JP2019067900A - 積層構造体、スピン変調素子及び磁気記録システム - Google Patents

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勝之 中田
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Shogo Yonemura
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Shigeki Nakagawa
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Ji Shi
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月 王
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Abstract

【課題】電界により強磁性体のスピン分極率を変調でき、かつ、得られたデータを安定的に保持できる積層構造体、スピン変調素子及び磁気記録システムを提供することを目的とする。【解決手段】本発明の一態様にかかる積層構造体は、強磁性層と、マルチフェロイック層と、前記強磁性層と前記マルチフェロイック層との間に挟まれる酸化防止層と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、積層構造体、スピン変調素子及び磁気記録システムに関する。
磁性体が有するスピンを利用した素子は、様々な用途で用いられている。例えば、強磁性層と非磁性層の多層膜からなる巨大磁気抵抗(GMR)素子、非磁性層に絶縁層(トンネルバリア層、バリア層)を用いたトンネル磁気抵抗(TMR)素子等の磁気抵抗効果素子が知られている。磁気抵抗効果素子は、磁気センサ、高周波部品、磁気ヘッド、磁気記録媒体及び不揮発性ランダムアクセスメモリ(MRAM)等に利用されている。
磁気抵抗効果素子は、二つの強磁性層の磁化の向きの違いに伴う抵抗値変化を出力する。二つの強磁性層の磁化の向きが平行の状態を“0”とし、二つの強磁性層の磁化の向きが反平行の状態を“1”とすることで、磁気抵抗効果素子は2値のデータを出力できる。
一方で、近年のデータの高容量化に伴い、データをより高密度に集積することが求められている。その一つの手段として、データを2値以上の多値で記録できる素子の開発が進められている。例えば、特許文献1及び2には、電界を利用して強磁性層のスピン分極率を変調することで、データを多値で記録できる素子が記載されている。
特開2016−63024号公報 特開2016−63062号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載の素子において、金属化合物からなる強磁性層は、酸化物からなる層上に積層されている。酸化物を構成する酸素は、時間の経過とともに金属化合物からなる強磁性層にマイグレーションする。強磁性層の酸化は、強磁性層の磁気特性を低下させる原因となりうる。すなわち、スピン分極率が変化する強磁性層の磁化の異方性(磁化のピン止め)が不安定になり、熱等の外因によりデータを安定的に保持できない場合がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電界により強磁性体のスピン分極率を変調でき、かつ、得られたデータを安定的に保持できる積層構造体、スピン変調素子及び磁気記録システムを提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)第1の態様にかかる積層構造体は、強磁性層と、マルチフェロイック層と、前記強磁性層と前記マルチフェロイック層との間に挟まれる酸化防止層と、を備える。
(2)上記態様にかかる積層構造体において、前記酸化防止層の厚みが0.2nm以上5.0nm以下であってもよい。
(3)上記態様にかかる積層構造体において、前記強磁性層がハーフメタルであってもよい。
(4)上記態様にかかる積層構造体において、前記強磁性層は、XYZの組成式で表記されるホイスラー合金を含み、前記組成式中のXは周期表上でCo、Fe、Ni、Cu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、YはMn、V、Cr、Ti族の遷移金属又はXの元素種であり、Zは、III族からV族の典型元素であってもよい。
(5)上記態様にかかる積層構造体において、前記マルチフェロイック層は、BiFeO、BiMnO、GaFeO、AlFeO、(Ga,Al)FeO、YMnO、CuFeO、Cr、NiBi13I、LiMnPO、YFe12、TbPO、LiCoPOからなる群から選択されるいずれかを含んでもよい。
(6)上記態様にかかる積層構造体において、前記酸化防止層を構成する元素のイオン化傾向が、前記マルチフェロイック層を構成する元素のイオン化傾向より小さくてもよい。
(7)上記態様にかかる積層構造体において、前記酸化防止層は、Ta、Pt、Ru、Ag、Au、Cu、Cr、Ti、Ni、Pd、Irからなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
(8)第2の態様にかかるスピン変調素子は、上記態様にかかる積層構造体と、前記積層構造体の前記強磁性層に順に積層された非磁性層及び第2強磁性層と、を備える。
(9)第3の態様にかかる磁気記録システムは、上記態様にかかる積層構造体と、前記積層構造体のマルチフェロイック層に磁界を印加する磁界印加手段と、電界を印加する電界印加手段と、を備える。
上記態様にかかる積層構造体及びスピン変調素子は、電界により強磁性体のスピン分極率を変調でき、かつ、得られたデータを安定的に保持できる。
本実施形態にかかるスピン変調素子を模式的に示した図である。 スピン変調素子の動作を説明するための模式図である。 本実施形態にかかる磁気記録システムを模式的に示した図である。
以下、本実施形態について、図面を用いてその構成を説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではない。
(スピン変調素子)
図1は、本実施形態にかかるスピン変調素子を模式的に示した図である。図1に示すスピン変調素子100は、積層構造体10と非磁性層20と第2強磁性層30とを備える。また第2強磁性層30の非磁性層20と反対側の面には電極40を備えてもよい。
「積層構造体」
積層構造体10は、強磁性層1とマルチフェロイック層2と酸化防止層3とを備える。図1では、積層構造体10をスピン変調素子100の構成の一部として図示しているが、積層構造体10のみでもAMR(磁気異方性)センサ等として用いることもできる。
強磁性層1は、一方向に磁化が配向した磁性体を含む。強磁性層1を構成する磁性体は、磁気異方性の強い物質を用いることが好ましい。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属及びこれらの金属を1種以上含み強磁性を示す合金を用いることができる。またこれらの金属と、B、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とを含む合金を用いることもできる。具体的には、FeやCo−Fe等が挙げられる。
また強磁性層1は、ハーフメタルであることが好ましい。ハーフメタルは、片方の電子スピンが金属的なバンド構造を示し、もう片方の電子スピンが絶縁体的なバンド構造を示す物質である。ハーフメタルは、フェルミ面では理想的には1に近い大きなスピン分極率を示す。
またハーフメタルとして、ホイスラー合金、マグネタイト(Fe)、ペロブスカイト型Mn酸化物等が知られているが、ホイスラー合金が特に好ましい。ホイスラー合金は、III−V族半導体との高い格子整合性、室温以上のキュリー温度、フェルミ面近傍での大きなバンドギャップ等の特徴を有し、室温においても高いスピン分極率を示すことができる。
ホイスラー合金は、XYZの化学組成をもつ金属間化合物を含み、Xは、周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、Yは、Mn、V、CrあるいはTi族の遷移金属でありXの元素種をとることもでき、Zは、III族からV族の典型元素である。例えば、CoFeSi、CoMnSi及びCoMn1−aFeAlSi1−bなどが挙げられる。
マルチフェロイック層2は、磁気秩序と強誘電秩序の性質を併せ持つマルチフェロイック材料を有する。マルチフェロイック材料としては、BiFeO、BiMnO、GaFeO、AlFeO、(Ga,Al)FeO、YMnO、CuFeO、Cr、NiBi13I、LiMnPO、YFe12、TbPO、LiCoPOからなる群から選択されるいずれかを用いることができる。またマルチフェロイック材料は、特性を失わない範囲で、上記の物質の一部の元素を置換したものを用いることができる。例えば、XYOと表記される物質のXの一部を他の3価の元素で置換したり、Yの一部を3d遷移金属の他の元素で置換してもよい。またマルチフェロイック材料に酸素欠損等が生じていてもよい。これらの材料の中でもBiFeOは、キュリー温度及びネール温度が何れも高く、広い温度域で強誘電特性及び強磁性特性を示すため、特に好ましい。
マルチフェロイック材料は、結晶構造によってその特性が異なる。結晶構造が菱面体晶の場合は、強誘電特性及び強磁性特性の双方を示し、特に強磁性特性に優れる。これに対し、結晶構造が正方晶の場合は、強誘電特性に優れるが、強磁性特性はあまり示さない。
マルチフェロイック層2は、強磁性層1に少なくとも二つの影響を与える。第1の影響はマルチフェロイック層2の有する強磁性特性に由来するものであり、第2の影響はマルチフェロイック層2の有する強誘電特性に由来するものである。
マルチフェロイック層2が強磁性特性を示すと、マルチフェロイック層2の磁化と強磁性層1の磁化との交換相互作用により、強磁性層1の磁化の向きが一方向に強く配向する(第1の影響)。すなわち、マルチフェロイック層2は、その強磁性特性により強磁性層1の磁化をピン止めする効果を有する。強磁性層1の磁化が一方向に強く固定されると、対向する第2強磁性層30との間で発現する磁気抵抗効果が大きくなり、磁気抵抗効果に伴う抵抗値変化率(MR比)を大きくなる。
一方で、マルチフェロイック層2が強誘電特性を示すと、マルチフェロイック層2は誘電分極する。誘電分極によって生じる電荷は、強磁性層1内のマルチフェロイック層2側の界面に電荷を誘起し、その界面電荷による電界は強磁性層1のバンド構造を変え、強磁性層1のスピン分極率を変調する(第2の影響)。スピン分極率が変調すると、スピン変調素子100の多値化が実現できる。例えば、強磁性層1のスピン分極率が1.0で第2強磁性層30と平行な場合と、強磁性層1のスピン分極率が0.5で第2強磁性層30と平行な場合とでは、強磁性層1と第2強磁性層30の間の抵抗値が異なるためである。
マルチフェロイック層2が強磁性層1に与える影響としては、第1の影響及び第2の影響のいずれも重要である。結晶構造が菱面体晶の場合は、強磁性特性に優れるため、第1の影響を強磁性層1に大きく与えることができる。これに対し、結晶構造が正方晶の場合は、強誘電特性に優れるため、第2の影響を強磁性層1に大きく与えることができる。
酸化防止層3は、強磁性層1とマルチフェロイック層2の間に挟まれる。上述のように、マルチフェロイック層2は誘電特性を示すため絶縁体であり、酸化物を含む。酸化防止層3は、マルチフェロイック層2から強磁性層1への酸素のマイグレーションを防ぐ。
酸化防止層3は金属又は合金を含み、イオン化傾向の小さい金属又は合金を含むことが好ましい。例えば、酸化防止層3は、Ta、Pt、Ru、Ag、Au、Cu、Cr、Ti、Ni、Pd、Irからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
一般に、イオン化傾向の大きい金属は、酸素と結合しやすい。そのため酸化防止層3を構成する元素のイオン化傾向は、マルチフェロイック層2を構成する元素のイオン化傾向より小さいことが好ましい。ここで、「マルチフェロイック層2を構成する元素」とは、マルチフェロイック層2を構成する元素のうち酸素と立体構造をとる元素を意味する。例えば、ABOで表記されるペロブスカイト構造の場合は、B元素に対応する。そのため例えば、上述のようにマルチフェロイック層2にCr、Co、Fe等が用いられている場合は、これらの元素よりイオン化傾向の小さいPt、Ag、Au、Cu、Ni、Pd、Ir等を用いることが特に好ましい。
酸化防止層3の厚みは、0.2nm以上5.0nm以下であることが好ましく、0.5nm以上3.0nm以下であることがより好ましく、0.8nm以上2.0nm以下であることがさらに好ましい。上述のように、マルチフェロイック層2の強磁性特性に伴い強磁性層1に与える第1の影響は、交換磁気結合により生じる。そのため、酸化防止層3の厚みが厚すぎると、強磁性層1に与える第1の影響が弱まってしまう。
酸化防止層3は、強磁性層1の酸化を防ぐという機能だけでなく、強磁性層1とマルチフェロイック層2との間に働く交換磁気結合の強度を調整するという機能も有する。すなわち、酸化防止層3の膜厚を変化させることで、マルチフェロイック層2が強磁性層1に及ぼす第1の影響の強さを調整できる。
「非磁性層」
非磁性層20は絶縁体でも、半導体でも、金属でもよい。非磁性層20が絶縁体からなる場合、強磁性層1、非磁性層20及び第2強磁性層30からなる積層体は、トンネル磁気抵抗(TMR:Tunneling Magnetoresistance)素子となり、非磁性層20が半導体もしくは金属からなる場合、強磁性層1、非磁性層20及び第2強磁性層30からなる積層体は、巨大磁気抵抗(GMR:Giant Magnetoresistance)素子となる。
非磁性層20には、公知の材料を用いることができる。例えば、非磁性層20が金属からなる場合、その材料としては、Cu、Au、Ag等を用いることができる。
一方で、例えば非磁性層20が絶縁体もしくは半導体からなる場合、その材料としては、Hexagonal−BN、Graphene、HfO、Y、TaO、GaO、TiO、InO、BaO、CaF、Al、SiO、MgO、及び、MgAl等を用いることができる。これらの中でも、MgOやMgAlはコヒーレントトンネルが実現できる材料であるため、MR比を大きくすることができる。またMgOやMgAlのMg、Alの一部もしくはすべてが、Zn、Cd、Ag、Pt、Pb、Ga、In、Ge等に置換された材料等も非磁性層20として用いることができる。
ここで、非磁性層20から強磁性層1に酸素がマイグレーションすることも考えられる。そのため、非磁性層20は、イオン化傾向が大きい元素の酸化物であることが好ましい。例えば、MgO、MgAlに含まれるMg、Alは、イオン化傾向が高く、酸素と結合しやすい。換言すると、酸素を放出しにくく、強磁性層1への酸素のマイグレーションを抑制できる。
このようにTMR素子のように、酸化物からなる非磁性層と強磁性層とが隣接する素子は報告されていた。しかしながら、TMR素子では、非磁性層としてMgO、MgAl等を用いることが一般的である。すなわち、非磁性層から強磁性層へマイグレーションする酸素量は少なく、強磁性層の磁気特性に与える影響は限定的であった。これに対し、マルチフェロイック層2から強磁性層1へマイグレーションする酸素量は、TMR素子における非磁性層と比較して多く、大きな影響を及ぼすものであった。すなわち、この課題は、マルチフェロイック層2と強磁性層1とが隣接する本実施形態にかかるスピン変調素子100(積層構造体10)において見出されたものである。
「第2強磁性層」
第2強磁性層30は、強磁性層1と非磁性層20と磁気抵抗効果素子を形成する。強磁性層1が固定層の場合、第2強磁性層30は自由層となり、強磁性層1が自由層の場合、第2強磁性層30は固定層となる。
第2強磁性層30の材料には、公知のものを用いることができる。例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属及びこれらの金属を1種以上含み強磁性を示す合金を用いることができる。またこれらの金属と、B、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とを含む合金を用いることもできる。具体的には、Co−FeやCo−Fe−Bが挙げられる。またより高い出力を得るために、第2強磁性層30にホイスラー合金を用いてもよい。
上述のように、本実施形態にかかるスピン変調素子100は、酸化防止層3により強磁性層1へ酸素がマイグレーションすることを防ぐことができる。その結果、強磁性層1の磁気特性が変化することを防ぎ、強磁性層1の磁化状態を安定化させることができる。マルチフェロイック層2の強磁性特性に伴う第1の影響と強誘電特性に伴う第2の影響を大きく与えるという観点からは、強磁性層1とマルチフェロイック層2との間に層を設けることは当業者にとっては想定しにくいものである。しかしながら、当該界面に酸化防止層3を設けることでスピン変調素子100の特性を高めることができた。
(スピン変調素子の製造方法)
スピン変調素子100の製造方法について説明する。まず、基材を準備する。基材は、積層構造体10の積層方向に電圧を印加するために、導電性を有する材料を用いることが好ましい。基材が導電性を有することで、電極を兼ねることができる。
次いで、準備した基材上に、マルチフェロイック層2を積層する。積層する方法としては、スパッタリング法、CVD(化学気相成長)法、分子線エピタキシャル(MBE)法等を用いることができる。
次いで、マルチフェロイック層2上に、酸化防止層3、強磁性層1、非磁性層20、第2強磁性層30を順に積層する。これらの層は、GMR素子やTMR素子等の磁気抵抗効果素子の強磁性層及び非磁性層と同様の方法で積層することができる。例えば、スパッタリング法、蒸着法、レーザアブレーション法、MBE法等を用いることができる。また第2強磁性層30の非磁性層20と反対側の面には、電極を積層することが好ましい。電極を設けることで、強磁性層1全面に均一に電流を流すことができる。
(スピン変調素子の動作)
次いで、スピン変調素子の動作を説明すると共に、どのように多値化が実現されるかについて説明する。
図2は、スピン変調素子100の動作を説明するための模式図である。スピン変調素子100は、第2強磁性層30と強磁性層1に流れる電流を制御するスイッチSW1と、マルチフェロイック層2に電場を印加するスイッチSW2とが接続されている。
まず図2(a)及び(b)に示すように、スイッチSW2が開いている場合、マルチフェロイック層2には電場が印加されない。そのため、スピン変調素子100は、第2強磁性層30と強磁性層1の磁化の向きが反平行の第1状態(図2(a))と、第2強磁性層30と強磁性層1の磁化の向きが平行の第2状態(図2(b))と、の2状態をとる。強磁性層1の磁化の向きは、スイッチSW1を閉じることで、積層体の積層方向にスピン偏極電流を流し、スピントランスファートルク(STT)により反転させる。
次いで、図2(c)及び(d)に示すように、スイッチSW2を閉じ、強磁性層1と電極40との間(マルチフェロイック層2)に電界を加える。マルチフェロイック層2に電界が印加されると、マルチフェロイック層2は誘電分極の方向を反転する。誘電分極によって生じる電界は、強磁性層1のバンド構造を変え、強磁性層1のスピン分極率を変調する。
例えば、マルチフェロイック層2に正電圧を印加する(図2(c)電圧V方向)と、電界によって強磁性層1のダウンスピンのバンド構造にバンドベンディングが誘起される。そのため、強磁性層1のマルチフェロイック層2側の界面に少数スピンキャリアが誘起され、強磁性層1のスピン分極率は減少する。図2(c)及び(d)では、スピン分極率の減少を矢印の大きさで模式的に図示している。
図2(c)及び(d)に示すように、強磁性層1のスピン分極率が減少した状態でも、第2強磁性層30と強磁性層1の磁化の向きが反平行の第3状態(図2(c))と、第2強磁性層30と強磁性層1の磁化の向きが平行の第4状態(図2(d))と、の2状態をとる。
すなわちスピン変調素子100は、スイッチSW1とスイッチSW2を制御することで、4つの状態が生み出される。4つの状態は、第1状態、第3状態、第4状態、第2状態の順で抵抗値が大きい。
上記ではスイッチSW2を用いてマルチフェロイック層2の誘電状態を調整し、第3状態及び第4状態を生み出す方法について説明した。しかしながら、スピン変調素子の動作は、マルチフェロイック層2の誘電状態の制御によるスピン分極率の調整に伴うものに限られない。
例えば、マルチフェロイック層2に磁界及び電界を外部から印加してもよい。マルチフェロイック層2は、磁気秩序と強誘電秩序の性質を併せ持つ。そのため、外部から磁界及び電界を印加することで、マルチフェロイック層2の磁化方向を制御できる。マルチフェロイック層2の磁化方向が変わると、交換磁気相互作用により強磁性層1の磁化の向きが変化する。すなわち、スイッチSW1及びスイッチSW2に変えて、マルチフェロイック層2に磁界を印加する磁界印加手段及び電界を印加する電界印加手段を設けることで、スピン変調素子100における強磁性層1の磁化状態を制御してもよい。
「磁気記録システム」
図3は本実施形態にかかる磁気記録システムの断面模式図である。図3に示す磁気記録システム101は、積層構造体10と積層構造体10のマルチフェロイック層2に電界を印加する電界印加手段50と、磁界を印加する磁界印加手段60とを備える。すなわち、スピン変調素子100の非磁性層20及び第2強磁性層30の代わりに、電界印加手段50及び磁界印加手段60が設けられ、電気的に接続する配線が除去されている。
電界印加手段50及び磁界印加手段60は、公知のものを用いることができる。電界印加手段50及び磁界印加手段60は、外部電界及び外部磁界をマルチフェロイック層2に加えることで、マルチフェロイック層2のスピン分極率を変更する。電界印加手段50及び磁界印加手段60は、電界及び磁界をスポット印加することで、マルチフェロイック層2のスピン分極率を、面内方向の領域毎に変えることができる。
強磁性層1の磁化は、マルチフェロイック層2の磁化との交換相互作用によりその配向方向が変化する。そのため、マルチフェロイック層2のスピン分極率を面内方向の領域毎に変えることで、強磁性層1の面内方向の磁化の向きを制御できる。強磁性層1の面内方向の磁化の向きは、磁気記録媒体と同様に情報を持つ。この情報を読み出すことで、磁気記録システムとして機能する。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
(実施例1)
実施例1は、図1に示す積層構造体10を作製した。具体的には、マルチフェロイック層2としてBiFeO、酸化防止層3としてPt、強磁性層1としてCoFeSiを用いた。また各層の厚みは、マルチフェロイック層2が30nm、酸化防止層3が0.5nm、強磁性層1が6nmであった。そして、実施例1の磁気特性を、振動試料型磁力計(VSM)を用いて測定した。
(比較例1)
比較例1は、酸化防止層を設けなかった点のみが、実施例1に示す積層構造体10と異なる。その他の構成は、実施例1に示す積層構造体10と同様にした。そして、比較例1の磁気特性を実施例1と同様に測定した。
実施例1の磁気特性と比較例1の磁気特性とを比較すると、実施例1では、飽和磁化が650emu/cc、保磁力は23Oeであるのに対して、比較例1では、飽和磁化が460emu/cc、保磁力は23Oeと言う点が異なる。これは、実施例1における酸化防止層3であるPtが、BiFeOからの酸素の拡散を防止し、強磁性層1であるCoFeSiの酸化を防止したことに起因したものと考えられる。すなわち、実施例1にかかる積層構造体10は、酸化防止層を備えることで、磁気特性が低下することが抑制されている。
(実施例2〜3)
実施例2〜3は、酸化防止層3の厚みを変更した点のみが実施例1に示す積層構造体10と異なる。その他の条件は、実施例1と同じとした。実施例2の膜厚は0.7nm、実施例3の膜厚は2.0nmであった。その結果、実施例2の飽和磁化は810emu/cc、保磁力は26Oeであり、実施例3の飽和磁化は960emu/cc、保磁力は25Oeであった。
1…強磁性層、2…マルチフェロイック層、3…酸化防止層、10…積層構造体、20…非磁性層、30…第2強磁性層、40…電極、50…電界印加手段、60…磁界印加手段、100…スピン変調素子、101…磁気記録システム、SW1,SW2…スイッチ

Claims (9)

  1. 強磁性層と、
    マルチフェロイック層と、
    前記強磁性層と前記マルチフェロイック層との間に挟まれる酸化防止層と、を備える、積層構造体。
  2. 前記酸化防止層の厚みが0.2nm以上5.0nm以下である、請求項1に記載の積層構造体。
  3. 前記強磁性層がハーフメタルである、請求項1又は2に記載の積層構造体。
  4. 前記強磁性層は、XYZの組成式で表記されるホイスラー合金を含み、
    前記組成式中のXは周期表上でCo、Fe、Ni、Cu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、YはMn、V、Cr、Ti族の遷移金属又はXの元素種であり、Zは、III族からV族の典型元素である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層構造体。
  5. 前記マルチフェロイック層は、BiFeO、BiMnO、GaFeO、AlFeO、(Ga,Al)FeO、YMnO、CuFeO、Cr、NiBi13I、LiMnPO、YFe12、TbPO、LiCoPOからなる群から選択されるいずれかを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層構造体。
  6. 前記酸化防止層を構成する元素のイオン化傾向が、前記マルチフェロイック層を構成する元素のイオン化傾向より小さい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層構造体。
  7. 前記酸化防止層は、Ta、Pt、Ru、Ag、Au、Cu、Cr、Ti、Ni、Pd、Irからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層構造体。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層構造体と、
    前記積層構造体の前記強磁性層に順に積層された非磁性層及び第2強磁性層と、を備える、スピン変調素子。
  9. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層構造体と、
    前記積層構造体のマルチフェロイック層に磁界を印加する磁界印加手段と、電界を印加する電界印加手段と、を備える、磁気記録システム。
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