JP2019067959A - 電解コンデンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】静電容量及び誘電正接の時間経過による変化を抑制して長寿命化させた電解コンデンサを提供する。【解決手段】電解コンデンサは、陽極箔1及び陰極箔がセパレータを介して巻回され、電解液が含浸されたコンデンサ素子を備える。陽極箔1は、帯状の箔により成り、箔の表面に形成された拡面部3と、箔のうち、拡面部3を除いた残部である芯部2と、拡面部3を分断する複数の分断部4と、拡面部3と分断部4の表面に形成された誘電体皮膜5とを有する。また、電解液は、エチレングリコール又はγ−ブチロラクトンの少なくとも一方を含む。【選択図】図1

Description

本発明は、陽極箔及び陰極箔がセパレータを介して巻回され、電解液が含浸された電解コンデンサに関する。
電解コンデンサは、陽極の誘電体皮膜を対向電極と密着させるべく、電解質で空隙を埋めて成り、電解質が液体である非固体電解コンデンサ、電解質として液体と固体を備えたハイブリッド形電解コンデンサ、電極双方に誘電体皮膜を形成した両極性電解コンデンサが含まれる。このコンデンサ素子は、アルミニウムなどの弁金属箔に誘電体皮膜を形成した陽極箔と、同種または他の金属の箔によりなる陰極箔とを対向させ、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて構成されている。そして、コンデンサ素子には電解液が含浸している。
電解液は、エチレングリコ−ルやγ−ブチロラクトンを溶媒とし、1,6−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、アゼライン酸等のカルボン酸又はその塩等を溶質として含有し、誘電体皮膜に直接接触して真の陰極として作用するとともに、誘電体皮膜の修復作用を有する。しかしながら、電解液は時間経過とともに電解コンデンサの外部へ蒸発揮散し、電解コンデンサには経時的に静電容量の低下や誘電正接の増大が起こり、ドライアップを迎えることになる。尚、静電容量の低下や誘電正接の増大には、陽極箔や誘電体皮膜や電解液の劣化が進展することも原因の一つである。
特開平07−320984号公報
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するため、静電容量及び誘電正接の時間経過による変化を抑制して長寿命化させた電解コンデンサを提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究の結果、陽極箔に分断部を設け、且つ電解液の溶媒としてエチレングリコール又はγ−ブチロラクトンの少なくとも一方を用いると、静電容量及び誘電正接の経時的な変化が抑制されるとの知見を見出した。特にエチレングリコールを用いると、静電容量及び誘電正接の経時的な変化の抑制は顕著であり、またγ−ブチロラクトンを用いると等価直列抵抗の経時的な上昇抑制の効果も生じた。
そこで、上記目的を達成するため、本発明に係る電解コンデンサは、陽極箔及び陰極箔がセパレータを介して巻回され、電解液が含浸されて成るコンデンサ素子を備え、前記陽極箔は、帯状の箔により成り、前記箔の表面に形成された拡面部と、前記箔のうち、前記拡面部を除いた残部である芯部と、前記拡面部を分断する複数の分断部と、前記拡面部と前記分断部の表面に形成された誘電体皮膜と、を有し、前記電解液は、エチレングリコール又はγ−ブチロラクトンの少なくとも一方を含むこと、を特徴とする。
前記分断部は、前記箔を完全に横断し、又は部分的に横断するように延在するようにしてもよい。
前記分断部は、平均ピッチが2.1mm以下の間隔を空けて設けられているようにしてもよい。
前記分断部は、平均ピッチが1.0mm以下の間隔を空けて設けられているようにしてもよい。
前記分断部は、前記箔を平坦にした状態で溝幅が0を含む50μm以下であるようにしてもよい。
前記分断部は、前記拡面部が割れて成り、前記箔を平坦にした状態で溝幅が実質的に0であるようにしてもよい。
本発明によれば、時間経過による静電容量の低下及び誘電正接の増大が抑制される。
陽極箔の構造を示し、(a)は長手方向に沿った切断図であり、(b)は上面図である。 巻回された陽極箔の状態を示す模式図であり、(a)は分断部を有する陽極箔、(b)は分断部が未形成の陽極箔を示す。 (a)は分断部の内表面に形成された誘電体皮膜を示し、(b)は巻回によって発生したクラックの表面に形成された誘電体皮膜を示す。 実施例1に係る、本実施形態の分断部を備えた電極箔の長手方向に沿った断面写真である。 実施例1に係る、本実施形態の分断部を備えた電極箔の表面を示す写真であり、写真長辺方向が電極箔の幅方向であり、写真短辺方向が電極箔の長手方向である。 比較例1に係る電極箔の長手方向に沿った断面写真である。 実施例1乃至5及び比較例1のエリクセン試験の結果を示すグラフである。 実施例1及び比較例1を巻回したコンデンサ素子の写真である。 実施例6及び比較例2の電解コンデンサのエージング処理において流した電流を経過時間毎に示したグラフである。 実施例7及び比較例3の電解コンデンサのエージング処理において流した電流を経過時間毎に示したグラフである。
以下、本発明に係る電解コンデンサの実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものでない。
(電解コンデンサ)
電解コンデンサは、静電容量により電荷の蓄電及び放電を行う受動素子である。この電解コンデンサは、図1に示す拡面化された表面に誘電体皮膜5が形成された陽極箔1を備え、当該陽極箔1と陰極箔とをセパレータを介在させて円筒状に巻回し、該円筒体に電解液を含浸させて成るコンデンサ素子を収容している。陰極箔も表面を拡面化し、誘電体皮膜5を形成してもよい。コンデンサ素子は有底筒状の外装ケースに収納されている。外装ケースの開口は封口体で封止されている。この電解コンデンサは最後にエージング処理されて作製が完了する。
(電極箔)
図1に示す陽極箔1及び陰極箔は、アルミニウム、タンタル、チタン、ニオブ及び酸化ニオブ等の弁金属を材料とする長尺の薄板であり、延伸され、又は粉体を焼結した箔体である。純度は、陽極箔1に関して99.9%程度以上が望ましく、陰極箔に関して99%程度以上が望ましいが、ケイ素、鉄、銅、マグネシウム、亜鉛等の不純物が含まれていても良い。
図1に示すように、陽極箔1は長尺であり、厚み方向中心の芯部2を残して両面に拡面部3が形成され、拡面部3の一方又は両方に複数の分断部4が形成される。拡面部3と分断部4の表面には誘電体皮膜5が形成される。
拡面部3は多孔質構造を有する。陽極箔1の表面から厚み中心に向けて掘り下げられて整列したトンネル状のピット、海綿状のピット、又は密集した粉体間の空隙により成る。陽極箔1の厚み中心には、柔軟性と延伸性に富む、弁金属の地金である芯部2が残る。この拡面部3は、直流エッチング又は交流エッチングにより形成され、若しくは芯部2に金属粒子等を蒸着又は焼結することにより形成される。拡面部3及び芯部2の厚みは特に限定されないが、陽極箔1については、拡面部3の厚みが両面合わせて40〜200μm、芯部2の厚みが8〜60μmの範囲が好ましい。陰極箔については、柔軟性と延伸性を失わない程度に拡面化し、又は拡面化せずにプレーンのままであってもよい。
分断部4は、陽極箔1の表面から芯部2に向けて深さを有する溝である。この分断部4は、芯部2を完全に分断するまでに至らなければ良く、芯部2に至らない深さ、最深部がちょうど芯部2に到達する深さ、及び最深部が芯部2に食い込む深さの何れであってもよい。また、全ての分断部4の深さが統一されている必要はない。
この分断部4は、陽極箔1の帯長手方向に対して直交する幅手方向に形成される。分断部4は、陽極箔1を完全に横断し、又は部分的に横断するように延びる。すなわち、ある分断部4は、陽極箔1の一方の長辺から延びて他方の長辺に至る。また、ある分断部4は、陽極箔1の一方の長辺から箔中心線未満又は箔中心線を超えて延び、他方の長辺には至らない。また、ある分断部4は、陽極箔1の他方の長辺から箔中心線未満又は箔中心線を超えて延び、一方の長辺には至らない。幅手方向に沿って形成されている分断部4同士が繋がっていてもよい。全ての分断部4の延びる向き及び長さが統一されている必要はない。
分断部4の溝幅は、陽極箔1を湾曲させずに平坦にならした際、0を含む50μm以下である。分断部4の溝幅は、陽極箔1の長手方向に沿った長さであり、陽極箔1の表層付近で計測される。分断部4の溝幅が50μm以下であれば、陽極箔1の柔軟性及び延伸性を損なうことなく、誘電体皮膜5の表面積減少に伴う、電解コンデンサの静電容量の大きな低下を抑止できる。
また、分断部4は、陽極箔1の帯長手方向において、10mmの範囲当たり、4箇所以上設けられている。分断部4の数が少ないと、陽極箔1を巻回する際に各分断部4に曲げ応力が分散しても、曲げによる引張り応力に負けて微細なクラックが生じ、更には分断部4から芯部2をも破壊するクラックが生じやすくなる。隣接する分断部4の間隔は、平均ピッチが2.1mm以下であればよく、より望ましくは平均ピッチが1.0mm以下である。平均ピッチが2.1mm以下であれば、分断部4が未形成の陽極箔1と比べて、エリクセン値が大きくなる。
尚、平均ピッチは、陽極箔1の長手方向に沿った断面を数箇所任意に選択し、各断面写真から任意で選択した連続する4本の分断部4の間隔の平均値を各々算出し、更に各平均値の平均値を取って算出した。分断部4の間隔は、陽極箔1の表面付近を計測して得た。
分断部4は、陽極箔1の長手方向に沿って均一な平均ピッチや単位範囲内の数で形成されてもよい。また、陽極箔1が巻回された際の、当該分断部4が形成される箇所における曲率を加味して、平均ピッチや単位範囲内の数を変更することもできる。曲率が小さくなればなるほど、すなわち巻回されたときに外周側になればなるほど、曲げ応力は小さくなり、クラックの発生の虞が低減するからである。
この分断部4は、拡面部3をひび割れさせ、拡面部3を裂き、陽極箔1の厚み方向に沿って拡面部3に切り込みを入れ、拡面部3を切り欠き、又は陽極箔1の厚み方向に沿って拡面部3を掘り込むことにより形成される。従って、分断部4の実態の例は、割れ目、裂け目、切り込み、切り欠き又は掘り込みである。但し、拡面部3を分断していれば、分断部4の態様は特に限られない。分断部4を割れ、裂き、又は切り込みにより形成した場合、分断部4の溝幅は実質的に0となる。実質的に0とは、陽極箔1を湾曲させずに平坦にならした際、分断部4の界面が少なくとも部分的に接している状態をいう。
このような分断部4は、例えば、丸棒へ電極箔を押し付けることで、ひび割れにより形成される。丸棒を利用する形成方法では、陽極箔1の芯部2が長手方向に伸び、その結果芯部2の厚みが薄くなる。しかしながら、分断部4の溝幅を50μm以下とすることで、芯部2の厚みが薄くなり難く、陽極箔1の柔軟性及び延伸性は向上する。この点においても、分断部4の溝幅を50μm以下とすることが好ましい。
分断部4は、巻軸への陽極箔1の巻き始め部分にのみ形成されてもよい。陽極箔1の巻き始め部分は曲率が大きく、クラックが発生しやすい。また、分断部4が位置する箇所における巻回半径に比例させて、平均ピッチを大きく取ったり、当該半径に反比例させて、単位範囲内の数を減少させるようにしてもよい。分断部4の数が減れば減るほど、巻回形コンデンサの静電容量への影響が低減する。
この分断部4は、両面の拡面部3に各々形成されることが望ましいが、巻回時の陽極箔1の延びの観点から、少なくとも、陽極箔1の巻回時に箔外側になって引張り応力を受ける拡面部3に形成されるとよい。
誘電体皮膜5は、電解コンデンサの誘電体となる層であり、陽極箔1がアルミニウム製であれば拡面部3と分断部4を酸化させた酸化アルミニウム層である。この誘電体皮膜5は、拡面部3の表面と分断部4の内表面に形成される。分断部4の内表面とは、溝の内側壁及び溝の底面の全部若しくは一部である。分断部4の内表面にも誘電体皮膜5が形成されると陽極箔1の安定性が増す。また、分断部4の内表面にも誘電体皮膜5を形成しておくと、誘電体皮膜5を修復するためのエージング処理に必要な電気量(A・s/F)が少なくて済む。
この誘電体皮膜5は、拡面部3と分断部4の形成を終えてから化成処理することにより形成される。化成処理では、誘電体皮膜形成ステップの後、所謂減極処理ステップを経て再び誘電体皮膜形成ステップを繰り返す。化成処理では、これら一連のステップを1巡又は2巡以上繰り返す。減極処理ステップは、熱処理ステップ、リン酸処理ステップ又はこれらの両方を含む。
まず、誘電体皮膜形成ステップでは誘電体皮膜5を形成する。この誘電体皮膜形成ステップでは、弁金属や酸化物の溶解性が低く、電気抵抗が低い化成液を用いる。この化成液内で電極箔に電圧が印加される。化成液は、リン酸、クエン酸、アジピン酸、ホウ酸又はこれらの塩を含む水溶液であり、ハロゲンイオン不在の溶液が望ましい。具体的な化成液としては、リン酸二水素アンモニウム、クエン酸アンモニウム、アジピン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、有機酸アンモニア等が挙げられる。好ましくは、リン酸二水素アンモニウムを用いる。
陽極箔1の化成液に対する浸漬及び電圧印加の時間は、5〜120分が望ましく、誘電体皮膜5の耐電圧が所望電圧に達し、電流が一定値に落ち着けばよい。化成の電気量を削減するため、誘電体皮膜形成ステップの前に80℃以上の高温の純水に陽極箔1を浸漬し、予めベーマイト皮膜を形成してもよい。
この誘電体皮膜形成ステップでは、誘電体皮膜5の内部にボイドが孤立している虞がある。そこで、次に熱処理ステップ、リン酸処理ステップ又はこれらの両方を含む減極処理によってボイドを暴露する。
熱処理ステップでは、例えば大気中で450℃以上の温度環境下に晒す。この熱処理ステップでは、陽極箔1の芯部2と誘電体皮膜5の熱膨張率の相違により、誘電体皮膜が伸張させられて表面からボイドに向けた亀裂が入り、またはボイドに封入されていたガスが膨張してボイドが開孔する。これにより、誘電体皮膜内部のボイドが開門し、誘電体皮膜5内部のボイドが表面に暴露される。
リン酸処理ステップでは、ボイドに通じた亀裂や開孔を拡大する。このリン酸処理ステップでは、リン酸溶液又はリン酸二水素アンモニウム溶液に電極箔を浸漬する。これにより、誘電体皮膜形成ステップにおいて化成液がボイドに浸透し易くなる。そのため、再び誘電体皮膜形成ステップが繰り返されると、ボイドにも化成液が浸透し、ボイドを消失させ、又はボイドの大きさやボイドの数を減少させる。更にリン酸処理ステップでは表面の水和酸化物も除去できる。
尚、この誘電体皮膜5は陽極箔1に形成されるが、両極性コンデンサのように陰極箔にも誘電体皮膜5を形成してもよい。陰極箔にも誘電体皮膜5を形成する場合、陰極箔に陽極箔1と同じ分断部4を形成してもよい。
(セパレータ)
セパレータは、陽極箔1と陰極箔とを物理的に離間させてショートを阻止し、また電解液の担持体ともなる。セパレータとしては、クラフト、マニラ麻、エスパルト、ヘンプ、レーヨン等のセルロースおよびこれらの混合紙、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、それらの誘導体などのポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ビニロン系樹脂、脂肪族ポリアミド,半芳香族ポリアミド,全芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、トリメチルペンテン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等があげられ、これらの樹脂を単独で又は混合して用いることができる。
(電解液)
電解液は、溶媒に溶質を溶解し、または更に添加剤が添加された混合液である。溶質は、アニオン及びカチオンの成分が含まれる。溶質は、有機酸の塩、無機酸の塩、又は有機酸と無機酸との複合化合物の塩であり、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。アニオンとなる酸及びカチオンとなる塩基を溶質成分として別々に電解液に添加してもよい。必要に応じ、アニオンとなる酸をカチオンとなる塩基に対し等モル超である過剰に添加してもよい。
溶媒は、γ―ブチロラクトン又はエチレングリコールの少なくとも一方を含む。陽極箔1に分断部4を形成し、拡面部3と分断部4の表面に誘電体皮膜5を形成し、更に電解液の溶媒としてγ−ブチロラクトン又はエチレングリコールの少なくとも一方を用いると、一定時間経過後のCap(静電容量)及び一定時間経過後のtanδ(誘電正接)が改善される。即ち、一定時間経過後のCapの低下やtanδの増大が抑制される。特に、γ−ブチロラクトンは一定時間経過後のESR(等価直列抵抗)も改善される。即ち、一定時間経過後のESRの上昇が抑制される。
電解液に、γ―ブチロラクトンやエチレングリコール以外の溶媒を含んでもよい。例えば、一価アルコール類、多価アルコール類、オキシアルコール化合物類、スルホン系、アミド系、ラクトン類、環状アミド系、ニトリル系、オキシド系などが用いられてもよい。一価アルコール類としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類としては、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール等が挙げられる。スルホン系としては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等が挙げられる。アミド系としては、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N‐ジエチルホルムアミド、N‐メチルアセトアミド、N,N‐ジメチルアセトアミド、N‐エチルアセトアミド、N,N‐ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等が挙げられる。ラクトン類、環状アミド系としては、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、N‐メチル‐2‐ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、イソブチレンカーボネート等が挙げられる。ニトリル系としては、アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル等が挙げられる。オキシド系としてはジメチルスルホキシド等が挙げられる。このなかでもスルホランが好ましく、γ―ブチロラクトン又はエチレングリコールの少なくとも一方とスルホランとを溶媒として用いても、ΔCap、ΔtanδおよびΔESRの改善効果が生じることが確認されている。
有機酸としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アジピン酸、安息香酸、トルイル酸、エナント酸、マロン酸、1,6−デカンジカルボン酸、1,7−オクタンジカルボン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸等のカルボン酸、フェノール類、スルホン酸が挙げられる。また、無機酸としては、ホウ酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、炭酸、ケイ酸等が挙げられる。有機酸と無機酸の複合化合物としては、ボロジサリチル酸、ボロジ蓚酸、ボロジグリコール酸等が挙げられる。
また、これら有機酸の塩、無機酸の塩、ならびに有機酸と無機酸の複合化合物の少なくとも1種の塩としては、アンモニウム塩、四級アンモニウム塩、四級化アミジニウム塩、アミン塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。四級アンモニウム塩の四級アンモニウムイオンとしては、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等が挙げられる。四級化アミジニウムとしては、エチルジメチルイミダゾリニウム、テトラメチルイミダゾリニウムなどが挙げられる。アミン塩のアミンとしては、一級アミン、二級アミン、三級アミンが挙げられる。一級アミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなど、二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、ジブチルアミンなど、三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、エチルジメチルアミン、エチルジイソプロピルアミン等が挙げられる。具体的には、例えば1,7−オクタンジカルボン酸アンモニウム、フタル酸−1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウム、又はフタル酸−1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムが挙げられる。
さらに、添加剤としては、ポリエチレングリコール、硼酸とマンニットやソルビット等の多糖類との錯化合物、硼酸と多価アルコールとの錯化合物、硼酸エステル、ニトロ化合物(o−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、パラニトロベンジルアルコールなど)、リン酸エステルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(巻回状態)
電解コンデンサでは、以上の陽極箔1及び陰極箔をセパレータを介在させて巻回し、巻回により得られた円筒体に対して電解液を含浸させてコンデンサ素子が構成される。このとき、セパレータは、その一端が陽極箔1及び陰極箔の一端よりも飛び出すように重ね合わせておく。そして、飛び出したセパレータを先に巻き始めて巻芯部を作製し、続けて其の巻芯部を巻軸にして、陽極箔1及び陰極箔とセパレータの層を巻回していく。
コンデンサ素子は、有底筒状の外装ケースに収容され、封口体で封止される。外装ケースの材質は、アルミニウム、アルミニウムやマンガンを含有するアルミニウム合金、又はステンレスが挙げられる。封口体はゴムや硬質基板などを用いる。コンデンサ素子の陽極箔1及び陰極箔には、ステッチ、コールドウェルド、超音波溶接、レーザー溶接などによって、引出端子が接続され、封口体から引き出される。外装ケースの開口側端部全周が加締められ、巻回形の電解コンデンサの作製が完了する。最後に、電解コンデンサを通電させることでエージング処理し、巻回等の製造工程中に発生した誘電体皮膜5の欠陥を電解液によって修復する。
図2(a)は、分断部4を形成した後に化成処理を行った電解コンデンサにおいて巻回された陽極箔1の状態を示す模式図であり、(b)は分断部4が形成されていない電解コンデンサにおいて巻回された陽極箔の状態を示す模式図である。
図2(a)に示すように、分断部4が形成された陽極箔1では、巻回時に分断部4が率先して開くため、誘電皮膜の伸張が緩和され、引張り応力が小さくなるため、微細なクラック6の発生が抑制される。また、複数の分断部4が曲げ応力を分担して引き受け、各分断部4に曲げ応力が分散する。そのため、芯部2の破壊に至るような応力集中が抑止され、芯部2の破壊は免れ、陽極箔1は折れ曲がらずに滑らかに湾曲して巻回される。一方、図2(b)に示すように、分断部4が形成されていない陽極箔では、柔軟性及び伸縮性が低下した誘電体皮膜5が巻回時に伸張させられるため、柔軟性及び伸縮性が低下した誘電体皮膜5に引張り応力による微細なクラック6が多数発生する。また、最悪の場合には、そのクラック6のうちの応力集中箇所で、芯部2をも破壊するクラック6が発生する。
また、図3(a)は分断部4を形成した後に化成処理を行った電解コンデンサにおける分断部4の拡大図であり、図3(b)は分断部4が形成されていない電解コンデンサにおける誘電体皮膜5の拡大図である。
図3(a)に示すように、分断部4が形成された後に減極処理を伴う化成処理が施された陽極箔1では、分断部4の内表面にも誘電体皮膜5が形成されている。また、分断部4の内表面に形成された誘電体皮膜5内のボイド7は、減極処理によって消失或いは減少している。一方、図3(b)に示すように、分断部4が形成されていない陽極箔では、巻回により発生したクラック6の内表面に修復化成ステップによる誘電体皮膜5が形成されてはいる。しかしながら、修復化成ステップでは減極処理ができないために、クラック6の内表面に形成された誘電体皮膜5にはボイド7が残存している。
そのため、推測ではあるが、陽極箔に分断部4が形成されていない場合、巻回時に曲げ応力が集中するため、多数の微細なクラック6が発生し、このクラック6の内表面には未酸化の金属部分が露出してしまう場合があるが、分断部4を形成しておくと、各分断部4が曲げ応力を分担するため、曲げ応力の集中が起こりにくく、巻回時のクラック発生が抑制される。巻回時のクラック発生が抑制されると、未酸化の金属部分(アルミニウム)が露出し難い。即ち、分断部4を形成した後に化成処理をすれば、クラック6が生じ難く、また分断部4の内表面にも誘電体皮膜5を形成され、欠陥部が少なく、エージング処理に必要な電気量が少なくなる。
また、この電解コンデンサでは、巻回時に芯部2をも破壊するクラック6が生じにくく、滑らかに湾曲した良好な巻回が可能となる。そのため、密に巻回されたコンデンサ素子を外装ケースに収容でき、体積当たりの静電容量が向上し、または小型で大容量の電解コンデンサが実現できる。
(実施例1)
この実施形態を示す陽極箔1を次のように作製した。まず、基材として厚みが110μm、幅が10mm、長さが55mm、純度99.9重量%以上のアルミニウム箔を用いた。そして、このアルミニウム箔の両面に拡面部3を形成した。具体的には、アルミニウム箔を、液温25℃及び約8重量%の塩酸を主たる電解質とする酸性水溶液に浸し、エッチング処理を行った。エッチング処理では、交流10Hz及び電流密度0.14A/cmの電流を基材に約20分間印加し、アルミニウム箔の両面を拡面化した。
エッチング処理後、両面がエッチング処理されたアルミニウム箔に分断部4を形成した。分断部4は、アルミニウム箔の帯長手方向と直交して発生させた。具体的には、物理的な処理方法として、φ0.5mmの丸棒に対し、当該丸棒とアルミニウム箔の接触する領域の広さを示すラップ角を180度として、アルミニウム箔を押し付けて分断部4を形成した。更に、分断部4の形成後、化成処理を行い、拡面部3と分断部4の表面に誘電体皮膜5を形成した。
この結果、図4及び図5に示すように、実施例1の電極箔は、誘電体皮膜5を有する拡面部3が芯部2の両面に各々厚さ36μmで存在し、厚さ38μmの芯部2が残った。分断部4の溝幅は10μmであった。丸棒の押し付けによって、分断部4は割れにより形成され、分断部4の平均ピッチは70μmで、分断部4の10mm範囲当たりの個数は143個であった。
(実施例2)
実施例1と同一の基材を用い、実施例1と同一のエッチング処理及び化成処理を行った。分断部4の形成処理については、φ6mmの丸棒を用いた他は同一条件である。エッチング処理、分断部4の形成処理、及び化成処理の順番も実施例1と同じく、この順番で行った。
この結果、実施例2の陽極箔1は、実施例1と同一の芯部2、拡面部3及び誘電体皮膜5の厚さを備えていた。分断部4は割れにより形成され、分断部4の平均ピッチは220μmで、分断部4の10mm範囲当たりの個数は45個であった。
(実施例3)
実施例1及び2と同一の基材を用い、実施例1と同一のエッチング処理及び化成処理を行った。分断部4の形成処理についてφ13mmの丸棒を用いた他は、実施例1及び2と同一条件である。この結果、実施例3の陽極箔1は、分断部4において、割れにより形成されている他、分断部4の平均ピッチは950μmで、10mm範囲当たりの個数は10個であった。
(実施例4)
実施例1乃至3と同一の基材を用い、実施例1乃至3と同一のエッチング処理及び化成処理を行った。分断部4の形成処理についてφ16mmの丸棒を用いた他は、実施例1乃至3と同一条件である。この結果、実施例4の陽極箔1は、分断部4において、割れにより形成されている他、分断部4の平均ピッチは2100μmで、10mm範囲当たりの個数は4個であった。
(実施例5)
実施例1乃至4と同一のエッチング処理及び化成処理を行った。分断部4の形成処理についてφ22mmの丸棒を用いた他は、実施例1乃至4と同一条件である。この結果、実施例3の陽極箔1は、分断部4において、割れにより形成されている他、分断部4の平均ピッチ3100μmで、10mm範囲当たりの個数は3個であった。
(比較例1)
実施例1乃至5と同一の基材を用い、実施例1乃至5と同一のエッチング処理及び化成処理を行った。但し、分断部4の形成処理を省いており、分断部4は未形成である。この結果、図6に示すように、実施例1乃至5と同じく、比較例1の陽極箔は、芯部2の両面に各々拡面部3を備え、各拡面部3は、誘電体皮膜5を備え、誘電体皮膜5を備えた拡面部3の厚さは各々厚さ36μmとなり、芯部2の厚さは38μmとなっていた。
(エリクセン試験)
これら実施例1乃至5の陽極箔1、及び比較例1の陽極箔に対してエリクセン試験を行った。エリクセン試験では、内径33mmを有するダイスとしわ押えで、実施例1乃至5の陽極箔1及び比較例1の陽極箔を10kNで挟み込み、たがね状を有するポンチで押し込んだ。たがね状のポンチは、幅30mmで、先端部が断面視φ4mmの球面である。陽極箔1の帯長手方向に直交させるようにして、ポンチのたがね部位を押し込んだ。ポンチの押し込み速度は0.5mm/minとした。
このエリクセン試験の結果を図7に示す。図7は、横軸を分断部4の平均ピッチ、縦軸をエリクセン値としたグラフである。図7に示すように、比較例1のエリクセン値が1.4mmであったのに対し、実施例5のエリクセン値は1.5mmとなっていた。すなわち、分断部4を設けることで巻回時の曲げ応力が分散し、陽極箔1の柔軟性及び延伸性が向上することがわかる。
また、分断部4の平均ピッチを2100μm以下とすると、エリクセン値は1.7mm以上となり、分断部4が未形成であった場合と比べて明確な差が生じた。すなわち、平均ピッチ2100μm以下で分断部4を設けることで巻回時の曲げ応力が良好に分散し、陽極箔1に良好な柔軟性及び延伸性が付与されることがわかる。
特に、分断部4の平均ピッチを950μm以下とすると、エリクセン値は2.0mm以上となり、分断部4が未形成であった場合と比べて飛躍的に優れた結果となった。すなわち、平均ピッチ950μm以下で分断部4を設けることで巻回時の曲げ応力が極めて良好に分散し、陽極箔1に極めて良好な柔軟性及び延伸性が付与されることがわかる。さらには、分断部4の平均ピッチを220μm以下とすると、エリクセン値は2.6mm以上となり、分断部4が未形成であった場合と比べてさらに飛躍的に優れた結果となった。
(巻回試験)
実施例1の陽極箔1と比較例1の陽極箔を実際に巻回し、コンデンサ素子を作製した。巻回した実施例1の陽極箔1と比較例1の陽極箔は、共に、幅が5.6mm、長さが125mmの寸法を有していた。結果を図8に示す。図8は、巻回された実施例1の陽極箔1と比較例1の陽極箔の写真である。図8の(a)に示すように、比較例1の陽極箔を巻回すると、巻芯部付近については各所で多数の折れ曲がりが発生していることがわかる。また、巻芯部から離れて曲率が大きくなった中層付近でも、各所で多数の折れ曲がりが発生していることがわかる。更に、コンデンサ素子の外周面付近でも、一部に折れ曲がりが発生していることがわかる。
一方、図8の(b)に示すように、実施例1の陽極箔1を巻回すると、コンデンサ素子の外周面付近はおろか、巻芯部付近であっても、折れ曲がりが未発生であり、滑らかに湾曲して巻回されていることがわかる。
従って、図8の(a)に示すように、同長の陽極箔を巻回したコンデンサ素子の直径は、比較例1において7.36mmにまで広がっているのに対し、図8の(b)に示すように、同長の陽極箔1を巻回したコンデンサ素子の半径は、実施例1において7.10mmに収まった。
(実施例6)
分断部4を備える実施例1の陽極箔1を用いて実施例6の電解コンデンサを作製した。実施例6のコンデンサ素子には、溶媒としてγ−ブチロラクトンと溶質としてフタル酸−1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムを含む電解液を含浸させた。電解液全量に対して65wt%のγ−ブチロラクトンが添加され、また電解液全量に対して35wt%のフタル酸−1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムが添加された。実施例6のコンデンサ素子に関し、耐圧は35V、静電容量は680μF、及びサイズはφ10×10Lである。
(比較例2)
比較例1の分断部4を備えていない陽極箔を用いて比較例2の電解コンデンサを作製した。比較例2の電解コンデンサは、分断部4が未形成である点を除き、用いられた陰極箔、セパレータ及び電解液の組成等、実施例6と同様に作製された。
(実施例7)
分断部4を備える実施例1の陽極箔1を用いて実施例7の電解コンデンサを作製した。実施例7の電解コンデンサは、電解液の組成を除き、用いられた陰極箔及びセパレータの種類等、実施例6と同様に作製された。但し、実施例7のコンデンサ素子に関し、耐圧は400V、静電容量は820μF、サイズはφ30×50Lである。また、実施例7では、エチレングリコールと1,7−オクタンジカルボン酸アンモニウムと硼酸とマンニットを含む電解液を含浸させた。電解液全量に対して83wt%のエチレングリコールが添加され、また電解液全量に対して12wt%の1,7−オクタンジカルボン酸アンモニウムが添加され、電解液全量に対して3wt%の硼酸が添加され、また電解液全量に対して2wt%のマンニットが添加された。
(比較例3)
比較例1の分断部4を備えていない陽極箔を用いて比較例3の電解コンデンサを作製した。比較例3の電解コンデンサは、分断部4が未形成である点を除き、用いられた陰極箔、セパレータ及び電解液の組成等、実施例7と同様に作製された。
(エージング処理評価)
作製された実施例6及び7と比較例2及び3の電解コンデンサを、100℃の温度条件にて定格電圧を印加してエージング処理を行った。このエージング処理の間、陽極端子と陰極端子との間に流れた電流変化を測定した。尚、各電解コンデンサに対してエージング処理開始時点で流した電流値は同値である。図9及び10は、時間に対する電流変化を示すグラフである。
図9に示すように、誘電体皮膜5が表面に形成された分断部4を備える実施例6の陽極箔1を用いた電解コンデンサでは、5分弱で電流値が減少し始めた。これに対し、分断部4が未形成の陽極箔を用いた比較例2の電解コンデンサでは、6分を超えて電流値の減少が見られた。即ち、図9に示すように、誘電体皮膜5が表面に形成された分断部4を備え、またγ−ブチロラクトンを電解液の溶媒とした実施例6の電解コンデンサは、エージング開始からの電流値と時間の積において、分断部4が未形成でγ−ブチロラクトンを溶媒とした比較例2の電解コンデンサと比べてエージング処理に要する電気量が削減されていることが確認された。
また、図10に示すように、誘電体皮膜5が表面に形成された分断部4を備える実施例7の陽極箔1を用いた電解コンデンサでは、40分弱で電流値が減少し始めた。これに対し、分断部4が未形成の陽極箔を用いた比較例3の電解コンデンサでは、46分を超えて電流値の減少が見られた。即ち、図10に示すように、誘電体皮膜5が表面に形成された分断部4を備え、またエチレングリコールを電解液の溶媒とした実施例7の電解コンデンサは、エージング開始からの電流値と時間の積において、分断部4が未形成でエチレングリコールを溶媒とした比較例3の電解コンデンサと比べてエージング処理に要する電気量が削減されていることが確認された。
(実施例8)
分断部4を備える実施例1の陽極箔1を用いて実施例8の電解コンデンサを作製した。実施例8の電解コンデンサは、実施例6と同様の方法で作製された。実施例8では、エチレングリコールと1,7−オクタンジカルボン酸アンモニウムと硼酸とマンニットとポリアルキレングリコールとニトロ化合物が添加された電解液Cを含浸させた。100重量部のエチレングリコールに対し、3重量部の1,7−オクタンジカルボン酸アンモニウムが添加され、6重量部の硼酸が添加され、9重量部のマンニットが添加され、5重量部のポリアルキレングリコールが添加され、2重量部のニトロ化合物が添加された。
(比較例4)
比較例1の分断部4を備えていない陽極箔を用いて比較例4の電解コンデンサを作製した。比較例4の電解コンデンサは、分断部4が未形成である点を除き、用いられた陰極箔、セパレータ及び電解液の組成等、実施例8と同様に作製された。
(実施例9)
分断部4を備える実施例1の陽極箔1を用いて実施例9の電解コンデンサを作製した。実施例9の電解コンデンサは、実施例6と同様の方法で作製された。実施例9では、γ−ブチロラクトンとフタル酸−1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムとニトロ化合物が含まれる電解液Dを含浸させた。100重量部のγ−ブチロラクトンに対し、53重量部のフタル酸−1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリニウムが添加され、1.5重量部のニトロ化合物が添加された。
(比較例5)
比較例1の分断部4を備えていない陽極箔を用いて比較例5の電解コンデンサを作製した。比較例5の電解コンデンサは、分断部4が未形成である点を除き、用いられた陰極箔、セパレータ及び電解液の組成等、実施例9と同様に作製された。
(実施例10)
分断部4を備える実施例1の陽極箔1を用いて実施例10の電解コンデンサを作製した。実施例10の電解コンデンサは、実施例6と同様の方法で作製された。実施例10では、γ−ブチロラクトンとエチレングリコールとスルホランとフタル酸−1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムとニトロ化合物が含まれる電解液Eを含浸させた。γ−ブチロラクトンとエチレングリコールとスルホランにより成る溶媒100重量部のうち、γ−ブチロラクトンは44重量部、エチレングリコールは28重量部、スルホランは28重量部を占める。そして、この100重量部の溶媒に対し、13重量部のフタル酸−1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリニウムが添加され、1重量部のニトロ化合物が添加された。
(比較例6)
比較例1の分断部4を備えていない陽極箔を用いて比較例6の電解コンデンサを作製した。比較例6の電解コンデンサは、分断部4が未形成である点を除き、用いられた陰極箔、セパレータ及び電解液の組成等、実施例10と同様に作製された。
(ΔESR変化率評価)
実施例8乃至10及び比較例4乃至6の電解コンデンサの初期ESR、及び2000時間、105℃での定格電圧印加後のESR(試験後ESR)を100kHzの周波数にて測定した。そして、ESRの変化率であるΔESRを算出し、比較例4に対する実施例8のΔESR変化率、比較例5に対する実施例9のΔESR変化率、及び比較例6に対する実施例10のΔESR変化率を算出した。ΔESRは、初期ESR(a)を基準にした試験後ESR(a)の変化率であり、(a−a)/a×100の式より算出した。ΔESR変化率は、比較例のΔESR(b)を基準にした実施例のΔESR(b)の変化率であり、(b−b)/b×100の式より算出した。
その結果を下記表1に示す。表1中、EGはエチレングリコールを示し、GBLはγ−ブチロラクトンを示し、SLはスルホランを示す。尚、実施例8及び比較例4の電解コンデンサは、定格耐電圧450V、定格容量1200μFでφ35×60Lの容積を有する。実施例9及び比較例5の電解コンデンサは、定格耐電圧35V、定格容量680μFでφ10×10Lの容積を有する。実施例10及び比較例6の電解コンデンサは、定格耐電圧63V、定格容量100μFでφ8×10Lの容積を有する。
表1に示すように、実施例9は比較例5と比べてΔESRが改善した。また実施例10は比較例6と比べてΔESRが改善した。理由は不明であるが、誘電体皮膜5を表面に形成した分断部4を備え、電解液の溶媒にγ−ブチロラクトンを含むと、ESRの経時的変化を小さく抑えられることが確認された。
(ΔCap変化率評価)
実施例8乃至10及び比較例4乃至6の電解コンデンサの初期Cap、及び2000時間、105℃での定格電圧印加後のCap(試験後Cap)を120kHzの周波数にて測定した。そして、Capの変化率であるΔCapを算出し、比較例4に対する実施例8のΔCap変化率、比較例5に対する実施例9のΔCap変化率、及び比較例6に対する実施例10のΔCap変化率を算出した。ΔCapは、初期Cap(c)を基準にした試験後Cap(c)の変化率であり、(c−c)/c×100の式より算出した。ΔCap変化率は、比較例のΔCap(d)を基準にした実施例のΔCap(d)の変化率であり、(d−d)/d×100の式より算出した。
その結果を下記表2に示す。
表2に示すように、実施例8乃至10の電解コンデンサは、対応の比較例と比べてΔCapが大きく改善した。推論であるが、陽極箔に分断部4が形成されることにより、誘電体皮膜5が形成されている拡面部3及び分断部4に電解液が入り込みやすくなり、実施例8乃至10の電解コンデンサは、対応の比較例と比べてΔCapが改善されたと考えられる。
特に、実施例8はΔCap変化率が大きく改善した。即ち、誘電体皮膜5を表面に形成した分断部4を備え、電解液の溶媒にエチレングリコールを含むと、Capの経時的変化を小さく抑えられることが確認された。この理由としては、推論であるが、エチレングリコールは末端に水酸基を有しているため、γ−ブチロラクトンと比べ誘電体皮膜5との親和性が高く、Capの経時的変化を抑制できたと考えられる。
(Δtanδ変化率評価)
実施例8乃至10及び比較例4乃至6の電解コンデンサの初期tanδ、及び2000時間、105℃での定格電圧印加後のtanδ(試験後tanδ)を表3に示す。tanδの変化率であるΔtanδを算出し、比較例4に対する実施例8のΔtanδ変化率、比較例5に対する実施例9のΔtanδ変化率、及び比較例6に対する実施例10のΔtanδ変化率を算出した。Δtanδは、初期tanδ(e)を基準にした試験後tanδ(e)の変化率であり、(e−e)/e×100の式より算出した。Δtanδ変化率は、比較例のΔtanδ(f)を基準にした実施例のΔtanδ(f)の変化率であり、(f−f)/f×100の式より算出した。
その結果を下記表3に示す。
表3に示すように、実施例8乃至10の電解コンデンサは、対応の比較例と比べてΔtanδが大きく改善した。推論であるが、陽極箔に分断部4が形成されることにより、誘電体皮膜5が形成されている拡面部3及び分断部4に電解液が入り込みやすくなり、実施例8乃至10の電解コンデンサは、対応の比較例と比べてΔtanδが小さくなったと考えられる。
特に、実施例8はΔtanδ変化率が大きく改善した。即ち、誘電体皮膜5を表面に形成した分断部4を備え、電解液の溶媒にエチレングリコールを含むと、tanδの経時的変化を小さく抑えられることが確認された。この理由としては、推論であるが、エチレングリコールは末端に水酸基を有しているため、γ−ブチロラクトンと比べ誘電体皮膜との親和性が高く、tanδの経時的変化を抑制したと考えられる。
1 陽極箔
2 芯部
3 拡面部
4 分断部
5 誘電体皮膜
6 クラック
7 ボイド

Claims (6)

  1. 陽極箔及び陰極箔がセパレータを介して巻回され、電解液が含浸されて成るコンデンサ素子を備え、
    前記陽極箔は、
    帯状の箔により成り、
    前記箔の表面に形成された拡面部と、
    前記箔のうち、前記拡面部を除いた残部である芯部と、
    前記拡面部を分断する複数の分断部と、
    前記拡面部と前記分断部の表面に形成された誘電体皮膜と、
    を有し、
    前記電解液は、エチレングリコール又はγ−ブチロラクトンの少なくとも一方を含むこと、
    を特徴とする電解コンデンサ。
  2. 前記分断部は、
    前記箔を完全に横断し、又は部分的に横断するように延在すること、
    を特徴とする請求項1記載の電解コンデンサ。
  3. 前記分断部は、
    平均ピッチが2.1mm以下の間隔を空けて設けられていること、
    を特徴とする請求項1又は2記載の電解コンデンサ。
  4. 前記分断部は、
    平均ピッチが1.0mm以下の間隔を空けて設けられていること、
    を特徴とする請求項1又は2記載の電解コンデンサ。
  5. 前記分断部は、前記箔を平坦にした状態で溝幅が0を含む50μm以下であること、
    を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電解コンデンサ。
  6. 前記分断部は、前記拡面部が割れて成り、前記箔を平坦にした状態で溝幅が実質的に0であること、
    を特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の電解コンデンサ。
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