数(コピー数)の酵母を分注する場合には、特定コピー数の酵母を分注する精度は、この1細胞あたりの精度の積み重ねによって決定されると言える。
以上より、各充填核酸試料の平均特定コピー数及び不確かさを算出した。結果を表4に示した。変動係数CV値は、不確かさを平均特定コピー数で除することにより求めた。
−各充填部位への不確かさの値付け-
算出された不確かさを各ウェルへ値付けした。
以上より、核酸試料系列の平均核酸コピー数とその不確かさ算出し、各ウェルへの値付けをすることができた。
次に、1ウェル当たりに分注する細胞数を10細胞に変更した以外は上述したものと同様の方法を用いて細胞数が既知のデバイス(プレート)を作製した。
作製したデバイスに対して、図24に示すプロトコールにしたがってリアルタイムPCRにより増幅及び検出を行った。リアルタイムPCRで測定するために、まず、(1)添加済み群(図25中、1〜4列目、組成:核酸、プライマー、増幅試薬)、(2)プライマーを添加する群(図25中、5〜8列目、組成:核酸、増幅試薬)、(3)プライマー及び増幅試薬を添加する群(図25中、9〜12列目、組成:核酸)の組成となるように、手技によりプライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを添加する。ただし、図25中「0」はネガティブコントロールであり、核酸を含まないウェルを表す。
増幅試薬の組成としては、以下の通りである。
・マスターミックス(Thermo Fisher社製、TaqMan Universal PCR Master Mix):1μL
・特定の塩基配列を増幅するためのフォワードプライマー及びリバースプライマー(10μM):0.5nmol
・TaqMan Probe(Thermo Fisher Scientific社製、製品名:Taqman Universal PCR Master Mix):0.4nmol
・酵母細胞壁溶解酵素(MCフードスペシャリティーズ株式会社製、製品名:Zymolyase):4μL
・NFW(Thermo Fisher Scientific社製、製品名:UltraPure DNase/RNase−Free Distilled Water):2μL
デバイスの調製後、リアルタイムPCR装置(Thermo Fisher社製、QuantStudio 7Flex)を用いて増幅及び検出を行った。結果を図26〜図28に示す。
図26は、図25に示すデバイスにおける各ウェルにおけるCt値の情報を示す図である。図27は、図26から得られた(1)〜(3)それぞれの組成におけるCt値の平均値と標準偏差を示す図である。図28は、図26から得られたCt値の情報に基づいて作製したCt値の正規分布曲線を示す図である。図26〜図28の結果より、(1)及び(2)の組成に比べて、調製者によりプライマー及び増幅試薬を添加した(3)の組成においてCt値の平均値及び標準偏差が大きいことがわかった。これにより、本発明のデバイスを用いることにより、試薬組成物を調製する調製者の技能を評価できることがわかった。
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 複数のウェルを有し、
特定コピー数の増幅可能な試薬を含む試薬組成物を配した前記ウェルの群であって、
前記ウェルに配される前記増幅可能な試薬は、前記特定コピー数が同一であり、かつ前記試薬組成物が前記特定コピー数以外の組成を異ならせた前記ウェルの群を2以上有することを特徴とするデバイスである。
<2> 前記増幅可能な試薬の前記特定コピー数以外の組成が、プライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを含む前記<1>に記載のデバイスである。
<3> 複数のウェルを有し、
増幅可能な試薬、プライマー、及び増幅試薬の少なくともいずれかの組成を含む試薬組成物を配した前記ウェルの群であって、
前記試薬組成物は前記組成を異ならせてなる2以上の群であることを特徴とするデバイスである。
<4> 前記特定コピー数が互いに異なる2以上の群を有する前記<1>から<3>のいずれかに記載のデバイスである。
<5> 前記ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が検出限界付近である群である前記<1>から<4>のいずれかに記載のデバイスである。
<6> 前記ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が、定量下限を超えるコピー数である群である前記<1>から<4>のいずれかに記載のデバイスである。
<7> 前記ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が0であるネガティブコントロール群である前記<1>から<6>のいずれかに記載のデバイスである。
<8> 更に、前記ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるポジティブコントロール群を有する前記<1>から<7>のいずれかに記載のデバイスである。
<9>前記ウェル内の前記増幅可能な試薬の特定コピー数の情報を識別可能な識別手段を有する前記<1>から<8>のいずれかに記載のデバイスである。
<10> 前記増幅可能な試薬が核酸である前記<1>から<9>のいずれかに記載のデバイスである。
<11> 前記核酸が細胞の核中の核酸に組み込まれた前記<10>に記載のデバイスである。
<12> 前記細胞が酵母である前記<11>に記載のデバイスである。
<13> 試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価プログラムであって、
前記<1>から<12>のいずれかに記載のデバイスを用い、前記デバイスにおけるCt値の情報を取得し、
取得した前記Ct値の情報に基づき前記調製者の技能を評価する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする調製者の技能評価プログラムである。
<14> 試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価方法であって、
前記<1>から<12>のいずれかに記載のデバイスを用い、前記デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得工程と、
取得した前記Ct値の情報に基づき前記調製者の技能を評価する技能評価工程と、
を含むことを特徴とする調製者の技能評価方法である。
<15> 試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価装置であって、
前記<1>から<12>のいずれかに記載のデバイスを用い、前記デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得部と、
取得した前記Ct値の情報に基づき前記調製者の技能を評価する技能評価部と、
を有することを特徴とする調製者の技能評価装置である。
前記<1>から<12>のいずれかに記載のデバイス、前記<13>に記載の調製者の技能評価プログラム、前記<14>に記載の調製者の技能評価方法、及び前記<15>に記載の調製者の技能評価装置は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
1 デバイス
2 基材
3 ウェル
4 増幅可能な試薬
5 密閉部材
特開2014−33658号公報 特開2008−141965号公報
ISO/TS 20836:2005

Claims (15)

  1. 複数のウェルを有し、
    特定コピー数の増幅可能な試薬を含む試薬組成物を配した前記ウェルの群であって、
    前記ウェルに配される前記増幅可能な試薬は、前記特定コピー数が同一であり、かつ前記試薬組成物が前記特定コピー数以外の組成を異ならせた前記ウェルの群を2以上有することを特徴とするデバイス。
  2. 前記増幅可能な試薬の前記特定コピー数以外の組成が、プライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを含む請求項1に記載のデバイス。
  3. 複数のウェルを有し、
    増幅可能な試薬、プライマー、及び増幅試薬の少なくともいずれかの組成を含む試薬組成物を配した前記ウェルの群であって、
    前記試薬組成物は前記組成を異ならせてなる2以上の群を有することを特徴とするデバイス。
  4. 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が互いに異なる2以上の群を有する請求項1から3のいずれかに記載のデバイス。
  5. 前記ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が検出限界付近である群である請求項1から4のいずれかに記載のデバイス。
  6. 前記ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が、定量下限を超えるコピー数である群である請求項1から4のいずれかに記載のデバイス。
  7. 前記ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が0であるネガティブコントロール群である請求項1から6のいずれかに記載のデバイス。
  8. 更に、前記ウェルの群の内の少なくとも1つの群が、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるポジティブコントロール群を有する請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
  9. 前記ウェル内の前記増幅可能な試薬の特定コピー数の情報を識別可能な識別手段を有する請求項1から8のいずれかに記載のデバイス。
  10. 前記増幅可能な試薬が核酸である請求項1から9のいずれかに記載のデバイス。
  11. 前記核酸が細胞の核中の核酸に組み込まれた請求項10に記載のデバイス。
  12. 前記細胞が酵母である請求項11に記載のデバイス。
  13. 試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価方法であって、
    請求項1から12のいずれかに記載のデバイスを用い、
    前記デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得工程と、
    取得した前記Ct値の情報に基づき前記調製者の技能を評価する技能評価工程と、
    を含むことを特徴とする調製者の技能評価方法。
  14. 試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価プログラムであって、
    請求項1から12のいずれかに記載のデバイスを用い、前記デバイスにおけるCt値の情報を取得し、
    取得した前記Ct値の情報に基づき前記調製者の技能を評価する、
    処理をコンピュータに実行させることを特徴とする調製者の技能評価プログラム。
  15. 試薬組成物を調製する調製者の技能を評価する調製者の技能評価装置であって、
    請求項1から12のいずれかに記載のデバイスを用い、前記デバイスにおけるCt値の情報を取得するCt値情報取得部と、
    取得した前記Ct値の情報に基づき前記調製者の技能を評価する技能評価部と、
    を有することを特徴とする調製者の技能評価装置。
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