JP2019075831A - 静電容量型音響波トランスデューサ及びこれを備えた被検体情報取得装置 - Google Patents

静電容量型音響波トランスデューサ及びこれを備えた被検体情報取得装置 Download PDF

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Ayako Maruyama
綾子 丸山
虎島 和敏
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Abstract

【課題】 送信音圧や感度特性を考慮して、優れた絶縁耐圧が得られる静電容量型音響波トランスデューサを提供すること。【解決手段】 間隙を挟んで配された第一の絶縁膜及び第二の絶縁膜と、前記間隙を挟んだ前記第一及び第二の絶縁膜の外側にそれぞれ配された第一の電極及び第二の電極と、を備え、前記第二の絶縁膜と前記第二の電極とが変位することで前記間隙の距離が変化し、これにより前記第一及び第二の電極間の静電容量が変化するセルと、前記第一の電極と前記第二の電極との間に電圧を印加する電圧印加手段と、を有する静電容量型の音響波トランスデューサであって、前記第一の絶縁膜にかかる電界強度が、前記第二の絶縁膜にかかる電界強度に比して、絶縁破壊を生ずる電界強度に近くなるように構成した静電容量型音響波トランスデューサ。【選択図】 図2

Description

本発明は、音響波変換素子などとして用いられる静電容量型音響波トランスデューサ及びこれを備えた被検体情報取得装置に関する。
マイクロマシニング技術によって製造される微小機械部材はマイクロメータオーダの加工が可能であり、従来より、これらを用いて様々な微小機能素子が実現されている。
このような技術を用いた静電容量型音響波トランスデューサ(CMUT:Capacitive Micromachined Ultrasonic Transducer)は、圧電素子の代替品として研究されている。
静電容量型音響波トランスデューサは、メンブレン(振動膜)を振動させることで音響波を発信するアクチュエータの機能と、被検体に反射して戻ってきた音響波をメンブレンの変位変化として受信するセンサの機能を一体化したものである。
このような静電容量型音響波トランスデューサを用いると、振動膜の振動を用いて音響波を送信、受信することができ、特に液中において優れた広帯域特性を容易に得ることができる。本明細書において、音響波とは、音波、超音波、光音響波と呼ばれるものなどを含む。
音響波診断装置は、被検体に静電容量型音響波トランスデューサから音響波を送信し、被検体からの反射信号を静電容量型トランスデューサで受信し、受信した信号に基づいて音響波画像を得る装置である。
特許文献1には、音響波診断装置に適用可能な静電容量型超音波トランスデューサの一対の電極間の絶縁耐圧の向上に関する提案がなされている。
特許文献1に記載の発明は、酸化シリコン膜よりも窒化シリコン膜の誘電率が大きいことと、窒化シリコン膜はリーク電流による電荷が蓄積し易いことを考慮したものである。具体的には、特許文献1は、CMUTを構成する一対の電極の各電極に接する部分には酸化シリコン膜を用いると共に電極間の電極に接しない部分に窒化シリコン膜を配置することで絶縁膜の耐圧向上を図る発明が開示されている。
特開2008−288813号公報
例えば、大きな送信音圧を得るためにはCMUTを構成する電極間に高い電圧を印加して振動膜の変位を大きくする必要があるが、特許文献1に開示された発明は、単に絶縁膜の耐圧向上を狙ったものであり、送信音圧と耐圧の双方を考慮したものではない。特許文献1の発明は、振動膜側の絶縁膜を厚くすると送信音圧や感度特性の点で必ずしも優れた静電容量型音響波トランスデューサを構成できないのが実状である。
本発明は、送信音圧や感度特性を考慮して、優れた絶縁耐圧が得られる静電容量型音響波トランスデューサを提供することを目的とする。
本発明により提供される静電容量型音響波トランスデューサは、間隙を挟んで配された第一の絶縁膜及び第二の絶縁膜と、前記間隙を挟んだ前記第一及び第二の絶縁膜の外側にそれぞれ配された第一の電極及び第二の電極と、を備え、前記第二の絶縁膜と前記第二の電極とが変位することで前記間隙の距離が変化し、これにより前記第一及び第二の電極間の静電容量が変化するセルと、前記第一の電極と前記第二の電極との間に電圧を印加する電圧印加手段と、を有する静電容量型の音響波トランスデューサであって、前記第一の絶縁膜にかかる電界強度が、前記第二の絶縁膜にかかる電界強度に比して、絶縁破壊を生じる電界強度に近くなるように構成したことを特徴とする。
本発明の静電容量型音響波トランスデューサでは、第一の絶縁膜にかかる電界強度が、前記第二の絶縁膜にかかる電界強度に比して、絶縁破壊に近くなるように構成した。
これにより送信音圧や感度特性を考慮した優れた絶縁耐圧が得られる静電容量型音響波トランスデューサを構成できる。
本発明の静電容量型音響波トランスデューサを説明するための上面図である。 本発明の静電容量型音響波トランスデューサを説明するための図1A−B断面図である。 本発明の静電容量型トランスデューサ音響波を説明するための絶縁膜の電流電圧特性の一例を示すグラフである。 本発明の静電容量型音響波トランスデューサを説明するための第一の絶縁膜の電流電圧特性の一例を示すグラフである。 本発明の静電容量型音響波トランスデューサを説明するための第二の絶縁膜の電流電圧特性の一例を示すグラフである。 本発明の静電容量型音響波トランスデューサを用いた被検体情報取得装置を説明するための図である。 本発明の静電容量型音響波トランスデューサを駆動する送受信回路を説明するための図である。 本発明の静電容量型音響波トランスデューサを説明するため音響波プローブの斜視図である。 本発明の静電容量型音響波トランスデューサの製造方法を説明するための図である。 本発明の静電容量型音響波トランスデューサの製造方法を説明するための図である。 本発明の静電容量型音響波トランスデューサを説明するための間隙Gと第二の絶縁膜の厚さの関係の一例である。 実施例1の静電容量型音響波トランスデューサを説明するための上面図である。 実施例1の静電容量型音響波トランスデューサを説明するための図10A−B断面図である。
本発明の容量結合型音響波トランスデューサについて、図1及び図2を参照して説明する。図1は、本発明の音響波トランスデューサの模式的上面図であり、図2は、図1におけるA−B断面図である。
図1においては、1は静電容量型音響波トランスデューサであり、2はセル、3は複数のセルをまとめて構成した素子(エレメント)であり、42は一対の電極間の静電容量変化により生ずる電流を検出するための電極パッドである。
図1の断面図である図2を参照しつつ説明すると、本発明の静電容量型音響波トランスデューサは、間隙(キャビティ8)を挟んで配された第一の絶縁膜7及び第二の絶縁膜9と、間隙8を挟んで第一及び第二の絶縁膜の外側にそれぞれ配された第一の電極6及び第二の電極10と、を備えている。
そして、第二の絶縁膜9と第二の電極10とが変位することで間隙8の距離が変化し、これにより第一の電極6及び第二の電極10間の静電容量が変化するセル2(図1)と、第一の電極6と第二の電極10との間に電圧を印加する電圧印加手段(14)と、を有して構成される。尚、図2は、図1の一つのセル2についての断面図を示している。
そして本発明の特徴的構成は第一の絶縁膜7にかかる電界強度が、第二の絶縁膜9にかかる電界強度に比して、絶縁破壊に近くなるように構成したことである。
以上が本発明の静電容量型音響波トランスデューサの基本的な構成である。
上記の特徴的構成については後述するが、まず、図2に付加的に示した部材等を含めて説明する。
図2において、4はシリコン等で構成される基板であり、基板4上に第三の絶縁膜5が配され、第三の絶縁膜5上に第一の電極6が形成されている。ここで、基板4をガラス基板などの絶縁性基板とする場合には、第三の絶縁膜5は設けなくてもよい。
第二の絶縁膜9上には第二の電極10が配されており第二の電極10上に絶縁膜で構成された封止膜11が形成されて振動膜12が構成されている。ここでは、第二の電極上に別の絶縁膜が設けられ、この別の絶縁膜も変位可能となっている。
13は振動膜12を支持する振動膜支持部であり、振動膜支持部13は、配線引き出しの為に第二の電極10を含んでいる部分と含んでいない部分が存在する。
14は、セル2の第一の電極6と第二の電極10との間に電圧を印加する電圧印加手段であり、15は、第二の電極10に送信電圧を印加する電圧印加手段である。
第一の電圧印加手段14で第一の電極6にバイアス電圧を印加することができ、第一の電極6にバイアス電圧が印加されると、第一の電極6と第二の電極10の間に電位差が生じる。この電位差により振動膜の復元力と静電引力が釣り合うところまで振動膜12は変位する。
この状態で音響波が振動膜12に到達すると、振動膜12が振動することで第一の電極6と第二の電極10の間の静電容量が変化して第二の電極10に電流が流れる。
この電流を第二の電極10から引き出された電極パッド42を介して取り出すことで、音響波を電気信号として取り出すことができる。
第一の電圧印加手段14で第一の電極6にバイアス電圧を印加した状態で、第二の電圧印加手段15から第二の電極10に送信電圧を印加すると、音響波を送信することができる。送信電圧は、所望の音響波を送信できる波形であれば単極パルスや双極パルス、バースト波や連続波など、所望の波形のものを採用できる。
図2は、上述した通り図1の一つのセル2についての断面図であるが、図1は、セル2を構成するキャビティ8(即ち、振動膜12が振動する部分)の上面の形状を円形としているが、キャビティ8は、正方形、長方形等の種々の形状を採用し得る。
図1では、セル2の第一の電極6を構成する層を共通にした複数のセルで一つの素子(エレメント)を構成し、素子を3つとした例を示している。セルを複数備えてエレメントとしている。
図1では、44個のセル2を用いて一つの素子を構成しているが、素子を構成するセルの数は、これに限られるものではなく、得ようとする音響波トランスデューサの特性を考慮して決定される。また、素子の数についても同様である。
セルの配列は図1に示したように格子状の他、千鳥配置等、種々のものを採用でき、素子3の大まかな外形についても図1に示したような長方形の他、正方形や六角形等、種々のものを採用し得る。以下、本発明の特徴的事項である第一の絶縁膜にかかる電界強度が、第二の絶縁膜にかかる電界強度に比して、絶縁破壊に近くなるように構成することに関連した説明を行う。
図2における第一の電極6へ印加する電圧が増大すると、振動膜12の復元力よりも静電引力の方が大きくなり、振動膜12がキャビティ8の下面の絶縁膜7に接触する。この電圧をプルイン電圧という。プルイン電圧に対するバイアス電圧の比が高いほど、受信した音響波を電気信号に変換する、あるいは電気信号を音響波に変換する変換効率が高い。
プルイン電圧以上の電圧を電極間に印加すると、振動膜12がキャビティの下面に接触することとなり、素子が有する周波数特性が大きく変化し、検出できる音響波の受信感度が大きく変化する。また、送信できる音響波の強度や周波数特性も大きく変化する。
大きな音響波を送信するために、第一の電極6と第二の電極10との間に大きな電圧を印加すると電極間に強い電界が生じる。
素子3の中で強い電界がかかる部分は、第一の電極6と第二の電極10に挟まれた第一の絶縁膜7と第二の絶縁膜9である。
また、振動膜12がキャビティ8の下面の絶縁膜7に接触すると、強い電界がキャビティ8内の第一の絶縁膜7と第二の絶縁膜9にもかかる。
第一の電極6と第二の電極10との間に強い電界がかかる場合に、第一の絶縁膜7と第二の絶縁膜9が絶縁破壊しないように、絶縁耐圧を向上させる必要がある。
第二の絶縁膜9は第二の電極10と封止膜11と共に振動膜12を構成するため、振動膜12の振動特性を変えずに絶縁耐圧を向上する必要がある。
ここで、振動膜12を薄く軽い構成とすると、感度が高く帯域が広がり特性が向上するため、振動膜12を構成する第二の絶縁膜9は薄く軽いことが望ましい。
そのため第二の絶縁膜よりもむしろ第一の絶縁膜7で絶縁耐圧を向上させるのが好ましくなる。
本発明では、第一の絶縁膜7の方が第二の絶縁膜9よりも絶縁破壊に近い電界強度がかかる構成とすることで、第二の絶縁膜9を薄く軽い構成とすることができる。これにより、第二の絶縁膜9を含んで構成される振動膜12の振動特性向上させることができる。
ここで、第一の絶縁膜7は、表面粗さが小さい絶縁材料が望ましい。表面粗さが大きいと、第一の電極と第二の電極間の距離が各セル間でばらついて振動膜の振動特性がばらつき、静電容量型トランスデューサの性能の低下が懸念されるためである。絶縁膜は厚くなるほど表面粗さが増すため、絶縁性を保つのに最低限必要な厚さとすることで静電容量型トランスデューサの性能の低下を抑制することができる。
第二の絶縁膜9は、低い引っ張り応力を有する膜で構成することが好ましい。例えば、600MPa以下の引っ張り応力を有する膜がよい。窒化シリコン膜は応力コントロールが可能であり、600MPa以下の低い引っ張り応力にすることができる。
第二の絶縁膜9が圧縮応力を有する場合、振動膜12がスティッキングあるいは座屈を引き起こし大きく変形することが懸念される。
また、大きな引っ張り応力の場合、振動膜12が破壊されることがある。
したがって振動膜12は低い引っ張り応力を有する膜とするのが望ましく、例えば、応力コントロールが可能で低い引っ張り応力に調整できる窒化シリコン膜が好ましい。
また、第二の絶縁膜9は、後述する静電容量型トランスデューサの製造方法の説明(図9参照)より理解されるように、間隙(キャビティ)8となる部分に形成した犠牲層35の上に成膜を行うため、犠牲層35のカバレッジを確実にできる厚さが好ましい。本発明では、例えば、第二の絶縁膜9はカバレッジに最低限必要な厚さとし、第一の絶縁膜7で絶縁耐圧を向上させる。
一般的に、一対の電極間に挟まれた絶縁膜にかかる電界強度を増していくと、絶縁膜中を流れる電流量が増加していきある電界強度で絶縁膜が破壊される。
絶縁膜の電流電圧特性は絶縁膜の種類によって異なり、絶縁膜中を電荷がトラップされて移動し、その移動量が電界強度に依存する特性をPool−Frenkel型伝導特性と呼ぶ。
また、ある電界強度までは絶縁膜中の電荷の移動が少なく穏やかで、ある電界強度からトンネル現象で電荷が移動するため急激に電流量が増加する特性をFowler−Nordheimトンネル型伝導特性と呼ぶ。
第一の絶縁膜7と第二の絶縁膜9をPool−Frenkel型伝導特性をもつ絶縁膜で構成すると、第一の電極6と第二の電極10との間にかかる電界強度に依存して電荷が移動し絶縁膜中に電荷が蓄積する。絶縁膜中に電荷が蓄積して帯電すると、駆動電圧がばらつくと共に、振動膜の振動特性がばらつくこととなり、静電容量型トランスデューサの性能低下の要因となる。
そのため、本発明では、第一の絶縁膜7をFowler−Nordheimトンネル型伝導特性をもつ絶縁膜で構成することが好ましく、これによりトンネル現象が生じる電界強度までは電荷の移動が少なく絶縁膜中に電荷が蓄積しないため、静電容量型トランスデューサの性能の低下を抑制できる。
また、この時、第一の絶縁膜7が接する第一の電極6の電位を第二の電極10よりも低くすることで、第二の絶縁膜9をPool−Frenkel型伝導特性をもつ絶縁膜とすることができる。
図3に絶縁膜の電流電圧特性の一例を示す。図中実線で示したのが窒化シリコン膜の電流電圧特性の一例であり、点線で示したのが酸化シリコン膜の電流電圧特性の一例である。
本発明では、Fowler−Nordheimトンネル型伝導の特性をもつ絶縁膜として酸化シリコン膜を採用し、Pool−Frenkel型伝導特性をもつ絶縁膜として窒化シリコン膜を採用することが好ましい。一般的に、電流密度が1.0×10−8(A/cm)より大きな値となると絶縁破壊が生じると言われている。
また、Fowler−Nordheimトンネル型伝導特性をもつ絶縁膜は、ある電界強度からトンネル現象で電荷が移動するため急激に電流量が増加するため、電流密度が急激に変化する電界強度を絶縁破壊が生じる電界強度とするのが好ましい。
例えば、図3の酸化シリコン膜の場合、電流密度が急激に変化する電界強度は5.12(MV/cm)である。
また、窒化シリコン膜が絶縁破壊を生じる電界強度は、4(MV/cm)である。
第一の電極6と第二の電極10との間に二種類の絶縁膜が存在し、第一の電極6と第二の電極10との間に電圧Vを印加するときに、第一の絶縁膜7にかかる電圧V1と第二の絶縁膜9にかかる電圧V2の関係は、以下の式(1)で示される。
V=V1+V2 式(1)
第一の絶縁膜7にかかる電圧V1は、第一の絶縁膜厚さをt1とし電界強度をE1とすると、以下の式(2)で示される。
V1=t1×E1 式(2)
第二の絶縁膜9にかかる電圧V2は、第二の絶縁膜厚さをt2とし電界強度をE2とすると、以下の式(3)で示される。
V2=t2×E2 式(3)
第一の絶縁膜の比誘電率をε1、第二の絶縁膜の比誘電率をε2とすると、比誘電率と電界強度の積は保存することから、以下の式(4)が得られる。
ε1×E1=ε2×E2 式(4)
上記の式(1)、式(2)、及び式(3)より、以下の式(5)が得られる。
V=t1×E1+t2×E2 式(5)
式(4)より以下の式(6)が得られる。
E2=ε1×E1/ε2、及びE1=ε2×E2/ε1 式(6)
そして、式(5)と式(6)より以下の式(7)が得られる。
t1=((ε1×V/E2)−(t2×ε1))/ε2 式(7)
また、第一の電極6と第二の電極10との間に電圧Vを印加する場合、第一の絶縁膜7にかかる電圧V1と第二の絶縁膜にかかる電圧V2の割合は、次のように求められる。
即ち、式(5)と、式(6)より、以下の式(6−2)及び式(6−3)が得られる。
V=E1×(t1+t2×ε1/ε2) 式(6−2)
V=E2×(t2+t1×ε2/ε1) 式(6−3)が得られる。
式(2)と式(6−2)より以下の式(8)が得られる。
V1/V=t1×ε2/(ε2×t1+t2×ε1) 式(8)
式(2)と式(6−3)より以下の式(9)が得られる。
V2/V=t2×ε1/(ε2×t1+t2×ε1) 式(9)
第一の絶縁膜が絶縁破壊を生じる電圧VV1は、以下の式(10)となる。
VV1=t1×E1/(V1/V) 式(10)
そして、第二の絶縁膜が絶縁破壊を生じる電圧VV2は、以下の式(11)となる。
VV2=t2×E2/(V2/V) 式(11)
例えば、振動膜12の振動特性を決めるために第二の絶縁膜の厚さt2を0.3μmとし、第一の電極6と第二の電極10との間に印加する電圧Vを250Vとする。
第二の絶縁膜9を窒化シリコン膜で構成すると絶縁破壊を生じる電界強度は4(MV/cm)であり、第一の絶縁膜7の絶縁破壊を生じる電界強度は酸化シリコン膜の場合5.12(MV/cm)である。また、第一の絶縁膜の比誘電率は4.4であり、第二の絶縁膜の比誘電率は6.8である。
ここで、式(7)より、第一の絶縁膜7の厚さt1は0.2942μmとなり、この厚さ以上にすれば第一の絶縁膜は絶縁破壊を生じない。
第一の絶縁膜7の厚さは、表面粗さの観点から薄い方が好ましいため0.3μmとする。
このとき、第一の絶縁膜にかかる電圧V1の割合は、式(8)より0.607、第二の絶縁膜にかかる電圧V2の割合は、式(9)より0.393となる。
第一の絶縁膜が絶縁破壊を生じる電圧VV1は、式(10)より
VV1=0.3μm×5.12(MV/cm)/0.607=253.05Vとなる。
また、第二の絶縁膜が絶縁破壊を生じる電圧VV2は、式(11)より
VV2=0.3μm×4(MV/cm)/0.393=305.34Vとなる。
このことから、印加する電圧Vが第一の絶縁膜7と第二の絶縁膜9が絶縁破壊を生ずる電圧V1、V2よりも小さいので絶縁破壊を防ぐことが可能となる。
また、第一の絶縁膜7にかかる電界強度は、
第一の絶縁膜にかかる電圧V1/第一の絶縁膜の厚さ=5.06(MV/cm)である。
また、第二の絶縁膜9にかかる電界強度は、
第二の絶縁膜にかかる電圧V2/第二の絶縁膜の厚さ=3.26(MV/cm)である。
つまり、第一の絶縁膜7にかかる電界強度が第二の絶縁膜9にかかる電界強度よりも絶縁破壊を生ずる電界強度に近くなる。
このとき、第一の絶縁膜7が絶縁破壊を生じる電界強度を第二の絶縁膜9が絶縁破壊を生じる電界強度で割った値は、1.28となる。
また、第二の絶縁膜9の比誘電率を第一の絶縁膜7の比誘電率で割った値は1.55となる。
第一の絶縁膜7と第二の絶縁膜9をここで示した構成にすることで振動膜の振動特性を変化させずに絶縁耐圧を向上させるができる。
ここで、本発明における絶縁破壊を生じさせる電界強度に近くなることの意味あいを説明する。
式(6−2)、及び式(6−3)より、電界強度E1及びE2について、以下の式(12)、及び式(13)が得られる。
E1=V/(t1+t2×ε1/ε2) 式(12)
E2=V/(t2+t1×ε2/ε1) 式(13)
第一の絶縁膜が絶縁破壊を生ずる電界強度をEX1、第二の絶縁膜が絶縁破壊を生ずる電界強度をEX2として、以下の式(14)を満足する構成とすることが本発明では好ましい。
E1/EX1>E2/EX2 式(14)
図3で一例として示した絶縁膜の電流電圧特性は、成膜条件や材料の違いによって特性がばらつくことがある。
図4、図5に異なる時期に成膜した絶縁膜の電流電圧特性を示す。
図4は酸化シリコン膜の電流電圧特性を示し、図5は窒化シリコン膜の電流電圧特性を示す。
図4は、三回異なる時期に酸化シリコン膜を成膜して電流電圧特性を測定した結果である。電流密度が急激に変化する電界強度は、一回目の成膜では4.8(MV/cm)であり、二回目の成膜では5.12(MV/cm)、三回目の成膜では6.0(MV/cm)である。
図5は三回異なる時期に窒化シリコン膜を成膜して電流電圧特性を測定した結果である。電流密度が1.0×10−8(A/cm)より大きな値となる電界強度は、一回目の成膜では3.0(MV/cm)であり、二回目の成膜では4.0(MV/cm)であり、三回目の成膜では4.2(MV/cm)である。
絶縁破壊が生じる電界強度の値は、静電容量型トランスデューサを作製する時に絶縁膜を成膜する条件で事前に絶縁膜の成膜を行い、成膜した絶縁膜の電流電圧特性を測定して決定するのが好ましい。
成膜によるばらつきを考慮すると、第一の絶縁膜7が絶縁破壊を生じる電界強度を第二の絶縁膜9が絶縁破壊を生じる電界強度で割った値の最小値は1.14である。
絶縁膜の比誘電率と電界強度の関係はε2/ε1=E1/E2であることから、第二の絶縁膜9の比誘電率を第一の絶縁膜7の比誘電率で割った値が1.14より大きくなる絶縁膜を用いるのが好ましい。
このような絶縁膜を用いると第一の絶縁膜7にかかる電界強度が第二の絶縁膜9にかかる電界強度よりも絶縁破壊の電界強度に近い構成となる。
このように、振動膜12の振動特性を決めるために第二の絶縁膜9の厚さt2を決め、第一の電極6と第二の電極10との間に印加する最大の電圧Vを決め、第一の絶縁膜7の厚さt2を決める事で振動膜の振動特性を変化させずに絶縁耐圧を向上させることができる。
図6に本発明の静電容量型音響波トランスデューサを適用した被検体情報取得装置の一例を示す。
被検体情報取得43は、システム制御部16、バイアス電圧制御部17、送信電圧制御部18、送受信回路(回路部)19、音響波プローブ20、画像処理部21、表示部22を有して構成される。
音響波プローブ20は、被検体へ音響波を送信し、被検体から反射した音響波を受信する本発明の静電容量型トランスデューサ1からなる送受信プローブである。
送受信回路(回路部)19は、外部から供給されたバイアス電圧や駆動電圧を音響波プローブ20に供給したり、音響波プローブ20が受信した音響波を処理して画像処理部21へ出力する回路である。
バイアス電圧制御部17は、音響波プローブ20へバイアス電圧を供給する為に送受信回路19へバイアス電圧を供給している。バイアス電圧制御部17は、図示しない電源とスイッチから構成され、システム制御部16から指示されたタイミングで、バイアス電圧を送受信回路19へ供給する。
送信電圧制御部18は、音響波プローブ20へ送信電圧を供給する為に送受信回路(回路部)19へ送信電圧を供給する。システム制御部16から指示されたタイミングで、所望の周波数特性と送信音圧の強度が得られる波形を、送受信回路(回路部)19へ供給する。
画像処理部21は、送受信回路19から出力された信号を用いて画像変換(例えばBモード画像、Mモード画像など)を行い、表示部22へ出力する。
表示部22は、画像処理部21から出力される画像信号を表示する表示装置である。画像表示部22は、被検体情報取得43とは別体の構成にすることもできる。
システム制御部16は、バイアス電圧制御部17、送信電圧18、画像処理部21などを制御する回路である。
図7に送受信回路の一例を示す。送受信回路26は、送信部23と受信プリアンプ24とスイッチ25から構成される。
送信駆動の際には、図6のシステム制御部16から指示された送信のバイアス電圧に従い、バイアス電圧制御部17から印加されたバイアス電圧を音響波プローブ20に印加する。
同様にシステム制御部16から指示された送信電圧に従い、送信電圧制御部18から印加された電圧を送信部23を介して音響波プローブ20に印加する。
送信電圧が印加されると、スイッチ25は開いた状態となり、受信プリアンプ24には信号が流れないようになる。送信電圧が印加されない状態では、スイッチ25は閉じた状態であり、受信の状態となる。
スイッチ25は、図示しないダイオードなどで構成されており、受信プリアンプ24が破壊されないようにする保護回路の役目を果たす。
音響波プローブ20から音響波が送信され、被検体で反射された音響波が音響波プローブ20に戻ってくると、音響波プローブ20は音響波を受信する。
受信の際には、図6のシステム制御部16から指示された受信のバイアス電圧に従い、バイアス電圧制御部17から印加されたバイアス電圧を音響波プローブ20に印加する。スイッチ25は閉じた状態であるため、受信信号は受信プリアンプ24で増幅され、画像処理部21に送られる。
図8に音響波プローブの一例を示す。
図8は音響波プローブの斜視図である。音響波プローブ27は、静電容量型音響波トランスデューサ1と音響マッチング層28と音響レンズ29と回路基板30から構成される。
図8の静電容量型音響波トランスデューサ1は、図1の静電容量型音響波トランスデューサ1と同様な構成であり、図8に示すように素子3が1次元アレイのようにX方向に多数個並んでいる。
図8では1次元アレイだが、素子3を2次元アレイにしてもよいし、コンベックス型など他の形状としてもよい。
静電容量型音響波トランスデューサ1は、回路基板30に実装され、電気的に接続される。回路基板30は、図6に示した送受信回路19と一体となった基板でも良いし、回路基板30を介して図6のような送受信回路19と接続させてもよい。
静電容量型音響波トランスデューサ1が音響波を送信する表面側には、被検体と音響インピーダンスの整合を取る為に、音響マッチング層28を設けている。
音響マッチング層28は、被検体への漏電を防止する為の保護膜として設けてもよい。
音響マッチング層28を介して音響レンズ29が配置されている。音響レンズ29は被検体と音響マッチング層28との間で、音響インピーダンスの整合が取れる物を用いるのが好ましい。
図8のようなY方向に曲率を持つ音響レンズ29を設けると、Y方向に広がる音響波を音響レンズの焦点位置で絞る事ができる。X方向に広がる音響波はそのままでは絞る事が出来ない為、素子3毎に音響波を送信するタイミングをずらしてビームフォーミングで送信駆動する事で、焦点位置で音響波を絞ることができる。
音響レンズ29の形状は、所望の音響波の分布特性が得られる形状にするのが好ましい。また、用いる被検体の種類に応じて、音響マッチング層28や音響レンズ29の種類や形状を選択すれば良いし、設けなくてもよい。音響波プローブ27へのバイアス電圧や送信電圧の供給や、被検体から反射した音響波を受信した受信信号は、図示しないケーブルを介して送受信回路18または画像処理部21へ伝送される。次に図9、図10を参照して本発明の静電容量型トランスデューサの製造方法の一例について説明する。
図9は、図1のA−B断面図である。
図9(a)に示すように、基板31上に第三の絶縁膜32を形成する。基板31はシリコン基板であり、第三の絶縁膜32は第一の電極との絶縁を形成するためである。基板31がガラス基板のような絶縁性基板の場合、第三の絶縁膜32は形成しなくともよい。また、基板31は、表面粗さの小さな基板が望ましい。表面粗さが大きい場合、本工程の後工程での成膜工程でも、表面粗さが転写されていくとともに、表面粗さによる第一の電極と第二の電極間の距離が、各セル間でばらついてしまう。このばらつきは、変換効率のばらつきとなるため、感度、帯域ばらつきとなる。従って、基板31は、表面粗さの小さな基板が望ましい。
次に、第一の電極33を形成する。第一の電極33は、表面粗さが小さい導電材料が望ましく、例えば、チタン、タングステン、アルミ等を採用できる。基板と同様に、第一の電極の表面粗さが大きい場合、表面粗さによる第一の電極と第二の電極間の距離が、各セル間、各素子間でばらついてしまうため、表面粗さが小さい導電材料が望ましい。
次に、第一の絶縁膜34を形成する。第一の絶縁膜34は、表面粗さが小さい絶縁材料が望ましく、第一の電極と第二の電極との間に電圧が印加された場合の第一の電極と第二の電極間の電気的短絡あるいは絶縁破壊を防止するために形成する。また、本工程の後工程で実施する犠牲層除去時に第一の電極がエッチングされることを防止するために形成する。基板と同様に、第一の絶縁膜34の表面粗さが大きい場合、表面粗さによる第一の電極と第二の電極間の距離が、各セル間でばらついてしまうため、表面粗さが小さい絶縁膜が望ましい。例えば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜等であるが、本発明では前述したように酸化シリコン膜が特に好ましい。また絶縁膜は、厚くなるほど表面粗さが増すため、絶縁性を保つのに最低限必要な厚さとする。
第一の絶縁膜として酸化シリコン膜を用いる場合、その膜厚は10nm〜1000nmの範囲、より好ましくは50nm〜500nmの範囲とするのが好適である。
次に、図9(b)に示すように、犠牲層35を形成する。後に間隙(キャビティ)となる犠牲層35の厚さを間隙Gとして43で示している。犠牲層35は表面粗さが小さい材料が望ましい。基板と同様に、犠牲層の表面粗さが大きい場合、表面粗さによる第一の電極と第二の電極間の距離が各セル間でばらついてしまうため、表面粗さが小さい犠牲層が望ましい。
また、犠牲層を除去するエッチングのエッチング時間を短くするために、エッチング速度の速い材料が望ましい。また、犠牲層を除去するエッチング液あるいはエッチングガスに対して、絶縁膜、振動膜がほぼエッチングされないような犠牲層材料が求められる。
犠牲層を除去するエッチング液あるいはエッチングガスに対して、絶縁膜、振動膜がエッチングされる場合、振動膜の厚さばらつき、第一の電極と第二の電極との間の距離ばらつきが発生する。振動膜の厚さばらつき、第一の電極と第二の電極との間の距離ばらつきは、各セル間の感度、帯域ばらつきとなる。
絶縁膜、振動膜を窒化シリコン膜、あるいは酸化シリコン膜で構成する場合、表面粗さが小さく、絶縁膜、振動膜がエッチングされにくいエッチング液あるいはエッチングガスを用いることができる犠牲層材料が望ましい。
例えば、アモルファスシリコン、ポリイミド、クロム等である。特に、クロムのエッチング液は、窒化シリコン膜、あるいは酸化シリコン膜をほとんどエッチングしないので、絶縁膜、振動膜が窒化シリコン膜、あるいは酸化シリコン膜を採用した場合、好適である。
次に、図9(c)に示すように、第二の絶縁膜36を形成する。第二の絶縁膜36は、低い引張り応力を有する膜で構成することが望ましい。例えば、500MPa以下の引張り応力がよい。窒化シリコン膜は応力コントロールが可能であり、500MPa以下の低い引張り応力に調整することができる。
振動膜が圧縮応力を有する場合、振動膜がスティッキングあるいは座屈を引き起こし、大きく変形する。また、大きな引張り応力の場合、第二の絶縁膜36が破壊されることがある。
従って、第二の絶縁膜36は、低い引張り応力を有する膜が望ましい。例えば、応力コントロールが可能で、低い引張り応力にできる窒化シリコン膜である。また、第二の絶縁膜36の厚さは、犠牲層35の上に成膜を行うため、犠牲層35のカバレッジを確実にできる厚さとすることが好ましい。
第二の絶縁膜として窒化シリコン膜を用いる場合、その膜厚は10nm〜1000nmの範囲、より好ましくは50nm〜900nmの範囲とするのが好適である。
ここで、図11に図9(b)に示した間隙G43と間隙G43のカバレッジを確実に行うために必要な第二の絶縁膜36の厚さの関係の一例を示す。図11の横軸は間隙Gであり、縦軸は第二の絶縁膜36の厚さである。
間隙G43となる犠牲層35の厚さに対して、第二の絶縁膜36の厚さを変えて成膜を行った。成膜したサンプルを犠牲層35のエッチング液に浸漬し、犠牲層35のダメージを顕微鏡で観察することで、間隙G43のカバレッジを確実に行うために必要な第二の絶縁膜36の厚さを求めた。
間隙Gを確実にカバレッジする為に必要な前記第二の絶縁膜の厚さは、間隙をGとして、0.32×G1.24以上の厚さである。
第二の絶縁膜36の厚さを間隙Gに対して、0.32×G1.24以上の厚さとすることで信頼性の高い静電容量型トランスデューサを作製するができる。
次に、図9(d)に示すように、第二の電極37を形成する。第二の電極37は、残留応力が小さい材料が望ましい。また、犠牲層除去工程あるいは封止工程を第二の電極形成後に行う場合、第二の電極37は、犠牲層エッチングに対するエッチング耐性、耐熱性を有する材料が望ましい。これらを考慮すると、例えば、アルミニウム、アルミシリコン合金、チタン等を採用し得る。
次に、図9(e)に示すように、第二の絶縁膜36にエッチングホール38を形成する。
エッチングホール38は、犠牲層35をエッチングして除去するためにエッチング液あるいはエッチングガスを導入するための孔である。
その後、犠牲層35を除去してキャビティ39を形成する。犠牲層除去方法は、ウェットエッチングやドライエッチングなどが採用でき、犠牲層材料としてクロムを用いた場合は、ウェットエッチングが好ましい。
犠牲層材料としてクロムを用いた場合、犠牲層エッチングの際に第二の電極37がエッチングされないようにするために、第二の電極37をチタンで構成するのが好ましい。
第二の電極37をアルミシリコン合金などで構成する場合には、第二の電極37を形成した後に第二の電極37上に第二の絶縁膜36と同じ材料で絶縁膜を形成し、その後エッチングホール38を形成して犠牲層除去を行うのが好ましい。
次に、図10(f)に示すように、エッチングホール38を封止するために、封止膜40を形成する。第二の絶縁膜36と第二の電極37と封止膜40で振動膜41が構成される。封止膜40は、キャビティ39に液体や外気が浸入しないことが求められる。
キャビティ39が大気圧であると、温度変化によってキャビティ39内の気体が膨張したり収縮したりする。また、キャビティ39には高い電界がかかる為、分子の電離などによる素子の信頼性低下の要因となる。
そのため、封止は減圧した環境で行われることが求められる。キャビティ39内部を減圧する事でキャビティ39内部の空気抵抗を小さくすることができる。これにより振動膜41が振動しやすくなり、静電容量型トランスデューサの感度を高くすることができる。
また、封止することで静電容量型トランスデューサを液体中での使用が可能となる。封止材料は、第二の絶縁膜36と同じ材料で構成することが、密着性が高くなるため好ましい。例えば、第二の絶縁膜36と封止膜40とを窒化シリコンで構成することができる。
図10では、第二の電極37が第二の絶縁膜36と封止膜40で挟まれた構成を一例として示したが、第二の絶縁膜36を形成した後にエッチングホール38を形成して犠牲層エッチングを行い、その後封止膜40を形成した後に第二の電極を設けることもできる。
しかし第二の電極37が最表面に露出していると、異物などにより素子がショートする可能性が高くなるため、第二の電極37は絶縁膜に設けることが好ましい。
以上の工程を経て図10(g)となり、図1、図2に示した静電容量型音響波トランスデューサを作製することができる。
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明する。
本実施例について、図12と図13を参照して説明する。
図12は、本例の静電容量型音響波トランスデューサの上面図であり、図13は、図112の拡大模式図である。
図12に示した静電容量型トランスデューサ1の外形寸法は、Y方向が7.5mm、X方向が44mmである。
素子3の外形は、X方向が0.2mm、Y方向が4mmであり、196個1次元アレイ状に配置している。図12の一部を拡大した模式図が図13であり、図13のA−B断面図が図10(f)に対応している。
素子3を構成するセル2は、円形の形状であり、キャビティ(図10(f)における39)の直径は27μmとした。
セル2は、図13に示すように最密に配置されており、1つの素子3を構成するセル2は、隣接したセルと30μmの間隔で配置されている。つまり隣接しているセル2同士のキャビティの最短距離は3μmである。
図13ではセル数は省略しているが、実際には1つの素子3には702個のセルを配置させている。
セル2は、300μm厚さのシリコン基板(図10(f)における31、以下同様)、シリコン基板31上に形成される第三の絶縁膜32、第三の絶縁膜32上に形成される第一の電極33、第一の電極33上の第一の絶縁膜34を有している。
さらに、第二の電極37と第二の絶縁膜36と封止膜40を含む振動膜41と、振動膜41を支持する振動膜支持部13、キャビティ39とを有して構成している。キャビティ39の厚みは250nmとした。
第三の絶縁膜32は、熱酸化により形成した厚さ1μmの酸化シリコン膜とした。
第一の絶縁膜34は、Prasma Enhanced Chemical Vapor Deposition(PE−CVD)を用いて形成した225nm厚の酸化シリコン膜とした。
第一の電極33は厚さが50nmのチタンで構成し、第二の電極37は厚さが100nmのチタンで構成した。
第二の絶縁膜36と封止膜40はPE−CVD法により作製した窒化シリコン膜であり、450MPa以下の引張り応力で形成している。第二の絶縁膜36の厚みは400nmであり、封止膜40の厚さは750nmである。
得られた静電容量型音響波トランスデューサには、第一の電極と第二の電極との間にバイアス電圧を印加する電圧印加手段と、第二の電極に送信電圧を印加する電圧印加手段を設けている。
この素子3を構成する第一の絶縁膜34と第二の絶縁膜36の電圧電流特性を測定した結果、図3に示したものと同様であった。
第一の絶縁膜34と第二の絶縁膜36の誘電率を測定したところ、第一の絶縁膜の誘電率は4.45であり、第二の絶縁膜36の誘電率は6.8であった。第二の絶縁膜9の比誘電率を第一の絶縁膜7の比誘電率で割った値は1.528であった。
第一の絶縁膜34にかかる電圧の割合は、式(8)よりV1/V=0.462、第二の絶縁膜36にかかる電圧の割合は、式(9)よりV2/V=0.538となる。
また、第一の絶縁膜34の絶縁破壊を生じる電圧は、式(10)よりVV1=249.35Vであり、第二の絶縁膜36の絶縁破壊を生じる電圧は、式(11)よりVV2=297.4Vであるため、素子3の絶縁耐圧は249.35Vであった。
また、この素子3のプルイン電圧と大気中の共振周波数を測定したところ、プルイン電圧は298Vであり、共振周波数は23.1MHzであった。
素子3の絶縁耐圧は249Vであり、プルイン電圧が298Vであることから、プルイン電圧の83.6%の電圧を印加できる素子を作製することができた。
また、この素子に200Vの電圧を印加したときに第一の絶縁膜34にかかる電界強度は4.11(MV/cm)であり、第二の絶縁膜36にかかる電界強度は2.69(MV/cm)である。
このとき第一の絶縁膜34の電界強度は、第一の絶縁膜34の絶縁破壊を生じる電界強度6(MV/cm)の80.3%となる。また第二の絶縁膜36の電界強度は、第二の絶縁膜36の絶縁破壊を生じる電界強度4(MV/cm)の67.3%である。
本例では、プルイン電圧に対して比較的大きな83.6%の電圧を印加できることから、受信した音響波を電気信号に変換する変換効率、及び電気信号を音響波に変換する変換効率が比較的高いトランスデューサを構成できる。
本発明によると絶縁耐圧を保ちつつ、第一の電極と第二の電極の間に高い電圧を印加して振動膜の振幅を大きくし、大きな音響波を送信が可能となると共に受信が可能となる。
[比較例1]
実施例1に示した静電容量型音響波トランスデューサについて、第一の絶縁膜(酸化シリコン膜)の膜厚を50nmとした以外、実施例1と同様にして、トランスデューサを作成した。
本比較例の素子を構成する第一の絶縁膜と第二の絶縁膜の電圧電流特性を測定した結果、図3に示したものと同様であった。
第一の絶縁膜34と第二の絶縁膜36の誘電率を測定したところ、第一の絶縁膜の誘電率は4.45であり、第二の絶縁膜36の誘電率は6.8であった。
第一の絶縁膜34にかかる電圧の割合は、式(8)よりV1/V=0.160、第二の絶縁膜36にかかる電圧の割合は、式(9)よりV2/V=0.84となる。
また、第一の絶縁膜34の絶縁破壊が生ずる電圧は、式(10)よりVV1=160Vと算出され、第二の絶縁膜36の絶縁破壊を生ずる電圧は、式(11)よりVV2=190.5Vとなるため、素子3の絶縁耐圧は160Vであった。
また、この素子3のプルイン電圧と大気中の共振周波数を測定したところ、プルイン電圧は249Vであり、共振周波数は23.1MHzであった。
本比較例では、プルイン電圧が249Vであるのに対し、素子の絶縁耐圧が160Vであることから、素子にはプルイン電圧の64.25%までしか電圧を印加することができない。
よって、実施例1よりも変換効率(受信した音響波を電気信号に変換する変換効、電気信号を音響波に変換する変換効率)で劣ることとなる。
1 静電容量型音響波トランスデューサ
2 セル
6 第一の電極
7 第一の絶縁膜
8 間隙
9 第二の絶縁膜
10 第二の電極
15 電圧印加手段

Claims (11)

  1. 間隙を挟んで配された第一の絶縁膜及び第二の絶縁膜と、前記間隙を挟んだ前記第一及び第二の絶縁膜の外側にそれぞれ配された第一の電極及び第二の電極と、を備え、前記第二の絶縁膜と前記第二の電極とが変位することで前記間隙の距離が変化し、これにより前記第一及び第二の電極間の静電容量が変化するセルと、前記第一の電極と前記第二の電極との間に電圧を印加する電圧印加手段と、を有する静電容量型の音響波トランスデューサであって、前記第一の絶縁膜にかかる電界強度が、前記第二の絶縁膜にかかる電界強度に比して、絶縁破壊を生じる電界強度に近くなるように構成したことを特徴とする静電容量型音響波トランスデューサ。
  2. 前記第二の電極上に別の絶縁膜を備え、前記第二の絶縁膜、前記第二の電極、及び前記別の絶縁膜が変位可能であることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型音響波トランスデューサ。
  3. 前記第一の絶縁膜がFowler−Nordheimトンネル型伝導特性を有する絶縁膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量型音響波トランスデューサ。
  4. 前記第二の絶縁膜がPool−Frenkel型伝導特性を有する絶縁膜であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の静電容量型音響波トランスデューサ。
  5. 前記第一の絶縁膜が酸化シリコンであり、前記第二の絶縁膜が窒化シリコンであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の静電容量型音響波トランスデューサ。
  6. 前記第二の絶縁膜の厚さが、前記間隙の距離をGとして、0.32×G1.24以上を満足することを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の静電容量型音響波トランスデューサ。
  7. 前記セルを複数備え、前記第一の電極を共通に接続した素子を構成していることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型音響波トランスデューサ。
  8. 前記素子を複数備えていることを特徴とする請求項7に記載の静電容量型音響波トランスデューサ。
  9. 前記第一及び第二の絶縁膜のそれぞれにかかる電界強度E1及びE2は、前記第一の電極と前記第二の電極との間に印加される電圧をV、第一の絶縁膜の厚さをt1、第二の絶縁膜の厚さをt2、第一の絶縁膜の比誘電率をε1、第二の絶縁膜の比誘電率をε2として、以下の式(12)及び式(13)で表わされ、
    E1=V/(t1+t2×ε1/ε2) 式(12)
    E2=V/(t2+t1×ε2/ε1) 式(13)
    且つ、第一の絶縁膜が絶縁破壊を生ずる電界強度をEX1、第二の絶縁膜が絶縁破壊を生ずる電界強度をEX2として、以下の式(14)を、
    E1/EX1>E2/EX2 式(14)
    満足することを特徴とする請求項1に記載の静電容量型音響波トランスデューサ。
  10. 間隙を挟んで配された第一の絶縁膜及び第二の絶縁膜と、前記間隙を挟んだ前記第一及び第二の絶縁膜の外側にそれぞれ配された第一の電極及び第二の電極と、を備え、前記第二の絶縁膜と前記第二の電極とが変位することで前記間隙の距離が変化し、これにより前記第一及び第二の電極間の静電容量が変化するセルと、前記第一の電極と前記第二の電極との間に電圧を印加する電圧印加手段と、を有する静電容量型の音響波トランスデューサであって、前記第二の絶縁膜の比誘電率を前記第一の絶縁膜の比誘電率で除した値が、1.14より大きいことを特徴とする静電容量型トランスデューサ。
  11. 前記請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の静電容量型音響波トランスデューサを音響波プローブとして備えると共に、画像処理部と、前記音響波プローブと前記画像処理部との間の信号を送受信する回路部と、前記画像処理部と前記回路部とを制御する制御部と、を有することを特徴とする被検体情報取得装置。
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