JP2019087410A - マイクロ波加熱装置及び化学反応方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の空胴共振器を連結した際に、各空胴共振器から漏えいするマイクロ波の影響を抑制して、空胴共振器内に配した流通管内の被加熱対象物を効率良く、均一に加熱することができ、かつ、この加熱機構を安定的に維持することができるマイクロ波加熱装置を提供する。【解決手段】直列に配された、定在波を形成する複数の空胴共振器2と、複数の空胴共振器2の直列連結方向でかつ複数の空胴共振器2内に形成される定在波のエネルギーが極大となる部分に沿って、複数の空胴共振器2を貫通して配された被加熱対象物と、複数の空胴共振器2の各々に対してマイクロ波を各別に供給するマイクロ波発生器5とを有し、隣接する空胴共振器2、2間にマイクロ波の漏れを防止する機構を有する、マイクロ波加熱装置。【選択図】図1

Description

本発明は、マイクロ波加熱装置及び化学反応方法に関する。
マイクロ波は、電子レンジのような家庭用から利用が広まり、その後、産業用の加熱システムとして、実用的な開発、利用が研究されている。マイクロ波照射により、被加熱対象物が直接発熱するため短時間に加熱できること、熱伝導に起因する温度ムラが少なくできる利点がある。このほかに、非接触で加熱できる、マイクロ波吸収の良いものだけを選択的に加熱できるなどの利点がある。
産業分野では、連続的に熱処理することは、熱処理の自動化や省力化につながるなど、生産コストや品質向上につながる。そのため、マイクロ波熱処理方法の連続化について種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、電磁波であるマイクロ波は、波長周期でエネルギー強度が変化するため、加熱ムラが発生しやすい。このため、被加熱対象物の位置を時間的に移動させることによって、電磁波を乱反射するなど対策が行われることが多い。
この問題に対処した技術として、例えば、特許文献2には、空胴共振器を用いたマイクロ波加熱装置が記載されている。この技術では、円筒型の空胴共振器内に、中心軸に平行な軸対象マイクロ波電界を発生させ、電界強度が集中する部分に配した円管内で化学反応を進行させる。また特許文献3には、空胴共振器内に形成されるシングルモード定在波の電界強度が極大となる部分に沿って流通管を配し、流通管内に流体を流通させることにより当該流体を加熱する流通型のマイクロ波利用化学反応装置が記載されている。また特許文献4には、マイクロ波発生器の発振周波数を空胴共振器の現在の共振周波数に一致させるように制御する帰還制御手段を用いることが記載されている。これによって、TM010の共振状態を常に維持し、高精度の熱処理を可能にするとされている。
このように空胴共振器を用いることにより、内部に定在波を形成して被加熱対象物を均一に、高効率に加熱に加熱することができるとされている。
特開昭62−158983号公報 特開2005−322582号公報 特開2010−207735号公報 特開2009−80997号公報
本発明者らが検討を重ねた結果、定在波を利用した被加熱対象物の均一な、かつ高効率の加熱を実現するための手段を見出すに至った。すなわち、複数の空胴共振器を直列連結し、各空胴共振器に対して個別にマイクロ波発生器からマイクロ波を供給する形態が有効であることがわかった。しかしこの形態では、それぞれの空胴共振器からマイクロ波が少なからず漏えいし、隣接する空胴共振器に伝播することがある。このように漏えいしたマイクロ波は、隣接する空胴共振器内の定在波の状態を乱したり、当該共振器に配された検波器に影響したりして、空胴共振器内の定在波の安定的な形成を妨げる場合がある。また、隣接する空胴共振器内へと漏れ出したマイクロ波が当該共振器内の被加熱対象物を直接加熱してしまうおそれも生じる。さらに、マイクロ波が漏えいすればその分、マイクロ波エネルギーの利用効率が低下してしまう。すなわち、マイクロ波エネルギーを効率的に利用し、また空胴共振器内の定在波を安定して形成するためには、隣接する空胴共振器内へのマイクロ波の漏れを十分に抑制することが重要であるとの着想に至った。
本発明は、複数の空胴共振器を直列連結して個々の共振器内に定在波を形成した際に、各空胴共振器から隣接する空胴共振器へのマイクロ波の漏えいを効果的に抑制することができるマイクロ波加熱装置を提供することを課題とする。より詳細には、直列連結した空胴共振器内を貫通する被加熱対象物を効率良く、均一に加熱することができ、かつ、加熱機構(各共振器内の定在波の形成状態)を安定的に維持することができるマイクロ波加熱装置を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた。その結果、複数の空胴共振器を直列連結し、各空胴共振器内にはこれらを貫通して被加熱対象物を配し、各共振器内に定在波を形成させて被加熱対象物をマイクロ波加熱する装置において、以下のことを見出した。すなわち、隣接する空胴共振器間におけるマイクロ波の漏れを防止する機構を設けることが、定在波による被加熱対象物の安定的な均一加熱に効果的であることを見出した。
本発明はこれらの知見に基づきさらに検討を重ね、完成されるに至ったものである。
すなわち、本発明の上記課題は下記の手段により解決される。
[1]
直列に配された、定在波を形成する複数の空胴共振器と、
該複数の空胴共振器の直列連結方向でかつ該複数の空胴共振器内に形成される定在波のエネルギーが極大となる部分に沿って、該複数の空胴共振器を貫通して配された被加熱対象物と、
該複数の空胴共振器の各々に対してマイクロ波を各別に供給するマイクロ波発生器と
を有し、
隣接する空胴共振器間にマイクロ波の漏れを防止する機構を有する、マイクロ波加熱装置。
[2]
前記空胴共振器内に形成される定在波がTM0n0モード又はTEn0モードである、[1]記載のマイクロ波加熱装置。但し、nは正の整数とする。
[3]
前記マイクロ波の漏れを防止する機構が、下記(A)〜(C)から選ばれる少なくとも1つの機構である、[1]又は[2]記載のマイクロ波加熱装置。
(A)隣接する空胴共振器の空胴間を仕切る隔壁の厚さと、前記被加熱対象物を通す貫通孔の大きさとの関係が調整された機構。
(B)隣接する空胴共振器間にマイクロ波吸収構造が設けられた機構。
(C)一の空胴共振器内に定在波を形成するためのマイクロ波の周波数と、該空胴共振器に隣接する空胴共振器内に定在波を形成するためのマイクロ波の周波数とを互いに異なる周波数とする機構。
[4]
前記(C)を下記(c−1)及び(c−2)のいずれか一方又は両方により実現する、[3]記載のマイクロ波加熱装置。
(c−1)空胴共振器内に誘電体若しくは金属片を配置する。
(c−2)互いに隣接する空胴共振器において、直列連結方向に対して垂直な断面を互いに異なる形状とする。
[5]
前記(C)において、一の空胴共振器内に供給される定在波を形成するためのマイクロ波の周波数と、該空胴共振器に隣接する空胴共振器内に供給される定在波を形成するためのマイクロ波の周波数との差の絶対値が3MHz以上である、[3]又は[4]記載のマイクロ波加熱装置。
[6]
前記(B)のマイクロ波吸収機構が、チョーク構造であり、又は電磁波吸収体である、[3]記載のマイクロ波加熱装置。
[7]
一の空胴共振器に定在波を形成するために供給されるマイクロ波のエネルギーをPx−inとし、該空胴共振器から、該空胴共振器に隣接する空胴共振器へと伝搬するマイクロ波のエネルギーをPy−xとしたとき、Py−x≦Px−in×0.25を満たす、[1]〜[6]のいずれか1項記載のマイクロ波加熱装置。
[8]
前記マイクロ波加熱装置が、前記被加熱対象物をマイクロ波により加熱して、化学反応を生じさせる化学反応装置である、[1]〜[7]のいずれか1項記載のマイクロ波加熱装置。
[9]
[1]〜[8]のいずれか1項記載のマイクロ波加熱装置を用いた化学反応方法であって、前記被加熱対象物を加熱することにより化学反応を生じさせることを含む、化学反応方法。
本発明のマイクロ波加熱装置は、複数の空胴共振器を直列連結した構造を有し、個々の共振器内に定在波を形成した際に、各空胴共振器から隣接する空胴共振器へのマイクロ波の漏えいを効果的に抑制することができる。その結果、空胴共振器内に配した流通管内の被加熱対象物を効率良く、均一に加熱することができ、かつ、この加熱機構を安定的に維持することができる。
本発明のマイクロ波加熱装置の基本形態の一例を模式的に示した概略断面図である。 本発明のマイクロ波加熱装置の好ましい一実施形態(第1実施形態)の一例を模式的に示した概略断面図である。 本発明のマイクロ波加熱装置の別の好ましい一実施形態(第2実施形態)の一例を模式的に示した概略断面図である。 本発明のマイクロ波加熱装置の第2実施形態の変形例を模式的に示した、中心軸に対して直角方向に切った概略断面図である。 本発明のマイクロ波加熱装置の別の好ましい一実施形態(第3実施形態)の一例を模式的に示した概略断面図である。 本発明のマイクロ波加熱装置のさらに別の好ましい一実施形態(第4実施形態)の一例を模式的に示した概略断面図である。 本発明のマイクロ波加熱装置のさらにまた別の好ましい一実施形態(第5実施形態)の一例を模式的に示した概略断面図である。 実施例1〜7を説明するためのマイクロ波加熱装置を模式的に示した概略断面図である。 実施例1及び実施例7におけるマイクロ波加熱されたアルミナ管の熱画像を示した図面である。 実施例21〜25を説明するためのマイクロ波加熱装置を模式的に示した概略断面図である。 実施例31を説明するためのマイクロ波加熱装置を模式的に示した概略断面図である。 実施例31におけるマイクロ波加熱された流通管の放射温度径で測定した温度分布を示したグラフである。 実施例61〜67を説明するためのマイクロ波加熱装置を模式的に示した概略断面図である。 実施例68、69で用いた水素製造装置の構成を模式的に示す説明図である。
以下に本発明のマイクロ波加熱装置の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。
[マイクロ波加熱装置]
まず、マイクロ波加熱装置の基本形態の一例を、図1を参照して説明する。
図1に示すように、マイクロ波加熱装置1は、マイクロ波照射装置10を複数段に積層したものであり、複数の空胴共振器2を積層する状態に、直列に配したものである。図面では一例として、3個の空胴共振器2A、2B、2Cを上下方向に順に積層したものを示した。空胴共振器2の個数は3個に限定されるものではない。空胴共振器2の個数は、2個以上数千個程度まで積層することも可能である。複数の空胴共振器2には、直列連結方向にてかつ各空胴共振器2内に形成される定在波のエネルギーが極大となり、軸方向には均一となる部分に貫通する流通管6が配されている。この場合、流通管内に被加熱対象物が配される。例えば、TM0n0モード(nは1以上の整数)の定在波が発生する円筒形の空胴共振器2の場合、円筒中心軸の電界強度が極大となり中心軸Cに沿っては電界強度が均一である特徴を有しており、流通管6は円筒形の中心軸Cに配されることが好ましい。
各空胴共振器2には、それぞれにマイクロ波発生器5が配され、各空胴共振器2に対して個別にマイクロ波が供給される。一般にマイクロ波周波数は2.45GHzを中心としたSバンドが用いられる。
さらに各空胴共振器2、2間又は空胴共振器2において、空胴共振器2内から漏れるマイクロ波による漏れを防止する機構が配されている。このマイクロ波の漏れを防止する機構については、後述する各実施形態において詳説する。
上記のマイクロ波加熱装置1では、内部に被加熱対象物(図示せず)が存在し、又は被加熱対象物が流通する流通管6を配した空胴共振器2に対して、マイクロ波発生器5からマイクロ波を供給し、空胴共振器2内に定在波を形成する。その定在波の電界強度が極大となる部分によって流通管6内の被加熱対象物を加熱する。上記マイクロ波加熱装置1では、空胴共振器2に設けられたマイクロ波供給口3から定在波を形成するマイクロ波が空胴共振器2内に供給される。
上記マイクロ波加熱装置1において、マイクロ波発生器5から供給されるマイクロ波は、周波数を調整して供給される。周波数の調整により、空胴共振器2内に形成される定在波の電界強度分布を所望の分布状態に制御し、またマイクロ波の出力によって定在波の強度を調整することができる。つまり、被加熱対象物の加熱状態を制御することが可能になる。
なお、マイクロ波供給口3から供給されるマイクロ波の周波数は、空胴共振器2内に特定のシングルモード定在波を形成することができるものである。各共振器内に形成される定在波の種類(モード)は異なっていてもよいが、各共振器内に形成される定在波の種類(モード)は同じであることが好ましい。
本発明のマイクロ波加熱装置1の構成について、順に説明する。
<空胴共振器>
マイクロ波加熱装置に用いる空胴共振器(キャビティー)2の形状は、一つのマイクロ波供給口3を有し、マイクロ波を供給した際にシングルモードの定在波が形成されるものであれば特に制限はない。例えば、円筒形又は角筒形の空胴共振器を用いることができる。本明細書において円筒形の空胴共振器とは、該空胴共振器の中心軸Cに直角な内側断面形状が円形であるものの他、当該断面形状が楕円形若しくは長円形であるものを含む意味に用いる。また、角筒形の空胴共振器は、中心軸Cに直角な内側断面形状が多角形であるものを意味し、当該断面形状が4〜10角形であることが好ましい。また、多角形の角が、丸みを帯びた形状であってもよい。
空胴共振器2の大きさも目的に応じて適宜に設計することができる。空胴共振器2は電気抵抗率の小さいものが望ましく、通常は金属製であり、一例として、アルミニウム、銅、鉄、マグネシウム、黄銅、ステンレス、若しくはそれらの合金等を用いることができる。又は、樹脂やセラミック、金属の表面に電気抵抗率の小さい物質をめっき、蒸着などによりコーティングしてもよい。コーティングには銀、銅、金、スズ、ロジウムを含む材を用いることができる。
<マイクロ波の供給>
[マイクロ波照射装置]
本発明のマイクロ波加熱装置1に用いるマイクロ波照射装置10は、上述した加熱制御を実施するのに好適な装置である。マイクロ波照射装置10は、マイクロ波供給口3を有する空胴共振器2と、該空胴共振器2に対し、該空胴共振器2内に定在波を形成できる周波数のマイクロ波を供給するマイクロ波発生器5とを有する。マイクロ波発生器にはマイクロ波発生器(図示せず)と、マイクロ波増幅器(図示せず)から構成されることもある。
本発明のマイクロ波加熱装置1を構成する空胴共振器2の構成は、上述の、空胴共振器で説明したものと同じである。
上記マイクロ波発生器5としては、例えば、マグネトロン等のマイクロ波発生器や、半導体固体素子を用いたマイクロ波発生器を用いることができる。マイクロ波の周波数を微調整できるという観点から、半導体固体素子を用いたマイクロ波発生器を用いることが好ましい。
図1に示したように、マイクロ波照射装置10では、空胴共振器2として円筒形の空胴共振器を用いている。その空胴共振器2の中心軸Cに平行な壁面(円筒の内面)又はその近傍には、マイクロ波供給口3が設けられている。一実施形態において、マイクロ波供給口3は、高周波を印加することができるアンテナ3Aを有している。アンテナ3Aとしては磁界励起アンテナ、例えばループアンテナを用いることが好ましい。以下、アンテナ3Aをループアンテナ3Aとも称す。ループアンテナ3Aは、ケーブル4を介してマイクロ波発生器5と接続されている。ケーブル4には、例えば同軸ケーブルが用いられる。この構成では、マイクロ波発生器5から発せられたマイクロ波を、ケーブル4を介してループアンテナ3Aから空胴共振器2内に供給する。マイクロ波発生器5とアンテナ3の間には、反射波を抑制するための整合装置(図示せず)やマイクロ波発生器を保護するためのアイソレータ(図示せず)を設置してもよい。
上記ループアンテナ3Aの端面は空洞共振器壁面など接地電位と接続する。このループアンテナ3Aにマイクロ波(高周波)を印加することで、ループ内に磁界が励振され空洞共振器内に定在波を形成する形態とすることができる。
例えば、上記の円筒状の空胴共振器においてTM010のシングルモード定在波を形成させた場合、中心軸Cにおいて、電界強度が最大になり、中心軸C方向に電界強度が均一になる。したがって、流通管6において、その内部に存在し、又は流通する被加熱対象物を、均一に、高効率にマイクロ波加熱することが可能になる。
なお、マイクロ波発生器5から導波管を用いてマイクロ波供給口3にマイクロ波を供給してもよい。
<被加熱対象物の加熱>
本発明のマイクロ波加熱装置では、被加熱対象物(例えば、被加熱対象物が内部に存在し又は流通する流通管6)は、空胴共振器2内部に電界強度に対応させて配される。特に、空胴共振器2内に形成された定在波の電界強度が極大になる部分に沿って配せば、より効率的な加熱が可能になる。
図1に示すようなマイクロ波加熱装置においては、流通管6内に配される被加熱対象物に特に制限はなく、液体、固体、粉末およびそれらの混合物を挙げることができる。若しくは、流通管内にあらかじめ設置したハニカム構造体、触媒等を挙げることができる。
被加熱対象物を液体、固体、粉末とした場合は、流通管内にポンプ等で搬送することで連続的に被加熱対象物の温度を制御することができる。多くの化学反応は温度により反応の進行を制御することができるため、本発明のマイクロ波加熱装置は化学反応の制御に用いてもよい。
被加熱対象物はそれ自体で形状を維持できるものであれば、流通管内に配する必要はない。例えば、被加熱対象物が繊維状の固体であれば、流通管等の支持がなくても一の共振器内から隣接する共振器内へと連続搬送が可能である。
被加熱対象物をハニカム構造体とした場合には、マイクロ波加熱装置は、例えば、ハニカム構造体を通過するガス状物質の温度制御をするために用いることができる。また、被加熱対象物を触媒とした場合には、後述するように、触媒の作用による化学反応を生じさせるために用いることができる。触媒は、ハニカム構造体に担持させた形態とすることも好ましい。
上記化学反応としては、転移反応、置換反応、付加反応、環化反応、還元反応、酸化反応、選択的触媒還元反応、選択的酸化反応、ラセミ化反応、開裂反応、接触分解反応(クラッキング)等が例示されるが、これらに限定されず種々の化学反応が挙げられる。
化学反応の具体例を挙げると、揮発性有機物質を酸化分解する反応、窒素酸化物を窒素と酸素に還元する反応、硫黄酸化物をカルシウムに固定化する反応、重油を軽質化する反応等を挙げることができる。
本発明の化学反応方法において、反応時間、反応温度、反応基質、反応媒体等の条件は、目的の化学反応に応じて適宜に設定すればよい。例えば、化学ハンドブック(鈴木周一・向山光昭編、朝倉書店、2005年)、マイクロ波化学プロセス技術II(竹内和彦、和田雄二監修、シーエムシー出版、2013年)、特開2010−215677号公報等を参照し、化学反応条件を適宜に設定できる。
図1に示した形態において、定在波の周波数は、空胴共振器2内に定在波を形成できれば特に制限はない。例えば、上記マイクロ波供給口3からマイクロ波を供給した場合に、空胴共振器2内に上述したTM0n0モードやTEn0モードの定在波が形成される周波数とすることができる。
上記TM0n0モードの定在波は、例えばTM010、TM020、TM030のモードが挙げられ、なかでもTM010の定在波であることが好ましい。
以下に、マイクロ波加熱装置1の種々の好ましい実施形態について、図面を参照して、より詳細に説明する。なお、本発明は、本発明で規定すること以外は、これらに限定して解釈されるものではない。
まず、マイクロ波加熱装置の好ましい一実施形態(第1実施形態)として、図2を参照して以下に説明する。
図2に示すように、マイクロ波加熱装置1(1A)は、基本構成が図1を参照して説明したマイクロ波加熱装置1と同様である。すなわち、複数の空胴共振器2が中心軸Cを一致させて中心軸C方向に直列に積層されている。図示例では、空胴共振器2A、2B、2Cの3個の空胴共振器2が直列に連結されていて、空胴共振器2、2間を仕切る隔壁8が設けられている。なお図2では、上部空胴共振器(例えば2A)の底面壁8Bと下部空胴共振器(例えば2B)の上面壁8Uとが個別に図示されているが、一体の一枚の隔壁でも構わない。隔壁8には中心軸Cに孔軸を一致させて貫通孔9を設けている。また、最上段の空胴共振器2Aの上面壁8Uにも貫通孔9を配し、最下段の空胴共振器2Cの底面壁8Bにも貫通孔9を配している。貫通孔9の孔径φと隔壁8厚さtを適切に設計することにより、マイクロ波の漏れを効果的に防止することができる。マイクロ波の漏れを防止する目的では、孔径φは照射するマイクロ波の波長より小さいことが望ましく、隔壁の厚さtは、厚いほうが望ましい。一方、孔径φは加熱対象物の大きさで制限されるため、設計上は大きいほど適用範囲が広がるため望ましい。また隔壁8の部分はマイクロ波照射が不十分となるため、隔壁8に位置する被加熱対象物の温度制御が困難になる観点から、隔壁厚さtは薄いほうが望ましい。このように孔径φと隔壁厚さtは、相反する二つの要因を満たす必要があり、適切な設計が必要となる。
そこで、マイクロ波の漏れを防ぐために供される孔径φと隔壁厚さtの条件を詳細に検討し、以下の設計式を導いた。ただし、λは波長であり、ρ0nはベッセル関数J(x)=0の根であり、TM010モードではρ01=2.405、TM020モードではρ02=5.52、TM030モードではρ03=8.651となる。また、Decay_dBは、空胴共振器間の漏れの量をデシベルで表記した値であり、10%の量が漏れる場合はDecay_dB=−10dBとする。ただし、式1における分母の平方根内の項が負になる場合は、隔壁孔では電磁波が減衰なく透過するため、漏れを阻止する機能は果たさなくなる。
下記式1及び2は、あくまで設計上の指針となるものであり、孔径φと隔壁厚さtとの関係は、必ずしも下記式を満たすことを要するものではない。例えば、下記式1及び2に基づいて、孔径φと隔壁厚さtとのおよその関係等を導きだし、これを参照して当業者が行う通常の実験等の範囲で、マイクロ波の漏れを目的のレベルに抑制する形態を決定することができる。
なお、この式は貫通穴部分には何も設置されていない条件である。実際はこの部分には流通管や被加熱対象物が配置される。この場合の補正式として、式2で導出されるλmを式1のλの代わりに代入することで設計することができた。
ただし、εeff、μeffは隔壁8の貫通孔9に配置される物質の比誘電率と比透磁率である。多くの材料は非磁性であるためμeff=1と於いてもかまわない。貫通穴9に配置される物質が流通管6や被加熱対象物(図示せず)、流通管6と貫通孔9との隙間部分9Aの空気層など、複数の物質から構成される場合は、その物質の体積を加重平均した実効の誘電率を代わりに用いて、補正することになる。
なお、設計式では貫通孔9は円形としてその直径φを用いているが、貫通孔9は円形に限られない。その場合は、貫通孔9の最大開口長さを孔径φの代わりに用いて設計してもよい。
また、隔壁厚さtが一様でない場合は、隔壁8の最も薄い部分の厚さを隔壁厚さtの代わりに用いで設計してもよい。
また、各空胴共振器2の中心軸Cにそって、内部に被加熱対象物が配され、又は内部に被加熱対象物が流れる流通管6が貫通孔9を貫通して配されている。
上記空胴共振器2には、空胴共振器内に定在波を発生させるマイクロ波発生器5が配されている。このマイクロ波発生器5には、発生されたマイクロ波を、誘導するケーブル4の一端が接続されている。また、空胴共振器2の側壁にはマイクロ波を受信するアンテナ3Aが配されていて、ケーブル4の他端が接続されている。アンテナ3Aは、マイクロ波供給口3になり、例えば、磁界励起型のループアンテナである。ケーブル4は、マイクロ波を伝送するものであれば制限はなく、例えば、同軸ケーブルが用いられる。
また、一の空胴共振器2(例えば2A)に供給したマイクロ波のエネルギーをPx−inとし、該空胴共振器2Aから、該空胴共振器2Aに隣接する空胴共振器2(例えば2B)へと伝搬するマイクロ波のエネルギーをPy−xとする。この場合、Py−x≦Px−in×0.25なる式3を満たすことが好ましい。上記式3を満たすことによって、隣接する空洞共振器に漏洩した電磁波の作用による被加熱対象物の温度上昇等を抑えることができる。それとともに、制御に用いる検波器の誤動作を抑制できる。なお、0.25倍以下にするとの表記は、−10dB以下にすると同じ意味である。
次に、マイクロ波加熱装置の好ましい別の一実施形態(第2実施形態)として、図3を参照して以下に説明する。
図3に示すように、マイクロ波加熱装置1(1B)は、上記図1に示したマイクロ波加熱装置1において、各空胴共振器2が中心軸を一致させて中心軸C方向に接続した状態に配されたものである。又、空胴共振器2内に誘電体51又は金属片(図示せず)が配され、更に、隣接する空胴共振器2に供給されるマイクロ波の周波数を異ならせている。その他の構成は、図1を参照して説明したマイクロ波加熱装置1と同様である。
マイクロ波加熱装置1Bは、一空胴共振器2に供給されるマイクロ波の漏れの影響を小さくする。これによって、一空胴共振器2に隣接する空胴共振器2に設置された検波器11にマイクロ波の漏れの影響が及ばないようにする。このような観点から、隣接する空胴共振器2、2に供給するマイクロ波の周波数との差を2.45GHz帯においては、3MHz以上とすることが好ましい。そしてより好ましくは6MHz以上、さらに好ましくは10MHz以上とする。又、工業的に利用できるISMバンドが例えば2.45GHz帯では100MHzの幅しかないという観点から、70MHz以下が好ましく、50MHz以下がより好ましく、更に30MHz以下が好ましい。これは、すべての空胴共振器の共振周波数がISMバンド内に収まるよう設計する必要があるためである。また、共振周波数は被加熱対象物の温度変化や組成変化により変動するため、その変動域を考慮したうえでISMバンドに収まる必要がある。「ISM」は、Industry Science Medicalの略であり、ISMバンドは、産業、科学、医療分野で汎用的に使うために割り当てられた周波数の帯域のことである。
好ましい周波数帯をマイクロ波全体に拡張するために、照射する二つのマイクロ波の周波数をf1、f2としたとき、Δf=2(f1−f2)/(f1+f2)と定義したとき、Δf>0.1%を満たすことが好ましい。
そのために、隣接する空胴共振器2、2に供給されるマイクロ波の周波数が異なるように、各マイクロ波発生器5、5の周波数が設定されている。また、隣接する空胴共振器2、2に供給される各マイクロ波は周波数が異なるが、共振器内に形成される定在波の種類は通常、同じである。異なる周波数による同種の定在波の形成を実現するために、共振器内に上記の誘電体51若しくは金属片(図示せず)を配することが好ましい。より好ましくは誘電体であり、具体例として、樹脂、セラミック、ガラス、等を配する態様が挙げられる。
誘電体を用いる場合は、誘電損失が小さいものを用いなければならない。誘電損失が大きい誘電体を用いた場合、マイクロ波が誘電体により吸収され発熱する。これにより、被加熱対象物の加熱効率が低下する。また、誘電体の熱変成や発火などトラブルを誘発する危険性が生じる。
空胴共振器内に誘電体51を挿入した場合、誘電体51の部分ではマイクロ波の波長が短くなる。このため空洞共振器2全体では、より長い波長の定在波が形成されることになり、共振周波数としては誘電体51を挿入しないときに比べ、低周波側に調節する効果が生じる。
一方、図4に示すように、空胴共振器2内に金属片53を挿入することで共振周波数を高くすることができる。金属片53には、空胴共振器2を構成した金属を用いることが好ましく、銅、アルミニウムを用いることがより好ましい。金属片53の形状は特に規定されないが、好ましくは空胴共振器の高さと同じ高さを有する直方体でありエッジ部分は曲面状に加工しているものが望ましく、その幅及び厚さは空胴22の大きさによって適宜決定される。金属片53は、空洞共振器2の側壁24に対して矢印方向に挿抜可能に配されており、空胴共振器の側壁24付近など電界強度の小さいところに設置することが好ましく、また空洞共振器2と同電位となるよう接地することが望ましい。金属片53を空胴22内に挿入した場合、空胴共振器2の空胴22の容積が狭くなるため、金属片53を挿入する前よりも短い波長の定在波が形成されることになる。共振周波数としては、金属片53を挿入しないときに比べ、高周波数側に調節する効果が生じる。
このように、空胴共振器2の側壁24に金属片53を挿抜可能に配することで、複数個の空胴共振器を積層した構成において、それぞれの空胴共振器2について共振周波数を同一に調整することが可能になる。
また図示はしていないが、空胴共振器2の側壁24において、金属片53を複数箇所に配置してもよい。この場合は、中心軸Cを中心にして対角線上に配置するなど、中心軸Cに対して対称性を保つように配置することによって、空胴共振器2内の電磁界強度分布の乱れを少なくすることができる。
産業用のマイクロ波の周波数は、例えばISMバンドを用いるため、空胴共振器2A、2B、2Cのそれぞれに供給するマイクロ波の周波数を上記ISMバンドの範囲内において異なる値に設定する。一例として、誘電体をなにも設置しない空胴共振器2Aに供給するマイクロ波の周波数を2.42GHzとする。また誘電体としてテフロン(登録商標)管(誘電率2.1)を空胴内の空胴中心軸Cと誘電体の中心軸とが一致するように設置した空胴共振器2Bに供給するマイクロ波の周波数を2.45GHzとする。さらに誘電体として石英管(誘電率4)を空胴内の空胴中心軸Cと誘電体の中心軸が一致するように設置した空胴共振器2Cに供給するマイクロ波の周波数を2.48GHzとする。管状の誘電体を空胴中心軸Cと一致するように設置することで、電界分布の対称性が維持されるため、被加熱対象物周囲の電界強度の乱れが小さくなり、望ましい。
上記の空胴共振器2から漏えいしたマイクロ波は、隣接の空胴共振器2に供給されるマイクロ波と周波数が異なるため、隣接する空胴共振器2の側壁24の外側に配した検波器11に影響を及ぼすことがなくなる。
次に、マイクロ波加熱装置の好ましい別の一実施形態(第3実施形態)として、図5を参照して以下に説明する。
図5に示すように、第3実施形態のマイクロ波加熱装置1(1C)は、上記図1を参照して説明したマイクロ波加熱装置1において、各空胴共振器2が中心軸Cを一致させて中心軸C方向に接続した状態に配されたものである。さらに、マイクロ波の漏れを防止する機構として各空胴共振器2の空胴22の内径D1〜D3が異なっている。その他の構成は、図1に示したマイクロ波加熱装置1と同様である。なお、各空胴共振器2は、円筒状の空胴共振器であり、角筒状であってもよい。一例として、空胴の断面が円形の場合は、その径を変える。空胴の断面が長円形若しくは楕円形の場合は、長径を変える。空胴の断面が四角形の場合は対角線の長さを変える。
マイクロ波加熱装置1(1C)は、一空胴共振器2に設置された検波器11に隣接する空胴共振器2の影響が及ばないようにする。そのために、各空胴共振器2で発生する定在波の周波数が一定になるようにして、供給するマイクロ波の周波数がそれぞれに異なるように、各空胴共振器2の空胴22の内径Dを変えている。周波数が一定になるとは、各空洞共振器2において形成される定在波の周波数が一致することを意味する。例えば、2.45GHz帯では隣接する空胴共振器2内に供給するマイクロ波の周波数の差が、3MHz以上が好ましく、より好ましくは6MHz以上、さらに好ましくは10MHz以上とする。このようなマイクロ波の周波数の差を得るには、円筒型空胴の場合、一例として、隣接する空胴共振器2の空胴22の内径Dの差を、好ましくは0.1mm以上とする。より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上とする。そして、ISMバンドである2.4GHz〜2.5GHz内に収めるという観点から、空胴22の内径の差を好ましくは1.5mm以下とし、より好ましくは1mm以下、とする。
このように、各空胴共振器2で発生する定在波の周波数を一定にして、各空胴共振器2に供給されるマイクロ波の周波数が異なるように、空胴22の内径が設定される。
したがって、空胴共振器2から漏えいしたマイクロ波(漏えいマイクロ波)は、隣接する空胴共振器2に供給されるマイクロ波(供給マイクロ波)の周波数と異なるものとすることができる。それゆえ、漏えいマイクロ波と供給マイクロ波とが同期せずに、漏えいマイクロ波の、隣接する共振器内への伝播が抑えられる。また、隣接する空胴共振器2の側壁24の外側に配した検波器11に影響を及ぼすことも防ぐことができる。
次に、マイクロ波加熱装置の好ましい更に別の一実施形態(第4実施形態)として、図6を参照して以下に説明する。
図6に示すように、第4実施形態のマイクロ波加熱装置1(1D)は、上記図2に示したマイクロ波加熱装置1Aにおいて、各空胴共振器2が中心軸を一致させて中心軸C方向に接続した状態に配されているものである。さらに各空胴共振器2、2の隔壁8、8間に、マイクロ波の漏れを防止する機構としてチョーク構造31が配されたものである。その他の構成は図2に示したマイクロ波加熱装置1Aと同様である。
チョーク構造31とは、各空胴共振器2、2の隔壁8、8間に配した厚さLtの環状体32と、その内側部分の空間とこの内側部分の空間の上下に配されている隔壁8、8とに囲まれたチョーク長さLc、チョーク厚さLtの空間33とによって構成される。チョーク長さLcは、貫通孔9側の隔壁8の側部から環状体32の内側までの環状体32の半径方向の長さである。この空間33は、隔壁8に直接形成されたものであってもよい。空間33は、空間33内に入ったマイクロ波の入射波を空間33内で反射した反射波によって打ち消すことで、空胴共振器2の外部にマイクロ波が漏れるのを防ぐ。このため、チョーク長さLcは、マイクロ波を打ち消す長さを有することが好ましい。すなわち、マイクロ波の波長の1/4であることが好ましい。このようにマイクロ波の1/4波長であることから、入射波と反射波とによって1/2波長ずれることになり、位相が逆転する。このため、入射波と反射波とは、互いを打ち消し合うことができる。
チョーク長さLcは、例えば、マイクロ波の波長が120mmの場合、入射波と反射波とを互いを打ち消し合うことができる範囲として25mm〜35mmとすることが好ましい。より好ましくは1/4波長である30mmとする。なお、チョーク長さLcの空間33部分に比誘電率εの誘電体を挿入した場合、誘電体中を伝播する波長λεは、空気中を伝播する波長をλとして、λ/√εだけ短くなる。そのため、空間33内に誘電体を配することによって、空間33内に何もない状態のチョーク長さLcをより短くすることができチョーク構造形成に必要な体積を小さくすることができる。
上記チョーク構造31が空胴共振器2、2の隔壁8、8間に配されていることから、空胴共振器2から漏えいしたマイクロ波は、チョーク構造31によって打ち消される。
したがって、各空胴共振器2内からマイクロ波が漏れにくくなり、漏れるマイクロ波によって、隣接する空胴共振器2の側壁24の外側面に配した検波器11に影響を及ぼすことがなくなる。
次に、マイクロ波加熱装置の好ましいまた更に別の一実施形態(第5実施形態)として、図7を参照して以下に説明する。
図7に示すように、第5実施形態のマイクロ波加熱装置1(1E)は、上記図1に示したマイクロ波加熱装置1において、各空胴共振器2が中心軸を一致させて中心軸C方向に接続した状態に配されているものである。さらに各空胴共振器2、2間に、マイクロ波吸収構造としてマイクロ波を吸収する吸収体41が配されたものである。この吸収体41は、空胴共振器2、2間の隔壁8に設けた空間43の内部を埋め込むように配されることが好ましい。吸収体41(空間43)の大きさは、マイクロ波の漏れを防ぐという観点から、中心軸Cに対して直角方向、すなわち、空胴共振器2の径方向に大きいほうがよいとする。その他の構成は図1に示したマイクロ波加熱装置1と同様である。
この吸収体41には、電磁波吸収構造として空間43を埋めるような充填材が好ましく、より好ましくは、空間43をすべて埋め込むような充填剤がより好ましい。このような材料としては、分子の分極反応に起因する誘電損失を利用するものとして、例えばカーボン粉を混合した、発砲スチロール、発砲ウレタン、ゴム、セラミック等が挙げられる。また磁性材料の磁気損失によって電磁波を吸収するものとして、鉄、ニッケル、フェライト等が挙げられる。これらは、発泡剤、ゴム状体、粉末又はペーストのような態様のものを充填剤として用いることができる。さらに導電性繊維の織物も挙げることができる。マイクロ波吸収により吸収体が発熱するため、吸収体を冷却できるようにすることも好適である。
吸収体41の厚さは、材質にもよるが、例えば、カーボン粉を混入したセラミックからなる吸収体41では、電磁波を吸収する観点から、厚さを0.5mm以上、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上とする。また、空胴共振器2、2間の流通管6内の被加熱対象物を均一に加熱するという観点から、厚さを10mm以下、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下とする。
上記吸収体41が空胴共振器2、2間に配されていることから、空胴共振器2から漏えいしたマイクロ波は、吸収体41によって吸収されるため、隣接する空胴共振器2へ影響を及ぼしにくくなる。さらに、隣接する空胴共振器2の側壁24の外側に配した検波器11に影響を及ぼすことがなくなる。
上記各実施形態においては、各空胴共振器2から隣接する空胴共振器への、又は隣接する空胴共振器の検波器11へのマイクロ波の漏れが抑制されるため、検波器11によって定在波の周波数を正確に検出することができる。そのため、検出した定在波の周波数をマイクロ波発生器5にフィードバックして、マイクロ波発生器5から供給されるマイクロ波の周波数を精密に制御することができる。このようにして、空胴共振器2内に安定して定在波を発生させることができる。したがって、定在波によって流通管6内の被加熱対象物を効率良く、均一に加熱することができ、かつ、この加熱機構(各共振器内の定在波の形成状態)を安定的に維持することができる。
さらに上記各実施形態のマイクロ波加熱装置においては、以下のような利点も挙げられる。
(1)大量の流体を熱処理することが可能になり、化学材料の合成などに利用できるようになる。
(2)比較的安価な低出力マイクロ波発生器を利用することができるため、設備の初期投資を抑えることができる。
(3)生産規模の増減に応じて、マイクロ波発生器及び空胴共振器を段階的に増減することができるため、市場の変化に迅速に対応できる。
(4)隣接する空胴共振器への電磁波の伝搬を一定レベル以下に抑えるため、マイクロ波発生器の保護回路に過剰な性能が必要なくなる。
(5)各空胴共振器での電磁波照射状況や加熱状況を、検波器による定在波の検出、マイクロ波発生器によるマイクロ波の周波数の調整が可能になるので、空胴共振器2を個別に制御することができる。その結果、流通管内の被加熱対象物のきめ細かい温度管理が可能となる。
(6)検波器によって、各空胴共振器での、反射波強度や共振周波数、インピーダンスをモニタすることができるので、空胴共振器毎での熱処理状況や異常状態の検出が可能となる。
(7)一部の空胴共振器やマイクロ波発生器にトラブルが生じ、その部分での熱処理が不十分となっても、他の空胴共振器部分でその能力を補うことが可能となり、異常発生時の耐性が強く堅牢性の高いプロセスの構築が可能となる。
(8)各空胴共振器で異なる温度制御が可能となるため、複数の反応温度からなる多段反応などへの適応が容易である。
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。
[実施例1〜7]
図8に示す構成を有する実施例1〜7のマイクロ波加熱装置1を作製した。
空胴共振器2として、空胴長さLAが100mm、空胴直径Dが90mmの金属(アルミニウム製)の導波管結合型円筒型空胴共振器2A、2Bを2台用いた。それぞれの空胴共振器2A、2Bを中心軸C方向に重ね合わせた。各実施例1〜7の、隔壁8の厚さtは表1に示した通りであり、1mm〜5mmの範囲に設定し、中心軸Cに沿って配した貫通孔9の孔径φも表1に示した通りであり、3.2mm〜40mmの範囲内で設定した。この条件にて、実施例1〜7を作製した。比較例1は、実施例1において隔壁及び貫通孔を設けない構成としたこと以外、実施例1と同じ構成に作製した。
各実施例1〜7及び比較例1について、上側の空胴共振器2A(供給側と呼ぶ)の導波管(図示せず)から供給したマイクロ波のエネルギーに対し、他方の空胴共振器2B(受動側)の導波管(図示せず)で検出されるマイクロ波エネルギーを測定した。
測定には、ネットワークアナライザー(アジレント社製 E5071C(商品名))を用いた。供給側の空胴共振器2Aの導波管に同軸導波管変換器(同軸導波管変換フランジ)を介してネットワークアナライザーのポート1を接続し、受動側の空胴共振器2Bの導波管に同軸導波管変換フランジを介してネットワークアナライザーのポート2を接続した。ネットワークアナライザーで得られるSパラメータのS21信号から、供給側のマイクロ波エネルギーが、受動側にどの程度漏洩しているかを知ることができる。
S21信号が0のとき、供給側のマイクロ波のすべてのエネルギーが受動側の導波管で検出されていることを示す。またS21信号が−10dBのときは、マイクロ波エネルギーの10%が受動側に伝わっていることになる。S21の絶対値が大きいほど、マイクロ波の漏れが少ない。
表1に、隔壁の厚さtと孔径φを変えて実測したときの結果を示した。このときのTM010モードの共振周波数は2.5〜2.6GHzの範囲であった。
[実施例8及び9]
実施例8は前述の実施例1のマイクロ波加熱装置1を用い、実施例9は前述の実施例7のマイクロ波加熱装置1を用いた。これらの実施例8及び9は、二つの空胴共振器2A、2Bの貫通孔9を貫通する様に空胴共振器2A、2Bの中心軸Cに対して、アルミナ管(外径1mm、内径0.5mm)(表面にカーボンを塗布)を、その中心軸を合わせて設置した。そして、空胴共振器2A側をマイクロ波の供給側とし、空胴共振器2B側をマイクロ波の受動側としてマイクロ波加熱を行った。空胴共振器2A、2Bの側壁24には、その内部が観察できるように、中心軸Cに沿って幅5mmのスリット(図示せず)を設けた。
そのスリットから、サーモグラフィー(testo社製 868)にてアルミナ管の熱画像を取得した。
図9に、空胴共振器2A(供給側)からTM010モードの共振周波数と一致したマイクロ波を50Wの出力にて30秒間供給したときの熱画像の結果を示す。
表1に示した実施例1の条件では、受動側の空胴共振器2B内のアルミナ管の温度上昇は確認されていないが、表1に示した実施例7の条件では、受動側のアルミナ管の温度上昇が確認されている。以上の結果から、空胴共振器2A、2B間の電磁波漏れは−3.17dB以下に抑えることが望ましいといえる。
[実施例10〜13]
実施例10〜11は、マイクロ波受動側における空洞共振器2Bの空胴22の内径Dが異なる以外は、前述の実施例2のマイクロ波加熱装置1と同じとした。また実施例12〜13は、マイクロ波受動側における空洞共振器2Bの空胴22の内径Dが異なる以外は、前述の実施例8のマイクロ波加熱装置1と同じとした。なお、表2には、マイクロ波供給側とマイクロ波受動側の空胴22の内径が同一の実施例2及び8も併せて記載した。
実施例10〜13は、マイクロ波供給側における空洞共振器2Aの空胴の内径を90mm、実施例10、12は受動側の空洞共振器2Bの空胴22の内径を90.5mm、実施例10、12は受動側の空洞共振器2Bの空胴22の内径を91.5mmとした。このように、受動側の空胴内径が異なること以外は実施例2又は8の構成と同じである。
このとき、TM010モードの共振周波数は、空胴内になにも設置しない場合、内径90mmでは2.5507GHz、内径90.5mmでは2.5366GHz、内径91.5mmでは2.5089GHzであった。供給側を基準とすると、共振周波数に14MHz、42MHzの差Δfがあった。この差Δfは、供給周波数fとの比、Δf/fで表すと、0.55%と1.64%になった。
この二つの空胴共振器2、2を、厚さ1mm、貫通孔9の孔径3.2mmの隔壁で接続した場合と、厚さ5mm、穴径40mmの隔壁で接続した2条件でS21信号を測定した。その結果を表2に示した。孔径3.2mmの場合、内径が異なる実施例11のS21信号は−69dBであり、二つの空胴共振器の内径が一致したNo.2のS21信号の−15.6dBから大幅に小さくなっていることがわかった。同様に隔壁の内径が40mmの場合も、内径が一致した実施例8の−3.16dBから内径が異なる実施例13の−31.6dBと大幅に小さくなることがわかった。
また実施例12の条件で、実施例8及び9と同様にアルミナ管の加熱を試みたところ、マイクロ波供給側の空胴共振器に位置したアルミナ管は60〜70℃に加熱されていたが、受動側の空胴共振器に位置したアルミナ管は室温の17℃から変化していなかった。
このように、空胴共振器の内径を調整することにより共振周波数を変えることで、加熱に影響を及ぼす電磁波の漏れを大幅に低減できることが示された。
また、電磁波の漏れの量は少なくとも−3dBより小さい値であることがのぞましく、より望ましくは−6dBより小さい値であり、さらに好適なのは−10dBより小さい値であることが示された。
[実施例21〜25]
図10に示した構成を有する実施例21〜25のマイクロ波加熱装置1を作製した。実施例21〜25は、二つの空胴共振器2(2A)、2(2B)の隔壁8A、8B間に、チョーク構造31を設けたこと、及び貫通孔9の孔径φを24mmとしたこと以外、前述の実施例1と同じに作製した。したがって、実施例21〜25は、チョーク構造31を持つ領域を介して空胴共振器2A、2Bの隔壁8A、8B同士を接続したものである。隔壁8A、8Bのそれぞれの厚さは1mmとし、チョーク構造31のチョーク厚さLtは3mmとし、チョーク長さLcは、表3に示したように設定した。
空胴共振器2A側をマイクロ波の供給側とし、空胴共振器2B側をマイクロ波の受動側とした。
それぞれのチョーク長さLcに設定した場合について、シミュレーションによってS21信号を計算した。その際、マイクロ波は同軸導波管変換機を介し導波管(図示していない)により空胴共振器2に導入し、受動側の空胴共振器の導波管にて検出できるように設定した。
その結果、表3に示したように、特定の周波数でS21信号が小さくなっており、隣接した空胴共振器への影響を低減できることが分かった。
[実施例31]
図11に示す構成を有する実施例31のマイクロ波加熱装置1を作製した。具体的には、8台の空胴共振器2(2A〜2H)を、それぞれの円筒形状の空胴22の中心軸がそろうように合わせて積層して作製した。中心軸Cは各空洞22の中心軸がそろった軸とした。その空胴22の内径Dは、表4に示したように90.5mmから92mmの範囲で異ならせた。なお、図中、内径Dの差異の表現は省略した。中心軸C方向の各空洞共振器2の空胴22の中心軸方向の長さLを15mmとした。それぞれの空胴共振器2、2間の空胴22を仕切る各空洞共振器2の隔壁8の厚さtを5mmとした。また平面視した各隔壁8の中心部に孔径φが3.2mmの貫通孔9を設けた。
この貫通孔9の部分に、すべての空胴共振器2を貫き、かつ流通管6の中心軸と空胴共振器2の中心軸Cとを一致させて、流通管6を設置した。流通管6には、外径3mm、内径2mmのポリテトラフルオロエチレン(例えばテフロン(登録商標))製チューブを用いた。そして流通管6の下側(空胴共振器2の下段側)から、ギアポンプ61により流通管6内に模擬反応溶液としてエチレングリコールを供給した。
空胴共振器2A〜2Hは、模擬反応溶液供給側より1段目、2段目とし、出口側を8段目と呼ぶ。各段の空胴共振器2A〜2Hの各側壁24には、放射温度計71(ジャパンセンサー製TMHX(商品名))により非接触で流通管6の外壁温度を計測できる窓(図示せず)を設けた。検波器(図示せず)により各空胴共振器2内の定在波形成状況をモニターした。検波器には、高周波ダイオードによる半波整流回路を用いた。
それぞれの空胴共振器2は、段ごとに独立して、当該段に配した放射温度計71の指示値が所定温度になるよう、段ごとに空胴共振器2に供給されるマイクロ波電力をフィードバック制御した。電力制御に加え、検波器(図示せず)のモニター信号をもとに、TM010モードの共振周波数と一致するようマイクロ波発振周波数もマイクロ波発生器(図示せず)を調整することによって同時に制御した。マイクロ波は空胴共振器の側壁24に接続したループアンテナ3Aから供給した。
上記条件で、模擬反応溶液としてエチレングリコール30mL/minでギアポンプ61によって流通管6内に送液し、流通管6の出口での溶液温度が160℃となるよう、温度制御を行った。なお、空胴共振器各段のマイクロ波電力の上限を50Wとした。
上記放射温度計71の測定結果を図12に示した。また、その時の空胴共振器2の各段が、TM010モードの定在波を維持するよう制御したマイクロ波の周波数を表4に示した。
図12から明らかなように、空胴共振器2の1段目から3段目にかけて160℃に向かい、溶液の温度が上昇した。そして、4段目以降は安定して目的温度の160℃が維持できていることがわかった。また、隣接した空洞共振器2、2に供給したマイクロ波の制御周波数は、それぞれが3.4MHz以上離れており、たとえ貫通穴9を介し隣接した空洞共振器2、2に電磁波漏れが起こったとしても、制御に影響を及ぼすことがないよう運転できていることがわかった。
次に、空胴共振器2内におけるマイクロ波共振周波数の調整方法の実施例41〜50を以下に説明する。
[実施例41〜50]
実施例41〜50は、空胴共振器2の共振周波数を調整する方法として、図4に示した空胴共振器2を作製した。空洞共振器2の高さは100mm、内径は95mmであり、空胴22内に金属片53を挿抜可能に配置したものである。金属片53の幅を10mm、高さを98mmとした。この金属片53を、中心軸Cに平行な側壁24より挿入することで、空洞共振器2内にTM010モードの定在波を形成するマイクロ波の共振周波数を調整した。
金属片53を挿入長さLmに対して、TM010の共振周波数がどのように変化するか計測した結果を表5に示した。実施例41は金属片53を挿入する前の共振周波数であり、2.416GHzであった。これに対し、金属片の挿入長さLmを増やすことで共振周波数が増加することがわかった。挿入長さLmとは、空胴共振器2の側壁24内面から空胴22内に出る長さである。すなわち、金属片53の挿入長さLmを変化させることで、所望の共振周波数が得られることがわかった。
なお、金属片53は複数個所に配置してもよい。その際は、対角線上に配置するなど、対称性を保つように配置すると、空胴共振器2内の電磁界強度分布の乱れが少ないことがわかった。
以下に共振周波数の調整方法として誘電体を挿入する構成の実施例について以下に説明する。
[実施例61〜67]
実施例61〜67は、共振周波数を調整する空胴共振器として、図13に示した空胴22内に誘電体51を配置した円筒型の空胴共振器2を作製した。誘電体51には、直径dが10mm、高さが19.5mmの円柱状をなすテフロン(登録商標)(比誘電率2.1)製又はアルミナ(比誘電率9)製のものを用いた。なお、挿入する誘電体51の誘電損失は小さいものを利用することが好ましい。誘電損失が大きすぎると、誘電体がマイクロ波を吸収することにより、発熱するためである。要するに、誘電体51にマイクロ波のエネルギーが取られ、被加熱対象物の加熱が不十分になる可能性が生じる。そこで誘電体51の発熱を抑えることによって、被加熱対象物の加熱にマイクロ波を有効に利用することができる。図示例では、誘電体51の数を1個から4個を、空胴共振器2の側壁24に近い位置に配置している。TM010モードの共振周波数を表6に示した。誘電体51を空胴22内に挿入することで、共振周波数を小さくすることができた。誘電体51の数を増やすことや比誘電率の大きい誘電体を用いることで、共振周波数の変化量を大きくすることができた。
共振周波数を連続的に変化するために、実施例41〜50のように側壁から連続的に誘電体片を出し入れして調整することも有効であることがわかった。
[実施例68]
実施例68は、前述の実施例31に示した条件で、銀ナノ粒子の合成を試みた。反応原料として、エチレングリコールに硝酸銀を10mM溶解させ、保護剤としてポリビニルピロリドン(分子量10,000)300mMを添加したものを用いた。図11に示した8台の空胴共振器2を連結したマイクロ波加熱装置1を用いた。その他の条件は実施例31と同じとした。反応原料を30mL/minの流量でギアポンプ61によって流通管6内に送液し、流通管6の出口での溶液温度が160℃となるよう、温度制御を行った。なお、空胴共振器2各段のマイクロ波電力の上限を50Wとした。このときの滞留時間は1秒であった。回収されたナノ粒子を乾燥したものをTEM(FEI製TECNA I g2)により観測した結果、10nmの銀ナノ粒子が合成できているのを確認した。
[実施例69]
実施例69は、触媒充填反応による反応例として、エタノールの選択的部分酸化反応による水素製造を行った。図14に示したように、連結した5台の空胴共振器2のうち、原料ガス供給側に位置する4台のマイクロ波照射装置10を利用した。中心軸Cが一致するよう配置したマイクロ波加熱装置1を利用した。空洞共振器2の内径が90.5mm〜92mm(図14ではこの直径の差の図示を省略した。)、各円筒空胴共振器2、2間の隔壁8の厚さ(隣接する空胴22、22同士の間隔)は6mm、反応管16(流通管6)が通る貫通孔9の孔径が10.5mmのものを用いた。各円筒共振器2はすべてアルミニウムを用い製作した。
反応管16として外径10mm、内径8mmの石英反応管を用いた。石英反応管に水素製造用触媒3.0gを、触媒充填部CTの長さが6.7cmとなるように充填した。水素製造用触媒として、多孔質γアルミナに含侵法によりニッケル(Ni)が5質量%となるよう担持したNi担持アルミナを用いた。この触媒にマイクロ波吸収のよい炭化珪素(SiC)をニッケル担持アルミナ:SiC=10:1となるよう添加した。反応実験前に、電気炉により600℃、1時間、水素雰囲気下で還元処理を行った。
各空胴共振器2にTM010モードの定在波が形成されるようマイクロ波を照射したときの共振周波数を表7に示した。
上記条件で、エタノール:水=1:2に調製した液体原料をシリンジポンプにより150℃に予熱している気化器に供給し全量を蒸発しガス状にしたのち酸素と窒素を混合したものを原料ガスとした。組成はエタノール:水:酸素=1:2:0.5(体積比)としエタノール濃度5%となるよう窒素をキャリアガスとし調整し総流量は100ml/minとした。各空胴共振器の温度が700℃となるよう、各段のマイクロ波発生器の最大出力100Wの範囲で温度制御を行い、出口ガスの組成をガスクロマトグラフィーによって測定した。その結果、エタノール転化率98%、水素選択率92%、水素収率90%が得られた。
1、1A、1B、1C マイクロ波加熱装置
2 空胴共振器
3 マイクロ波供給口
3A アンテナ
4 ケーブル
5 マイクロ波発生器
6 流通管
10 マイクロ波照射装置
11 検波器
16 反応管
22 空胴
24 側壁
31 チョーク構造
41 吸収体
51 誘電体
53 金属片
C 中心軸、空胴中心軸
D1、D2、D3 空胴の径(内径)
φ 孔径
L 空胴の長さ

Claims (9)

  1. 直列に配された、定在波を形成する複数の空胴共振器と、
    該複数の空胴共振器の直列連結方向でかつ該複数の空胴共振器内に形成される定在波のエネルギーが極大となる部分に沿って、該複数の空胴共振器を貫通して配された被加熱対象物と、
    該複数の空胴共振器の各々に対してマイクロ波を各別に供給するマイクロ波発生器と、を有し、
    隣接する空胴共振器間にマイクロ波の漏れを防止する機構を有する、マイクロ波加熱装置。
  2. 前記空胴共振器内に形成される定在波がTM0n0モード又はTEn0モードである、請求項1記載のマイクロ波加熱装置。但し、nは正の整数とする。
  3. 前記マイクロ波の漏れを防止する機構が、下記(A)〜(C)から選ばれる少なくとも1つの機構である、請求項1又は2記載のマイクロ波加熱装置。
    (A)隣接する空胴共振器の空胴間を仕切る隔壁の厚さと、前記被加熱対象物を通す貫通孔の大きさとの関係が調整された機構。
    (B)隣接する空胴共振器間にマイクロ波吸収構造が設けられた機構。
    (C)一の空胴共振器内に定在波を形成するためのマイクロ波の周波数と、該空胴共振器に隣接する空胴共振器内に定在波を形成するためのマイクロ波の周波数とを互いに異なる周波数とする機構。
  4. 前記(C)を下記(c−1)及び(c−2)のいずれか一方又は両方により実現する、請求項3記載のマイクロ波加熱装置。
    (c−1)空胴共振器内に誘電体若しくは金属片を配置する。
    (c−2)互いに隣接する空胴共振器において、直列連結方向に対して垂直な断面を互いに異なる形状とする。
  5. 前記(C)において、一の空胴共振器内に供給される定在波を形成するためのマイクロ波の周波数と、該空胴共振器に隣接する空胴共振器内に供給される定在波を形成するためのマイクロ波の周波数との差の絶対値が3MHz以上である、請求項3又は4記載のマイクロ波加熱装置。
  6. 前記(B)のマイクロ波吸収機構が、チョーク構造であり、又は電磁波吸収体である、請求項3記載のマイクロ波加熱装置。
  7. 一の空胴共振器に定在波を形成するために供給されるマイクロ波のエネルギーをPx−inとし、該空胴共振器から、該空胴共振器に隣接する空胴共振器へと伝搬するマイクロ波のエネルギーをPy−xとしたとき、Py−x≦Px−in×0.25を満たす、請求項1〜6のいずれか1項記載のマイクロ波加熱装置。
  8. 前記マイクロ波加熱装置が、前記被加熱対象物をマイクロ波により加熱して、化学反応を生じさせる化学反応装置である、請求項1〜7のいずれか1項記載のマイクロ波加熱装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項記載のマイクロ波加熱装置を用いた化学反応方法であって、前記被加熱対象物を加熱することにより化学反応を生じさせることを含む、化学反応方法。
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