JP2019079694A - サージ防護素子及びその製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、イオン源材料を突出電極部の対向面に形成した多数の穴部に付着させているが、穴部間に凸部となる薄い壁が対向面全体に多数存在することによって放電位置がばらつき、放電開始電圧が不安定になると共に、薄い壁がサージ印加時に発生するアーク熱により溶融飛散し易いという不都合があった。このため、飛散物の影響で絶縁不良や放電開始電圧の低下を誘発してしまう問題があった。
また、例えば突出電極部の対向面の中央に1つの穴部を形成し、この穴部内にイオン源材料を付着させると、穴部の外側でアーク放電が発生し、やはり放電位置がばらついて放電開始電圧が不安定になってしまう。なお、イオン源材料は、放電の発生を促進する効果を有するが、イオン源材料を付着させた部分自体は電極表面がイオン源材料で覆われているため、アーク放電が発生し難い。
さらに、イオン源材料は、結晶化及び電極への付着力向上の目的で熱処理を施す必要があり、熱処理時にイオン源材料の塊が大きいほど、熱処理時に熱分解による脱水反応により蒸気等のガスが発生し、イオン源材料の膨れが生じる。この膨れの影響により、イオン源材料の密度が低下し、結晶化度が低下してしまう問題があった。このように結晶化度が低い場合、繰り返しサージによるイオン源材料の脱落や飛散、及びアーク放電に対する耐性を低下させる原因になっていた。また、熱処理時の温度を高く設定するほど結晶化度は向上するが、一度膨れてしまうと、密度が低下してイオン源材料の結晶化を阻害してしまう不都合があった。
また、環状溝が、溝幅が他の部分よりも広い幅広部を互いに間隔を空けて周方向に複数有しているので、放電活性層を環状溝内に塗布して形成する際に、幅広部内に安定して放電活性層を形成することができ、表面張力によって放電活性層が一カ所に凝集して分布が偏ることを防止できる。
さらに、環状溝内で放電活性層が充填されていない空間に蒸気や不純物成分が抜けて放電活性層の膨れを抑制することができる。すなわち、環状溝内に部分的に付着させたイオン源材料を熱処理して放電活性層を形成する際に、イオン源材料が環状溝内で周方向に分散して配置されることで、発生する蒸気等が環状溝内でイオン源材料が付着していない部分を介して外部に抜けるため、膨れの発生が抑制され、放電活性層の結晶化度が向上する。
すなわち、このサージ防護素子では、放電活性層が形成される複数の幅広部が、周方向に等間隔に配置されているので、周方向にバランス良く放電活性層が分布することで、周方向におけるアーク放電の発生の偏りを抑制することができる。
すなわち、このサージ防護素子では、環状溝の内周縁形状が円形であると共に、環状溝の外周縁形状が多角形であるので、環状溝の外周縁において角部の内側部分が幅広部となる。
すなわち、このサージ防護素子の製造方法では、イオン源材料を複数の幅広部内に付着させる工程と、イオン源材料を熱処理して放電活性層を形成する工程とを有しているので、イオン源材料が表面張力で環状溝内の一カ所に凝集し集中してしまうことを抑制することができ、所定位置の各幅広部内に留めて周方向に分離した複数の放電活性層を得ることができる。
また、イオン源材料が環状溝内で周方向に分散して配置されることで、発生する蒸気等が環状溝内でイオン源材料が付着していない部分を介して外部に抜けるため、膨れの発生が抑制され、放電活性層の結晶化度が向上する。
すなわち、本発明に係るサージ防護素子及びその製造方法によれば、封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料で形成された放電活性層が、環状溝内に設けられているので、環状溝の内側(対向面の中央部)にアーク放電を集めることができ、放電特性のばらつきが抑制される。
さらに、環状溝が、溝幅が他の部分よりも広い幅広部を互いに間隔を空けて周方向に複数有しているので、放電活性層を環状溝内に塗布して形成する際に、幅広部内に安定して放電活性層を形成することができ、表面張力によって放電活性層が一カ所に凝集して分布が偏ることを防止できる。
したがって、本発明に係るサージ防護素子では、アーク放電に対する耐性が向上し、サージ耐量特性が向上すると共に安定した放電が可能になる。その結果、放電開始電圧の変動幅を小さくできると共に、電極損傷が低減でき、素子の高寿命化(作動可能なサージ印加数の増大)に寄与することができる。
特に、本発明に係るサージ防護素子は、大電流サージ耐性が要求されるインフラ用(鉄道関連、再生エネルギー関連(太陽電池、風力発電等))の電源及び通信設備に好適である。また、サージ耐量が向上しているため、素子の小型化も可能になり、小型電子機器及び実装基板への応用も可能になる。
なお、本実施形態のサージ防護素子1は、絶縁性管2の内周面にイオン源材料で形成された放電補助部4を備えている。
一対の突出電極部5の対向面には、その中央部5aを囲んだ環状溝6が形成されている。
なお、複数の幅広部6aは、周方向に等間隔に配置されることが好ましい。
各幅広部6aは、半径方向内方と外方との両方に広がって幅広となっており、円弧状の内周縁及び外周縁の間に形成されている。環状溝6は、周方向において幅広部6aと溝幅の狭い部分とが交互に配されて構成されている。
上記幅広部6a内には、封止電極3の材料よりも電子放出特性の高い材料で形成された放電活性層7が設けられている。すなわち、隣接する幅広部6aと幅広部6aとの間にある溝幅の狭い部分には、放電活性層7が設けられていない部分が存在する。
なお、本実施形態では、放電補助部4は、絶縁性管2の内周面に軸線Cに沿って直線状に形成されている。
また、図1では、放電補助部4を軸線Cに沿った1本のみ図示しているが、周方向に互いに間隔を空けて複数本形成しても構わない。
封止電極3は、絶縁性管2の両端開口部に導電性融着材(図示略)により加熱処理によって密着状態に固定されている円板状のフランジ部8を有している。このフランジ部8の内側に、内方に突出していると共に絶縁性管2の内径よりも外径の小さな円柱状の突出電極部5が一体に設けられている。
上記導電性融着材は、例えばAgを含むろう材としてAg−Cuろう材で形成されている。
上記絶縁性管2内に封入される放電制御ガスは、不活性ガス等であって、例えばHe,Ar,Ne,Xe,Kr,SF6,CO2,C3F8,C2F6,CF4,H2,大気等及びこれらの混合ガスが採用される。
上記放電活性層形成工程では、封止電極3の材料よりも電子放出特性の高い材料を含むイオン源材料を複数の幅広部6a内に付着させる工程と、イオン源材料を熱処理して放電活性層7を形成する工程とを有している。
上記放電活性層形成工程では、上述したように、例えばケイ酸ナトリウム溶液に炭酸セシウム粉末を加えて前駆体を作製し、この前駆体を環状溝6の各幅広部6a内に塗布して付着させた後、前駆体に対してケイ酸ナトリウムが軟化する温度以上かつ炭酸セシウムが融解及び分解する温度以上の温度で熱処理を行うことで作製される。
さらに、放電活性層7が形成される複数の幅広部6aが、周方向に等間隔に配置されることで、周方向にバランス良く放電活性層7が分布し、周方向におけるアーク放電の発生の偏りを抑制することができる。
また、イオン源材料が環状溝6内で周方向に分散して配置されることで、発生する蒸気等が環状溝6内でイオン源材料が付着していない部分を介して外部に抜けるため、膨れの発生が抑制され、放電活性層7の結晶化度が向上する。
なお、環状溝26の内周縁26bが円形状とされているので、環状溝26の内側の中央部25aも円形状となっている。
このように第2実施形態のサージ防護素子21では、環状溝26の内周縁26b形状が円形であると共に、環状溝26の外周縁26c形状が多角形であるので、環状溝26の外周縁26cにおいて角部の内側部分が幅広部26aとなり、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
Claims (4)
- 絶縁性管と、
前記絶縁性管の両端開口部を閉塞して内部に放電制御ガスを封止する一対の封止電極とを備え、
一対の前記封止電極が、内方に突出し互いに対向した一対の突出電極部を有し、
一対の前記突出電極部の対向面に、その中央部を囲んだ環状溝が形成され、
前記環状溝が、溝幅が他の部分よりも広い幅広部を互いに間隔を空けて周方向に複数有し、
前記幅広部内に、前記封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料で形成された放電活性層が設けられていることを特徴とするサージ防護素子。 - 請求項1に記載のサージ防護素子において、
複数の前記幅広部が、周方向に等間隔に配置されていることを特徴とするサージ防護素子。 - 請求項1又は2に記載のサージ防護素子において、
前記環状溝の内周縁形状が円形であると共に、前記環状溝の外周縁形状が多角形であることを特徴とするサージ防護素子。 - 請求項1から3のいずれか一項に記載のサージ防護素子を製造する方法であって、
前記突出電極部の対向面に複数の前記幅広部を有する前記環状溝を形成する溝形成工程と、
前記環状溝内に前記放電活性層を形成する放電活性層形成工程とを有し、
前記放電活性層形成工程で、前記封止電極の材料よりも電子放出特性の高い材料を含むイオン源材料を複数の前記幅広部内に付着させる工程と、
前記イオン源材料を熱処理して前記放電活性層を形成する工程とを有していることを特徴とするサージ防護素子の製造方法。
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