JP7058411B2 - 検査デバイスの製造方法 - Google Patents

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本発明は、検査デバイスの製造方法に関する。
定量PCR法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の過程でDNA増幅に対応した蛍光量を適宜検出する技術であり、DNA、cDNA、RNAの初期量を間接的に定量する方法である。この定量には核酸試料系列とそれに対する測定値との関係を示した検量線が必要である。
正確な定量値を得るためには、各々の測定値のばらつきは変動係数CVにして20%以内に収まっており、核酸試料系列が3水準以上、同一水準の測定点数が5点以上必要であると報告されている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。このような核酸試料系列は、既知濃度の核酸試料の系列希釈法により作製される。
例えば、系列希釈法により核酸試料系列を作製し、複数の試料充填部が設けられた容器の該試料充填部に、異なる複数充填分子数水準の核酸試料が密封されているPCR反応プレート用容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、最近、標的核酸配列を導入した細胞をマニピュレーターによって1個ずつ分取することにより、極微量の核酸分子を計測・充填可能とする技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
本発明は、低分子数から高分子数の幅広い範囲において高い精度で測定可能な検査デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段としての本発明の検査デバイスの製造方法は、少なくとも1つのウェルを有し、少なくとも1つのウェルが特定分子数の増幅可能な試薬を含む検査デバイスの製造方法であって、
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100以上の場合には増幅可能な試薬を希釈法により調製し、
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100未満の場合には増幅可能な試薬を吐出法により調製する。
本発明によると、低分子数から高分子数の幅広い範囲において高い精度で測定可能な検査デバイスの製造方法を提供することができる。
図1は、特定分子数と変動係数CVとの関係を示すグラフである。 図2は、DNA複製済みの細胞の頻度と、蛍光強度との関係の一例を示すグラフである。 図3Aは、電磁バルブ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。 図3Bは、ピエゾ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。 図3Cは、図3Bにおけるピエゾ方式の吐出ヘッドの変形例の模式図である。 図4Aは、圧電素子に印加する電圧の一例を示す模式図である。 図4Bは、圧電素子に印加する電圧の他の一例を示す模式図である。 図5Aは、液滴の状態の一例を示す模式図である。 図5Bは、液滴の状態の一例を示す模式図である。 図5Cは、液滴の状態の一例を示す模式図である。 図6は、ウェル内に順次液滴を着弾させるための分注装置の一例を示す概略図である。 図7は、液滴形成装置の一例を示す模式図である。 図8は、図7の液滴形成装置の制御手段のハードウェアブロックを例示する図である。 図9は、図7の液滴形成装置の制御手段の機能ブロックを例示する図である。 図10は、液滴形成装置の動作の一例を示すフローチャートである。 図11は、液滴形成装置の変形例を示す模式図である。 図12は、液滴形成装置の他の変形例を示す模式図である。 図13Aは、飛翔する液滴に2個の蛍光粒子が含まれる場合を例示する図である。 図13Bは、飛翔する液滴に2個の蛍光粒子が含まれる場合を例示する図である。 図14は、粒子同士の重なりが生じない場合の輝度値Liと、実測される輝度値Leとの関係を例示する図である。 図15は、液滴形成装置の他の変形例を示す模式図である。 図16は、液滴形成装置の他の一例を示す模式図である。 図17は、マイクロ流路中を通過してきた細胞をカウントする方法の一例を示す模式図である。 図18は、吐出ヘッドのノズル部近傍の画像を取得する方法の一例を示す模式図である。 図19は、確率P(>2)と平均細胞数の関係を表すグラフである。 図20は、本発明の検査デバイスの一例を示す斜視図である。 図21は、本発明の検査デバイスの他の一例を示す斜視図である。 図22は、図21の側面図である。 図23は、本発明の検査デバイスの他の一例を示す斜視図である。 図24は、本発明の検査デバイスにおける増幅可能な試薬を充填するウェルの配置の一例を示す図である。 図25は、本発明の検査デバイスにおける増幅可能な試薬を充填するウェルの配置の他の一例を示す図である。 図26Aは、酵母の着弾液滴の蛍光顕微鏡像による位相差像である。 図26Bは、酵母の着弾液滴の蛍光顕微鏡像による蛍光像である。
(検査デバイスの製造方法)
本発明の検査デバイスの製造方法は、少なくとも1つのウェルを有し、少なくとも1つのウェルが特定分子数の増幅可能な試薬を含む検査デバイスの製造方法であって、
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100以上の場合には増幅可能な試薬を希釈法により調製し、
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100未満の場合には増幅可能な試薬を吐出法により調製し、更に必要に応じてその他の工程を含む。
本発明の検査デバイスの製造方法は、従来の核酸試料の系列希釈法による検量線を用いた未知濃度試料の定量では、極微量核酸の定量精度が著しく低下してしまうという知見に基づくものである。
このことは、系列希釈法により作製された核酸試料系列を充填する際のばらつき(充填精度)が原因であると考えられる。即ち、核酸試料のような溶質分子は溶媒分子に溶解した状態において、熱ゆらぎによって溶媒分子中を運動している。その際の分子の分布状態は一般的にポアソン分布に従うとされる。このことは、規定濃度の溶液をいかなる精度で量り取り、容器に充填した場合でも、充填された溶液中の分子数は分布、つまり、ばらつき(充填精度)を有することを示している。
ここで、ポアソン分布の標準偏差σを平均特定分子数(平均充填分子数)xで除した値を変動係数CVとすると、下記式1の関係式になる。
Figure 0007058411000001
上記関係式1から、平均特定分子数xごとの変動係数CVを求めると、表1及び図1に示すとおりである。なお、特定分子数(充填分子数)である場合の充填精度のCV値は図1から求めることができる。
Figure 0007058411000002
表1及び図1の結果から、例えば、ウェルに100分子数の核酸試料を充填する場合には、最終的に反応溶液中に充填される核酸試料の特定分子数(充填分子数)はその他の精度を無視しても、少なくとも10%の変動係数(CV値)を持つことがわかる。
また、本発明の検査デバイスの製造方法は、特許文献2に記載の技術では、標的核酸配列を導入した細胞をマニピュレーターによって1個ずつ手技により分取するため、核酸試料系列の広い濃度領域において、高い精度で核酸試料を充填できないという知見に基づくものである。
本発明の検査デバイスの製造方法は、少なくとも1つのウェルを有し、少なくとも1つのウェルが特定分子数の増幅可能な試薬を含む検査デバイスを製造する方法である。
<検査デバイス>
検査デバイスは、少なくとも1つのウェルを有し、識別手段、基材を有することが好ましく、更に必要に応じてその他の部材を有する。
本明細書において、増幅可能な試薬が含まれるデバイスを「検査デバイス」と称する。
<<ウェル>>
ウェルは、その形状、数、容積、材質、色などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ウェルの形状としては、増幅可能な試薬を配することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平底、丸底、U底、V底等の凹部、基板上の区画などが挙げられる。
ウェルの数は、少なくとも1つであり、2以上の複数であることが好ましく、5以上がより好ましく、50以上が更に好ましい。
ウェルの数が2以上である連結されたマイクロチューブもしくはマルチウェルプレートが好適に用いられる。
連結されたマイクロチューブとしては、例えば、2、3、4、6、8、12、16、24、又は48連マイクロチューブが挙げられる。
マルチウェルプレートとしては、例えば、24、48、96、384、又は1,536のウェルプレートが挙げられる。
ウェルの容積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一般的な核酸検査装置に用いられる試料量を考慮すると、10μL以上1,000μL以下が好ましい。
ウェルの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ふっ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
ウェルの色としては、例えば、透明、半透明、着色、完全遮光などが挙げられる。
<<基材>>
検査デバイスは、ウェルが基材に設けられたプレート状のものが好ましいが、マイクロチューブ、例えば、8連チューブ等の連結タイプのウェルチューブであってもよい。
基材としては、その材質、形状、大きさ、構造などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、半導体、セラミックス、金属、ガラス、石英ガラス、プラスチックスなどが挙げられる。これらの中でも、プラスチックスが好ましい。
プラスチックスとしては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ふっ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、板状、市販のウェルプレート形状などが好ましい。
基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造であっても複数層構造であっても構わない。
<<識別手段>>
検査デバイスは、少なくとも1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100未満であって、特定分子数である場合の充填精度のCV値の情報、少なくとも1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100以上であって、特定分子数である場合の充填精度のCV値の情報、及び不確かさの情報を識別可能な識別手段を有することが好ましい。
識別手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メモリ、ICチップ、バーコード、QRコード(登録商標)、Radio Frequency Identifier(以下、「RFID」とも称することがある)、色分け、印刷などが挙げられる。
識別手段を設ける位置及び識別手段の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
識別手段に記憶させる情報としては、例えば、増幅可能な試薬の特定分子数、分析結果(活性値、発光強度等)、増幅可能な試薬の数(例えば、細胞の数)、細胞の生死、特定塩基配列のコピー数、複数のウェルのうちどのウェルに増幅可能な試薬が充填されているのか、増幅可能な試薬の種類、測定日時、測定者の氏名などが挙げられる。
識別手段に記憶された情報は、各種読取手段を用いて読み取ることができ、例えば、識別手段がバーコードであれば読取手段としてバーコードリーダーが用いられる。
識別手段に情報を書き込む方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、手入力、ウェルに増幅可能な試薬を分注する際に増幅可能な試薬の個数を計数する液滴形成装置から直接データを書き込む方法、サーバに保存されているデータの転送、クラウドに保存されているデータの転送などが挙げられる。
<<その他の部材>>
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、密閉部材などが挙げられる。
-密閉部材-
検査デバイスは、ウェルへの異物混入は充填物の流出などを防ぐために、密閉部材を有することが好ましい。
密閉部材としては、少なくとも1つのウェルを密閉可能であり、1つ1つのウェルを個別に密閉乃至開封できるように、切り取り線により切り離し可能に構成することが好ましい。
密閉部材の形状としては、ウェル内壁径と一致するキャップ状、又はウェル開口部を被覆するフィルム状であることが好ましい。
密閉部材の材質としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
密閉部材としては、全てのウェルを一度に密閉可能なフィルム状であることが好ましい。また、使用者の誤使用を低減化できるように再開封が必要なウェルと不必要なウェルとの接着強度が異なるように構成されていることが好ましい。
本発明の検査デバイスは、少なくとも1つのウェルが特定分子数の増幅可能な試薬を含む。
特定分子数とは、ウェルに含まれる増幅可能な試薬の分子数であり、具体的には、ウェル内に含まれる増幅可能な試薬(例えば、核酸)のコピー数を意味する。
増幅可能な試薬としては、増幅可能な試薬であれば特に制限はなく、適宜使用することが可能であり、詳しくは後述するが、核酸が好適に使用できる。
検査デバイスは、増幅可能な試薬の特定分子数が100未満であるウェルと、増幅可能な試薬の特定分子数が100以上であるウェルと、を有する。
少なくとも1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100未満であって、特定分子数である場合の充填精度のCV値は20%以下であり、10%以下が好ましい。この範囲において、特定分子数が100未満であっても高い精度で増幅可能な試薬を充填することができる。
少なくとも1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100以上であって、特定分子数である場合の充填精度のCV値は20%以下が好ましい。この範囲において、特定分子数が100以上であっても高い精度で増幅可能な試薬を充填することができる。
ここで、変動係数とは、標準偏差σを平均特定分子数xで除した値であり、略称としてCV値が用いられる。
ウェルの数が2以上であり、一のウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数と、他のウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数とが互いに異なる2以上であることが好ましく、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の場合、1、3、5、7、9の場合、2、4、6、8、10の場合などが挙げられる。
ウェルの数が2以上であり、一のウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が10N1であり、他のウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が10N2である、(ただし、N1及びN2は互いに連続した整数である)ことが好ましく、例えば、1、10、100、1,000の場合、100、1,000、10,000、100,000、1,000,000の場合などが挙げられる。これにより、検査デバイスは、低分子数から高分子数までの広い範囲における検量線の作成が容易に行える。
検査デバイスは、更に、ウェルにおける増幅可能な試薬が特定分子数である場合の不確かさの情報を有することが好ましい。
「不確かさ」とは、「測定の結果に付随した、合理的に測定量に結びつけられ得る値のばらつきを特徴づけるパラメータ」であるとISO/IEC Guide99:2007[国際計量計測用語-基本及び一般概念並びに関連用語(VIM)]に定義されている。
ここで、「合理的に測定量に結びつけられ得る値」とは、測定量の真の値の候補を意味する。即ち、不確かさとは、測定対象の製造に係る操作、機器などに起因する測定結果のばらつきの情報を意味する。不確かさが大きいほど、測定結果として予想されるばらつきが大きくなる。
不確かさとしては、例えば、測定結果から得られる標準偏差であってもよく、真の値が所定の確率以上で含まれている値の幅として表す信頼水準の半分の値としてもよい。
不確かさを算出する方法としては、Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement(GUM:ISO/IEC Guide98-3)、及びJapan Accreditation Board Note 10 試験における測定の不確かさに関するガイドラインなどに基づき算出することができる。不確かさを算出する方法としては、例えば、測定値などの統計を用いたタイプA評価法と、校正証明書、製造者の仕様書、公表されている情報などから得られる不確かさの情報を用いたタイプB評価法の2つの方法を適用することができる
不確かさは、操作及び測定などの要因から得られる不確かさを全て標準不確かさに変換することにより、同じ信頼水準で表現することができる。標準不確かさとは、測定値から得られた平均値のばらつきを示す。
不確かさを算出する方法の一例としては、例えば、不確かさを引き起こす要因を抽出し、それぞれの要因の不確かさ(標準偏差)を算出する。さらに、算出したそれぞれの要因の不確かさを平方和法により合成し、合成標準不確かさを算出する。合成標準不確かさの算出において、平方和法を用いるため、不確かさを引き起こす要因の中で不確かさが十分に小さい要因については無視することができる。不確かさは合成標準不確かさを期待値で除した変動係数(CV値)を用いてもよい。
増幅可能な試薬の特定分子数が100未満の場合の不確かさの要因としては、例えば、飛翔液滴細胞数、細胞中DNA数、ウェル内細胞数、細胞が細胞懸濁液中で破壊されることにより増殖可能な試薬が細胞懸濁液中に混入することによるコンタミネーション(夾雑物の混入、以下、「コンタミ」と記載することがある)などが挙げられる。
増幅可能な試薬の特定分子数が100以上の場合の不確かさの要因としては、例えば、増幅可能な試薬の分子数、希釈溶媒及び増幅可能な試薬溶液の密度、重量計測時の電子天秤の操作、ポアソン分布に基づく不確かさ、増幅可能な試薬充填時のピペット操作などが挙げられる。
ウェルは、プライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを含むことが好ましい。
プライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、鋳型DNAに特異的な18塩基~30塩基の相補的塩基配列を持つ合成オリゴヌクレオチドであり、増幅したい領域を挟むようにフォワードプライマーとリバースプライマーとの2か所(一対)設定される。
増幅試薬としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、例えば、酵素としてDNAポリメラーゼ、基質として4種の塩基(dGTP、dCTP、dATP、dTTP)、Mg2+(2mMの塩化マグネシウム)、最適pH(pH7.5~9.5)を保持するバッファーなどが挙げられる。
検査デバイスは、増幅可能な試薬の分子数が0(ゼロ)のネガティブコントロールのウェル、増幅可能な試薬の分子数が10以上のポジティブコントロールのウェルを有していることが好ましい。
ネガティブコントロールで検出が検知されたとき、及びポジティブコントロールで不検出が検知されたときは、検出系(試薬や装置)に異常があることが示唆される。ネガティブコントロール及びポジティブコントロールを設けておくことにより、問題が生じたときにユーザーは直ちにそれに気づくことができ、測定を中止して問題がどこにあるかの点検を行うことができる。
本発明の検査デバイスの製造方法としては、以下の「希釈法による増幅可能な試薬の調製」と「吐出法による増幅可能な試薬の調製」とがあり、1つのプレート(ここではウェルが複数)において、両者を同時に行ってもよく、順次別々に行ってもよい。
<希釈法による増幅可能な試薬の調製>
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100以上の場合には増幅可能な試薬を希釈法により調製することが好ましい。この場合、増幅可能な試薬の特定分子数は、100以上であり、100~1010が好ましい。
希釈法としては、試料調製手段によって系列希釈を作製する方法などが挙げられる。
試料調製手段としては、例えば、ピペットを用いたマニュアル操作、マイクロピペッター(エッペンドルフ株式会社製)、ピペットマン(エッペンドルフ株式会社製)などが挙げられる。
増幅可能な試薬は核酸であることが好ましい。核酸は細胞の核中に組み込まれていることが好ましい。
-核酸-
核酸とは、プリン又はピリミジンから導かれる含窒素塩基、糖、及びリン酸が規則的に結合した高分子の有機化合物を意味し、核酸の断片、あるいはこれら核酸又はその断片のアナログなども含まれる。
核酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNA、RNA、cDNAなどが挙げられる。また、核酸としては、プラスミドも使用することができる。核酸は修飾又は変異されていてもよい。
核酸又は核酸断片のアナログとしては、核酸又は核酸断片に非核酸成分を結合させたもの、核酸又は核酸断片を蛍光色素や同位元素等の標識剤で標識したもの(例えば、蛍光色素や放射線同位体で標識されたプライマーやプローブ)、核酸又は核酸断片を構成するヌクレオチドの一部の化学構造を変化させたもの(例えば、ペプチド核酸など)などが挙げられる。これらは、生物から得られる天然物であっても又はそれらの加工物であってもよく、或いは、遺伝子組換技術を利用して製造されたものでも、また化学的に合成されたものでもよい。
核酸は、担体に担持された状態で扱うことが好ましい、担体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞などが挙げられる。
細胞としては、遺伝子導入を行うことができる細胞であれば特に制限はなく、目的応じて適宜選択することができ、前述の細胞種を問わず使用することができる。
核酸は、特定の塩基配列を有することが好ましい。特定とは、特に定められていることを意味する。
特定の塩基配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感染症検査に用いられる塩基配列、自然界には存在しない塩基配列、動物細胞由来の塩基配列、植物細胞由来の塩基配列などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
核酸は、使用する細胞由来の核酸であってもよく、遺伝子導入により導入された核酸であってもよい。核酸として、遺伝子導入により導入された核酸、及びプラスミドを使用する場合は、1細胞に1コピーの核酸が導入されていることを確認することが好ましい。1コピーの核酸が導入されていることの確認方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シーケンサー、PCR法、サザンブロット法などを用いて確認することができる。
遺伝子導入の方法としては、特定の核酸配列が狙いの場所に狙いの分子数導入できれば特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、相同組換え、CRISPR/Cas9、TALEN、Zinc finger nuclease、Flip-in、Jump-inなどが挙げられる。これらの中でも、酵母菌の場合は、効率の高さ、及び制御のしやすさの点から、相同組換えが好ましい。
-細胞-
細胞は、核酸を有し、生物体を形成する構造的及び機能的単位を意味する。
細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞を問わず、すべての細胞について使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
真核細胞としては、特に制限はなく、目的応じて適宜選択することができ、例えば、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、真菌、藻類、原生動物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、真菌が好ましい。
真菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カビ、酵母菌などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞周期を調節することができ、1倍体を使用することができる点から、酵母菌が好ましい。
細胞周期とは、細胞が増えるとき、細胞分裂が生じ、細胞分裂で生じた細胞(娘細胞)が再び細胞分裂を行う細胞(母細胞)となって新しい娘細胞を生み出す過程を意味する。
酵母菌としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、G0/G1期に同調して同調培養され、G1期で固定されているものが好ましい。
また、酵母菌としては、例えば、細胞周期をG1期に制御するフェロモン(性ホルモン)の感受性が増加したBar-1欠損酵母が好ましい。酵母菌がBar-1欠損酵母であると、細胞周期が制御できていない酵母菌の存在比率を低くすることができるため、ウェル内に収容された細胞の特定の核酸の数の増加等を防ぐことができる。
細胞としては、死細胞が好ましい。死細胞であると、分取後に細胞分裂が起こることを防ぐことができる。
細胞としては、光を受光したときに発光可能な細胞であることが好ましい。光を受光したときに発光可能な細胞であると、細胞の数を高精度に制御してウェル内に着弾させることができる。
受光とは、光を受けることを意味する。
光学センサとは、人間の目で見ることができる可視光線と、それより波長の長い近赤外線や短波長赤外線、熱赤外線領域までの光のいずれかの光をレンズで集め、対象物である細胞の形状などを画像データとして取得する受動型センサを意味する。
--光を受光したときに発光可能な細胞--
光を受光したときに発光可能な細胞としては、光を受光したときに発光可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、蛍光色素によって染色された細胞、蛍光タンパク質を発現した細胞、蛍光標識抗体により標識された細胞などが挙げられる。
細胞における蛍光色素による染色部位、蛍光タンパク質の発現部位、又は蛍光標識抗体による標識部位としては、特に制限はなく、細胞全体、細胞核、細胞膜などが挙げられる。
--蛍光色素--
蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類、クマリン類、ピレン類、シアニン類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類が好ましく、エオシン、エバンスブルー、トリパンブルー、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン123がより好ましい。
蛍光色素としては、市販品を用いることができ、市販品としては、例えば、商品名:EosinY(和光純薬工業株式会社製)、商品名:エバンスブルー(和光純薬工業株式会社製)、商品名:トリパンブルー(和光純薬工業株式会社製)、商品名:ローダミン6G(和光純薬工業株式会社製)、商品名:ローダミンB(和光純薬工業株式会社製)、商品名:ローダミン123(和光純薬工業株式会社製)などが挙げられる。
--蛍光タンパク質--
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、mPlum、PS-CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
--蛍光標識抗体--
蛍光標識抗体としては、蛍光標識されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CD4-FITC、CD8-PEなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
細胞の体積平均粒径としては、遊離状態において、10μm以下が好ましく、6μm以下が特に好ましい。体積平均粒径が、10μm以下であれば、インクジェット法に好適に用いることができる。
細胞の体積平均粒径としては、例えば、下記の測定方法で測定することができる。
作製した染色済み酵母分散液から10μL取り出してPMMA製プラスチックスライドに載せ、自動セルカウンター(商品名:Countess Automated Cell Counter、invitrogen社製)を用いることにより体積平均粒径を測定することができる。なお、細胞数も同様の測定方法により求めることができる。
細胞懸濁液における細胞の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5×10個/mL以上5×10個/mL以下が好ましく、5×10個/mL以上5×10個/mL以下がより好ましい。細胞数が、5×10個/mL以上5×10個/mL以下であると、吐出した液滴中に細胞を確実に含むことができる。
細胞数としては、体積平均粒径の測定方法と同様にして、自動セルカウンター(商品名:Countess Automated Cell Counter、invitrogen社製)を用いて測定することができる。
核酸を有する細胞の細胞数は、複数であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
<吐出法による増幅可能な試薬の調製>
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数が100未満の場合には増幅可能な試薬を吐出法により調製することが好ましい。この場合、増幅可能な試薬の特定分子数は、100未満であり、50以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。
吐出法としては、インクジェット吐出法などが挙げられる。
なお、増幅可能な試薬については、上記希釈法による増幅可能な試薬の調製で説明した内容と同様である。
ここで、吐出法による検査デバイスの製造方法は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含む細胞懸濁液を調製する細胞懸濁液調製工程と、細胞懸濁液を液滴として吐出することによりウェル内に液滴を順次着弾させる液滴着弾工程と、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数する細胞数計数工程と、ウェル内の細胞から核酸を抽出する核酸抽出工程と、を更に含み、細胞懸濁液調製工程、液滴着弾工程、及び細胞計数工程における推定する核酸の数の確からしさを算出する工程、出力工程、記録工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
<<細胞懸濁液調製工程>>
細胞懸濁液調製工程は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含む細胞懸濁液を調製する工程である。
溶剤とは、細胞を分散させるために用いる液体を意味する。
細胞懸濁液における懸濁とは、細胞が溶剤中に分散して存在する状態を意味する。
調製とは、作り出すことを意味する。
-細胞懸濁液-
細胞懸濁液は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含み、添加剤を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含む。
特定の核酸を有する複数の細胞については、上述したとおりである。
--溶剤--
溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、培養液、分離液、希釈液、緩衝液、有機物溶解液、電解質水溶液、無機塩水溶液、金属水溶液、及びこれらの混合液体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水、緩衝液が好ましく、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Tris-EDTA緩衝液(TE)がより好ましい。
--添加剤--
添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、核酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、細胞同士の凝集を防止し、連続吐出安定性を向上することができる。
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、添加量にもよるが、タンパク質を変性及び失活させない点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。
イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、脂肪酸ナトリウムが好ましく、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)がより好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルグリコシド、アルキルポリオキシエチレンエーテル(Brijシリーズ等)、オクチルフェノールエトキシレート(Triton Xシリーズ、Igepal CAシリーズ、Nonidet Pシリーズ、Nikkol OPシリーズ等)、ポリソルベート類(Tween20等のTweenシリーズなど)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルマルトシド、ショ糖脂肪酸エステル、グリコシド脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリソルベート類が好ましい。
界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、細胞懸濁液全量に対して、0.001質量%以上30質量%以下が好ましい。含有量が、0.001質量%以上であると、界面活性剤の添加による効果を得ることができ、30質量%以下であると、細胞の凝集を抑制することができるため、細胞懸濁液中の核酸の分子数を厳密に制御することができる。
核酸としては、検出対象の核酸の検出に影響しないものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ColE1 DNAなどが挙げられる。核酸であると、特定の塩基配列を有する核酸が、ウェルの壁面などに付着することを防ぐことができる。
--その他の材料--
その他の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、浸透圧調整剤、湿潤剤、分散剤などが挙げられる。
[細胞を分散する方法]
細胞を分散する方法としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビーズミル等のメディア方式、超音波ホモジナイザー等の超音波方式、フレンチプレス等の圧力差を利用する方式などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞へのダメージが少ないことから超音波方式がより好ましい。メディア方式では、解砕能力が強く、細胞膜や細胞壁を破壊する可能性やメディアがコンタミとして混入することがある。
[細胞のスクリーニング方法]
細胞のスクリーニング方法としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式分級、セルソーター、フィルタによるスクリーニングなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞へのダメージが少ないことから、セルソーター、フィルタによるスクリーニングが好ましい。
細胞は、細胞の細胞周期を測定することにより、細胞懸濁液に含まれる細胞数から特定の配列を有する核酸の数を推定することが好ましい。
細胞周期を測定するとは、細胞分裂による細胞数を数値化することを意味する。
核酸の数を推定するとは、細胞数から、核酸のコピー数を求めることを意味する。
計数対象が細胞数ではなく特定のDNA配列が何個入っているかであってもよい。通常は、特定のDNA配列は細胞1個につき1つの領域が入っているものを選択する、あるいは遺伝子組み換えにより導入するため、特定のDNA配列の数は細胞数と等しいと考えてよい。ただし、細胞は特定の周期で細胞分裂を起こすために細胞内で核酸の複製が行われる。細胞周期は細胞の種類によって異なるが、細胞懸濁液から所定量の溶液を抜き取り複数細胞の周期を測定することによって、細胞1個中に含まれる特定の核酸数に対する期待値及びその確からしさを算出することが可能である。これは、例えば、核染色した細胞をフローサイトメーターによって観測することによって可能である。
確からしさとは、いくつかの事象の生じる可能性がある時、特定の1つの事象が起こる可能性の程度を事前に予測して、その事象の起こる確率を意味する。
算出とは、計算して求める数値を出すことを意味する。
図2は、DNA複製済みの細胞の頻度と、蛍光強度との関係の一例を示すグラフである。図2に示すように、ヒストグラム上でDNAの複製有無により2つのピークが現れるため、DNA複製済みの細胞がどの程度の割合で存在するかを算出することが可能である。この算出結果から1細胞中に含まれる平均的なDNA数を算出することが可能であり、前述の細胞数計数結果に乗じることにより、核酸の推定数を算出することが可能である。
また、細胞懸濁液を作製する前に細胞周期を制御する処理を行うことが好ましく、前述のような複製が起きる前、又は後の状態に揃えることによって、特定の核酸の数を細胞数からより精度良く算出することが可能になる。
推定する核酸の数は、確からしさ(確率)を算出することが好ましい。確からしさ(確率)を算出することにより、これらの数値に基づき確からしさを分散又は標準偏差として表現して出力することが可能である。複数因子の影響を合算する場合には、一般的に用いられる標準偏差の二乗和平方根を用いることが可能である。例えば、因子として吐出した細胞数の正答率、細胞内のDNA数、吐出された細胞がウェル内に着弾する着弾率などを用いることができる。これらの中で影響の大きい項目を選択して算出することもできる。
<<液滴着弾工程>>
液滴着弾工程は、細胞懸濁液を液滴として吐出することによりウェル内に液滴を順次着弾させる工程である。
液滴とは、表面張力によりまとまった液体のかたまりを意味する。
吐出とは、細胞懸濁液を液滴として飛翔させることを意味する。
順次とは、次々に順序どおりにすることを意味する。
着弾とは、液滴をウェルに到達させることを意味する。
吐出手段としては、細胞懸濁液を液滴として吐出する手段(以下、「吐出ヘッド」とも称することがある)を好適に用いることができる。
細胞懸濁液を液滴として吐出する方式としては、例えば、オンデマンド方式、コンティニュアス方式などが挙げられる。これらの中でもコンティニュアス方式の場合、安定的な吐出状態に至るまでの空吐出、液滴量の調整、ウェル間を移動する際にも連続的に液滴形成を行い続ける等の理由から、用いる細胞懸濁液のデッドボリュームが多くなる傾向にある。本発明では細胞数を調整する観点からデッドボリュームによる影響を低減させることが好ましく、そのため上記2つの方式では、オンデマンド方式の方がより好適である。
オンデマンド方式としては、例えば、液体に圧力を加えることによって液体を吐出する圧力印加方式、加熱による膜沸騰によって液体を吐出するサーマル方式、静電引力によって液滴を引っ張ることによって液滴を形成する静電方式等の既知の複数の方式などが挙げられる。これらの中でも、以下の理由から、圧力印加方式が好ましい。
静電方式は、細胞懸濁液を保持して液滴を形成する吐出部に対向して電極を設置する必要がある。検査デバイスの製造方法では、液滴を受けるためのウェルが対向して配置されており、ウェルを有するプレートの構成の自由度を上げるため電極の配置は無いほうが好ましい。
サーマル方式は、局所的な加熱が発生するため生体材料である細胞への影響や、ヒーター部への焦げ付き(コゲーション)が懸念される。熱による影響は、含有物やウェルプレートの用途に依存するため、一概に除外する必要はないが、圧力印加方式は、サーマル方式よりヒーター部への焦げ付きの懸念がないという点から好ましい。
圧力印加方式としては、ピエゾ素子を用いて液体に圧力を加える方式、電磁バルブ等のバルブによって圧力を加える方式などが挙げられる。細胞懸濁液の液滴吐出に使用可能な液滴生成デバイスの構成例を図3A~図3Cに示す。
図3Aは、電磁バルブ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。電磁バルブ方式の吐出ヘッドは、電動機13a、電磁弁112、液室11a、細胞懸濁液300a、及びノズル111aを有する。
電磁バルブ方式の吐出ヘッドとしては、例えば、TechElan社のディスペンサなどを好適に用いることができる。
また、図3Bは、ピエゾ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。ピエゾ方式の吐出ヘッドは、圧電素子13b、液室11b、細胞懸濁液300b、及びノズル111bを有する。
ピエゾ方式の吐出ヘッドとしては、Cytena社のシングルセルプリンターなどを好適に用いることができる。
これらの吐出ヘッドのいずれも用いることが可能であるが、電磁バルブによる圧力印加方式では高速に繰り返し液滴を形成することができないため、検査デバイスの生成のスループットを上げるためにはピエゾ方式を用いることが好ましい。また、一般的な圧電素子13bを用いたピエゾ方式の吐出ヘッドでは、沈降によって細胞濃度のムラが発生することや、ノズル詰まりが生じることが問題として生じることがある。
このため、より好ましい構成として図3Cに示した構成などが挙げられる。図3Cは、図3Bにおける圧電素子を用いたピエゾ方式の吐出ヘッドの変形例の模式図である。図3Cの吐出ヘッドは、圧電素子13c、液室11c、細胞懸濁液300c、及びノズル111cを有する。
図3Cの吐出ヘッドでは、図示していない制御装置からの圧電素子13cに対して電圧印加することにより、紙面横方向に圧縮応力が加わりメンブレンを紙面上下方向に変形させることができる。
オンデマンド方式以外の方式としては、例えば、連続的に液滴を形成させるコンティニュアス方式などが挙げられる。コンティニュアス方式では、液滴を加圧してノズルから押し出す際に圧電素子やヒーターによって定期的なゆらぎを与え、それによって微小な液滴を連続的に作り出すことができる。更に、飛翔中の液滴の吐出方向を電圧印加によって制御することにより、ウェルに着弾させるか、回収部に回収するかを選ぶことも可能である。このような方式は、セルソーター、又はフローサイトメーターで用いられており、例えば、ソニー株式会社製の装置名:セルソーターSH800Zを用いることができる。
図4Aは、圧電素子に印加する電圧の一例を示す模式図である。また、図4Bは、圧電素子に印加する電圧の他の一例を示す模式図である。図4Aは、液滴を形成するための駆動電圧を示す。電圧(V、V、V)の強弱により、液滴を形成することができる。図4Bは、液滴の吐出を行わずに細胞懸濁液を撹拌するための電圧を示している。
液滴を吐出しない期間中に、液滴を吐出するほどには強くない複数のパルスを入力することによって、液質内の細胞懸濁液を撹拌することが可能であり、細胞沈降による濃度分布の発生を抑制することができる。
本発明において使用することができる吐出ヘッドの液滴形成動作に関して、以下に説明する。
吐出ヘッドは、圧電素子に形成された上下電極に、パルス状の電圧を印加することにより液滴を吐出することができる。図5A~図5Cは、それぞれのタイミングにおける液滴の状態を示す模式図である。
図5Aは、まず、圧電素子13cに電圧を印加することにより、メンブレン12cが急激に変形することによって、液室11c内に保持された細胞懸濁液とメンブレン12cとの間に高い圧力が発生し、この圧力によってノズル部から液滴が外に押し出される。
次に、図5Bに示すように、圧力が上方に緩和するまでの時間、ノズル部からの液押し出しが続き液滴が成長する。
最後に、図5Cに示すように、メンブレン12cが元の状態に戻る際に細胞懸濁液とメンブレン12cとの界面近傍の液圧力が低下し、液滴310’が形成される。
検査デバイスの製造方法では、ウェルが形成されたプレートを移動可能なステージ上に固定し、ステージの駆動と吐出ヘッドとからの液滴形成を組み合わせることにより、凹部に順次液滴を着弾させる。ここで、ステージの移動としてプレートを移動させる方法を示したが、当然のことながら吐出ヘッドを移動させてもよい。
プレートとしては、特に制限はなく、バイオ分野において一般的に用いられるウェルが形成されたものを用いることが可能である。
プレートにおけるウェルの数は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単数であってもよく、複数であってもよい。
図6は、プレートのウェル内に順次液滴を着弾させるための分注装置400の一例を示す概略図である。
図6に示すように、液滴を着弾させるための分注装置400は、液滴形成装置401と、プレート700と、ステージ800と、制御装置900とを有している。
分注装置400において、プレート700は、移動可能に構成されたステージ800上に配置されている。プレート700には液滴形成装置401の吐出ヘッドから吐出された液滴310が着滴する複数のウェル710(凹部)が形成されている。制御装置900は、ステージ800を移動させ、液滴形成装置401の吐出ヘッドとそれぞれのウェル710との相対的な位置関係を制御する。これにより、液滴形成装置401の吐出ヘッドからそれぞれのウェル710中に順次、蛍光染色細胞350を含む液滴310を吐出することができる。
制御装置900は、例えば、CPU、ROM、RAM、メインメモリ等を含む構成とすることができる。この場合、制御装置900の各種機能は、ROM等に記録されたプログラムがメインメモリに読み出されてCPUにより実行されることによって実現できる。ただし、制御装置900の一部又は全部は、ハードウェアのみにより実現されてもよい。又、制御装置900は、物理的に複数の装置等により構成されてもよい。
吐出する液滴としては、ウェル内に細胞懸濁液を着弾させる際に、複数の水準を得るように液滴をウェル内に着弾させることが好ましい。
複数の水準とは、標準となる複数の基準を意味する。
複数の水準としては、ウェル内に特定の核酸を有する複数の細胞が所定の濃度勾配を有することが好ましい。濃度勾配を有することにより、検量線用試薬として好適に使用することができる。複数の水準は、センサによって計数される値を用いて制御することができる。
基材としては、1穴マイクロチューブ、8連チューブ、96穴、384穴のウェルプレートなどを用いることが好ましいが、ウェルが複数である場合には、これらのプレートやマイクロチューブにおけるウェルには同じ個数の細胞を分注することも可能であるし、異なる水準の個数を入れることも可能である。また、細胞が含まれないウェルが存在していてもよい。特に核酸の量を定量的に評価するリアルタイムPCR装置やデジタルPCR装置の評価に用いるプレートを作成する際には、複数水準の数の核酸が分注されたものを用いることが好ましい。例えば、細胞(又は核酸)が、おおよそ1個、2個、4個、8個、16個、32個、64個の7水準で分注した検査デバイスを作製することが考えられる。このような検査デバイスを用いることによって、リアルタイムPCR装置やデジタルPCR装置の定量性、線形性、評価下限値などを調べることが可能である。
<<細胞数計数工程>>
細胞数計数工程は、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数する工程である。
センサとは、自然現象や人工物の機械的・電磁気的、熱的、音響的、又は化学的性質、或いはそれらにより示される空間情報・時間情報を、何らかの科学的原理を応用して、人間や機械が扱い易い別媒体の信号に置き換える装置を意味する。
計数とは、数を数えることを意味する。
細胞数計数工程としては、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数すれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、吐出前に細胞を観測する処理、着弾後の細胞をカウントする処理を含んでもよい。
液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数の計数としては、液滴が基材のウェルに確実に入ることが予測されるウェル開口部の直上の位置にあるタイミングにて液滴中の細胞を観測することが好ましい。
液滴中の細胞を観測する方法としては、例えば、光学的に検出する方法、電気的・磁気的に検出方法などが挙げられる。
-光学的に検出する方法-
図7、図11、及び図12を用いて、光学的に検出する方法に関して以下に述べる。
図7は、液滴形成装置401の一例を示す模式図である。図11、及び図12は、液滴形成装置401A、401Bの他の一例を示す模式図である。図7に示すように、液滴形成装置401は、吐出ヘッド(液滴吐出手段)10と、駆動手段20と、光源30と、受光素子60と、制御手段70とを有する。
図7では、細胞懸濁液として細胞を特定の色素によって蛍光染色した後に所定の溶液に分散した液を用いており、吐出ヘッドから形成した液滴に光源から発せられる特定の波長を有する光を照射し細胞から発せられる蛍光を受光素子によって検出することによって計数を行う。このとき、蛍光色素によって細胞を染色する方法に加え、細胞中に元々含まれる分子が発する自家蛍光を利用してもよいし、細胞に蛍光タンパク質(例えば、GFP(Green Fluorescent Protein))を生産するための遺伝子を予め導入しておき細胞が蛍光を発するようにしておいてもよい。
光を照射とは、光をあてることを意味する。
吐出ヘッド10は、液室11と、メンブレン12と、駆動素子13とを有しており、蛍光染色細胞350を懸濁した細胞懸濁液300を液滴として吐出することができる。
液室11は、蛍光染色細胞350を懸濁した細胞懸濁液300を保持する液体保持部であり、下面側には貫通孔であるノズル111が形成されている。液室11は、例えば、金属やシリコン、セラミック等から形成することができる。蛍光染色細胞350としては、蛍光色素によって染色された無機微粒子や有機ポリマー粒子などが挙げられる。
メンブレン12は、液室11の上端部に固定された膜状部材である。メンブレン12の平面形状は、例えば、円形とすることができるが、楕円状や四角形等としてもよい。
駆動素子13は、メンブレン12の上面側に設けられている。駆動素子13の形状は、メンブレン12の形状に合わせて設計することができる。例えば、メンブレン12の平面形状が円形である場合には、円形の駆動素子13を設けることが好ましい。
駆動素子13に駆動手段20から駆動信号を供給することにより、メンブレン12を振動させることができる。メンブレン12の振動により、蛍光染色細胞350を含有する液滴310を、ノズル111から吐出させることができる。
駆動素子13として圧電素子を用いる場合には、例えば、圧電材料の上面及び下面に電圧を印加するための電極を設けた構造とすることができる。この場合、駆動手段20から圧電素子の上下電極間に電圧を印加することによって紙面横方向に圧縮応力が加わり、メンブレン12を紙面上下方向に振動させることができる。圧電材料としては、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を用いることができる。この他にも、ビスマス鉄酸化物、ニオブ酸金属物、チタン酸バリウム、或いはこれらの材料に金属や異なる酸化物を加えたもの等、様々な圧電材料を用いることができる。
光源30は、飛翔中の液滴310に光Lを照射する。なお、飛翔中とは、液滴310が液滴吐出手段10から吐出されてから、着滴対象物に着滴するまでの状態を意味する。飛翔中の液滴310は、光Lが照射される位置では略球状となっている。又、光Lのビーム形状は略円形状である。
ここで、液滴310の直径に対し、光Lのビーム直径が10倍~100倍程度であることが好ましい。これは、液滴310の位置ばらつきが存在する場合においても、光源30からの光Lを確実に液滴310に照射するためである。
ただし、液滴310の直径に対し、光Lのビーム直径が100倍を大きく超えることは好ましくない。これは、液滴310に照射される光のエネルギー密度が下がるため、光Lを励起光として発する蛍光Lfの光量が低下し、受光素子60で検出し難くなるからである。
光源30から発せられる光Lはパルス光であることが好ましく、例えば、固体レーザー、半導体レーザー、色素レーザー等が好適に用いられる。光Lがパルス光である場合のパルス幅は10μs以下が好ましく、1μs以下がより好ましい。単位パルス当たりのエネルギーとしては、集光の有無等、光学系に大きく依存するが、概ね0.1μJ以上が好ましく、1μJ以上がより好ましい。
受光素子60は、飛翔中の液滴310に蛍光染色細胞350が含有されていた場合に、蛍光染色細胞350が光Lを励起光として吸収して発する蛍光Lfを受光する。蛍光Lfは、蛍光染色細胞350から四方八方に発せられるため、受光素子60は蛍光Lfを受光可能な任意の位置に配置することができる。この際、コントラストを向上するため、光源30から出射される光Lが直接入射しない位置に受光素子60を配置することが好ましい。
受光素子60は、蛍光染色細胞350から発せられる蛍光Lfを受光できる素子であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液滴に特定の波長を有する光を照射して液滴内の細胞からの蛍光を受光する光学センサが好ましい。受光素子60としては、例えば、フォトダイオード、フォトセンサ等の1次元素子が挙げられるが、高感度な測定が必要な場合には、光電子増倍管やアバランシェフォトダイオードを用いることが好ましい。受光素子60として、例えば、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、ゲートCCD等の2次元素子を用いてもよい。
なお、光源30が発する光Lと比較して蛍光染色細胞350の発する蛍光Lfが弱いため、受光素子60の前段(受光面側)に光Lの波長域を減衰させるフィルタを設置してもよい。これにより、受光素子60において、非常にコントラストの高い蛍光染色細胞350の画像を得ることができる。フィルタとしては、例えば、光Lの波長を含む特定波長域を減衰させるノッチフィルタ等を用いることができる。
また、前述のように、光源30から発せられる光Lはパルス光であることが好ましいが、光源30から発せられる光Lを連続発振の光としてもよい。この場合には、連続発振の光が飛翔中の液滴310に照射されるタイミングで受光素子60が光を取り込み可能となるように制御し、受光素子60に蛍光Lfを受光させることが好ましい。
制御手段70は、駆動手段20及び光源30を制御する機能を有している。また、制御手段70は、受光素子60が受光した光量に基づく情報を入手し、液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数(ゼロである場合も含む)を計数する機能を有している。
以下、図8~図10を参照し、制御手段70の動作を含む液滴形成装置401の動作について説明する。
図8は、図7の液滴形成装置の制御手段のハードウェアブロックを例示する図である。図9は、図7の液滴形成装置の制御手段の機能ブロックを例示する図である。図10は、液滴形成装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、制御手段70は、CPU71と、ROM72と、RAM73と、I/F74と、バスライン75とを有している。CPU71、ROM72、RAM73、及びI/F74は、バスライン75を介して相互に接続されている。
CPU71は、制御手段70の各機能を制御する。記憶手段であるROM72は、CPU71が制御手段70の各機能を制御するために実行するプログラムや、各種情報を記憶している。記憶手段であるRAM73は、CPU71のワークエリア等として使用される。また、RAM73は、所定の情報を一時的に記憶することができる。I/F74は、液滴形成装置401を他の機器等と接続するためのインターフェイスである。液滴形成装置401は、I/F74を介して、外部ネットワーク等と接続されてもよい。
図9に示すように、制御手段70は、機能ブロックとして、吐出制御手段701と、光源制御手段702と、細胞数計数手段(細胞数検知手段)703とを有している。
図9及び図10を参照しながら、液滴形成装置401の細胞数計数について説明する。
まず、ステップS11において、制御手段70の吐出制御手段701は、駆動手段20に吐出の指令を出す。吐出制御手段701から吐出の指令を受けた駆動手段20は、駆動素子13に駆動信号を供給してメンブレン12を振動させる。メンブレン12の振動により、蛍光染色細胞350を含有する液滴310が、ノズル111から吐出される。
次に、ステップS12において、制御手段70の光源制御手段702は、液滴310の吐出に同期して(駆動手段20から液滴吐出手段10に供給される駆動信号に同期して)光源30に点灯の指令を出す。これにより、光源30が点灯し、飛翔中の液滴310に光Lを照射する。
なお、ここで、同期するとは、液滴吐出手段10による液滴310の吐出と同時に(駆動手段20が液滴吐出手段10に駆動信号を供給するのと同時に)発光することではなく、液滴310が飛翔して所定位置に達したときに液滴310に光Lが照射されるタイミングで、光源30が発光することを意味する。つまり、光源制御手段702は、液滴吐出手段10による液滴310の吐出(駆動手段20から液滴吐出手段10に供給される駆動信号)に対して、所定時間だけ遅延して発光するように光源30を制御する。
例えば、液滴吐出手段10に駆動信号を供給した際に吐出する液滴310の速度vを予め測定しておく。そして、測定した速度vに基づいて液滴310が吐出されてから所定位置まで到達する時間tを算出し、液滴吐出手段10に駆動信号を供給するタイミングに対して、光源30が光を照射するタイミングをtだけ遅延させる。これにより、良好な発光制御が可能となり、光源30からの光を確実に液滴310に照射することができる。
次に、ステップS13において、制御手段70の細胞数計数手段703は、受光素子60からの情報に基づいて、液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数(ゼロである場合も含む)を計数する。ここで、受光素子60からの情報とは、蛍光染色細胞350の輝度値(光量)や面積値である。
細胞数計数手段703は、例えば、受光素子60が受光した光量と予め設定された閾値とを比較して、蛍光染色細胞350の個数を計数することができる。この場合には、受光素子60として1次元素子を用いても2次元素子を用いても構わない。
受光素子60として2次元素子を用いる場合は、細胞数計数手段703は、受光素子60から得られた2次元画像に基づいて、蛍光染色細胞350の輝度値或いは面積を算出するための画像処理を行う手法を用いてもよい。この場合、細胞数計数手段703は、画像処理により蛍光染色細胞350の輝度値或いは面積値を算出し、算出された輝度値或いは面積値と、予め設定された閾値とを比較することにより、蛍光染色細胞350の個数を計数することができる。
なお、蛍光染色細胞350は、細胞や染色細胞であってもよい。染色細胞とは、蛍光色素によって染色された細胞、又は、蛍光タンパク質を発現可能な細胞を意味する。
染色細胞において、蛍光色素としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フルオレセイン類、ローダミン類、クマリン類、ピレン類、シアニン類、アゾ類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、エオシン、エバンスブルー、トリパンブルー、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン123がより好ましい。
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami-Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP-m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed-Express、DsRed2、TagRFP、DsRed-Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、mPlum、PS-CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このように、液滴形成装置401では、蛍光染色細胞350を縣濁した細胞懸濁液300を保持する液滴吐出手段10に、駆動手段20から駆動信号を供給して、蛍光染色細胞350を含有する液滴310を吐出させ、飛翔中の液滴310に光源30から光Lを照射する。そして、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350が光Lを励起光として蛍光Lfを発し、蛍光Lfを受光素子60が受光する。更に、受光素子60からの情報に基づいて、細胞数計数手段703が、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数を計数(カウント)する。
つまり、液滴形成装置401では、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数を実際にその場で観察するため、蛍光染色細胞350の個数の計数精度を従来よりも向上することが可能となる。又、飛翔する液滴310に含有された蛍光染色細胞350に光Lを照射して蛍光Lfを発光させて蛍光Lfを受光素子60で受光するため、高いコントラストで蛍光染色細胞350の画像を得ることが可能となり、蛍光染色細胞350の個数の誤計数の発生頻度を低減できる。
図11は、図7の液滴形成装置401の変形例を示す模式図である。図11に示すように、液滴形成装置401Aは、受光素子60の前段にミラー40を配置した点が、液滴形成装置401(図7参照)と相違する。なお、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
このように、液滴形成装置401Aでは、受光素子60の前段にミラー40を配置したことにより、受光素子60のレイアウトの自由度を向上することができる。
例えば、ノズル111と着滴対象物を近づけた際に、図7のレイアウトでは着滴対象物と液滴形成装置401の光学系(特に受光素子60)との干渉が発生するおそれがあるが、図11のレイアウトにすることで、干渉の発生を回避することができる。
図11に示すように、受光素子60のレイアウトを変更することにより、液滴310が着滴する着滴対象物とノズル111との距離(ギャップ)を縮めることが可能となり、着滴位置のばらつきを抑制することができる。その結果、分注の精度を向上することが可能となる。
図12は、図7の液滴形成装置401の他の変形例を示す模式図である。図12に示すように、液滴形成装置401Bは、蛍光染色細胞350から発せられる蛍光Lfを受光する受光素子60に加え、蛍光染色細胞350から発せられる蛍光Lfを受光する受光素子61を設けた点が、液滴形成装置401(図7参照)と相違する。なお、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
ここで、蛍光Lf及びLfは、蛍光染色細胞350から四方八方に発せられる蛍光の一部を示している。受光素子60及び61は、蛍光染色細胞350から異なる方向に発せられる蛍光を受光できる任意の位置に配置することができる。なお、蛍光染色細胞350から異なる方向に発せられる蛍光を受光できる位置に3つ以上の受光素子を配置してもよい。又、各受光素子は同一仕様としてもよいし、異なる仕様としてもよい。
受光素子が1つであると、飛翔する液滴310に複数個の蛍光染色細胞350が含まれる場合に、蛍光染色細胞350同士が重なることに起因して、細胞数計数手段703が液滴310に含有された蛍光染色細胞350の個数を誤計数する(カウントエラーが発生する)おそれがある。
図13A及び図13Bは、飛翔する液滴に2個の蛍光染色細胞が含まれる場合を例示する図である。例えば、図13Aに示すように、蛍光染色細胞350と350とに重なりが発生する場合や、図13Bに示すように、蛍光染色細胞350と350とに重なりが発生しない場合があり得る。受光素子を2つ以上設けることで、蛍光染色細胞が重なる影響を低減することが可能である。
前述のように、細胞数計数手段703は、画像処理により蛍光粒子の輝度値或いは面積値を算出し、算出された輝度値或いは面積値と、予め設定された閾値とを比較することにより、蛍光粒子の個数を計数することができる。
受光素子を2つ以上設置する場合,それぞれの受光素子から得られる輝度値或いは面積値のうち、最大値を示すデータを採択することで、カウントエラーの発生を抑制することが可能である。これに関して、図14を参照して、より詳しく説明する。
図14は、粒子同士の重なりが生じない場合の輝度値Liと、実測される輝度値Leとの関係を例示する図である。図14に示すように、液滴内の粒子同士の重なりがない場合には、Le=Liとなる。例えば、細胞1個の輝度値をLuとすると、細胞数/滴=1個の場合はLe=Luであり、細胞数/滴=n個の場合はLe=nLuである(n:自然数)。
しかし、実際には、nが2以上の場合には細胞同士の重なりが発生し得るため、実測される輝度値はLu≦Le≦nLu(図14の網掛部分)となる。そこで、細胞数/滴=n個の場合、例えば閾値を(nLu-Lu/2)≦閾値<(nLu+Lu/2)と設定することができる。そして、複数の受光素子を設置する場合、それぞれの受光素子から得られたデータのうち最大値を示すものを採択することで、カウントエラーの発生を抑制することが可能となる。なお、輝度値に代えて面積値を用いてもよい。
また、受光素子を複数設置する場合、得られる複数の形状データを基に、細胞数を推定するアルゴリズムにより細胞数を決定づけてもよい。
このように、液滴形成装置401Bでは、蛍光染色細胞350が異なる方向に発した蛍光を受光する複数の受光素子を有しているため、蛍光染色細胞350の個数の誤計数の発生頻度を更に低減できる。
図15は、図7の液滴形成装置401の他の変形例を示す模式図である。図15に示すように、液滴形成装置401Cは、液滴吐出手段10が液滴吐出手段10Cに置換された点が、液滴形成装置401(図7参照)と相違する。なお、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
液滴吐出手段10Cは、液室11Cと、メンブレン12Cと、駆動素子13Cとを有している。液室11Cは、液室11C内を大気に開放する大気開放部115を上部に有しており、細胞懸濁液300中に混入した気泡を大気開放部115から排出可能に構成されている。
メンブレン12Cは、液室11Cの下端部に固定された膜状部材である。メンブレン12Cの略中心には貫通孔であるノズル121が形成されており、液室11Cに保持された細胞懸濁液300はメンブレン12Cの振動によりノズル121から液滴310として吐出される。メンブレン12Cの振動の慣性により液滴310を形成するため、高表面張力(高粘度)の細胞懸濁液300でも吐出が可能である。メンブレン12Cの平面形状は、例えば、円形とすることができるが、楕円状や四角形等としてもよい。
メンブレン12Cの材質としては、特に限定はないが、柔らか過ぎるとメンブレン12Cが簡単に振動し、吐出しないときに直ちに振動を抑えることが困難であるため、ある程度の硬さがある材質を用いることが好ましい。メンブレン12Cの材質としては、例えば、金属材料やセラミック材料、ある程度硬さのある高分子材料等を用いることができる。
特に、蛍光染色細胞350として細胞を用いる際には、細胞やタンパク質に対する付着性の低い材料であることが好ましい。細胞の付着性は一般的に材質の水との接触角に依存性があると言われており、材質の親水性が高い又は疎水性が高いときには細胞の付着性が低い。親水性の高い材料としては各種金属材料やセラミック(金属酸化物)を用いることが可能であり、疎水性が高い材料としてはフッ素樹脂等を用いることが可能である。
このような材料の他の例としては、ステンレス鋼やニッケル、アルミニウム等や、二酸化ケイ素、アルミナ、ジルコニア等を挙げることができる。これ以外にも、材料表面をコーティングすることで細胞接着性を低下させることも考えられる。例えば、材料表面を前述の金属又は金属酸化物材料でコーティングすることや、細胞膜を模した合成リン脂質ポリマー(例えば、日油株式会社製、Lipidure)によってコーティングすることが可能である。
ノズル121は、メンブレン12Cの略中心に実質的に真円状の貫通孔として形成されていることが好ましい。この場合、ノズル121の径としては特に限定はないが、蛍光染色細胞350がノズル121に詰まることを避けるため、蛍光染色細胞350の大きさの2倍以上とすることが好ましい。蛍光染色細胞350が例えば動物細胞、特にヒトの細胞である場合、ヒトの細胞の大きさは一般的に5μm~50μm程度であるため、ノズル121の径を、使用する細胞に合わせて10μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましい。
一方で、液滴が大きくなり過ぎると微小液滴を形成するという目的の達成が困難となるため、ノズル121の径は200μm以下であることが好ましい。つまり、液滴吐出手段10Cにおいては、ノズル121の径は、典型的には10μm~200μmの範囲となる。
駆動素子13Cは、メンブレン12Cの下面側に形成されている。駆動素子13Cの形状は、メンブレン12Cの形状に合わせて設計することができる。例えば、メンブレン12Cの平面形状が円形である場合には、ノズル121の周囲に平面形状が円環状(リング状)の駆動素子13Cを形成することが好ましい。駆動素子13Cの駆動方式は、駆動素子13と同様とすることができる。
駆動手段20は、メンブレン12Cを振動させて液滴310を形成する吐出波形と、液滴310を形成しない範囲でメンブレン12Cを振動させる撹拌波形とを駆動素子13Cに選択的に(例えば、交互に)付与することができる。
例えば、吐出波形及び撹拌波形を何れも矩形波とし、吐出波形の駆動電圧よりも撹拌波形の駆動電圧を低くすることで、撹拌波形の印加により液滴310が形成されないようにすることができる。つまり、駆動電圧の高低により、メンブレン12Cの振動状態(振動の程度)を制御することができる。
液滴吐出手段10Cでは、駆動素子13Cがメンブレン12Cの下面側に形成されているため、駆動素子13Cによりメンブレン12が振動すると、液室11Cの下部方向から上部方向への流れを生じさせることが可能である。
この時、蛍光染色細胞350の動きは下から上への運動となり、液室11C内で対流が発生して蛍光染色細胞350を含有する細胞懸濁液300の撹拌が起きる。液室11Cの下部方向から上部方向への流れにより、沈降、凝集した蛍光染色細胞350が液室11Cの内部に均一に分散する。
つまり、駆動手段20は、吐出波形を駆動素子13Cに加え、メンブレン12Cの振動状態を制御することにより、液室11Cに保持された細胞懸濁液300をノズル121から液滴310として吐出させることができる。又、駆動手段20は、撹拌波形を駆動素子13Cに加え、メンブレン12Cの振動状態を制御することにより、液室11Cに保持された細胞懸濁液300を撹拌することができる。なお、撹拌時には、ノズル121から液滴310は吐出されない。
このように、液滴310を形成していない間に細胞懸濁液300を撹拌することにより、蛍光染色細胞350がメンブレン12C上に沈降、凝集することを防ぐと共に、蛍光染色細胞350を細胞懸濁液300中にムラなく分散させることができる。これにより、ノズル121の詰まり、及び吐出する液滴310中の蛍光染色細胞350の個数のばらつきを抑えることが可能となる。その結果、蛍光染色細胞350を含有する細胞懸濁液300を、長時間連続して安定的に液滴310として吐出することができる。
また、液滴形成装置401Cにおいて、液室11C内の細胞懸濁液300中に気泡が混入する場合がある。この場合でも、液滴形成装置401Cでは、液室11Cの上部に大気開放部115が設けられているため、細胞懸濁液300中に混入した気泡を、大気開放部115を通じて外気に排出できる。これによって、気泡排出のために大量の液を捨てることなく、連続して安定的に液滴310を形成することが可能となる。
即ち、ノズル121の近傍に気泡が混入した場合や、メンブレン12C上に多数の気泡が混入した場合には吐出状態に影響を及ぼすため、長い時間安定的に液滴の形成を行うためには、混入した気泡を排出する必要がある。通常、メンブレン12C上に混入した気泡は、自然に若しくはメンブレン12Cの振動によって上方に移動するが、液室11Cには大気開放部115が設けられているため、混入した気泡を大気開放部115から排出可能となる。そのため、液室11Cに気泡が混入しても不吐出が発生することを防止可能となり、連続して安定的に液滴310を形成することができる。
なお、液滴を形成しないタイミングで、液滴を形成しない範囲でメンブレン12Cを振動させ、積極的に気泡を液室11Cの上方に移動させてもよい。
-電気的又は磁気的な検出する方法-
電気的又は磁気的な検出する方法としては、図16に示すように、液室11’から細胞懸濁液を液滴310’としてプレート700’に吐出する吐出ヘッドの直下に、細胞計数のためのコイル200がセンサとして設置されている。細胞は特定のタンパク質によって修飾され細胞に接着することが可能な磁気ビーズによって覆うことにより、磁気ビーズが付着した細胞がコイル中を通過する際に発生する誘導電流によって、飛翔液滴中の細胞の有無を検出することが可能である。一般的に、細胞はその表面に細胞特有のタンパク質を有しており、このタンパク質に接着することが可能な抗体を磁気ビーズに修飾することによって、細胞に磁気ビーズを付着させることが可能である。このような磁気ビーズとしては既製品を用いることが可能であり、例えば、株式会社ベリタス製のDynabeads(登録商標)が利用可能である。
[吐出前に細胞を観測する処理]
吐出前に細胞を観測する処理としては、図17に示すマイクロ流路250中を通過してきた細胞350’をカウントする方法や、図18に示す吐出ヘッドのノズル部近傍の画像を取得する方法などが挙げられる。図17はセルソーター装置において用いられている方法であり、例えば、ソニー株式会社製のセルソーターSH800Zを用いることができる。図17では、マイクロ流路250中に光源260からレーザー光を照射して散乱光や蛍光を、集光レンズ265を用いて検出器255により検出することによって細胞の有無や、細胞の種類を識別しながら液滴を形成することが可能である。本方法を用いることによって、マイクロ流路250中に通過した細胞の数から所定のウェル中に着弾した細胞の数を推測することが可能である。
また、図18に示す吐出ヘッド10’としては、Cytena社製のシングルセルプリンターを用いることが可能である。図18では、吐出前において、ノズル部近傍をレンズ265’を介して、画像取得部255’において画像取得した結果からノズル部近傍の細胞350”が吐出されたと推定することや、吐出前後の画像から差分により吐出されたと考えられる細胞の数を推定することによって、所定のウェル中に着弾した細胞の数を推測することができる。図17に示すマイクロ流路中を通過してきた細胞をカウントする方法では、液滴が連続的に生成されるのに対して、図18は、オンデマンドで液滴形成が可能であるため、より好ましい。
[着弾後の細胞をカウントする処理]
着弾後の細胞をカウントする処理としては、プレートにおけるウェルを蛍光顕微鏡などにより観測することにより、蛍光染色した細胞を検出する方法を取ることが可能である。この方法は、例えば、Sangjun et al.,PLoS One,Volume 6(3),e17455などに記載されている。
液滴の吐出前及び着弾後に、細胞を観測する方法では、以下に述べる問題があるが、生成するプレートの種類によっては吐出中の液滴内の細胞を観測することがもっとも好ましい。吐出前に細胞を観測する手法においては、流路中を通過した細胞数や吐出前(及び吐出後)の画像観測から、着弾したと思われる細胞数を計数するため、実際にその細胞が吐出されたのかどうかの確認は行われておらず、思いがけないエラーが発生することがある。例えば、ノズル部が汚れていることにより液滴が正しく吐出せず、ノズルプレートに付着し、それに伴い液滴中の細胞も着弾しない、といったケースが発生する。他にも、ノズル部の狭い領域に細胞が残留することや、細胞が吐出動作によって想定以上に移動し観測範囲外に出てしまうといった問題の発生も起こりうる。
また、着弾後のプレート上の細胞を検出する手法においても問題がある。まず、プレートとして顕微鏡観察が可能であるものを準備する必要がある。観測可能なプレートとして、一般的に底面が透明かつ平坦なプレート、特に底面がガラス製となっているプレートが用いられるが、特殊なプレートとなってしまうため、一般的なウェルを使用することができなくなる問題がある。また、細胞数が数十個など多いときには、細胞の重なりが発生するため正確な計数ができなくなる問題もある。そのため、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサ及び細胞数計数手段によって計数することに加えて、吐出前に細胞を観測する処理、着弾後の細胞をカウントする処理を行うことが好ましい。
また、受光素子としては1又は少数の受光部を有する受光素子、例えば、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子増倍管を用いることが可能であるし、その他に2次元アレイ状に受光素子が設けられたCCD(Charge Copuled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、ゲートCCD等の二次元センサを用いることも可能である。
1又は少数の受光部を有する受光素子を用いる際には、蛍光強度から細胞が何個入っているかを予め用意された検量線を用いて決定することも考えられるが、主として飛翔液滴中の細胞有無を二値的に検出することが行われる。細胞懸濁液の細胞濃度が十分に低く、液滴中に細胞が1個又は0個しかほぼ入らない状態で吐出を行う際には、二値的な検出で十分精度よく計数を行うことが可能である。細胞懸濁液中で細胞はランダムに配置していることを前提とすれば、飛翔液滴中の細胞数はポアソン分布に従うと考えられ、液滴中に細胞数が2個以上入る確率P(>2)は下記式(1)で表される。図19は、確率P(>2)と平均細胞数の関係を表すグラフである。ここで、λは液滴中の平均細胞数であり、細胞懸濁液中の細胞濃度に吐出液滴の体積を乗じたものになる。
P(>2)=1-(1+λ)×e-λ ・・・ 式(1)
二値的な検出で細胞計数を行う場合には、確率P(>2)が十分小さい値であることが精度を確保する上では好ましく、確率P(>2)が1%以下となるλ<0.15であることが好ましい。光源としては、細胞の蛍光を励起できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水銀ランプやハロゲンランプなどの一般的なランプに特定の波長を照射するようにフィルタをかけたものや、LED(Light Emitting Diode)、レーザーなどを用いることが可能である。ただし、特に1nL以下の微小な液滴を形成するときには、狭い領域に高い光強度を照射する必要があるため、レーザーを用いるのが好ましい。レーザー光源としては、固体レーザーやガスレーザー、半導体レーザーなど一般的に知られている多種のレーザーを用いることが可能である。また、励起光源としては、液滴が通過する領域を連続的に照射したものであってもよいし、液滴の吐出に同期して液滴吐出動作に対して所定時間遅延を付けたタイミングでパルス的に照射するものであってもよい。
<<細胞懸濁液調製工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程における推定する核酸の数の確からしさを算出する工程>>
細胞懸濁液調製工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程における推定する核酸の数の確からしさを算出する工程は、細胞懸濁液調製工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程それぞれの工程における確からしさを算出する工程である。
当該推定する核酸の数の確からしさの算出は、細胞懸濁液調製工程における確からしさと同様に算出することができる。
なお、確からしさの算出タイミングは、細胞数計数工程の次工程で、纏めて算出してもよいし、細胞懸濁液調製工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程の各工程の最後に算出し、細胞数計数工程の次工程で各不確かさを合成して算出してもよい。言い換えれば、上記各工程での確からしさは、合成算出までに適宜算出しておけばよい。
<<出力工程>>
出力工程は、ウェル内に着弾した細胞懸濁液に含まれる細胞数を、センサにより測定された検出結果に基づいて細胞数計数手段にて計数された値を出力する工程である。
計数された値とは、センサにより測定された検出結果から、細胞数計数手段にて当該ウェルに含まれる細胞数を意味する。
出力とは、原動機、通信機、計算機などの装置が入力を受けて計数された値を外部の計数結果記憶手段としてのサーバに電子情報として送信することや、計数された値を印刷物として印刷することを意味する。
出力工程は、検査デバイスの生成時に、検査デバイスにおける各ウェルの細胞数又は核酸数を観察又は推測し、観測値又は推測値、外部の記憶部に出力する。
出力は、細胞数計数工程と同時に行ってもよく、細胞数計数工程の後に行ってもよい。
<<記録工程>>
記録工程は、出力工程において、出力された観測値又は推測値を記録する工程である。
記録工程は、記録部において好適に実施することができる。
記録は、出力工程と同時に行ってもよく、出力工程の後に行ってもよい。
記録とは、記録媒体に情報を付与することだけでなく、記録部に情報を保存することも含む意味である。
<<核酸抽出工程>>
核酸抽出工程は、ウェル内の細胞から核酸を抽出する工程である。
抽出とは、細胞膜や細胞壁などを破壊し、核酸をぬき出すことを意味する。
細胞から核酸を抽出する方法としては、90℃~100℃で熱処置する方法が知られている。90℃以下で熱処理するとDNAが抽出されない可能性があり、100℃以上で熱処理するとDNAが分解される可能性がある。このとき界面活性剤を添加し熱処理することが好ましい。
界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、添加量にもよるが、タンパク質を変性・失活させない点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。
イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステルナトリウム、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルファオレフィンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、脂肪酸ナトリウムが好ましく、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)がより好ましい。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルグリコシド、アルキルポリオキシエチレンエーテル(Brijシリーズ等)、オクチルフェノールエトキシレート(Totiton Xシリーズ、Igepal CAシリーズ、Nonidet Pシリーズ、Nikkol OPシリーズ等)、ポリソルベート類(Tween20等のTweenシリーズなど)、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキルマルトシド、ショ糖脂肪酸エステル、グリコシド脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリソルベート類が好ましい。
界面活性剤の含有量としては、ウェル中の細胞懸濁液全量に対して、0.01質量%以上5.00質量%以下が好ましい。含有量が、0.01質量%以上であると、DNA抽出に対して効果を発揮でき、5.00質量%以下であると、PCRの際に増幅の阻害を防止することができるため、両方の効果を得られる数値範囲として上記0.01質量%以上5.00質量%以下が好適である。
細胞壁を保有している細胞に関しては、上記の方法で十分にDNA抽出されないことがある。その場合、例えば、浸透圧ショック法、凍結融解法、酵素消化法、DNA抽出用キットの使用、超音波処理法、フレンチプレス法、ホモジナイザーなどの方式などが挙げられる。これらの中でも、抽出DNAのロスが少ないことから、酵素消化法が好ましい。
<<その他の工程>>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酵素失活工程などが挙げられる。
-酵素失活工程-
酵素失活工程は、酵素を失活させる工程である。
酵素としては、例えば、DNase、RNase、核酸抽出工程において核酸を抽出するために使用した酵素などが挙げられる。
酵素を失活させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の方法を好適に用いることができる。
ここで、図20は、本発明の検査デバイスの一例を示す斜視図である。図21は、本発明の検査デバイスの他の一例を示す斜視図である。図22は、図21の検査デバイスの側面図である。検査デバイス1は、基材2に複数のウェル3が設けられており、ウェル3に増幅可能な試薬としての核酸4が特定分子数で充填されている。なお、図21及び図22中、5は密閉部材である。
図23は、本発明の検査デバイスの他の一例を示す斜視図である。この図23の検査デバイスでは、増幅可能な試薬の分子数水準が10、10、10、10、10の5水準設けられている。
図24は、本発明の検査デバイスの増幅可能な試薬を充填するウェルの配置の一例を示す図である。図24のウェル内の数字は、増幅可能な試薬の特定分子数を表し、1、2、3、10、50の特定分子数が100未満のウェルと、2.77E+02、1.11E+03、4.44E+03、1.77E+04、1.78E+05の特定分子数100以上のウェルが設けられている。図24中の数字が記載していないウェルは試料やコントロール測定用のウェルである。
図25は、本発明の検査デバイスの増幅可能な試薬を充填するウェルの配置の他の一例を示す図である。図25中のウェル内の数字は増幅可能な試薬の特定分子数を表し、1、3、5、10、50の特定分子数が100未満のウェルと、2.77E+02、1.11E+03、4.44E+03、1.77E+04、1.78E+05の特定分子数100以上のウェルが設けられている。図25中の数字が記載していないウェルは試料やコントロール測定用のウェルである。
本発明の検査デバイスの製造方法により製造された検査デバイスは、バイオ関連産業、ライフサイエンス産業、及び医療産業等において幅広く使用され、例えば、装置構成や検量線作成、検査装置の精度管理などに好適に用いることができる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
<核酸試料の調製>
-高濃度核酸試料希釈系列の作製-
高濃度核酸試料は、濃厚核酸試料としてDNA600-G(国立研究開発法人産業技術総合研究所製、NMIJ CRM 6205-a)と、希釈溶媒としてUltraPure DNase/RNase-Free-Distilled Water(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、10977-015、以下、「NFW」という)とを用いて系列希釈を調製した。
系列希釈試料の濃度は、電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製、BM-22)による濃厚溶液と希釈溶媒の重量計測に基づいて決定した。
-低濃度核酸試料系列用酵母懸濁液の作製-
--遺伝子組換え酵母--
出芽酵母YIL015W BY4741(ATCC社製、ATCC4001408)を1コピーの特定核酸配列のキャリア細胞として組換え体の作製に使用した。
特定核酸配列は、上記DNA600-G配列と選択マーカーとしたURA3とがタンデムに並ぶように作出したプラスミドとして、キャリア細胞のBAR1領域を対象に相同組換えによって1コピーの特定核酸配列を酵母ゲノムDNAに導入し、遺伝子組換え酵母を作製した。
--培養及び細胞周期制御--
50g/LのYPD培地(タカラバイオ株式会社製、CLN-630409)で培養した遺伝子組換え酵母を90mL分取した三角フラスコに、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、14190-144、以下、「DPBS」と称する)を用いて500μg/mLとなるように調製したα1-Mating Factor acetate salt(Sigma-Aldrich社製、T6901-5MG、以下、「αファクター」という)を900μL添加した。
次いで、バイオシェイカー(タイテック株式会社製、BR-23FH)を用いて、振盪速度:250rpm、温度:28℃にて2時間インキュベートし、酵母をG0/G1期に同調して酵母懸濁液を得た。
-固定化-
同調確認済み酵母懸濁液を遠心管(アズワン株式会社製、VIO-50R)に45mL移し、遠心分離機(株式会社日立製作所製、F16RN)を用いて、回転速度:3000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去して酵母ペレットを得た。
得られた酵母ペレットにホルマリン(和光純薬工業株式会社製、062-01661)を4mL添加し、5分間静置後、遠心して上澄み液を除去し、エタノールを10mL添加して懸濁させることにより、固定化済みの酵母懸濁液を得た。
-染色-
固定化済み酵母懸濁液を1.5mL遮光チューブ(ワトソン株式会社製、131-915BR)に500μL移し、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去し、1mM EDTA(TOCRIS社製、200-449-4)となるように調製したDPBS(1mM EDTA)を400μL添加し、ピペッティングでよく懸濁した後、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmで5分間遠心し、上澄み液を除去することにより酵母ペレットを得た。得られたペレットに1mg/mLに調製したエバンスブルー水溶液(和光純薬工業株式会社製、054-04061)を1mL添加し、ボルテックスを用いて5分間撹拌後、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmで5分間遠心し、上澄み液を除去し、DPBS(1mM EDTA)を添加し、ボルテックスで撹拌することにより染色済み酵母懸濁液を得た。
-分散-
染色済みの酵母懸濁液を超音波ホモジナイザー(装置名:LUH150、ヤマト科学株式会社製)を用いて、出力:30%,10秒間分散処理し、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去し、DPBSを1,000μL添加して洗浄した。遠心分離、上澄み液の除去を計2回実施し、最後にDPBSで懸濁させて酵母懸濁インクを得た。
<高濃度核酸試料系列の充填>
高濃度核酸試料系列をマイクロピペッター(エッペンドルフ株式会社製、3120000011)を用いて、図25に示す40ウェルプレートの各ウェルに2.5μLずつ充填した。
<低濃度核酸試料系列の充填>
-分注及び細胞計測-
以下のようにして、液滴中の酵母数を計数(カウント)して、既知数の細胞がウェル内に格納されるプレートを作製した。具体的には、図12に示す液滴形成装置を用いて、図25に示す40ウェルプレートの各ウェルに、液滴吐出手段として圧電印加方式の吐出ヘッド(社内製)を用いて10Hzにて酵母懸濁インクを、酵母の細胞数が1、3、5、10、50となるように順次吐出した。
吐出された液滴中の酵母の受光手段としては高感度カメラ(東京インスツルメンツ株式会社製、sCMOS pco.edge)を用いて撮影した。光源としてはYAGレーザー(スペクトラ・フィジックス社製、Explorer ONE-532-200-KE)を用い、撮影した画像の細胞数計数手段として画像処理ソフトウェアであるImage Jを用いて画像処理して細胞数を計数し、細胞数既知プレートを作製した。
-核酸抽出-
Tris-EDTA(TE) Bufferを用いてColE1 DNA(和光純薬工業株式会社製、312-00434)を5ng/μLとなるようにColE1/TEを調製し、ColE1/TEを用いてZymolyase(R) 100T(ナカライテスク株式会社製、07665-55)を1mg/mLとなるようにZymolyase溶液を調製した。
作製した細胞数既知プレートの各ウェルにZymolyase溶液を4μL添加し、37℃にて30分間インキュベートすることにより、細胞壁溶解(核酸抽出)後、95℃で2分間熱処理して、図25に示す検査デバイスを作製した。
<高濃度核酸試料系列の不確かさ算出>
充填された高濃度核酸試料系列は、以下の不確かさの要因によって特定分子数水準毎に一定の不確かさを有する。
要因(1):DNA600-G原液の濃度に関する不確かさ
本核酸試料は、同位体希釈質量分析法(IDMS)による核酸塩基測定と、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によるりん測定によって、総核酸の質量分率が決定された不確かさが値付けされている。
要因(2):希釈溶媒及び濃厚核酸試料溶液の密度の不確かさ
要因(3):重量計測時の電子天秤の不確かさ
要因(4):ポアソン分布に基づく不確かさ
要因(5):核酸試料充填時のピペットマン(エッペンドルフ株式会社製)の不確かさ
これらの要因の1つずつの不確かさを表2に示した。
不確かさの合成は、一般的な不確かさの合成手法により合成し、最終的に充填される特定分子数水準の平均特定分子数と不確かさを算出した。結果を表3に示した。
Figure 0007058411000003
*表2中要因(3)の「x」は任意の計量値(重量)、要因(4)の「x」は分取した平均特定分子数(平均充填分子数)である。
Figure 0007058411000004
*表3中の略号は、以下の内容である。
・2G:DNA600G原液の希釈液
・200M:2Gの希釈液
・20M:200Mの希釈液
・2M:20Mの希釈液
・200k:2Mの希釈液
・20k:200kの希釈液
・4k:20kの希釈液
・1k:4kの希釈液
・250:1kの希釈液
・70:250の希釈液
・NFW:UltraPure DNase/RNase-Free-Distilled Water(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、10977-015
表3の結果から、全ての核酸試料希釈系列はCV値20%以内の精度で充填されたことを確認できた。
<低濃度核酸試料系列の不確かさ算出>
充填された低濃度核酸試料系列は、以下の不確かさの要因によって特定分子数水準毎に一定の不確かさを有する。
要因i:吐出液滴毎の酵母数一致率に関する不確かさ
要因iに関する不確かさは、充填方法と同条件にて別容器に吐出し、その着弾液滴内の酵母数と狙いの酵母数の一致率に基づいて算出した。実験条件及び結果は以下の通りである。
-実験条件及び結果-
充填容器として96穴平底プレート(ワトソン株式会社製、4846-96-FS)を用い、上記「低濃度核酸試料系列の充填」と同様の条件にて、圧電印加方式の吐出ヘッド(社内製)を用いた液滴吐出手段により1粒子を分注した後、蛍光顕微鏡(カールツァイス株式会社製、Axio Observer D1)にて488nmの励起光により蛍光顕微鏡観察を行った。結果を図26A及び図26Bに示した。各液滴内に存在する酵母数と狙いの酵母数(1粒子;特定分子数=1)の正誤を判定して一致率を求めた。結果を表4に示した。
Figure 0007058411000005
表4の結果から、99.2%の確率で一致していることがわかった。
また、不正解であったものに関しては、本実験系においては、圧電印加方式の吐出ヘッド(社内製)を用いた液滴吐出手段は1細胞(特定分子数=1)の酵母を分注する精度は、99.2%である。なお、これ以上の細胞数(分子数)の酵母を分注する場合には、この精度の積み重ねによって決定されると言える。
以上より、各充填核酸試料の平均特定分子数及び不確かさを算出した。結果を表5に示した。なお、変動係数CV値は、不確かさを平均特定分子数で除することにより求めた。
Figure 0007058411000006
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 少なくとも1つのウェルを有し、少なくとも1つの前記ウェルが特定分子数の増幅可能な試薬を含む検査デバイスの製造方法であって、
1つの前記ウェルにおける前記増幅可能な試薬の特定分子数が100以上の場合には前記増幅可能な試薬を希釈法により調製し、
1つの前記ウェルにおける前記増幅可能な試薬の特定分子数が100未満の場合には前記増幅可能な試薬を吐出法により調製する、
ことを特徴とする検査デバイスの製造方法である。
<2> 前記ウェルの数が2以上であり、一の前記ウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数と、他の前記ウェルにおける増幅可能な試薬の特定分子数とが互いに異なる2以上である前記<1>に記載の検査デバイスの製造方法である。
<3> 前記ウェルの数が2以上であり、一の前記ウェルにおける前記増幅可能な試薬の特定分子数が10N1であり、
他の前記ウェルにおける前記増幅可能な試薬の特定分子数が10N2である、(ただし、前記N1及び前記N2は互いに連続した整数である)前記<1>に記載の検査デバイスの製造方法である。
<4> 前記吐出法が、インクジェット吐出法である前記<1>から<3>のいずれかに記載の検査デバイスの製造方法である。
<5> 前記増幅可能な試薬が核酸である前記<4>に記載の検査デバイスの製造方法である。
<6> 前記核酸が細胞の核中の核酸に組み込まれた前記<5>に記載の検査デバイスの製造方法である。
<7> 前記細胞が酵母である前記<6>に記載の検査デバイスの製造方法である。
<8> 前記酵母がG0/G1期に同調して同調培養され、G1期で固定されている前記<7>に記載の検査デバイスの製造方法である。
前記<1>から<8>のいずれかに記載の検査デバイスの製造方法によると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
1 検査デバイス
2 基材
3 ウェル
4 増幅可能な試薬
5 密閉部材
特開2008-141965号公報 特開2015-195735号公報
U.S. Food and Drug Administration."Guidance for Industry:Bioanalytical Method Validation.":〈http://www.fda.gov/downloads/Drugs/Guidance Compliance Regulatory Information/Guidances/UCM070107.pdf〉, cited 5 September,2014. European Medicines Agency."Guideline on Bioanalytical Method Validation.":〈http://www.ema.europa.eu/docs/en_GB/document_library/Scientific_guideline/2011/08/WC500109686.pdf〉,cited 5 September,2014.

Claims (4)

  1. 少なくとも2つのウェルを有し、少なくとも2つの前記ウェルが、それぞれ特定分子数が100以上の核酸と、特定分子数が100未満の核酸とを含む検査デバイスの製造方法であって、
    1つの前記ウェルにおける前記核酸の特定分子数が100以上の場合には前記核酸をマイクロピペットで充填する希釈法により調製する工程、及び
    1つの前記ウェルにおける前記核酸の特定分子数が100未満の場合には、前記核酸を1細胞の酵母のゲノムDNAに対し1コピーの割合で相同組み換えにより導入し、相同組み換えにより核酸を導入した酵母を固定化した酵母懸濁液をインクジェット吐出法により前記ウェルに充填し、前記ウェルに充填された酵母の細胞壁を溶解して特定分子数の核酸を調製する工程、を含むことを特徴とする検査デバイスの製造方法。
  2. 一の前記ウェルにおける核酸の特定分子数と、他の前記ウェルにおける核酸の特定分子数とが互いに異なる2以上である請求項1に記載の検査デバイスの製造方法。
  3. 一の前記ウェルにおける前記核酸の特定分子数が10N1であり、
    他の前記ウェルにおける前記核酸の特定分子数が10N2である、(ただし、前記N1及び前記N2は互いに連続した整数である)請求項1に記載の検査デバイスの製造方法。
  4. 前記酵母がG0/G1期に同調して同調培養され、G1期で固定されている請求項1から3のいずれかに記載の検査デバイスの製造方法。
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