JP2019073416A - 自己修復構造物およびその製造方法 - Google Patents

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義正 桑野
茂年 則竹
Shigetoshi Noritake
茂年 則竹
柴田 伝幸
Tsuguyuki Shibata
伝幸 柴田
文子 久保田
Fumiko Kubota
文子 久保田
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Abstract

【課題】ひび割れに対する自己修復機能を的確に発揮させて、保全管理の負担を軽減しつつ、長寿命化を図れる構造物を提供する。【解決手段】本発明は、基材と、基材中に分散した補修体とを備える自己修復構造物である。補修体は、補修剤と補修剤を内包する長粒状のカプセルとからなると共に、長手方向が基材のひび割れ方向に交差する向きに配向している。自己修復構造物は、例えば、補修体を分散させた流動性原料を成形型に流し込む注入工程と、流動性原料を固化させる固化工程とを経て得られる。自己修復構造物は、例えば、工場での生産後に搬入された現場で配設施工されて道路となる道路ユニットを構成する表層モジュールまたは路盤モジュールであると好適である。【選択図】図2

Description

本発明は、ひび割れに対する自己修復機能を有することにより、長寿命化や保全管理の負担軽減等を図れる構造物等に関する。
道路や大型ビル等は、人や企業等の活動に欠かせない重要な構造物である。このような構造物は、通常、コンクリート等を使用して堅牢に造られている。しかし、そのような構造物でも、経時的な劣化や損傷は避けられず、特に、使用年数の増加と共に表層部や内部等にひび割れ(クラック)が生じることが多い。このようなひび割れ等は、外観の悪化等のみならず、強度低下、発錆、漏水等の要因となり、構造物の寿命低下を招き得る。
このため、構造物のひび割れは適時に補修されることが好ましい。しかし、現実には、そのような適時の補修は困難であり、点検時に目視された表層部のひび割れが補修される程度であることが多い。また、構造物が大型になるほど、補修に係る作業負担や費用負担が大きく、工期も長くなる。しかも、構造物の内部に生じる隠れたひび割れは、実質的に修復できない。そこで、構造物に生じるひび割れが適時に修復されるように、構造物やその構成材料に、ひび割れに対する自己修復(治癒)機能をもたせる提案が下記の特許文献でなされている。
特開2003−26460号公報 特開2005−239482号公報 特開2015−110325号公報
特許文献1は、隙間充填用材料を割裂性材料で被包した粒状体を水和硬化体(コンクリート)中に混在させることを提案している。しかし、その粒状体は、平均粒径が0.1〜5mmの略球状粒子からなるため、15質量%もの添加を必要としている。これでは、コンクリート量が実質的に減少して、構造物の強度低下を招くことになる。
特許文献2は、コンクリート中に膨張材および無機質セメント結晶増殖材を混在させることを提案している。しかし、それらの膨張および析出物生成は水和反応により生じるため、十分な水分がない状況では自己修復がなされない。
特許文献3は、結合材(セメント)の一部を未反応状態で残存させた水硬性組成物を提案している。しかし、この場合も、十分な水分がないと自己修復されない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、自己修復が的確になされ得る構造物等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、長粒状の補修体を、構造物のひび割れに対して割裂(または開裂)し易い方向に配向させて、構造物中に混在させることを新たに着想した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《自己修復構造物》
(1)本発明は、基材と、該基材中に分散した補修体と、を備える自己修復構造物であって、前記補修体は、補修剤と該補修剤を内包する長粒状のカプセルとからなると共に、長手方向が前記基材のひび割れ方向に交差する向きに配向している自己修復構造物である。
(2)本発明の自己修復構造物(単に「構造物」ともいう。)は、基材のひび割れ方向に交差する向きに配向した長粒状の補修体が基材中に分散している。このため、基材にひび割れが生じたとき、補修体のカプセルも同時に割裂する。割裂したカプセルから補修剤が漏出し、その補修剤がひび割れへ染み出してひび割れを充填する。こうしてひび割れは自己修復される。
本発明のように長粒状の補修体は、略球状の補修体と比べて、ひび割れの発生時に割裂する補修体数を多くでき、また、長粒状(横長形状)である分、一つの補修体から漏出する補修剤量も多くできる。このため、本発明によれば、構造物全体に対する補修体の配合量(体積量)を少なくしつつも、ひび割れへ必要な補修剤を的確に供給できる。その結果、基材量の減少に伴う構造物の強度低下を抑制しつつも、構造物の自己修復機能を十分に確保できる。
《自己修復構造物の製造方法》
(1)本発明は、自己修復構造物の製造方法(単に「製造方法」ともいう。)としても把握できる。すなわち本発明は、補修体を分散させた流動性原料を成形型に流し込む注入工程と、該流動性原料を固化させる固化工程とを備え、上述した自己修復構造物が得られる製造方法でもよい。
(2)本発明に係る注入工程で、補修体を含む流動性原料を成形型(型枠等)に流し込むと、長粒状である補修体は、その長手方向が自ずと流動方向に配向した状態となる。この状態で固化工程を行うと、長手方向が基材のひび割れ方向に交差するように配向した補修体が、基材中に分散した構造物が得られる。こうして本発明の製造方法によれば、上述した自己修復構造物を効率的に製造することができる。
《その他》
(1)本明細書でいう「ひび割れ方向」は、ひび割れが延伸する方向であるが、厳密な意味で特定の一方向である必要はなく、複数方向でもよい。ひび割れは、構造物の使用により、引張応力が繰り返し作用する領域に生じ易いため、通常、各構造物の設計時や施工時に、ひび割れ方向は概ね把握可能である。本発明では、ひび割れ発生時に長粒状のカプセルが割裂する程度に、ひび割れ方向と補修体の長手方向が交差していればよく、必ずしも両方向が略直交している必要はない。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
自己修復構造物の製造工程を示す模式図である。 その自己修復過程を示す模式図である。 一剤性補修体と二剤性補修体を示す模式図である。 表層モジュールと路盤モジュールを自己修復構造物とした道路ユニットを示す模式図である。
上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。本明細書で説明する内容は、本発明の自己修復構造物としてのみならず、その製造方法にも適宜該当し得る。「方法」に係る構成要素も、一定要件下で、「物」に係る構成要素となり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《補修体》
(1)補修剤
補修剤は、基材のひび割れに浸透等して、ひび割れの少なくとも一部を充填できる接着剤等が好ましい。補修剤は、水分等と反応する粉末等でもよいが、液状であると、ひび割れへの浸透性や充填性等を確保できて好ましい。なお、ここでいう「液状」とは、基材内に分散している補修体の割裂前のカプセルに内包されているときの状態をいう。
また補修剤は、水分がなくても、空気等と接触して硬化する一剤性(一液性)や、二種類の補修剤が接触して硬化する二剤性(二液性)であると好ましい。これにより、水分が供給されない場所のひび割れも補修可能となる。補修剤の具体的な材質は、基材との相関で決定され得るが、例えば、樹脂(例えば、エポキシ樹脂、変性シリコーン樹脂等)、ペーストモルタル等が挙げられる。
(2)カプセル
カプセルは、基材中で補修剤を安定して保持でき、構造物のひび割れ時に確実に割裂するものが好ましい。カプセルの具体的な材質は、基材および補修剤との相関で決定され得るが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
カプセル(ひいては補修体)は、最大幅に対する最大長の比であるアスペクト比が2〜50、5〜40さらには10〜30であると好ましい。アスペクト比が過小であると、内包できる補修剤量やひび割れ時の割裂性が低下し得る。アスペクト比が過大であると、構造物の強度に影響を及ぼし得る。なお、カプセルは有底筒状であるが、その横断面は長手方向に沿って略一定でもよいし、変化してもよい。例えば、単なる円筒型でも、中央部が膨らんだ卵型等でもよい。
カプセルは、例えば、長さが1〜50mm、3〜30mmさらには5〜20mm程度、太さが0.1〜20mm、0.5〜10mmさらには1〜5mm程度であると好ましい。カプセルが過小では内包できる補修剤量が少なくなり、過大では構造物の強度の低下要因となり得る。
(3)構造
補修体は、一種類の補修剤を単筒状のカプセルで被包する単層構造の他、複数種の補修剤を複筒状のカプセルで被包する多重(層)構造でもよい。例えば、補修体は、補修剤が第1補修剤と第2補修剤からなり、カプセルが第1補修剤と第2補修剤を分離して内包する隔壁を有するものでもよい。この場合、一つの補修体で、第1補修剤と第2補修剤が接触することにより硬化を開始する、いわゆる二剤性(二液性)の接着剤等を補修剤として用いることが可能となる。このような補修体を、図3に模式的に例示した。
《基材》
基材は、例えば、各種のセメントを結合材としたコンクリートやモルタル、アスファルトを結合材としたアスファルト混合物等である。コンクリートは、例えば、プレキャストコンクリートでも、プレストレストコンクリートでもよい。なお、コンクリートは、通常、セメント、砂利(骨材)、砂および水等の混練物を、水和反応により固化させたものである。この場合、敢えて厳密にいえば、補修体が分散している基材は、セメントが水と反応して析出した部分(水和物)となる。
《構造物》
本発明に係る構造物は、道路、ビル、橋梁、支持台等、種々あり得る。その一例として道路ユニットがある。道路ユニットは、従来のように現場で土木工事がなされて完成されるものではない。道路ユニットは、予め工場等で生産され、搬入した現場で繋げること(配設施工)により、道路を完成させることができるブロック的なモジュールまたはアッセンブリである。道路ユニットを用いることにより、道路の新設、劣化・損傷した道路の更新(交換)等をも効率的に行える。
道路ユニットは、例えば、図4に示すように、表面側から地面側にかけて順に、表層モジュールと、表層モジュールを支える基礎モジュールからなる。さらに、その基礎モジュールは、例えば、弾性構造モジュール、路盤モジュール、路床モジュールからなる。
表層モジュールは、例えば、アスファルトやコンクリート等の舗装路からなる。弾性構造モジュールは、例えば、表層モジュールの変形や路盤モジュールの不陸を吸収し、表層モジュールに局部的な荷重が生じることを抑制する緩衝材からなる。路盤モジュールは、上層部(表層モジュール、弾性構造モジュール)からの分布荷重を受け止めて全体構造を維持する部分である。路床モジュールは、上層部(表層モジュール、弾性構造モジュール、路盤モジュール)からの分布荷重を地面に伝達する部分である。
ところで、このような道路ユニットで、特に、自己修復機能が要求されるモジュールは、コンクリート等からなる表層モジュールまたは路盤モジュールである。従って、工場での生産後に搬入された現場で配設施工されて道路となる道路ユニットを構成する表層モジュールまたは路盤モジュールが、本発明の自己修復構造物であると好ましい。これにより、道路ユニットの利便性に加えて、その耐久性向上または長寿命化等が図られる。
《製造方法》
(1)注入工程
補修体を分散させた流動性原料を成形型内へ流し込む方向(または充填方向)は、予め想定される構造物のひび割れ方向に対して交差する方向、さらにいえば略直交方向であると好ましい。なお、成形型は、工場内で用いられる金型等でも、現場で設置される型枠等でもよい。注入工程は、射出工程でもよい。
(2)固化工程
流動性原料を所定方向から流し込み、補修体を配向させた状態で保持する。これにより補修体が基材中に分散した構造物が得られる。このとき、補修体の配向方向は、構造物(基材)のひび割れ方向に交差する向きとなっている。
自己修復構造物の一例である道路ユニットの表層モジュールまたは路盤モジュールを想定して、その製造工程と自己修復過程を図1および図2に模式的に示した。このような具体例に基づいて、本発明をさらに詳しく説明する。
《製造》
(1)混練
自己修復構造物は、図1に示すよう各工程を経て製造される。具体的にいうと、先ず、基材原料を混練する(混合工程)。例えば、コンクリート(基材)の場合なら、基材原料は、セメント、砂利(骨材)、砂、水等である。基材原料の混練物へ、補修体を添加して、よく撹拌する。これにより補修体がほぼ均一的に分散した流動性原料が得られる。なお、補修体は、例えば、一液性補修剤を単層構造の有底円筒状カプセルで被包したものである。補修体の添加量は、流動性原料全体に対して、例えば、1〜10質量%さらには2〜5質量%程度(2〜20体積%さらには4〜10体積%)とするとよい。
(2)充填
次に、補修体を含む流動性原料を、型枠(成形型)の一方に設けた充填口から流し込む(注入工程)。このとき、小さく細長い補修体(例えば、φ2mm×10mm、アスペクト比:5)は、その長手方向が自ずと流動方向に沿った向きに姿勢を変化させる。こうして補修体は、充填された流動性原料中で、特定方向に配向した状態となる。なお、充填口の配置を調整して、流動性原料の流動方向が、予め想定された構造物のひび割れ方向に対して略直交方向となるようにした。
(3)固化
型枠に充填された状態で、流動性原料を一定期間養生し、流動性原料を硬化させる(固化工程)。この硬化後に型枠を解体すると、一定方向に配向した補修体が、基材中に分散している自己修復構造物が得られる。
なお、ここでは、型枠へ流動性原料を流し込んで構造物を成形する場合を示したが、流動性原料を金型等へ射出して構造物を成形するようにしてもよい。いずれの場合も、上述した全工程が工場内で行われると好ましい。
《自己修復過程》
得られた構造物に発生したひび割れは、図2に示すように自己修復される。具体的にいうと、先ず、補修体は、予めひび割れ方向に対して略直交する方向に配向して基材中に分散している。この状態で構造物にひび割れが発生すると、補修体のカプセルが割裂して、カプセルに内包されていた補修剤はひび割れへ浸透する。そして補修剤は、ひび割れを充填した後、一定時間経過後に硬化する。こうして、構造物に発生したひび割れは自己修復される。
このように本発明の構造物によれば、ひび割れが的確に自己修復されるため、保全管理の負担軽減等を図りつつ、その耐久性や寿命を大幅に向上させることが可能となる。

Claims (7)

  1. 基材と、
    該基材中に分散した補修体と、
    を備える自己修復構造物であって、
    前記補修体は、補修剤と該補修剤を内包する長粒状のカプセルとからなると共に、長手方向が前記基材のひび割れ方向に交差する向きに配向している自己修復構造物。
  2. 前記カプセルは、最大幅に対する最大長の比であるアスペクト比が2〜50である請求項1に記載の自己修復構造物。
  3. 前記補修剤は、液状である請求項1または2に記載の自己修復構造物。
  4. 前記補修剤は、空気と接触して硬化し得る請求項1〜3のいずれかに記載の自己修復構造物。
  5. 前記補修剤は、第1補修剤と第2補修剤からなり、
    前記カプセルは、該第1補修剤と該第2補修剤を分離して内包する隔壁を有する請求項1〜3のいずれかに記載の自己修復構造物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の自己修復構造物であって、
    工場での生産後に搬入された現場で配設施工されて道路となる道路ユニットを構成する表層モジュールまたは路盤モジュールからなる自己修復構造物。
  7. 補修体を分散させた流動性原料を成形型に流し込む注入工程と、
    該流動性原料を固化させる固化工程とを備え、
    請求項1〜6のいずれかに記載の自己修復構造物が得られる製造方法。
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