JP2019060195A - 鋼製セグメント及びシールドトンネル - Google Patents

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Abstract

【課題】鋼製セグメント全体の桁高を高くすることなく、継手部をはじめとする鋼製セグメントの少なくとも継手側端部の剛性が高められた鋼製セグメントと、この鋼製セグメントを少なくとも一部に有するシールドトンネルを提供する。【解決手段】トンネルを形成する鋼製セグメント10であり、周方向に延設するとともに、軸方向に間隔を置いて並設される、リング継ぎボルト孔1aを備えた複数の桁1と、周方向に延設するとともに、桁1の外周側に取付けられている鋼製プレート2と、桁1及び鋼製プレート2の両端部に取付けられていて、セグメント継ぎボルト孔3aを備えている継手板3と、を有し、桁1は、継手板側の両端部領域のうち、少なくとも一方の端部領域11の桁高h2が他の領域12に比べて相対的に高く、端部領域11に対応する継手板3Aの高さも高い桁高と同じ高さである。【選択図】図3

Description

本発明は、鋼製セグメントと、この鋼製セグメントを少なくとも一部に有するシールドトンネルに関する。
例えば、軟弱な地盤が分布する都市部で道路トンネルを施工する場合、開削工法の適用が一般的であるものの、開削工法は、工事中の騒音や振動、交通規制等の課題を内在している。また、都市部の道路下空間は、複数の地下鉄や共同溝等の埋設物が輻輳していることから、新たに施工しようとするトンネルの設置深度は往々にして深くなる傾向にあり、設置深度の深層化は建設費の増大に直結する。このような背景の下、道路トンネルの施工に際してシールド工法を適用するケースが増加している。ところで、この道路トンネルの施工に当たり、一般の道路トンネルの施工では、例えば一台のシールド掘進機の掘進によって断面円形の本線トンネルが施工されることで足りる。一方、道路トンネルの分合流部の施工では、本線トンネルとランプトンネルの各断面を包括する、極めて大規模な地中拡幅が必要になり、加えて、断面が縦断方向に変化する複雑な構造を有することから、その施工には様々な工夫を講じる必要がある。
この大断面トンネルの施工方法やトンネル構造には様々な提案がなされている。例えば、互いに平行な2本のシールドトンネル間を鉄筋コンクリート製の躯体で連結する大断面トンネルの構造や、この大断面トンネルに適用されるセグメントリングが提案されている(例えば特許文献1を参照)。特許文献1に記載のシールドトンネルでは、2本のシールドトンネルが鋼製セグメントにて形成されている。この鋼製セグメントで形成される2本のシールドトンネル間を連結する鉄筋コンクリート躯体の剛性を、鋼製セグメントで形成されるシールドトンネルの剛性よりも大きくし、作用荷重によるセグメントリングの変形が鉄筋コンクリート製の躯体の変形で支配されるようにしている。係る構成の大断面トンネルを構成する、鋼製セグメントで形成されるシールドトンネルにおいて、鋼製セグメントの継手部に発生する曲げモーメントが大きくなる部位の鋼製セグメントの桁高を、他の部位よりも小さくしている。
特開2004−204545号公報
特許文献1に記載の大断面トンネルは、2つの鋼製セグメントから形成されるシールドトンネルを、その中央位置において、相対的に高剛性の鉄筋コンクリート製の躯体にて連結する構造である。すなわち、鉄筋コンクリート製の躯体に荷重を積極的に負担させる設計思想の下で、その左右のシールドトンネルでは、曲げモーメントの大きくなる部位の鋼製セグメントの桁高を相対的に小さくできるという効果が得られる。
しかしながら、例えば、2つの鋼製セグメントから形成されるシールドトンネルを、その中央で鋼製のセグメントからなる切り開き部にて連結するような構成の大断面トンネルでは、トンネルの全構成部材が鋼製セグメントであることから、それぞれの鋼製セグメントが自身の負担すべき荷重を負担しなければ、他の鋼製セグメントに影響を与えてしまう。すなわち、施工過程において、または施工完了の状態において、曲げモーメントが過大になる部位が生じる場合でも、当該部位においてこの過大な曲げモーメントに対処する必要がある。
ここで、大断面トンネルの全てが鋼製セグメントにて形成される一例を、図1,2を参照して説明する。図1は、鋼製セグメントで形成される本線トンネルST1と、同様に鋼製セグメントで形成されるランプトンネルST2を、同様に鋼製セグメントで形成される切り開きトンネルCTで連結して大断面トンネルを形成する施工方法を説明する図である。同図において、まず、本線トンネルST1をシールド工法で施工し、ランプトンネルST2も本線トンネルST1と同時もしくは相前後してシールド工法にて施工する。なお、この施工に際して、先行して好適な地盤改良施工が施工エリア周辺に実施されることが一般に行われる。隣接する鋼製セグメントS同士を、継手板とセグメント継ぎボルトから形成される継手部Jを介して接続してセグメントリングを形成し、複数のセグメントリングをトンネル軸方向に並べてリング継ぎボルトで接続することにより、本線トンネルST1とランプトンネルST2がシールド施工される。その後、例えば、不図示のパイプルーフを本線トンネルST1とランプトンネルST2の上方と下方に掛け渡すように施工し、このパイプルーフを支保工として、パイプルーフの下方や上方を透かし掘り等して施工空間を形成し、切り開きトンネルCT用のセグメントS同士を継手部Jを介して接続しながら、本線トンネルST1とランプトンネルST2に掛け渡す。
次に、本線トンネルST1とランプトンネルST2、及び切り開きトンネルCTを連通させる施工を行う。具体的には、図2に示すように、本線トンネルST1とランプトンネルST2双方の外周のスキンプレートを撤去し、双方の周方向に延設する桁を残置する。次に、この桁を撤去して連通施工を完成させるに当たり、図2に示すように、切り開きトンネルCTが本線トンネルST1及びランプトンネルST2と接続する交点から、切り開きトンネルCTの例えば接線方向に延びる補強梁SP1乃至SP4を取り付け、残されている本線トンネルST1とランプトンネルST2双方の桁の撤去を行う。
桁を撤去することにより、本線トンネルST1とランプトンネルST2、及び切り開きトンネルCTが完全に連通し、大断面トンネルが形成される。ところで、この桁の撤去により、大断面トンネルは上下に潰される方向に変形するが、切り開きトンネルCTに作用する土圧は、補強梁SP1乃至SP4を介して本線トンネルST1とランプトンネルST2に伝達され、大断面トンネル全体として作用土圧に抗することができる。
しかしながら、補強梁SP1乃至SP4から本線トンネルST1とランプトンネルST2に伝達される軸力N1乃至N4は必然的に大きくならざるを得ず、本線トンネルST1とランプトンネルST2においてこの過大な軸力N1乃至N4に突き上げられる箇所やその周辺領域では、この過大な軸力N1乃至N4に起因して過大な曲げモーメントが生じることになる。例えば、図2は、この軸力N1乃至N4にて生じる曲げモーメント分布図をともに示している。図2に示すように、軸力N1にて突き上げられる箇所の近傍には過大な曲げモーメントM1が生じ、軸力N3にて突き上げられる箇所の近傍にも過大な曲げモーメントM2が生じる。従って、当該箇所における本線トンネルST1やランプトンネルST2を形成する鋼製セグメントSや鋼製セグメントS同士を繋ぐ継手部Jは、このように過大な曲げモーメントに抗し得る剛性を有する必要がある。
鋼製セグメントにおいて剛性を高めるには、鋼製セグメント全体の桁高を高くすることが有効である。しかしながら、鋼製セグメント全体の桁高をトンネルの内空側に高くすると、トンネル内の建築限界と干渉する場合が往々にしてある。一方、鋼製セグメント全体の桁高をトンネルの外側に高くすると、地盤の掘削量が増加し、排土量が増加することより、その処分費の増加によって工費が上昇してしまう。そこで、鋼製セグメント全体の桁高を高くすることに代わって、鋼製セグメントの剛性を高めるとともに、鋼製セグメント同士を繋ぐ鋼製セグメント端部の継手部の剛性を高める方策が望まれている。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、鋼製セグメント全体の桁高を高くすることなく、継手部をはじめとする鋼製セグメントの少なくとも継手側端部の剛性が高められた鋼製セグメントと、この鋼製セグメントを少なくとも一部に有するシールドトンネルを提供することを目的としている。
前記目的を達成すべく、本発明による鋼製セグメントの一態様は、トンネルの周方向と該周方向に直交する軸方向に、リング継ぎボルト及びセグメント継ぎボルトを介して連結され、該トンネルを形成する鋼製セグメントであって、
前記周方向に延設するとともに、前記軸方向に間隔を置いて並設される、リング継ぎボルト孔を備えた複数の桁と、
前記周方向に延設するとともに、前記桁の外周側に取付けられている鋼製プレートと、
前記桁及び前記鋼製プレートの両端部に取付けられていて、セグメント継ぎボルト孔を備えている継手板と、を有し、
前記桁は、前記継手板側の両端部領域のうち、少なくとも一方の端部領域の桁高が他の領域に比べて相対的に高く、該端部領域に対応する前記継手板の高さも高い桁高と同じ高さであることを特徴とする。
本態様によれば、鋼製セグメントの両端部のうち、少なくとも一方の端部領域の桁高のみを他の領域に比べて相対的に高くし、この端部領域に対応する継手板の高さも同じ高さであることにより、鋼製セグメント全体の桁高を高くすることなく、鋼製セグメントの端部領域及び継手部の剛性を効果的に高めることができる。このように、鋼製セグメントの桁の一部の領域のみ桁高を高くすることにより、鋼製セグメントがトンネル内に設定される建築限界と干渉する可能性は低くなる。また、桁の一部の桁高を高くする本態様の構成においては、鋼製セグメントの桁の桁高を内周側に向かって高くするのが好ましい。鋼製セグメントの桁の桁高を外周側に向かって高くすると、シールド掘進機のスキンプレート内面と鋼製セグメント背面の間のテールクリアランス量を低減するためである。ここで、「端部領域」とは、特に、継手部の剛性を高めることを可能にした鋼製セグメントの端部の領域であり、例えば、周方向に円弧状に延設する桁の長さLのうち、L/4の範囲乃至L/6の範囲程度を端部領域に設定できる。また、「少なくとも一方の端部領域」とは、鋼製セグメントの両端の端部領域の桁高を高くする必要があるときは双方の端部領域のことを意味し、いずれか一方の端部領域の桁高のみを高くする必要があるときは当該一方の端部領域のことを意味している。さらに、「端部領域に対応する継手板の高さも高い桁高と同じ高さである」とは、継手板の高さレベルが、高い桁高の高さレベルと同じであることを意味しており、継手板の高さそのものが高い桁高であることを必ずしも意味するものではない。例えば、鋼製プレートが桁と同程度の厚みを有するフランジからなる場合、このフランジは桁の内面に接合されることより、この場合は、フランジの厚みと継手板の高さの総計が高い桁高の高さになる。一方、鋼製プレートがスキンプレートからなる場合、スキンプレートは桁の外周側端面に接合されることより、この場合は、継手板の高さが高い桁高と同じ高さになる。いずれの形態であっても、継手板の高さレベルは高い桁高と同じレベルになる。また、本態様において、桁の製作方法は、桁高の高い端部領域と他の領域を一体に製作する方法の他、一定の桁高の桁を通常通り製作するとともに、端部領域における桁高の増加領域を桁高増しピースとして別体に製作し、双方を溶接等で接合する方法にて製作してもよい。なお、本態様の鋼製セグメントは、2つの桁を有する2主桁タイプの鋼殻構造を有していてもよいし、3つ以上の桁を有する3主桁以上タイプの鋼殻構造を有していてもよい。
また、本発明による鋼製セグメントの他の態様は、前記桁高が、前記他の領域から前記端部領域に亘ってなだらかに高くなっていることを特徴とする。
本態様によれば、桁の端部領域の桁高が他の領域からなだらかに端部に向かって高くなり、少なくとも最端部で最も高い桁高を有し、この桁高と同じ高さの継手板が接続されていることにより、鋼製セグメントの剛性を端部に向かって徐々に高めていくことができる。そのため、セグメント継ぎボルトからの軸力を継手板を介してスムーズに桁に伝達することができ、また、端部領域と他の領域の境界付近で内部応力が極端に異なる場合に、当該境界領域が構造弱部になるといった問題も生じない。ここで、「なだらかに高くなっている」形態として、テーパー状(斜め直線状)に高くなる形態、テーパー状に高くなった後、水平に延びる形態、湾曲状に高くなる形態など、様々な形態が含まれる。
また、本発明による鋼製セグメントの他の態様は、前記鋼製プレートがスキンプレートであることを特徴とする。
本態様によれば、桁とスキンプレートとを有する一般的な鋼製セグメントを使用し、桁の端部領域の桁高のみを高くし、この高さの継手板を桁の端部に接続することにより、この改良に伴う鋼製セグメントの製作コストの増加を可及的に抑制することができる。
また、本発明による鋼製セグメントの他の態様は、前記鋼製プレートがフランジであり、該フランジは、その剛性が前記桁の剛性と大きく異ならない、もしくは、その剛性が前記桁の剛性と同じかそれ以上であることを特徴とする。
本態様によれば、桁の剛性と同程度の剛性もしくはそれ以上の剛性のフランジが、スキンプレートに代わって桁の外周側に取付けられていることにより、鋼製セグメント全体の剛性を高めることができる。そして、桁の端部領域と高剛性のフランジの双方に継手板が接続されることにより、鋼製セグメントの接続部の剛性をより一層高めることができる。
また、本発明による鋼製セグメントの他の態様は、前記鋼製プレートがフランジとスキンプレートとを含み、
前記フランジは、前記桁の外周側の側面から側方に所定幅だけ張出して他方の桁まで延びておらず、該フランジの外側に前記スキンプレートが取付けられていることを特徴とする。
本態様によれば、フランジが桁同士を繋ぐ幅を有していないことより、フランジの材料費を低減しながら、剛性の高い鋼製セグメントを形成できる。なお、フランジが桁同士を繋いでいないことより、双方のフランジの外側に土砂の浸入を防止するスキンプレートが必要になる。
また、本発明による鋼製セグメントの他の態様は、前記継手板が、前記桁の近傍において、該桁に沿う方向に複数のセグメント継ぎボルト孔を備えていることを特徴とする。
本態様によれば、継手板が、桁の近傍においてセグメント継ぎボルト孔を備えていることにより、セグメント継ぎボルト孔に挿通されて鋼製セグメント同士を繋ぐセグメント継ぎボルトを介して伝達されてきた軸力を、効果的に桁に伝達させることができる。
また、本発明による鋼製セグメントの他の態様において、前記所定幅は、前記桁から前記フランジの厚みの16倍以下の範囲であることを特徴とする。
本態様によれば、フランジが桁の外周側の側面から側方に張り出す前記所定幅を、フランジの有効幅、すなわち、フランジが桁とともに構造部材の主断面として考慮可能な範囲に規定することができる。道路橋示方書・同解説 鋼橋編(社団法人日本道路協会)によれば、引張フランジ自由突出部の板厚は、鋼種にかかわらず自由突出幅の1/16以上にすることが規定されている。この規定を言い換えると、板厚の16倍以下の範囲を、引張フランジの有効幅に規定することができる。仮に、フランジが桁同士を繋いでいる形態において、フランジの幅が広すぎる場合は、フランジの全幅を構造部材の主断面として有効な範囲とすることはできない。上記道路橋示方書の規定に則れば、双方の桁から、それぞれフランジの厚みの16倍までの範囲を有効幅にできる。すなわち、構造部材の主断面として考慮できない幅の広過ぎるフランジの取付けを解消することができる。
また、本発明による鋼製セグメントの他の態様は、前記複数の桁同士を繋ぐ縦リブを有していることを特徴とする。
本態様によれば、縦リブによって鋼製セグメントの剛性を高めることができる。この縦リブは、周方向に所定間隔を置いて複数配設されるのが好ましい。
また、本発明による鋼製セグメントの他の態様は、前記複数の桁の間にコンクリート硬化体を有していることを特徴とする。
本態様によれば、鋼製の桁とフランジやスキンプレートで形成された箱型の鋼製セグメントの鋼殻内に、コンクリート硬化体が配設され、鋼製の桁やフランジ等とコンクリートが一体となった合成セグメントが形成されることにより、より剛性の高い鋼製セグメントが形成される。また、継手板が桁のみならずコンクリートとも一体とされることにより、継手部の剛性をより一層高めることができる。
また、本発明によるシールドトンネルの一態様は、複数の前記鋼製セグメントが前記周方向の少なくとも必要な領域に配設され、対向する二つの前記継手板のそれぞれの対応する前記セグメント継ぎボルト孔に前記セグメント継ぎボルトが取付けられてセグメントリングが形成され、
複数の前記セグメントリングが前記軸方向において少なくとも必要な領域に配設され、対向する前記桁のそれぞれの対応する前記リング継ぎボルト孔同士に前記リング継ぎボルトが取付けられて形成されていることを特徴とする。
本態様によれば、桁高を桁の端部領域のみ高くして特に継手部の剛性が高められた鋼製セグメントを少なくとも一部に備えたセグメントリングが、トンネルの軸方向の少なくとも必要な領域に配設されていることにより、例えば曲げモーメントが卓越した領域に効果的に高剛性の継手部を有する鋼製セグメントを配設しながら、工費を増加させることのないシールドトンネルを提供できる。ここで、「複数の前記鋼製セグメントが前記周方向の少なくとも必要な領域に配設され」とは、例えば図2において曲げモーメントが他の領域に比べて卓越している領域に少なくとも本発明の鋼製セグメントが組み込まれたセグメントリングを意味する。特に曲げモーメントが卓越した領域に本発明の鋼製セグメントからなるセグメントリングを配設し、他の領域には通常の鋼製セグメント(スキンプレートと桁から構成され、桁高が全体的に一定の箱型の鋼製セグメント)を配設してセグメントリングを形成するのが合理的であり、経済的である。また、「複数の前記セグメントリングが前記軸方向において少なくとも必要な領域に配設され」とは、軸方向において曲げモーメントの卓越した領域に、本発明の鋼製セグメントが組み込まれたセグメントリングを配設することを意味する。曲げモーメントの卓越した領域においても、鋼製セグメントの桁高は一部のみ高くなるに過ぎないことから、鋼製セグメントが建築限界と干渉する可能性は低く、掘削土量及び排土量の増加に起因する工事費増加の問題は生じ難い。
本発明の鋼製セグメントによれば、鋼製セグメント全体の桁高を高くすることなく、継手部をはじめとする鋼製セグメントの少なくとも継手側端部の剛性が高められた鋼製セグメントを提供できる。また、本発明のシールドトンネルによれば、本発明の鋼製セグメントを少なくとも一部に有するセグメントリングがトンネルの軸方向に接続されていることにより、鋼製セグメント全体の桁高を高くすることなく、卓越した外力に抗しながら、経済的なシールドトンネルを提供できる。
鋼製セグメントで形成される本線トンネル及びランプトンネルを、鋼製セグメントで形成される切り開きトンネルで連結して大断面トンネルを形成する施工方法を説明する断面図である。 図1に続いて大断面トンネルの施工方法を説明する断面図であって、設置された補強梁から作用する軸力により、本線トンネルとランプトンネルに生じる曲げモーメント分布の一例を示す図である。 第1の実施形態に係る鋼製セグメントの斜視図である。 端部領域の側面形状の変形例を示す側面図である。 2つの桁を有する鋼殻構造の継手板の設計手法を説明する図である。 第2の実施形態に係る鋼製セグメントの斜視図である。 第3の実施形態に係る鋼製セグメントの斜視図である。 第4の実施形態に係る鋼製セグメントの斜視図である。 第5の実施形態に係る鋼製セグメントの斜視図である。 コーベル理論の適用が難しい場合における、3つ以上の桁を有する鋼殻構造の継手板の設計手法を説明する図である。 実施形態に係るシールドトンネルを有する大断面トンネルを説明する断面図である。
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
[第1の実施形態に係る鋼製セグメント]
まず、第1の実施形態に係る鋼製セグメントについて説明する。図3は、第1の実施形態に係る鋼製セグメントの斜視図である。図3に示すように、鋼製セグメント10は、周方向に延設する所定の曲率を備えた2つの桁1と、2つの桁1の外周側(形成されるセグメントリングの外側(地山側))において桁1同士を繋いで周方向に延設するフランジ2A(鋼製プレート2)と、桁1及びフランジ2Aの両端部に取付けられている継手板3とを有する。
桁1は、側面に複数のリング継ぎボルト孔1aを備えている。2つの桁1同士の間には複数の縦リブ4が配設されており、複数の縦リブ4により、箱型の鋼製セグメント10の剛性が一層高められている。桁1とフランジ2A,桁1とフランジ2Aと縦リブ4、はいずれも隅肉溶接にて溶接され、桁1とフランジ2Aと継手板3は部分溶け込み溶接にて溶接されて、図3に示す鋼製セグメント10が形成される。図示するように、鋼製セグメント10は、フランジ2Aが2つの桁1を外周側で接続しており、したがって、通常の鋼製セグメントの有するスキンプレートを不要にしている。
桁1の厚みはt1、フランジ2Aの厚みはt2であり、例えば、t1、t2は30乃至70mmの範囲の厚みを有しており、フランジ2Aは、その剛性が桁1の剛性と大きく異ならないか、もしくは、その剛性が桁1の剛性と同じかそれ以上となるように双方の剛性が設定されている。ちなみに、通常使用されるスキンプレートの厚みは3乃至6mm程度であり、スキンプレートに対してフランジ2Aの厚みは10倍程度も厚く、従って、フランジ2Aは桁1とともに構造部材の主断面を形成する。しかしながら、フランジ2Aが桁1とともに構造部材の主断面として考慮可能な範囲は、フランジ2Aの全幅範囲とは限らない。そこで、まず、フランジ2Aの幅のうち、桁1とともに構造部材の主断面として見込むことのできる幅(これを有効幅とする)を設定する。
道路橋示方書・同解説 鋼橋編(社団法人日本道路協会)によれば、引張フランジ自由突出部の板厚は、鋼種にかかわらず自由突出幅の1/16以上にすることが規定されている。この規定を言い換えると、フランジ2の厚みt2の16倍の範囲(16t2)以下の範囲を、引張フランジの有効幅に規定することができる。例えば、フランジ2の全幅がこの有効幅以下の幅であれば、フランジ2の全幅を有効幅と見なすことができる。一方、フランジ2の全幅が有効幅よりも広い場合は、桁1からフランジ2の厚みt2の16倍までの範囲を有効幅とし、フランジ2の有効幅範囲を主断面として構造計算上見込むことができる。図3に示す鋼製セグメント10では、フランジ2Aの全幅sが有効幅である、16t2以下の幅となっており、従って、フランジ2Aの全幅sを有効幅とすることができる。また、図3に示す鋼製セグメント10は、周方向に直交する断面形状が正方形に近い矩形である。これは、発生曲げモーメントM1が極めて大きく、フランジ2Aの幅を長くすることができない現場状況に対応しているためである。
発生曲げモーメントが卓越する領域に適用される鋼製セグメント10は、その構成要素である桁1のうち、端部領域11の桁高h2が他の領域12の桁高h1よりも高く設定されている。図3では、発生曲げモーメントが卓越する領域が図示する2つの鋼製セグメント10の境界付近であることを前提として、これら2つの鋼製セグメント10,10の間の継手部6A側の端部領域11の桁高h2を、他の領域12の桁高h1よりも高く設定している。すなわち、発生曲げモーメントが卓越しない他方の継手部6B側では、桁1の高さはh1のままである。従って、仮に、鋼製セグメント10の両端部で発生曲げモーメントが卓越する場合は、鋼製セグメント10の両端部に桁高がh2の端部領域11を形成し、これら2つの端部領域の間に桁高h1の他の領域12を設定すればよい。
図3では、桁高h1で円弧方向にL1の長さに製作された桁1の端部領域11において、別体で製作された桁高増しピース5Aが溶接にて桁1の内周面側の端面に接合されることにより、端部領域11が形成されている。端部領域11の桁高h2を外周側に向かって高くすると、シールド掘進機のスキンプレート内面と鋼製セグメント10背面の間のテールクリアランス量を低減することより、図示例のように、桁高増しピース5Aは桁1の内周側の端面に取付けられるのがよい。桁高増しピース5Aは、他の領域12側から直線状に徐々に高くなるテーパー部5aと、テーパー部5aに連続して水平に延出する水平部5bとを有する側面視台形状で、桁1と同素材の鋼製ピースである。2つの桁1の双方の端部領域11にそれぞれ桁高増しピース5Aが接合され、この端部領域11の高さレベルと同じ高さレベルとなる継手板3Aが溶接にて接続されている。すなわち、フランジ2Aの厚みt2と継手板3Aの高さの総計が、桁高h2と同じ高さになっている。
従って、他方の継手部6Bを形成する継手板3Bは、桁1の近傍において一列上に等間隔で4つのセグメント継ぎボルト孔3aが開設されている(合計8つのセグメント継ぎボルト孔3a)のに対して、継手部6Aを形成する継手板3Aでは、高さが相対的に高いことから、桁1の近傍における列上に5つのセグメント継ぎボルト孔3aが開設されている(合計10個のセグメント継ぎボルト孔3a)。すなわち、継手部6Aでは、鋼製セグメント10同士を接続する不図示のセグメント継ぎボルトの本数が、他の継手部6Bにおけるセグメント継ぎボルトの本数よりも多くなり、より多くの軸力を桁1やフランジ2Aに伝達することができる。そして、より多くの本数のセグメント継ぎボルトからの軸力は、継手板3Aを介して、桁高の高い桁1の端部領域11に伝達されることになるが、端部領域11の桁高が高いことから、この軸力に起因する引張り力や発生曲げモーメントに十分に抗することができる。すなわち、桁高の高い桁1の端部領域11と、この端部領域11と同じ高さレベルの継手板3A及び本数の多いセグメント継ぎボルトから構成される高剛性の継手部6Aと、により、卓越する曲げモーメントに対して十分な耐力を備えた鋼製セグメント10となる。
また、桁高増しピース5Aが、テーパー部5aと水平部5bとからなるなだらかな外形を有していることにより、セグメント継ぎボルトの軸力を桁1に対してスムーズに伝達することが可能になり、さらには、端部領域11と他の領域12の境界付近で発生する応力が大きくなること(言い換えれば、この領域が構造弱部になること)を抑制することができる。
ここで、図4を参照して、桁高増しピースの変形例を説明する。図4(a)に示す桁高増しピース5Bは、直線状のテーパー部5aと円弧部5cを備えたピースである。図4(a)に示すように、継手部6Aにおいて、2つの桁高増しピース5Bによる全体形状はなだらかな山形を呈している。また、図4(b)に示す桁高増しピース5Cは、2つの円弧部5cを相互に反転させて繋げたピースである。図4(b)と図4(a)を比較すると明らかであるが、図4(b)の桁高増しピース5Cにより、他の領域12から端部領域12への移行がよりなだらかになっている。また、図4(c)に示す桁高増しピース5Dは、側面視三角形状を呈しており、2つの桁高増しピース5Dにて二等辺三角形状の山形を呈している。このように、いずれの桁高増しピース5A乃至5Dによっても、セグメント継ぎボルトからの軸力を桁1にスムーズに伝達することを可能とし、端部領域11と他の領域12の境界付近における発生応力が大きくなることを抑制することができる。
図3に戻り、桁1の円弧方向の全長L1に対する端部領域11の長さL2は、作用する軸力や発生曲げモーメントに応じて適宜設定されることになるが、例えば、L2を2(h2−h1)+h1/2に設定できる。図中、桁高増しピース5Aにおいて、テーパー部5aの幅L3を2(h2−h1)に設定し、水平部5bの幅L4をh1/2に設定できる。さらに、テーパー部5aのテーパー角度は、L3:h3を2:1に設定できる。
次に、継手板3に開設されるセグメント継ぎボルト孔3aの開設位置について説明する。セグメント継ぎボルト孔3aは、桁1の近傍において桁1に沿う方向に複数設けられる。図示例では、各桁1の近傍において、桁1に沿う1つのライン上に4つもしくは5つのセグメント継ぎボルト孔3aが開設されている。なお、図示例のように、1列上に複数のセグメント継ぎボルト孔3aが開設される形態以外にも、例えば2列上に複数のセグメント継ぎボルト孔3aが開設されてもよし、1ラインを中心にラインの左右に千鳥配置に複数のセグメント継ぎボルト孔3aが開設されてもよい。
継手板3において、セグメント継ぎボルト孔3aは桁1の近傍(離間s1)に設けられるのが望ましい。ここで、この「近傍」について定義する。まず、セグメント継ぎボルト孔3a,3bが、継手板3において、仮に桁1から離れた位置(例えば継手板3の中央近傍位置)に開設されている場合、このセグメント継ぎボルト孔3aに挿通されるセグメント継ぎボルトからの軸力が桁1に伝達されるまでの距離が長くなってしまう。このような場合、セグメント継ぎボルトにて相互に接続されている2つの鋼製セグメント10の各継手板3は、セグメント継ぎボルトを中心に両開きするように変形し、この継手板3の変形に伴い、セグメント継ぎボルトからの軸力を継手板3を介して桁1やフランジ2Aに十分に伝達できなくなる。そこで、第1の実施形態を含む、以下全ての実施形態に係る鋼製セグメント10乃至50では、セグメント継ぎボルトから桁1に軸力が十分に伝達される位置を、桁1の近傍とする。
次に、継手板3の板厚の設計手法について説明する。図5は、2つの桁を有する鋼殻構造の継手板の設計手法を説明する図である。2つの桁を有する鋼殻構造の継手板の設計方法は、継手板に曲げモーメントを発生させないよう、コーベル理論に基づいて設計を行う。従って、桁1と継手板3の溶接箇所においても、コーベル理論に基づく反力に対して溶接箇所の照査を行い、溶接箇所の設計を行う。
図5に示すように、継手板3の板厚(厚み)をt3とし、桁1から継手板3のセグメント継ぎボルト孔3aまでの離間をs1とした際に、t3/s1≧1を満たす場合に、継手板3に曲げモーメントを発生させない、コーベル理論に基づいた設計が可能になる。なお、離間s1の位置は、詳細には、セグメント継ぎボルトBからの軸力Pに基づく反力分布が三角形状となることより、三角形の重心位置(図示例では、三角形の幅のうち桁1側から1/3の位置)から桁1までの離間がs1になる。このように、コーベル理論に基づいた設計方法により、継手板3の厚みt3を設定する。また、上記算定式には、桁1からセグメント継ぎボルト孔3aまでの離間s1も変数になっていることより、継手板3の厚みt3との関係で、桁1からセグメント継ぎボルト孔3aまでの離間s1(上記する近傍の位置)も種々設定することが可能になる。
図3に示す複数の鋼製セグメント10を使用して、当接する継手板3Aの対応するセグメント継ぎボルト孔3aにセグメント継ぎボルトが挿通されて締め付けられ、また、当接する継手板3Bの対応するセグメント継ぎボルト孔3aにセグメント継ぎボルトが挿通されて締め付けられ、セグメントリングが形成される。なお、このセグメントリングでは、卓越する曲げモーメントが発生する箇所に図示する鋼製セグメント10が適用され、曲げモーメントが卓越しない箇所では通常の鋼製セグメント(桁高増しピース5A乃至5Dを備えていない鋼製セグメント)が適用されて、セグメントリングが形成される。図3に示す鋼製セグメント10は、桁1と同程度かそれ以上の剛性を有するフランジ2Aで桁1同士が繋がれて形成され、全体の剛性が高められており、また、曲げモーメントが卓越する領域の端部のみ、一部桁高を高くして桁および継手部の剛性を高めたものである。そのため、シールドトンネルを形成するセグメントリングにおいて、少なくとも曲げモーメントが卓越する領域に鋼製セグメント10を配設することにより、鋼製セグメント10がシールドトンネル内の建築限界と干渉する可能性は低く、また、掘削土量および排土量の増加に伴う工事費増加の問題の可能性も低い。
[第2の実施形態に係る鋼製セグメント]
次に、第2の実施形態に係る鋼製セグメントについて説明する。図6は、第2の実施形態に係る鋼製セグメントの斜視図である。図6に示すように、鋼製セグメント20は、周方向に延設する所定の曲率を備えた2つの桁1と、2つの桁1を繋ぐスキンプレート2B(鋼製プレート2)と、桁1及びスキンプレート2Bの両端部に取付けられている継手板3とを有する。すなわち、図3に示す鋼製セグメント10との相違点は、フランジ2Aに代わって、一般のスキンプレート2Bを適用し、さらに、2つの桁1間の幅をより広くしている点である。
高剛性で厚みのあるフランジ2Aに代わって、一般のスキンプレート2Bを適用したことにより、鋼製セグメント20の製作コストを相対的に安価にできる。また、曲げモーメントが卓越する領域には、鋼製セグメント10と同様に桁高の高い端部領域11を備え、高い桁高h2と同じ高さの継手板3Aが端部に接続されていることにより、剛性の高い継手部6Aを有していることは鋼製セグメント10と同様である。
[第3の実施形態に係る鋼製セグメント]
次に、第3の実施形態に係る鋼製セグメントについて説明する。図7は、第3の実施形態に係る鋼製セグメントの斜視図である。図7に示すように、鋼製セグメント30は、周方向に延設する所定の曲率を備えた2つの桁1と、2つの桁1の外周側において、桁1同士を繋がずに周方向に延設するフランジ2Cと、外周側の左右のフランジ2Cの外周側に配設されたスキンプレート2Bと、桁1及びフランジ2Cの両端部に取付けられている継手板3とを有する。
フランジ2Cは、せいぜい有効幅16t2の幅を有しており、継手板3は、桁1の近傍にはセグメント継ぎボルト孔3aを有している。なお、例えば、フランジ2Cの2倍の幅が、2つの桁1間の幅(離間)の50%以上となるようにフランジ2Cの各幅を設定することができる。
鋼製セグメントの幅が比較的広い場合には、フランジにて2つの桁1同士を繋ぐまでもなく、例えば有効幅程度の幅を有するフランジ2Cを桁1の外周側の側方に張り出した図示例の構成を適用することにより、厚みの大きなフランジをコンパクトにしてその材料費を低減しながら、高剛性の鋼製セグメントを形成することができる。また、曲げモーメントが卓越する領域には、鋼製セグメント10,20と同様に桁高の高い端部領域11を備え、同様の高さレベルの継手板3Aが端部に接続されていることにより、剛性の高い継手部6Aを有していることは鋼製セグメント10,20と同様である。
[第4の実施形態に係る鋼製セグメント]
次に、第4の実施形態に係る鋼製セグメントについて説明する。図8は、第4の実施形態に係る鋼製セグメントの斜視図である。図8に示すように、鋼製セグメント40は、図6に示す鋼製セグメント20と同様に、周方向に延設する所定の曲率を備えた2つの桁1と、2つの桁1の外周側において桁1同士を繋いで周方向に延設するスキンプレート2Bと、桁1及びスキンプレート2Bの両端部に取付けられている継手板3とを有する。そして、鋼製セグメント40はさらに、箱型の鋼殻の内部に、コンクリート硬化体7を備えており、桁1、スキンプレート2B、継手板3、及び縦リブ4とコンクリートが一体となっている合成セグメントを形成している。
このように、箱型の鋼殻内にコンクリート硬化体7が配設され、鋼殻とコンクリートが一体となっていることにより、より一層剛性の高い鋼製セグメント40が形成される。さらに、継手板3が桁1に加えてコンクリートと一体になっていることにより、より一層高強度な継手部6Aが形成される。なお、図示を省略するが、これまで説明してきた他の鋼製セグメント10,30の鋼殻内にコンクリート硬化体が配設されてなる鋼製セグメントであってもよく、これらの鋼製セグメントも鋼製セグメント40と同様に、より一層剛性の高い鋼製セグメントとなり、継手部6Aの強度もより一層高くなる。
[第5の実施形態に係る鋼製セグメント]
次に、第5の実施形態に係る鋼製セグメントについて説明する。図9は、第5の実施形態に係る鋼製セグメントの斜視図である。図9に示すように、鋼製セグメント50は、周方向に延設する所定の曲率を備え、左右および中央に配設された3つの桁1と、3つの桁1の外周側に配設されてこれらの桁1に接続されるスキンプレート2Bと、桁1及びスキンプレート2Bの両端部に取付けられている継手板3とを有する。例えば、図6に示す鋼製セグメント20よりも幅の広い鋼製セグメント50であり、従って、鋼製セグメント50の剛性を高めるべく、3つの桁1を有している。なお、桁1の数は4つ以上であってもよい。
次に、継手板3の板厚の設計手法について説明する。3つ(以上)の桁を有する鋼殻構造の継手板の設計においても、図5に示すコーベル理論を適用した設計手法を適用できる場合には、当該コーベル理論を適用した設計手法にて継手板の設計を行う。その一方で、コーベル理論の適用が難しい場合には、継手板に曲げモーメントの発生を許容した上で、その曲げモーメントにより板厚を設計する設計手法があることから、ここでは、この設計手法を概説する。図10は、コーベル理論の適用が難しいことを前提として、3つ(以上)の桁を有する鋼殻構造の継手板の設計手法を説明する図である。3つの桁を有する鋼殻構造の継手板の設計方法は、継手板に曲げモーメントの発生を許容した上で、その曲げモーメントにより板厚を設定する。従って、桁1と継手板3の溶接箇所においても、その曲げモーメントに対して照査し、溶接箇所の設計を行う。
図10に示すように、3つ以上の桁を有する鋼殻構造では、両端固定梁によって求められる端部の曲げモーメントMtを、Mt=ΣP×S(L−S)/Lなる式から算定し、算定された曲げモーメントMtを継手板3の曲げ剛性EI(Eは弾性係数、Iは断面2次モーメントで、Iは厚みの3乗に比例)で除して曲げ応力を算定する。算定された曲げ応力が所定の許容応力値以内になるように、継手板3の厚みt3が設定される。
図示する鋼製セグメント50によれば、左右の桁1間の幅が広幅になっても、中央に他の桁1を有していること、全ての桁1が曲げモーメントの卓越する側に桁高の高い端部領域11を有していることより、継手部6Aを含む全体の剛性を高めることができる。
[実施形態に係るシールドトンネル]
次に、実施形態に係るシールドトンネルについて説明する。図11は、実施形態に係るシールドトンネルを有する大断面トンネルを説明する断面図である。図11に示す大断面トンネル300は、シールドトンネルからなる本線トンネル100と、シールドトンネルからなるランプトンネル200と、これら本線トンネル100とランプトンネル200を繋ぐ切り開きトンネルCTと、を有する。
図2と同様に、大断面トンネル300の施工過程において、本線トンネル100とランプトンネル200では、切り開きトンネルCTとの連通に際して障害となる箇所のスキンプレートや桁が撤去される。そのため、図2と同様に、切り開きトンネルCTからの荷重を本線トンネル100とランプトンネル200に逃がす補強梁SP1乃至SP4を設置した後に、スキンプレートや桁の撤去が行われる。特に桁の撤去により、切り開きトンネルCTからの荷重が補強梁SP1乃至SP4を介して過大な軸力として本線トンネル100とランプトンネル200に作用する結果、図中の曲げモーメント分布図のように局所的に過大な曲げモーメントが発生することになる。
そこで、図示する大断面トンネル300は、本線トンネル100とランプトンネル200において、特に過大な曲げモーメントが発生する箇所に例えば実施形態1に係る鋼製セグメント10が適用されている。すなわち、シールド掘進機内において、エレクタにて、従来一般の鋼製セグメントS(端部領域11を有していない鋼製セグメント)と、実施形態1に係る鋼製セグメント10からセグメントリングが形成され、地盤内に設置される。トンネル軸方向に多数のセグメントリングがリング間継ぎボルトにて接続されて本線トンネル100やランプトンネル200が形成されるが、図12に示す横断面において、過大な曲げモーメントが生じる領域(トンネル軸方向の位置によって曲げモーメント分布図は変化する)には、鋼製セグメント10が適用される。
図示する大断面トンネル300によれば、過大な曲げモーメントに対応する領域に鋼製セグメント10が適用されることにより、鋼製セグメント10は端部領域11のみ桁高を高くしているセグメントであることより、大断面トンネル300内にある建築限界と干渉する可能性は極めて低い。また、端部領域11は内周側に桁高を高くしていることより、桁高を外側(地山側)に高くする場合に発生する、掘削土量及び排土量の増加とこれに起因する工事費増加といった問題が生じる可能性も低い。さらに、鋼製セグメント10間の継手部6Aを形成する継手板3Aは、その高さが高くなり、セグメント継ぎボルト孔3aの数が多くなっていることより、セグメント同士を繋ぐセグメント継ぎボルトの本数を増加させることができ、継手部6Aの高強度化を図ることができる。なお、図示を省略するが、大断面トンネル300を形成する本線トンネル100やランプトンネル200の適所には、他の実施形態に係る鋼製セグメント20乃至50が適用されてもよく、また、これらの鋼製セグメント10乃至50の二種以上が組み合わせて適用されてもよい。
なお、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
10,20,30 :鋼製セグメント
40,50 :鋼製セグメント
1 :桁
1a :リング継ぎボルト孔
2 :鋼製プレート
2A,2C :フランジ
2B :スキンプレート
3,3A,3B :継手板
3a :セグメント継ぎボルト孔
4 :縦リブ
5A,5B :桁高増しピース
5C,5D :桁高増しピース
5a :テーパー部
5b :水平部
5c :湾曲部
6A :継手部(高剛性継手部)
6B :継手部
7 :コンクリート硬化体
11 :端部領域
12 :他の領域
100 :シールドトンネル(本線トンネル)
200 :シールドトンネル(ランプトンネル)
300 :大断面トンネル
S :鋼製セグメント
J :継手部
ST1 :シールドトンネル(本線トンネル)
ST2 :シールドトンネル(ランプトンネル)
CT :切り開きトンネル
SP1、SP2 :補強梁
SP3、SP4 :補強梁

Claims (6)

  1. トンネルの周方向と該周方向に直交する軸方向に、リング継ぎボルト及びセグメント継ぎボルトを介して連結され、該トンネルを形成する鋼製セグメントであって、
    前記周方向に延設するとともに、前記軸方向に間隔を置いて並設される、リング継ぎボルト孔を備えた複数の桁と、
    前記周方向に延設するとともに、前記桁の外周側に取付けられている鋼製プレートと、
    前記桁及び前記鋼製プレートの両端部に取付けられていて、セグメント継ぎボルト孔を備えている継手板と、を有し、
    前記桁は、前記継手板側の両端部領域のうち、少なくとも一方の端部領域の桁高が他の領域に比べて相対的に高く、該端部領域に対応する前記継手板の高さも高い桁高と同じ高さであることを特徴とする、鋼製セグメント。
  2. 前記鋼製プレートがフランジであり、該フランジは、その剛性が前記桁の剛性と大きく異ならない、もしくは、その剛性が前記桁の剛性と同じかそれ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の鋼製セグメント。
  3. 前記鋼製プレートがフランジとスキンプレートとを含み、
    前記フランジは、前記桁の外周側の側面から側方に所定幅だけ張出して他方の桁まで延びておらず、該フランジの外側に前記スキンプレートが取付けられていることを特徴とする、請求項1に記載の鋼製セグメント。
  4. 前記継手板が、前記桁の近傍において、該桁に沿う方向に複数のセグメント継ぎボルト孔を備えていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鋼製セグメント。
  5. 前記所定幅は、前記桁から前記フランジの厚みの16倍以下の範囲であることを特徴とする、請求項3に記載の鋼製セグメント。
  6. 請求項1乃至5のいずれか一項に記載の複数の鋼製セグメントが前記周方向の少なくとも必要な領域に配設され、対向する二つの前記継手板のそれぞれの対応する前記セグメント継ぎボルト孔に前記セグメント継ぎボルトが取付けられてセグメントリングが形成され、
    複数の前記セグメントリングが前記軸方向において少なくとも必要な領域に配設され、対向する前記桁のそれぞれの対応する前記リング継ぎボルト孔同士に前記リング継ぎボルトが取付けられて形成されていることを特徴とする、シールドトンネル。
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