JP2019059871A - 炭素繊維及び樹脂を含む複合材料並びに当該複合材料を含む中間基材及び成形体 - Google Patents

炭素繊維及び樹脂を含む複合材料並びに当該複合材料を含む中間基材及び成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】CFRP及びCFRTP等の炭素繊維強化樹脂複合材料の曲げ強度及び衝撃強度等の機械的強度を効果的に向上させる。【解決手段】本発明に係る複合材料は、母材としての樹脂(母材樹脂)及び炭素繊維(CF)を含み、官能基によって修飾されたナノセルロース(NCe)とナノカーボン(NC)とを含むバインダ層を更に含む。上記バインダ層は母材樹脂とCFとの界面の少なくとも一部に介在している。好ましくは、ナノセルロース(NCe)はセルロースナノファイバ(CeNF)であり、ナノカーボン(NC)はカーボンナノチューブ(CNT)であり、CeNFがCNTの表面に絡み付いた錯綜体を上記バインダ層が含む。【選択図】図5

Description

本発明は、炭素繊維及び樹脂を含む複合材料並びに当該複合材料を含む中間基材及び成形体に関する。
当該技術分野においては、軽量であり且つ高い機械的強度を有する材料として、母材としての樹脂と炭素繊維(CF:Carbon Fiber)との複合材料である炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastic)及び炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP:Carbon Fiber Reinforced ThermoPlastic)等の炭素繊維強化樹脂複合材料の開発が盛んに行われている。
しかしながら、従来の炭素繊維強化樹脂複合材料においては、樹脂とCFとの界面における密着が不十分であり、ナノメートル(nm)レベルの隙間が生じがちであった。このため、図1に示すように、当該複合材料10からなる製品に応力が作用すると樹脂20とCF30との界面において剥離が生じ、当該剥離が亀裂に発展して、複合材料としての機能を充分に発揮することができない場合があった。
そこで、母材からのCFの剥離を低減して上記のような課題を解決すべく、図2に示すように、カーボンナノチューブ(CNT:Carbon NanoTube)41を含む構造体(ネットワーク構造)を樹脂20とCF30との界面に配することにより、樹脂20とCF30との密着性を向上させる技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。CFとCNTとは何れも炭素からなるため互いに親和性(濡れ性)が良く、また共有π結合を介してCFの表面にCNTが結合するアンカー効果により、CFと樹脂との密着性が向上し、また、CFの繊維軸に直交する方向におけるCFと樹脂との滑りも抑制する。その結果、CFと樹脂との間の層間剥離を抑制することができ、曲げ強度及び衝撃強度等の機械的強度を向上することができる。
特許文献1に記載された発明においては、互いに直接接続されたCNTのネットワーク構造がCFに直接的に接続されている付着部以外にも、結着部材を介してCFとCNTとが物理的に結合され、CFとCNTとの結合が補強されている。しかしながら、そもそもCNTと樹脂(特に、CFRPにおいて多用されるエポキシ樹脂)との親和性(濡れ性)は低く、CNTと樹脂とは密着し難い。更に、CNTのネットワーク構造の内部の空気は真空引きによっても抜け難く、CNTのネットワーク構造の凹凸の内部にまで樹脂を含浸させることは困難である。特に、CFRTPにおいて母材として使用される熱可塑性樹脂は、熔融時においても粘度が高いため、この傾向が顕著である。また、CNTのネットワーク構造の凹凸の内部にまで樹脂が一旦入り込んでも、熱硬化性樹脂の硬化又は熱可塑性樹脂の冷却に伴う樹脂の収縮により、周辺の樹脂によって樹脂が凹凸から引き出され、CNTのネットワーク構造の内部の空隙が大きくなるという問題もある。加えて、CNTのネットワーク構造自体が硬く脆いため、図3に示すように、当該複合材料10からなる製品に応力が作用すると樹脂20とCF30との界面において剥離が生じ、当該剥離が亀裂に発展する場合があった。
一方、当該技術分野においては、例えば王水等の強酸を使用する表面処理等によりCNT自体に官能基を修飾する化学的修飾法が知られているが、このような過酷な表面処理はCNTの構造にダメージを与え、構造上の欠陥を生ずるという問題があり、工業的な実用化は困難である。
そこで、当該技術分野においては、官能基によって修飾されたナノセルロース(NCe:NanoCellulose)とナノカーボン(NC:NanoCarbon)とを母材としての樹脂に含有させることによりCFRPとしての機械的強度を向上させる技術も開示されている(例えば、特許文献2を参照。)。当該技術によれば、樹脂に対する高い親和性を有する官能基によって修飾されたNCeとNCとを混合して得られる複合体を樹脂に含有させることにより、当該複合体を介してCFと樹脂との密着性が向上すると共にNCの凝集を低減し、結果としてCFRPの機械的強度が安定的且つ均一的に増大する。
しかしながら、上記のように母材としての樹脂中に分散されるNCeとNCとの複合体のうち、CFと樹脂との界面においてCFと樹脂との密着性の向上に寄与し得るものは極一部であり、CFRP全体としての機械的強度を十分に向上させるためには上記複合体を大量に添加する必要がある。即ち、上記のように母材としての樹脂中にNCeとNCとの複合体を均一に分散させる手法によっては、CFRP全体としての機械的強度を効果的に向上させることは困難である。
以上のように、当該技術分野においては、CFRP及びCFRTP等の炭素繊維強化樹脂複合材料の曲げ強度及び衝撃強度等の機械的強度を効果的に向上させることができる技術が求められている。
特開2016−190969号公報 特開2017−110114号公報
上述したように、当該技術分野においては、CFRP及びCFRTP等の炭素繊維強化樹脂複合材料の曲げ強度及び衝撃強度等の機械的強度を効果的に向上させることができる技術が求められている。
上記課題に鑑み、本発明者は、鋭意研究の結果、母材としての樹脂及び炭素繊維(CF)を含む複合材料において、官能基によって修飾されたナノセルロース(NCe)とナノカーボン(NC)とを含むバインダ層を、樹脂とCFとの界面の少なくとも一部に介在させることにより、複合材料としての曲げ強度及び衝撃強度等の機械的強度を効果的に向上させることができることを見出した。
そこで、本発明に係る複合材料(以降、「本発明材料」と称呼される場合がある。)は、母材としての樹脂(母材樹脂)及び炭素繊維(CF)を含む複合材料である。そして、本発明材料は、官能基によって修飾されたナノセルロース(NCe)とナノカーボン(NC)とを含むバインダ層を更に含む。本発明材料において、母材樹脂とCFとの界面の少なくとも一部に上記バインダ層が介在している。好ましくは、ナノセルロース(NCe)はセルロースナノファイバ(CeNF)であり、ナノカーボン(NC)はカーボンナノチューブ(CNT)であり、CeNFがCNTの表面に絡み付いた錯綜体を上記バインダ層が含む。
更に、本発明に係る中間基材(以降、「本発明基材」と称呼される場合がある。)は、本発明材料を含む中間基材であり、例えば、ペレット状、繊維状及びシート状等の形態を取り得る。加えて、本発明に係る成形体(以降、「本発明成形体」と称呼される場合がある。)は、本発明材料を含む成形体である。
本発明によれば、詳しくは後述するように、CFRP及びCFRTP等の炭素繊維強化樹脂複合材料の曲げ強度及び衝撃強度等の機械的強度を効果的に向上させることができる。
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
従来技術に係る複合材料からなる製品に応力が作用した場合に樹脂と炭素繊維との界面において剥離が生じて亀裂に発展する様子を示す模式図である。 カーボンナノチューブを含む構造体を樹脂と炭素繊維との界面に配することにより樹脂と炭素繊維との密着性を向上させる従来技術を説明する模式図である。 図2に示した従来技術に係る複合材料からなる製品に応力が作用した場合に樹脂と炭素繊維との界面において剥離が生じて亀裂に発展する様子を示す模式図である。 本発明の第1実施形態に係る複合材料(第1材料)の基本構造を示す模式図である。 本発明の第2実施形態に係る複合材料(第2材料)を構成するバインダ層に含まれる錯綜体の構造を示す模式図である。 第2材料の調製工程を説明する模式図である。 本発明の第5実施形態に係る中間基材(第5基材)の構成の1つの例を示す模式図である。 本発明の第7実施形態に係る中間基材(第7基材)の構成の1つの例を示す模式図である。 第7基材の構成のもう1つの例を示す模式図である。 第7基材の構成のもう1つの例を示す模式図である。 第7基材の構成のもう1つの例を示す模式図である。 第7基材の加熱及び加圧に伴う内部構造の変化を示す模式図である。 複数本の第7基材を束ねて新たな中間基材又は成形体を調製する1つの例を示す模式図である。 複数本の第7基材を束ねて新たな中間基材又は成形体を調製するもう1つの例を示す模式図である。 本発明の第8実施形態に係る中間基材(第8基材)の製造方法及び構成の1つの例を示す模式図である。 本発明の第10実施形態に係る成形体(第10成形体)の製造方法及び構成の1つの例を示す模式図である。 第10成形体の製造方法及び構成のもう1つの例を示す模式図である。
《第1実施形態》
以下、本発明の第1実施形態に係る複合材料(以降、「第1材料」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第1材料は、母材としての樹脂(母材樹脂)及び炭素繊維(CF)を含む複合材料である。母材樹脂としては、第1材料の用途に応じて、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)及び炭素繊維強化熱可塑性プラスチック(CFRTP)等の炭素繊維強化樹脂複合材料における母材として使用される種々の樹脂から適宜選択することができる。母材樹脂として熱硬化性樹脂を選択する場合、母材樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ビスマレイミド樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、及びポリイミド樹脂等を挙げることができる。母材樹脂として熱可塑性樹脂を選択する場合、母材樹脂の具体例としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、及びポリエーテルエーテルケトン樹脂等を挙げることができる。
CFとしては、例えば、アクリル繊維を原料とするPAN(PolyAcryloNitrile)系炭素繊維及びピッチを原料とするピッチ(PITCH)系炭素繊維の中から、第1材料の用途に応じて、好適な太さ、長さ、及び強度等を有するものを適宜選択することができる。
そして、第1材料は、官能基によって修飾されたナノセルロース(NCe)とナノカーボン(NC)とを含むバインダ層を更に含む。ナノセルロース(NCe)としては、例えば、α−セルロース等の市販のセルロースを採用することができる。或いは、例えばTEMPO酸化等の手法により再生セルロースをナノファイバ化することによって得られるミクロフィブリル等をNCeとして採用してもよい。好ましくは、NCeは、セルロースナノファイバ(CeNF:Cellulose NanoFiber)である。
NCeの直径は1nm乃至800nm程度、平均長さは100nm乃至1000μm程度であることが望ましい。入手したセルロースの直径及び/又は長さが過大である場合は、例えばミル及びアトライタ等の微細化処理装置(粉砕機)を用いて微細化することができる。ミルの具体例としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、及びブレードミル等を挙げることができる。
NCeを修飾する官能基としては、母材樹脂に対する高い親和性を有する官能基が好ましい。具体的には、高い親水性を有する母材樹脂が採用される場合、上記官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、アルコール基、(第1級、第2級、第3級、及び第4級のアミノ基を含む)アミノ基、カルボキシル基、及びカルボニル基等の親水性基を挙げることができる。逆に、高い疎水性を有する母材樹脂が採用される場合、上記官能基としては、例えば、アルキル基(特に、長鎖アルキル基)及びアリール基等の疎水性基を挙げることができる。更に、上記官能基は、第1材料の性状に何らかの悪影響を及ぼさない限りにおいて、母材樹脂との反応により母材樹脂を構成する分子との共有結合を生成することができる官能基であってもよい。このような官能基の具体例としては、例えば、シリコーン樹脂との間にシロキサン結合を生成することができるアルコキシシリル基等を挙げることができる。NCeは、このような官能基のうち異なる2種以上の官能基によって修飾されていてもよい。
ナノカーボン(NC)としては、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、グラフェン、酸化グラフェン、カーボンブラック、及び活性炭、並びにこれらの混合物を採用することができる。NCは、好ましくはカーボンナノチューブ(CNT)であり、より好ましくは節状カーボンナノチューブ(節状又は釣鐘状の構造が複数連結しているカーボンナノチューブ)である。NCの平均直径は1nm乃至1μm程度であり、平均長さは1nm乃至100μm程度であることが望ましく、より好ましくは平均長さが1nm乃至1μm程度)である。
上記バインダ層は、ナノセルロース(NCe)とナノカーボン(NC)とを上述したような微細化処理装置によって混合することによって得ることができる。NCeとNCとの接続形態は特に限定されないが、例えば、NCeが有する官能基とNCの表面に存在する官能基との反応によって生成される結合及びNCeとNCとの物理的な絡み付き等を挙げることができる。
尚、上記バインダ層は、NCe及びNCに加えて、親和性結合剤を更に含んでもよい。親和性結合剤は、NCeとNCとの間の親和性を高める機能を有するものであれば特に限定されない。このような親和性結合剤の具体例としては、例えば、リグニン、アミロース、及びアミロペクチン等を挙げることができる。
更に、第1材料においては、母材樹脂とCFとの界面の少なくとも一部に上記バインダ層が介在している。当然のことながら、母材樹脂とCFとの界面において上記バインダ層が介在している部分が占める割合が大きいことが望ましい。しかしながら、本発明は、母材樹脂とCFとの界面の一部に上記バインダ層が介在していない部分が残っている状況を排除するものではない。逆に、母材の特性に何らかの悪影響を及ぼすことの無い限りにおいて、第1材料における母材樹脂とCFとの界面以外の領域に上記バインダ層が存在していてもよい。
例えば、ナノセルロース(NCe)とナノカーボン(NC)とを混合してバインダを調製し、当該バインダを(例えば、粉末状、繊維状、又はシート状の)母材樹脂の表面に付着させ、その後、上記バインダが表面に付着している母材樹脂と炭素繊維(CF)とを混合する。このようにして得られた(NCeとNCとを含む)バインダが表面に付着してバインダ層を形成している母材樹脂とCFとからなる基本構造を図4に示す。このような基本構造を有する混合物を所定の条件下において加熱及び/又は加圧して一体化させることにより、所望の形態を有する中間基材を調製してもよい。このようにして、母材樹脂とCFとの界面の少なくとも一部に上記バインダ層が介在している構造を形成することができる。
〈効果〉
第1材料においては、NCeとNCとを含むバインダ層が母材樹脂とCFとの界面の少なくとも一部に介在している。CF及びNCは何れも炭素からなり、お互いに対して高い親和性を有するので、CFとバインダ層との良好な密着性が達成される。一方、NCeを修飾する官能基として母材樹脂に対する高い親和性を有する官能基を選択することにより、母材樹脂とNCeとの密着性を高めることができる。その結果、母材樹脂とバインダ層との良好な密着性が達成される。即ち、第1材料においては、バインダ層を介して、CFと母材樹脂との良好な密着性が達成される。
しかも、前述したようなCNTへの過酷な表面処理を行うのではなく、母材樹脂に対する高い親和性を有する官能基によってNCeを修飾するので、CNTの構造にダメージを与えること無く、CFと母材樹脂との良好な密着性を達成することができる。
更に、上記のように母材樹脂に対する高い親和性を有する官能基によってNCeを修飾することにより、バインダ層に含まれるNCの間への母材樹脂の含浸が促進されるので、母材樹脂とCFとの界面における隙間の発生を低減することができる(高いアンカー効果)。加えて、一般的にNCeはNCよりも柔軟であるため、バインダ層においてNCeがナノメートル(nm)レベルの緩衝材(クッション)としても機能することができる。これらにより、CFと母材樹脂との間における層間剥離を抑制することができるので、炭素繊維強化樹脂としての曲げ強度及び衝撃強度等の機械的強度を向上させることができる。
しかも、バインダ層を構成するNCe及びNCは、母材樹脂の全体に添加されるのではなく、主として母材樹脂とCFとの界面に配置される。従って、本発明材料の総量に対するNCe及びNCの添加量を低減することができるので、母材全体としての組成が変化して所期の特性を達成することが困難となる虞を低減することができる。
以上のように、第1材料によれば、CFRP及びCFRTP等の炭素繊維強化樹脂複合材料の曲げ強度及び衝撃強度等の機械的強度を効果的に向上させることができる。
《第2実施形態》
以下、本発明の第2実施形態に係る複合材料(以降、「第2材料」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第2材料は、上述した第1材料であって、前記ナノセルロース(NCe)はセルロースナノファイバ(CeNF)であり、前記ナノカーボン(NC)はカーボンナノチューブ(CNT)である。更に、第2材料においては、前記バインダ層は、前記セルロースナノファイバ(CeNF)が前記カーボンナノチューブ(CNT)の表面に絡み付いた錯綜体を含む。
図5は、上記錯綜体の構造を示す模式図である。図5に示すように、第2材料を構成するバインダ層に含まれる錯綜体40aにおいては、複数のCeNF42がCNT41の表面に絡み付いている。
第2材料は、例えば、以下のようにして調製することができる。先ず、図6の向かって左側に示すように、上記のような錯綜体40aを樹脂20の表面に付着させ、その後、錯綜体40aが表面に付着している樹脂20と炭素繊維(CF)30とを混合する。当該混合物を所定の条件下において加熱及び/又は加圧して一体化させることにより、図6の向かって右側に示すように、樹脂20とCF30との界面に錯綜体40a(を含むバインダ層40)が介在している構造を形成することができる。
〈効果〉
上記のようにCeNFが絡み付いてCNTの表面を覆うことにより、CNT同士の凝集の原因である分子間力が低減され、バインダ層におけるCNTの分散性が高まる。尚、CeNFによるCNTの被覆率には自ずと上限があり、CNTの全表面をCeNFによって覆い尽くすことは困難である。しかしながら、CeNFによってCNTの表面を過剰に覆ってしまうと炭素繊維(CF)とCNTとの結合が妨げられる。従って、CeNFとCNTとの配合比には適正値が存在する。
上記適正値は、例えば、様々な配合比にてCeNFとCNTとを配合してバインダを調製し、それぞれのバインダを用いて調製された複合材料の機械的強度を測定する事前実験等によって確かめることができる。
また、CeNFはCNTの表面に物理的に絡み付いている部分においては、第2材料からなる成形体に応力が作用した場合、母材樹脂と密着しているCeNFがCNTの表面を滑り、衝撃を吸収することができる。これにより、CeNFを伴わずにCNTのみをバインダとした場合に比べて、第2材料からなる成形体はより高い柔軟性及び耐衝撃性を発揮することができる。
以上のように、第2材料によれば、第1材料と同様に、CFRP及びCFRTP等の炭素繊維強化樹脂複合材料の曲げ強度及び衝撃強度等の機械的強度を効果的に向上させることができる。これに加えて、第2材料によれば、上述した錯綜体の構造上の特徴により、母材樹脂とCFとの密着性が高く、優れた耐衝撃性を有する複合材料成形体を製造することができる。
《第3実施形態》
本明細書の冒頭において述べたように、本発明は、炭素繊維及び樹脂を含む複合材料のみならず、当該複合材料を含む中間基材及び成形体に関する。以下、本発明の第3実施形態に係る中間基材(以降、「第3基材」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第3基材は、上述した第1材料及び第2材料を始めとする本発明の種々の実施形態に係る複合材料を含む中間基材である。換言すれば、第3基材は、種々の本発明材料の中から選ばれる複合材料からなる中間基材である。第3基材は、例えば、以下のようにして調製することができる。先ず、バインダ層40を樹脂20の表面に付着させ、その後、バインダ層40が表面に付着している樹脂20と炭素繊維(CF)30とを混合する。当該混合物を所定の条件下において加熱及び/又は加圧して一体化させる。この際、第3基材の形状としては、第3基材の用途に応じて、例えばペレット、繊維、及びシート等の種々の形状から適宜選択することができる。
〈効果〉
上記のように、第3基材は、種々の本発明材料の中から選ばれる複合材料からなる中間基材である。従って、第3基材によれば、CFRP及びCFRTP等の炭素繊維強化樹脂複合材料の曲げ強度及び衝撃強度等の機械的強度を効果的に向上させることができる。
《第4実施形態》
以下、本発明の第4実施形態に係る中間基材(以降、「第4基材」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第4基材は、上述した第3基材であって、前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、前記樹脂からなる母材中に前記炭素繊維(CF)が練り込まれたペレットである、ペレット状中間基材である。
〈効果〉
上記のように、第4基材は、熱可塑性樹脂を母材とするペレット状の中間基材である。従って、例えば、一軸押出機又は二軸押出機及び成形用金型等の設備を用いる射出成形により、所望の形状を有する成形体を第4基材から製造することができる。
《第5実施形態》
以下、本発明の第5実施形態に係る中間基材(以降、「第5基材」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第5基材は、上述した第3基材であって、前記樹脂からなる繊維である樹脂繊維と前記炭素繊維(CF)とが束ねられたコミングルヤーンである、繊維状中間基材である。
図7は、第5基材の構成の一例を示す模式図である。第5基材101は、樹脂20からなる繊維である樹脂繊維と炭素繊維(CF)30とが束ねられたコミングルヤーンであり、複数の樹脂繊維(20)のうち一部の樹脂繊維(20)はバインダ層40によって覆われている。即ち、第5基材においても、樹脂繊維と炭素繊維(CF)との界面の少なくとも一部にバインダ層が介在している。
上記のような第5基材は、例えば、以下の各工程を含む製造方法によって製造することができる。尚、樹脂繊維とCFとをコミングルヤーンとして混繊するための具体的な手法については当業者に周知であるので、ここでの説明は割愛する。
(1)ナノセルロース(NCe)とナノカーボン(NC)とを混合してバインダを調製する工程。
(2)樹脂を繊維状に成形して樹脂繊維を調製する工程。
(3)樹脂繊維の表面の少なくとも一部にバインダを付着させてバインダ層とする工程。
(4)樹脂繊維と炭素繊維とを混繊してコミングルヤーンとすることにより繊維状中間基材を調製する工程。
〈効果〉
上記のように、第5基材もまた、種々の本発明材料の中から選ばれる複合材料からなる中間基材であり、樹脂繊維と炭素繊維(CF)との界面の少なくとも一部にバインダ層が介在しているという要件を満足している。従って、第5基材によれば、第3基材と同様に、CFRP及びCFRTP等の炭素繊維強化樹脂複合材料の曲げ強度及び衝撃強度等の機械的強度を効果的に向上させることができる。
《第6実施形態》
以下、本発明の第6実施形態に係る中間基材(以降、「第6基材」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第6基材は、上述した第3基材であって、前記樹脂からなる粉末である樹脂粉末が表面に付着した前記炭素繊維(CF)が束ねられている、繊維状中間基材である。即ち、第6基材は、母材樹脂が繊維状ではなく粉末状である点を除き、図7を参照しながら上述した第5基材101と同様の構成を有する。第6基材は、樹脂20からなる粉末である樹脂粉が表面に付着した炭素繊維(CF)30が束ねられた繊維であり、複数の樹脂粉末(20)のうち一部の樹脂粉末(20)はバインダ層40によって覆われている。即ち、第6基材においても、樹脂繊維と炭素繊維(CF)との界面の少なくとも一部にバインダ層が介在している。
上記のような第6基材は、例えば、以下の各工程を含む製造方法によって製造することができる。
(1)ナノセルロース(NCe)とナノカーボン(NC)とを混合してバインダを調製する工程。
(2)樹脂を粉末状に成形して樹脂粉末を調製する工程。
(3)樹脂粉末の表面の少なくとも一部にバインダを付着させてバインダ層とする工程。
(4)炭素繊維の表面に樹脂粉末を付着させる工程。
(5)樹脂粉末が表面に付着した炭素繊維を束ねることにより繊維状中間基材を調製する工程。
〈効果〉
上記のように、第6基材もまた、種々の本発明材料の中から選ばれる複合材料からなる中間基材であり、樹脂繊維と炭素繊維(CF)との界面の少なくとも一部にバインダ層が介在しているという要件を満足している。従って、第6基材によれば、第3基材と同様に、CFRP及びCFRTP等の炭素繊維強化樹脂複合材料の曲げ強度及び衝撃強度等の機械的強度を効果的に向上させることができる。
《第7実施形態》
以下、本発明の第7実施形態に係る中間基材(以降、「第7基材」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
上述した第5基材及び第6基材は優れた柔軟性及び成形性を呈するが、樹脂20の繊維又は粉末の中にバインダ層40によって覆われていないものがある程度存在する。即ち、樹脂繊維と炭素繊維(CF)との界面に必ずしもバインダ層が介在しないので、機械的強度の向上効果を十分に発揮することができない場合がある。
そこで、第7基材においては、前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、全ての前記樹脂繊維の表面が前記バインダ層によって覆われている。更に、前記バインダ層によって覆われた1本又は2本以上の前記樹脂繊維の周囲が複数の前記炭素繊維(CF)によって覆われるように、前記樹脂繊維と前記炭素繊維(CF)とが束ねられている。
図8乃至図11は、第7基材の幾つかの構成を例示する模式図である。図8は、モノフィラメントとしての樹脂繊維の外周にバインダ層が形成されており、そのバインダ層の外周が複数本の炭素繊維によって覆われている例を示す。図9は、バインダ層の外周を覆う個々の炭素繊維が複数本の繊維束によって構成されている例を示す。
図8及び図9に示した例においては、太い1本のモノフィラメントである樹脂繊維が中心に配置されているため、用途によっては柔軟性が不十分となる場合がある。このような場合は、例えば図10及び図11に示すように、中心に配置される樹脂繊維を細くして複数本を束ねることにより柔軟性を高め、成形性を向上させることができる。図10は、図8におけるモノフィラメントとしての樹脂繊維がより細い複数本の樹脂繊維の束に置き換えられ且つこれら複数本の樹脂繊維の束が全て纏めてバインダ層によって覆われている例を示す。図11は、図10における複数本の樹脂繊維の束に含まれる樹脂繊維が1本ずつ個別にバインダ層によって覆われている例を示す。
〈効果〉
上記のように、第7基材は、熱可塑性樹脂を母材とする繊維状の中間基材である。従って、例えば、第7基材を所望の方向に配向させ且つ所望の形状に成形して加熱及び/又は加圧することにより、所望の形状を有する新たな中間基材又は成形体を第7基材から製造することができる。
上記成形過程における加熱及び加圧により、図8に示した第7基材102は、例えば、図12に示すように内部構造が変化する。このとき、例えば成形条件及び樹脂の流動性等により、バインダ層の拡散の程度は様々に異なる。具体的には、例えば図12の(a)に示すように、バインダ層が炭素繊維CFの周辺に留まる場合もある。或いは、(b)に示すように、炭素繊維CFの周辺からバインダ層がある程度拡散して、樹脂内にバインダ層の構成要素の存在頻度の勾配が生ずる場合もある。更には、(c)に示すように、炭素繊維CFの周辺のある範囲においてバインダ層が均一に拡散する場合もある。何れの場合においても、バインダ層によって母材樹脂と炭素繊維(CF)との密着性を向上させる効果が十分に発揮されるように、成形条件及び樹脂を選択する必要がある。
尚、上記のように新たな中間基材又は成形体を第7基材から製造する場合、例えば図13に示すように、複数本の第7基材を束ねて基材として使用することができる。この場合、図14に示すように、例えば複数本の第7基材同士を結着させること等を目的として、第7基材に加えて、バインダ層によって覆われていない樹脂繊維を更に付加してもよい。
《第8実施形態》
以下、本発明の第8実施形態に係る中間基材(以降、「第8基材」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第8基材は、上述した第3基材であって、前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、前記樹脂と前記炭素繊維(CF)とが交互に積層された層状構造を有する、シート状中間基材である。具体的には、例えば、図15に示すように、バインダ層40を複数の熱可塑性樹脂フィルム20の表面に配置し、これらの熱可塑性樹脂フィルム20の間に炭素繊維(CF)30を挟んだ状態において加熱及び/又は加圧することにより、シート状中間基材106を製造することができる。
〈効果〉
上記のように、第8基材は、熱可塑性樹脂を母材とするシート状の中間基材である。従って、第8基材は、例えば、所謂「プリプレグ」、「プリフォーム」、及び「スタンパブルシート」等として使用することができる。
《第9実施形態》
以下、本発明の第9実施形態に係る中間基材(以降、「第9基材」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
ところで、本発明に係る複合材料(本発明材料)からなるシート状の中間基材は、上記のように熱可塑性樹脂フィルム、炭素繊維、及びバインダ層から製造するのではなく、上述した各種繊維状中間基材から製造することもできる。
そこで、第9基材は、上述した第5基材乃至第7基材を始めとする本発明に係る各種繊維状中間基材を含むシート状中間基材である。この場合、前記炭素繊維(CF)が単一の方向に配向するように繊維状中間基材を並べた状態で加熱及び/又は加圧することもできる。このようにして製造されるシート状の中間基材においては、炭素繊維(CF)が単一の方向に配向している。従って、このようにして製造される第9基材は、例えば、所謂「UD材」として使用することができる。
或いは、前記炭素繊維(CF)が単一の方向に配向しないように繊維状中間基材を並べた状態で加熱及び/又は加圧することもできる。このようにして製造されるシート状の中間基材においては、炭素繊維(CF)が単一の方向に配向していない。従って、このようにして製造される第9基材は、例えば機械的強度等の特性において異方性を有することが望ましくないとされる用途等において使用することができる。
更に、前記炭素繊維(CF)が織物を構成するように繊維状中間基材を配置した状態で加熱及び/又は加圧することもできる。このようにして製造されるシート状の中間基材においては、炭素繊維(CF)が織物を構成している。従って、このようにして製造される第9基材は、例えば機械的強度等の特性において異方性を有することが望ましくないとされ且つより高い機械的強度が求められる用途等において使用することができる。
〈効果〉
以上のように、第9基材によれば、上述した第5基材乃至第7基材を始めとする本発明に係る各種繊維状中間基材から様々な構成を有するシート状中間基材をより容易に製造することができる。
《第10実施形態》
以下、本発明の第10実施形態に係る成形体(以降、「第10成形体」と称呼される場合がある。)について説明する。
〈構成〉
第10成形体は、上述した第1材料及び第2材料を始めとする本発明に係る各種複合材料を含む成形体である。このような成形体は、当該技術分野において周知の製造技術を用いて、上述した第3基材乃至第9基材を始めとする本発明に係る各種中間基材から容易に製造することができる。
尚、図13及び図14を参照しながら上述したように第7基材から成形体を製造する場合における内部構造の変化を表す模式図を図16及び図17にそれぞれ示す。図12を参照しながら上述したように、例えば成形条件及び樹脂の流動性等により、バインダ層の拡散の程度は様々に異なるが、図16及び図17の何れの場合についても、図12の(c)に示したように炭素繊維CFの周辺のある範囲においてバインダ層が均一に拡散したものとして例示した。
〈効果〉
図16及び図17に示すように、本発明に係る複合材料を含む成形体である第10成形体は、本発明に係る種々の中間基材を利用して、容易に製造することができる。また、第10成形体においては、バインダ層を介して、CFと母材樹脂との良好な密着性が達成されるので、炭素繊維強化樹脂としての高い曲げ強度及び衝撃強度等の優れた機械的強度を達成することができる。
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び変形例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び変形例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
10…複合材料、20…(母材)樹脂、30…炭素繊維(CF)、40…バインダ層、40a…錯綜体、41…カーボンナノチューブ(CNT)、42…セルロースナノファイバ(CeNF)、50…隙間、101,102,103,104,及び105…繊維状中間基材、並びに106…シート状中間基材。

Claims (13)

  1. 母材としての樹脂及び炭素繊維(CF)を含む複合材料であって、
    官能基によって修飾されたナノセルロース(NCe)とナノカーボン(NC)とを含むバインダ層を更に含み、
    前記樹脂と前記炭素繊維(CF)との界面の少なくとも一部に前記バインダ層が介在している、
    複合材料。
  2. 請求項1に記載された複合材料であって、
    前記ナノセルロース(NCe)はセルロースナノファイバ(CeNF)であり、
    前記ナノカーボン(NC)はカーボンナノチューブ(CNT)であり、
    前記バインダ層は、前記セルロースナノファイバ(CeNF)が前記カーボンナノチューブ(CNT)の表面に絡み付いた錯綜体を含む、
    複合材料。
  3. 請求項1又は請求項2に記載された複合材料を含む中間基材。
  4. 請求項3に記載された中間基材であって、
    前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、
    前記樹脂からなる母材中に前記炭素繊維(CF)が練り込まれたペレットである、
    ペレット状中間基材。
  5. 請求項3に記載された中間基材であって、
    前記樹脂からなる繊維である樹脂繊維と前記炭素繊維(CF)とが束ねられたコミングルヤーンである、
    繊維状中間基材。
  6. 請求項3に記載された中間基材であって、
    前記樹脂からなる粉末である樹脂粉末が表面に付着した前記炭素繊維(CF)が束ねられている、
    繊維状中間基材。
  7. 請求項5に記載された繊維状中間基材であって、
    前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、
    全ての前記樹脂繊維の表面が前記バインダ層によって覆われており、
    前記バインダ層によって覆われた1本又は2本以上の前記樹脂繊維の周囲が複数の前記炭素繊維(CF)によって覆われるように、前記樹脂繊維と前記炭素繊維(CF)とが束ねられている、
    繊維状中間基材。
  8. 請求項3に記載された中間基材であって、
    前記樹脂は熱可塑性樹脂であり、
    前記樹脂と前記炭素繊維(CF)とが交互に積層された層状構造を有する、
    シート状中間基材。
  9. 請求項5乃至請求項7に記載された繊維状中間基材を含むシート状中間基材。
  10. 請求項9に記載されたシート状中間基材であって、
    前記炭素繊維(CF)が単一の方向に配向している、
    シート状中間基材。
  11. 請求項9に記載されたシート状中間基材であって、
    前記炭素繊維(CF)が単一の方向に配向していない、
    シート状中間基材。
  12. 請求項11に記載されたシート状中間基材であって、
    前記炭素繊維(CF)が織物を構成している、
    シート状中間基材。
  13. 請求項1又は請求項2に記載された複合材料を含む成形体。
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