JP2019068147A - 速度検出回路および駆動制御装置 - Google Patents

速度検出回路および駆動制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 駆動制御のために駆動対象物の位置、速度および加速度を取得する際に必要なセンサの数を減らす。【解決手段】 スピーカ100の駆動制御を行う駆動制御装置1000に対し、スピーカの振動板の位置を検出する位置検出センサ210と加速度を検出する加速度検出センサ220を設けた。また、同駆動制御装置に対し、位置検出センサ210の出力信号の微分のカットオフ波数fc以下の帯域の成分と、加速度検出センサ220の出力信号の積分のカットオフ周波数fc以上の帯域の成分とを加算した速度検出信号Svを出力する速度検出回路300を設けた。駆動制御装置1000では、位置検出センサ210の出力信号と、加速度検出センサ220の出力信号と、速度検出回路300の出力信号とに基づいて、スピーカ100の駆動制御を行う。【選択図】図1

Description

この発明は、スピーカの振動板やコイルボビン等の可動部の速度を検出する速度検出回路および速度検出回路を利用した駆動制御装置に関する。
スピーカの歪みを改善して音質を向上する有力な技術としては、スピーカの振動系の振動を示す信号を、駆動系であるアンプに負帰還することにより、振動系の運動を制御するMFB(Motional Feed Back)方式の駆動制御装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
特開2004−200934号公報
ところで、小口径の振動板で低域まで再生可能なスピーカを実現しようとする場合、振動板の振幅を大きくする必要がある。そして、音質を損なわずに、このような大振幅での振動を実現するために、スピーカの駆動制御装置として、MFB方式の駆動制御装置を採用することが考えられる。この種のMFB方式の駆動制御装置において、低域を含む広い周波数帯域に亙って振動板の運動を適切に制御するためには、振動板の位置、速度および加速度の帰還制御を行うことが望まれる。しかしながら、振動系に対して、位置検出センサ、速度検出センサおよび加速度検出センサを設けるとなると、駆動制御装置の大型化、重量の増加およびコストの増加を招く問題がある。特に速度検出センサは、速度を検出するための機構が複雑であるので小型化が困難であり、駆動制御装置の大型化、重量の増加およびコストの増加を招く主要な要因となっている。
この発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、スピーカ等の駆動制御を行う駆動制御装置において速度検出センサを不要にする技術的手段を提供することを目的とする。
この発明は、位置検出センサの出力信号を微分した信号の所定のカットオフ周波数以下の帯域の成分と、加速度検出センサの出力信号を積分した信号の前記カットオフ周波数以上の帯域の成分とを加算した速度検出信号を出力することを特徴とする速度検出回路を提供する。
また、この発明は、このような速度検出回路を用いた駆動制御装置、すなわち、駆動対象物の位置を検出する位置検出センサと、前記駆動対象物の加速度を検出する加速度検出センサと、前記位置検出センサの出力信号を微分した信号の所定のカットオフ周波数以下の帯域の成分と、前記加速度検出センサの出力信号を積分した信号の前記カットオフ周波数以上の帯域の成分とを加算した速度検出信号を出力する速度検出回路と、前記位置検出センサ、前記加速度検出センサおよび前記速度検出回路の各出力信号に基づいて前記駆動対象物の駆動制御のための制御パラメータを生成するパラメータ生成回路とを具備することを特徴とする駆動制御装置を提供する。
この発明によれば、位置検出センサの出力信号と加速度検出信号の出力信号から速度検出信号が生成されるため、速度検出センサが不要である。従って、スピーカ等の駆動制御を行う駆動制御装置の大型化、重量の増加およびコストの増加を回避することができる。
ここで、コスト上昇を抑えてスピーカの大振幅駆動を実現するため、ボイスコイルを長尺化することが考えられる。しかしながら、ボイスコイルを長尺化すると、ボイスコイルの全区間のうち磁界内に位置しない区間のコイル巻線にも駆動電流を流すことになるため、効率の低下を招く。
そこで、好ましい態様において、駆動制御装置の駆動対象物は磁界が通過する軸方向に並んだ複数のボイスコイルからなり、駆動制御装置は、前記位置検出センサの出力信号に基づいて、前記複数のボイスコイルのうち磁界内に位置するボイスコイルを選択し、選択したボイスコイルへの通電を行う選択手段を具備する。
この態様によれば、複数のボイスコイルのうち磁界内に位置するボイスコイルを選択し、選択したボイスコイルへの通電を行うので、効率の低下を防ぐことができる。
この発明の一実施形態である速度検出回路を用いた駆動制御装置の構成を示す回路図である。 同駆動制御装置の駆動制御の対象であるスピーカの構成例を示す断面図である。 同駆動制御装置における位置検出センサの構成例を示す図である。 同駆動制御装置における加速度検出センサの構成例を示す図である。 同スピーカにおける位置検出センサと加速度検出センサの実装例を示す断面図である。 同速度検出回路の機能を説明する図である。 同実施形態における微分回路と1次のLPFとの直列回路の伝達特性を説明する図である。 同実施形態における積分回路と1次のHPFとの直列回路の伝達特性を説明する図である。
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
図1はこの発明の一実施形態である速度検出回路300を適用した駆動制御装置1000の構成を示す回路図である。この駆動制御装置1000は、各種のセンサを利用して、図2に例示するムービングコイル型のスピーカ100の駆動制御を行う装置である。ここで、駆動制御装置1000の説明に先立ち、図2に示すスピーカ100の構成を説明し、次いで駆動制御装置1000に設けられる各種のセンサについて説明する。
図2において、フレーム101は、振動板111や各部を支える筐体として機能する。このフレーム101の底部において、振動板111と反対側の面には、音声出力方向と反対方向(図では下方向)に、リング状のトッププレート102と、リング状(筒状)で軸方向に着磁された永久磁石103と、底部となるヨーク104が順次設けられている。また、ヨーク104の中央部には、トッププレート102の方向に向かって、円柱状のセンターポール105が突出している。
そして、センターポール105の先端部付近の外周面は、空隙を挟んでトッププレート102の内周面と向かい合っている。この空隙は、磁路における磁気ギャップである。
また、センターポール105の外周面とトッププレート102の内周面との間のリング状の空間には、振動板111に一端が取り付けられたコイルボビン112が配置されている。そして、振動板111において、コイルボビン112が接している部分近傍には、ダンパ113の内周部が取り付けられている。そして、このダンパ113の外周部は、フレーム101に固定されている。このように振動板111とコイルボビン112は、ダンパ113を介してフレーム101に支持されており、センターポール105の軸方向に振動可能な可動部となっている。
本実施形態では、コイルボビン112上の軸方向の異なる位置に、複数のボイスコイルが備えられている。また、そのような複数のボイスコイルに対応できるよう、コイルボビン112も長尺化されている。図2に示す具体例では、ボイスコイル150aと、ボイスコイル150aよりも振動板111に近い位置のボイスコイル150bと、ボイスコイル150aよりも振動板111から遠い位置(センターポールの底部側に近い位置)のボイスコイル150cの、3組のボイスコイルがコイルボビン112に巻回されている。なお、複数のボイスコイルとしては、3に限定されず、2であってもよいし、4以上であってもよい。
次に駆動制御装置1000に設けられる各種のセンサについて説明する。図3は、駆動制御装置1000に使用される位置検出センサ210の構成を示す図である。
本実施形態において、スピーカ100の振動板111またはコイルボビン112には光源211が固定されている。この光源211は、LED(Light Emitting Diode;発光ダイオード)であり、電源212から抵抗213を介して供給される電流により発光する。光源211が例えばコイルボビン112に固定されている場合、光源211はコイルボビン112とともに振動する。
受光素子215および216は、例えばフォトトランジスタであり、光源211の振動経路の延長上に配置されている。ここで、受光素子215は、電源217の正極と中間ノード218との間に接続され、受光素子216は中間ノード218と電源217の負極との間に接続されている。そして、中間ノード218の電圧が図1に示すバッファ219により増幅され、位置検出信号Spとして出力される。
なお、スピーカ100がアンプを内蔵しており、電源ケーブルをコンセントに差し込むだけで再生動作を開始するパワードスピーカである場合には、パワードスピーカ内の電源を電源217として利用することが可能である。
この構成において、コイルボビン112の振動により光源211が受光素子216から離れて受光素子215に近づくと、受光素子215の抵抗値が減少して受光素子216の抵抗値が増加し、位置検出信号Spの電圧値が上昇する。これに対し、コイルボビン112の振動により光源211が受光素子215から離れて受光素子216に近づくと、受光素子215の抵抗値が増加して受光素子216の抵抗値が減少し、位置検出信号Spの電圧値が低下する。このようにコイルボビン112の位置に応じて電圧値が増減する位置検出信号Spが得られる。
図4は、駆動制御装置1000に設けられる加速度検出センサ220の構成を示す図である。図4において、板状の導体である支持台221は、周囲に複数設けられた脚部222により振動板111から持ち上げられた状態で振動板111に固定されている。この支持台221の上面には板状の圧電素子223が載せられ、この圧電素子223の上面には導電性の信号電極224が載せられている。この信号電極224と、支持台221は、FET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)225のゲートとソースに各々接続されている。
この構成によれば、振動板111が振動すると、振動板111の加速度に応じた撓みが支持台221に発生し、この支持台221の撓みに応じた電圧が圧電素子223からFET225のゲートおよびソース間に出力され、加速度に応じたドレイン電流が得られる。この結果、振動板111の加速度に応じた電圧値の加速度検出信号SaがFET225のドレインから出力される。
図5はスピーカ100における位置検出センサ210および加速度検出センサ220の実装例を示す断面図である。この例では、センターポール105の上面からヨーク104の下面に至る空洞107が設けられている。そして、この空洞107を挟むように、センターポール105の上面に位置検出センサ210の1つの受光部215が固定され、ヨーク104の下面に位置検出センサ210のもう1つの受光部216が固定されている。また、振動板111の底においてセンターポール105と対向する平板部111aの裏側には空洞107内を下方に伸びる棒部211bの一端が固定されている。そして、この棒部211bの他端には、位置検出センサ210の光源211が固定されている。この光源211は、受光部215の受光面と受光部216の受光面との間に挟まれている。一方、平板部111aの表面には、加速度検出センサ220が固定されている。この構成によれば、振動板111における平板部111aの位置を示す位置検出信号Spが位置検出センサ210から得られ、平板部111aに発生する加速度を示す加速度検出信号Saが加速度検出センサ220から得られる。
次に図1に示す駆動制御装置1000の構成を説明する。駆動制御装置1000は、スピーカ100の可動部に発生する振動を検出するためのセンサとして、以上説明した位置検出センサ210と加速度検出センサ220とを有する。本実施形態において、駆動制御装置1000には、速度検出センサは設けられておらず、その代りに、速度検出回路300が設けられている。
この速度検出回路300は、位置検出センサ210が出力する位置検出信号Spと加速度検出センサ220が出力する加速度検出信号Saとに基づいて、スピーカ100の振動板111の平板部111aの速度を示す速度検出信号Svを生成する回路である。さらに詳述すると、本実施形態による速度検出回路300は、位置検出センサ210の出力信号の微分の所定周波数以下の帯域の成分と、加速度検出センサ220の出力信号の積分の所定周波数以上の帯域の成分とを加算した速度検出信号を出力するものである。
ここで、図6および図1を参照し、速度検出回路300の詳細について説明する。仮にスピーカ100の振動板111の平板部111aの振動を検出する位置検出センサ、速度検出センサおよび加速度検出センサを設けたとする。この場合、コイルボビン112が軸方向に振動することにより、図6(a)〜(c)に例示する波形の位置検出信号、速度検出信号および加速度検出信号が得られる。これらの図において、横軸は時間である。また、図6(a)の縦軸は位置検出信号が示す平板111aの位置、図6(b)の縦軸は速度検出信号が示す平板部111aの速度、図6(c)は加速度検出信号が示す平板部111aの加速度である。
本実施形態では、速度センサを設けず、位置センサおよび加速度センサの各出力信号を利用して振動板111の平板部111aの速度を示す速度検出信号を生成する。図6(d)は位置センサが出力する位置検出信号を微分することにより得られる速度検出信号の波形を例示するものである。また、図6(e)は加速度センサが出力する加速度検出信号を積分することにより得られる速度検出信号の波形を例示するものである。
ここで、本実施形態において使用されるような光学式の位置検出センサは、DCまでの低周波領域において高い位置検出能力を有している。従って、位置検出信号を微分することにより得られる速度検出信号(図6(d)参照)は、DCを含む低周波数領域では正確な速度検出能力を有する。しかしながら、位置検出センサでは、受光素子の応答速度が遅い。このため、位置検出信号を微分することにより得られる速度検出信号(図6(d)参照)は、高周波領域では検出精度が悪くなる。
一方、加速度検出センサは、一般的に容量性の出力インピーダンスを有し、これを増幅するセンサアンプにはハイインピーダンス入力(高抵抗入力)のものが要求される。しかしながら、センサアンプの入力インピーダンスを無限大にすることはできない。また、加速度検出信号を積分する積分回路は、DC信号の積分をすることはできない。このため、加速度検出信号を積分することにより得られる速度検出信号(図6(e)参照)は、DCおよび低周波領域での検出能力が劣る。その代りに、加速度検出信号を積分することにより得られる速度検出信号(図6(e)参照)は、加速度検出センサの共振周波数までの高周波領域において速度検出能力を有する。
そこで、図6(f)に示すように、所定のカットオフ周波数以下の低周波領域では、位置検出信号を微分することにより得られる速度検出信号(図6(d)参照)を選択し、同カットオフ周波数以上の高周波領域では、加速度検出信号を積分することにより得られる速度検出信号(図6(e)参照)を選択し、選択した信号を加算することが考えられる。
具体的には、位置検出信号を微分する微分回路と、この微分回路の出力信号における所定のカットオフ周波数fc以下の低域の信号を選択する1次のLPFと、加速度検出信号を積分する積分回路と、この積分回路の出力信号におけるカットオフ周波数fc以上の高域の信号を選択する1次のHPFと、1次のLPFの出力信号と1次のHPFの出力信号を加算する加算回路とにより、DCを含む低域から高域までの広い周波数帯域において伝達特性がフラットなクロスオーバフィルタを構成する。このようにすることで、広い周波数帯域においてフラットな速度検出能力を有する速度検出信号が得られると考えられる。
しかしながら、理想的な微分回路および理想的な積分回路を実現することは困難である。そこで、本実施形態では、図7(a)および(b)に示すように、微分回路と1次のLPFとの直列回路の伝達特性と1次のHPFの伝達特性が同じになることを利用し、前者を後者で置き換える。さらに詳述すると、図7(a)において、1次のLPFのゲインG1は、カットオフ周波数fc以下の周波数では1であるが、カットオフ周波数fc以上の周波数になると、−6dB/octの勾配で低下する。一方、微分回路のゲインG2は、周波数の上昇に応じて+6dB/octの勾配で上昇する。そして、微分回路と1次のLPFとの直列回路のゲインG3は、ゲインG1とゲインG2の積になるため、図7(b)に示すように、カットオフ周波数fcまでは+6dB/octの勾配で上昇し、カットオフ周波数fc以上の周波数ではフラットなゲインとなる。従って、微分回路と1次のLPFとの直列回路の伝達特性は、1次のHPFの伝達特性と同じであり、前者から後者への置き換えが可能である。
また、本実施形態では、図8(a)および(b)に示すように、積分回路と1次のHPFとの直列回路の伝達特性と1次のLPFの伝達特性が同じになることを利用し、前者を後者で置き換える。さらに詳述すると、図8(a)において、1次のHPFのゲインG4は、カットオフ周波数fc以上の周波数では1であるが、カットオフ周波数fc以下の周波数では、+6dB/octの勾配で上昇する。一方、積分回路のゲインG5は、周波数の上昇に応じて−6dB/octの勾配で低下する。そして、積分回路と1次のHPFとの直列回路のゲインG6は、ゲインG4とゲインG5の積になるため、図8(b)に示すように、カットオフ周波数fc以上の周波数では−6dB/octの勾配で低下し、カットオフ周波数fc以下の周波数ではフラットなゲインとなる。従って、積分回路と1次のHPFとの直列回路の伝達特性は、1次のLPFの伝達特性と同じであり、前者から後者への置き換えが可能である。
以上のような微分回路と1次のLPFとの直列回路から1次のHPFへの置き換えと、積分回路と1次のHPFとの直列回路から1次のLPFへの置き換えにより得られたのが、図1に示す速度検出回路300である。
図1に示す速度検出回路300において、抵抗311は一端がFET225の出力ノード(ドレイン)に接続され、他端がキャパシタ312を介して接地されている。この抵抗311およびキャパシタ312の接続ノードの電圧はボルテージフォロワアンプ313を介して出力される。この抵抗311、キャパシタ312およびボルテージフォロワアンプ313は、FET225が出力する加速度検出信号Saにおけるカットオフ周波数fc以下の帯域の信号を通過させる1次LPF310を構成している。
また、図1に示す速度検出回路300において、キャパシタ321は一端がバッファ219の出力ノードに接続され、他端が抵抗322を介して接地されている。このキャパシタ321および抵抗322の接続ノードの電圧はボルテージフォロワアンプ323を介して出力される。このキャパシタ321、抵抗322およびボルテージフォロワアンプ323は、バッファ219が出力する位置検出信号Spにおけるカットオフ周波数fc以上の帯域の信号を通過させる1次HPF320を構成している。
そして、速度検出回路300において、加算器330は、1次LPF310の出力信号と1次HPF320の出力信号を加算することにより速度検出信号Svを出力する。本実施形態において、1次HPF320のカットオフ周波数fcは1次LPF310のカットオフ周波数fcと等しい。このカットオフ周波数fcにおいて、1次LPF310および1次HPF320のゲインは、いずれも−3dBとなる。また、カットオフ周波数fcにおいて、1次LPF310では位相が45°遅れ、1次HPF320では位相が45°進む。このため、カットオフ周波数fcにおいて、1次LPF310、1次HPF320および加算器330からなる回路のゲインは、0dBとなる。また、カットオフ周波数fc以下の帯域では、加算器330の出力信号において1次LPF310の出力信号が支配的となり、カットオフ周波数fc以上の帯域では、加算器330の出力信号において1次HPF320の出力信号が支配的となる。このため、速度検出回路300の全体としてのゲインは、広い周波数帯域においてフラットなゲインとなる。このように加速度検出信号Saから得られる速度検出信号と位置検出信号Spから得られる速度検出信号をそれぞれ帯域制限した上で加算することにより広帯域の安定した速度検出信号Svが得られる。
以上が本実施形態による速度検出回路300の構成である。
本実施形態による駆動制御装置1000は、加速度検出信号Sa、速度検出信号Svおよび位置検出信号Spを各々増幅する可変ゲイン増幅器410、420および430を有している。この可変ゲイン増幅器410、420および430は、駆動対象物の駆動制御のための制御パラメータを生成するパラメータ生成回路を構成している。なお、この駆動制御の制御パラメータについては、説明の重複を避けるため、後述する。
可変ゲイン増幅器410は、抵抗411および412と、摺動抵抗413と、オペアンプ414とを有している。ここで、抵抗411は、FET225の出力ノードとオペアンプ414の反転入力端との間に接続され、抵抗412はオペアンプ414の出力ノードおよび反転入力端間に接続されている。摺動抵抗413は、一端がFET225の出力ノードに接続され、他端が接地され、摺動子がオペアンプ414の非反転入力端に接続されている。
この構成において、摺動抵抗413における摺動子の位置からFET225の出力ノードまでの抵抗値をRa、摺動子の位置から接地線までの抵抗値をRbとすると、オペアンプ414の非反転入力端の電圧V1は、次式のようになる。
V1=Sa・(Rb/(Ra+Rb)) ……(1)
そして、抵抗411の抵抗値をRc、抵抗412の抵抗値をRdとすると、オペアンプ414の出力電圧V2は、次式のようになる。
V2=V1+(V1−Sa)・(Rd/Rc)
=V1・(1+(Rd/Rc))−Sa・(Rd/Rc)
=Sa・(Rb/(Ra+Rb))・(1+(Rd/Rc))
−Sa・(Rd/Rc)
=Sa・(Rb・Rc−Ra・Rd)/((Ra+Rb)・Rc) ……(2)
従って、可変ゲイン増幅器410のゲインGは次式により与えられる。
G=(Rb・Rc−Ra・Rd)/((Ra+Rb)・Rc) ……(3)
ここで、簡単のため、仮にRa+Rb=Rb=Rc=Rであるとする。この場合において、摺動抵抗413の摺動子がFET225の出力ノードに接続された位置にあり、Ra=0、Rb=R、Rd=Rであるとすると、可変ゲイン増幅器410のゲインGは次のようになる。
G=(Rb・Rc−Ra・Rd)/((Ra+Rb)・Rc)
=(R・R)/(R・R)
=1 ……(4)
また、摺動抵抗413の摺動子が接地位置にあり、Ra=R、Rb=0、Rd=Rであるとすると、可変ゲイン増幅器410のゲインGは次のようになる。
G=(Rb・Rc−Ra・Rd)/((Ra+Rb)・Rc)
=(−R・R)/(R・R)
=−1 ……(5)
そして、摺動抵抗413の摺動子をFET225の出力ノードに接続された位置から接地位置まで連続的に変化させると、可変ゲイン増幅器410のゲインGは1から−1まで連続的に変化することとなる。
本実施形態による駆動制御装置1000には、摺動抵抗413の摺動子の位置を操作するための操作子が設けられている(図示略)。従って、本実施形態では、この操作子の操作により可変ゲイン増幅器410のゲインGを1から−1まで連続的に変化させることができる。他の可変ゲイン増幅器420および430の構成も可変ゲイン増幅器410と同様である。
本実施形態では、発振防止のため、正帰還のゲインは最大1とする必要がある。また、負帰還の場合は帰還量を−1よりも大きくしてもよい。例えばパラメータを最大で10倍変化させたい場合は帰還量を−10にすればよい。このため、可変ゲイン増幅器410〜430のゲインが1〜−10まで変化するように抵抗411、412、摺動抵抗413の各抵抗値が決定されている。
バッファ520には、再生対象である入力音信号Vinが与えられる。重み付け加算器500は、このバッファ520を介して供給される入力音信号Vinと、可変ゲイン増幅器410、420および430の各出力信号とを重み付け加算して出力する回路である。
この重み付け加算器500において、オペアンプ512は、非反転入力端が接地され、反転入力端と出力端の間に抵抗511が接続されている。そして、オペアンプ512の反転入力端と、可変ゲイン増幅器410、420、430およびバッファ520の各出力ノードとの間に、抵抗501〜504が各々接続されている。
この構成によれば、抵抗501〜504を介して供給される各電流が仮想接地点であるオペアンプ512の反転入力端において加算され、この加算された電流が抵抗511に流れる。従って、可変ゲイン増幅器410、420、430およびバッファ520の各出力電圧に、抵抗501〜504の抵抗値の逆数に比例した重み係数を乗算して加算した電圧がオペアンプ512から出力される。
PWM(Pulse Width Modulation;パルス幅変調)部600は、重み付け加算器500の出力信号によりパルス幅変調されたPWMパルスを出力する回路である。
選択部700には、ボイスコイル150b、150a、150cに駆動電流を流すためのバッファ701〜704が接続されている。バッファ701の出力ノードには、ボイスコイル150bのヨーク104側の端子が接続されている。バッファ702の出力ノードには、ボイスコイル150bおよび150aの振動板111側の各端子が接続されている。バッファ703の出力ノードには、ボイスコイル150aおよび150cのヨーク104側の各端子が接続されている。バッファ704の出力ノードには、ボイスコイル150cの振動板111側の端子が接続されている。選択部700は、位置検出信号Spに基づいて、ボイスコイル150b、150a、150cのうち磁気ギャップの磁界内にある1個または2個のボイスコイルを選択し、選択したボイスコイルに対し、バッファ701〜704によりPWM部600から供給されるPWMパルスのレベルに応じた極性および大きさの電流を流す。
例えばボイスコイル150bのみが磁気ギャップの磁界内にあり、PWM部600からのPWMパルスがHレベルである場合、選択部700は、バッファ702からHレベルの電圧を出力させ、バッファ701からLレベルの電圧を出力させ、バッファ703および704の出力ノードをフローティング状態にする。この結果、ボイスコイル150bのみに振動板111側からヨーク104側に向かう電流が流れる。
次にボイスコイル150bおよび150aが磁気ギャップの磁界内にあり、PWM部600からのPWMパルスがHレベルである場合、選択部700は、バッファ702からHレベルの電圧を出力させ、バッファ701および703からLレベルの電圧を出力させ、バッファ704の出力ノードをフローティング状態にする。この結果、ボイスコイル150bおよび150aに振動板111側からヨーク104側に向かう電流が流れる。
次にボイスコイル150aのみが磁気ギャップの磁界内にあり、PWM部600からのPWMパルスがHレベルである場合、選択部700は、バッファ702からHレベルの電圧を出力させ、バッファ703からLレベルの電圧を出力させ、バッファ701および704の出力ノードをフローティング状態にする。この結果、ボイスコイル150aに振動板111側からヨーク104側に向かう電流が流れる。
次にボイスコイル150aおよび150cが磁気ギャップの磁界内にあり、PWM部600からのPWMパルスがHレベルである場合、選択部700は、バッファ702および704からHレベルの電圧を出力させ、バッファ703からLレベルの電圧を出力させ、バッファ701の出力ノードをフローティング状態にする。この結果、ボイスコイル150aおよび150cに振動板111側からヨーク104側に向かう電流が流れる。
次にボイスコイル150cのみが磁気ギャップの磁界内にあり、PWM部600からのPWMパルスがHレベルである場合、選択部700は、バッファ704からHレベルの電圧を出力させ、バッファ703からLレベルの電圧を出力させ、バッファ701および702の出力ノードをフローティング状態にする。この結果、ボイスコイル150cに振動板111側からヨーク104側に向かう電流が流れる。
PWM部600からのPWMパルスがLレベルである場合、選択部700は、以上と同様なボイスコイルの選択を行うとともに、各バッファに以上と逆極性の電圧を出力させる。この結果、選択したボイスコイルに対し、ヨーク104側から振動板111側に向かう電流が流れる。
以上が本実施形態による駆動制御装置1000の詳細である。
本実施形態では、入力音信号Vinが重み付け加算器500を介してPWM部600に供給され、PWM部600および選択部700により入力音信号Vinに基づくボイスコイル150a〜150cの駆動が行われる。その際、スピーカの振動系の振動を示す位置検出信号Sp、速度検出信号Svおよび加速度検出信号Saが可変ゲイン増幅器410〜430と重み付け加算器500を介してPWM部600に帰還される。
本実施形態によれば、位置検出信号Sp、速度検出信号Svおよび加速度検出信号Saの帰還経路に可変ゲイン増幅器410〜430が挿入されている。このため、位置検出信号Sp、速度検出信号Svおよび加速度検出信号Saの帰還量や極性を制御することで、振動系の性質の制御が可能になる。
スピーカの場合、TSパラメータ(ティール・スモールパラメータ)と呼ばれるスピーカユニットの性質を示すパラメータの中でも、振動系の等価質量Mms、低域共振の制動係数Qts、サスペンションのバネ性Cmsが重要である。
本実施形態では、可変ゲイン増幅器410のゲインの調整により振動系の等価質量Mmsの調整が可能であり、可変ゲイン増幅器420のゲインの調整により振動系の低域共振の制動係数Qtsの調整が可能であり、可変ゲイン増幅器430のゲインの調整により振動系のサスペンションのバネ性Cmsの調整が可能である。
具体的には、可変ゲイン増幅器410のゲインの調整により、加速度の正帰還が強まると、振動系等価質量Mmsが軽くなり、負帰還が強まると、振動系等価質量Mmsが重くなる。また、可変ゲイン増幅器420のゲインの調整により、速度の正帰還が強まると、制動係数Qtsが大きくなり、負帰還が強まると、制動係数Qtsは小さくなる。また、可変ゲイン増幅器430のゲインの調整により、位置の正帰還が強まると、振動系のバネ性Cmsが弱くなり、位置の負帰還が強まると、バネ性Cmsが強くなる。
ここで、帰還の目的は、パラメータ制御に加えてアクチュエータのリニアリティの改善にもある。従って、基本的にリニアリティ改善効果のある負帰還領域を使うのが効果的である。具体的には、加速度と位置の負帰還量を調整することにより、振動系等価質量Mmsを適度な大きさにするとともに、バネ性Cmsを適度な強さとし、振動系を希望する共振周波数F0に設定する。その状態において、速度の負帰還量を調整することにより、制動係数Qtsを適正に設定することができる。
また、本実施形態によれば、速度検出回路300により、位置検出信号Spおよび加速度検出信号Saから速度検出信号Svが得られるので、スピーカ100の可動部の速度を検出する速度検出センサを設ける必要がない。従って、速度検出センサの設置に伴う駆動制御装置1000の大型化、重量の増加、コストの増加を回避することができる。
また、本実施形態において、速度検出回路300は、位置検出センサ210の出力信号の微分の所定周波数以下の帯域の成分と、加速度検出センサ220の出力信号の積分の所定周波数以上の帯域の成分とを加算した速度検出信号Svを生成する。従って、広い周波数帯域に亙って高い検出能力を有する速度検出信号Svが得られ、振動系の低域共振の制動係数Qtsの調整の精度を高めることができる。
また、本実施形態によれば、位置検出センサ210の出力信号の微分の所定周波数以下の帯域の成分を得る回路を1次HPF320により実現し、加速度検出センサ220の出力信号の積分の所定周波数以上の帯域の成分を得る回路を1次LPF310により実現している。従って、理想的な微分回路および理想的な積分回路を実現することは困難な状況においても、広い周波数帯域に亙って高い検出能力を有する速度検出信号Svを得ることができる。
また、本実施形態では、コイルボビン112に複数のボイスコイル150b、150a、150cを設け、磁気ギャップの磁界内にあるボイスコイルのみに電流を流してスピーカ100の駆動を行うようにした。このため、次の効果が得られる。
サブウーハ等のスピーカにおいて、ロングストロークでリニアな特性を持つ振動系を実現するには、磁気ギャップの長さとボイスコイルの長さにストローク長分の差を持たせる必要がある。例えば、振動板が50mmのストロークをもつスピーカを設計する場合、ボイスコイルを20mmとすると、磁気ギャップ長が70mm必要となり、ボイスコイルを70mmとすると、磁気ギャップ長は20mmとなる。
磁気ギャップ長を長くした構成は、ショートボイスコイルと呼ばれるが、高価な磁石を多く使うことで非常にコストがかかる。このため、一般的には、ボイスコイルを長くするロングボイスコイルの構成が採用されることが多い。
しかし、ロングボイスコイルは、ボイスコイルの一部のみが磁界に入るので、極端なロングボイスコイル構造を取ると効率が大きく低下する。
本実施形態では、位置検出信号Spを使ってボイスコイルの位置を判断し、磁界中にあるボイスコイルだけに電流を流すことで無駄な電力消費を抑え高効率化を実現することができる。
<他の実施形態>
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば上記実施形態では、この発明による速度検出回路をスピーカの駆動制御装置に適用したが、ロボットやアクチュエータ等、可動部を有する他の装置の駆動制御装置に適用してもよい。
100……スピーカ、150a,150b,150c……ボイスコイル、112……コイルボビン、111……振動板、220……加速度センサ、210……位置センサ、300……速度検出回路、410,420,430……可変ゲイン増幅器、500……重み付け加算器、520,701〜704……バッファ、600……PWM部、700……加算部、700……選択部。

Claims (4)

  1. 位置検出センサの出力信号を微分した信号の所定のカットオフ周波数以下の帯域の成分と、加速度検出センサの出力信号を積分した信号の前記カットオフ周波数以上の帯域の成分とを加算した速度検出信号を出力することを特徴とする速度検出回路。
  2. 前記位置検出センサの出力信号の前記カットオフ周波数以上の帯域の成分を通過させる高域通過フォルタと、前記加速度検出センサの出力信号の前記カットオフ周波数以下の帯域の成分を通過させる低域通過フィルタと、前記高域通過フィルタおよび前記低域通過フィルタの各出力信号を加算して前記速度検出信号を出力する加算器とを具備することを特徴とする請求項1に記載の速度検出回路。
  3. 駆動対象物の位置を検出する位置検出センサと、
    前記駆動対象物の加速度を検出する加速度検出センサと、
    前記位置検出センサの出力信号を微分した信号の所定のカットオフ周波数以下の帯域の成分と、前記加速度検出センサの出力信号を積分した信号の前記カットオフ周波数以上の帯域の成分とを加算した速度検出信号を出力する速度検出回路と、
    前記位置検出センサ、前記加速度検出センサおよび前記速度検出回路の各出力信号に基づいて前記駆動対象物の駆動制御のための制御パラメータを生成するパラメータ生成回路と
    を具備することを特徴とする駆動制御装置。
  4. 前記駆動対象物は磁界が通過する軸方向に並んだ複数のボイスコイルからなり、
    前記位置検出センサの出力信号に基づいて、前記複数のボイスコイルのうち磁界内に位置するボイスコイルを選択し、選択したボイスコイルへの通電を行う選択手段を具備することを特徴とする請求項3に記載の駆動制御装置。
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