JP2019066495A - セシウム・ストロンチウム吸着材を用いたセシウム・ストロンチウムの濃縮および処分方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】放射性セシウムおよびストロンチウムを含む海水をはじめとした天然水および、炉心冷却水などの汚染水から放射性セシウムおよびストロンチウムを吸着除去できる吸着材の提供とともに、吸着した放射性セシウムおよびストロンチウムを濃縮できるシステム、および吸着後に安定的なガラス固化体を形成するシステムを提供する。【解決手段】固体超強酸を提供するイオンを含む多孔質ガラスを作成し、この多孔質ガラス粉体を吸着材として配置した吸着カラムを作成し、ここに放射性セシウムおよびストロンチウムを含む汚染水を通過させることにより吸着除去および濃縮するシステムを構築するとともに、このカラムを石英ガラスなどの耐熱性があり浸透性がない素材で形成したカラムに保持し、このカラムごと焼結固化する処理するシステムを提供する。【選択図】 図4
Description
本発明は、セシウム・ストロンチウム吸着材とそれを用いた除染方法に関し、放射性物質が他の物質と渾然一体となった水溶液からのセシウム・ストロンチウム除去を目的として、かつ、環境中に薄く広まったこれら汚染物質を濃縮・減容するとともに最終的に安定化されるガラス固化体を容易に作成するシステムに関するものである。
2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島原子力発電所事故は、今後の人類のエネルギー事情を左右しかねない事故となったという認識は世界共通のものになっている。この事故で我々が思い知らされたのは、事故の深刻さもさることながら、後始末である除染技術の手段の貧弱さであり、取れる手段がほとんど無いという事実である。この原子炉事故において、環境中に薄く広まった放射性セシウム・ストロンチウムの除去は、汚染対策の主眼となっている。
(汚染の実態と除染システムの提案)
今次、福島で発生した原子力発電所の事故は、想定を超えて福島のみならず東北・関東の広い地域に放射性物質をばら撒いてしまうという未曾有の事態を招いてしまった。発生の原因はともあれ、事態として初期には、放射性ヨウ素が問題で利根川水系の水が汚染され飲めなくなったことは記憶に新しい。しかしながら、放射性ヨウ素は短期間で崩壊してしまうので緊急時の対処で何とか凌いだとして、現在最も大きな問題は、30年の半減期を有する放射性セシウム(セシウム137(137Cs))による汚染であり、除染をしなければ通常安全性が確保されるには、半減期の十倍程度の時間が必要となる。放射性セシウムの場合、30年後に1/2、60年後に1/4、150年後に元の1.5%、300年後に0.05%になる。今回の事故の場合、当面の対策は放射性セシウムと言って間違いではない。
今次、福島で発生した原子力発電所の事故は、想定を超えて福島のみならず東北・関東の広い地域に放射性物質をばら撒いてしまうという未曾有の事態を招いてしまった。発生の原因はともあれ、事態として初期には、放射性ヨウ素が問題で利根川水系の水が汚染され飲めなくなったことは記憶に新しい。しかしながら、放射性ヨウ素は短期間で崩壊してしまうので緊急時の対処で何とか凌いだとして、現在最も大きな問題は、30年の半減期を有する放射性セシウム(セシウム137(137Cs))による汚染であり、除染をしなければ通常安全性が確保されるには、半減期の十倍程度の時間が必要となる。放射性セシウムの場合、30年後に1/2、60年後に1/4、150年後に元の1.5%、300年後に0.05%になる。今回の事故の場合、当面の対策は放射性セシウムと言って間違いではない。
さらに、これに次ぐ危険性を持つ汚染物質は、29.1年の半減期を有する放射性ストロンチウム90(90Sr)であり、この2つを除去できれば、除染の大部分が処理できる。
放射性物質汚染の場合、たとえば、ダイオキシンなどの化学物質汚染と以下の二点が大きく異なる。一点目は、基本的に時間以外の無害化手段を持たないこと、たとえば、中和処理や生物分解が無いことから、形を変えても放射線は出続けることである。二点目は、希釈して無害化できる閾値をもたない可能性が高いことで、これ以下なら安全と言えない。
但し、これは、自然界には一定の放射線もあるので、受任限界と言う意味では、ある程度以下はやむをえないとは言えるのだが、これも危険確率で言えば、低くても低い成りに癌発生は増えると言うのが推定される。化学物質なら少なくとも極めて薄ければ、無害だと言えるポイント(閾値)があるのとは大きな差になる。
従って、除染とは現地から放射性セシウム・ストロンチウムを取り出して安全にしない限り、現地でどのような薬剤を撒いても、放射線を放ち続けるので真の除染にはならない。
現地での放射性物質汚染は、大きく4つの汚染形態になる。
1. 有機物、落ち葉や稲藁、
2. 土壌、農地や山林土壌
3. 屋根、建造物壁面、路面など
4. 水圏(湖沼やプールなど)
これら、4形態の汚染は、1〜3もいずれにしても何処かで水に溶かしだして除染することになる。
1. 有機物、落ち葉や稲藁、
2. 土壌、農地や山林土壌
3. 屋根、建造物壁面、路面など
4. 水圏(湖沼やプールなど)
これら、4形態の汚染は、1〜3もいずれにしても何処かで水に溶かしだして除染することになる。
これらの一連の除染システムにおいて、基本は、放射性セシウムを水相に移動しこれを、多孔質ガラス吸着材に固定することを基本としており、一連の除染システムの鍵になるのが多孔質ガラス吸着材となる。
さらに、通常運転の原子力施設においても、メンテナンスなどで発生するセシウム・ストロンチウムの処理、および、再処理工程での汚染水発生は重要な技術課題となっている。
また、現在主力となっているこれらの除去使われるゼオライト、もしくはプルシアンブルー吸着材は、吸着後の処分がままならず最終的な安定化処理を考えることは現時点においては難しい。
(通水困難性)
特に、ゼオライト吸着材の場合、粉体の場合は基本的に粘土鉱物であるために水を含むと膨潤し崩壊する。そのため、水を通しての吸着浄化には困難が生じ、高圧ポンプで濾過するなどの処置が必要となる。あるいは、これを改善するため、造粒し、団塊とするケースがあるが、加熱処理をすると、吸着性が劣化することが多い。
特に、ゼオライト吸着材の場合、粉体の場合は基本的に粘土鉱物であるために水を含むと膨潤し崩壊する。そのため、水を通しての吸着浄化には困難が生じ、高圧ポンプで濾過するなどの処置が必要となる。あるいは、これを改善するため、造粒し、団塊とするケースがあるが、加熱処理をすると、吸着性が劣化することが多い。
(減容の難しさ)
また、ゼオライトはそのままでは、嵩張るが熔融固化することは難しく、そのまま保管・放置するしかなかった。
また、ゼオライトはそのままでは、嵩張るが熔融固化することは難しく、そのまま保管・放置するしかなかった。
また、プルシアンブルー吸着材はシアン化合物であるため、長期安定性に欠け、放射線により分解する懸念が有るため、安定化処理には程遠かった。
そこで本発明は、上記問題点に鑑みて発明されたもので、通水性が優れた放射性セシウムおよびストロンチウムを含む海水をはじめとした天然水および、炉心冷却水などの汚染水から放射性セシウムおよびストロンチウムを吸着除去できる吸着材の提供とともに、除去するシステムを構築し、かつ吸着後に安定的なガラス固化体を形成するシステムを提供する。
本発明は、一例として特公平04−060936号公報(多孔質ガラス用組成物)に示すような分相法多孔質ガラスを基材として、その表面の活性を利用することで、本課題の解決を検討し、特定の条件下で分相法多孔質ガラスにセシウムおよびストロンチウムを吸着除去する機能を付与することが可能であることを見出した(特許文献1参照)。
また、一連の吸着実験の中で、多孔質ガラスが硬く、カラム/充填材方式での処理に適していることを見出した。しかも、吸着時間が短いため、数分以内の通液時間で充分に吸着させうることを見出し、一連の吸着システムを考案することができた。
さらに、吸着がイオン交換作用によるものとの考察から、pH(水素イオン濃度)により吸脱着が起こることを見出した。これにより、有機酸を用いてpH3以下でのセシウムおよびストロンチウムの脱離を確認した。この反応を利用すれば、一旦吸着したセシウムおよびストロンチウムを脱離させ、濃縮することが可能になる。
さらに、多孔質ガラスが易焼結性の「ガラス」であることを利用して安定処分体であるガラス固化体が容易に作成できることを見出し、一連の処理システムを完成させることが出来ることを見出し、本発明を完成した。
(現状の問題・ゼオライト・プルシアンブルー)
これまで、この対策としていくつかの吸着材が提案されているが、基本的に放射性が有ることから、放射線による劣化が予想される、たとえば有機質であるイオン交換樹脂は対象外であり、有力なものは、ゼオライトとプルシアンブルーもしくは各種プルシアンブルー担持体が報告されている。特に、スリーマイル事故に用いられたゼオライトが中心となっているが、ゼオライトには取り扱い上、大きな問題がある。基本的にゼオライト類は粘土鉱物であり、水により膨潤・崩壊するため、通液型の水処理には向かないことである。これを改善しようとして団粒化し焼結した場合、吸着サイトである表面活性が失われて、吸着性が落ちる。
これまで、この対策としていくつかの吸着材が提案されているが、基本的に放射性が有ることから、放射線による劣化が予想される、たとえば有機質であるイオン交換樹脂は対象外であり、有力なものは、ゼオライトとプルシアンブルーもしくは各種プルシアンブルー担持体が報告されている。特に、スリーマイル事故に用いられたゼオライトが中心となっているが、ゼオライトには取り扱い上、大きな問題がある。基本的にゼオライト類は粘土鉱物であり、水により膨潤・崩壊するため、通液型の水処理には向かないことである。これを改善しようとして団粒化し焼結した場合、吸着サイトである表面活性が失われて、吸着性が落ちる。
一方、プルシアンブルーもしくは各種プルシアンブルー担持体は、セシウム吸着に特化しており、ストロンチウムの吸着性は無い。また、プルシアンブルーもしくは各種プルシアンブルー担持体の場合、長期保存中に放射線による分解が発生する懸念が有る。
一方、汚染水処理の目的は、2つある。第1の目的は当然放射性セシウムおよびストロンチウムを吸着し、集めることである。他方、処理後の水の観点からは、放射性セシウムおよびストロンチウムを取り除いた、「浄化された水:(海水を含む)」を得て、環境に返すことが第2の目的となる。特に後者の観点から言えば、比較的低濃度の汚染水から如何に放射性セシウムおよびストロンチウムを効率よく除去し、安全な水を得るかという視点が必要となる。この観点から言えば、汚染水を「通液」し連続で処理する「カラム」方式が好ましい処理法であると考えられる。
一方、前者の放射性セシウムおよびストロンチウムを集める方では、対象汚染水が低濃度であったり、広範囲に分散していたりすることなどから、比較的低濃度の放射性セシウム吸着物および放射性ストロンチウム吸着物が大量に発生することが問題となる。長期保管の視点から見れば、この吸着汚染物の濃縮、減容は、保管コストや保管安全性向上のために必要な要素となる。
さらに、集めた放射性セシウムおよびストロンチウムは、常に放射線を出すことから、再度環境中に拡散しない様に、安定化させる必要があり、これにはガラス固化処理が好ましい。
上記の目的を達成する手段として、分相法多孔質ガラスを用いた除去システムが優れていることを見出し、本発明に至った。
水圏(水中)の放射性セシウムは、多孔質ガラスを用いた吸着材でトラップ除去することが出来る。これらの一連の除染システムにおいて、基本は、放射性セシウムを水相に移動しこれを、多孔質ガラス吸着材に固定することを基本としており、一連の除染システムの鍵になるのが多孔質ガラス吸着材となる。
本発明の第1の実施形態であるセシウム・ストロンチウム吸着材(多孔質ガラス吸着材)は、0.5質量%〜15質量%の1種または複数種の固体超強酸成分を含む分相法多孔質ガラスからなるセシウム・ストロンチウム吸着材であって、前記セシウム・ストロンチウム吸着材は砂または粉体の形態を有し、前記固体超強酸成分はアルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、および酸化スズからなる群から選択されることを特徴とする。
本発明の第2の実施形態であるセシウム・ストロンチウム吸着材の製造方法は、
アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、および酸化スズからなる群から選択される1種または複数種の固体超強酸成分を含む母材ガラスを形成する工程と、
前記母材ガラスをガラス転移点以上の温度で熱処理して、スピノーダル分相を起こし、分相ガラスを形成する工程と、
前記分相ガラスを酸処理して多孔化させ、分相法多孔質ガラスを形成する工程と
を含むことを特徴とする。
アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、および酸化スズからなる群から選択される1種または複数種の固体超強酸成分を含む母材ガラスを形成する工程と、
前記母材ガラスをガラス転移点以上の温度で熱処理して、スピノーダル分相を起こし、分相ガラスを形成する工程と、
前記分相ガラスを酸処理して多孔化させ、分相法多孔質ガラスを形成する工程と
を含むことを特徴とする。
本発明の第3の実施形態であるセシウム・ストロンチウム吸着除去システムは、
2個以上のカラムと、放射線測定器とを含み
前記2個以上のカラムは直列に接続され、前記放射線測定器は、直列に接続された最終段のカラムとその前段のカラムとの間に接続され、
前記2個以上のカラムは、金属、プラスチック、および不浸透性ガラスセラミック類からなる群から選択される材料で形成されたカラム筒と、前記カラム筒内に充填された第1の実施形態のセシウム・ストロンチウム吸着材とを含み、
放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを含む汚染水を通過させる際に、最終段より前のカラムが破過点を迎えたことを前記放射線測定器で検出して、放射性セシウムおよび/またはストロンチウムの漏洩を防止することができる
ことを特徴とする。
2個以上のカラムと、放射線測定器とを含み
前記2個以上のカラムは直列に接続され、前記放射線測定器は、直列に接続された最終段のカラムとその前段のカラムとの間に接続され、
前記2個以上のカラムは、金属、プラスチック、および不浸透性ガラスセラミック類からなる群から選択される材料で形成されたカラム筒と、前記カラム筒内に充填された第1の実施形態のセシウム・ストロンチウム吸着材とを含み、
放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを含む汚染水を通過させる際に、最終段より前のカラムが破過点を迎えたことを前記放射線測定器で検出して、放射性セシウムおよび/またはストロンチウムの漏洩を防止することができる
ことを特徴とする。
本発明の第4の実施形態であるセシウム・ストロンチウム濃縮方法は、
第1の実施形態のセシウム・ストロンチウム吸着材に、放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを含む汚染水を通過させて、前記吸着材に放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを吸着させる工程と、
前記吸着材を、有機酸を含む溶離液を通過させて、吸着した放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを吸着させる工程であって、前記溶離液の体積は、前記汚染水の体積よりも小さい工程と、
放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを含有する溶離液を、酸化剤によって処理し、前記有機酸を破壊する工程と
を含むことを特徴とする。
第1の実施形態のセシウム・ストロンチウム吸着材に、放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを含む汚染水を通過させて、前記吸着材に放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを吸着させる工程と、
前記吸着材を、有機酸を含む溶離液を通過させて、吸着した放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを吸着させる工程であって、前記溶離液の体積は、前記汚染水の体積よりも小さい工程と、
放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを含有する溶離液を、酸化剤によって処理し、前記有機酸を破壊する工程と
を含むことを特徴とする。
本発明の第5の実施形態であるセシウム・ストロンチウムのガラス固化安定化処分方法は、
耐熱性および不浸透性を有する材料で形成されたカラム筒と、前記カラム筒内に充填された第1の実施形態のセシウム・ストロンチウム吸着材とを含むカラムを準備する工程と、
前記カラムに、放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを含む汚染水を通過させて、前記吸着材に放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを吸着させる工程と、
前記カラムの上部に、未使用の第1の実施形態のセシウム・ストロンチウム吸着材を充填する工程と、
前記カラムの上部から圧力を印加した状態で、前記カラムを加熱焼成して、前記セシウム・ストロンチウム吸着材を焼結固化させる工程と
を含むことを特徴とする。
耐熱性および不浸透性を有する材料で形成されたカラム筒と、前記カラム筒内に充填された第1の実施形態のセシウム・ストロンチウム吸着材とを含むカラムを準備する工程と、
前記カラムに、放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを含む汚染水を通過させて、前記吸着材に放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを吸着させる工程と、
前記カラムの上部に、未使用の第1の実施形態のセシウム・ストロンチウム吸着材を充填する工程と、
前記カラムの上部から圧力を印加した状態で、前記カラムを加熱焼成して、前記セシウム・ストロンチウム吸着材を焼結固化させる工程と
を含むことを特徴とする。
本発明の第1〜第3の実施形態によれば、セシウム・ストロンチウム汚染水を効率よく吸着除去し、少なくともセシウム・ストロンチウム汚染を除去した水にすることが出来る。ほとんどの場合、処理水は環境中に放出が出来、汚染負荷を大幅に減らすことが出来る。
さらに、本発明の第4の実施形態によれば、吸着後の吸着材容積を大幅に減らして、汚染物質の保管管理の負荷を大幅に減らすことができる。
さらに、本発明の第5の実施形態によれば、長期保管が可能な、準安定化されたガラス固化体が容易に作成出来、本汚染を管理可能な範疇へ除染負荷を極力減らすことを目指す可能性が高くなる。
そして、本発明の第1〜第5の実施形態によれば、セシウム・ストロンチウム汚染水の問題にトータルに対処可能なシステムを構築できる。
(多孔質ガラス)
分相法多孔質ガラスは、米国コーニング社のH.P.Hoodらが、1934年に特許を出願したバイコールガラスの名前の石英ガラス類似のガラスの中間体として作られた、バイコール(VYCOR)(登録商標)7930が、初出であり、国内においては大阪工業試験所(現・産業技術総合研究所・関西支部)において、江口らが独自の研究により、一定の分相法多孔質ガラスを作成する基礎技術を確立していた。
分相法多孔質ガラスは、米国コーニング社のH.P.Hoodらが、1934年に特許を出願したバイコールガラスの名前の石英ガラス類似のガラスの中間体として作られた、バイコール(VYCOR)(登録商標)7930が、初出であり、国内においては大阪工業試験所(現・産業技術総合研究所・関西支部)において、江口らが独自の研究により、一定の分相法多孔質ガラスを作成する基礎技術を確立していた。
この、バイコール(登録商標)7930を始めとした一連の多孔質ガラスは、ほぼSiO2(96質量%以上)で形成された高ケイ酸質のものであった。
その後、1981年に宮崎県工業試験所の中島らは、鹿児島県から宮崎県にかけて広く分布する火山灰の一種である「シラス」を用いてガラス作成を行った中で、一定の分相現象を見出し、江口らとの共同研究により、ある種の多孔質ガラスの作成に成功した。共同研究の中で江口らは、アルカリ土類もしくは酸化亜鉛の配合により、従来は、骨格構造には純度の高いケイ酸相が形成されるのとは異なり、組成の柔軟性が有るホウケイ酸ガラスを骨格として利用することを見出し、これを嚆矢として新しいタイプの多孔質ガラスの作成が可能であることを見出した。これが、ホウケイ酸型多孔質ガラスである。
ホウケイ酸型多孔質ガラスの特徴は、高ケイ酸質多孔質ガラスでは作成が困難であったサブミクロン以上のメソ領域からマクロ領域の多孔材料を得ることができること、骨格成分を、ホウケイ酸構造とすることで、アルミナやジルコニアといった成分を含有させることができるようになった。
特に、江口らが開発した、ジルコニア含有多孔質ガラスは、優れた耐アルカリ性により、高ケイ酸質多孔質ガラスでは対応できなかった水系の膜分離に使用できることから、アクアルネッサンス計画において対象となるなど、精密ろ過膜としての使用範囲を大きく広げた。
さらに、このホウケイ酸型多孔質ガラスは、先の高ケイ酸質多孔質ガラスと異なり焼結温度が低下し700℃以下となり、さらには軟化点、融点も低下する。
これら二種類の多孔質ガラスは何れも以下のような製で作成される。始めに、高ケイ酸質多孔質ガラスの作成方法を図1に示す。まず、珪砂、硼砂、ホウ酸、炭酸ナトリウム、任意選択的にアルミナなどを混合して原料を調合し、1200〜1500℃程度で溶融し、SiO2、B2O3、Na2Oを主成分とする母材ガラスを作成・成型する。これを、ガラス転移点以上融点未満の特定の温度で保持することにより分相を起こさせる。分相時間は、通常数時間から数日の単位となる。分相構造は、温度と時間の係数により決定されるが、同じ構造を持つ条件でも温度が異なれば、できあがる多孔質ガラスの特性が異なることに注意を払わなければならない。分相が終わると、分相構造により、光の散乱が発生し、薄い青色から白色まで細孔構造に応じた色が認められる。次に、分相済みのガラスを酸溶液により化学処理を施す。通常、数規定の硫酸、もしくは硝酸が用いられ、90℃以上に保持してホウ酸ナトリウム相(B2O3−Na2O相)を溶かし出す。溶出は遅く、通常1mmの厚さをエッチングするのに数時間程度かかる。この処理が終わり、水洗後乾燥すると、約96%のシリカ分を含むAタイプの多孔質ガラスが得られる。Aタイプの多孔質ガラスの細孔構造は、分相構造を反映しておらず、実際は、シリカガラスからなる骨格構造の中にホウ酸ソーダ相由来のシリカゲルが堆積した構造になっており、これをアルカリ水溶液処理など、何らかの方法で取り除くことにより、分相構造を反映したBタイプの多孔質ガラスが得られる。
ホウケイ酸タイプ多孔質ガラスに特徴的な点は、母材ガラスに、珪砂、硼砂、ホウ酸、炭酸ソーダ、アルミナ、ジルコニアなどに加えて、アルカリ土類金族類酸化物(酸化カルシウムなど)を添加することである。これにより、最終的に得られる多孔質ガラスは、たとえば、80質量%のSiO2、10質量%のB2O3、5質量%のNa2O、3質量%のAl2O3、2質量%のZrO2を含む、ボウケイ酸ガラス組成になる。
(セシウム・ストロンチウム吸着材)
本発明の第1の実施形態のセシウム・ストロンチウム吸着材は、固体超強酸成分としてアルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化スズの内1種類以上の成分を0.5質量%〜15質量%含む分相法多孔質ガラスからなる、砂状もしくは粉体である。
本発明の第1の実施形態のセシウム・ストロンチウム吸着材は、固体超強酸成分としてアルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化スズの内1種類以上の成分を0.5質量%〜15質量%含む分相法多孔質ガラスからなる、砂状もしくは粉体である。
上記に述べたように、分相法多孔質ガラスも、いくつかの種類があり、構造の異なる物が存在する。
本発明の動機としては、分相法多孔質ガラスの持つ高い比表面積を利用し、除染対象を吸着除去する趣旨で検討を始めた。始めに、バイコール(登録商標)7930同等の基本的な多孔質ガラス(96質量%以上のSiO2を含む高ケイ酸質多孔質ガラス)を用いて、吸着実験を行ったところ、あまり有効な吸着作用を示さず、これは、別途公表されていたシリカゲル同様のデータであった。
しかしながら、各種実験を重ねる中で、数種の分相法多孔質ガラスが優れた吸着性を示すことがわかり、その差異を検討する中で、本発明に至った。
すなわち、分相法多孔質ガラス作成時に細孔制御の目的で混入させ、かつ、多孔化時には、酸により溶出してしまい、トレース量しか残らないとされていたアルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化スズなどの添加物成分の存在が吸着作用を発生させるキーテクノロジーであり、しかも、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化スズなどで、単独では発生しない作用であることが判明し、この作用が多孔質ガラスの大部分を構成するSiO2(シリカ)から起因するシラノール基との共存現象に起因することを見出した。
すなわち、多孔質ガラス内表面に多数存在する、シラノール基に対し共存するたとえばアルミナ起因のアルミノール基が、ブレンステッド酸として強く働き、固体超強酸基として働くことによると考えられる。この現象はアルミナに限らず、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化スズなどで起こることが確認され、1種類だけで存在してもよいし、複数種類が共存してもよいことが確認された。
さらに、この作用を発揮するのに、シラノール基とたとえばアルミノール基の存在比率で有効範囲があり、これを組成比に換算すると、有効な範囲は、アルミナ換算で0.1質量%〜20質量%、より好ましくは、0.5質量%〜15質量%であることを見出し、さらに好ましいのは1質量%〜10質量%であった。さらに、海水からの選択吸着を発揮するには、好ましい範囲0.5質量%〜15質量%であった。
上記を鑑み、固体超強酸成分としてアルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化スズの内1種類以上の成分を0.5質量%〜15質量%含む分相法多孔質ガラスからなる、砂状もしくは粉体であるセシウム・ストロンチウム吸着材を考案した。
さらに、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化スズの含有のさせ方により、特性が変わることを見出し、あらかじめ母材ガラスに含有させ、これを残存させるように化学処理をすることが効果的であることを見出した。固体強酸点を形成するのに、あらかじめ基材に含有させる方法と、多孔化の後にイオンとして内表面にドープする方法が有るが、後からドープした場合は、基材のケイ酸由来のシラノール基との相互作用が上手く働かず、結果として良い吸着性が発揮されないことが確認された。従って、あらかじめ基材にこれらイオンの基になるアルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化スズを含ませたバッチから形成された母材ガラス中に、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化スズを含有させた母材ガラスを形成し、これをガラス転移点以上の温度で熱処理を行うことでスピノーダル分相を起こさせたのち、酸処理を行うことで多孔化させることを特徴とする、本発明の第2の実施形態のセシウム・ストロンチウム吸着材の製造方法を見出した。
さらに、この多孔質ガラス吸着材を扱うにあたり、その材料特性として、硬く、カラム充填材として用いることが可能であることから、金属もしくはプラスチック、あるいは不浸透性を持つガラス・セラミック類からなるカラムに第1の実施形態の多孔質ガラス吸着材を充填し、これを2個以上直列に連結したカラムユニットに放射性セシウムおよびストロンチウムを含む汚染水を通過させるシステムを考案した。これは、通常の活性炭などで用いられるカラム法による吸着技術そのものであるが、対象が放射性汚染物質であることを鑑み、処理水に漏れ出すことがないシステムとして、カラムを直列につなぎ、かつ中間点に放射線検出システムを配置することで、確実にきれいな処理水とすることも目的として、中間連結部に放射線測定器を取り付けることにより吸着除去を確実に確認し、かつ第一カラムが破過点を迎えてもシステムとして放射性物質の漏洩を阻止する、吸着除去するシステムという、対象が放射性汚染水であることに対し、二重の安全性と効果を考えこの本発明の第3の実施形態を考案するに至った。図2に、直列に接続される2つのカラム(第一カラム10および第二カラム20)と、第一カラム10と第二カラム20との間に接続される放射線測定器30とを備えた、本実施形態の構成例を示した。第一カラム10および第二カラム20のそれぞれは、金属、プラスチック、または不浸透性ガラスセラミック類で形成された中空円筒形状のカラム筒と、カラム筒内に充填された第1の実施形態の多孔質ガラス吸着材とを含む。なお、3つ以上のカラムを用いる場合、最終段のカラムとその前段のカラムとの間に放射線測定器30を接続することが好ましい。
なお、カラム吸着に対し、カラム前に夾雑物を除去するシステムを設けることが望ましいが、多孔質ガラスカラムは、砂ろ過システムと似ているため、夾雑物汚染に対して、影響を受けにくいので、そのままでも使用可能である。
また、現在の除染作業において、吸着処理後の放射化した吸着材の減容化が不可欠である。重大な汚染域を除き、ほとんどの汚染は中間レベルであり、あまり放射能レベルが高くない吸着材であっても、そのまま保管せざるを得ず、結果として除染に大きな支障をきたしている。
本発明で用いる多孔質ガラス吸着材の特性を確認している中で、イオン吸着性であることからpH依存性を検討している中で、pH3以下で、セシウムが容易に脱離することを見出し、かつこれにクエン酸などの有機酸が有効であることを見出した。
また、一旦脱離しても、pHが4以上に戻れば再度吸着すること、かつ中和操作による無機塩の増大を防ぎながらpH上昇を図れることから、有機酸を酸化剤で分解する手法を見出し、一旦多孔質ガラスに吸着した放射性セシウムおよびストロンチウムに、酢酸・クエン酸などの有機酸を用い、酸性にすることで濃縮脱離させるとともに、この水溶液に過酸化水素のような酸化剤を作用させ酸性を破壊し、これを改めて石英ガラスなどの耐熱性があり浸透性がない素材で形成したカラムに保持した第1の実施形態の多孔質ガラス吸着材に濃縮担持させることを特徴とする、本発明の第4の実施形態の放射性物質の濃縮・減容システムを考案した。
さらに、吸着材に吸着した後、再度環境中に戻らず、安定状態までの崩壊期間安定化させるために、安定化処理をすることが求められる。これに耐えられる放射性汚染物質の安定化処理としては、ガラス固化が唯一の方法であるが、現在実用化されている高レベル放射性物質のガラス固化は困難を極めており、容易にはガラス固化が出来ない。
ガラス固化が困難なポイントを整理すると,1500℃程度の高温作業であり、主要部材として鉄系金属部材を用いることができず、膨張係数などが大きいため、自動化が困難であるが、放射線のため、無人運転が要求されること、粘性が高いガラス熔融体への被閉じ込め材の均一混和が困難な点などが挙げられる。さらに、現在のガラス固化体は金属のキャニスター中に鋳込むため、その界面のトラブルも予想される。
ここで、本発明者は、吸着材である多孔質ガラスが、易焼結性のガラスであることに着目し、かつ先行研究である、多孔質ガラスの塊に含浸して焼結するものや、多孔質ガラス粉末と混和し焼結体とする考えを踏まえ、かつ無人で作業が出来、かつコスト的に、事実上供給不可能な多孔質ガラスブロックではなく、粉砕品を用い、かつ、プロセス的に工程を汚染する可能性が高い先行研究の焼結体と異なるプロセスとして、吸着カラムごと焼結するシステムを考案した。かつ、その際、カラムごと焼結し安定化するためにカラム素材を石英ガラスなどの耐熱性があり浸透性がない素材で形成したカラムを利用することを考え、カラム内の第1の実施形態の多孔質ガラス吸着材に放射性物質を濃縮担持させると共に、焼結時に発生するであろうセシウムなどの昇華・揮発を、上部(汚染水導入側)に冷えた非汚染(未使用)多孔質ガラス素材を充填した後、石英ガラスなどの耐熱性があり浸透性がない素材で形成したカラムごと、上部から加圧しながら加熱焼成することにより多孔質ガラスを焼結固化する、本発明の第5の実施形態であるガラス固化安定化処分システムを考案した。
焼結後、固化体はそのまま、ステンレススチール製保管容器に格納し、主として空冷システムを施して、保管される。
この発明においては、あらかじめセシウム・ストロンチウムは、水溶液化している必要があり、始めに述べた4つの汚染形態の内の4に相当する物が対象となるが、1−3の汚染に関しても、何らかの方法で除染、水に移行した物も対象となる。
1. 有機物、落ち葉や稲藁、
2. 土壌、農地や山林土壌
3. 屋根、建造物壁面、路面など
4. 水圏(湖沼やプールなど)
1. 有機物、落ち葉や稲藁、
2. 土壌、農地や山林土壌
3. 屋根、建造物壁面、路面など
4. 水圏(湖沼やプールなど)
さらに、水溶液は通常中性とみなせるが、確認して、主にpH7前後にすることが好ましく、本発明の第4の実施形態に示す様に、pH3以下では、吸着ではなく脱離が起こるので、pHは4以上に保たれなければならず、その場合は、アルカリによる中和か、有機酸ならば、酸化分解などにより中性に近く持っていく必要が有る。
さらに、本発明の第3の実施形態に述べたカラムシステムは、より安全で、セシウム・ストロンチウムを取り除いた処理水を得ることができるシステムであり、セシウム・ストロンチウムを第一カラム10で除去するだけではなく、さらに第二カラム20を用いて確実に除去することを目的とする。その際に中間点に放射線測定器30をセットすることにより、余裕を持って安全管理が出来る。
なお、システムにおいて一定の期間もしくは第一カラム10が破過点を迎えた場合、第二カラム20を第一カラム10へと変更し、新しいカラムを第二カラム20にセットして更新するシステムとすることを特徴としている。
さらに本発明の第4の実施形態は、実世界の汚染状況から、ほとんどの除染において、汚染が極めて薄いことがあげられる。福島において撒き散らされたセシウムの総量は5kg程度と想定されていることから、放射線のレベルは高くても物質濃度としては、1ppm以下の極めて低い。しかしながら、除染の必要性からは低濃度の吸着済み吸着材が大量に発生する。従って、この低レベル吸着材の減容が必須となるが、この発明で、理論上は5kgのセシウム総量であっても、100kgの多孔質ガラス吸着材にまで減容が可能となるが、この場合放射能レベルが極めて高くなるので、管理可能なレベルでコントロールする必要がある。
また、この発明全体をまとめるに当たって、集めた汚染物質をガラス固化・安定化処理が可能な構成としている。
以下、図面を参照しながら、本発明のセシウム・ストロンチウム吸着材の製造、利用、再生、濃縮、および、最終のガラス固化保管の実施状況を説明する。
(実施例1)
本発明の第1の実施形態であるセシウム・ストロンチウム吸着材、ならびに本発明の第2の実施形態であるセシウム・ストロンチウム吸着材の製造法の1例をあげる。
本発明の第1の実施形態であるセシウム・ストロンチウム吸着材、ならびに本発明の第2の実施形態であるセシウム・ストロンチウム吸着材の製造法の1例をあげる。
珪砂、硼砂、ホウ酸、炭酸ナトリウム、水酸化アルミニウム粉末を混和した「バッチ」を用いて、以下の組成の母材ガラスを作成した。これを、ガラス転移点以上の温度600℃で24時間分相処理を行った。これを粉砕・分級した後、90℃の1モル/Lの硫酸により酸処理を行った。これを乾燥し、以下の組成の多孔質ガラス吸着材を得た。
(実施例2)
珪砂、硼砂、ホウ酸、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム粉末を混和した「バッチ」を用いて、以下の組成の母材ガラスを作成した。これを、ガラス転移点以上の温度600℃で24時間分相処理を行った。これを粉砕・分級した後、90℃の1モル/Lの塩酸により酸処理を行った。これを乾燥し、以下の組成の多孔質ガラス吸着材を得た。
珪砂、硼砂、ホウ酸、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム粉末を混和した「バッチ」を用いて、以下の組成の母材ガラスを作成した。これを、ガラス転移点以上の温度600℃で24時間分相処理を行った。これを粉砕・分級した後、90℃の1モル/Lの塩酸により酸処理を行った。これを乾燥し、以下の組成の多孔質ガラス吸着材を得た。
(実施例3)
珪砂、硼砂、ホウ酸、炭酸ナトリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム粉末を混和した「バッチ」を用いて、以下の組成の母材ガラスを作成した。これを、ガラス転移点以上の温度600℃で24時間分相処理を行った。これを粉砕・分級した後、90℃の1モル/Lの塩酸により酸処理を行った。これを乾燥し、以下の組成の多孔質ガラス吸着材を得た。
珪砂、硼砂、ホウ酸、炭酸ナトリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、水酸化アルミニウム粉末を混和した「バッチ」を用いて、以下の組成の母材ガラスを作成した。これを、ガラス転移点以上の温度600℃で24時間分相処理を行った。これを粉砕・分級した後、90℃の1モル/Lの塩酸により酸処理を行った。これを乾燥し、以下の組成の多孔質ガラス吸着材を得た。
(実施例4)
珪砂、硼砂、ホウ酸、炭酸ナトリウム、水酸化アルミニウム粉末を混和した「バッチ」を用いて、以下の組成の母材ガラスを作成した。これを、ガラス転移点以上の温度600℃で24時間分相処理を行った。これを粉砕・分級した後、90℃の1モル/Lの塩酸により酸処理を行った。これを乾燥し、以下の組成の多孔質ガラス吸着材を得た。
珪砂、硼砂、ホウ酸、炭酸ナトリウム、水酸化アルミニウム粉末を混和した「バッチ」を用いて、以下の組成の母材ガラスを作成した。これを、ガラス転移点以上の温度600℃で24時間分相処理を行った。これを粉砕・分級した後、90℃の1モル/Lの塩酸により酸処理を行った。これを乾燥し、以下の組成の多孔質ガラス吸着材を得た。
(実施例5)
実施例1のセシウム・ストロンチウム吸着材10gをカラム(充填塔)に充填して、非放射性セシウム(133Cs)濃度100ppm(mg/L)溶液を塩化セシウムの形で、約10ml/mim流量程度で自然流下で通水した結果、漏出がCs積算量0.5gから始まり、0.7gでほぼ完全な漏出に至った。この通水試験から50mg Cs/gの吸着能という結果を得た。これは、吸着材1kg当たり、50gという性能であった。図3は、横軸を吸着材1kg当たりに換算したCs積算量と漏出濃度との関係を示すグラフである。
実施例1のセシウム・ストロンチウム吸着材10gをカラム(充填塔)に充填して、非放射性セシウム(133Cs)濃度100ppm(mg/L)溶液を塩化セシウムの形で、約10ml/mim流量程度で自然流下で通水した結果、漏出がCs積算量0.5gから始まり、0.7gでほぼ完全な漏出に至った。この通水試験から50mg Cs/gの吸着能という結果を得た。これは、吸着材1kg当たり、50gという性能であった。図3は、横軸を吸着材1kg当たりに換算したCs積算量と漏出濃度との関係を示すグラフである。
(実施例6)
実施例2のセシウム・ストロンチウム吸着材10gをカラム(充填塔)に充填して、非放射性セシウム(133Cs)濃度100ppm(mg/L)溶液を塩化セシウムの形で、約10ml/mim流量程度で自然流下で通水した結果、漏出がCs積算量0.5gから始まり、0.9gでほぼ完全な漏出に至った(図4参照)。この通水試験から50mg Cs/gの吸着能という結果を得た。これは、吸着材1kg当たり、50gという性能であった。この数値は、実施例5と一致しており再現性が確認された。
実施例2のセシウム・ストロンチウム吸着材10gをカラム(充填塔)に充填して、非放射性セシウム(133Cs)濃度100ppm(mg/L)溶液を塩化セシウムの形で、約10ml/mim流量程度で自然流下で通水した結果、漏出がCs積算量0.5gから始まり、0.9gでほぼ完全な漏出に至った(図4参照)。この通水試験から50mg Cs/gの吸着能という結果を得た。これは、吸着材1kg当たり、50gという性能であった。この数値は、実施例5と一致しており再現性が確認された。
なお、このカラムに純水を追加したところ、システム中の残液を除き、漏出は無かった。この結果から見て、再溶出は無いことがわかった。
(実施例7)
実施例3のセシウム・ストロンチウム吸着材10gをカラム(充填塔)に充填して、100ppm(mg/L)塩化ストロンチウムの形で非放射性Sr溶液を漏出が生じるまで流し、PG単位質量あたりのSr破過点を確認した。漏出は、Sr積算量 0.05gから始まり、緩やかなカーブで漏出が進行し、0.3gでほぼ完全な漏出に至った(図5参照)。用いた溶液の濃度が高すぎたため、真の破過点よりも手前で漏出が生じた可能性があり、再測定必要と考えた。しかしながら、この通水試験から15mg Sr/gの吸着能という結果を得た。これは、吸着材1kg当たり、15gという性能であった。
実施例3のセシウム・ストロンチウム吸着材10gをカラム(充填塔)に充填して、100ppm(mg/L)塩化ストロンチウムの形で非放射性Sr溶液を漏出が生じるまで流し、PG単位質量あたりのSr破過点を確認した。漏出は、Sr積算量 0.05gから始まり、緩やかなカーブで漏出が進行し、0.3gでほぼ完全な漏出に至った(図5参照)。用いた溶液の濃度が高すぎたため、真の破過点よりも手前で漏出が生じた可能性があり、再測定必要と考えた。しかしながら、この通水試験から15mg Sr/gの吸着能という結果を得た。これは、吸着材1kg当たり、15gという性能であった。
(実施例8)
実施例4のセシウム・ストロンチウム吸着材20gをカラム(充填塔)に充填して、33ppm(mg/L)塩化ストロンチウムの形で非放射性Sr溶液を漏出が生じるまで流し、PG単位質量あたりのSr破過点を確認した。漏出は、Sr積算量 0.32gから始まり、0.55gでほぼ完全な漏出に至った。(図6参照)この結果は、実施例7を良好に再現しており、かつ、トラブル対策にも成功している。この通水試験から破過点0.32g/PG20gという結果を得た。これは、吸着材1kg当たり、Sr 16g/kg性能であった。
実施例4のセシウム・ストロンチウム吸着材20gをカラム(充填塔)に充填して、33ppm(mg/L)塩化ストロンチウムの形で非放射性Sr溶液を漏出が生じるまで流し、PG単位質量あたりのSr破過点を確認した。漏出は、Sr積算量 0.32gから始まり、0.55gでほぼ完全な漏出に至った。(図6参照)この結果は、実施例7を良好に再現しており、かつ、トラブル対策にも成功している。この通水試験から破過点0.32g/PG20gという結果を得た。これは、吸着材1kg当たり、Sr 16g/kg性能であった。
(実施例9)
セシウム・ストロンチウム吸着材のセシウムに対するイオン交換性能を、NIMSに準拠したバッチ方式で評価した。具体的には、実施例2のセシウム・ストロンチウム吸着材と、第1表に示す組成を有する人工海水Aとを準備した。30mLの人工海水A中に0.3gのセシウム・ストロンチウム吸着材(固液比100)を添加し、25±2℃の温度において24時間にわたってスターラーにより攪拌した。攪拌終了後の水相中のセシウムイオン濃度を、ICP−MS(内部標準補正した絶対検量線法)により分析した(試験数N=2)。分析結果に基づいて、セシウムの吸着率および分配係数(それぞれの定義後述)を求めた。
セシウム・ストロンチウム吸着材のセシウムに対するイオン交換性能を、NIMSに準拠したバッチ方式で評価した。具体的には、実施例2のセシウム・ストロンチウム吸着材と、第1表に示す組成を有する人工海水Aとを準備した。30mLの人工海水A中に0.3gのセシウム・ストロンチウム吸着材(固液比100)を添加し、25±2℃の温度において24時間にわたってスターラーにより攪拌した。攪拌終了後の水相中のセシウムイオン濃度を、ICP−MS(内部標準補正した絶対検量線法)により分析した(試験数N=2)。分析結果に基づいて、セシウムの吸着率および分配係数(それぞれの定義後述)を求めた。
上記の分析から、実施例2のセシウム・ストロンチウム吸着材のセシウムの吸着率は約56%であることが分かった。この吸着率は、純水中よりは低いものの、多量の異種イオンの存在下においても本発明の吸着材が充分なセシウム吸着性を有することを示す。
(実施例10)
セシウム・ストロンチウム吸着材のストロンチウムに対するイオン交換性能を、NIMSに準拠したバッチ方式で評価した。具体的には、実施例2のセシウム・ストロンチウム吸着材と、第2表に示す組成を有する人工海水Bとを準備した。30mLの人工海水B中に0.3gのセシウム・ストロンチウム吸着材(固液比100)を添加し、25±2℃の温度において24時間にわたってスターラーにより攪拌した。攪拌終了後の水相中のストロンチウムイオン濃度を、ICP−MS(内部標準補正した絶対検量線法)により分析した(試験数N=2)。分析結果に基づいて、ストロンチウムの吸着率および分配係数を求めた。
セシウム・ストロンチウム吸着材のストロンチウムに対するイオン交換性能を、NIMSに準拠したバッチ方式で評価した。具体的には、実施例2のセシウム・ストロンチウム吸着材と、第2表に示す組成を有する人工海水Bとを準備した。30mLの人工海水B中に0.3gのセシウム・ストロンチウム吸着材(固液比100)を添加し、25±2℃の温度において24時間にわたってスターラーにより攪拌した。攪拌終了後の水相中のストロンチウムイオン濃度を、ICP−MS(内部標準補正した絶対検量線法)により分析した(試験数N=2)。分析結果に基づいて、ストロンチウムの吸着率および分配係数を求めた。
上記の分析から、実施例2のセシウム・ストロンチウム吸着材のストロンチウムの吸着率は約56%であることが分かった。この吸着率は、純水中よりは低いものの、多量の異種イオンの存在下においても本発明の吸着材が充分なストロンチウム吸着性を有することを示す。
(実施例11)
実施例5の条件下でセシウムを吸着させた実施例1のセシウム・ストロンチウム吸着材に、塩酸またはクエン酸でpHを調整した溶離液を通液した。その結果、セシウムはpH3以下で脱離することを確認した(図7参照)。
実施例5の条件下でセシウムを吸着させた実施例1のセシウム・ストロンチウム吸着材に、塩酸またはクエン酸でpHを調整した溶離液を通液した。その結果、セシウムはpH3以下で脱離することを確認した(図7参照)。
次に、溶離したセシウムおよびクエン酸を含む溶離液を過酸化水素水で処理して、クエン酸を酸化分解した。続いて、酸化処理された水溶液のpHを、アンモニア水を用いて7以上に調整した。得られた水溶液を、セシウム・ストロンチウム吸着材に通液すると、水溶液中のセシウムが吸着材に吸着されたことを確認した。
(実施例12)
直径3cmの不透明石英ガラスパイプに実施例5の条件下でセシウムを吸着させた実施例1のセシウム・ストロンチウム吸着材を60%充填した。セシウム・ストロンチウム吸着材に上部に、ポーラスガラスに5質量%の炭酸ナトリウムを含ませたポーラスガラスを充填し、充填物を充分に乾燥させた。続いて、上部に50gf(0.49N)程度の力を印加しながらガラスパイプおよび充填物を加熱し、5時間かけて900℃まで昇温させ、一体化したガラス固化体モデルを得た。得られたガラス固化体(焼結体)の耐水性を確認したところ、ガラス硬質1級レベルの耐水性が有ることを確認した。
直径3cmの不透明石英ガラスパイプに実施例5の条件下でセシウムを吸着させた実施例1のセシウム・ストロンチウム吸着材を60%充填した。セシウム・ストロンチウム吸着材に上部に、ポーラスガラスに5質量%の炭酸ナトリウムを含ませたポーラスガラスを充填し、充填物を充分に乾燥させた。続いて、上部に50gf(0.49N)程度の力を印加しながらガラスパイプおよび充填物を加熱し、5時間かけて900℃まで昇温させ、一体化したガラス固化体モデルを得た。得られたガラス固化体(焼結体)の耐水性を確認したところ、ガラス硬質1級レベルの耐水性が有ることを確認した。
10 第一カラム
20 第二カラム
30 放射線測定器
20 第二カラム
30 放射線測定器
Claims (2)
- セシウム・ストロンチウム吸着材に、放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを含む汚染水を通過させて、前記吸着材に放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを吸着させる工程と、
前記吸着材を、有機酸を含む溶離液を通過させて、吸着した放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを吸着させる工程であって、前記溶離液の体積は、前記汚染水の体積よりも小さい工程と、
放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを含有する溶離液を、酸化剤によって処理し、前記有機酸を破壊する工程と
を含み、
前記セシウム・ストロンチウム吸着材は、0.5質量%〜15質量%の1種または複数種の固体超強酸成分を含む分相法多孔質ガラスからなり、前記セシウム・ストロンチウム吸着材は砂または粉体の形態を有し、前記固体超強酸成分は、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、および酸化スズからなる群から選択されることを特徴とするセシウム・ストロンチウム濃縮方法。 - 耐熱性および不浸透性を有する材料で形成されたカラム筒と、前記カラム筒内に充填されたセシウム・ストロンチウム吸着材とを含むカラムを準備する工程と、
前記カラムに、放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを含む汚染水を通過させて、前記吸着材に放射性セシウムおよび/またはストロンチウムを吸着させる工程と、
前記カラムの上部に、未使用のセシウム・ストロンチウム吸着材を充填する工程と、
前記カラムの上部から圧力を印加した状態で、前記カラムを加熱焼成して、前記セシウム・ストロンチウム吸着材を焼結固化させる工程と
を含み、
前記セシウム・ストロンチウム吸着材は、0.5質量%〜15質量%の1種または複数種の固体超強酸成分を含む分相法多孔質ガラスからなり、前記セシウム・ストロンチウム吸着材は砂または粉体の形態を有し、前記固体超強酸成分は、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、および酸化スズからなる群から選択されることを特徴とする、セシウム・ストロンチウムのガラス固化安定化処分方法。
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山崎和子: "分相ポーラスガラスの応用研究とキャラクタリゼーション", 横浜国立大学大学院工学府 博士論文, JPN6018016054, March 2015 (2015-03-01), JP, pages 1 - 132, ISSN: 0004528167 * |
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