JP2019059855A - インクジェット記録用水性インク組成物及び画像形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い保存安定性とろ過性とを示し、インクジェット記録方法に適用した際に吐出性及び乾燥性に優れ、更には画質及び耐擦性に優れた画像を形成できるインクジェット記録用水性インク組成物、及び、このインクジェット記録用水性インク組成物を用いた画像形成方法を提供する。【解決手段】水と、有機溶剤と、樹脂微粒子とを含有するインクジェット記録用水性インク組成物であって、有機溶剤がClogP値が0〜3.5の疎水性有機溶剤を含み、この疎水性有機溶剤のインクジェット記録用水性インク組成物中の含有量が0.5〜10質量%であり、樹脂微粒子が特定の式で表される構造単位(I)と構造単位(II)とを有するインクジェット記録用水性インク組成物、及び、このインクジェット記録用水性インク組成物を用いた画像形成方法。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用水性インク組成物及び画像形成方法に関する。
画像データ信号に基づき、紙等の記録媒体に画像を形成する画像記録方法として、電子写真方式、昇華型及び溶融型熱転写方式、インクジェット方式等の記録方法がある。
インクジェット記録方法は、印刷版を必要とせず、画像形成部のみにインクを吐出して記録媒体上に直接画像形成を行う。そのため、インクを効率的に使用でき、ランニングコストが安くなる。更に、インクジェット記録方法は印刷装置も従来の印刷機に比べ比較的低コストで、小型化も可能であり、騒音も少ない。このように、インクジェット記録方法は他の画像記録方式に比べて種々の利点を兼ね備えている。
上述の利点を兼ね備えたインクジェット記録方法に用いるインクの改良が進められている。例えば、特許文献1〜4には、アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウムに由来する構成成分とスチレンに由来する構成成分とを含む樹脂の微粒子と、グリセリン、(ジ)エチレングリコール若しくはエタノールの水溶性有機溶剤と、水とを含有する水性インク組成物が記載されている。
特開2008−150507号公報 特表2009−535486号公報 特開2002−020656号公報 特開2017−141441号公報
インクジェット記録方法は主にオフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野で用いられてきた。更に、近年は、商業印刷分野にまでその利用が拡大し、インクジェット記録の高画質化及び高速化も進んでいる。
これに伴い、インクジェット記録方法に用いられるインクに要求される性能も高度化している。例えば、高速化に対応するためには、吐出後のインクが速やかに乾燥する速乾性(乾燥性)が求められる。その一方で、インクジェット記録用のインクには、ノズルから所望量のインクを安定的に吐出できる吐出(安定)性と保存安定性も重要である。更には、インクには、外部から力が作用しても傷付いたり剥がれたりしない高い機械強度(耐擦性)を示す画像を高画質で形成できることも求められる。
しかも、インクジェット記録用のインク組成物は製造時に成分の、顔料及び樹脂微粒子等を微細に分散処理しても、微細化成分が再凝集若しくはゲル化することがあり、これにより画像品質及び吐出性を損なうため、通常、微細(例えば網目若しくは孔径2〜5μm程度)なフィルターを用いて再凝集物又はゲルを除去する。しかし、従来のインクは、微細化成分を含む組成物の再凝集若しくはゲル化を十分に抑えることができなかった。そのため、ろ過工程で目詰まりを起こしやすく、また画像品質の低下を招いていた。工業的生産の観点(製造適性)、画像の高画質及び吐出性を維持する観点から、インクジェット記録用のインクには、製造後はもちろん製造中においても、微細化成分の再凝集若しくはゲル化を抑制して、ろ過性(分散安定性)を保持したインク組成物の開発が求められている。
本発明は、高い保存安定性と微細なフィルターに対する優れたろ過性とを示し、インクジェット記録方法に適用した際に吐出性及び乾燥性に優れ、更には画質及び耐擦性に優れた画像を形成できるインクジェット記録用水性インク組成物、及び、このインクジェット記録用水性インク組成物を用いた画像形成方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた結果、長鎖アルキル基を有する特定の構造単位(繰り返し単位)と特定の環構造を有する構造単位とを有する樹脂の微粒子と、特定の疎水性有機溶剤とを組み合わせて用いた水性インク組成物が、高い保存安定性を示し、微粒子の凝集等を抑制できることを見出した。しかも、この水性インク組成物をインクジェット記録方法のインクとして用いた際に吐出性及び乾燥性に優れること、更にこの水性インク組成物を用いると画質及び耐擦性に優れた画像を形成できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき更に検討を重ね、完成されるに至ったものである。
本発明の上記課題は下記の手段により解決された。
<1>水と、有機溶剤と、樹脂微粒子とを含有するインクジェット記録用水性インク組成物であって、
有機溶剤が、ClogP値が0〜3.5の疎水性有機溶剤を含み、この疎水性有機溶剤の、インクジェット記録用水性インク組成物中の含有量が0.5〜10質量%であり、
樹脂微粒子が、下記一般式(I)で表される構造単位と、下記一般式(A)〜(E)のいずれかで表される構造単位とを有する、インクジェット記録用水性インク組成物。
Figure 2019059855
一般式(I)中、Rは炭素数7以上のアルキレン基を示す。L及びLは単結合又は2価の連結基を示す。Lは水素原子、SOM又はCOOMを示し、Mはアルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを示す。ただし、R、L及びLの少なくとも1つはSOM又はCOOMを有する。
Figure 2019059855
一般式(A)〜(E)中、R11及びR12はメチル又は水素原子を示す。R13は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。一般式(A)及び一般式(B)中のnは0〜5の整数であり、一般式(C)中のnは0〜11の整数である。L11は単結合、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−若しくは−C(=O)−、又は、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を示す。
<2>一般式(I)で表される構造単位の、樹脂微粒子中の含有量が5〜15質量%である<1>に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
<3>一般式(A)で表される構造単位の、樹脂微粒子中の含有量が5〜50質量%である<1>又は<2>に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
<4>一般式(I)のR、L及びLの少なくとも1つがSOMを有する<1>〜<3>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
<5>一般式(I)のLが、SOMを含有する2価の連結基である<1>〜<4>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
<6>顔料を含有する<1>〜<5>のいずれか1つに記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
<7>上記<6>に記載のインクジェット記録用水性インク組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与して画像を形成するインク付与工程を含む、画像形成方法。
<8>インクジェット記録用水性インク組成物を、低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体上に直接付与する<7>に記載の画像形成方法。
本明細書において、特に断りがない限り、特定の符号で表示された置換基、連結基、配位子、構造単位等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時若しくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。
本明細書において、各置換基の例として説明される各基の「基」は無置換の形態及び置換基を有する形態のいずれも包含する意味に用いる。例えば、「アルキル基」は置換基を有してもよいアルキル基を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの両者を含む意味に用いる。このことは、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリルアミド」及び「(メタ)アクリロイル基」についても同様である。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明のインクジェット記録用水性インク組成物は、高い保存安定性と、分散安定性(微細なフィルターに対する優れたろ過性)とを示す。しかも、このインクジェット記録用水性インク組成物は、インクジェット記録方法に適用した際に吐出性及び乾燥性に優れ、更には画質及び耐擦性に優れた画像を形成できる。本発明の画像形成方法は、上記の優れた特性を示す本発明のインクジェット記録用水性インク組成物を用いて、画質及び耐擦性に優れた画像を安定して形成できる。
本発明のインクジェット記録用水性インク組成物(以下、単に、本発明の水性インク組成物ということがある。)、画像形成方法及び樹脂微粒子の好ましい実施形態について以下に説明する。
[インクジェット記録用水性インク組成物]
本発明の水性インク組成物は、水と、有機溶剤と、特定の樹脂微粒子とを含有する。また、本発明の水性インク組成物は、通常は顔料を含有する。本発明の水性インク組成物が顔料を含有しない場合は、クリアインクとして使用することができ、顔料を含有する場合はカラー画像形成用途に用いることができる。
上記成分を含有する本発明の水性インク組成物が上記の優れた作用効果を示す理由は定かではないが、次のように考えられる。
この水性インク組成物は、後述する構造単位(I)及び構造単位(II)を有する樹脂微粒子と特定量の疎水性有機溶剤とを含有する。この樹脂微粒子と疎水性有機溶剤とが共存すると、下記のようにして、それぞれが奏する作用機能を損なうことなくバランス良く発現し、単独では示さない作用機能を奏すると考えられる。
樹脂微粒子は、長鎖アルキル基を持つ特定の構造単位(I)を有する樹脂で構成されており、疎水性有溶剤を含む有機溶剤と水との混合溶媒中で、この構造単位(I)が優れた自己乳化剤として機能して、この混合溶媒に樹脂微粒子を高度に分散させる(樹脂微粒子の凝集又はゲル化を抑制する)ことができる。特に、水及び/又は有機溶剤が揮発して樹脂微粒子の含有量が高くなっても、優れた分散性を保持できる。しかも、水性インク組成物に微細分散した樹脂微粒子の再凝集化又はゲル化をも、高い分散安定性により、効果的に抑えることができる。そのため、水性インク組成物は高い保存安定性、吐出性及びろ過性を示す。水及び/又は有機溶剤が揮発しやすいと乾燥性に寄与する。
しかも、造膜性が高く遊離の界面活性剤が少ないため、本発明の水性インク組成物は、インクジェット記録方法に用いられると、高耐擦性で高画質の画像を形成できる。
<水>
本発明に用いる水としては、イオン交換水、蒸留水等のイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。また、水性インク組成物における水の含有率は、目的に応じて適宜選択されるが、通常、10〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましく、50〜80質量%であることが更に好ましい。
<有機溶剤>
本発明に用いる有機溶剤は、ClogP値が0.5〜3.5である疎水性有機溶剤(d1)を含み、好ましくはこの疎水性有機溶剤以外の有機溶剤(dr1)を含む。
− 疎水性有機溶剤(d1) −
疎水性有機溶剤(d1)は、ClogP値が0.5〜3.5である。ClogP値がこの範囲内にあると、水性インク組成物のろ過性、インクジェット記録方法に適用した際の乾燥性、更に形成される画像の画質を高めることができる。疎水性有機溶剤(d1)のClogP値は、乾燥性の点で、1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。一方、ろ過性及び画質の点で、3.0以下であることが好ましく、2.7以下であることがより好ましい。
本発明において、疎水性有機溶剤(d1)のClogP値は、ChemBioDrawUltra 13.0を用いて計算される値を採用する。
疎水性有機溶剤(d1)は、下記式1又は式2で表される有機溶剤が好ましい。
Figure 2019059855
式1又は式2中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rは炭素数4〜9の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を示す。nは1〜3の整数を表す。
式1において、Rは、インクの表面張力を低下させる観点から水素原子が好ましい。
として採りうる脂肪族炭化水素基としては、ClogP値を0.5〜3.5に設定する観点から、炭素数4〜9の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基であり、炭素数6〜8の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましい。脂肪族炭化水素基としてはアルキル基が好ましい。Rとして採りうる芳香族炭化水素基としては、特に限定されないが、フェニル基又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
nは、インクの表面張力を低下させる観点から、1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
式2において、Rは、式1のRと同義であり、好ましいものも同じである。
疎水性有機溶剤(d1)は、ろ過性、乾燥性及び画質の観点からは、式1で表される有機溶剤が好ましく、インク保存安定性の観点からは、式2で表される有機溶剤が好ましい。
好ましい疎水性有機溶剤(d1)としては、例えば、エチレングリコールモノ(C4〜C9)アルキルエーテル、ジエチレングリコールモノ(C4〜C9)アルキルエーテル、トリエチレングリコールモノ(C4〜C9)アルキルエーテル、プロピレングリコールモノ(C4〜C9)アルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(C4〜C9)アルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノ(C4〜C9)アルキルエーテル、又は、その他のアルコールが挙げられる。
エチレングリコールモノ(C4〜C9)アルキルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノヘプチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノノニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルが挙げられる。
ジエチレングリコールモノ(C4〜C9)アルキルエーテルとしては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノノニルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルが挙げられる。
トリエチレングリコールモノ(C4〜C9)アルキルエーテルとしては、例えば、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノノニルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルが挙げられる。
プロピレングリコールモノ(C4〜C9)アルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノペンチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノヘプチルエーテル、プロピレングリコールモノオクチルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルが挙げられる。
ジプロピレングリコールモノ(C4〜C9)アルキルエーテルとしては、例えば、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘプチルエーテル、ジプロピレングリコールモノオクチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルが挙げられる。
トリプロピレングリコールモノ(C4〜C9)アルキルエーテルとしては、例えば、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールモノヘプチルエーテル、トリプロピレングリコールモノオクチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルが挙げられる。
その他のアルコールとしては、例えば、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−デカンジオール、及び、後述する実施例で用いたアルコール溶媒(d1−1)〜)d1−8)等が挙げられる。
中でも、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、1,2−オクタンジオールが好ましい。
疎水性有機溶剤(d1)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
− 有機溶剤(dr1) −
有機溶剤(dr1)は、上記疎水性有機溶剤(d1)以外の有機溶剤であればよく、乾燥性の観点から、20℃における蒸気圧が1.0Pa以上であるものが好ましい。本発明において、20℃における蒸気圧が1.0Pa以上の有機溶剤であっても、上記疎水性有機溶剤(d1)に該当するものは、有機溶剤(dr1)には該当しないものとする。
有機溶剤(dr1)の蒸気圧は、20℃において、1.0Pa以上であることが好ましく、2.0Pa以上であることがより好ましく、10Pa以上であることが更に好ましい。
有機溶剤(dr1)の蒸気圧は、公知の方法により測定されるが、例えば、静止法(測定温度20℃)により求めることができる。静止法による蒸気圧測定は、試料の固体と平衡にある蒸気の圧力を直接又は間接的に測定する方法であり、OECDガイドライン104に従って測定される。
有機溶剤(dr1)のClogP値は、吐出性の観点から、モノマー単位c−1のClogP値よりも小さいことが好ましい。
また、有機溶剤(dr1)のClogP値(測定方法は上記の通り。)は、−3.0以上0未満であることが好ましく、−0.2以上0未満であることがより好ましい。
有機溶剤(dr1)としては、特に限定されないが、例えば、ジエチレングリコール(20℃における蒸気圧:2.7Pa、ClogP値:−1.30)、ジプロピレングリコール(DPG、20℃における蒸気圧:1.3Pa、ClogP値:−0.69)、プロピレングリコール(PG、20℃における蒸気圧:10.6Pa、ClogP値:−1.06)及び、1,2−ブタンジオール(20℃における蒸気圧:2.7Pa、ClogP値:−0.53)等が挙げられる。中でも、乾燥性の観点から、プロピレングリコール又はジプロピレングリコールが好ましい。
有機溶剤(dr1)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の水性インク組成物中の有機溶剤の含有量は、疎水性有機溶剤(d1)と有機溶剤(dr1)との合計で、吐出性及び乾燥性の観点から、6〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましく、15〜25質量%であることが更に好ましい。
疎水性有機溶剤(d1)の、本発明の水性インク組成物中の含有量は、0.5〜10質量%である。疎水性有機溶剤(d1)の含有量が上記範囲内にあると、組成が均一な水性インク組成物を調製しやすく、しかも保存安定性、乾燥性及び画質に優れたものとなる。この含有量は、乾燥性の観点から、1.0質量%以上であることが好ましく、保存安定性及び画質の観点から、5.0質量%以下であることが好ましい。
有機溶剤(dr1)の、本発明の水性インク組成物中の含有量は、吐出性及び乾燥性の観点から、1〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であることがより好ましい。
本発明の水性インク組成物において、疎水性有機溶剤(d1)と有機溶剤(dr1)との含有量比(質量基準)は、吐出性及び乾燥性の観点から、疎水性有機溶剤(d1):有機溶剤(dr1)=1:1〜1:30であることが好ましく、1:2〜1:20であることがより好ましく、1:3〜1:15であることが更に好ましい。
<樹脂微粒子>
本発明に用いる樹脂微粒子(樹脂微粒子を構成する樹脂)は、下記一般式(I)で表される構造単位(I)と、下記一般式(A)〜(E)のいずれかで表される構造単位(II)とを有している。この樹脂微粒子は、上記疎水性有機溶剤(d1)と組み合わせて分散物として用いられることにより、上述の優れた特性を本発明の水性インク組成物に付与できる。
樹脂微粒子が有する構造単位(I)及び構造単位(II)は、それぞれ、1種でもよく2種以上でもよい。この樹脂微粒子は、構造単位(I)及び構造単位(II)以外の構造単位を有していることが好ましい。
以下に、樹脂微粒子を形成する構造単位について具体的に説明する。
− 構造単位(I) −
構造単位(I)は下記式(1)で表される。
Figure 2019059855
式(1)中、Rは炭素数7以上のアルキレン基を示す。アルキレン基の炭素数は、好ましくは8以上であり、より好ましくは10以上であり、更に好ましくは12以上である。一方、炭素数の上限は、特に限定されないが、例えば、30以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましく、20以下であることが更に好ましい。
ここで、Rとして採りうるアルキレン基の炭素数は、後述するL及びLを含めた−L−R−L−鎖において、最も炭素数が大きくなるように決定される。すなわち、L及びLとして採りうる連結基のうちRに直接結合する連結基はアルキレン基を採ることはない。
例えば、後述する実施例に示す構造単位(c1−4)は−L−R−L−鎖として炭素数14のアルキル基を有する。この場合、2価の連結基であるL及びLともにアルキレン基と解釈することもできる。しかし、本発明においては、上述のようにアルキレン基Rの炭素数を決定すると、L及びLが共に単結合であり、Rが炭素数14のアルキレン基(ヘキサデカニレン基)と解釈する。
Rとして採りうるアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
Rは置換基を有していてもよい。このような置換基としては、特に限定されず、例えば、(シクロ)アルキル基、芳香族炭化水素環基、芳香族ヘテロ環基、後述するSOM若しくはCOOM等が挙げられる。
及びLは、それぞれ、単結合又は2価の連結基を示す。
及びLとして採りうる連結基は、特に限定されず、例えば、アルキレン基、アリーレン基、−O−、−NH−、−S−若しくは−C(=O)−、又は、これらを2個以上連結して形成される連結基が挙げられる。連結する基の数は、2個以上であれば特に限定されず、例えば、2〜7個が好ましく、2〜5個がより好ましい。このとき、アルキレン基は分子鎖が最も長いものを1つの連結基とする。すなわち、プロピレン基の場合、アルキレン基1つと数え、メチレン基3つとは数えない。
及びLとして採りうるアルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。このアルキレン基の炭素数は、1〜8であることが好ましく、1〜6であることがより好ましく、1〜3であることが更に好ましく、2であることが特に好ましい。
及びLとして採りうるアリーレン基は、単環でも縮合環でもよく、また、芳香族炭化水素環基でも芳香族ヘテロ環基でもよい。アリーレン基の炭素数は、特に限定されないが、6〜22が好ましく、6〜18がより好ましく、6〜10が更に好ましい。アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基、アントラニル基等が挙げられる。
として採りうる連結基は、*−アルキレン基−C(=O)−O−基、*−アリーレン基−C(=O)−O−基が好ましく、*−アルキレン基−C(=O)−O−基がより好ましい。
として採りうる連結基は、*−O−C(=O)−基、*−C(=O)−O−基、*−NH−C(=O)−基、*−C(=O)−NH−基、*−C(=O)−O−アルキレン基、*−C(=O)−O−アリーレン基、*−O−基、*−C(=O)−基、*−O−C(=O)−O−基、*−O−N(=O)−O−基が好ましく、*−O−C(=O)−基、*−C(=O)−O−基、*−NH−C(=O)−基がより好ましい。
上記連結基において、*は一般式中のカルボニル炭素原子との連結部を示す。
及びLは、それぞれ、置換基を有していてもよい。このような置換基としては、特に限定されず、Rが有していてもよい置換基と同義であり、好ましいものも同じである。
は、SOMを含有する2価の連結基(1つの連結基である場合、アルキレン基を除く。)が好ましく、SOMを含有する2価の連結基(アルキレン基、アリーレン基又は−NH−)を含む2つ以上が連結して形成される連結基がより好ましく、SOMを含有するアルキレン基と−C(=O)−O−基とが連結して形成される連結基が更に好ましい。
は、水素原子、SOM又はCOOMを示し、水素原子又はSOMが好ましく、水素原子がより好ましい。Mは、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを示す。吐出安定性、レイテンシと樹脂微粒子の安定性の観点から、Mはアルカリ金属イオンが好ましく、ナトリウムイオン又はカリウムイオンがより好ましく、ナトリウムイオンが更に好ましい。本発明の水性インク組成物中において、Mは乖離(遊離)していてもよい。
構造単位(I)は、R、L及びLの少なくとも1つはSOM又はCOOMを有する。すなわち、Lが水素原子を採る場合、R及びLの少なくとも一方は置換基としてSOM又はCOOMを有する。本発明においては、Lが水素原子を採り、Lが置換基としてSOM又はCOOMを有する形態が好ましい。
構造単位(I)が有するSOM及びCOOMの数は、少なくとも1個であればよく、例えば、1〜3個が好ましい。
構造単位(I)の具体例としては実施例欄に示したものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
− 構造単位(II) −
樹脂微粒子(この樹脂微粒子を形成する樹脂)は、芳香族環又は脂肪族環を有するエチレン性不飽和化合物の構造単位(II)を含有する。
構造単位(II)に含まれる芳香族環又は脂肪族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、及び、炭素数5〜20の脂肪族炭化水素環が挙げられ、ベンゼン環、及び、炭素数6〜10の脂肪族炭化水素環が好ましい。
これらの芳香族環又は脂肪族環は置換基を有していてもよい。芳香族環又は脂肪族環が置換基を有する場合、置換基は、特に限定されないが、上記SOM及びCOOM以外の置換基が挙げられる。
構造単位(II)を導く芳香族環又は脂肪族環を有するエチレン性不飽和化合物としては、化合物末端にエチレン性不飽和基を有するエチレン性不飽和化合物が好ましく、スチレン、又は、(メタ)アクリレート化合物、又は、(メタ)アクリルアミド化合物がより好ましく、置換基を有していてもよいスチレン、又は、(メタ)アクリレート化合物が更に好ましい。
上記エチレン性不飽和化合物としては、特に限定されないが、下記一般式(A)〜一般式(E)のいずれかで表される構造単位を導く化合物等が挙げられ、より具体的には、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
構造単位(II)は、得られる画像の製造適性(ろ過性)の観点から、下記一般式(A)〜一般式(E)のいずれか1つの式で表される構造単位を含むことが好ましく、インク中での粒子の安定性の観点から、下記一般式(A)で表される構造単位を含むことがより好ましい。
Figure 2019059855
一般式(A)〜一般式(E)中、R11及びR12は、各々独立に、メチル基又は水素原子を示す。R13は、各々独立に、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数が1〜10のアルキル基を示す。一般式(A)及び一般式(B)中のnは0〜5の整数を示す。一般式(C)中のnは0〜11の整数である。L11は、単結合、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−若しくは−C(=O)−、又は、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を示す。
一般式(A)中、R11は水素原子であることが好ましい。
一般式(B)〜一般式(E)中、R12はメチル基であることが好ましい。
一般式(A)〜一般式(C)中、R13は、各々独立に、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。各式で表される構造単位が複数のR13を有する場合、互いに結合して環を形成してもよい。ただし、一般式(C)で表される構造単位において、複数のR13が互いに結合して環を形成する場合、一般式(D)及び(E)で表される構造単位となることはない。
nは、いずれの式においても、0〜2の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが更に好ましい。
一般式(B)中、L11は、一般式(B)中に記載されたカルボニル基と結合した炭素原子との結合部位に−O−又は−NH−を含む2価の連結基が好ましく、上記カルボニル基と結合した炭素原子との結合部位に−O−又は−NH−を含み、かつ、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基を含む2価の連結基がより好ましく、−OCH−又は−NHCH−が更に好ましく、−OCH−が特に好ましい。
一般式(C)〜一般式(E)中、L11は、一般式(C)〜一般式(E)中に記載されたカルボニル基と結合した炭素原子との結合部位に−O−又は−NH−を含む2価の連結基が好ましく、−O−又は−NH−がより好ましく、−O−が更に好ましい。
一般式(A)で表される構造単位は、スチレンに由来する構造単位であることが好ましい。
一般式(B)で表される構造単位は、ベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であることが好ましい。
一般式(C)で表される構造単位は、シクロヘキシル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であることが好ましい。
一般式(D)で表される構造単位は、イソボルニル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であることが好ましい。
一般式(E)で表される構造単位は、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートに由来する構造単位であることが好ましい。
構造単位(II)の具体例としては実施例で使用したものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
− 他の構造単位(III) −
樹脂微粒子は、上記構造単位(I)及び構造単位(II)以外の構造単位(「他の構造単位(III)」という。)を有していてもよい。
他の構造単位(III)としては、上記構造単位(I)又は(II)と重合可能な化合物由来のものであれば特に限定されず、好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されている構造単位を挙げることができる。
他の構造単位(III)としては、(メタ)アクリルアミド化合物又は(メタ)アクリレート化合物に由来する構造単位であることが好ましく、(メタ)アクリレート化合物に由来する構造単位であることがより好ましい。
他の構造単位(III)は、(メタ)アクリル酸系化合物又はその塩(上記アルカリ金属イオンの塩又はアンモニウムイオンの塩が挙げられる。)に由来する構造単位、アルキル基の炭素数が1〜18であるアルキル(メタ)アクリレート化合物に由来する構造単位、又は、アルキル(メタ)アクリルアミド化合物に由来する構造単位が好ましく、アルキル(メタ)アクリレート化合物に由来する構造単位がより好ましい。このアルキル(メタ)アクリレート化合物は、アルキル基の炭素数が1〜10であるアルキル(メタ)アクリレート化合物であることが更に好ましい。
他の構造単位(III)が有する上記アルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、環状構造(ただし、上記一般式(C)〜一般式(E)に包含されるものを除く。)を有していてもよい。
他の構造単位(III)は置換基を有していてもよい。この構造単位が有していてもよい置換基としては、特に限定されないが、上記SOM及びCOOM以外の置換基、例えば水酸基、アミノ基が挙げられる。
樹脂微粒子は、他の構造単位(III)を1種又は2種以上有していてもよい。
構造単位(III)の具体例としては実施例で使用したものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
樹脂微粒子は、構造単位(I)と構造単位(II)、好ましくは構造単位(III)を適宜の組み合わせで有している。この組み合わせは、特に限定されないが、各構造単位の好ましいもの同士を組み合わせることが好ましい。
樹脂微粒子を形成する構造単位の含有量は、他の構造単位の種類及び含有量等を考慮して、適宜に決定される。
上記構造単位(I)の、樹脂微粒子中の含有量は、1〜25質量%であることが好ましい。構造単位(I)の含有量が上記範囲内にあると、上記各特性、特に耐擦性と画質を高い水準で兼ね備えることができる。上記各特性を高い水準でバランスよく兼ね備える観点から、構造単位(I)の含有量は、樹脂微粒子中、3〜20であることがより好ましく、5〜15質量%であることが更に好ましく、8〜12質量%が特に好ましい。構造単位(I)の上記含有量は、樹脂微粒子が複数種の構造単位(I)を含有する場合、各構造単位の含有量の合計とする。
上記構造単位(II)の、樹脂微粒子中の含有量は、保存安定性、吐出性、耐擦性及びろ過性の観点から、1〜90質量%であることが好ましく、5〜50質量%がより好ましく、10〜30質量%が更に好ましい。構造単位(II)の含有量は、樹脂微粒子が複数種の構造単位(II)を含有する場合、各構造単位の含有量の合計とする。
構造単位(II)のうち一般式(A)で表される構造単位の、樹脂微粒子中の含有量は、保存安定性及び耐擦性の観点から、5〜50質量%が好ましく、8〜40質量%がより好ましく、10〜30質量%が更に好ましい。上記含有量は、樹脂微粒子が一般式(A)で表される構造単位を複数種有する場合、各構造単位の含有量の合計とする。
他の構造単位(III)の、樹脂微粒子中の含有量は、吐出性及び耐擦性の観点から、0〜90質量%であることが好ましく、0〜70質量%であることがより好ましい。上記含有量は、樹脂微粒子が複数種の構造単位(III)を含有する場合、各構造単位の含有量の合計とする。
本発明においては、樹脂微粒子は、上記構造単位(I)及び(II)、好ましくは(III)を含有し、これらの構造単位の含有量の合計が100質量%となることが好ましい。
樹脂微粒子が上記構造単位(I)〜(III)以外の構造単位を有する場合、上記構造単位(I)〜(III)以外の構造単位の含有量は、樹脂微粒子中、0〜20質量%が好ましく、0〜15質量%がより好ましく、0〜10質量%が更に好ましい。
本発明に用いる樹脂微粒子を構成する樹脂は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体等どのような重合様式で重合したものでもよい。
本発明に用いる樹脂微粒子のガラス転移温度は、得られる画像の耐傷性の観点から、30℃〜150℃が好ましく、50℃〜130℃がより好ましく、70℃〜110℃が更に好ましい。
本発明において、ガラス転移温度は、実測によって得られる測定Tgを適用する。測定Tgは、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製の示差走査熱量計(DSC)EXSTAR6220を用いて、昇温速度5℃/分で測定したときに、ガラス転移に伴いベースラインが変化しはじめる温度と、再びベースラインに戻る温度との平均として測定される。
ただし、樹脂の分解、感度等により測定が困難な場合には、下記の計算式で算出される計算Tgを適用する。計算Tgは下記の式により計算されるものである。

1/Tg=Σ(X/Tg

ここで、計算対象となる樹脂はi=1からnまでのn種のモノマーが共重合しているとする。Xはi番目のモノマー成分の質量分率(ΣX=1)、Tgはi番目のモノマーの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度)である。ただし、Σはi=1からnまでの和をとる。なお、各モノマーの単独重合体のガラス転移温度の値(Tg)は、Polymer Handbook (3rd Edition) (J.Brandrup, E.H.Immergut著(Wiley−Interscience、1989))の値を採用する。
本発明に用いる樹脂微粒子を構成する樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜1,000,000であることが好ましく、20,000〜500,000であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、公知の方法で測定できる。GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ2000(いずれも東ソー(株)製の商品名)を用いて3本直列につなぎ、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いる。また、条件としては、試料濃度を0.45質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μL、測定温度を40℃とし、示差屈折率検出器を用いて行う。また、検量線は、東ソー(株)製「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F−40」、「F−20」、「F−4」、「F−1」、「A−5000」、「A−2500」、「A−1000」、「n−プロピルベンゼン」の8サンプルから作成する。
本発明の水性インク組成物中において、樹脂微粒子の粒径は、インク吐出性の観点から、1〜200nmであることが好ましく、5〜100nmであることがより好ましく、10〜60nmであることが更に好ましい。
樹脂微粒子の上記粒径は体積平均粒径を意味する。この体積平均粒径は、光散乱を用いた粒度分布測定装置(例えば、日機装(株)製のマイクロトラックUPA(登録商標)EX150)によって測定される。
樹脂の粒子を製造する方法としては、公知の方法を特に制限されることなく、適用できる。上記樹脂微粒子は、乳化重合法により調製されることが好ましい。乳化重合法は、水性媒体(例えば、水)中にモノマー、重合開始剤、乳化剤、及び、必要に応じて連鎖移動剤等を加えて調製した乳化物を重合させることで樹脂微粒子を調製する方法である。この乳化重合法を本発明に用いる樹脂微粒子の調製に適用する場合、上記構造単位(I)を導くモノマーは乳化剤としても機能する。したがって、このモノマー以外に乳化剤を別途混合する必要はないが、吐出安定性を低下させない範囲であれば、公地の乳化剤を別途添加してもよい。上記乳化剤としては、例えば、本発明の水性インク組成物に含有されてもよい、後述する界面活性剤(アニオン系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤)が挙げられる。
上記重合開始剤は、特に制限されるものではなく、無機過硫酸塩(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系開始剤(例えば2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸))、有機過酸化物(例えばペルオキシピバル酸−t−ブチル、t−ブチルヒドロペルオキシド、二コハク酸ペルオキシド)等、又はそれらの塩を用いることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でもアゾ系開始剤又は無機過酸化物を用いることが好ましい。
本発明における重合開始剤の使用量としては、全モノマー100質量部に対して、0.01〜2質量部であることが好ましく、0.2〜1質量部であることがより好ましい。
上記連鎖移動剤としては、四ハロゲン化炭素、スチレン類の二量体、(メタ)アクリル酸エステル類の二量体、メルカプタン類、スルフィド類等の公知の化合物を用いることができる。中でも、特開平5−17510号公報に記載されているスチレン類の二量体又はメルカプタン類を好適に用いることができる。
本発明に用いる樹脂微粒子は、上記のような水性媒体中に分散していることが好ましい。本発明に用いる樹脂微粒子は、自己分散性樹脂微粒子であることがより好ましい。
本発明において、自己分散性樹脂微粒子とは、樹脂自身が有する官能基(特にSOM又はCOOM)によって、水性媒体中で分散状態となり得る水不溶性樹脂からなる微粒子をいう。分散状態とは、水性媒体中に水不溶性樹脂が液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性樹脂が固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。「水不溶性」とは、水100質量部(25℃)に対する溶解量が5.0質量部以下であることを指す。
本発明に用いる樹脂微粒子は、顔料の分散剤として機能するものではなく、したがって粒子内部に顔料を含まない。
本発明の樹脂微粒子は、水及び有機溶剤の混合溶媒に分散してなる形態で存在していることが好ましい。
樹脂微粒子の、本発明の水性インク組成物中の含有量は、保存安定性及び耐擦性の観点から、1〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、2〜10質量%であることが更に好ましい。
<顔料>
本発明の水性インク組成物は、1種又は2種以上の顔料が分散してなる形態が好ましい。
本発明の水性インク組成物に用いられる顔料の種類に特に制限はなく、通常の有機又は無機顔料を用いることができる。
有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、又は多環式顔料が好ましい。アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料が挙げられる。多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料が挙げられる。染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートが挙げられる。
無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラックが挙げられる。
本発明に用いることができる顔料の具体例は、特開2007−100071号公報の段落番号0142〜0145に記載の顔料等が挙げられる。
本発明の水性インク組成物中の顔料の体積平均粒径は、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmが更に好ましい。体積平均粒径が200nm以下であることで色再現性が良好になり、インクジェット方式の場合には打滴特性が良好になる。また、体積平均粒径が10nm以上であることで、耐光性が良好になる。水性インク組成物中の顔料の体積平均粒径は、公知の測定方法で測定することができる。具体的には遠心沈降光透過法、X線透過法、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法により測定することができる。
また、本発明の水性インク組成物中の顔料の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ着色剤を、2種以上混合して使用してもよい。
なお、顔料の体積平均粒径は、上述の樹脂微粒子の体積平均粒径の測定と同様の方法で測定することができる。
本発明の水性インク組成物が顔料を含む場合、着色性、保存安定性の観点から、水性インク組成物中の顔料の含有量は、1〜20質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
− 分散剤 −
本発明の水性インク組成物が顔料を含む場合、顔料としては、顔料が分散剤によって水性媒体中に分散された着色粒子(以下、単に「着色粒子」という)を調製し、これを水性インク組成物の原料として用いることが好ましい。
上記分散剤としては、ポリマー分散剤でも低分子の界面活性剤型分散剤でもよい。また、ポリマー分散剤としては水溶性ポリマー分散剤でも水不溶性ポリマー分散剤のいずれでもよい。
上記低分子の界面活性剤型分散剤については、例えば、特開2011−178029号公報の段落0047〜0052に記載された公知の低分子の界面活性剤型分散剤を用いることができる。
上記ポリマー分散剤のうち、水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物が挙げられる。例えば、天然の親水性高分子化合物では、アラビアガム、トラガンガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子等が挙げられる。
また、天然物を原料に修飾した親水性高分子化合物では、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子等が挙げられる。
更に、合成系の親水性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、非架橋ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウム、アミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物、セラック等の天然高分子化合物等が挙げられる。
これらの中でも、アクリル酸又はメタクリル酸のホモポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸と他のモノマーとの共重合体等のように、カルボキシ基が導入された親水性高分子化合物が好ましい。
水不溶性ポリマー分散剤は、水不溶性のポリマーであって、顔料を分散可能であれば特に制限はなく、従来公知の水不溶性ポリマー分散剤を用いることができる。水不溶性ポリマー分散剤は、例えば、疎水性の構造単位と親水性の構造単位の両方を含んで構成することができる。
ここで、疎水性の構造単位を構成するモノマー成分としては、スチレン系モノマー成分、アルキル(メタ)アクリレート成分、芳香族基含有(メタ)アクリレート成分等を挙げることができる。
また、親水性の構造単位を構成するモノマー成分としては、親水性基を含むモノマー成分であれば特に制限はない。この親水性基としては、ノニオン性基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。なお、ノニオン性基は、水酸基、(窒素原子が無置換の)アミド基、アルキレンオキシド重合体(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等)に由来する基、糖アルコールに由来する基等が挙げられる。
上記親水性の構造単位は、分散安定性の観点から、少なくともカルボキシ基を含むことが好ましく、ノニオン性基とカルボキシ基を共に含む形態であることもまた好ましい。
水不溶性ポリマー分散剤として、具体的には、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
水不溶性ポリマー分散剤は、顔料の分散安定性の観点から、カルボキシ基を含むビニルポリマーであることが好ましい。更に、疎水性の構造単位として少なくとも芳香族基含有モノマーに由来する構造単位を有し、親水性の構造単位としてカルボキシ基を含む構造単位を有するビニルポリマーであることがより好ましい。
また、水不溶性ポリマー分散剤の重量平均分子量は、顔料の分散安定性の観点から、3,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
着色粒子における分散剤の含有量は、顔料の分散性、インク着色性、分散安定性の観点から、顔料100質量部に対し、分散剤が10〜90質量部であることが好ましく、20〜70質量部がより好ましく、30〜50質量部が特に好ましい。
着色粒子中の分散剤の含有量が、上記範囲内にあることにより、顔料が適量の分散剤で被覆され、粒径が小さく経時安定に優れた着色粒子を得やすい傾向となり好ましい。
着色粒子は、例えば、顔料、分散剤、必要に応じて溶剤(好ましくは有機溶剤)等を含む混合物を、分散機により分散することで得ることができる。
より詳細には、例えば、顔料と、分散剤と、この分散剤を溶解又は分散する有機溶剤との混合物に、塩基性物質を含む水溶液を加える工程(混合・水和工程)の後、有機溶剤を除く工程(溶剤除去工程)を設けて分散物として製造することができる。これにより、顔料が微細に分散され、保存安定性に優れた着色粒子の分散物を作製することができる。
上記有機溶剤は、分散剤を溶解又は分散できることが必要であるが、これに加えて水に対してある程度の親和性を有することが好ましい。具体的には、20℃において水に対する溶解度が10〜50質量%以下であるものが好ましい。
有機溶剤の好ましい例としては、水溶性有機溶剤が挙げられる。中でもイソプロピルアルコール、アセトン及びメチルエチルケトンが好ましく、特に、メチルエチルケトンが好ましい。有機溶剤は、1種単独で用いても複数併用してもよい。
上記塩基性物質は、ポリマーが有することがあるアニオン性基(好ましくはカルボキシ基)の中和に用いられる。アニオン性基の中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる着色剤粒子の分散物の液性が、例えばpHが4.5〜10であるものが好ましい。上記ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。
着色粒子分散物の製造工程での有機溶剤の除去は、特に方法が限定されるものではなく、減圧蒸留等の公知に方法により除去できる。
本発明の水性インク組成物において、上記着色粒子は、1種単独又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<界面活性剤>
本発明の水性インク組成物は、表面張力調整剤として界面活性剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。
アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテ硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、t−オクチルフェノキシエトキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウム塩等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、例えば、アセチレンジオールのエチレンオキサイド付加物等のアセチレンジオール誘導体、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー、t−オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノール等が挙げられ、これらの1種、又は2種以上を選択することができる。
カチオン性界面活性剤としては、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライド等が挙げられる。
これらの界面活性剤の中でも、安定性の点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、アセチレンジオール誘導体がより好ましい。
水性インク組成物中の界面活性剤の含有量は、水性インク組成物を下記表面張力の範囲内とすることができる量であることが好ましい。より具体的には、水性インク組成物中の界面活性剤の含有量が0.1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%であり、更に好ましくは0.2〜3質量%である。
<他の成分>
本発明の水性インク組成物は、更に必要に応じて、乾燥防止剤(膨潤剤)、着色防止剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、粘土調整剤、pH調製剤、キレート剤等の添加剤を混合してもよい。混合方法に特に制限はなく、通常用いられる混合方法を適宜に選択し、本発明の水性インク組成物を得ることができる。
<水性インク組成物の物性>
本発明の水性インク組成物の30℃での粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満であり、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。
水性インク組成物の粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、30℃の温度下で測定される。
本発明の水性インク組成物のpHは、分散安定性の観点から、25℃におけるpHが6〜11が好ましく、7.0〜10.0であることがより好ましく、7.0〜9.0であることが更に好ましい。インクのpHは、25℃環境下において、pHメーターWM−50EG(東亜DDK(株)製)を用いて測定される。
本発明の水性インク組成物をインクジェット記録方式に用いる場合、インク吐出性の観点から、水性インク組成物の表面張力が20〜60mN/mとなるよう界面活性剤の量を調整することが好ましく、より好ましくは20〜45mN/mとなる量であり、更に好ましくは25〜40mN/mとなる量である。
水性インク組成物の表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP−Z(協和界面科学株式会社製)を用い、25℃の温度下で測定される。
[画像形成方法]
本発明の画像形成方法は、本発明の水性インク組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与して画像を形成するインク付与工程を含む。
また、本発明の画像形成方法は、必要に応じて、記録媒体に付与された水性インク組成物中の水及び有機溶剤を乾燥除去する工程(以下、「インク乾燥工程」ともいう。)、水性インク組成物に含まれる樹脂微粒子を溶融定着する工程(以下、「熱定着工程」ともいう。)等の他の工程を更に有してもよい。
上記インク付与工程は、低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体上に、本発明の水性インク組成物を直接付与して画像を形成する工程であることが好ましい。
低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体上に、インクを直接付与するとは、付与されたインクと低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体が直接接することを意味している。例えば、水性インク組成物に含まれる樹脂微粒子等の成分の凝集を目的とした、水性インク組成物による画像形成方法の分野において公知の処理液の付与を事前に行う場合には、水性インク組成物と上記低吸水性記録媒体又は上記非吸水性記録媒体は直接接しない。上述の公知の処理液としては、例えば、特開2012−40778号公報に記載の処理液が挙げられる。
また、本発明の画像形成方法は、インク付与工程の後に、上述の公知の処理液を付与しないことが好ましい。すなわち、本発明の画像形成方法は、上述の公知の処理液を付与する工程を含まないことが好ましい。
従来の水性インク組成物を用いたインクジェット法においては、特に、記録媒体として低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体を用いる場合、例えばプレコート液又はトップコート液等を使用して、記録媒体上に吐出される水性インク組成物中の成分を凝集させ、水性インク組成物の広がりを抑制して画質を向上させる方法が知られている。
しかし、本発明の水性インク組成物は、上述の優れた特性を示し、画像に高い性能を付与できるため、プレコート液又はトップコート液等を使用しなくても、低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体上に、画質に優れた画像を形成できる。
<記録媒体>
本発明の画像形成方法に用いる記録媒体に特に制限はないが、紙媒体であることが好ましい。すなわち、一般のオフセット印刷等に用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙等のセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙社製の「OKプリンス上質」、日本製紙社製の「しらおい」、及び日本製紙社製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、日本製紙社製の「シルバーダイヤ」等の上質コート紙、王子製紙社製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙社製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙社製の「OKコートL」及び日本製紙社製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙社製の「OKトップコート+」及び日本製紙社製の「オーロラコート」、「ユーライト」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙社製の「OK金藤+」及び三菱製紙社製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷等に用いられるいわゆる塗工紙(コート紙)が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙、中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢、耐擦性等、品質上の問題を生じやすいが、本発明の水性インク組成物を用いる場合には、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐傷性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましい。アート紙、コート紙、軽量コート紙又は微塗工紙がより好ましい。
上記の中でも、顔料移動の抑制効果が大きく、従来以上に色濃度及び色相の良好な高品位な画像を得る観点から、記録媒体としては、低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体を用いることが好ましい。本発明において、低吸水性記録媒体とは、水の吸収係数Kaが0.05〜0.5mL/m・ms1/2であるものをいい、0.1〜0.4mL/m・ms1/2であることが好ましく、0.2〜0.3mL/m・ms1/2であることがより好ましい。また、非吸水性記録媒体とは、水の吸収係数Kaが0.05mL/m・ms1/2未満であるものをいう。
水の吸収係数Kaは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No51:2000(発行:紙パルプ技術協会)に記載されているものと同義であり、具体的には、吸収係数Kaは、自動走査吸液計KM500Win(熊谷理機社製)を用いて接触時間100msと接触時間900msにおける水の転移量の差から算出されるものである。
<インク付与工程>
インク付与工程では、顔料を含有する本発明の水性インク組成物が記録媒体上に付与される。水性インク組成物の付与方法としては、画像上に水性インク組成物を付与可能なインクジェット方法であれば、特に制限はなく公知のインク付与方法を用いることができる。インクジェット方法は、記録装置のコンパクト化と高速記録性等の利点を有している。
インクジェット方式(方法)による画像形成では、エネルギーを供与することにより、記録媒体上に水性インク組成物を吐出し、着色画像を形成する。なお、本発明に好ましいインクジェット記録方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
インクジェット方式には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、インクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット方式等のいずれであってもよい。
また、インクジェット方式で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。更に上記インクジェット方式により記録を行う際に使用するインクノズル等についても特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
なお、インクジェット方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式、無色透明のインクを用いる方式等が含まれる。
またインクジェット方式として、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行うシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行うことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
インク付与工程をインクジェット方式で実施する場合、高精細印画を形成する観点から、インクジェット方式により吐出される水性インク組成物の液滴量が1.5〜10pLであることが好ましく、1.5〜6pLであることより好ましい。吐出される水性インク組成物の液滴量は、吐出条件を適宜に調整して調節することができる。
<インク乾燥工程>
本発明の画像形成方法は、必要に応じて、記録媒体上に付与された水性インク組成物中の水性媒体(例えば、水、上述の水溶性有機溶剤等)を乾燥除去するインク乾燥工程を備えていてもよい。インク乾燥工程は、水性インク組成物中の水性媒体の少なくとも一部を除去できれば特に制限はなく、通常用いられる方法を適用することができる。
<熱定着工程>
本発明の画像形成方法は、必要により、上記インク乾燥工程の後に、熱定着工程を備えることが好ましい。熱定着処理を施すことにより、記録媒体上の画像の定着が施され、画像の擦過に対する耐性をより向上させることができる。熱定着工程として、例えば、特開2010−221415号公報の段落番号0112〜0120に記載の熱定着工程を採用することができる。
<インク除去工程>
本発明の画像形成方法は、必要に応じて、インクジェット記録用ヘッドに付着した水性インク組成物(例えば、乾燥により固形化したインク固形物)をメンテナンス液により除去するインク除去工程を含んでいてもよい。メンテナンス液及びインク除去工程の詳細は、国際公開第2013/180074号に記載されたメンテナンス液及びインク除去工程を好ましく適用することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、組成を表す「部」及び「%」は質量基準である。
[樹脂微粒子の合成]
以下に、実施例及び比較例用いた樹脂微粒子C−1〜C−11及びCR−1〜CR−5を以下のようにして合成した。
<樹脂微粒子C−1の合成、及び樹脂微粒子C−1の水性分散物の調製>
撹拌機、温度計、環流冷却管及び窒素ガス導入管を備えた三口フラスコに、水(342g)、ネオペレックスG−15(16質量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液、花王ケミカル社製)(9.6g)を仕込み、窒素気流化で85℃まで昇温した。そこへ、過硫酸ナトリウム(ラジカル重合開始剤、和光純薬社製)(0.07g)及び水(20g)からなる混合溶液を加え、10分間撹拌した。次いで、上記三口フラスコに、スチレン(下記構造単位c2−1を導くモノマー)(60g)、2−エチルヘキシルメタクリレート(下記構造単位c3−2を導くモノマー)(40g)、メチルメタクリレート(下記構造単位c3−1を導くモノマー)(80g)、エレミノールJS−10(三洋化成社製、38質量%水溶液、下記構造単位c1−1を導くモノマー)(52.6g)及び水(167.4g)を撹拌して得た懸濁液を、撹拌し続けたまま3時間で滴下が完了するように等速で滴下ポンプにて滴下し、また同じタイミングで別のポンプから、過硫酸ナトリウム(0.52g)及び水(30g)からなる混合溶液を3時間で滴下が完了するように等速で滴下し、滴下完了後に1時間撹拌した。得られた反応混合物に1Nの水酸化ナトリウム水溶液をpHが8〜9の間になるまで加え、網目50μmのメッシュでろ過し、樹脂微粒子C−1の水性分散物を得た。
得られた樹脂微粒子C−1の水性分散物は、pH8.4、固形分濃度26%であった。固形分濃度とは、水性分散物における、溶剤(水及び有機溶剤)を除いた他の成分の合計量を指す。
水性分散物中の樹脂微粒子C−1は、体積平均粒径47nm(体積平均粒径はマイクロトラックUPA EX−150(日機装社製)で測定した。)、重量平均分子量(上記測定方法による。)12万であった。
<樹脂微粒子C−2〜C−11及びCR−1〜CR−4の水性分散物の調製>
上記樹脂微粒子C−1の水性分散物の調製において、モノマーの種類及び使用量を表1に示すモノマーの種類及び組成比に変更したこと以外は、樹脂微粒子C−1の水性分散物の調製と同様にして、樹脂微粒子C−2〜C−11並びにCR−1〜CR−4の水性分散物をそれぞれ調製した。
<樹脂微粒子CR−5の合成及び水性分散物の調製>
特願2015−072387に記載の方法に準じて、樹脂微粒子CR−5の合成し、その分散物を調製した。
樹脂微粒子C−2〜C−11及びCR−1〜CR−5において、Mがカリウムカチオン又はアンモニウムカチオンである場合、カリウム塩又はアンモニアを用いて常法によりMをカリウムカチオン又はアンモニウムカチオンに変換した。
得られた樹脂微粒子C−2〜C−11及びCR−1〜CR−5、並びにその水性分散物の物性及びを表1に示す。
以下に、各樹脂微粒子を構成する構造単位の具体例を示す。
下記構造単位に示される「*」は他の構造単位との連結部位を示す。
Figure 2019059855
Figure 2019059855
Figure 2019059855
表1の「構造単位」欄において、「−」は対応する構造単位を有していないことを示す。また、「組成比」欄において、空欄は含有量が0質量%であることを示す。
[実施例1]
<水性インク組成物の調製>
(ブラックインク組成物K−1〜K−11及びCK−1〜CK−11の調製の調製)
−水溶性ポリマー分散剤Q−1の合成−
メタクリル酸(172部)と、メタクリル酸ベンジル(828部)と、イソプロパノール(375部)とを混合することにより、モノマー供給組成物を調製した。また、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(22.05部)と、イソプロパノール(187.5部)とを混合することにより、開始剤供給組成物を調製した。
次に、イソプロパノール(187.5部)を窒素雰囲気下、80℃に加温し、そこに、上記モノマー供給組成物及び上記開始剤供給組成物の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、得られた溶液を更に4時間、80℃に保った後、25℃まで冷却した。
冷却後、溶剤を減圧除去することにより、重量平均分子量約30,000、酸価112mgKOH/gの水溶性ポリマー分散剤Q−1を得た。
−ブラック顔料分散物の調製−
上記で得られた水溶性ポリマー分散剤Q−1(150部)中のメタクリル酸量の0.8当量を、水酸化カリウム水溶液を用いて中和した後、水溶性ポリマー分散剤濃度が25質量%となるように、更にイオン交換水を加えて調整し、水溶性ポリマー分散剤水溶液を得た。
この水溶性ポリマー分散剤水溶液(124部)と、カーボンブラックMA−100(ブラック顔料、平均粒径80nm)(48部)と、水(75部)と、ジプロピレングリコール(30部)とを混合し、ビーズミル(ビーズ径0.1mmφ、ジルコニアビーズ)で所望の体積平均粒径を得るまで分散し、顔料濃度15%のポリマー被覆ブラック顔料粒子の分散物(未架橋分散物)を得た。
この未架橋分散物(136部)に、架橋剤:Denacol EX−321(ナガセケムテックス社製)(1.3部)と、ホウ酸水溶液(ホウ酸濃度:4質量%)(14.3部)とを添加し、50℃にて6時間半反応させた後、25℃に冷却し、架橋分散物を得た。次に、得られた架橋分散物にイオン交換水を加え、攪拌型ウルトラホルダー(ADVANTEC社製)及び限外ろ過フィルター(ADVANTEC社製、分画分子量5万、Q0500076Eウルトラフィルター)を用いて限外ろ過を行った。架橋分散物中のジプロピレングリコール濃度が0.1質量%以下となるように精製した後、顔料濃度が15質量%となるまで濃縮することにより、ブラック顔料分散物を得た。ブラック顔料分散物に含まれる顔料は、水溶性ポリマー分散剤Q−1が架橋剤により架橋された架橋ポリマーで表面が被覆されているポリマー被覆顔料(カプセル化顔料)である。
− ブラックインク組成物K−1〜K−11及びCK−1〜CK−11の調製 −
下記組成となるように各成分を混合し、各樹脂微粒子を含有するインク組成物を調液した。調液後、1μmフィルターを用いて粗大粒子を除去し、ブラックインク組成物K−1〜K−11及びCK−1〜CK−11をそれぞれ調製した。
〔組成〕
ブラック顔料分散物:ブラック顔料の濃度が4質量部となる量
表2に示す疎水性有機溶剤(d1):表2に示す含有量
表2に示す有機溶媒(dr1):表2に示す含有量
表2に示す樹脂微粒子の水性分散物:表2に示す含有量(樹脂微粒子含有量に換算)
界面活性剤CapstoneFS−3100(DuPont社製):0.1質量部
水:残部
合計:100質量部
上記で調製したブラックインク組成物の粘度は、30℃においていずれも3〜15mPa・sの範囲内にあった。この粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD 製)にて測定した。
また、表面張力は、協和界面科学社製CBVP−Zを用いて、白金プレート法で測定した。上記で調製したブラックインク組成物の表面張力は、いずれも20〜60mN/mの範囲内にあった。
[試験例]
上記のようにして調製した各ブラックインク組成物(以下、単に「インク」ということがある)について、下記試験を行った。結果を下記表2に示す。
(画像形成)
下記試験における画像形成は、以下のようにして、行った。
基材として、コート紙(商品名「OKトップコート+」、王子製紙社製)を用い、調製したインクK−1〜K−11及びCK−1〜CK−11を、それぞれ、シングルパス方式により下記条件で吐出し、画像を形成した。
<条件>
・ヘッド:1,200dpi(dot per inch、1inch = 2.54cm)/20inch幅ピエゾフルラインヘッド
・吐出量:2.4pL
・駆動周波数:30kHz(基材搬送速度635mm/sec)
<試験1:吐出性の評価>
記録デューティ100%のベタ画像を上記(画像形成)方法に従って上記記録媒体1枚に形成した後、25℃、相対湿度50%の条件下で、30分印刷機を停止させて、プリントヘッドを大気暴露させた。30分の停止後、インクジェット記録装置のノズルチェックパターンを上記(画像形成)方法に従って上記記録媒体1枚に形成した。形成したノズルチェックパターンを目視により観察し、不吐ノズル数(単位:本)を計数した。この不吐ノズル数が下記の評価基準のいずれに含まれるかを判定した。
本試験においては、不吐ノズル数が2本以下であれば、実用上の許容範囲内である。評価結果を表2に示す。
記録デューティ100%とは、解像度1200dpi×1200dpiで1/1200インチ×1/1200インチの単位領域(1画素)に約2.4pLのインクを1滴付与する条件で記録された画像と定義する。
− 評価基準 −
AA:0本
A:1〜2本
B:3〜5本
C:6本以上
<試験2:保存安定性の評価>
各インクをテフロン(登録商標)製の密閉容器に詰め、60℃恒温室下で4週間放置して保存試験を行った。保存試験前後のインクの粘度を測定し、下記式からインクの粘度変化率を算出した。インクの粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、30℃の温度下で測定した。
得られた粘度変化率が下記の評価基準のいずれに含まれるかを判定した。インクの粘度の変化率が1.0に近い程、インクの保存安定性が高いことを意味する。本試験においては、粘度変化率が1.2未満であれば、実用上の許容範囲内である。評価結果を表2に示す。

粘度変化率=(保存試験後のインクの粘度)/(保存試験前のインクの粘度)

− 評価基準 −
A:1.1未満
B:1.1以上1.2未満
C:1.2以上
<試験3:耐擦性の評価>
記録デューティ100%のベタ画像を上記(画像形成)方法に従って上記記録媒体に形成した後、24時間25℃、相対湿度50%の環境下に放置した。この記録媒体の画像形成面を2×10N/mの荷重をかけたシルホン紙により50回擦過した。そして、画像形成部分(ベタ画像)の表面状態を目視で確認した。表面状態が下記の評価基準のいずれに該当するかを判定した。
本試験においては、下記評価基準B以上であれば、実用上の許容範囲内である。評価結果を表2に示す。
− 評価基準 −
A:画像に擦過痕がついていなかった。
B:画像にわずかに擦過痕がついていた。
C:画像に擦過痕がついており、記録媒体の白地(表面)が見えていた。
<試験4:乾燥性の評価>
記録デューティ100%のベタ画像を上記(画像形成)方法に従って上記記録媒体1枚に形成した。得られた印画物を、25℃、相対湿度50%の条件下で、10秒経過後、20秒経過後及び30秒経過後にそれぞれ手で擦り、インクの速乾定着性を確認して、乾燥性評価の指標とした。この指標が下記の評価基準のいずれに該当するかを判定した。
本試験においては、下記評価基準B以上であれば、実用上の許容範囲内である。評価結果を表2に示す。
− 評価基準 −
AA:ベタ印字部を印字後10秒後に触れても印字面剥がれが生じない。
A:ベタ印字部を印字後10秒後に触れると印字面剥がれが生じるが、印字後20秒後に触れても印字面剥がれが生じない。
B:ベタ印字部を印字後20秒後に触れると印字面剥がれが生じるが、印字後30秒後に触れると印字面剥がれが生じない。
C:ベタ印字部を印字後30秒後に触れると印字面剥がれが生じる。
<試験5:画質の評価>
記録デューティ80%の画像を上記(画像形成)方法に従って上記記録媒体1枚に記録し、得られた印刷物の画像の粒状性(粒状感の有無)を目視により確認して、画質の指標とした。この指標が下記の評価基準のいずれに該当するかを判定した。
本試験においては、下記評価基準B以上であれば、実用上の許容範囲内である。評価結果を表2に示す。
− 評価基準 −
A:粒状感がない。
B:若干の粒状感が認められる。
C:顕著な粒状感が認められる。
<試験6:ろ過性の評価>
調製した各ブラックインク組成物を、ポンプを用いて流速6mL/minで、循環路の途中1か所に設置したポリプロピレンフィルター(網目3μm、断面積5cm)を通して、45時間循環させた。各ブラックインク組成物において、樹脂微粒子は微細(例えば80nm程度)に分散していた。循環前の圧力に対して45時間循環後の圧力上昇量(45時間循環後の圧力−循環前の圧力)を求めた。圧力上昇量が下記の評価基準のいずれに含まれるかを判定した。この圧力上昇は、インク組成物のろ過中(製造中)にインク組成物中の樹脂微粒子が再凝集又はゲル化することにより、フィルターが目詰まりすることにより、起こる。
本試験においては、圧力上昇量が40kPa未満であれば、インク組成物の製造中にインク中の樹脂微粒子が再凝集又はゲル化することが抑制されており、これら再凝集物又はゲル化物によるフィルターの目詰まりを抑えることができ、実用上の許容範囲内である。評価結果を表2に示す。
− 評価基準 −
A:5kPa未満
B:5kPa以上40kPa未満
C:40kPa以上
Figure 2019059855
<表2の注釈>
表2において、*有機溶剤(dr1−1)及び(dr1−2)は、有機溶剤(dr)欄に記載すべきであるが、ClogP値を対比しやすくするために、疎水性有機溶媒(d1)欄に記載している。
表2中、PGはプロピレングリコール(ClogP値:−1.06)を示し、DPGはジプロピレングリコール(ClogP値:−0.69)を示す。
表2に示されるように、本発明で規定する樹脂微粒子と疎水性有機溶剤とを併用していない比較例及び参考例のインクジェット記録用水性インク組成物(CK−1〜CK−11)は、いずれも、保存安定性、ろ過性、吐出性、乾燥性、画質及び耐擦性を兼ね備えるものではない。
特に、本発明で規定する樹脂微粒子を含有していても、グリセリン、(ジ)エチレングリコール若しくはエタノールの水溶性有機溶剤が併用され、本発明で規定する疎水性有機溶剤を含有しない、又は、本発明で規定する含有量を満たさない比較例のインクジェット記録用水性インク組成物(CK−1〜CK−5)は、乾燥性又は画質に劣り、場合によってはろ過性にも劣るものである。一方、本発明で規定する疎水性有機溶剤を含有していても、本発明で規定する樹脂微粒子を含有していない比較例のインクジェット記録用水性インク組成物(CK−6〜CK−9)は、少なくとも吐出性に劣るものである。樹脂微粒子を含有していない比較例のインクジェット記録用水性インク組成物(CK−11)は、耐湿性及び画質が十分な性能を示さない。
これに対して、本発明で規定する樹脂微粒子と疎水性有機溶剤(d1)とを組み合わせて含有する実施例のインクジェット記録用水性インク組成物(K−1〜K−11)は、いずれも、高い保存安定性とろ過性とを示している。しかも、インクジェット記録方法に適用した際に吐出性及び乾燥性に優れ、更には画質及び耐擦性に優れた画像を形成できる。
また、シアン顔料及びマゼンタ顔料を用いて調製したシアンインク組成物及びマゼンタインク組成物を用いて、上記ブラックインク組成物と同様にして、試験したところ、同様の結果を示した。

Claims (8)

  1. 水と、有機溶剤と、樹脂微粒子とを含有するインクジェット記録用水性インク組成物であって、
    前記有機溶剤が、ClogP値が0〜3.5の疎水性有機溶剤を含み、該疎水性有機溶剤の、インクジェット記録用水性インク組成物中の含有量が0.5〜10質量%であり、
    前記樹脂微粒子が、下記一般式(I)で表される構造単位と、下記一般式(A)〜(E)のいずれかで表される構造単位とを有する、インクジェット記録用水性インク組成物。
    Figure 2019059855
    一般式(I)中、Rは炭素数7以上のアルキレン基を示す。L及びLは単結合又は2価の連結基を示す。Lは水素原子、SOM又はCOOMを示し、Mはアルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンを示す。ただし、R、L及びLの少なくとも1つはSOM又はCOOMを有する。
    Figure 2019059855
    一般式(A)〜(E)中、R11及びR12はメチル又は水素原子を示す。R13は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を示す。一般式(A)及び一般式(B)中のnは0〜5の整数であり、一般式(C)中のnは0〜11の整数である。L11は単結合、炭素数1〜18の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−若しくは−C(=O)−、又は、これらを2個以上連結して形成される2価の連結基を示す。
  2. 前記一般式(I)で表される構造単位の、前記樹脂微粒子中の含有量が5〜15質量%である請求項1に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
  3. 前記一般式(A)で表される構造単位の、前記樹脂微粒子中の含有量が5〜50質量%である請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
  4. 前記一般式(I)のR、L及びLの少なくとも1つがSOMを有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
  5. 前記一般式(I)のLが、SOMを含有する2価の連結基である請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
  6. 顔料を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性インク組成物。
  7. 請求項6に記載のインクジェット記録用水性インク組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与して画像を形成するインク付与工程を含む、画像形成方法。
  8. 前記インクジェット記録用水性インク組成物を、低吸水性記録媒体又は非吸水性記録媒体上に直接付与する請求項7に記載の画像形成方法。
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