JP7058411B2 - 検査デバイスの製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、系列希釈法により核酸試料系列を作製し、複数の試料充填部が設けられた容器の該試料充填部に、異なる複数充填分子数水準の核酸試料が密封されているPCR反応プレート用容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、最近、標的核酸配列を導入した細胞をマニピュレーターによって1個ずつ分取することにより、極微量の核酸分子を計測・充填可能とする技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100以上の場合には増幅可能な試薬を希釈法により調製し、
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100未満の場合には増幅可能な試薬を吐出法により調製する。
本発明の検査デバイスの製造方法は、少なくとも1つのウェルを有し、少なくとも1つのウェルが特定分子数の増幅可能な試薬を含む検査デバイスの製造方法であって、
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100以上の場合には増幅可能な試薬を希釈法により調製し、
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100未満の場合には増幅可能な試薬を吐出法により調製し、更に必要に応じてその他の工程を含む。
このことは、系列希釈法により作製された核酸試料系列を充填する際のばらつき(充填精度)が原因であると考えられる。即ち、核酸試料のような溶質分子は溶媒分子に溶解した状態において、熱ゆらぎによって溶媒分子中を運動している。その際の分子の分布状態は一般的にポアソン分布に従うとされる。このことは、規定濃度の溶液をいかなる精度で量り取り、容器に充填した場合でも、充填された溶液中の分子数は分布、つまり、ばらつき(充填精度)を有することを示している。
検査デバイスは、少なくとも1つのウェルを有し、識別手段、基材を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の部材を有する。
本明細書において、増幅可能な試薬が含まれるデバイスを「検査デバイス」と称する。
ウェルは、その形状、数、容積、材質、色などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ウェルの形状としては、増幅可能な試薬を配することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平底、丸底、U底、V底等の凹部、基板上の区画などが挙げられる。
ウェルの数は、少なくとも1つであり、2以上の複数であることが好ましく、5以上がより好ましく、50以上が更に好ましい。
ウェルの数が2以上である連結されたマイクロチューブもしくはマルチウェルプレートが好適に用いられる。
連結されたマイクロチューブとしては、例えば、2、3、4、6、8、12、16、24、又は48連マイクロチューブが挙げられる。
マルチウェルプレートとしては、例えば、24、48、96、384、又は1,536のウェルプレートが挙げられる。
ウェルの容積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一般的な核酸検査装置に用いられる試料量を考慮すると、10μL以上1,000μL以下が好ましい。
ウェルの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ふっ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
ウェルの色としては、例えば、透明、半透明、着色、完全遮光などが挙げられる。
検査デバイスは、ウェルが基材に設けられたプレート状のものが好ましいが、マイクロチューブ、例えば、8連チューブ等の連結タイプのウェルチューブであってもよい。
基材としては、その材質、形状、大きさ、構造などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、半導体、セラミックス、金属、ガラス、石英ガラス、プラスチックスなどが挙げられる。これらの中でも、プラスチックスが好ましい。
プラスチックスとしては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ふっ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、板状、市販のウェルプレート形状などが好ましい。
基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造であっても複数層構造であっても構わない。
検査デバイスは、少なくとも1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100未満であって、特定分子数である場合の充填精度のCV値の情報、少なくとも1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100以上であって、特定分子数である場合の充填精度のCV値の情報、及び不確かさの情報を識別可能な識別手段を有することが好ましい。
識別手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メモリ、ICチップ、バーコード、QRコード(登録商標)、Radio Frequency Identifier(以下、「RFID」とも称することがある)、色分け、印刷などが挙げられる。
識別手段を設ける位置及び識別手段の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
識別手段に記憶させる情報としては、例えば、増幅可能な試薬の特定分子数、分析結果(活性値、発光強度等)、増幅可能な試薬の数(例えば、細胞の数)、細胞の生死、特定塩基配列のコピー数、複数のウェルのうちどのウェルに増幅可能な試薬が充填されているのか、増幅可能な試薬の種類、測定日時、測定者の氏名などが挙げられる。
識別手段に記憶された情報は、各種読取手段を用いて読み取ることができ、例えば、識別手段がバーコードであれば読取手段としてバーコードリーダーが用いられる。
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、密閉部材などが挙げられる。
検査デバイスは、ウェルへの異物混入は充填物の流出などを防ぐために、密閉部材を有することが好ましい。
密閉部材としては、少なくとも1つのウェルを密閉可能であり、1つ1つのウェルを個別に密閉乃至開封できるように、切り取り線により切り離し可能に構成することが好ましい。
密閉部材の形状としては、ウェル内壁径と一致するキャップ状、又はウェル開口部を被覆するフィルム状であることが好ましい。
密閉部材の材質としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
密閉部材としては、全てのウェルを一度に密閉可能なフィルム状であることが好ましい。また、使用者の誤使用を低減化できるように再開封が必要なウェルと不必要なウェルとの接着強度が異なるように構成されていることが好ましい。
特定分子数とは、ウェルに含まれる増幅可能な試薬の分子数であり、具体的には、ウェル内に含まれる増幅可能な試薬(例えば、核酸)のコピー数を意味する。
増幅可能な試薬としては、増幅可能な試薬であれば特に制限はなく、適宜使用することが可能であり、詳しくは後述するが、核酸が好適に使用できる。
少なくとも1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100未満であって、特定分子数である場合の充填精度のCV値は20%以下であり、10%以下が好ましい。この範囲において、特定分子数が100未満であっても高い精度で増幅可能な試薬を充填することができる。
少なくとも1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100以上であって、特定分子数である場合の充填精度のCV値は20%以下が好ましい。この範囲において、特定分子数が100以上であっても高い精度で増幅可能な試薬を充填することができる。
ウェルの数が2以上であり、一のウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が10N1であり、他のウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が10N2である、(ただし、N1及びN2は互いに連続した整数である)ことが好ましく、例えば、1、10、100、1,000の場合、100、1,000、10,000、100,000、1,000,000の場合などが挙げられる。これにより、検査デバイスは、低分子数から高分子数までの広い範囲における検量線の作成が容易に行える。
「不確かさ」とは、「測定の結果に付随した、合理的に測定量に結びつけられ得る値のばらつきを特徴づけるパラメータ」であるとISO/IEC Guide99:2007[国際計量計測用語-基本及び一般概念並びに関連用語(VIM)]に定義されている。
ここで、「合理的に測定量に結びつけられ得る値」とは、測定量の真の値の候補を意味する。即ち、不確かさとは、測定対象の製造に係る操作、機器などに起因する測定結果のばらつきの情報を意味する。不確かさが大きいほど、測定結果として予想されるばらつきが大きくなる。
不確かさとしては、例えば、測定結果から得られる標準偏差であってもよく、真の値が所定の確率以上で含まれている値の幅として表す信頼水準の半分の値としてもよい。
不確かさを算出する方法としては、Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement(GUM:ISO/IEC Guide98-3)、及びJapan Accreditation Board Note 10 試験における測定の不確かさに関するガイドラインなどに基づき算出することができる。不確かさを算出する方法としては、例えば、測定値などの統計を用いたタイプA評価法と、校正証明書、製造者の仕様書、公表されている情報などから得られる不確かさの情報を用いたタイプB評価法の2つの方法を適用することができる
不確かさは、操作及び測定などの要因から得られる不確かさを全て標準不確かさに変換することにより、同じ信頼水準で表現することができる。標準不確かさとは、測定値から得られた平均値のばらつきを示す。
不確かさを算出する方法の一例としては、例えば、不確かさを引き起こす要因を抽出し、それぞれの要因の不確かさ(標準偏差)を算出する。さらに、算出したそれぞれの要因の不確かさを平方和法により合成し、合成標準不確かさを算出する。合成標準不確かさの算出において、平方和法を用いるため、不確かさを引き起こす要因の中で不確かさが十分に小さい要因については無視することができる。不確かさは合成標準不確かさを期待値で除した変動係数(CV値)を用いてもよい。
プライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、鋳型DNAに特異的な18塩基~30塩基の相補的塩基配列を持つ合成オリゴヌクレオチドであり、増幅したい領域を挟むようにフォワードプライマーとリバースプライマーとの2か所(一対)設定される。
増幅試薬としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、例えば、酵素としてDNAポリメラーゼ、基質として4種の塩基(dGTP、dCTP、dATP、dTTP)、Mg2+(2mMの塩化マグネシウム)、最適pH(pH7.5~9.5)を保持するバッファーなどが挙げられる。
ネガティブコントロールで検出が検知されたとき、及びポジティブコントロールで不検出が検知されたときは、検出系(試薬や装置)に異常があることが示唆される。ネガティブコントロール及びポジティブコントロールを設けておくことにより、問題が生じたときにユーザーは直ちにそれに気づくことができ、測定を中止して問題がどこにあるかの点検を行うことができる。
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100以上の場合には増幅可能な試薬を希釈法により調製することが好ましい。この場合、増幅可能な試薬の特定分子数は、100以上であり、100~1010が好ましい。
希釈法としては、試料調製手段によって系列希釈を作製する方法などが挙げられる。
試料調製手段としては、例えば、ピペットを用いたマニュアル操作、マイクロピペッター(エッペンドルフ株式会社製)、ピペットマン(エッペンドルフ株式会社製)などが挙げられる。
核酸とは、プリン又はピリミジンから導かれる含窒素塩基、糖、及びリン酸が規則的に結合した高分子の有機化合物を意味し、核酸の断片、あるいはこれら核酸又はその断片のアナログなども含まれる。
核酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNA、RNA、cDNAなどが挙げられる。また、核酸としては、プラスミドも使用することができる。核酸は修飾又は変異されていてもよい。
核酸又は核酸断片のアナログとしては、核酸又は核酸断片に非核酸成分を結合させたもの、核酸又は核酸断片を蛍光色素や同位元素等の標識剤で標識したもの(例えば、蛍光色素や放射線同位体で標識されたプライマーやプローブ)、核酸又は核酸断片を構成するヌクレオチドの一部の化学構造を変化させたもの(例えば、ペプチド核酸など)などが挙げられる。これらは、生物から得られる天然物であっても又はそれらの加工物であってもよく、或いは、遺伝子組換技術を利用して製造されたものでも、また化学的に合成されたものでもよい。
細胞としては、遺伝子導入を行うことができる細胞であれば特に制限はなく、目的応じて適宜選択することができ、前述の細胞種を問わず使用することができる。
核酸は、特定の塩基配列を有することが好ましい。特定とは、特に定められていることを意味する。
特定の塩基配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感染症検査に用いられる塩基配列、自然界には存在しない塩基配列、動物細胞由来の塩基配列、植物細胞由来の塩基配列などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
細胞は、核酸を有し、生物体を形成する構造的及び機能的単位を意味する。
細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞を問わず、すべての細胞について使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
細胞周期とは、細胞が増えるとき、細胞分裂が生じ、細胞分裂で生じた細胞(娘細胞)が再び細胞分裂を行う細胞(母細胞)となって新しい娘細胞を生み出す過程を意味する。
また、酵母菌としては、例えば、細胞周期をG1期に制御するフェロモン(性ホルモン)の感受性が増加したBar-1欠損酵母が好ましい。酵母菌がBar-1欠損酵母であると、細胞周期が制御できていない酵母菌の存在比率を低くすることができるため、ウェル内に収容された細胞の特定の核酸の数の増加等を防ぐことができる。
細胞としては、光を受光したときに発光可能な細胞であることが好ましい。光を受光したときに発光可能な細胞であると、細胞の数を高精度に制御してウェル内に着弾させることができる。
受光とは、光を受けることを意味する。
光学センサとは、人間の目で見ることができる可視光線と、それより波長の長い近赤外線や短波長赤外線、熱赤外線領域までの光のいずれかの光をレンズで集め、対象物である細胞の形状などを画像データとして取得する受動型センサを意味する。
光を受光したときに発光可能な細胞としては、光を受光したときに発光可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、蛍光色素によって染色された細胞、蛍光タンパク質を発現した細胞、蛍光標識抗体により標識された細胞などが挙げられる。
細胞における蛍光色素による染色部位、蛍光タンパク質の発現部位、又は蛍光標識抗体による標識部位としては、特に制限はなく、細胞全体、細胞核、細胞膜などが挙げられる。
蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類、クマリン類、ピレン類、シアニン類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類が好ましく、エオシン、エバンスブルー、トリパンブルー、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン123がより好ましい。
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、mPlum、PS-CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
蛍光標識抗体としては、蛍光標識されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CD4-FITC、CD8-PEなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
作製した染色済み酵母分散液から10μL取り出してPMMA製プラスチックスライドに載せ、自動セルカウンター(商品名:Countess Automated Cell Counter、invitrogen社製)を用いることにより体積平均粒径を測定することができる。なお、細胞数も同様の測定方法により求めることができる。
細胞数としては、体積平均粒径の測定方法と同様にして、自動セルカウンター(商品名:Countess Automated Cell Counter、invitrogen社製)を用いて測定することができる。
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100未満の場合には増幅可能な試薬を吐出法により調製することが好ましい。この場合、増幅可能な試薬の特定分子数は、100未満であり、50以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。
吐出法としては、インクジェット吐出法などが挙げられる。
なお、増幅可能な試薬については、上記希釈法による増幅可能な試薬の調製で説明した内容と同様である。
細胞懸濁液調製工程は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含む細胞懸濁液を調製する工程である。
溶剤とは、細胞を分散させるために用いる液体を意味する。
細胞懸濁液における懸濁とは、細胞が溶剤中に分散して存在する状態を意味する。
調製とは、作り出すことを意味する。
細胞懸濁液は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含み、添加剤を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含む。
特定の核酸を有する複数の細胞については、上述したとおりである。
溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、培養液、分離液、希釈液、緩衝液、有機物溶解液、電解質水溶液、無機塩水溶液、金属水溶液、及びこれらの混合液体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水、緩衝液が好ましく、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Tris-EDTA緩衝液(TE)がより好ましい。
添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、核酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
その他の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、浸透圧調整剤、湿潤剤、分散剤などが挙げられる。
細胞を分散する方法としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビーズミル等のメディア方式、超音波ホモジナイザー等の超音波方式、フレンチプレス等の圧力差を利用する方式などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞へのダメージが少ないことから超音波方式がより好ましい。メディア方式では、解砕能力が強く、細胞膜や細胞壁を破壊する可能性やメディアがコンタミとして混入することがある。
細胞のスクリーニング方法としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式分級、セルソーター、フィルタによるスクリーニングなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞へのダメージが少ないことから、セルソーター、フィルタによるスクリーニングが好ましい。
細胞周期を測定するとは、細胞分裂による細胞数を数値化することを意味する。
核酸の数を推定するとは、細胞数から、核酸のコピー数を求めることを意味する。
確からしさとは、いくつかの事象の生じる可能性がある時、特定の1つの事象が起こる可能性の程度を事前に予測して、その事象の起こる確率を意味する。
算出とは、計算して求める数値を出すことを意味する。
また、細胞懸濁液を作製する前に細胞周期を制御する処理を行うことが好ましく、前述のような複製が起きる前、又は後の状態に揃えることによって、特定の核酸の数を細胞数からより精度良く算出することが可能になる。
液滴着弾工程は、細胞懸濁液を液滴として吐出することによりウェル内に液滴を順次着弾させる工程である。
液滴とは、表面張力によりまとまった液体のかたまりを意味する。
吐出とは、細胞懸濁液を液滴として飛翔させることを意味する。
順次とは、次々に順序どおりにすることを意味する。
着弾とは、液滴をウェルに到達させることを意味する。
サーマル方式は、局所的な加熱が発生するため生体材料である細胞への影響や、ヒーター部への焦げ付き(コゲーション)が懸念される。熱による影響は、含有物やウェルプレートの用途に依存するため、一概に除外する必要はないが、圧力印加方式は、サーマル方式よりヒーター部への焦げ付きの懸念がないという点から好ましい。
図3Aは、電磁バルブ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。電磁バルブ方式の吐出ヘッドは、電動機13a、電磁弁112、液室11a、細胞懸濁液300a、及びノズル111aを有する。
電磁バルブ方式の吐出ヘッドとしては、例えば、TechElan社のディスペンサなどを好適に用いることができる。
また、図3Bは、ピエゾ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。ピエゾ方式の吐出ヘッドは、圧電素子13b、液室11b、細胞懸濁液300b、及びノズル111bを有する。
ピエゾ方式の吐出ヘッドとしては、Cytena社のシングルセルプリンターなどを好適に用いることができる。
これらの吐出ヘッドのいずれも用いることが可能であるが、電磁バルブによる圧力印加方式では高速に繰り返し液滴を形成することができないため、検査デバイスの生成のスループットを上げるためにはピエゾ方式を用いることが好ましい。また、一般的な圧電素子13bを用いたピエゾ方式の吐出ヘッドでは、沈降によって細胞濃度のムラが発生することや、ノズル詰まりが生じることが問題として生じることがある。
このため、より好ましい構成として図3Cに示した構成などが挙げられる。図3Cは、図3Bにおける圧電素子を用いたピエゾ方式の吐出ヘッドの変形例の模式図である。図3Cの吐出ヘッドは、圧電素子13c、液室11c、細胞懸濁液300c、及びノズル111cを有する。
図3Cの吐出ヘッドでは、図示していない制御装置からの圧電素子13cに対して電圧印加することにより、紙面横方向に圧縮応力が加わりメンブレンを紙面上下方向に変形させることができる。
吐出ヘッドは、圧電素子に形成された上下電極に、パルス状の電圧を印加することにより液滴を吐出することができる。図5A~図5Cは、それぞれのタイミングにおける液滴の状態を示す模式図である。
図5Aは、まず、圧電素子13cに電圧を印加することにより、メンブレン12cが急激に変形することによって、液室11c内に保持された細胞懸濁液とメンブレン12cとの間に高い圧力が発生し、この圧力によってノズル部から液滴が外に押し出される。
次に、図5Bに示すように、圧力が上方に緩和するまでの時間、ノズル部からの液押し出しが続き液滴が成長する。
最後に、図5Cに示すように、メンブレン12cが元の状態に戻る際に細胞懸濁液とメンブレン12cとの界面近傍の液圧力が低下し、液滴310’が形成される。
プレートにおけるウェルの数は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単数であってもよく、複数であってもよい。
図6に示すように、液滴を着弾させるための分注装置400は、液滴形成装置401と、プレート700と、ステージ800と、制御装置900とを有している。
複数の水準とは、標準となる複数の基準を意味する。
複数の水準としては、ウェル内に特定の核酸を有する複数の細胞が所定の濃度勾配を有することが好ましい。濃度勾配を有することにより、検量線用試薬として好適に使用することができる。複数の水準は、センサによって計数される値を用いて制御することができる。
細胞数計数工程は、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数する工程である。
センサとは、自然現象や人工物の機械的・電磁気的、熱的、音響的、又は化学的性質、或いはそれらにより示される空間情報・時間情報を、何らかの科学的原理を応用して、人間や機械が扱い易い別媒体の信号に置き換える装置を意味する。
計数とは、数を数えることを意味する。
図7、図11、及び図12を用いて、光学的に検出する方法に関して以下に述べる。
図7は、液滴形成装置401の一例を示す模式図である。図11、及び図12は、液滴形成装置401A、401Bの他の一例を示す模式図である。図7に示すように、液滴形成装置401は、吐出ヘッド(液滴吐出手段)10と、駆動手段20と、光源30と、受光素子60と、制御手段70とを有する。
光を照射とは、光をあてることを意味する。
以下、図8~図10を参照し、制御手段70の動作を含む液滴形成装置401の動作について説明する。
まず、ステップS11において、制御手段70の吐出制御手段701は、駆動手段20に吐出の指令を出す。吐出制御手段701から吐出の指令を受けた駆動手段20は、駆動素子13に駆動信号を供給してメンブレン12を振動させる。メンブレン12の振動により、蛍光染色細胞350を含有する液滴310が、ノズル111から吐出される。
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、mPlum、PS-CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このように、液滴形成装置401Bでは、蛍光染色細胞350が異なる方向に発した蛍光を受光する複数の受光素子を有しているため、蛍光染色細胞350の個数の誤計数の発生頻度を更に低減できる。
電気的又は磁気的な検出する方法としては、図16に示すように、液室11’から細胞懸濁液を液滴310’としてプレート700’に吐出する吐出ヘッドの直下に、細胞計数のためのコイル200がセンサとして設置されている。細胞は特定のタンパク質によって修飾され細胞に接着することが可能な磁気ビーズによって覆うことにより、磁気ビーズが付着した細胞がコイル中を通過する際に発生する誘導電流によって、飛翔液滴中の細胞の有無を検出することが可能である。一般的に、細胞はその表面に細胞特有のタンパク質を有しており、このタンパク質に接着することが可能な抗体を磁気ビーズに修飾することによって、細胞に磁気ビーズを付着させることが可能である。このような磁気ビーズとしては既製品を用いることが可能であり、例えば、株式会社ベリタス製のDynabeads(登録商標)が利用可能である。
吐出前に細胞を観測する処理としては、図17に示すマイクロ流路250中を通過してきた細胞350’をカウントする方法や、図18に示す吐出ヘッドのノズル部近傍の画像を取得する方法などが挙げられる。図17はセルソーター装置において用いられている方法であり、例えば、ソニー株式会社製のセルソーターSH800Zを用いることができる。図17では、マイクロ流路250中に光源260からレーザー光を照射して散乱光や蛍光を、集光レンズ265を用いて検出器255により検出することによって細胞の有無や、細胞の種類を識別しながら液滴を形成することが可能である。本方法を用いることによって、マイクロ流路250中に通過した細胞の数から所定のウェル中に着弾した細胞の数を推測することが可能である。
また、図18に示す吐出ヘッド10’としては、Cytena社製のシングルセルプリンターを用いることが可能である。図18では、吐出前において、ノズル部近傍をレンズ265’を介して、画像取得部255’において画像取得した結果からノズル部近傍の細胞350”が吐出されたと推定することや、吐出前後の画像から差分により吐出されたと考えられる細胞の数を推定することによって、所定のウェル中に着弾した細胞の数を推測することができる。図17に示すマイクロ流路中を通過してきた細胞をカウントする方法では、液滴が連続的に生成されるのに対して、図18は、オンデマンドで液滴形成が可能であるため、より好ましい。
着弾後の細胞をカウントする処理としては、プレートにおけるウェルを蛍光顕微鏡などにより観測することにより、蛍光染色した細胞を検出する方法を取ることが可能である。この方法は、例えば、Sangjun et al.,PLoS One,Volume 6(3),e17455などに記載されている。
また、着弾後のプレート上の細胞を検出する手法においても問題がある。まず、プレートとして顕微鏡観察が可能であるものを準備する必要がある。観測可能なプレートとして、一般的に底面が透明かつ平坦なプレート、特に底面がガラス製となっているプレートが用いられるが、特殊なプレートとなってしまうため、一般的なウェルを使用することができなくなる問題がある。また、細胞数が数十個など多いときには、細胞の重なりが発生するため正確な計数ができなくなる問題もある。そのため、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサ及び細胞数計数手段によって計数することに加えて、吐出前に細胞を観測する処理、着弾後の細胞をカウントする処理を行うことが好ましい。
1又は少数の受光部を有する受光素子を用いる際には、蛍光強度から細胞が何個入っているかを予め用意された検量線を用いて決定することも考えられるが、主として飛翔液滴中の細胞有無を二値的に検出することが行われる。細胞懸濁液の細胞濃度が十分に低く、液滴中に細胞が1個又は0個しかほぼ入らない状態で吐出を行う際には、二値的な検出で十分精度よく計数を行うことが可能である。細胞懸濁液中で細胞はランダムに配置していることを前提とすれば、飛翔液滴中の細胞数はポアソン分布に従うと考えられ、液滴中に細胞数が2個以上入る確率P(>2)は下記式(1)で表される。図19は、確率P(>2)と平均細胞数の関係を表すグラフである。ここで、λは液滴中の平均細胞数であり、細胞懸濁液中の細胞濃度に吐出液滴の体積を乗じたものになる。
P(>2)=1-(1+λ)×e-λ ・・・ 式(1)
細胞懸濁液調製工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程における推定する核酸の数の確からしさを算出する工程は、細胞懸濁液調製工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程それぞれの工程における確からしさを算出する工程である。
当該推定する核酸の数の確からしさの算出は、細胞懸濁液調製工程における確からしさと同様に算出することができる。
なお、確からしさの算出タイミングは、細胞数計数工程の次工程で、纏めて算出してもよいし、細胞懸濁液調製工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程の各工程の最後に算出し、細胞数計数工程の次工程で各不確かさを合成して算出してもよい。言い換えれば、上記各工程での確からしさは、合成算出までに適宜算出しておけばよい。
出力工程は、ウェル内に着弾した細胞懸濁液に含まれる細胞数を、センサにより測定された検出結果に基づいて細胞数計数手段にて計数された値を出力する工程である。
計数された値とは、センサにより測定された検出結果から、細胞数計数手段にて当該ウェルに含まれる細胞数を意味する。
出力とは、原動機、通信機、計算機などの装置が入力を受けて計数された値を外部の計数結果記憶手段としてのサーバに電子情報として送信することや、計数された値を印刷物として印刷することを意味する。
出力は、細胞数計数工程と同時に行ってもよく、細胞数計数工程の後に行ってもよい。
記録工程は、出力工程において、出力された観測値又は推測値を記録する工程である。
記録工程は、記録部において好適に実施することができる。
記録は、出力工程と同時に行ってもよく、出力工程の後に行ってもよい。
記録とは、記録媒体に情報を付与することだけでなく、記録部に情報を保存することも含む意味である。
核酸抽出工程は、ウェル内の細胞から核酸を抽出する工程である。
抽出とは、細胞膜や細胞壁などを破壊し、核酸をぬき出すことを意味する。
細胞壁を保有している細胞に関しては、上記の方法で十分にDNA抽出されないことがある。その場合、例えば、浸透圧ショック法、凍結融解法、酵素消化法、DNA抽出用キットの使用、超音波処理法、フレンチプレス法、ホモジナイザーなどの方式などが挙げられる。これらの中でも、抽出DNAのロスが少ないことから、酵素消化法が好ましい。
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酵素失活工程などが挙げられる。
酵素失活工程は、酵素を失活させる工程である。
酵素としては、例えば、DNase、RNase、核酸抽出工程において核酸を抽出するために使用した酵素などが挙げられる。
酵素を失活させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の方法を好適に用いることができる。
図23は、本発明の検査デバイスの他の一例を示す斜視図である。この図23の検査デバイスでは、増幅可能な試薬の分子数水準が100、102、104、106、108の5水準設けられている。
図25は、本発明の検査デバイスの増幅可能な試薬を充填するウェルの配置の他の一例を示す図である。図25中のウェル内の数字は増幅可能な試薬の特定分子数を表し、1、3、5、10、50の特定分子数が100未満のウェルと、2.77E+02、1.11E+03、4.44E+03、1.77E+04、1.78E+05の特定分子数100以上のウェルが設けられている。図25中の数字が記載していないウェルは試料やコントロール測定用のウェルである。
<核酸試料の調製>
-高濃度核酸試料希釈系列の作製-
高濃度核酸試料は、濃厚核酸試料としてDNA600-G(国立研究開発法人産業技術総合研究所製、NMIJ CRM 6205-a)と、希釈溶媒としてUltraPure DNase/RNase-Free-Distilled Water(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、10977-015、以下、「NFW」という)とを用いて系列希釈を調製した。
系列希釈試料の濃度は、電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製、BM-22)による濃厚溶液と希釈溶媒の重量計測に基づいて決定した。
--遺伝子組換え酵母--
出芽酵母YIL015W BY4741(ATCC社製、ATCC4001408)を1コピーの特定核酸配列のキャリア細胞として組換え体の作製に使用した。
特定核酸配列は、上記DNA600-G配列と選択マーカーとしたURA3とがタンデムに並ぶように作出したプラスミドとして、キャリア細胞のBAR1領域を対象に相同組換えによって1コピーの特定核酸配列を酵母ゲノムDNAに導入し、遺伝子組換え酵母を作製した。
50g/LのYPD培地(タカラバイオ株式会社製、CLN-630409)で培養した遺伝子組換え酵母を90mL分取した三角フラスコに、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、14190-144、以下、「DPBS」と称する)を用いて500μg/mLとなるように調製したα1-Mating Factor acetate salt(Sigma-Aldrich社製、T6901-5MG、以下、「αファクター」という)を900μL添加した。
次いで、バイオシェイカー(タイテック株式会社製、BR-23FH)を用いて、振盪速度:250rpm、温度:28℃にて2時間インキュベートし、酵母をG0/G1期に同調して酵母懸濁液を得た。
同調確認済み酵母懸濁液を遠心管(アズワン株式会社製、VIO-50R)に45mL移し、遠心分離機(株式会社日立製作所製、F16RN)を用いて、回転速度:3000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去して酵母ペレットを得た。
得られた酵母ペレットにホルマリン(和光純薬工業株式会社製、062-01661)を4mL添加し、5分間静置後、遠心して上澄み液を除去し、エタノールを10mL添加して懸濁させることにより、固定化済みの酵母懸濁液を得た。
固定化済み酵母懸濁液を1.5mL遮光チューブ(ワトソン株式会社製、131-915BR)に500μL移し、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去し、1mM EDTA(TOCRIS社製、200-449-4)となるように調製したDPBS(1mM EDTA)を400μL添加し、ピペッティングでよく懸濁した後、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmで5分間遠心し、上澄み液を除去することにより酵母ペレットを得た。得られたペレットに1mg/mLに調製したエバンスブルー水溶液(和光純薬工業株式会社製、054-04061)を1mL添加し、ボルテックスを用いて5分間撹拌後、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmで5分間遠心し、上澄み液を除去し、DPBS(1mM EDTA)を添加し、ボルテックスで撹拌することにより染色済み酵母懸濁液を得た。
染色済みの酵母懸濁液を超音波ホモジナイザー(装置名:LUH150、ヤマト科学株式会社製)を用いて、出力:30%,10秒間分散処理し、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去し、DPBSを1,000μL添加して洗浄した。遠心分離、上澄み液の除去を計2回実施し、最後にDPBSで懸濁させて酵母懸濁インクを得た。
高濃度核酸試料系列をマイクロピペッター(エッペンドルフ株式会社製、3120000011)を用いて、図25に示す40ウェルプレートの各ウェルに2.5μLずつ充填した。
-分注及び細胞計測-
以下のようにして、液滴中の酵母数を計数(カウント)して、既知数の細胞がウェル内に格納されるプレートを作製した。具体的には、図12に示す液滴形成装置を用いて、図25に示す40ウェルプレートの各ウェルに、液滴吐出手段として圧電印加方式の吐出ヘッド(社内製)を用いて10Hzにて酵母懸濁インクを、酵母の細胞数が1、3、5、10、50となるように順次吐出した。
吐出された液滴中の酵母の受光手段としては高感度カメラ(東京インスツルメンツ株式会社製、sCMOS pco.edge)を用いて撮影した。光源としてはYAGレーザー(スペクトラ・フィジックス社製、Explorer ONE-532-200-KE)を用い、撮影した画像の細胞数計数手段として画像処理ソフトウェアであるImage Jを用いて画像処理して細胞数を計数し、細胞数既知プレートを作製した。
Tris-EDTA(TE) Bufferを用いてColE1 DNA(和光純薬工業株式会社製、312-00434)を5ng/μLとなるようにColE1/TEを調製し、ColE1/TEを用いてZymolyase(R) 100T(ナカライテスク株式会社製、07665-55)を1mg/mLとなるようにZymolyase溶液を調製した。
作製した細胞数既知プレートの各ウェルにZymolyase溶液を4μL添加し、37℃にて30分間インキュベートすることにより、細胞壁溶解(核酸抽出)後、95℃で2分間熱処理して、図25に示す検査デバイスを作製した。
充填された高濃度核酸試料系列は、以下の不確かさの要因によって特定分子数水準毎に一定の不確かさを有する。
要因(1):DNA600-G原液の濃度に関する不確かさ
本核酸試料は、同位体希釈質量分析法(IDMS)による核酸塩基測定と、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によるりん測定によって、総核酸の質量分率が決定された不確かさが値付けされている。
要因(2):希釈溶媒及び濃厚核酸試料溶液の密度の不確かさ
要因(3):重量計測時の電子天秤の不確かさ
要因(4):ポアソン分布に基づく不確かさ
要因(5):核酸試料充填時のピペットマン(エッペンドルフ株式会社製)の不確かさ
これらの要因の1つずつの不確かさを表2に示した。
不確かさの合成は、一般的な不確かさの合成手法により合成し、最終的に充填される特定分子数水準の平均特定分子数と不確かさを算出した。結果を表3に示した。
・2G:DNA600G原液の希釈液
・200M:2Gの希釈液
・20M:200Mの希釈液
・2M:20Mの希釈液
・200k:2Mの希釈液
・20k:200kの希釈液
・4k:20kの希釈液
・1k:4kの希釈液
・250:1kの希釈液
・70:250の希釈液
・NFW:UltraPure DNase/RNase-Free-Distilled Water(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、10977-015
表3の結果から、全ての核酸試料希釈系列はCV値20%以内の精度で充填されたことを確認できた。
充填された低濃度核酸試料系列は、以下の不確かさの要因によって特定分子数水準毎に一定の不確かさを有する。
要因i:吐出液滴毎の酵母数一致率に関する不確かさ
要因iに関する不確かさは、充填方法と同条件にて別容器に吐出し、その着弾液滴内の酵母数と狙いの酵母数の一致率に基づいて算出した。実験条件及び結果は以下の通りである。
充填容器として96穴平底プレート(ワトソン株式会社製、4846-96-FS)を用い、上記「低濃度核酸試料系列の充填」と同様の条件にて、圧電印加方式の吐出ヘッド(社内製)を用いた液滴吐出手段により1粒子を分注した後、蛍光顕微鏡(カールツァイス株式会社製、Axio Observer D1)にて488nmの励起光により蛍光顕微鏡観察を行った。結果を図26A及び図26Bに示した。各液滴内に存在する酵母数と狙いの酵母数(1粒子;特定分子数=1)の正誤を判定して一致率を求めた。結果を表4に示した。
以上より、各充填核酸試料の平均特定分子数及び不確かさを算出した。結果を表5に示した。なお、変動係数CV値は、不確かさを平均特定分子数で除することにより求めた。
<1> 少なくとも1つのウェルを有し、少なくとも1つの前記ウェルが特定分子数の増幅可能な試薬を含む検査デバイスの製造方法であって、
1つの前記ウェルにおける前記増幅可能な試薬の特定分子数が100以上の場合には前記増幅可能な試薬を希釈法により調製し、
1つの前記ウェルにおける前記増幅可能な試薬の特定分子数が100未満の場合には前記増幅可能な試薬を吐出法により調製する、
ことを特徴とする検査デバイスの製造方法である。
<2> 前記ウェルの数が2以上であり、一の前記ウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数と、他の前記ウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数とが互いに異なる2以上である前記<1>に記載の検査デバイスの製造方法である。
<3> 前記ウェルの数が2以上であり、一の前記ウェルにおける前記増幅可能な試薬の特定分子数が10N1であり、
他の前記ウェルにおける前記増幅可能な試薬の特定分子数が10N2である、(ただし、前記N1及び前記N2は互いに連続した整数である)前記<1>に記載の検査デバイスの製造方法である。
<4> 前記吐出法が、インクジェット吐出法である前記<1>から<3>のいずれかに記載の検査デバイスの製造方法である。
<5> 前記増幅可能な試薬が核酸である前記<4>に記載の検査デバイスの製造方法である。
<6> 前記核酸が細胞の核中の核酸に組み込まれた前記<5>に記載の検査デバイスの製造方法である。
<7> 前記細胞が酵母である前記<6>に記載の検査デバイスの製造方法である。
<8> 前記酵母がG0/G1期に同調して同調培養され、G1期で固定されている前記<7>に記載の検査デバイスの製造方法である。
2 基材
3 ウェル
4 増幅可能な試薬
5 密閉部材
Claims (4)
- 少なくとも2つのウェルを有し、少なくとも2つの前記ウェルが、それぞれ特定分子数が100以上の核酸と、特定分子数が100未満の核酸とを含む検査デバイスの製造方法であって、
1つの前記ウェルにおける前記核酸の特定分子数が100以上の場合には、前記核酸をマイクロピペットで充填する希釈法により調製する工程、及び
1つの前記ウェルにおける前記核酸の特定分子数が100未満の場合には、前記核酸を1細胞の酵母のゲノムDNAに対し1コピーの割合で相同組み換えにより導入し、相同組み換えにより核酸を導入した酵母を固定化した酵母懸濁液をインクジェット吐出法により前記ウェルに充填し、前記ウェルに充填された酵母の細胞壁を溶解して特定分子数の核酸を調製する工程、を含むことを特徴とする検査デバイスの製造方法。 - 一の前記ウェルにおける核酸の特定分子数と、他の前記ウェルにおける核酸の特定分子数とが互いに異なる2以上である請求項1に記載の検査デバイスの製造方法。
- 一の前記ウェルにおける前記核酸の特定分子数が10N1であり、
他の前記ウェルにおける前記核酸の特定分子数が10N2である、(ただし、前記N1及び前記N2は互いに連続した整数である)請求項1に記載の検査デバイスの製造方法。 - 前記酵母がG0/G1期に同調して同調培養され、G1期で固定されている請求項1から3のいずれかに記載の検査デバイスの製造方法。
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