JP2019216704A - デバイス - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、系列希釈法により核酸試料系列を作製し、複数の試料充填部が設けられた容器の該試料充填部に、異なる複数充填コピー数水準の核酸試料が密封されているPCR反応プレート用容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、最近、標的核酸配列を導入した細胞をマニピュレーターによって1個ずつ分取することにより、極微量の核酸分子を計測・充填可能とする技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
本発明のデバイスは、増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満である増幅可能な試薬を含むウェルと、増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上である増幅可能な試薬を含むウェルと、をそれぞれ少なくとも1つ以上有し、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの前記特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、前記増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV<1/√xを満たし、更に必要に応じてその他の部材を有する。
このことは、系列希釈法により作製された核酸試料系列を充填する際のばらつき(変動係数)が原因であると考えられる。即ち、核酸試料のような溶質分子は溶媒分子に溶解した状態において、熱ゆらぎによって溶媒分子中を運動している。その際の分子の分布状態は一般的にポアソン分布に従うとされる。このことは、規定濃度の溶液をいかなる精度で量り取り、容器に充填した場合でも、充填された溶液中の核酸試料の特定コピー数は分布、つまり、ばらつき(変動係数)を有することを示している。なお、1分子に複数同じ塩基配列を導入しない場合には「特定コピー数」と同じ意味で「分子数」を用いることもある。
なお、本発明のデバイスとしては、検査デバイスと称することもある。
ウェルは、その形状、数、容積、材質、色などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ウェルの形状としては、増幅可能な試薬を配することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、平底、丸底、U底、V底等の凹部、基板上の区画などが挙げられる。
ウェルの数は、2以上の複数であることが好ましく、5以上がより好ましく、50以上が更に好ましい。
ウェルの数が2以上である連結されたマイクロチューブもしくはマルチウェルプレートが好適に用いられる。
連結されたマイクロチューブとしては、例えば、2、3、4、6、8、12、16、24、又は48連マイクロチューブが挙げられる。
マルチウェルプレートとしては、例えば、24、48、96、384、又は1,536のウェルプレートが挙げられる。
ウェルの容積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、一般的な核酸検査装置に用いられる試料量を考慮すると、10μL以上1,000μL以下が好ましい。
ウェルの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ふっ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
ウェルの色としては、例えば、透明、半透明、着色、完全遮光などが挙げられる。
ウェルの濡れ性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、撥水性であることが好ましい。ウェルの濡れ性が、撥水性であると、ウェル内壁への増幅可能な試薬の吸着を低減化できる。また、ウェルの濡れ性が、撥水性であると、ウェル内の増幅可能な試薬及びプライマー、増幅試薬を溶液状態で移動することができる。
ウェル内壁の撥水化の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ふっ素系樹脂被膜を形成する方法、ふっ素プラズマ処理、エンボス加工が挙げられる。特に、接触角が100°以上となる撥水化処理を施すことで、液体の取りこぼしによる増幅可能な試薬の減少及び不確かさ(又は変動係数)の増大を抑えることができる。
デバイスは、ウェルが基材に設けられたプレート状のものが好ましいが、8連チューブ等の連結タイプのウェルチューブであってもよい。
基材としては、その材質、形状、大きさ、構造などについて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、半導体、セラミックス、金属、ガラス、石英ガラス、プラスチックスなどが挙げられる。これらの中でも、プラスチックスが好ましい。
プラスチックスとしては、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ふっ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。
基材の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、板状、プレート状などが好ましい。
基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造であっても複数層構造であっても構わない。
デバイスは、増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの変動係数のCV値の情報、増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるウェルの変動係数のCV値の情報、及び特定コピー数における不確かさの情報の少なくともいずれかを識別可能な識別手段を有することが好ましい。
識別手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メモリ、ICチップ、バーコード、QRコード(登録商標)、Radio Frequency Identifier(以下、「RFID」とも称することがある)、色分け、印刷などが挙げられる。
識別手段を設ける位置及び識別手段の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
識別手段に記憶させる情報としては、増幅可能な試薬がウェルにおいて特定コピー数で充填されている情報以外にも、例えば、分析結果(活性値、発光強度等)、増幅可能な試薬の数(例えば、細胞の数)、細胞の生死、複数のウェルのうちどのウェルに増幅可能な試薬が充填されているのか、増幅可能な試薬の種類、測定日時、測定者の氏名などが挙げられる。
識別手段に記憶された情報は、各種読取手段を用いて読み取ることができ、例えば、識別手段がバーコードであれば読取手段としてバーコードリーダーが用いられる。
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、密閉部材などが挙げられる。
デバイスは、ウェルへの異物混入は充填物の流出などを防ぐために、密閉部材を有することが好ましい。
密閉部材としては、少なくとも1つのウェルを密閉可能であり、1つ1つのウェルを個別に密閉乃至開封できるように、切り取り線により切り離し可能に構成することが好ましい。
密閉部材の形状としては、ウェル内壁径と一致するキャップ状、又はウェル開口部を被覆するフィルム状であることが好ましい。
密閉部材の材質としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
密閉部材としては、全てのウェルを一度に密閉可能なフィルム状であることが好ましい。また、使用者の誤使用を低減化できるように再開封が必要なウェルと不必要なウェルとの接着強度が異なるように構成されていることが好ましい。
また、固体乾燥状態のデバイスの使用直前に、バッファーや水に溶解させることで、すぐに反応液として用いることができるよう、適正量の増幅可能な試薬、プライマー、及び増幅試薬が充填されていることが望ましい。
乾燥方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、凍結乾燥、加熱乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、蒸気乾燥、吸引乾燥、赤外線乾燥、バレル乾燥、スピン乾燥などが挙げられる。
コピー数とは、前記ウェルに含まれる増幅可能な試薬中の標的もしくは特定の塩基配列の数を意味している。
標的の塩基配列とは、少なくともプライマー及びプローブ領域の塩基配列が決まっているものを指し、特に、塩基配列の全長が定められているものを特定の塩基配列とも呼称する。
特定コピー数とは、前記コピー数のうち、標的の塩基配列の数が一定以上の精度で特定されていることを意味する。
すなわち、実際にウェルに含まれている標的の塩基配列の数として既知ということができる。つまり、本願における特定コピー数は、従来の系列希釈により得られる所定のコピー数(算出推定値)よりも、数としての精度、信頼性が高く、特に、1,000以下の低コピー数領域であってもポアソン分布によらない制御された値となる。制御された値は、概ね、不確かさを表す変動係数CVが平均コピー数xに対し、CV<1/√xもしくはCV≦20%のどちらかの値の大きさの中に収まっていることが好ましい。それゆえ、当該特定コピー数の標的の塩基配列を含むウェルを有するデバイスを用いることで、従来よりも正確に標的の塩基配列を有する試料の定性的、定量的な検査を行うことが可能となる。
なお、ここで標的の塩基配列の数とその配列を有する核酸の分子数とが一致する場合には、「コピー数」と「分子数」は対応付けられる場合もある。
具体的には、例えば、ノロウイルスの場合は、ウイルスの個数=1なら核酸分子数=1、コピー数=1で、GI期の酵母の場合は、酵母数=1なら核酸分子数(同一の染色体数)=1、コピー数=1で、G0/GI期のヒト細胞の場合は、ヒト細胞数=1なら核酸分子数(同一の染色体数)=2、コピー数=2である。
さらに、標的の塩基配列を2箇所に導入したGI期の酵母の場合は、酵母数=1なら核酸分子数(同一の染色体数)=1、コピー数=2となる。
また、本発明においては、増幅可能な試薬の特定コピー数は、増幅可能な試薬の絶対数と称することもある。
増幅可能な試薬としては、詳しくは後述するが、核酸が好適に使用できる。
増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの変動係数のCV値は、前記特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、前記増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV<1/√xを満たし、CV<1/2√xを満たすことが好ましい。また、平均特定コピー数の値に関わらず、増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの変動係数のCV値は、20%以下であること好ましく、10%以下がより好ましい。この範囲において、特定コピー数が100未満であっても高い精度で増幅可能な試薬を充填することができる。
増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるウェルの変動係数のCV値は20%以下が好ましい。この範囲において、特定コピー数が100以上であっても高い精度で増幅可能な試薬を充填することができる。
増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるウェルの変動係数のCV値は、20%以下であることが好ましい。
これにより、デバイスは、図2に示す関係を満たす。
図2は、特定コピー数(ウェルに充填された核酸のコピー数)と変動係数との関係について説明する図である。図2において、平均特定コピー数xと変動係数のCV値との関係式:及びCV=1/√x及びCV=1/2√xと、特定コピー数が100と、CV値20%とをそれぞれ示す。図2から、(1)増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であって、当該特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV<1/√xを満たす領域と、(2)増幅可能な試薬の平均特定コピー数が100以上であって、当該特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV>1/√xかつCV≦20%を満たす領域とが得られる。これにより、デバイスは、低コピー数から高コピー数の幅広い範囲において高い精度で測定することができる。
ウェルの数が2以上であり、一のウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数が10N1であり、他のウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数が10N2である、(ただし、N1及びN2は互いに連続した整数である)ことが好ましく、例えば、1、10、100、1,000の場合、100、1,000、10,000、100,000、1,000,000の場合などが挙げられる。これにより、デバイスは、低コピー数から高コピー数までの広い範囲における検量線の作成が容易に行える。
「不確かさ」とは、「測定の結果に付随した、合理的に測定量に結びつけられ得る値のばらつきを特徴づけるパラメータ」であるとISO/IEC Guide99:2007[国際計量計測用語−基本及び一般概念並びに関連用語(VIM)]に定義されている。
ここで、「合理的に測定量に結びつけられ得る値」とは、測定量の真の値の候補を意味する。即ち、不確かさとは、測定対象の製造に係る操作、機器などに起因する測定結果のばらつきの情報を意味する。不確かさが大きいほど、測定結果として予想されるばらつきが大きくなる。
不確かさとしては、例えば、測定結果から得られる標準偏差であってもよく、真の値が所定の確率以上で含まれている値の幅として表す信頼水準の半分の値としてもよい。
不確かさを算出する方法としては、Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement(GUM:ISO/IEC Guide98−3)、及びJapan Accreditation Board Note 10 試験における測定の不確かさに関するガイドラインなどに基づき算出することができる。不確かさを算出する方法としては、例えば、測定値などの統計を用いたタイプA評価法と、校正証明書、製造者の仕様書、公表されている情報などから得られる不確かさの情報を用いたタイプB評価法の2つの方法を適用することができる
不確かさは、操作及び測定などの要因から得られる不確かさを全て標準不確かさに変換することにより、同じ信頼水準で表現することができる。標準不確かさとは、測定値から得られた平均値のばらつきを示す。
不確かさを算出する方法の一例としては、例えば、不確かさを引き起こす要因を抽出し、それぞれの要因の不確かさ(標準偏差)を算出する。さらに、算出したそれぞれの要因の不確かさを平方和法により合成し、合成標準不確かさを算出する。合成標準不確かさの算出において、平方和法を用いるため、不確かさを引き起こす要因の中で不確かさが十分に小さい要因については無視することができる。不確かさは合成標準不確かさを期待値で除した変動係数(CV値)を用いてもよい。
各ウェルに値付けられる不確かさは、前述の充填方法や系列希釈の作製方法によって適切に算出されることが望ましい。
プライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、鋳型DNAに特異的な18塩基〜30塩基の相補的塩基配列を持つ合成オリゴヌクレオチドであり、増幅したい領域を挟むようにフォワードプライマーとリバースプライマーとの2か所(一対)設定される。
増幅試薬としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)において、例えば、酵素としてDNAポリメラーゼ、基質として4種の塩基(dGTP、dCTP、dATP、dTTP)、Mg2+(2mMの塩化マグネシウム)、最適pH(pH7.5〜9.5)を保持するバッファーなどが挙げられる。
ネガティブコントロールで検出が検知されたとき、及びポジティブコントロールで不検出が検知されたときは、検出系(試薬や装置)に異常があることが示唆される。ネガティブコントロール及びポジティブコントロールを設けておくことにより、問題が生じたときにユーザーは直ちにそれに気づくことができ、測定を中止して問題がどこにあるかの点検を行うことができる。
核酸とは、プリン又はピリミジンから導かれる含窒素塩基、糖、及びリン酸が規則的に結合した高分子の有機化合物を意味し、核酸の断片、あるいはこれら核酸又はその断片のアナログなども含まれる。
核酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DNA、RNA、cDNAなどが挙げられる。
なお、人工合成核酸としては、天然に存在するDNA又はRNAと同様の構成成分(塩基、デオキシリボース、リン酸)からなる核酸を人工的に合成した核酸を意味する。人工合成核酸としては、例えば、タンパク質をコードする塩基配列を有する核酸に限らず、任意の塩基配列を有する核酸を含む。
また、核酸は修飾又は変異されていてもよい。
特定の塩基配列としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感染症検査に用いられる塩基配列、自然界には存在しない非天然の塩基配列、動物細胞由来の塩基配列、植物細胞由来の塩基配列、真菌の細胞由来の塩基配列、細菌由来の塩基配列、ウイルス由来の塩基配列などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
非天然の塩基配列を用いる場合、GC含有率が特定の塩基配列の30%以上70%以下であることが好ましく、GC含量が一定であることが好ましい(例えば、配列番号1など参照)。
特定の塩基配列の塩基長としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、20塩基対(又はmer)以上10,000塩基対(又はmer)以下の塩基長などが挙げられる。
感染症検査に用いられる塩基配列を用いる場合、その感染症特有の塩基配列を含んでいれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、公定法や通知法で指定されている塩基配列を含んでいることが好ましい(例えば、配列番号2及び3など参照)。
増幅可能な試薬は、担体に担持された状態で扱われることが好ましい。なお、増幅可能な試薬が核酸である場合には、核酸が粒子形状をした担体(担体粒子)に担持(より好ましくは内包)されている態様などが好ましい。
担体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、細胞、樹脂、リポソーム、マイクロカプセルなどが挙げられる。
細胞は、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を有し、生物体を形成する構造的及び機能的単位を意味する。
細胞としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真核細胞、原核細胞、多細胞生物細胞、単細胞生物細胞を問わず、すべての細胞について使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
細胞周期とは、細胞が増えるとき、細胞分裂が生じ、細胞分裂で生じた細胞(娘細胞)が再び細胞分裂を行う細胞(母細胞)となって新しい娘細胞を生み出す過程を意味する。
また、酵母菌としては、例えば、細胞周期をG1期に制御するフェロモン(性ホルモン)の感受性が増加したBar−1欠損酵母が好ましい。酵母菌がBar−1欠損酵母であると、細胞周期が制御できていない酵母菌の存在比率を低くすることができるため、ウェル内に収容された細胞の特定の核酸の数の増加等を防ぐことができる。
細胞としては、光を受光したときに発光可能な細胞であることが好ましい。光を受光したときに発光可能な細胞であると、細胞の数を高精度に制御してウェル内に着弾させることができる。
受光とは、光を受けることを意味する。
光学センサとは、人間の目で見ることができる可視光線と、それより波長の長い近赤外線や短波長赤外線、熱赤外線領域までの光のいずれかの光をレンズで集め、対象物である細胞の形状などを画像データとして取得する受動型センサを意味する。
光を受光したときに発光可能な細胞としては、光を受光したときに発光可能であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、蛍光色素によって染色された細胞、蛍光タンパク質を発現した細胞、蛍光標識抗体により標識された細胞などが挙げられる。
細胞における蛍光色素による染色部位、蛍光タンパク質の発現部位、又は蛍光標識抗体による標識部位としては、特に制限はなく、細胞全体、細胞核、細胞膜などが挙げられる。
蛍光色素としては、例えば、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類、クマリン類、ピレン類、シアニン類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、フルオレセイン類、アゾ類、ローダミン類、シアニン類が好ましく、エオシン、エバンスブルー、トリパンブルー、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミン123、Cy3がより好ましい。
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami−Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP−m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed−Express、DsRed2、TagRFP、DsRed−Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、mPlum、PS−CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
蛍光標識抗体としては、蛍光標識されていれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、CD4−FITC、CD8−PEなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
作製した染色済み酵母分散液から10μL取り出してPMMA製プラスチックスライドに載せ、自動セルカウンター(商品名:Countess Automated Cell Counter、invitrogen社製)を用いることにより体積平均粒径を測定することができる。なお、細胞数も同様の測定方法により求めることができる。
樹脂としては、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を担持することができれば、その材質、形状、大きさ、構造については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
リポソームとは、脂質分子を含む脂質二重層から形成される脂質小胞体であり、具体的には、脂質分子の疎水性基と親水性基の極性に基づいて生じる脂質二重層により外界から隔てられた空間を有する閉鎖された脂質を含む小胞体を意味する。
リポソームは、脂質を用いた脂質二重膜で形成される閉鎖小胞体であり、その閉鎖小胞の空間内に水相(内水相)を有する。内水相には、水等が含まれる。リポソームはシングルラメラ(単層ラメラ、ユニラメラ、二重層膜が一重)であっても、多層ラメラ(マルチラメラ、タマネギ状の構造をした多数の二重層膜で、個々の層は水様の層で仕切られている)であってもよい。
リポソームとしては、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を内包することのできるリポソームが好ましく、その形態は特に限定されない。「内包」とは、リポソームに対して核酸が内水相および膜自体に含まれる形態をとることを意味する。例えば、膜で形成された閉鎖空間内に核酸を封入する形態、膜自体に内包する形態などが挙げられ、これらの組合せでもよい。
リポソームの大きさ(平均粒子径)は、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を内包することができれば特に限定されないが、球状またはそれに近い形態をとることが好ましい。
リポソームの脂質二重層を構成する成分(膜成分)は、脂質から選ばれる。脂質として、水溶性有機溶媒及びエステル系有機溶媒の混合溶媒に溶解するものであれば任意に使用することができる。脂質として、具体的には、リン脂質、リン脂質以外の脂質、コレステロール類及びそれらの誘導体等が挙げられる。これらの成分は、単一種又は複数種の成分から構成されてよい。
マイクロカプセルとは、壁材と中空構造とを有する微小な粒体を意味し、中空構造に増幅可能な試薬(例えば、核酸)を内包することができる。
マイクロカプセルとしては、特に制限はなく、適宜目的に応じて、壁材、大きさ等を選択することができる。
マイクロカプセルの壁材としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ尿素、ポリ尿素−ポリウレタン樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホンアミド、ポリカーボネート、ポリスルフィネート、エポキシリ、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル、ゼラチンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
マイクロカプセルの大きさとしては、増幅可能な試薬(例えば、核酸)を内包することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
マイクロカプセルの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、in−situ法、界面重合法、コアセルベーション法などが挙げられる。
ここで、例えば、図4及び図5に示すように、各ウェル3に充填する試薬の特定コピー数とその不確かさ(確からしさ)の情報、もしくはこれらの情報と関連付けられた情報を記憶するICチップ又はバーコード(識別手段6)が、密閉部材5と基材2との間で且つウェルの開口部以外の位置に配置されている。これは、識別手段6の意図しない改変等を防止するのに好適である。
また、デバイスが識別手段を有することで、識別手段を有しない一般のウェルプレートとの区別可能である。このため、取り違えを防止することが可能である。
また、デバイス1の識別手段6が有する情報は、デバイス1の増幅可能な試薬の特定コピー数とその不確かさ情報が、クラウドなどのネットワークのサーバの記憶手段内に記憶され、その情報と関連付けられた一意の情報であってもよい。
また、識別手段の一意の情報により、遠隔ネットワークのサーバの記憶手段から情報を取得する。
認識手段(認識部)は、デバイス1そのものに設ける構成としてもよいし、デバイスに別添してもよく、デバイス1と別添の認識手段とで検査キットとしてもよい。
増幅可能な試薬の絶対数とその不確かさの情報を容器と関連付けさせた情報を識別可能になる。これにより、特定塩基配列を含んだ核酸を既知コピー数含んだ容器により分析検査・分析装置の校正や精度保証などを行う場合に、関連付けを行うことが可能となる。
図6は、本発明のデバイスの他の一例を示す斜視図である。この図6のデバイスでは、増幅可能な試薬のコピー数水準が100、102、104、106、108の5水準設けられている。
図8は、本発明のデバイスの増幅可能な試薬を充填するウェルの配置の他の一例を示す図である。図8中のウェル内の数字は増幅可能な試薬の特定コピー数を表し、1、3、5、10、50の特定コピー数が100未満のウェルと、102、103、104、105、106の特定コピー数100以上のウェルが設けられている。図8中の数字が記載していないウェルは試料やコントロール測定用のウェルである。
デバイスの製造方法としては、以下の「希釈法による増幅可能な試薬の調製」と「吐出法による増幅可能な試薬の調製」とがあり、1つのプレート内において、両者を同時に行ってもよく、順次別々に行ってもよい。
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上の場合には増幅可能な試薬を希釈法により調製することが好ましい。この場合、増幅可能な試薬の特定コピー数は、100以上であり、100〜1010が好ましい。
希釈法としては、試料調製手段によって系列希釈を作製する方法などが挙げられる。
試料調製手段としては、例えば、ピペットを用いたマニュアル操作、マイクロピペッター(エッペンドルフ株式会社製)、ピペットマン(エッペンドルフ株式会社製)などが挙げられる。
1つのウェルにおける増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満の場合には増幅可能な試薬を吐出法により調製することが好ましい。この場合、増幅可能な試薬の特定コピー数は、100未満であり、50以下が好ましく、10以下がより好ましく、5以下が更に好ましい。
吐出法としては、例えば、インクジェット吐出法、セルソーター、又はフローサイトメーターなどが挙げられる。
デバイスの製造方法は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含む細胞懸濁液を調製する細胞懸濁液調製工程と、細胞懸濁液を液滴として吐出することによりプレートのウェル内に液滴を順次着弾させる液滴着弾工程と、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数する細胞数計数工程と、ウェル内の細胞から核酸を抽出する核酸抽出工程と、を更に含み、細胞懸濁液調製工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程における推定する核酸の数の確からしさを算出する工程、出力工程、記録工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
細胞懸濁液調製工程は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含む細胞懸濁液を調製する工程である。
溶剤とは、細胞を分散させるために用いる液体を意味する。
細胞懸濁液における懸濁とは、細胞が溶剤中に分散して存在する状態を意味する。
調製とは、作り出すことを意味する。
細胞懸濁液は、特定の核酸を有する複数の細胞、及び溶剤を含み、添加剤を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含む。
特定の核酸を有する複数の細胞については、上述したとおりである。
溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、培養液、分離液、希釈液、緩衝液、有機物溶解液、有機溶剤、高分子ゲル溶液、コロイド分散液、電解質水溶液、無機塩水溶液、金属水溶液、及びこれらの混合液体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水、緩衝液が好ましく、水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Tris−EDTA緩衝液(TE)がより好ましい。
添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、核酸、樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
その他の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、架橋剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、浸透圧調整剤、湿潤剤、分散剤などが挙げられる。
細胞を分散する方法としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビーズミル等のメディア方式、超音波ホモジナイザー等の超音波方式、フレンチプレス等の圧力差を利用する方式などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞へのダメージが少ないことから超音波方式がより好ましい。メディア方式では、解砕能力が強く、細胞膜や細胞壁を破壊する可能性やメディアがコンタミとして混入することがある。
細胞のスクリーニング方法としては、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、湿式分級、セルソーター、フィルタによるスクリーニングなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、細胞へのダメージが少ないことから、セルソーター、フィルタによるスクリーニングが好ましい。
細胞周期を測定するとは、細胞分裂による細胞数を数値化することを意味する。
核酸の数を推定するとは、細胞数から、核酸のコピー数を求めることを意味する。
確からしさとは、いくつかの事象の生じる可能性がある時、特定の1つの事象が起こる可能性の程度を事前に予測して、その事象の起こる確率を意味する。
算出とは、計算して求める数値を出すことを意味する。
また、細胞懸濁液を作製する前に細胞周期を制御する処理を行うことが好ましく、前述のような複製が起きる前、又は後の状態に揃えることによって、標的の塩基配列の数を細胞数からより精度良く算出することが可能になる。
液滴着弾工程は、細胞懸濁液を液滴として吐出することによりプレートのウェル内に液滴を順次着弾させる工程である。
液滴とは、表面張力によりまとまった液体のかたまりを意味する。
吐出とは、細胞懸濁液を液滴として飛翔させることを意味する。
順次とは、次々に順序どおりにすることを意味する。
着弾とは、液滴をウェルに到達させることを意味する。
サーマル方式は、局所的な加熱が発生するため生体材料である細胞への影響や、ヒーター部への焦げ付き(コゲーション)が懸念される。熱による影響は、含有物やプレートの用途に依存するため、一概に除外する必要はないが、圧力印加方式は、サーマル方式よりヒーター部への焦げ付きの懸念がないという点から好ましい。
図10Aは、電磁バルブ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。電磁バルブ方式の吐出ヘッドは、電動機13a、電磁弁112、液室11a、細胞懸濁液300a、及びノズル111aを有する。
電磁バルブ方式の吐出ヘッドとしては、例えば、TechElan社のディスペンサなどを好適に用いることができる。
また、図10Bは、ピエゾ方式の吐出ヘッドの一例を示す模式図である。ピエゾ方式の吐出ヘッドは、圧電素子13b、液室11b、細胞懸濁液300b、及びノズル111bを有する。
ピエゾ方式の吐出ヘッドとしては、Cytena社のシングルセルプリンターなどを好適に用いることができる。
これらの吐出ヘッドのいずれも用いることが可能であるが、電磁バルブによる圧力印加方式では高速に繰り返し液滴を形成することができないため、プレートの生成のスループットを上げるためにはピエゾ方式を用いることが好ましい。また、一般的な圧電素子13bを用いたピエゾ方式の吐出ヘッドでは、沈降によって細胞濃度のムラが発生することや、ノズル詰まりが生じることが問題として生じることがある。
このため、より好ましい構成として図10Cに示した構成などが挙げられる。図10Cは、図10Bにおける圧電素子を用いたピエゾ方式の吐出ヘッドの変形例の模式図である。図10Cの吐出ヘッドは、圧電素子13c、液室11c、細胞懸濁液300c、及びノズル111cを有する。
図10Cの吐出ヘッドでは、図示していない制御装置からの圧電素子13cに対して電圧印加することにより、紙面横方向に圧縮応力が加わりメンブレンを紙面上下方向に変形させることができる。
吐出ヘッドは、圧電素子に形成された上下電極に、パルス状の電圧を印加することにより液滴を吐出することができる。図12A〜図12Cは、それぞれのタイミングにおける液滴の状態を示す模式図である。
図12Aは、まず、圧電素子13cに電圧を印加することにより、メンブレン12cが急激に変形することによって、液室11c内に保持された細胞懸濁液とメンブレン12cとの間に高い圧力が発生し、この圧力によってノズル部から液滴が外に押し出される。
次に、図12Bに示すように、圧力が上方に緩和するまでの時間、ノズル部からの液押し出しが続き液滴が成長する。
最後に、図12Cに示すように、メンブレン12cが元の状態に戻る際に細胞懸濁液とメンブレン12cとの界面近傍の液圧力が低下し、液滴310’が形成される。
プレートにおけるウェルの数は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、単数であってもよく、複数であってもよい。
図13に示すように、液滴を着弾させるための分注装置400は、液滴形成装置401と、プレート700と、ステージ800と、制御装置900とを有している。
複数の水準とは、標準となる複数の基準を意味する。
複数の水準としては、ウェル内に特定の核酸を有する複数の細胞が所定の濃度勾配を有することが好ましい。濃度勾配を有することにより、検量線用試薬として好適に使用することができる。複数の水準は、センサによって計数される値を用いて制御することができる。
細胞数計数工程は、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサによって計数する工程である。
センサとは、自然現象や人工物の機械的・電磁気的、熱的、音響的、又は化学的性質、或いはそれらにより示される空間情報・時間情報を、何らかの科学的原理を応用して、人間や機械が扱い易い別媒体の信号に置き換える装置を意味する。
計数とは、数を数えることを意味する。
図14、図18、及び図19を用いて、光学的に検出する方法に関して以下に述べる。
図14は、液滴形成装置401の一例を示す模式図である。図18、及び図19は、液滴形成装置401A、401Bの他の一例を示す模式図である。図14に示すように、液滴形成装置401は、吐出ヘッド(液滴吐出手段)10と、駆動手段20と、光源30と、受光素子60と、制御手段70とを有する。
光を照射とは、光をあてることを意味する。
まず、ステップS11において、制御手段70の吐出制御手段701は、駆動手段20に吐出の指令を出す。吐出制御手段701から吐出の指令を受けた駆動手段20は、駆動素子13に駆動信号を供給してメンブレン12を振動させる。メンブレン12の振動により、蛍光染色細胞350を含有する液滴310が、ノズル111から吐出される。
蛍光タンパク質としては、例えば、Sirius、EBFP、ECFP、mTurquoise、TagCFP、AmCyan、mTFP1、MidoriishiCyan、CFP、TurboGFP、AcGFP、TagGFP、Azami−Green、ZsGreen、EmGFP、EGFP、GFP2、HyPer、TagYFP、EYFP、Venus、YFP、PhiYFP、PhiYFP−m、TurboYFP、ZsYellow、mBanana、KusabiraOrange、mOrange、TurboRFP、DsRed−Express、DsRed2、TagRFP、DsRed−Monomer、AsRed2、mStrawberry、TurboFP602、mRFP1、JRed、KillerRed、mCherry、mPlum、PS−CFP、Dendra2、Kaede、EosFP、KikumeGRなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
このように、液滴形成装置401Bでは、蛍光染色細胞350が異なる方向に発した蛍光を受光する複数の受光素子を有しているため、蛍光染色細胞350の個数の誤計数の発生頻度を更に低減できる。
電気的又は磁気的な検出する方法としては、図23に示すように、液室11’から細胞懸濁液を液滴310’としてプレート700’に吐出する吐出ヘッドの直下に、細胞計数のためのコイル200がセンサとして設置されている。細胞は特定のタンパク質によって修飾され細胞に接着することが可能な磁気ビーズによって覆うことにより、磁気ビーズが付着した細胞がコイル中を通過する際に発生する誘導電流によって、飛翔液滴中の細胞の有無を検出することが可能である。一般的に、細胞はその表面に細胞特有のタンパク質を有しており、このタンパク質に接着することが可能な抗体を磁気ビーズに修飾することによって、細胞に磁気ビーズを付着させることが可能である。このような磁気ビーズとしては既製品を用いることが可能であり、例えば、株式会社ベリタス製のDynabeads(登録商標)が利用可能である。
吐出前に細胞を観測する処理としては、図24に示すマイクロ流路250中を通過してきた細胞350’をカウントする方法や、図25に示す吐出ヘッドのノズル部近傍の画像を取得する方法などが挙げられる。図24はセルソーター装置において用いられている方法であり、例えば、ソニー株式会社製のセルソーターSH800Zを用いることができる。図24では、マイクロ流路250中に光源260からレーザー光を照射して散乱光や蛍光を、集光レンズ265を用いて検出器255により検出することによって細胞の有無や、細胞の種類を識別しながら液滴を形成することが可能である。本方法を用いることによって、マイクロ流路250中に通過した細胞の数から所定のウェル中に着弾した細胞の数を推測することが可能である。
また、図25に示す吐出ヘッド10’としては、Cytena社製のシングルセルプリンターを用いることが可能である。図25では、吐出前において、ノズル部近傍をレンズ265’を介して、画像取得部255’において画像取得した結果からノズル部近傍の細胞350”が吐出されたと推定することや、吐出前後の画像から差分により吐出されたと考えられる細胞の数を推定することによって、所定のウェル中に着弾した細胞の数を推測することができる。図24に示すマイクロ流路中を通過してきた細胞をカウントする方法では、液滴が連続的に生成されるのに対して、図25は、オンデマンドで液滴形成が可能であるため、より好ましい。
着弾後の細胞をカウントする処理としては、プレートにおけるウェルを蛍光顕微鏡などにより観測することにより、蛍光染色した細胞を検出する方法を取ることが可能である。この方法は、例えば、Sangjun et al.,PLoS One,Volume 6(3),e17455などに記載されている。
また、着弾後のプレート上の細胞を検出する手法においても問題がある。まず、プレートとして顕微鏡観察が可能であるものを準備する必要がある。観測可能なプレートとして、一般的に底面が透明かつ平坦なプレート、特に底面がガラス製となっているプレートが用いられるが、特殊なプレートとなってしまうため、一般的なウェルを使用することができなくなる問題がある。また、細胞数が数十個など多いときには、細胞の重なりが発生するため正確な計数ができなくなる問題もある。そのため、液滴の吐出後、かつ液滴のウェルへの着弾前に、液滴に含まれる細胞数をセンサ及び細胞数計数手段によって計数することに加えて、吐出前に細胞を観測する処理、着弾後の細胞をカウントする処理を行うことが好ましい。
1又は少数の受光部を有する受光素子を用いる際には、蛍光強度から細胞が何個入っているかを予め用意された検量線を用いて決定することも考えられるが、主として飛翔液滴中の細胞有無を二値的に検出することが行われる。細胞懸濁液の細胞濃度が十分に低く、液滴中に細胞が1個又は0個しかほぼ入らない状態で吐出を行う際には、二値的な検出で十分精度よく計数を行うことが可能である。細胞懸濁液中で細胞はランダムに配置していることを前提とすれば、飛翔液滴中の細胞数はポアソン分布に従うと考えられ、液滴中に細胞数が2個以上入る確率P(>2)は下記式(1)で表される。図26は、確率P(>2)と平均細胞数の関係を表すグラフである。ここで、λは液滴中の平均細胞数であり、細胞懸濁液中の細胞濃度に吐出液滴の体積を乗じたものになる。
P(>2)=1−(1+λ)×e−λ ・・・ 式(1)
細胞懸濁液調製工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程における推定する核酸の数の確からしさを算出する工程は、細胞懸濁液調製工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程それぞれの工程における確からしさを算出する工程である。
当該推定する核酸の数の確からしさの算出は、細胞懸濁液調製工程における確からしさと同様に算出することができる。
なお、確からしさの算出タイミングは、細胞数計数工程の次工程で、纏めて算出してもよいし、細胞懸濁液調製工程、液滴着弾工程、及び細胞数計数工程の各工程の最後に算出し、細胞数計数工程の次工程で各不確かさを合成して算出してもよい。言い換えれば、上記各工程での確からしさは、合成算出までに適宜算出しておけばよい。
出力工程は、ウェル内に着弾した細胞懸濁液に含まれる細胞数を、センサにより測定された検出結果に基づいて細胞数計数手段にて計数された値を出力する工程である。
計数された値とは、センサにより測定された検出結果から、細胞数計数手段にて当該ウェルに含まれる細胞数を意味する。
出力とは、原動機、通信機、計算機などの装置が入力を受けて計数された値を外部の計数結果記憶手段としてのサーバに電子情報として送信することや、計数された値を印刷物として印刷することを意味する。
出力は、細胞数計数工程と同時に行ってもよく、細胞数計数工程の後に行ってもよい。
記録工程は、出力工程において、出力された観測値又は推測値を記録する工程である。
記録工程は、記録部において好適に実施することができる。
記録は、出力工程と同時に行ってもよく、出力工程の後に行ってもよい。
記録とは、記録媒体に情報を付与することだけでなく、記録部に情報を保存することも含む意味である。
核酸抽出工程は、ウェル内の細胞から核酸を抽出する工程である。
抽出とは、細胞膜や細胞壁などを破壊し、核酸をぬき出すことを意味する。
細胞壁を保有している細胞に関しては、上記の方法で十分にDNA抽出されないことがある。その場合、例えば、浸透圧ショック法、凍結融解法、酵素消化法、DNA抽出用キットの使用、超音波処理法、フレンチプレス法、ホモジナイザーなどの方式などが挙げられる。これらの中でも、抽出DNAのロスが少ないことから、酵素消化法が好ましい。
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酵素失活工程などが挙げられる。
酵素失活工程は、酵素を失活させる工程である。
酵素としては、例えば、DNase、RNase、核酸抽出工程において核酸を抽出するために使用した酵素などが挙げられる。
酵素を失活させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、公知の方法を好適に用いることができる。
デバイスとしては、感染症に対して実施する場合は公定法や通知法などに定められている方法に適用することができる。
<核酸試料の調製>
−高濃度核酸試料希釈系列の作製−
高濃度核酸試料は、濃厚核酸試料としてDNA600−G(国立研究開発法人産業技術総合研究所製、NMIJ CRM 6205−a)と、希釈溶媒としてUltraPure DNase/RNase−Free−Distilled Water(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、10977−015、以下、「NFW」という)とを用いて系列希釈を調製した。
系列希釈試料の濃度は、電子天秤(株式会社エー・アンド・デイ製、BM−22)による濃厚溶液と希釈溶媒の重量計測に基づいて決定した。
−−遺伝子組換え酵母−−
出芽酵母YIL015W BY4741(ATCC社製、ATCC4001408)を1コピーの特定核酸配列のキャリア細胞として組換え体の作製に使用した。
特定核酸配列は、上記DNA600−G配列と選択マーカーとしたURA3とがタンデムに並ぶように作出したプラスミドとして、キャリア細胞のBAR1領域を対象に相同組換えによって1コピーの特定核酸配列を酵母ゲノムDNAに導入し、遺伝子組換え酵母を作製した。
50g/LのYPD培地(タカラバイオ株式会社製、CLN−630409)で培養した遺伝子組換え酵母を90mL分取した三角フラスコに、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、14190−144、以下、「DPBS」と称する)を用いて500μg/mLとなるように調製したα1−Mating Factor acetate salt(Sigma−Aldrich社製、T6901−5MG、以下、「αファクター」という)を900μL添加した。
次いで、バイオシェイカー(タイテック株式会社製、BR−23FH)を用いて、振盪速度:250rpm、温度:28℃にて2時間インキュベートし、酵母をG0/G1期に同調して酵母懸濁液を得た。
同調確認済み酵母懸濁液を遠心管(アズワン株式会社製、VIO−50R)に45mL移し、遠心分離機(株式会社日立製作所製、F16RN)を用いて、回転速度:3000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去して酵母ペレットを得た。
得られた酵母ペレットにホルマリン(和光純薬工業株式会社製、062−01661)を4mL添加し、5分間静置後、遠心して上澄み液を除去し、エタノールを10mL添加して懸濁させることにより、固定化済みの酵母懸濁液を得た。
固定化済み酵母懸濁液を200μL分取し、DPBSで1回洗浄した後、480μLのDPBSに再懸濁した。
次に、20μLの20mg/mL RNase A(株式会社ニッポンジーン製、318−06391)を添加後、バイオシェイカーを用いて37℃で2時間インキュベートした。
次に、25μLの20mg/mLプロテイナーゼK(タカラバイオ株式会社製、TKRー9034)を添加し、プチクール(ワケンビーテック株式会社製、プチクール MiniT−C)を用いて、50℃で2時間インキュベートした。
最後に、6μLの5mM SYTOX Green Nucleic Acid Stain(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、S7020)を加えて、遮光下で30分間染色した。
染色済みの酵母懸濁液を超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150)を用いて、出力:30%、10秒間分散処理して、酵母懸濁インクを得た。
−高濃度核酸試料系列の充填−
高濃度核酸試料系列は、マイクロピペッター(エッペンドルフ株式会社製、3120000011)により、充填容器(96穴平底プレート(ワトソン株式会社製、4846−96−FS))の各ウェルに2.5μLずつ充填した。
−−酵母懸濁液の個数計測分注−−
低濃度の核酸試料系列は、充填容器(96穴平底プレート(ワトソン株式会社製、4846−96−FS))に予め細胞壁溶解用の溶解液を各ウェルに4μLずつ充填した後に、セルソーター(ソニー株式会社製、SH800Z)により各ウェルに1細胞ずつ分注した。
次に、細胞壁溶解液としてTris−EDTA(TE) Buffer(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、AM9861)を用いて、ColE1 DNA(株式会社ニッポンジーン製、312−00434)を5ng/μLとなるようにColE1/TEを調製し、このColE1/TEを用いて、Zymolyase(R) 100T(ナカライテスク株式会社製、07665−55)を1mg/mLとなるように調製したZymolyase溶液を使用した。
次に、セルソーターによる分注では、励起波長488nmで細胞周期の分析を行い、G0/G1期の領域のみを選択して、シングルセルモードにより規定の酵母数を分注した。
酵母からの核酸抽出は、充填容器を37℃にて30分間インキュベートすることにより、細胞壁を溶解(核酸抽出)した後、95℃で2分間熱処理した。
−高濃度核酸試料系列の不確かさ算出−
充填された高濃度核酸試料系列は、以下の不確かさの要因によって特定コピー数水準毎に一定の不確かさを有する。
要因(1):DNA600−G原液の濃度に関する不確かさ
本核酸試料は、同位体希釈質量分析法(IDMS)による核酸塩基測定と、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)によるりん測定によって、総核酸の質量分率が決定された不確かさが値付けされている。
要因(2):希釈溶媒及び濃厚核酸試料溶液の密度の不確かさ
要因(3):重量計測時の電子天秤の不確かさ
要因(4):ポアソン分布に基づく不確かさ
要因(5):核酸試料充填時のマイクロピペッター(エッペンドルフ株式会社製)の不確かさ
これらの要因の1つずつの不確かさを表2に示した。
不確かさの合成は、一般的な不確かさの合成手法により合成し、最終的に充填される特定コピー数水準の平均特定コピー数と不確かさを算出した。結果を表3に示した。
・2G:DNA600G原液の希釈液
・200M:2Gの希釈液
・20M:200Mの希釈液
・2M:20Mの希釈液
・200k:2Mの希釈液
・20k:200kの希釈液
・4k:20kの希釈液
・1k:4kの希釈液
・250:1kの希釈液
・70:250の希釈液
・NFW:UltraPure DNase/RNase−Free−Distilled Water(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、10977−015
表3の結果から、充填する核酸試料の平均核酸コピー数とその不確かさを値付けることができた。
充填された低濃度核酸試料系列は、以下の不確かさの要因によって特定コピー数水準毎に一定の不確かさを有する。
要因i:吐出液滴毎の酵母数一致率に関する不確かさ
要因iに関する不確かさは、充填方法と同条件にて別容器に吐出し、その着弾液滴内の酵母数と狙いの酵母数の一致率に基づいて算出した。実験条件及び結果は以下の通りである。
充填容器として96穴平底プレート(ワトソン株式会社製、4846−96−FS)を用い、上記「酵母懸濁液の個数計測分注」と同様の条件にて、セルソーターにより各ウェルに1粒子(1細胞)を分注した後、蛍光顕微鏡(カールツァイス株式会社製、Axio Observer D1)にて488nmの励起光により蛍光顕微鏡観察を行った。結果を図27A及び図27Bに示した。各液滴内に存在する酵母数と狙いの酵母数(1粒子;特定コピー数=1)の正誤を判定して一致率を求めた。結果を表4に示した。
以上より、各充填核酸試料の平均特定コピー数及び不確かさを算出した。結果を表5に示した。変動係数CV値は、不確かさを平均特定コピー数で除することにより求めた。
上記「高濃度核酸試料系列の不確かさ算出」及び「低濃度核酸試料系列の不確かさ算出」により算出された不確かさを各ウェルへ値付けした。
以上より、高濃度核酸試料系列及び低濃度核酸試料系列の平均核酸コピー数とその不確かさ算出し、各ウェルへの値付けをすることができた。
−染色−
固定化済み酵母懸濁液を1.5mL遮光チューブ(ワトソン株式会社製、131−915BR)に500μL移し、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去し、1mM EDTA(TOCRIS社製、200−449−4)となるように調製したDPBS(1mM EDTA)を400μL添加し、ピペッティングでよく懸濁した後、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmで5分間遠心し、上澄み液を除去することにより酵母ペレットを得た。得られたペレットに1mg/mLに調製したエバンスブルー水溶液(和光純薬工業株式会社製、054−04061)を1mL添加し、ボルテックスを用いて5分間撹拌後、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmで5分間遠心し、上澄み液を除去し、DPBS(1mM EDTA)を添加し、ボルテックスで撹拌することにより染色済み酵母懸濁液を得た。
−分散−
染色済みの酵母懸濁液を超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150)を用いて、出力:30%、10秒間分散処理し、遠心分離機を用いて回転速度:3,000rpmにて5分間遠心し、上澄み液を除去し、DPBSを1mL添加して洗浄した。遠心分離、上澄み液の除去を計2回実施し、再度DPBS1mLに懸濁して酵母懸濁インクを得た。
以下のようにして、液滴中の酵母菌の数を計数(カウント)して、各ウェルに特定コピー数として1、2、4、8、16、21、64、128細胞ずつ吐出して細胞数が既知のプレートを作製した。具体的には、図19に示す液滴形成装置を用いて、96プレート(商品名:MicroAmp 96−well Reaction plate、Thermofisher社製)の各ウェルに、液滴吐出手段として圧電印加方式の吐出ヘッド(社内製)を用いて10Hzにて酵母懸濁インクを順次吐出した。
吐出された液滴中の酵母の受光手段としては高感度カメラ(東京インスツルメンツ株式会社製、sCMOS pco.edge)を用いて撮影した。光源としてはYAGレーザー(スペクトラ・フィジックス社製、Explorer ONE−532−200−KE)を用い、撮影した画像の粒子計数手段として画像処理ソフトウェアであるImage Jを用いて画像処理して細胞数を計数し、細胞数の既知プレートを作製した。
Tris−EDTA(TE) Bufferを用いてColE1 DNA(和光純薬工業株式会社製、312−00434)を5ng/μLとなるようにColE1/TEを調製し、ColE1/TEを用いてZymolyase(R) 100T(ナカライテスク株式会社製、07665−55)を1mg/mLとなるようにZymolyase溶液を調製した。
作製した細胞数既知プレートの各ウェルにZymolyase溶液を4μL添加し、37.2℃にて30分間インキュベートすることにより、細胞壁溶解(核酸抽出)後、95℃で2分間熱処理して、参照デバイスを作製した。
本実施例では、不確かさの要因として、液滴中の細胞数、細胞中の増幅可能な試薬のコピー数、ウェル内の細胞数、コンタミネーションを用いた。
液滴中の細胞数は、吐出手段より吐出された液滴の画像を解析し計数した液滴中の細胞数と、吐出手段で吐出した液滴をスライドガラスに着弾させ着弾した液滴毎に顕微鏡観察し得られた細胞数とを用いた。
細胞中の核酸コピー数(細胞周期)は、細胞周期のG1期に該当する細胞の割合(99.5%)、G2期に該当する細胞の割合(0.5%)とを用いて算出した。
ウェル内の細胞数は、吐出した液滴がウェル内に着弾する数を計数したが、96サンプルの計数においてすべての液滴がウェル内に着弾していたため、ウェル内の細胞数の要因は不確かさの計算から除外した。
コンタミネーションは、インクのろ液4μLをリアルタイムPCRで細胞中の増幅可能な試薬以外の核酸がインク液中に混入していないか3回の試行を行い確認した。その結果、3回すべてにおいて検出下限値となったため、コンタミネーションの要因についても不確かさの掲載から除外した。
不確かさは各要因の測定値から標準偏差を求め、感度係数を乗じて測定量の単位に統一した標準不確かさを平方和法により合成標準不確かさを求める。合成標準不確かさでは、正規分布の約68%の範囲の値しか含まれないため、合成標準不確かさを2倍した拡張不確かさとすることにより正規分布の約95%の範囲を考慮した不確かさを得ることができる。下記表6のバジェットシートに結果を示す。
表6中、「値(±)」とは、平均値の実験標準偏差であり、算出した実験標準偏差をデータの数の平方根の値で除したものである。
表6中、「確率分布」とは、不確かさの要因がもつ確率分布であり、Aタイプの不確かさ評価の場合には空欄とし、Bタイプの不確かさ評価には、正規分布又は矩形分布のいずれかを記入する。本実施例においてはAタイプの不確かさ評価のみを行っているため、確率分布の欄は空欄となっている。
表6中、「除数」とは、それぞれ要因から得られる不確かさを正規化する数を意味する。
表6中、「標準不確かさ」とは「値(±)」を「除数」で除した値である。
表6中、「感度係数」とは、測定量の単位に統一するために用いられる値を意味する。
<1> 増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満である増幅可能な試薬を含むウェルと、
増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上である増幅可能な試薬を含むウェルと、をそれぞれ少なくとも1つ以上有し、
前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの前記特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、前記増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV<1/√xを満たすことを特徴とするデバイスである。
<2> 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるウェルの変動係数のCV値が20%以下である前記<1>に記載のデバイスである。
<3> 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの変動係数のCV値が10%以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載のデバイスである。
<4> 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であって、前記特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、前記増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV>1/√xを満たす前記<1>から<3>のいずれかに記載のデバイスである。
<5> 前記ウェルに充填される前記増幅可能な試薬の特定コピー数が2水準以上である前記<1>から<4>のいずれかに記載のデバイスである。
<6> 更に、前記ウェルにおける前記増幅可能な試薬が特定コピー数である場合の前記特定コピー数における不確かさの情報を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載のデバイスである。
<7> 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの変動係数のCV値の情報、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるウェルの変動係数のCV値の情報、及び前記特定コピー数における不確かさの情報の少なくともいずれかを識別可能な識別手段を有する前記<6>に記載のデバイスである。
<8> 前記ウェルの開口部を密閉する密閉部材を有する前記<1>から<7>のいずれかに記載のデバイスである。
<9> 前記増幅可能な試薬が核酸である前記<8>に記載のデバイスである。
<10> 前記核酸が細胞の核中の核酸に組み込まれた前記<9>に記載のデバイスである。
<11> 前記細胞が酵母である前記<10>に記載のデバイスである。
<12> 前記ウェルが、プライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを有する前記<1>から<11>のいずれかに記載のデバイスである。
<13> 前記ウェルが複数であって、
前記各ウェル内の核酸の特定コピー数及び前記核酸の特定コピー数の不確かさを各ウェル毎の情報として有する前記<6>から<12>のいずれかに記載のデバイスである。
<14> 前記ウェルが保持される基材を有し、前記識別手段は、前記密閉部材と前記基材との間に配置される前記<8>から<13>のいずれかに記載のデバイスである。
<15> 核酸を増幅可能なPCR装置の評価に用いられるデバイスであって、
少なくとも1つのウェルを有し、
少なくとも1つの前記ウェル内の核酸の特定コピー数及び前記核酸の特定コピー数の不確かさの情報を有することを特徴とするデバイスである。
<16> 前記デバイスによる核酸増幅の結果と、前記核酸の特定コピー数及び前記核酸の特定コピー数の不確かさの情報とを、前記PCR装置の管理に用いる前記<15>に記載のデバイスである。
2 基材
3 ウェル
4 増幅可能な試薬
5 密閉部材
Claims (16)
- 増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満である増幅可能な試薬を含むウェルと、
増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上である増幅可能な試薬を含むウェルと、をそれぞれ少なくとも1つ以上有し、
前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの前記特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、前記増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV<1/√xを満たすことを特徴とするデバイス。 - 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるウェルの変動係数のCV値が20%以下である請求項1に記載のデバイス。
- 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの変動係数のCV値が10%以下である請求項1から2のいずれかに記載のデバイス。
- 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であって、前記特定コピー数である場合の変動係数のCV値と、前記増幅可能な試薬の平均特定コピー数xとが、次式、CV>1/√xを満たす請求項1から3のいずれかに記載のデバイス。
- 前記ウェルに充填される前記増幅可能な試薬の特定コピー数が2水準以上である請求項1から4のいずれかに記載のデバイス。
- 更に、前記ウェルにおける前記増幅可能な試薬が特定コピー数である場合の前記特定コピー数における不確かさの情報を有する請求項1から5のいずれかに記載のデバイス。
- 前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100未満であるウェルの変動係数のCV値の情報、前記増幅可能な試薬の特定コピー数が100以上であるウェルの変動係数のCV値の情報、及び前記特定コピー数における不確かさの情報の少なくともいずれかを識別可能な識別手段を有する請求項6に記載のデバイス。
- 前記ウェルの開口部を密閉する密閉部材を有する請求項1から7のいずれかに記載のデバイス。
- 前記増幅可能な試薬が核酸である請求項8に記載のデバイス。
- 前記核酸が細胞の核中の核酸に組み込まれた請求項9に記載のデバイス。
- 前記細胞が酵母である請求項10に記載のデバイス。
- 前記ウェルが、プライマー及び増幅試薬の少なくともいずれかを有する請求項1から11のいずれかに記載のデバイス。
- 前記ウェルが複数であって、
前記各ウェル内の核酸の特定コピー数及び前記核酸の特定コピー数の不確かさを各ウェル毎の情報として有する請求項6から12のいずれかに記載のデバイス。 - 前記ウェルが保持される基材を有し、前記識別手段は、前記密閉部材と前記基材との間に配置される請求項8から13のいずれかに記載のデバイス。
- 核酸を増幅可能なPCR装置の評価に用いられるデバイスであって、
少なくとも1つのウェルを有し、
少なくとも1つの前記ウェル内の核酸の特定コピー数及び前記核酸の特定コピー数の不確かさの情報を有することを特徴とするデバイス。 - 前記デバイスによる核酸増幅の結果と、前記核酸の特定コピー数及び前記核酸の特定コピー数の不確かさの情報とを、前記PCR装置の管理に用いる請求項15に記載のデバイス。
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