JP2019089443A - 船舶 - Google Patents

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Abstract

【課題】船体の満載喫水線以下の全長を増加させることなく、居住区や貨物積載部の縮小を抑制すると共に推進性能を向上させる。【解決手段】フルード数が0.25から0.50の船舶である。船舶は、船体2を備える。船体2は、船首バルブ7と、第一船首プロファイル80と、第二船首プロファイル85とを備える。船首バブル7は、上端7bを有する。上端7bは、満載喫水線よりも下方で且つ最軽荷喫水線以上の上方に配置されている。第一船首プロファイル80は、船首バルブ7の最前端7aから鉛直上方に向かって延びる第一前縁81を有する。第二船首プロファイル85は、第一前縁81につながり、満載喫水線以上の上方から前方に向いつつ上方に向って延びる第二前縁86を有する。【選択図】図2

Description

この発明は、船舶に関する。
船舶の推進性能を向上するためには、船体抵抗を低下させる手法と、推進効率を向上させる手法とがある。特に船体抵抗の低減は、推進性能の向上に大きく寄与する。
船舶の全抵抗は、摩擦抵抗と剰余抵抗という大きく2つの抵抗成分に分類することができる。さらに、剰余抵抗は、造波抵抗と粘性圧力抵抗とに分類できる。造波抵抗の低減には、船首形状を改良する技術が知られている。
上述した造波抵抗を低減するための船首形状としては、例えば、船首バルブ(又はバルバスバウ)が挙げられる。この船首バルブは、主船体が作る波と逆位相の波を意図的に発生させる。この船首バルブが作る波は、主船体が作る波を打ち消す方向に作用する。そのため、合成船首波高が低減されて造波抵抗を低減させることができる。しかし、その効果は限定的であるため、更なる造波抵抗の低減が望まれている。
剰余抵抗は、全抵抗から摩擦抵抗を除いた抵抗成分であって、船舶の幅寸法に対する長さ寸法の比率が大きくなるほど低減される傾向がある。これは、船舶の長さが長くなることで船体が痩せることによる粘性圧力抵抗の低下や、船舶の水線長が長くなることによる造波抵抗の低減によるものである。しかしながら、船舶の全長は、岸壁設備等の条件に応じて制限される。そのため、船舶の水線長を延長することには限界がある。
以下の特許文献1には、フルード数が0.18から0.23の船舶における船首造波抵抗の低減を目的とする技術が開示されている。この技術では、船首最先端ラインを、計画速力において計画満載喫水線の少し下方付近から水面の盛り上がりにより水に接する部分の水線面を含む高さまで略垂直上方に延ばし(アップライト船首プロファイル)、その範囲の水線面形状を先鋭にする。この技術によれば、全長制限をクリアして輸送効率の良い大きなカーゴホールドを確保しつつ、設計速力における船首端の水面の盛り上がりを小さくし、船首波崩れをなくすことが可能になる。
また、以下の特許文献2には、満載喫水線下に船首バルブと満載喫水線の近傍の船舶前端とを略同一位置に配置することでフルード数を低減させて、造波抵抗を軽減する技術が記載されている。
特開2003−160090号公報 特開2005−335670号公報
ところで、特許文献1に記載の技術では、比較的フルード数の小さい船舶を前提としている。離島航路のフェリーなど、高速化が要求される船舶では、フルード数が0.25を超えることが想定される。このようにフルード数が0.25を超えると造波抵抗の増加が顕著となり、フルード数が0.50を超えたところで極大値(以下、ラストハンプと称する)になる。ここで、ラストハンプを超えると、造波抵抗は低下する。例えば、水中翼船などは、このラストハンプを超えた領域で航走している。しかし、上述した排水量型の船舶は、一般にラストハンプを超えることはない。そのため、速力の増加に伴って造波抵抗が急激に増加して推進効率が低下してしまう。
船舶の全長を変えずに、速力の増加に伴う推進性能の低下を抑制するためには、船舶の全長を変えずに全幅を小さくして痩せさせることが考えられる。しかし、全幅が小さくなるため居住区や貨物積載部が縮小してしまうと共に、復原性能を確保することが困難になるという課題がある。
本発明は、フルード数が0.25から0.50の場合に、船体の満載喫水線以下の全長を増加させることなく、居住区や貨物積載部の縮小を抑制すると共に推進性能を向上させることができる船舶を提供することを目的とする。
前記目的を達成するための本発明に係る第一態様の船舶は、
フルード数が0.25から0.50の船舶であって、船体を備える。前記船体は、上端を有し、前記上端が満載喫水線よりも下方で且つ最軽荷喫水線以上の上方に配置される船首バルブと、前記船首バルブの最前端から鉛直上方に向かって延びる第一前縁を有する第一船首プロファイルと、前記第一前縁につながり、前記満載喫水線以上の上方から前方に向いつつ上方に向って延びる第二前縁を有する第二船首プロファイルと、を備える。
本態様では、船首バルブの最前端から鉛直上方に向かって延びる第一前縁を有する第一船首プロファイルが形成されているので、フルード数が0.25から0.50の船舶において、船体の満載喫水線以下の全長を増加させることなく水線長を延長して、フルード数を低下させることができる。そのため、剰余抵抗のうち、特に造波抵抗を低減できる。水線長が延長されることで、プリズマチック曲線をなだらかにすることができるため、造波抵抗を低減できる。水線長の延長により方形係数を小さくすることができるため、粘性圧力抵抗を低減できる。フルード数が0.25から0.50の船舶で、計画速力が遅い船舶、即ち、船舶の水線長が比較的短い船舶については、針路安定性を向上させることができる。
また、本態様では、第一前縁につながり、満載喫水線以上の上方から前方に向いつつ上方に向って延びる第二前縁を有する第二船首プロファイルが形成されている。このため、満載喫水線以上の上方の位置における水平断面で、第二前縁でつながる一対の舷側が成す角度を小さくすることができる。よって、本態様では、造波抵抗、実海域の波浪中抵抗増加、さらに、造波抵抗を含む剰余抵抗を抑えることができる。さらに、本態様では、第二船首プロファイルが形成されているので、岸壁に対する離接岸で、アンカーを使用する際に、船体の回頭中にアンカーが船首端を回り込んで、反対舷側に至ることを抑えることができる。
また、本態様では、船首バルブの上端が最軽荷喫水線以上であるため、船首付近の波高位置を船首側に移動させることができるとともに、波高を抑制することができる。そのため、アンカー位置を船首側に移動させて、これに合わせて上甲板のウインドラス等を船首側に移動できる。その結果、船体の全長を増加させることなく、居住区や貨物積載部の縮小を抑制すると共に、推進性能を向上させることができる。
前記目的を達成するための本発明に係る第二態様の船舶は、
前記第一態様の船舶において、前記船体は、上甲板を備える。前記満載喫水線における水線長をL1とした場合、前記上甲板と前部垂線との交点から船首端までの船首尾方向の距離は、0より大きく、且つ0.10×L1以下である。
前記目的を達成するための本発明に係る第三態様の船舶は、
前記第一態様の船舶において、前記船体は、上甲板を備える。前記満喫水線における水線長をL1とした場合、前記上甲板と前部垂線との交点から船首端までの船首尾方向の距離は、0より大きく、且つ0.05×L1以下である。
上甲板と前部垂線との交点から船首端までの船首尾方向の距離は、大きければ大きいほど、第二前縁でつながる一対の舷側が成す角度を小さくすることができ、造波抵抗及び波浪中抵抗増加を抑えることができる。このため、この距離は、造波抵抗及び波浪中抵抗増加を抑えるという観点からは、第二態様のように、0より大きく且つ0.10L1以下であることが好ましい。但し、船舶が入港する港のサイズ等の制約等がある場合、この距離は、第三態様のように、0より大きく且つ0.05L1以下であってもよい。
前記目的を達成するための本発明に係る第四態様の船舶は、
前記第一から第三態様のいずれかの船舶において、船底位置から前記満載喫水線までの高さをHとした場合、前記満載喫水線から前記第二前縁の下端までの鉛直方向の距離は、0以上、且つ0.50×H以下である。
前記目的を達成するための本発明に係る第五態様の船舶は、
前記第一から第三態様のいずれかの船舶において、船底位置から前記満載喫水線までの高さをHとした場合、前記満載喫水線から前記第二前縁の下端までの鉛直方向の距離は、0以上、且つ0.30×H以下である。
前記目的を達成するための本発明に係る第六態様の船舶は、
前記第一から第三態様のいずれかの船舶において、船底位置から前記満載喫水線までの高さをHとした場合、前記満載喫水線から前記第二前縁の下端までの鉛直方向の距離は、0以上、且つ0.20×H以下である。
満載喫水線から第二前縁の下端(第一前縁の上端)までの距離は、小さければ小さいほど、造波抵抗及び波浪中抵抗増加を抑えることができる。このため、この距離は、造波抵抗及び波浪中抵抗増加を抑えるという観点からは、第六態様のように、0以上で且つ0.20H以下であることが好ましい。但し、船舶が入港する港のサイズ等の制約等がある場合、この距離は、第五態様のように、0以上で且つ0.30H以下であってもよいし、第四態様のように、0以上で且つ0.50H以下であってもよい。
前記目的を達成するための本発明に係る第七態様の船舶は、
以上のいずれかの態様の船舶において、前部垂線から前記船体の全長の1%後方における断面での前記船首バルブの前記上端が、0.7H以上の位置に配置されている。
本態様では、アンカーを船首端側、つまり前方に配置することができる。そのため、ウインドラス等を船首側に配置させた場合には、その分だけ居住区や貨物積載部を拡大することができる。
前記目的を達成するための本発明に係る第八態様の船舶は、
以上のいずれかの態様の船舶において、前記満載喫水線における水線長をL1とした場合、L1は港の満載喫水線以下の全長制限以下である。
前記目的を達成するための本発明に係る第九態様の船舶は、
以上のいずれかの態様の船舶において、方形係数Cbが0.6以下である。
本態様では、方形係数Cbが0.6以下で喫水差の少ない、いわゆる痩せ形の船舶において、効率よく剰余抵抗を低減させて推進性能を向上することができると共に、針路安定性の向上も図ることができる。
前記目的を達成するための本発明に係る第十態様の船舶は、
前記第八態様の船舶において、旅客船である。
前記目的を達成するための本発明に係る第十一態様の船舶は、
前記第八態様の船舶において、貨物船である。
前記目的を達成するための本発明に係る第十二態様の船舶は、
以上のいずれかの態様の船舶において、前記船体の全長が300m以下である。
前記目的を達成するための本発明に係る第十三態様の船舶は、
以上のいずれかの態様の船舶において、前記船体の全長が250m以下である。
前記目的を達成するための本発明に係る第十四態様の船舶は、
以上のいずれかの態様の船舶において、前記船体の全長が200m以下である。
前記目的を達成するための本発明に係る第十五態様の船舶は、
以上のいずれかの態様の船舶において、前記船体の全長が150m以下である。
前記目的を達成するための本発明に係る第十六態様の船舶は、
以上のいずれかの態様の船舶において、前記船体の全長が120m以下である。
前記目的を達成するための本発明に係る第十七態様の船舶は、
以上のいずれかの態様の船舶において、前記船体の全長が100m以下である。
前記目的を達成するための本発明に係る第十八態様の船舶は、
以上のいずれかの態様の船舶において、前記船体の全長が80m以下である。
本発明の一態様によれば、船体の全長を増加させることなく、居住区や貨物積載部の縮小を抑制すると共に推進性能を向上させることができる。
本発明の一実施形態における船舶の全体側面図である。 図1における船舶の船首近傍の拡大側面図である。 図2のIII−III線(前部垂線F.P.から船体の全長の1%後方の位置)における断面図である。 図2のIV−IV線断面図である。 図2のV−V線断面図である。 比較例1における船舶の船首近傍の拡大側面図である。 比較例2における船舶の船首近傍の拡大側面図である。 船首尾方向における任意の位置におけるプリズマチック係数Cpを示すグラフである。 フルード数Fnと造波抵抗係数Cwとの関係を示すグラフである。 図9中の二点鎖線で囲まれた部分を拡大したグラフである。 フルード数Fnと剰余抵抗係数Crとの関係を示すグラフである。 図11中の二点鎖線で囲まれた部分を拡大したグラフである。 フルード数Fnと制動馬力BHPとの関係を示すグラフである。 図13中の二点鎖線で囲まれた部分を拡大したグラフである。 船首尾方向の任意の位置における波高(wave height)を示すグラフである。 比較例3における船舶の前部垂線F.P.から船体の全長の1%後方の位置における断面図である。 本発明の一実施形態の変形例における船舶の船首近傍の拡大側面図である。 本発明の一実施形態の他の変形例における船舶の船首近傍の拡大側面図である。
次に、本発明の一実施形態に係る船舶について図面に基づき説明する。
図1は、この発明の実施形態における船舶の全体構成を示す側面図である。図2は、図1における船舶の船首近傍の拡大図である。なお、図1中、「F.P.」は、船体2の前部垂線、「A.P.」は、船体2の後部垂線である。水線長L1は、計画満載喫水線D.L.W.L.の長さである。この図1の場合、水線長L1は、後部垂線A.P.よりも僅かに船尾端に近い側の位置から前部垂線F.P.までの長さである。また、以下の説明の都合上、船首尾方向Dで、船尾2bを基準にして船首2a側の向きを前方Dfとし、船首2aを基準にして船尾2b側の向きを後方Dbとする。
本実施形態の船舶は、速力が比較的速いフルード数が0.25から0.50程度までの船舶である。船舶は、例えば、客船、車両を運搬可能なフェリー、貨物を運搬可能な貨客船等の旅客船、RORO船(Roll−on/Roll−off船)、コンテナ船、および、自動車運搬船等の乾貨物船である。「旅客船」には、海洋調査を行う「調査船」を含めてもよい。旅客船や貨物船は、方形係数Cbが0.6以下の比較的痩せ形の船舶に分類される。
図1に示すように、この船舶は、船体2と、アンカー4と、プロペラ5と、舵6と、を備える。船体2は、船首2aと、船尾2bと、を有する。アンカー4は、船首2aよる造波との接触を避けるために、船首尾方向Dにおける造波の波高位置よりも船体2の船首2a中の後方Dbの位置、又は船首2aの僅かに後方Dbの位置に配置される。船首2aの上甲板3上には、ウインドラス等の揚錨機が設けられている。アンカー4は、この揚錨機に接続されている。舵6及びプロペラ5は、船体2の船尾2bに近い所に設けられている。プロペラ5は、船体2内に設けられた主機(図示せず)によって駆動される。プロペラ5は、船舶を推進させる推進力を発生させる。舵6は、プロペラ5の後方Dbに設けられている。舵6は、船体2の進行方向を制御する。プロペラ5及び舵6については、これらに限定されない。プロペラ5及び舵6は、同様の推進・操舵効果が得られるもの、例えばアジマス推進器、ポッド推進器、アジマス推進器とプロペラ、ポッド推進器とプロペラ等から構成される推進装置であってもよい。
船首2aには、前述の上甲板3と、船首バルブ7と、船首プロファイル(ステム又は舳先)8と、が形成されている。
船首バルブ7は、船舶が航行する際に船体2が作る波と逆位相の波を意図的に発生させる。この船首バルブ7が作る波は、船体2が作る波を打ち消す方向に作用する。そのため、合成船首波高が低減されて造波抵抗が低減される。この船首バルブ7は、図2及び図3に示すように、船首バルブ7中で最も上の上端7bを有する。この上端7bは、計画満載喫水線D.L.W.L.よりも下方で且つ最軽荷喫水線WL以上の上方に配置される。なお、図1は、計画満載喫水線D.L.W.L.まで沈んでいる船舶を示している。
船首プロファイル8は、図2に示すように、第一船首プロファイル80と、第二船首プロファイル85と、を有する。第一船首プロファイル80は、船首バルブ7の最前端7aから鉛直上方に向かって延びる第一前縁81を有する。この第一前縁81は、前部垂線F.P.上に形成されている。第二船首プロファイル85は、計画満載喫水線D.L.W.L.以上の上方から前方Dfに向いつつ上方に向って延びる第二前縁86を有する。第一前縁81の上端と第二前縁86の下端86aとは同一位置である。よって、第二前縁86は、第一前縁81の上端につながっている。
図3は、図2のIII−III線断面図である。この断面は、前部垂線F.P.から船体2の全長の1%後方Dbにおける断面である。また、図4は、図2のIV−IV線断面図であり、図5は、図2のV−V線断面図である。
図3及び図4に示すように、第一船首プロファイル80は、前述の第一前縁81と、一対の第一舷側82と、を有する。一対の第一舷側82の間隔は、前方に向うに連れて、次第に狭まっている。一対の第一舷側82の相互は、第一前縁81でつながっている。一対の第一舷側82は、いずれも、相手側の第一舷側82に近づく側に僅かに凹状に湾曲した曲面である。また、一対の第一舷側82は、船首尾方向Dから見ると、ほぼ平行である。
図3及び図5に示すように、第二船首プロファイル85は、前述の第二前縁86と、一対の第二舷側87と、を有する。第二舷側87は、第一舷側82の上縁につながっている。一対の第二舷側87の間隔は、前方に向うに連れて、次第に狭まっている。一対の第二舷側87の相互は、第二前縁86でつながっている。一対の第二舷側87は、いずれも、相手側の第二舷側87に近づく側に僅かに凹状に湾曲した曲面である。また、一対の第二舷側87の間隔は、船首尾方向Dから見ると、上方に向うに連れて、次第に広がっている。一対の第二舷側87の上縁及び第二前縁86の上端は、いずれも、上甲板3につながっている。
図2に示すように、上下方向における船底位置B.L.から計画満載喫水線D.L.W.L.までの高さをHとした場合、上下方向における船底位置B.L.から上述した船首バルブ7の上端7bまでの高さ位置hは、以下の式(1)に示すように、0.7×H以上である。
h ≧ 0.7×H ・・・・・・・(1)
図3に示すように、船首尾方向Dに対して垂直な面での船首バルブ7の断面形状は、縦方向に長い円形状である。この船首バルブ7の上端7bは、例えば、図3に示す船首バルブ7の上部に形成されている一対の第一舷側82同士の距離が最も小さくなり、かつ一対の第一舷側82で船底位置B.L.に最も近い箇所である。船首バルブ7の上端は、前述したように、最軽荷喫水線WL以上の上方である。この最軽荷喫水線WLは、損傷時復原性の要件により決定される。この実施形態における船舶の最軽荷喫水線WLの高さは、計画満載喫水線D.L.W.L.の高さの70%以上である。
つまり、フェリー、RORO船等の喫水差があまり大きくない痩せ型の船においては、航走時の船首沈下や船首波の盛り上がりを考慮すると、満載から軽荷状態までの全ての積み付け状態において船首バルブ7を没水させることができる。
図2に示すように、上甲板3と前部垂線F.P.との交点から船首端までの船首尾方向Dの距離aは、以下の式(2)に示すように、0より大きく、且つ0.05×L1以下である。なお、L1は、前述したように、計画満載喫水線D.L.W.L.の長さである水線長である。また、このL1は、港の満載喫水線以下の全長制限以下である。

0 < a ≦ 0.05×L1 ・・・・・・・(2)
この距離aは、以下の式(3)に示すように、0より大きく、且つ0.10×L1以下であってもよい。
0 < a ≦ 0.10×L1 ・・・・・・・(3)
上下方向における計画満載喫水線D.L.W.L.から第二前縁86の下端(第一前縁81の上端)86aまでの距離bは、以下の式(4)に示すように、0以上、且つ0.20×H以下である。
0 ≦ b ≦ 0.20×H ・・・・・・・(4)
この距離bは、以下の式(5)に示すように、0以上、且つ0.30×H以下であってもよい。
0 ≦ b ≦ 0.30×H ・・・・・・・(5)
この距離bは、さらに、以下の式(6)に示すように、0以上、且つ0.50×H以下であってもよい。
0 ≦ b ≦ 0.50×H ・・・・・・・(6)
次に、上述した実施形態の船舶の効果を説明する。なお、実施形態の船舶の効果について説明する前に、比較例1の船舶、及び比較例2の船舶について説明する。
図6に示すように、比較例1の船舶の船首にも、上甲板103と、船首バルブ107と、船首プロファイル180と、が形成されている。
船首バルブ107の前縁中で、船首バルブ107の最前端107aより上部の前縁107cは、最前端107aの位置から後方に延びている。船首プロファイル180は、この船首バルブ107の前縁107cで最も後方で且つ最も上方の上端107bからほぼ前方に向って傾斜する前縁181を有する。
比較例1においても、本実施形態と同様、上下方向における船底位置B.L.から船首バルブ107の上端107bまでの高さ位置hは、前述の式(1)の条件を満たす。
図7に示すように、比較例2の船舶の船首にも、上甲板203と、船首バルブ7と、船首プロファイル280と、が形成されている。
船首プロファイル280は、本実施形態の第一船首プロファイル80と同様に、船首バルブ7の最前端7aから鉛直上方に向かって上甲板203まで延びる前縁281を有する。この前縁281は、前部垂線F.P.上に形成されている。
比較例2においても、本実施形態と同様、上下方向における船底位置B.L.から船首バルブ7の上端7bまでの高さ位置hは、前述の式(1)の条件を満たす。
本実施形態の船舶における第一船首プロファイル80の第一前縁81、及び比較例2の船舶における船首プロファイル280の前縁281は、船首バルブ7の最前端7aから鉛直上方に向かって延びている。このため、本実施形態の船舶における水線長L1と比較例2の船舶における水線長とは、同じである。一方、比較例1の船舶における船首プロファイル180の前縁181は、船首バルブ107の前縁107cで最も後方で且つ最も上方の上端107bからほぼ前方に向って傾斜している。このため、比較例1の船舶における水線長は、本実施形態の船舶及び比較例2の船舶における水線長L1より短い。言い換えると、本実施形態の船舶及び比較例2の船舶における水線長L1は、比較例1の船舶における水線長より長い。
図8は、船首尾方向Dにおける任意の位置S.S.におけるプリズマチック係数Cpを示すグラフである。図8中、横軸は、船首尾方向Dの位置S.S.、縦軸は、プリズマチック係数Cpである。S.S.0は、船体の中央の位置を示す。また、例えば、S.S.1は、S.S.0から前部垂線F.P.と後部水線A.P.との間の距離である垂線間長Lppの0.1倍の距離の位置を示す。なお、S.S. −5は、本実施形態、比較例1及び比較例2の後部垂線A.P.の位置である。また、S.S. 5は、比較例1の前部垂線F.P.の位置であり、S.S. 6は、本実施形態及び比較例2の前部垂線F.P.の位置である。
前述したように、本実施形態の船舶及び比較例2の船舶は、比較例1の船舶よりも、前方に水線長L1が延長されている。このため、図8に示すように、本実施形態の船舶及び比較例2の船舶のプリズマチック曲線(図8中、実線)は、比較例1のプリズマチック曲線(図8中、破線)よりも、船首側で傾斜が緩やかになっている。これは、船体の幅及び排水量が一定の場合に、本実施形態の船舶及び比較例2の船舶では、比較例1の船舶に比べて、船体の中央における断面積に対する船首側の断面積の比を減少させることができるからである。これにより、本実施形態の船舶及び比較例2の船舶では、船体のいわゆる肩部と称される部位で生じる造波を小さくすることができる。また、本実施形態の船舶及び比較例2の船舶では、船体の幅及び排水量を一定にしたまま、船体を相対的に痩せさせることができる。このため、本実施形態の船舶及び比較例2の船舶では、粘性圧力抵抗を低減することができる。
図9及び図10は、フルード数Fnと造波抵抗係数Cwとの関係を示すグラフである。図9及び図10中、横軸は、フルード数Fn、縦軸は、造波抵抗係数Cwである。図10は、図9中の二点鎖線で囲まれた部分を拡大したグラフである。図9及び図10中、黒四角で示す点は、比較例1におけるフルード数Fnと造波抵抗係数Cwとの関係を示す点である。図9及び図10中、白四角で示す点は、比較例2におけるフルード数Fnと造波抵抗係数Cwとの関係を示す点である。図9及び図10中、白丸で示す点は、本実施形態におけるフルード数Fnと造波抵抗係数Cwとの関係を示す点である。
フルード数Fnは、以下の式(7)で表せる値である。
Fn=(Vs/(gL)0.5 ・・・・・・・(7)
なお、式(7)中で、Vsは計画速力、gは重力加速度、Lは計画満載喫水線における水線長である。
式(7)から理解できるように、フルード数Fnは、計画速力Vsを一定とした場合、水線長Lが長いほど小さくなる。
図9に示すように、造波抵抗係数Cwは、フルード数Fnが0.25よりも上、とりわけフルード数Fnが0.28よりも上の領域において、フルード数Fnの増加に伴って、増加する。この造波抵抗係数Cwの増加率は、フルード数Fnが0.25から上昇するに従って、徐々に大きくなり、フルード数Fnが0.32付近で一定となる。造波抵抗係数Cwの増加率は、フルード数Fnが0.35を超える辺りから徐々に小さくなる。この造波抵抗係数Cwは、フルード数が0.38で極大値になり、その後、減少に転ずる。この造波抵抗係数Cwの増減は、ハンプと称される。フルード数Fnが0.38から増加すると、造波抵抗係数Cwが小さくなり、造波抵抗係数Cwは、フルード数Fnが0.43で極小値になる。フルード数Fnが0.43から増加すると、造波抵抗係数Cwが大きくなり、造波抵抗係数Cwは、フルード数Fnが0.50で再び極大値になり、その後、減少に転ずる。この造波抵抗係数Cwの増減も、ハンプと称される。特に、このハンプは、ラストハンプと称される。
本実施形態の船舶におけるフルード数Fnは、0.25から0.50の範囲内である。つまり、本実施形態の船舶におけるフルード数Fnは、フルード数Fnの増加に伴って造波抵抗係数Cwが大きくなるフルード数Fnの範囲内の値である。本実施形態及び比較例2における船舶の計画満載喫水線D.L.W.L.の長さが、例えば100mの場合、本実施形態及び比較例2の船舶におけるフルード数Fnは0.340と0.341との間の値になる。一方、比較例1の船舶におけるフルード数Fnは0.345と0.346との間の値になる。つまり、本実施形態及び比較例2の船舶におけるフルード数Fnは、比較例1における船舶のフルード数Fnよりも0.008だけ小さな値になる。これらフルード数の違いは、上述した水線長の違いによる。
比較例2の船舶では、比較例1の船舶に対して、フルード数が違うことにより、造波抵抗係数Cwが約8%低減される。本実施形態の船舶の船首には、計画満載喫水線D.L.W.L.以上の上方に、前方に向って傾斜した第二前縁86を有する第二船首プロファイル85が形成されている。この結果、本実施形態の船舶では、図5に示すように、図2におけるV−V線断面の位置で、一対の第二舷側87が成す角度を、同位置での比較例2における一対の舷側282が成す角度より小さくすることができる。このため、本実施形態の船舶では、比較例2の船舶より、造波抵抗及び実海域の波浪中抵抗増加を抑えることができる。よって、本実施形態の船舶では、比較例2の船舶に対して、造波抵抗係数Cwが約2%低減される。すなわち、本実施形態の船舶では、比較例1の船舶に対して、造波抵抗係数Cwが約10%低減される。
図2に示す、上甲板3と前部垂線との交点から船首端までの船首尾方向Dの距離aは、大きければ大きいほど、一対の第二舷側87が成す角度を小さくすることができ、造波抵抗及び波浪中抵抗増加を抑えることができる。このため、この距離aは、造波抵抗及び波浪中抵抗増加を抑えるという観点からは、式(3)を用いて前述したように、0より大きく且つ0.10L1以下であることが好ましい。但し、船舶が入港する港のサイズ等の制約等がある場合、この距離aは、式(2)を用いて前述したように、0より大きく且つ0.05L1以下であってもよい。
図2に示す、計画満載喫水線D.L.W.L.から第二前縁86の下端(第一前縁81の上端)86aまでの距離bは、小さければ小さいほど、造波抵抗及び波浪中抵抗増加を抑えることができる。このため、この距離bは、造波抵抗及び波浪中抵抗増加を抑えるという観点からは、式(4)を用いて前述したように、0以上で且つ0.20H以下であるこのが好ましい。但し、船舶が入港する港で、のサイズ等の制約等がある場合、この距離bは、式(5)を用いて前述したように、0以上で且つ0.30H以下であってもよいし、式(6)を用いて前述したように、0以上で且つ0.50H以下であってもよい。
図11及び図12は、フルード数Fnと剰余抵抗係数Crとの関係を示すグラフである。図11及び図12中、横軸は、フルード数Fn、縦軸は、剰余抵抗係数Crである。図12は、図11中の二点鎖線で囲まれた部分を拡大したグラフである。図11及び図12中、黒四角で示す点は、比較例1におけるフルード数Fnと剰余抵抗係数Crとの関係を示す点である。図11及び図12中、白四角で示す点は、比較例2におけるフルード数Fnと剰余抵抗係数Crとの関係を示す点である。図11及び図12中、白丸で示す点は、本実施形態におけるフルード数Fnと剰余抵抗係数Crとの関係を示す点である。
図11に示すように、全抵抗から摩擦抵抗を除いた剰余抵抗の大きさを示す剰余抵抗係数Crは、フルード数Fnの増加に伴ってフルード数Fnが0.31の近傍までほぼ一定である。この剰余抵抗係数Crは、フルード数Fnが0.31の近傍からフルード数Fnの増加に伴って増加する。このときの剰余抵抗係数Crの増加率は、フルード数Fnの増加に伴って徐々に大きくなる。
本実施形態の船舶におけるフルード数Fn、比較例1の船舶におけるフルード数Fn、及び比較例2の船舶におけるフルード数Fnは、いずれも、図10を用いて説明した値である。よって、本実施形態及び比較例2の船舶におけるフルード数Fnは、比較例1における船舶のフルード数Fnよりも0.008だけ小さな値である。
比較例2の船舶では、比較例1の船舶に対して、フルード数が小さいことにより、剰余抵抗係数Crが約10%低減される。本実施形態の船舶の船首には、計画満載喫水線D.L.W.L.以上の上方に第二前縁86を有する第二船首プロファイル85が形成されているので、前述したように、比較例2の船舶より、造波抵抗及び実海域の波浪中抵抗増加を抑えることができる。よって、本実施形態の船舶では、比較例2の船舶に対して、造波抵抗を含む剰余抵抗の係数Crが約2%低減される。すなわち、本実施形態の船舶では、比較例1の船舶に対して、剰余抵抗係数Crが約12%低減される。
図13及び図14は、フルード数Fnと制動馬力BHP(Brake Horse Power)(kW)との関係を示すグラフである。図13及び図14中、横軸は、フルード数Fn、縦軸は、制動馬力BHPである。図14は、図13中の二点鎖線で囲まれた部分を拡大したグラフである。図13及び図14中、黒四角で示す点は、比較例1におけるフルード数Fnと制動馬力BHPとの関係を示す点である。図13及び図14中、白四角で示す点は、比較例2におけるフルード数Fnと制動馬力BHPとの関係を示す点である。図13及び図14中、白丸で示す点は、本実施形態におけるフルード数Fnと制動馬力BHPとの関係を示す点である。制動馬力BHPは、機関外部に取り出すことができる馬力である。
図13に示すように、制動馬力BHPは、フルード数Fnの増加に伴って増加する。この制動馬力BHPの増加率は、フルード数Fnの増加に伴って徐々に大きくなる。本実施形態の船舶における制動馬力BHP曲線と、比較例1の船舶における制動馬力BHP曲線と、比較例2の船舶における制動馬力BHP曲線とは、互に異なる。これは、本実施形態の船舶における剰余抵抗と、比較例2の船舶における剰余抵抗と、比較例1の船舶における剰余抵抗とが、互に異なるからである。
本実施形態の船舶におけるフルード数Fn、比較例1の船舶におけるフルード数Fn、及び比較例2の船舶におけるフルード数Fnは、いずれも、図10を用いて説明した値である。よって、本実施形態及び比較例2の船舶におけるフルード数Fnは、比較例1における船舶のフルード数Fnよりも0.008だけ小さな値である。このため、比較例2の船舶における制動抵抗BHPは、比較例1の船舶における制動係数BHPより、同一速力における制動抵抗BHPが4%低減される。
本実施形態の船舶では、前述したように、比較例2の船舶よりも、造波抵抗及び実海域の波浪中抵抗増加を抑えることができ、剰余抵抗を小さくすることができるので、比較例2の船舶に対して制動係数BHPが約2%低減される。すなわち、本実施形態の船舶では、比較例1の船舶に対して、制動係数BHPが約6%低減される。
図16は、比較例3の船舶における前部垂線F.P.から船体の全長の1%後方Dbにおける断面図である。すなわち、図16は、本実施形態の船舶に関する図3の断面図に相当する断面図である。
比較例3の船舶の船首にも、以上で説明した実施形態及び比較例1,2の船舶の船首と同様、上甲板303と、船首バルブ307と、船首プロファイル380と、が形成されている。船首バルブ307の上端307bの高さ位置hは、計画満載喫水線D.L.W.L.の高さ位置Hに対する0.5倍又は0.6倍の位置である。船首プロファイル380は、図示されていない前縁と、一対の舷側382と、を有する。船首プロファイル380の前縁は、図7を用いて説明した比較例2における船首プロファイル280の前縁281と同様、船首バルブ307の最前端から鉛直上方に向かって上甲板303まで延びる。
図15は、船首尾方向Dにおける任意の位置における波高(wave height)を示すグラフである。図15中、横軸は、船首尾方向Dにおける位置、縦軸は、波高である。この横軸は、右側に行くほど船首端に近づく。図15中、船首尾方向Dにおける位置は、前部垂線F.P.と後部水線A.P.との間の距離である垂線間長Lppに対する、基準位置から任意の位置xまでの距離の比(x/Lpp)で示されている。図15中、長破線は比較例1の波高を示す。図15中、一点鎖線はh=0.5Hの比較例3の波高を示し、短破線はh=0.6Hの比較例3の波高を示す。図15中、二点破線はh=0.7Hの本実施形態及び比較例2の波高を示し、実線はh=0.8Hの本実施形態及び比較例2の波高を示す。
造波による波高が最も高い最大波高位置は、比較例1の船舶の場合、他の例の船舶よりも、船首端から後方に離れた位置になる。なお、他の例の船舶、つまり本実施形態、比較例2、及び比較例3の船舶では、最大波高位置が互いに同じである。船舶におけるアンカーは、この最大波高位置よりも後方に設ける必要がある。そのため、比較例1の船舶では、居住区や貨物積載部の前端位置が、上甲板に設けられるウインドラスなどによって制限される。
本実施形態、比較例2、及び比較例3の船舶では、船首プロファイルの前縁が、計画満載喫水線D.L.W.L.近傍で、船首バルブの最前端から鉛直上方に延びるように形成されている。このため、本実施形態、比較例2、及び比較例3の船舶では、最大波高位置を比較例1よりも前方へ移動させることができる。本実施形態、比較例2、及び比較例3の船舶では、最大波高位置が前方へ移動した分だけ、アンカーの位置を前方へ移動させることができる。具体的に、比較例1におけるアンカーの位置を図15中のA1とすると、本実施形態、比較例2、及び比較例3におけるアンカーの位置をA3又はA2にすることができる。よって、本実施形態、比較例2、及び比較例3の船舶では、比較例1の船舶よりも、居住区や貨物積載部の前端位置を前方に移動させることができ、居住区や貨物積載部を拡大させることができる。
前述したように、比較例3の船舶では、h=0.5H又はh=0.6Hである。一方、本実施形態の船舶では、h≧0.7Hであり、本実施形態及び比較例2の船舶では、h=0.7H又はh=0.8Hである。ところで、波高は、h=0.5H、h=0.6H、h=0.7H、h=0.8Hの順で低くなる。よって、本実施形態及び比較例2の船舶における波高は、比較例3の船舶における波高より低くなる。このため、本実施形態及び比較例2におけるアンカーの位置A2は、比較例3におけるアンカーの位置A3より前方になる。よって、本実施形態、及び比較例2の船舶では、比較例3の船舶よりも、さらに、居住区や貨物積載部の前端位置を前方に移動させることができ、居住区や貨物積載部を拡大させることができる。
フェリーやRORO船等においては、h=0.8Hを超えると、航行中に船首バルブが水面よりも上方に出る場合がある。そのため、この船首バルブにより造波抵抗が増大しないように、船首バルブの上端の位置を、計画満載喫水線D.L.W.L.よりも下方で、更に、h=0.8H程度までに収めるようにしてもよい。
以下に示すテーブルは、この本実施形態の船体の長さに応じたフルード数の低下量を示している。このテーブルにおいては、300mから150mまで50m間隔で、また、150m以下は、120m、100m、および、80mの場合を例示している。
Figure 2019089443
このテーブルに示すように、船の長さが300mで速力を25kn一定と仮定した場合、比較例1(速力25knにおけるFn数=0.2371)に対して、上述した実施形態の船首プロファイル8を採用して水線長が5m延長されたとすると、Fn数は、「0.2351」となり、Fn数の低下量は「0.0020」となる。
船の長さが150mで速力を25kn一定と仮定した場合、比較例1(速力25knにおけるFn数=0.3353)に対して、上述した実施形態の船首プロファイル8を採用して水線長が5m延長されたとすると、Fn数は、「0.3298」となり、Fn数の低下量は「0.0055」となる。
船の長さが80mで速力を25kn一定と仮定した場合、比較例1(速力25knにおけるFn数=0.4591)に対して、上述した実施形態の船首プロファイル8を採用して水線長が5m延長されたとすると、Fn数は、「0.4454」となり、Fn数の低下量は「0.0137」となる。
すなわち、速力一定の場合、船の長さが短くなるほどFn数が高くなる。そのため、上述した実施形態の船首プロファイル8を採用して水線長が延長された際のFn数の低減効果が増す。
本実施形態及び比較例2では、比較例1に対して、船体の全長を増加させることなく水線長L1を延長して、フルード数Fnを低下させることができる。そのため、剰余抵抗のうち特に造波抵抗を低減できる。さらに、本実施形態及び比較例2では、水線長L1が延長されることで、プリズマチック曲線をなだらかにすることができるため、造波抵抗を低減できる。また、本実施形態の船舶の船首には、計画満載喫水線D.L.W.L.以上の上方に第二前縁86を有する第二船首プロファイル85が形成されているので、前述したように、比較例2よりも、造波抵抗及び実海域の波浪中抵抗増加を抑えることができる。
また、本実施形態及び比較例2では、比較例1に対して、水線長L1を延長できることで、方形係数Cbを小さくすることができるため、粘性圧力抵抗を低減できる。本実施形態では、フルード数が0.25から0.50の船舶で、その計画速力が遅い船舶、即ち、船舶の水線長が比較的短い船舶については、針路安定性をも向上させることができる。さらに、本実施形態では、船首バルブ7の上端7bが最軽荷喫水線WL以上に配置されることで、比較例1よりも、船首付近の波高位置を前方へ移動させることができるとともに、波高を抑制することができる。そのため、アンカー位置を前方に移動させて、これに合わせて上甲板3上のウインドラス等を前方に移動できる。その結果、船舶(船体)の全長を増加させることなく、居住区や貨物積載部の縮小を抑制すると共に、推進性能を向上することができる。
本実施形態では、船首バルブ7の上端7bの高さ位置hが0.7H以上であるため、この観点からもアンカー4を前方に移動させることができる。そのため、ウインドラス等を前方に配置させることができ、その分だけ居住区や貨物積載部を拡大することができる。さらに、全ての積み付け状態において船首バルブ7を全て没水させることができる。そのため、船首バルブ7による造波抵抗低減効果を有効に得ることができる。さらに、船首バルブ7の横断面積を必要以上に大きくする必要がなくなる。そのため、低速航行時の推進性能の悪化を抑制することができる。
本実施形態では、方形係数Cbが0.6以下の、喫水差の少ないいわゆる痩せ形の船舶においても、効率よく剰余抵抗の低減および、針路安定性の向上を図り、推進性能を向上することができる。
本実施形態の船舶の船首2aには、図計画満載喫水線D.L.W.L.以上の上方に、前方に傾斜している第二前縁86を有する第二船首プロファイル85が形成されている。このため、本実施形態では、図2に示すように、岸壁に対する離接岸で、アンカー9を使用する際に、船体2の回頭中にアンカー9が船首端を回り込んで、反対舷側に至ることを抑えることができる。
この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態の第二船首プロファイル85の第二前縁86は、第一船首プロファイル80の第一前縁81の上端86aから、直線的に、前方に向いつつ上方に延びている。しかしながら、この第二前縁86は、前方に向いつつ上方に延びていれば、曲線であってもよい。具体的に、図17に示すように、第二船首プロファイル85xの第二前縁86xの全体が後方に向って凹になる曲線でもよい。また、図18に示すように、第二船首プロファイル85yの第二前縁86yの下部が後方に向って凹になる曲線で、第二前縁86yの上部が前方に向って凸になる曲線又は直線でもよい。また、第二前縁の下部が直線で、第二前縁の上部が前方に向って凸になる曲線又は後方に向って凹となる曲線でもよい。さらに、第二前縁の全体が前方に向って凸になる曲線でもよい。すなわち、前述したように、第二前縁は、前方に向いつつ上方に延びていれば、第二前縁の下部が、直線と、後方に向って凹になる曲線、前方に向って凸になる曲線とのうち、いずれかであり、第二前縁の上部が、直線と、後方に向って凹になる曲線、前方に向って凸になる曲線とのうち、いずれかであってもよい。
また、以上で説明した実施形態では、においては、フェリーやRORO船等を例示したが、これらに限られない。例えば、喫水差が小さく、痩せ形で、且つ、フルード数が0.25から0.50程度の船舶であれば適用可能である。
2:船体
2a:船首
2b:船尾
3,103,203,303:上甲板
4:アンカー
5:プロペラ
6:舵
7,107,307:船首バルブ
7a:船首バルブの最前端
7b,107b,307b:船首バルブの上端
8,180,280,380:船首プロファイル
80:第一船首プロファイル
81:第一前縁
82:第一舷側
85,85x,85y:第二船首プロファイル
86,86x,86y:第二前縁
86a:第二舷側の下端、又は第一舷側の上端
87:第二舷側
181,281:前縁
282,382:舷側
A.P.:後部垂線
F.P.:の前部垂線
B.L.:船底位置
D.L.W.L.:計画満載喫水線
WL:最軽荷喫水線
D:船首尾方向
Db:後方
Df:前方

Claims (18)

  1. フルード数が0.25から0.50の船舶であって、
    船体を備え、
    前記船体は、
    上端を有し、前記上端が満載喫水線よりも下方で且つ最軽荷喫水線以上の上方に配置される船首バルブと、
    前記船首バルブの最前端から鉛直上方に向かって延びる第一前縁を有する第一船首プロファイルと、
    前記第一前縁につながり、前記満載喫水線以上の上方から前方に向いつつ上方に向って延びる第二前縁を有する第二船首プロファイルと、
    を備える船舶。
  2. 前記船体は、上甲板を備え、
    前記満載喫水線における水線長をL1とした場合、前記上甲板と前部垂線との交点から船首端までの船首尾方向の距離は、0より大きく、且つ0.10×L1以下である、
    請求項1に記載の船舶。
  3. 前記船体は、上甲板を備え、
    前記満喫水線における水線長をL1とした場合、前記上甲板と前部垂線との交点から船首端までの船首尾方向の距離は、0より大きく、且つ0.05×L1以下である、
    請求項1に記載の船舶。
  4. 船底位置から前記満載喫水線までの高さをHとした場合、前記満載喫水線から前記第二前縁の下端までの鉛直方向の距離は、0以上、且つ0.50×H以下である、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の船舶。
  5. 船底位置から前記満載喫水線までの高さをHとした場合、前記満載喫水線から前記第二前縁の下端までの鉛直方向の距離は、0以上、且つ0.30×H以下である、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の船舶。
  6. 船底位置から前記満載喫水線までの高さをHとした場合、前記満載喫水線から前記第二前縁の下端までの鉛直方向の距離は、0以上、且つ0.20×H以下である、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の船舶。
  7. 前記満載喫水線の高さをHとした場合に、前部垂線から前記船体の全長の1%後方における断面での前記船首バルブの前記上端が、0.7H以上の位置に配置されている請求項1から6のいずれか一項に記載の船舶。
  8. 前記満載喫水線における水線長をL1とした場合、L1は港の満載喫水線以下の全長制限以下である、請求項1から7のいずれか一項に記載の船舶。
  9. 方形係数Cbが0.6以下である請求項1から8のいずれか一項に記載の船舶。
  10. 旅客船である請求項9に記載の船舶。
  11. 貨物船である請求項9に記載の船舶。
  12. 前記船体の全長が300m以下である請求項1から11のいずれか一項に記載の船舶。
  13. 前記船体の全長が250m以下である請求項1から11のいずれか一項に記載の船舶。
  14. 前記船体の全長が200m以下である請求項1から11のいずれか一項に記載の船舶。
  15. 前記船体の全長が150m以下である請求項1から11のいずれか一項に記載の船舶。
  16. 前記船体の全長が120m以下である請求項1から11のいずれか一項に記載の船舶。
  17. 前記船体の全長が100m以下である請求項1から11のいずれか一項に記載の船舶。
  18. 前記船体の全長が80m以下である請求項1から11のいずれか一項に記載の船舶。
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