JP2019080812A - 超音波トランスデューサ、超音波プローブ、及び光音響装置 - Google Patents

超音波トランスデューサ、超音波プローブ、及び光音響装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2019080812A
JP2019080812A JP2017210831A JP2017210831A JP2019080812A JP 2019080812 A JP2019080812 A JP 2019080812A JP 2017210831 A JP2017210831 A JP 2017210831A JP 2017210831 A JP2017210831 A JP 2017210831A JP 2019080812 A JP2019080812 A JP 2019080812A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ultrasonic transducer
mhz
ultrasonic
electrode
frequency
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2017210831A
Other languages
English (en)
Inventor
文昭 水谷
Fumiaki Mizutani
文昭 水谷
丸山 綾子
Ayako Maruyama
綾子 丸山
潤 伊庭
Jun Iba
潤 伊庭
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP2017210831A priority Critical patent/JP2019080812A/ja
Publication of JP2019080812A publication Critical patent/JP2019080812A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Ultra Sonic Daignosis Equipment (AREA)
  • Transducers For Ultrasonic Waves (AREA)

Abstract

【課題】受信感度の最大値の低下や最小受信音圧の増加を抑制しつつ、低周波帯域から高周波帯域までの超音波を検出できる超音波トランスデューサを提供すること。【解決手段】光が照射された被検体から発せられた超音波を受信する超音波トランスデューサであって、前記超音波トランスデューサの受信感度の最大値から−6dB以上の受信感度となる周波数帯域が少なくとも1MHz以上10MHz以下であり、前記受信感度の最大値の最小受信音圧が1Pa以下であり、0.5MHzの受信感度の信号対ノイズ比が、前記受信感度の最大値の信号対ノイズ比に対して−20dB以上であることを特徴とする超音波トランスデューサ。【選択図】図4

Description

本発明は、超音波トランスデューサ、超音波プローブ、及び光音響装置に関する。
超音波を検出する電気機械変換装置は主に圧電材を使用した圧電型のトランスデューサや、マイクロマシニング技術によって製造された静電容量型のトランスデューサが研究されている。以下、静電容量型のトランスデューサ(Capacitive micromachined ultrasonic transducers)をCMUTと略すことがある。光超音波マンモグラフィでは、がんの発生により形成される新生血管をイメージングするために、近赤外光を乳房に照射して、血管中の生体組織の熱膨張により放射される超音波を前述のトランスデューサで検出する。光超音波マンモグラフィをPAM(Photo acoustic mammography)と呼ぶことがある。
従来の圧電素子を用いた超音波トランスデューサでは、素子自体の特性として、高周波帯域の超音波は検出しやすいが、低周波帯域の超音波の検出は困難な場合がある。
特許文献1では、高周波数帯域の超音波を検出する圧電素子と低周波数帯域の超音波を検出する圧電素子を組み合わせた構成により、広い周波数帯域に受信感度をもたせることを開示している。
特開2013−158435号公報
本発明者らは、特許文献1の構成に課題を見出した。すなわち、特許文献1では、上記構成によって1MHzから40MHz程度までの信号を検出することを開示するが、1MHz未満の信号を検出することは開示していない。本発明者らの検討によると、2mmの太い血管を検出するためには、0.5MHzという低周波帯域の超音波を検出できる構成が必要であることがわかった。
さらに、特許文献1では、複数の圧電素子を組み合わせているため広帯域化を実現できても、受信感度の最大値が低下し、最小受信音圧が増加してしまう、という課題を見出した。
そこで、本発明では、細い血管だけでなく、2mmの太い血管を検出することができ、かつ、受信感度の最大値の低下や最小受信音圧の増加を抑制した超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
本発明に係る超音波トランスデューサは、光が照射された被検体から発せられた超音波を受信する超音波トランスデューサであって、前記超音波トランスデューサの受信感度の最大値から−6dB以上の受信感度となる周波数帯域が少なくとも1MHz以上10MHz以下であり、前記受信感度の最大値の最小受信音圧が1Pa以下であり、0.5MHzの受信感度の信号対ノイズ比が、前記受信感度の最大値の信号対ノイズ比に対して−20dB以上であることを特徴とする。
本発明によれば、受信感度の最大値の低下や、最小受信音圧の増加を抑制しつつ、低周波帯域から高周波帯域までの超音波を検出できる超音波トランスデューサを提供できる。
検出感度と周波数特性及び検出感度と検出できる血管太さの関係の一例 本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサの受信感度の一例 本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサの回路ノイズの一例 本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサのS/Nの一例 本発明の実施形態に係る静電容量型トランスデューサの上面図の一例 図5の拡大図 図5のA−B断面図 図5のC−D断面図 本発明の実施形態における検出回路の一例 本発明の実施形態におけるCMUTの受信帯域の一例 本発明の実施形態におけるCMUTの出力電流特性の一例 本発明の実施形態における検出回路のゲイン特性の一例 本発明の実施形態に係る光音響装置の一例 本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサの一例 本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサの断面図 本発明の実施形態に係る静電容量型トランスデューサの製造方法の一例 本発明の実施形態における検出回路のカットオフ周波数を変えた計算結果の一例 本発明の実施形態における検出回路のカットオフ周波数と最小受信音圧の一例 本発明の実施形態における検出回路のカットオフ周波数と受信感度のピークS/Nに対する0.5MHzの受信感度のS/Nの一例 本発明の実施形態における振動膜の厚さと受信感度のピークから−6dBとなる周波数の一例 本発明の実施形態における電極間距離とバイアス電圧および受信感度の関係の一例 本発明の実施形態における、振動膜の厚さと受信感度の関係の一例
以下に図面を参照しつつ、本発明の実施形態を詳しく説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、説明を省略する。ただし、以下に記載されている詳細な計算式、計算手順などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
(受信感度)
図1を用いて、本実施形態における、光音響波イメージングと従来の超音波イメージングについて説明する。図1に、検出感度と周波数特性及び検出感度と検出できる血管太さの関係を示す。図1の横軸は周波数および検出できる血管太さ、縦軸は検出感度である。実線は本実施形態における光音響波イメージング用の超音波トランスデューサの検出感度の一例であり、破線は従来の超音波イメージング用のプローブの検出感度の一例である。横軸の血管太さは、被検体を球としたときに発生する光音響波の周波数スペクトルの、ピーク周波数を示している。つまり、血管太さ2mmは球の直径2mmに相当し、その時のピーク周波数は0.5MHzであり、血管太さ0.2mmは球の直径0.2mmに相当し、その時のピーク周波数は5MHzである。縦軸の検出感度は、実線は光音響波の受信感度を示し、破線は超音波の送受信感度を示す。
まず光音響波イメージングについて説明する。生体に光を照射して発生する光音響波は、血管の太さに依存した周波数帯域を有する。従来の超音波を送信し反射して戻ってきた超音波を受信する、超音波画像装置よりも広い周波数領域の信号を得ることができる。高分解能化や、がんなどの発生時に形成される細い新生血管をイメージングするために高い周波数帯域の受信感度を有する超音波トランスデューサが求められるが、周波数が高くなるほど生体中での超音波の減衰が大きい。一方、太い血管も同時にイメージングすることで血管の全体像が得られるため、低周波側の感度が高いことも求められている。
体表からの深度40mm、血管太さ0.2mm〜2mm程度の血管を検出対象とする場合、波長800nm程度のパルス光を被検体に照射すると、0.5MHzから10MHzの周波数範囲を含む音響波が発生する。発生した音響波を超音波トランスデューサ200で検出すると、血管像が得られる。そのため、図1に実線で示したように、超音波トランスデューサ200の検出感度が0.5MHzから10MHzの範囲にあることが好ましい。すなわち、0.5MHzから10MHzの範囲において、−6dB以上の検出感度を得ることができる。
目的の0.2mm〜2mmの血管像を鮮明に得るには、0.5MHzから6MHzの受信感度が、受信感度の最大値から−6dB以上だと、鮮明な血管像が得られて好ましい。2mmの血管太さのピーク周波数は5MHzであるが、高周波数の光音響波は生体中での減衰が大きいため、ピーク周波数の20%大きい6MHzまでの信号を用いて血管像を得ると鮮明な画像が得られて好ましい。なお、ピーク周波数とは信号出力が最大値となる周波数のことである。
図1に点線で−6dBの値を示す。図1では、検出感度の最大値から−6dB以上となる周波数帯域が、1MHz以上10MHz以下の範囲であり、より鮮明な血管像が得られて好ましい。1MHz以下の低周波数の光音響波は、太い血管で発生するため信号自体が大きく、生体中での減衰も小さい。そのため、1MHz以下の受信感度は、2MHz以上6MHz以下の範囲の受信感度よりも低くてもよい。
次に超音波イメージングについて説明する。従来の超音波を送信し反射して戻ってきた超音波を受信する超音波画像装置は、送信した超音波の周波数帯域の信号しか反射して戻ってこないため、検出できる血管の太さが制限される。図1の破線で示したものが一般的な超音波イメージング用プローブの検出感度の一例である。一般的な超音波イメージング用プローブは、検出感度のピークから−6dBとなる周波数が、2.1MHzと4.9MHzであり、検出できる血管の太さが、0.2mmから0.5mmの範囲である。プローブの性能を示す比帯域幅が80%(=100×((4.9−2.1)/((4.9+2.1)/2)))であり、より細い血管を検出するためには複数のプローブが必要になる。このことから、本実施形態における光音響波イメージングは従来の超音波イメージングよりも検出できる血管の太さが制限されず、広範囲で鮮明な血管像が得られて好ましい。
図2〜図4を用いて、本実施形態に係る超音波トランスデューサの受信感度の周波数特性について説明する。図2は本実施形態に係る超音波トランスデューサの受信感度の一例であり、横軸は受信信号の周波数、縦軸は受信感度である。図3は、本実施形態における超音波トランスデューサの回路ノイズの一例であり、横軸は周波数、縦軸は電圧である。図4は、本実施形態における超音波トランスデューサの信号対ノイズ比の一例であり、横軸は周波数、縦軸は信号対ノイズ比である。信号対ノイズ比を以下ではS/N(Signal/Noiseの比)と記載することがある。なお、本実施形態においてS/NのSは、受信感度(mV/kPa)であり、超音波の音圧を受信したときの出力の周波数特性を表す。また、Nは、回路ノイズ(uVrms)であり、回路ノイズの周波数特性を表す。従来、複数の検出回路を用いて、広帯域化を実現する技術があるが、回路が多い分、回路ノイズが大きくなり、最少受信音圧が増加していた。本実施形態では、検出回路を増やさず、に広帯域化を実現できるため、回路ノイズが多くならず、最少受信音圧の増加を抑制できる。
図2では、受信感度の最大値(3MHz)から−6dB以上となる周波数帯域が、1MHz以上10MHz以下の範囲であり、より鮮明な血管像が得られて好ましい。なお、1MHz以下の低周波数の光音響波は、太い血管で発生するため信号自体が大きく、生体中での減衰も小さい。そのため、1MHz以下の受信感度は、2MHzから6MHzの範囲の受信感度より低くてもよい。
次に受信感度のS/Nについて説明する。図4は、図2の受信感度を図3の回路ノイズで周波数毎に除した後に、最大値でdB表示した受信感度のS/Nの一例である。図4に破線で−20dBの値を示す。0.5MHzの受信感度のS/Nが、受信感度の最大値のS/Nの−20dB以上とすると、鮮明な血管像が得られて好ましい。超音波トランスデューサで検出した信号を元に画像を形成する場合、ゲインを掛けて信号を増幅させるが、同時にノイズも増幅されてしまう。受信感度の最大値のS/Nに対して、0.5MHzの受信感度のS/Nが−20dB以下になると、画像を形成する際のノイズによって虚像が発生して鮮明な血管像が得られない。そのため0.5MHzの受信感度のS/Nを−20dB以上とするのが好ましい。図4に示した0.5MHzの受信感度のS/Nは、−12dBである。
(最小受信音圧)
図2と図3を用いて、最小受信音圧について説明する。超音波トランスデューサの受信性能の一つに最小受信音圧がある。最小受信音圧とは、超音波を受信したときのS/Nであり、最小受信音圧=√2×ノイズの積算値/受信感度である。ノイズの積算値(積算ノイズ)は、超音波トランスデューサを検出回路に接続した時に生じる回路ノイズの積算値であり、図3で示した回路ノイズをある周波数範囲で積算した値である。ノイズの積算値は=√(Σ(Δf×V))である。ここで、Δfは測定した周波数間隔、Vは各周波数でのノイズの測定値である。積算範囲は、検出する光音響波の周波数で適宜設定するのが好ましい。最小受信音圧が小さいほど、より小さい超音波が検出できるので、最小受信音圧を小さくする構成が好ましい。図3で、ノイズ積算範囲を2MHzから6MHzとした場合、最小受信音圧が1Pa以下だと鮮明な血管像が得られ、0.6Pa以下だとさらに鮮明な血管像が得られるため好ましい。図3では、2MHzから6MHzの範囲の積算ノイズは13μVrmsである。図2の受信感度の最大値は、66mV/kPaなので、最小受信音圧は0.3Paであり、鮮明な血管像が得られてより好ましい。
(CMUTの構成)
図5〜図8を用いて、本実施形態に係る超音波トランスデューサの一例について説明する。本実施形態に係る超音波トランスデューサは、静電容量型のトランスデューサでも、圧電型のトランスデューサでもよい。圧電型のトランスデューサの例としては、PZTなどの圧電素子や圧電素子の薄膜、単結晶素子や単結晶薄膜などが挙げられる。一例として静電容量型トランスデューサについて説明する。図5は本実施形態における静電容量型トランスデューサの上面図であり、図6は図5の拡大図である。図7は図5のA−B断面図であり、図8は図5のC−D断面図である。
図中の番号は次の通りである。1は静電容量型トランスデューサ、2はセル、3は外形線、4は基板、5は第一の絶縁膜、6は第一の電極、7は第二の絶縁膜、8は間隙、9は第三の絶縁膜、10は第二の電極、11は封止膜、12は振動膜、13は振動膜支持部である。そして、14は封止部、21は検出回路、22は電圧印加手段、41は第一の電極パッド、42は第二の電極パッドである。CMUTでは、二つの電極の間の容量変化で生じる電流を電圧に変換して検出する。
図5に示す静電容量型トランスデューサ1は、多数のセル2が配置され、1つの素子(エレメントと呼ぶこともある)を構成している。図5では、1つの素子のみ示しているが、素子の数はいくつでも構わない。また、図5において、静電容量型トランスデューサ1は、セル2を142個含み構成されているが、個数はいくつであっても構わない。また、セルの配列は格子状の配置でも千鳥配置でもどのような配列でも構わない。さらに、複数のセル2が設けられる領域の大まかな外形は図5に示すような円形でもよく、正方形や長方形、六角形等の多角形でも構わない。
図7、図8に示すように、セル2は基板4、基板4上に形成される第一の絶縁膜5、第一の絶縁膜5上に形成される第一の電極6、第一の電極6上に形成される第二の絶縁膜7を有する。さらに、第三の絶縁膜9と第二の電極10と封止膜11で振動膜12が形成され、振動膜12を振動可能に支持する振動膜支持部13、間隙8とを有している。間隙8は、後述するが、エッチングホール16を介して犠牲層をエッチングすることで形成する。振動膜支持部13は、配線引き出しの為に第二の電極10を含んでいる場合(図7の13)と含んでいない場合(図8の13)が存在する。基板4がガラス基板などの絶縁性基板を含み構成される場合、第一の絶縁膜5はなくてもよい。また第二の絶縁膜7は、セルの耐圧向上や絶縁膜の帯電を防ぐために設けているため、不要であればなくてもよい。さらに封止膜11は、振動膜12の変形制御や間隙8を封止するために設けているため、不要であればなくてもよい。間隙8を上面から見た形状は円形であり、振動する部分の形状は円形であるが、正方形、長方形等の形状でも構わない。また図8に示すように、セル2の第一の電極6と第二の電極10との間に電圧を印加する電圧印加手段22と、第二の電極に流れる電流を電圧に変換して増幅する検出回路21を有している。検出回路は、電流電圧変換回路や、増幅回路と呼ぶこともできる。
本実施形態における静電容量型のトランスデューサは、電圧印加手段22から第一の電極6にバイアス電圧を印加する事ができる。第一の電極パッド41を介して第一の電極6にバイアス電圧が印加されると、第一の電極6と第二の電極10の間に電位差が生じる。この電位差により振動膜の復元力と静電引力が釣り合うところまで振動膜12は変位する。この状態で音響波が振動膜12に到達すると、振動膜12が振動する事で第一の電極6と第二の電極10の間の静電容量が変化して第二の電極10に電流が流れる。この電流を第二の電極10から引き出された第二の電極パッド42を介して取り出す事で、超音波を電気信号として取り出す事ができる。電圧印加手段22から第一の電極6にバイアス電圧を印加した状態で、第二の電極10に送信駆動電圧を印加すると、超音波を送信する事も出来る。第一の電極6へ印加する電圧が増大すると、振動膜12の復元力よりも静電引力の方が大きくなり、振動膜12が間隙8の下面の第二の絶縁膜7に接触する。この電圧をプルイン電圧という。プルイン電圧に対するバイアス電圧の比が高いほど、受信した音響波を電気信号に変換する、あるいは電気信号を音響波に変換する変換効率が高い。送信駆動電圧は、所望の超音波を送信できる波形であればどのような波形でも良い。単極パルスや双極パルス、バースト波や連続波など、所望の波形を用いればよい。
(検出回路のカットオフ周波数)
図9を用いて、本実施形態に係る検出回路の一例について説明する。本実施形態における検出回路は、トランスインピーダンス型の電流電圧増幅回路である。また、本実施形態における検出回路はカットオフ周波数を有するローパス特性を有する。
図中の番号は、検出回路208、オペアンプ32、帰還抵抗33,35、帰還容量34,36である。オペアンプ32は正負電源(VDD,VSS)に接続されており、反転入力端子(−IN)は、静電容量型トランスデューサ1の第二の電極に接続されている。出力端子(OUT)は、並列に接続された帰還抵抗33と帰還容量34に反転入力端子(−IN)接続され、出力信号がフィードバックされる構成になっている。非反転入力端子(+IN)は、並列に接続された帰還抵抗35と帰還容量36により、グランド端子(GND)に接続されている。グランド端子の電圧は、正電源VDDと負電源VSSの中間電位となっている。帰還抵抗33,35の抵抗値、帰還容量34,36の容量値はそれぞれ同じ値である。トランスインピーダンス回路のカットオフ周波数は、CMUT全体として広帯域な受信帯域を実現できるように設定されることが好ましい。測定対象や得たい受信帯域の性能によって、カットオフ周波数の割り当ては適宜変えることができる。
図10〜図12を用いて一般的なCMUTの受信帯域について説明する。図10はCMUTの受信帯域、図11はCMUTの出力電流特性、図12は検出回路のゲイン特性である。CMUTの受信帯域は、CMUTの出力電流特性と検出回路のゲイン特性の積で決まる。検出回路はトランスインピーダンス型の電流電圧増幅回路が用いられる。CMUTの出力電流は、静電容量の変化を平行平板近似したとき下記式1、2のように表せる。
I=P/((Zm+Zr)/(εS*Vb/d^2)+jωC) (式1)
Zm=j*km*((ω/ω^2)−1/ω) (式2)
上記(式1)(式2)において、Pは音響波の圧力、εは真空の誘電率、Sは第二の電極面積、Vbは二つの電極間に印加するバイアス電圧、dは電極間のギャップである。そして、Zmは振動膜の機械インピーダンス、Zrは媒質の音響インピーダンス、ωは音響波の各周波数、Cは全静電容量である。kmは振動膜のバネ定数であり、ωは共振周波数である。式1で全静電容量は相対的に小さいため、周波数の関数となっているのは振動膜の機械インピーダンスZmである。またCMUTの表面は通常、液体やゲルなどに接触して使用する場合が多い。液体の音響インピーダンスは振動膜の機械インピーダンスよりも大きいため、図11の出力電流の周波数特性に大きな影響を与える。振動膜の機械インピーダンスが0になる周波数が振動膜の共振周波数であり、図11の出力電流は最大値をとる。図11の出力電流の共振周波数は6MHzである。
図12に示した検出回路のゲイン特性は式3、カットオフ周波数は式4で示される。
G=Rf/(1+jωRf*Cf) (式3)
f≒1/(2πRf*Cf) (式4)
上記(式3)(式4)において、Gは回路ゲイン、Rfは帰還抵抗、Cfは帰還容量、ωは入力電流の角周波数、fはカットオフ周波数である。また、図8の回路を安定して駆動するためには、式5を満たす必要がある。
Cf≧((Cin)/(π*GBW*Rf))^0.5 (式5)
上記(式5)において、GBWはオペアンプの利得帯域幅、Cinはオペアンプの反転入力端子(−IN)に寄生する容量である。Cinが大きいと負帰還回路が不安定になり、回路自体が発振して電流電圧変換が行えなくなるため、Cinの値に対して最適なGBW、Rf、Cfを選択する必要がある。
例えば図10のCMUTの周波数特性を低周波数側に変更するためには、図11の出力電流の共振周波数を低周波側にずらすか、図12の検出回路のゲイン特性を低周波数側にずらせばよい。図11の出力電流のカットオフ周波数を低周波側にずらすには、セルの振動膜を柔らかくしてバネ定数を小さくすればよい。しかしセルの振動膜を柔らかくしすぎると、電極へ印加できる電圧が小さくなり、音響波を受信した時に得られる電圧信号が小さくなってしまう。また振動膜のたわみが大きくなり、高感度化のために電極間のギャップを狭くすることが困難になるため、振動膜はある程度の硬さが必要である(式1、2参照)。このことから、図12の検出回路のゲイン特性のカットオフ周波数を低周波数側にずらす方が好ましい。一方、図10の電圧信号のカットオフ周波数を高周波数側に変更するためには、図11の出力電流のカットオフ周波数を高周波側にずらすか、図12の受信回路のゲイン特性のカットオフ周波数を高周波数側にずらす方法がある。図11の出力電流のカットオフ周波数を高周波側にずらすには、セルの振動膜を硬くしてバネ定数を大きくすればよい。しかしセルの振動膜を硬くしすぎると、バネ定数が大きい事で音響波を受信した時に得られる電圧信号が小さくなってしまう。また電極へ印加する電圧が大きくなり、CMUTの絶縁耐圧の向上や装置構成の変更が必要となるため、振動膜の硬さには制限がある(式1、2参照)。図12の検出回路のゲイン特性のカットオフ周波数を高くするには、トランスインピーダンス回路のオペアンプを安定に動作させるために、帰還抵抗Rfを低くしてカットオフ周波数を高くする必要がある。帰還抵抗Rfを低くするとゲインが低下するため、音響波を受信した時に得られる電圧信号が小さくなってしまう。このことから、それぞれの制約の中で出力電流と検出回路のゲイン特性の両方のカットオフ周波数をずらすのが好ましい。本発明では、図12の検出回路のゲイン特性のカットオフ周波数を2MHz〜7MHzの範囲としている。また図12の出力電流のカットオフ周波数を検出回路のゲイン特性のカットオフ周波数よりも高くすることで広帯域な受信帯域を実現している。
なお、検出回路のカットオフ周波数は、信号の最大値から−3dB下がった値となる周波数である。デバイス(出力電流)のカットオフ周波数は、信号の最大値から−6dB下がった値となる周波数である。
(振動膜の厚さ)
振動膜12の特性は、振動膜の膜厚、半径、残留応力の影響で変わる。大気中の振動膜12の共振周波数は、式6で示される。
Fr ∝ (km/m)^0.5 ∝ t×E^0.5/(r^3×ρ^0.5) (式6)
Frは大気中での振動膜の共振周波数、kmは振動膜のバネ定数、mは振動膜の質量、tは振動膜の厚さ、rは振動膜の半径、Eは残留応力、ρは振動膜の密度である。振動膜12の半径は、大きいほど振動する部分の面積が大きくなり受信感度が高くなって好ましい。一方、質量が大きくなり、さらに液体の音響インピーダンスの影響が大きくなるため、周波数帯域が狭くなることがある。そのため、受信感度と周波数帯域のトレードオフを考慮する必要がある。振動膜12の膜厚は、所望の周波数が得られる膜厚にするのが好ましい。このとき、受信感度と周波数帯域のトレードオフを考慮した直径や、電極間の絶縁耐圧を考慮した厚さにするのが好ましい。また、犠牲層エッチング後は第二の電極10の残留応力が解放されるため、振動膜12のたわみが大きくなる。たわみが大きいと振動膜12が間隙8の底面に接触(スティッキング)して離れなくなるため、振動膜12の厚さはたわみを考慮するのが好ましい。振動膜12残留応力は、振動膜12のたわみと周波数特性に影響を与える。製造方法で後述するが、低い引張り応力で制御するのが好ましい。
(電極間距離)
受信感度は、第一の電極6と第二の電極10の間の電極間の距離で変わり、式7で示される。
受信感度 ∝ Vbias/d^2 ∝ d^1.5/d^2 = 1/d^0.5 (式7)
Vbiasはバイアス電圧、dは電極間の距離である。電極間の距離が小さくなると受信感度が大きくなって好ましいが、バイアス電圧が小さくなる。バイアス電圧が小さくなりすぎると、電源や外部からの電圧ノイズやデバイスの帯電による感度ばらつき、設計偏差が大きくなるため、受信感度と感度ばらつきを考慮して電極間の距離を適宜設定するのが好ましい。また、バイアス電圧が100V以上となると、一般的な装置への負荷が大きくなるため、バイアス電圧が100V以下となる構成にするのが好ましい。
(光音響装置)
図13を用いて本実施形態に係る光音響装置の一例を示す。図13は、光音響装置の構成図である。図中の番号は、取り付け部100、保持部110、被検体120、音響マッチング材130、光学系140、光源150、情報取得部160、画像表示部170、超音波プローブ180、超音波トランスデューサ200、配線300である。
測定は保持部110に被検体120の乳房などを挿入して行う。光源150から発生したパルス光は、被検体に光を照射するための光照射部の一部をなす光学系140を介して超音波プローブ180の頂点近傍から保持部110の方向に導かれ、被検体120に照射される。被検体内部を伝播した光のエネルギーの一部が血液などの光吸収体に吸収されると、その被検体120の光吸収体の熱膨張により音響波が発生する。被検体120で発生した音響波はすべての方向に伝播し、音響マッチング材130を伝播して超音波プローブ180内に配置された超音波トランスデューサ200の各々で受信され、情報取得部160において被検体情報が取得される。その結果、例えば、被検体120の特性情報を表す画像として画像表示部170に出力される。
超音波トランスデューサ200は、半球状の形状をした超音波プローブ180に、図5に示したセンサ平面(XY平面)が被検体120側に向くように複数配置されている。具体的には、センサ平面(XY平面)が、半球状の形状をした超音波プローブ180の曲率中心を向くように配置されている。超音波トランスデューサ200は、導線やケーブル等の配線300で情報取得部160に接続されており、情報取得部160から同一のバイアス電圧を印加して駆動し、被検体120から発生した音響波を受信する。受信した音響波は電気信号に変換され、情報取得部160で解析される。
図14、図15、図5を用いて本実施形態における超音波トランスデューサ200の一例を示す。図14は図13の超音波プローブ180に配置された超音波トランスデューサ200をXZ方向から見た図であり、図15は図14の断面図である。図中の番号は、光反射層205、本体206、配線300、第一のフレキ配線207、第二のフレキ配線209、検出回路208、超音波トランスデューサ素子210、支持部材211、配線基板212である。
超音波トランスデューサ200は、光反射層205と本体206と配線300から構成されている。本体206の中には、超音波トランスデューサ素子210と第一のフレキ配線207と第二のフレキ配線209、検出回路208が配置されている。超音波トランスデューサ素子210のセンサ平面(XY平面)は、図4に示したトランスデューサ素子1と同じ構成である。図4では、光反射層205と本体206を省略している。第一の電極パッド41は、第一のフレキ配線207に繋がれ、第二の電極パッド42は第二のフレキ配線に繋がれ、検出回路208と繋がれる。後述する製造方法で製造した超音波トランスデューサ素子1を図14に示すように実装することで超音波トランスデューサ200を製造することが出来る。
(CMUTの製造方法の説明)
図16を用いて本実施形態における静電容量型トランスデューサ1の製造方法の一例を示す。図16は、図6のA−B断面図である。
図16(a)に示すように、基板4上に第一の絶縁膜5を形成する。基板4はシリコン基板であり、第一の絶縁膜5は第一の電極6との絶縁を形成するためである。基板4がガラス基板のような絶縁性基板の場合、第一の絶縁膜5は形成しなくともよい。また、基板4は、表面粗さの小さな基板が望ましい。表面粗さが大きい場合、本工程の後工程での成膜工程でも、表面粗さが転写されていくとともに、表面粗さによる第一の電極6と第二の電極10間の距離が、各セル間でばらついてしまう。このばらつきは、変換効率のばらつきとなるため、感度、帯域ばらつきとなる。従って、基板4は、表面粗さの小さな基板が望ましい。さらに、第一の電極6を形成する。第一の電極6は、表面粗さが小さい導電材料が望ましく、例えば、チタン、タングステン、アルミ等である。基板4と同様に、第一の電極6の表面粗さが大きい場合、表面粗さによる第一の電極6と第二の電極10間の距離が、各セル間、各素子間でばらついてしまうため、表面粗さが小さい導電材料が望ましい。第一の電極6の厚さは、厚さが増すと表面粗さが増加するため、薄い方が好ましい。
次に、第二の絶縁膜7を形成する。第二の絶縁膜7は、表面粗さが小さい絶縁材料が望ましく、第一の電極6と第二の電極10との間に電圧が印加された場合に、第一の電極6と第二の電極10間の電気的短絡あるいは絶縁破壊を防止するために形成する。また、本工程の後工程で実施する犠牲層除去時に第一の電極6がエッチングされることを防止するために形成する。基板4と同様に、第二の絶縁膜7の表面粗さが大きい場合、表面粗さによる第一の電極6と第二の電極10間の距離が、各セル間でばらついてしまうため、表面粗さが小さい絶縁膜が望ましい。例えば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜等である。また絶縁膜は、厚くなるほど表面粗さが増すため、絶縁性を保つのに最低限必要な厚さとする。
次に、図16(b)に示すように、犠牲層15を形成する。犠牲層15は表面粗さが小さい材料が望ましい。基板4と同様に、犠牲層15の表面粗さが大きい場合、表面粗さによる第一の電極6と第二の電極10間の距離が各セル間でばらついてしまうため、表面粗さが小さい犠牲層15が望ましい。また、犠牲層15を除去するエッチングのエッチング時間を短くするために、エッチング速度の速い材料が望ましい。さらに、犠牲層15を除去するエッチング液あるいはエッチングガスに対して、第二の絶縁膜7や、振動膜12となる第三の絶縁膜9がほぼエッチングされないような犠牲層材料が求められる。犠牲層15を除去するエッチング液あるいはエッチングガスに対して、第二の絶縁膜7や、振動膜12となる第三の絶縁膜9がエッチングされる場合、振動膜12の厚さばらつき、第一の電極6と第二の電極10との間の距離ばらつきが発生する。振動膜12の厚さばらつき、第一の電極6と第二の電極10との間の距離ばらつきは、各セル間の感度、帯域ばらつきとなる。第二の絶縁膜7や、振動膜12が窒化シリコン膜、あるいは酸化シリコン膜の場合、表面粗さが小さく、第二の絶縁膜7や、振動膜12がエッチングされにくいエッチング液あるいはエッチングガスを用いることができる犠牲層材料が望ましい。例えば、アモルファスシリコン、ポリイミド、クロム等である。特に、クロムのエッチング液は、窒化シリコン膜、あるいは酸化シリコン膜をほぼエッチングしないので、第二の絶縁膜7や、振動膜12が窒化シリコン膜、あるいは酸化シリコン膜の場合、望ましい。
次に、図16(c)に示すように、第三の絶縁膜9を形成する。第三の絶縁膜9は、低い引張り応力が望ましい。例えば、500MPa以下の引張り応力がよい。窒化シリコン膜は応力コントロールが可能であり、500MPa以下の低い引張り応力にすることができる。振動膜12が圧縮応力を有する場合、振動膜12がスティッキングあるいは座屈を引き起こし、大きく変形する。また、大きな引張り応力の場合、第三の絶縁膜9が破壊されることがある。従って、第三の絶縁膜9は、低い引張り応力が望ましい。例えば、応力コントロールが可能で、低い引張り応力にできる窒化シリコン膜である。また、第三の絶縁膜9の厚さは、犠牲層15の上に成膜を行うため、犠牲層15のカバレッジを確実にできる厚さとすることが好ましい。
次に、図16(d)に示すように、第二の電極10を形成する。第二の電極10は、残留応力が小さい材料が望ましく、アルミニウムなどである。犠牲層除去工程あるいは封止工程を第二の電極10の形成後に行う場合、第二の電極10は、犠牲層エッチングに対するエッチング耐性、耐熱性を有する材料が望ましい。例えばアルミシリコン合金やチタンなどである。表面の段差のカバレッジを確実にできる厚さとすることが好ましい。
次に、図16(e)に示すように、第三の絶縁膜9にエッチングホール16を形成する。エッチングホール16は、犠牲層15をエッチングして除去するためにエッチング液あるいはエッチングガスを導入するための孔である。その後、犠牲層15を除去して間隙8を形成する。犠牲層除去方法は、ウエットエッチングやドライエッチングなどが好ましく、犠牲層材料としてクロムを用いた場合は、ウエットエッチングが好ましい。犠牲層材料としてクロムを用いた場合、犠牲層エッチングの際に第二の電極10がエッチングされないようにするために、第二の電極10をチタンとするのが好ましい。第二の電極10としてアルミシリコン合金などを用いる場合には、第二の電極10を形成した後に第二の電極10上に第三の絶縁膜9と同じ材料で絶縁膜を形成し、その後エッチングホール16を形成して犠牲層除去を行うのが好ましい。
次に、図16(f)に示すように、エッチングホール16を封止する為に、封止膜11を形成する。第三の絶縁膜9と第二の電極10と封止膜11で振動膜12が形成される。封止膜11は、間隙8に液体や外気が浸入しないことが求められる。間隙8が大気圧であると、温度変化によって間隙8内の気体が膨張したり収縮したりする。また間隙8には高い電界がかかる為、分子の電離などによる素子の信頼性低下の要因となる。そのため、封止は減圧した環境で行われることが求められる。間隙8内部を減圧する事で間隙8内部の空気抵抗を小さくすることができる。これにより振動膜12が振動しやすくなり、静電容量型トランスデューサ1の感度を高くすることができる。また封止する事で静電容量型トランスデューサ1を液体中で使用する事ができる。封止材料として、第三の絶縁膜9と同じ材料であれば密着性が高い為好ましい。また、表面の段差のカバレッジを確実にできる厚さとすることが好ましい。第三の絶縁膜9が窒化シリコンの場合、封止膜11も窒化シリコンが好ましい。振動膜支持部13は、間隙8を囲い振動膜12を支持している部分である。
図16では、第二の電極10が第三の絶縁膜9と封止膜11で挟まれた構成を一例として示したが、第三の絶縁膜9を形成した後にエッチングホール16を形成して犠牲層エッチングを行ってもよい。その後封止膜11を形成した後に第二の電極10を設けることもできる。しかし第二の電極10が最表面に露出していると、異物などにより素子がショートする可能性が高くなるため、第二の電極10は絶縁膜に設けることが好ましい。また、図16(f)で封止膜11を形成した後に、封止膜11の一部をエッチングして封止膜11を薄くしてもよい。封止膜11はエッチングホール16を封止する必要があるため、間隙8の厚さに応じて厚さを変える必要がある。間隙8の厚さを大きくし、封止膜11の厚さを薄くする場合には、エッチングホール16を封止できる厚さを成膜した後に、振動膜12となる部分を含んだ封止膜11をエッチングするのが好ましい。
以上の工程を経る事で図16(f)となり、図4のような静電容量型トランスデューサ1を作製する事ができる。
以下、より具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
(実施例1 検出回路のカットオフ周波数の選定)
本実施例では、受信感度のピークから−6dB以上となる周波数が、低周波数側で2MHz以下、高周波数側で6MHz以上となる、超音波トランスデューサについて説明する。
まず、超音波トランスデューサ素子1の構成を説明する。
超音波トランスデューサ素子1の外形線3は、図5に示すような直径2mmの略円形である。セル2は円形の形状であり、間隙8の直径は36μmである。間隙8の上の第二の電極10の直径は32μmである。間隙8の上の第二の電極10の直径に接続している配線の幅は5μmである。隣接したセル同士の間隔は39μmで配置されている。図5ではセル数は省略しているが、実際に外形線3の内部に配置した全セル数は2379個である。図8に示すようにセルは、基板4として300um厚さのシリコン基板、シリコン基板4上に形成される第一の絶縁膜5、第一の絶縁膜5上に形成される第一の電極6、第一の電極6上の第二の絶縁膜7を有する。さらに、第三の絶縁膜9と第二の電極10と封止膜11を含む振動膜12と、間隙8とを有している。間隙8の高さは140nmである。さらに、第一の電極6と第二の電極10との間にバイアス電圧を印加する電圧印加手段22と検出回路21を有している。
第一の絶縁膜5は、熱酸化により形成した厚さ1umのシリコン酸化膜である。第二の絶縁膜7は、Prasma Enhanced Chemical Vapor Deposition(PE−CVD)により形成した100nmのシリコン酸化膜である。第一の電極6は厚さが50nmのタングステンであり、第二の電極10は厚さが100nmのアルミ合金である。第三の絶縁膜9と封止膜11はPE−CVDにより作製した窒化シリコン膜であり、450MPa以下の引張り応力で形成している。第三の絶縁膜9の厚みは350nmであり、封止膜11の厚さは850nmである。このような構成の超音波トランスデューサ素子1を、前述した製造方法で製造した。製造した超音波トランスデューサ素子1の大気中の共振周波数は、13.1MHz、プルイン電圧は75Vであった。
シリコン基板4上に製造した超音波トランスデューサ素子1をダイシングし、第一の電極パッド41を第一のフレキ配線207へ、第二の電極パッド42を第二のフレキ配線209へ接続し、本体206内部の支持部材211にシリコン系の接着剤で固定する。その後、光反射膜205をシリコン系の接着剤で超音波トランスデューサ素子1の表面に張り付けることで、超音波トランスデューサ200を製造した。光反射膜205は、厚さ12umのPETフィルムに数十umの金を蒸着させたものを用いた。シリコン系の接着剤の厚さは30umとした。
次に、検出回路208の構成を説明する。
検出回路のカットオフ周波数を0.5MHz、1MHz、2MHz、4MHz、帰還容量は順に4.3pF、5.6pF、8.2pF、11pF、帰還抵抗は順に75kΩ、27kΩ、9.1kΩ、3.6kΩとする。検出回路のカットオフ周波数は式4で計算した値であり、帰還容量は式5を満たす値とする。製造した超音波トランスデューサ素子1の検出回路208のカットオフ周波数を変えた計算結果を図17、図18、図19に示す。図17の横軸は検出回路208のカットオフ周波数、縦軸は受信感度のピークから−6dBとなる周波数である。図17の丸いプロットは低周波数側の値であり、四角いプロットは高周波数側の値であり、各プロットの実線は近似曲線である。図18の横軸は検出回路208のカットオフ周波数、縦軸は最小受信音圧である。プロットの実線は近似曲線である。図19の横軸は検出回路208のカットオフ周波数、縦軸は受信感度のピークS/Nに対する0.5MHzの受信感度のS/Nである。プロットの実線は近似曲線である。
例えば図17で、受信感度のピークから−6dB以上となる周波数を低周波数側で2MHz以下、高周波数側で6MHz以上とする場合について説明する。低周波数側で2MHz以下となる検出回路のカットオフ周波数は、7MHz以下である。一方、高周波数側で6MHz以上となる検出回路のカットオフ周波数は、2MHz以上である。このことから、受信感度のピークから−6dB以上となる周波数が低周波数側で2MHz以下、高周波数側で6MHz以上となる検出回路のカットオフ周波数は、2MHz以上7MHz以下である。そのため、検出回路のカットオフ周波数は2MHz以上7MHz以下が好ましい。また図17に示したように、検出回路のカットオフ周波数が2MHz以上7MHz以下の範囲で、最小受信音圧は0.6Pa以下である。この時のノイズ積算範囲は、2MHzから6MHzである。さらに、図18に示したように、検出回路のカットオフ周波数が2MHz以上7MHz以下の範囲で、受信感度のピークS/Nに対する0.5MHzの受信感度のS/Nは、−20dB以上である。
以上のことから、実施例1のような構成にすることで、受信感度が低下することなく、PAMの血管イメージングに求められる広帯域化された超音波トランスデューサ200を提供できる。
(実施例2 振動膜の膜厚と性能の関係)
本実施例では、受信感度のピークから−6dB以上となる周波数が、低周波数側で2MHz以下、高周波数側で6MHz以上となる、振動膜の厚さについて説明する。
図20に、検出回路208のカットオフ周波数が3MHzの場合で、振動膜の厚さを変えた時の受信感度のピークから−6dBとなる周波数を示す。横軸は振動膜の厚さ、縦軸は受信感度のピークから−6dBとなる周波数である。実線は低周波数側の周波数であり、破線は高周波数側の周波数である。
本実施例の超音波トランスデューサ200の構成は、実施例1と同等であり、封止膜11の厚さを変えて振動膜の厚さを変えている。図22において、低周波数側で2MHz以下となる振動膜厚さは2800nm以下であり、高周波数側で6MHz以上となる、振動膜の厚さは1000nm以上である。このことから、好ましい振動膜12の厚さは、1000nm以上2800nm以下の範囲である。
本実施例2では、間隙8の直径が36μmの一例を示している。間隙8の直径が異なる場合には、直径に適した振動膜厚さに適宜変更してもよい。
(実施例3 電極間距離とバイアス電圧の関係)
本実施例では、第一の電極6と第二の電極10の電極間の距離とバイアス電圧の関係について説明する。
図21に、電極間距離とバイアス電圧および受信感度の関係を示す。横軸は第一の電極6と第二の電極10の電極間距離、左の縦軸はバイアス電圧、右の縦軸は受信感度である。電極間距離とは、第一の電極6と第二の電極10の間に存在する、第二の絶縁膜7と第三の絶縁膜9を含めた真空等価ギャップ(=第二の絶縁膜7の厚さ/第二の絶縁膜7の比誘電率+間隙厚さ+第三の絶縁膜9の厚さ/第三の絶縁膜9の比誘電率)のことである。本実施例の超音波トランスデューサ200は、最終的に図13に示した超音波プローブ180に実装され、光音響装置となる。光音響装置では、複数の超音波トランスデューサ200に同一のバイアス電圧が印加される。そのため、本実施例のバイアス電圧は、超音波トランスデューサ200の製造ばらつきを考慮して、プルイン電圧の90%の電圧としている。真空等価ギャップが大きくなると、真空等価ギャップの1.5乗に比例してバイアス電圧が上昇する。
本実施例の超音波トランスデューサ200の構成は、実施例1と同等であり、間隙8の厚さを変えて電極間距離を変えている。電極間距離が小さくなると受信感度が大きくなって好ましいが、プルイン電圧が小さくなるのに伴い、バイアス電圧を小さくする必要が生じうる。バイアス電圧が小さくなりすぎると、電源や外部からの電圧ノイズやデバイスの帯電による感度ばらつき、設計偏差が大きくなる。そのため受信感度と感度ばらつきを考慮して電極間距離を適宜設定するのが好ましい。また、バイアス電圧が100V以上となると、一般的な装置への負荷が大きくなるため、バイアス電圧が100V以下となる構成にするのが好ましい。本実施例において、バイアス電圧が100V以下となる電極間距離は、273nm以下である。なお、電極間距離は174nm以下であることが好ましい。なぜなら、超音波トランスデューサ同士の感度ばらつきを抑えるために、デバイスの初期帯電±1Vがプルイン電圧の2%以下であるようにする必要がある。それを満たすためにプルイン電圧は50V以上とする必要があり、そのときの電極間距離が174nmだからである。
本実施例3では、間隙8の直径が36μm、間隙8の上の第二の電極10の直径は32μm、振動膜12の厚さは1200nmの一例を示している。これらの値が異なる場合には、電極間距離を適宜変更してもよい。
(実施例4)
本実施例では、より具体的な超音波トランスデューサ200の構成について説明する。
本実施例の超音波トランスデューサ200は、受信感度のピークから−6dB以上となる周波数が、低周波数側が2MHz以下、高周波数側が6MHz以上である。また最小受信音圧が1Pa以下であり、0.5MHzの受信感度のS/Nが、受信感度のピークのS/Nに対して−20dB以上である。
本実施例の超音波トランスデューサ200の構成は実施例1と同じであり、振動膜12の厚さは1200nmである。電極間距離は214nmである。光反射膜205は、厚さ12umのPETフィルムに数十umの金を蒸着させたものを用いており、シリコン系の接着剤の厚さは30umである。検出回路208のカットオフ周波数は3MHzであり、帰還容量は15pF、帰還抵抗は3480Ωである。バイアス電圧は71Vである。
このような超音波トランスデューサ200の受信感度の周波数特性を図2に、回路ノイズを図3に、受信感度のS/Nを図4に示す。図2に示す通り、受信感度のピークから−6dB以上となる周波数は、低周波数側が1MHz以上、高周波数側が10MHz以下である。超音波トランスデューサ200の周波数ばらつきが30%生じても、受信感度のピークから−6dB以上となる周波数が、低周波数側が1.3MHz以上、高周波数側が7MHz以下の範囲であり、光音響波の検出に十分な性能を有する。また図3では、2MHz〜6MHzの積算ノイズは13μVrmsであり、図2の受信感度の最大値は、66mV/kPaなので、最小受信音圧は0.3Paである。超音波トランスデューサ200の受信感度及びノイズばらつきが50%生じても、最小受信音圧は0.6Paであり、光音響波の検出に十分な性能を有する。また図4に示した0.5MHzの受信感度のS/Nは、受信感度のピークのS/Nに対して−12dBである。超音波トランスデューサ200の受信感度及びノイズばらつきが50%生じても−18dBであり、光音響波の検出に十分な性能を有する。
以上のことから、本発明により受信感度が低下することなく、PAMの血管イメージングに求められる広帯域化された超音波トランスデューサを提供できる。
1 静電容量型トランスデューサ
2 セル
3 外形線
4 基板
5 第一の絶縁膜
6 第一の電極
7 第二の絶縁膜
8 間隙
9 第三の絶縁膜
10 第二の電極
11 封止膜
12 振動膜
13 振動膜支持部
14 封止部
21 検出回路
22 電圧印加手段
32 オペアンプ
33、35 帰還抵抗
34、36 帰還容量
41 第一の電極パッド
42 第二の電極パッド
100 取り付け部
110 保持部
120 被検体
130 音響マッチング材
140 光学系
150 光源
160 情報取得部
170 画像表示部
180 超音波プローブ
200 超音波トランスデューサ
300 配線

Claims (13)

  1. 光が照射された被検体から発せられた超音波を受信する超音波トランスデューサ
    であって、
    前記超音波トランスデューサの受信感度の最大値から−6dB以上の受信感度となる周波数帯域が少なくとも1MHz以上10MHz以下であり、
    前記受信感度の最大値の最小受信音圧が1Pa以下であり、
    0.5MHzの受信感度の信号対ノイズ比が、前記受信感度の最大値の信号対ノイズ比に対して
    −20dB以上であることを特徴とする超音波トランスデューサ。
  2. 前記超音波トランスデューサの受信感度の最大値から−6dB以上の受信感度となる周波数帯域が少なくとも2MHz以上6MHz以下であることを特徴とする請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
  3. 前記最小受信音圧が0.6Pa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
  4. 前記超音波トランスデューサは、間隔を隔てて形成された二つの電極のうちの
    一方の電極を含む振動膜が振動可能に支持された静電容量型のトランスデューサを含み構成され、
    前記二つの電極の間の容量変化で生じる電流を電圧に変換して検出する検出回路を有することを
    特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
  5. 前記二つの電極の間の容量変化で生じる電流を電圧に変換する検出回路を有することを
    特徴とする請求項4に記載の超音波トランスデューサ。
  6. 前記検出回路のゲインはカットオフ周波数を有するローパス特性を有し、
    前記カットオフ周波数が、2MHz以上7MHz以下であることを特徴とする請求項5に記載の超音波トランスデューサ。
  7. 前記振動膜の共振周波数は、前記検出回路のカットオフ周波数よりも高いことを特徴とする請求項5または6に記載の超音波トランスデューサ。
  8. 前記振動膜の厚さは1000nm以上2800nm以下であることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
  9. 前記静電容量型のトランスデューサは、
    前記二つの電極の間に電位差を生じさせるための電圧印加手段を有し、
    前記電位差が100V以下となるように前記電圧印加手段が制御されることを特徴とする請求項4乃至8のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
  10. 前記二つの電極間の距離が273nm以下であることを特徴とする請求項4乃至9のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
  11. 半球状の保持部と、前記保持部に設けられた複数の前記超音波トランスデューサとを含み構成され、
    前記超音波トランスデューサ請求項1乃至10のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサであることを特徴とする超音波プローブ。
  12. 前記複数の超音波トランスデューサに互いに同じ大きさの駆動電圧が印加されるように構成されていることを特徴とする請求項11に記載の超音波プローブ。
  13. 被検体に照射する光を発生させる光源と、
    光が照射された前記被検体から発生した音響波を受信する請求項1乃至12のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサと、
    前記超音波トランスデューサで受信した信号から変換されて出力された電気信号に少なくとも基づいて、前記被検体に関する情報を取得する情報取得部と、
    を有することを特徴とする光音響装置。
JP2017210831A 2017-10-31 2017-10-31 超音波トランスデューサ、超音波プローブ、及び光音響装置 Pending JP2019080812A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017210831A JP2019080812A (ja) 2017-10-31 2017-10-31 超音波トランスデューサ、超音波プローブ、及び光音響装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017210831A JP2019080812A (ja) 2017-10-31 2017-10-31 超音波トランスデューサ、超音波プローブ、及び光音響装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2019080812A true JP2019080812A (ja) 2019-05-30

Family

ID=66669253

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017210831A Pending JP2019080812A (ja) 2017-10-31 2017-10-31 超音波トランスデューサ、超音波プローブ、及び光音響装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2019080812A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101954102B1 (ko) 정전용량형 트랜스듀서, 정전용량형 트랜스듀서 제조 방법 및 피검체 정보취득장치
US10464102B2 (en) Ultrasonic detection device and ultrasonic diagnostic device
JP6071285B2 (ja) 静電容量型トランスデューサ
US10101303B2 (en) Capacitive micromachined ultrasonic transducer and test object information acquiring apparatus including capacitive micromachined ultrasonic transducer
US10293374B2 (en) Capacitive transducer and method of manufacturing same
JP6057571B2 (ja) 静電容量型トランスデューサ
JP6429759B2 (ja) 静電容量型トランスデューサ及びそれを備える情報取得装置
JP6632431B2 (ja) 超音波トランスデューサユニット及びそれを備える情報取得装置
US10189049B2 (en) Capacitive transducer and method of manufacturing same
JP2015100472A (ja) 静電容量型トランスデューサの駆動方法および駆動装置
JP2019080812A (ja) 超音波トランスデューサ、超音波プローブ、及び光音響装置
JP5980263B2 (ja) 静電容量型の電気機械変換装置を含む装置
JP2019075831A (ja) 静電容量型音響波トランスデューサ及びこれを備えた被検体情報取得装置
JP6147138B2 (ja) 静電容量型トランスデューサおよびその製造方法
JP6286000B2 (ja) 静電容量型トランスデューサの駆動方法および駆動装置
JP6395390B2 (ja) 静電容量型トランスデューサおよびその製造方法
JP6395391B2 (ja) 静電容量型トランスデューサおよびその製造方法
JP2020018469A (ja) 静電容量型トランスデューサ、及びそれを用いた超音波プローブ