以下、本発明の電気駆動車両の実施の形態を、ダンプトラックに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図3に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。
図1において、電気駆動車両としてのダンプトラック1は、大型の運搬車両をなし、車体2、ベッセル3、キャブ5、前輪8L,8R、後輪9L,9R等を備えている。車体2は、フレーム構造体を構成する。車体2の上側には、ホイストシリンダ4によって後部側を支点として傾転(起伏)可能なベッセル3(荷台)が搭載されている。ベッセル3は、キャブ5を上側から覆う庇部3Aを有している。
キャブ5は、ベッセル3の前側に位置して車体2の前部上側に設けられている。キャブ5は、例えば車体2の左側に位置して平板状の床板となるデッキ部2A上に配設されている。キャブ5は、ダンプトラック1の運転者(オペレータ)が乗降する運転室を形成している。キャブ5内には、運転席、エンジンスイッチ、シフトレバー、操舵ハンドル(いずれも図示せず)が設けられると共に、アクセルペダル6、リタードペダルとも呼ばれるブレーキペダル7、モニタ装置32、タッチパネル33(いずれも図2参照)が設けられている。
前輪8L,8Rは、車体2の前部下側に回転可能に設けられている。前輪8Lは車体2の左側に配置され、前輪8Rは車体2の右側に配置されている。これら左,右の前輪8L,8Rは、運転者によって操舵(ステアリング操作)される舵取り車輪を構成している。これらの前輪8L,8Rは、後輪9L,9Rと同様に、例えば2〜4m程度のタイヤ径(外径寸法)をもって形成されている。
後輪9L,9Rは、車体2の後部側に回転可能に設けられている。後輪9Lは車体2の左側に配置され、後輪9Rは車体2の右側に配置されている。これら左,右の後輪9L,9Rは、ダンプトラック1の駆動輪を構成し、走行用モータ15L,15R(図2参照)により回転駆動される。ダンプトラック1は、左,右の後輪9L,9Rを回転駆動することにより走行する。
エンジン10は、傾動可能なベッセル3(荷台)の下側に配置されている。具体的には、エンジン10は、キャブ5の下側に位置して車体2内に設けられている。エンジン10は、例えば大型のディーゼルエンジンによって構成されている。エンジン10は、主発電機13および副発電機14(図2参照)を駆動する。また、エンジン10は、油圧ポンプ(図示せず)等を回転駆動する。図2に示すように、エンジン10には、エンジン回転速度を制御するエンジン制御装置11が設けられている。これに加えて、エンジン10には、エンジン回転速度を検出するエンジン速度検出器12が設けられている。エンジン制御装置11およびエンジン速度検出器12は、システムコントローラ31に接続されている。
主発電機13および副発電機14は、エンジン10に機械的に接続されている。主発電機13は、本発明の発電機に相当している。主発電機13は、エンジン10によって回転駆動され、3相交流電力を出力(発生)する。副発電機14も、エンジン10によって駆動される。このとき、副発電機14の発電電力は、主発電機13の発電電力よりも小さい。具体的には、副発電機14の定格発電電力は、例えば主発電機13の定格発電電力の10%以下に設定されている。副発電機14は、送風機28等を駆動する駆動回路30に接続され、送風機28等に駆動電力を供給している。
走行用モータ15L,15Rは、車体2にアクセルハウジング(図示せず)を介して設けられている。走行用モータ15Lは、減速機構16Lを介して左側の後輪9Lに機械的に接続され、後輪9Lを駆動する。走行用モータ15Rは、減速機構16Rを介して右側の後輪9Rに機械的に接続され、後輪9Rを駆動する。これらの走行用モータ15L,15Rは、大型の電動モータにより構成され、主発電機13からコントロールユニット21を介して供給される電力によって回転駆動する。即ち、走行用モータ15L,15Rは、走行用の電動機に相当する。
各走行用モータ15L,15Rは、コントロールユニット21によって制御され、それぞれ独立して回転駆動する。コントロールユニット21は、システムコントローラ31からの制御信号に基づいて、車両の直進時に左,右の後輪9L,9Rの回転速度を同じにし、旋回時に旋回方向に応じて左,右の後輪9L,9Rの回転速度を異ならせる等の制御を行う。
次に、ダンプトラック1に搭載された走行駆動用システムについて、図2を参照して説明する。
コントロールユニット21は、後述のシステムコントローラ31と共に走行用モータ15L,15Rの力行動作と回生動作とを制御する。コントロールユニット21は、キャブ5の側方に位置して車体2のデッキ部2A上に立設されたコントロールキャビネット20(図1参照)に収容されている。コントロールユニット21は、コンバータ22およびインバータ24を備えている。
コンバータ22は、主発電機13に接続され、主発電機13の出力する電力を変換する変換器を構成している。具体的には、コンバータ22は、主発電機13が出力する交流電力(U相、V相、W相の3相交流電力)を直流電力(p相、n相の直流電力)に変換する。コンバータ22は、例えばダイオード、サイリスタ等の整流素子を用いて構成され交流電力を全波整流する整流器22Aと、整流器22Aの後段に接続され電力波形を平滑化する平滑コンデンサ22Bとを備えている。コンバータ22は、一対の直流母線23A,23Bを用いてインバータ24に接続されている。即ち、コンバータ22(より具体的には、整流器22A)は、主発電機13が出力する交流電力を直流電力に変換して直流母線23A,23Bに出力する交流直流変換器を構成している。
コンバータ22(より具体的には、整流器22A)には、例えば直流母線23A,23Bに印加される電圧を検出する電圧検出器22Cと、直流母線23A,23Bに供給される電流を検出する電流検出器22Dとが設けられている。電圧検出器22Cは、システムコントローラ31に接続され、検出した電圧(整流器電圧検出値)をシステムコントローラ31に出力する。電流検出器22Dも、システムコントローラ31に接続され、検出した電流(整流器電流検出値)をシステムコントローラ31に出力する。システムコントローラ31は、電圧検出器22Cで検出された電圧と電流検出器22Dで検出された電流とに基づいて、主発電機13によって発電された実測電力値(換言すれば、走行用モータ15L,15Rで消費される実測電力値、または、後述の抵抗器26で消費される実測電力値)を取得することができる。
変換器としてのインバータ24は、例えばトランジスタ、サイリスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を用いた複数のスイッチング素子(図示せず)を用いて構成されている。インバータ24は、走行用モータ15L,15Rにそれぞれ接続して設けられ、システムコントローラ31からの制御信号に基づいて動作する。
ダンプトラック1の走行時には、インバータ24は、直流電力を可変周波数の3相交流電力に変換し、走行用モータ15L,15Rを力行動作させる。このため、インバータ24は、スイッチング素子のオン/オフを制御することによって、コンバータ22から出力された直流電力をU相、V相、W相の3相交流電力に変換し、この3相交流電力を走行用モータ15L,15Rに供給する。このとき、インバータ24は、直流交流変換器に相当する。
一方、ダンプトラック1の減速時には、インバータ24は、3相交流電力を直流電力に変換し、走行用モータ15L,15Rを回生動作させる。このため、インバータ24は、スイッチング素子のオン/オフを制御することによって、走行用モータ15L,15Rで回生された3相交流電力からなる起電力を直流電力に変換し、この直流電力を電力消費装置25に向けて出力する。このとき、インバータ24は、交流直流変換器に相当する。
電力消費装置25は、インバータ24に接続されており、走行用モータ15L,15Rで回生される起電力を消費する。また、電力消費装置25は、コンバータ22に接続されており、コンバータ22によって変換された電力(直流電力)を消費する。電力消費装置25は、直流母線23A,23Bに接続され、抵抗器26、チョッパ27等を備えている。
抵抗器26は、コンバータ22およびインバータ24の間の直流母線23A,23Bに接続されている。具体的には、ダンプトラック1は、複数個の抵抗器26を備えている。これら複数個の抵抗器26は、直流母線23A,23Bに互いに並列接続されている(図2では1個のみ図示)。これらの抵抗器26は、インバータ24から供給される直流電力に応じて発熱し、走行用モータ15L,15Rで回生される起電力を消費する。また、抵抗器26は、例えば、ダンプトラック1を停車させた状態で性能検査を行うときに、コンバータ22で変換された直流電力(発電電力)を消費する。
図2に示すように、抵抗器26と直流母線23A,23Bとの間には、スイッチ(電力消費スイッチ)としてのチョッパ27が設けられている。チョッパ27は、抵抗器26と直流母線23A,23Bとの間を接続、遮断する。チョッパ27は、例えば半導体素子を用いた各種のスイッチング素子を用いて構成されている。ダンプトラック1の減速時(または、停車状態での検査時)には、チョッパ27は、直流母線23A,23Bに印加される直流電圧を、所定の電圧値以下まで低下させる。
即ち、チョッパ27は、スイッチング素子のオン/オフを制御することによって、走行用モータ15L,15Rによる回生電力を所定の電圧値以下まで低下させて、抵抗器26に供給する。これにより、抵抗器26に電流が流れて、抵抗器26は、電気エネルギを熱エネルギに変換する。一方、ダンプトラック1の走行時には、チョッパ27は、遮断状態となり、直流母線23A,23Bと抵抗器26との間を電気的に遮断する。
送風機28は、電動モータ29によって構成されており、例えばインバータ等からなる駆動回路30を介して副発電機14に接続されている。送風機28は、副発電機14からの給電によって駆動する。送風機28は、例えば抵抗器26の発熱動作に応じて駆動し、抵抗器26に向けて冷却風を供給する。
システムコントローラ31は、例えばマイクロコンピュータ等により構成され、コントロールユニット21と一緒にコントロールキャビネット20に収容されている。システムコントローラ31は、例えば、演算装置(CPU)に加え、フラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなるメモリ31Aを有している。メモリ31Aには、例えば、後述の図3に示す処理フローを実行するための処理プログラム(即ち、検査時の電力消費装置25の制御処理に用いる処理プログラム)が格納されている。
さらに、システムコントローラ31のメモリ31Aには、例えば、後述の性能検査を行っているときに、エンジン10、主発電機13、コンバータ22等の状態量が記憶される。具体的には、メモリ31Aは、ダンプトラック1を走行させずに性能検査を行っているときに、エンジン速度検出器12で検出されたエンジン回転速度、電圧検出器22Cで検出された電圧値、電流検出器22Dで検出された電流値、後述の電力変換セクション31Dで変換された実測電力値等を記憶(記録)する。即ち、システムコントローラ31(のメモリ31A)は、電力変換セクション31Dで変換された実測電力値を記憶する記憶装置(計測値記憶装置)を構成している。
システムコントローラ31は、エンジン10、コントロールユニット21等に接続され、これらの動作を制御する。例えば、システムコントローラ31は、エンジン回転速度の指令値をエンジン制御装置11に出力する。エンジン制御装置11は、エンジン回転速度が指令値となるように、エンジン10を制御する。また、システムコントローラ31は、電力消費装置25によって消費する電力を制御する消費電力制御部31Bを有している。
消費電力制御部31Bは、電力消費装置25によって消費する電力を制御する。具体的には、消費電力制御部31Bは、電力消費装置25のチョッパ27に対して接続、遮断の制御信号を出力する。電力消費装置25の抵抗器26は、チョッパ27の接続、遮断(の割合)に応じた電力を消費する。このとき、チョッパ27の接続が増大(単位時間の接続の割合となるデューティ比が増大)するに従って、抵抗器26が消費する電力は増大する。これとは逆に、チョッパ27の接続が減少(デューティ比が低減)するに従って、抵抗器26が消費する電力は減少する。このように、システムコントローラ31(の消費電力制御部31B)は、チョッパ27の接続、遮断(の比率)を制御するコントローラを構成している。
システムコントローラ31は、各種の情報を表示するモニタ装置32に接続されている。モニタ装置32は、例えば、キャブ5内のモード選択装置となるタッチパネル33を備えている。オペレータは、タッチパネル33を操作することによって、ダンプトラック1の走行等を行うための通常モードと、ダンプトラック1を停車させた状態でエンジン10、主発電機13等の性能検査を行うための試験モードとを切り換えることができる。
この場合、即ち、試験モードのときに、モニタ装置32には、例えば、エンジン速度検出器12で検出されたエンジン回転速度、電圧検出器22Cで検出された電圧値、電流検出器22Dで検出された電流値、後述の電力変換セクション31Dで変換された実測電力値等が表示される。即ち、モニタ装置32は、電力変換セクション31Dで変換された実測電力値(換言すれば、実測整流器電力量、または、実測発電電力量)を表示する電力表示装置(発電量表示装置)を構成している。
また、タッチパネル33は、試験モードのときに、電力消費装置25(抵抗器26)が消費する電力の指令となる指令電力値(換言すれば、電力指令値、発電指令値、整流器電力指令、整流器電力量、または、抵抗器消費電力量)を入力するための電力指令入力装置となるものである。オペレータは、タッチパネル33を操作することによって、所望の指令電力値を入力することができる。なお、モード選択装置および電力指令入力装置は、タッチパネル33に限らず、モニタ装置32とは別個に設けられた選択スイッチ、設定スイッチ等であってもよい。
次に、通常モード選択時のシステムコントローラ31の動作について説明する。通常モードは、オペレータによってダンプトラック1を走行させるとき、即ち、ダンプトラック1により運搬物を運搬するときに選択される。通常モードが選択されたときには、システムコントローラ31は、アクセルペダル6の操作量に応じた加速指令とブレーキペダル7の操作量に応じた制動指令とに基づいて、車両を走行駆動させる。システムコントローラ31は、ダンプトラック1の走行状態等に応じた制御信号をコントロールユニット21に出力し、この制御信号によってインバータ24のスイッチング素子を切り換え制御する。
さらに、システムコントローラ31は、必要に応じて電力消費装置25を動作させ、直流母線23A,23Bに供給される不要な電力を消費させる。具体的には、ダンプトラック1の減速時には、システムコントローラ31は、チョッパ27を駆動状態にして、抵抗器26と直流母線23A,23Bとの間を電気的に接続する。これにより、システムコントローラ31は、抵抗器26による電力消費を許可すると共に、送風機28を駆動させて抵抗器26に向けて冷却風を供給する。なお、ダンプトラック1の減速時に限らず、ダンプトラック1の加速時等に、システムコントローラ31は、電力消費装置25を動作させて、不要な電力を消費させてもよい。
次に、試験モード選択時のシステムコントローラ31の動作について説明する。試験モードは、ダンプトラック1を停車させた状態で、エンジン10、主発電機13、コンバータ22等の試験を行うときに選択される。この試験は、例えば、ダンプトラック1を停止した状態で、エンジン10を駆動し、主発電機13で発電した電力を、電力消費装置25の抵抗器26で消費させる。これにより、ダンプトラック1を停車させた状態で、エンジン10には、主発電機13を介して抵抗器26で消費される電力に応じた負荷(セルフロード)が加わる。このとき、電力消費装置25の抵抗器26で消費させる電力値は、オペレータがタッチパネル33を用いて入力(設定)することができる。システムコントローラ31は、オペレータが入力した電力値(即ち、指令電力値)となるように、電力消費装置25のチョッパ27を制御する。
具体的には、システムコントローラ31は、コンバータ22で検出される電流値と電圧値とを実測電力値に変換すると共に、この実測電力値が指令電力値となるようにチョッパ27を制御する。このとき、エンジン10には、指令電力値(即ち、実測電力値)に応じた負荷が主発電機13を介して加わる。このため、例えば、このときのエンジン10の状態量の変化(例えば、回転速度の低下)、主発電機13の状態量の変化、コンバータ22の状態量の変化等を測定することにより、これらの性能測定、性能評価、不調判定、劣化判定等の検査(負荷試験)を行うことができる。
このような検査を行うための試験モード(エンジン負荷試験モード)が選択されたときに、システムコントローラ31は、試験用の制御処理プログラムを実行する(図3参照)。このとき、システムコントローラ31(より具体的には、消費電力制御部31B)は、指令電力取得処理(図3のS1)と、電力変換処理(図3のS2)と、電力表示および記憶処理(図3のS3)と、スイッチ切換処理(図3のS4,5,6)とを行う。このために、図2に示すように、システムコントローラ31は、指令電力取得処理を行う指令電力取得セクション31Cと、電力変換処理を行う電力変換セクション31Dと、電力表示および記憶処理を行う電力表示記憶処理セクション31Eと、スイッチ切換処理を行うスイッチ切換セクション31Fとを備えている。
指令電力取得セクション31Cは、抵抗器26が消費する電力の指令となる指令電力値を取得する。例えば、指令電力取得セクション31Cは、オペレータによってタッチパネル33から入力(設定)された指令電力値を取得する。電力変換セクション31Dは、直流母線23A,23B(より具体的には、コンバータ22の直流側)で検出される電流値と電圧値とを実測電力値に変換する。例えば、電力変換セクション31Dは、コンバータ22の電圧検出器22Cで検出された電圧値と電流検出器22Dで検出された電流値とから実測電力値を算出する。電力表示記憶処理セクション31Eは、電力変換セクション31Dで変換された実測電力値を表示する指令を、モニタ装置32に出力する。これと共に、電力表示記憶処理セクション31Eは、実測電力値をメモリ31Aに記憶する。
スイッチ切換セクション31Fは、指令電力取得セクション31Cで取得された指令電力値と電力変換セクション31Dで変換された実測電力値とに基づいて、この実測電力値が指令電力値となるようにチョッパ27の接続、遮断を切換える(より具体的には、接続、遮断の比率を切換える)。この場合、スイッチ切換セクション31Fは、「電力変換セクション31Dで変換された実測電力値」が「指令電力取得セクション31Cで取得された指令電力値」未満のときにチョッパ27を接続する(ONにする)。具体的には、スイッチ切換セクション31Fは、実測電力値が指令電力値未満のときは、例えば、チョッパ27のデューティ比を増大する。これにより、抵抗器26の電力消費量が指令電力値に向けて増大する。
これに対して、スイッチ切換セクション31Fは、「電力変換セクション31Dで変換された実測電力値」が「指令電力取得セクション31Cで取得された指令電力値」以上のときにチョッパ27を遮断する(OFFにする)。具体的には、スイッチ切換セクション31Fは、実測電力値が指令電力値以上のとき(または、指令電力値を超えたとき)は、例えば、チョッパ27のデューティ比を低減する。これにより、抵抗器26の電力消費量が指令電力値に向けて低減する。なお、実測電力値が指令電力値のときは、そのときのチョッパ27のデューティ比を維持してもよい。
次に、試験モードが選択されているときに行われる、システムコントローラ31による電力消費装置25(チョッパ27)の制御処理について、図3の流れ図を用いて説明する。なお、図3の処理は、例えば、試験モードが選択され、かつ、指令電力値が設定される毎に実行される。また、図3の処理は、指令電力値が0に設定されたとき、試験モードが終了したとき、または、停止指令(停止コマンド)が入力されたときに終了する。この場合には、システムコントローラ31は、電力消費装置25のチョッパ27の接続を遮断する(チョッパ27のデューティ比を0にする)。
試験モードが選択されることにより、図3の処理がスタートすると、S1では、システムコントローラ31は、指令電力値を取得する。即ち、S1では、コンバータ22の整流器22Aの発電量(電力)の指令に対応する指令電力値を取得する。指令電力値は、抵抗器26が消費する電力の指令、換言すれば、主発電機13の発電量に対応する。指令電力値は、例えば、オペレータ(検査作業者)がモニタ装置32のタッチパネル33を用いて手動操作で入力(設定)することができる。
S1では、このように入力された電力の指令を読込むことにより、指令電力値が手動で設定される。なお、指令電力値は、オペレータによって所望に設定することができる他、予め設定された自動試験項目の一つとして予め設定された指令電力値が自動的に設定されるようにしてもよい。また、指令電力値は、ダンプトラック1の種類、仕様、エンジン10の型式、種類、排気量、主発電機13の仕様、抵抗器26の仕様等に応じて規定される発電可能(または、消費可能)な電力の範囲(例えば、0または最小発電電力値以上で最大発電電力値以下の間)で設定することができる。
S1で指令電力値が設定されると、S2に進む。S2では、コンバータ22の整流器22Aの電流、電圧を検出し、電力に変換する。この場合、S2では、例えば、電圧検出器22Cで検出された電圧値と電流検出器22Dで検出された電流値とから実測電力値を算出する。S2に続くS3では、S2で変換された実測電力値をモニタ装置32に出力すると共に、実測電力値をメモリ31Aに記憶する。S3に続くS4では、S2の電力が整流器22Aの発電量の指令に達したか否かを判定する。即ち、S4では、S2の電流値と電圧値とから得られた実測電力値がS1で設定された指令電力値に達したか否かを判定する。
S4で「NO」、即ち、S2の実測電力値がS1の指令電力値に達していないと判定された場合は、S6に進む。S6では、電力消費装置25(チョッパ27)をONにする。例えば、チョッパ27のデューティ比を所定量増大する。デューティ比を増大する量(所定量)は、例えば、S2の実測電力値がS1の指令電力値に達するように(オーバーシュートやハンチングをしないように)設定することができる。また、所定量は、S4の判定処理のときの実測電力値と指令電力値との差に応じて可変にしてもよい(増減するようにしてもよい)。S6でチョッパ27をONにしたら(デューティ比を所定量増大したら)、S2の前に戻り、S2以降の処理を繰り返す。
一方、S4で「YES」、即ち、S2の実測電力値がS1の指令電力値に達したと判定された場合は、S5に進む。S5では、電力消費装置25(チョッパ27)をOFFにする。例えば、チョッパ27のデューティ比を所定量減少する。デューティ比を減少する量(所定量)は、例えば、S2の実測電力値がS1の指令電力値に達するように(オーバーシュートやハンチングをしないように)設定することができる。また、所定量は、S4の判定処理のときの実測電力値と指令電力値との差に応じて可変にしてもよい(増減するようにしてもよい)。また、S2の実測電力値がS1の指令電力値と一致していた場合には、現在のONまたはOFFを維持するようにてもよい(現在のデューティ比を維持するようにしてもよい)。S5でチョッパ27をOFFにしたら(デューティ比を所定量減少したら、または、現在のデューティ比を維持したら)、S2の前に戻り、S2以降の処理を繰り返す。
なお、S2からS6の処理を繰り返しているときに、先のS1の処理で設定された指令電力値とは異なる新たな指令電力値が設定された場合は、この新たな指令電力値をS1で設定された指令電力値とし、S2からS6の処理を繰り返す。また、S2からS6の処理を繰り返しているときに、指令電力値が0に設定された場合、試験モードが終了した場合、または、停止指令(停止コマンド)が入力された場合は、S2からS6の処理を終了する。このとき、システムコントローラ31は、電力消費装置25のチョッパ27の接続を遮断する(チョッパ27のデューティ比を0にする)。
以上のように、実施の形態では、システムコントローラ31(コントローラ)は、直流母線23A,23Bと抵抗器26との間に設けられたチョッパ27(スイッチ)の接続、遮断を制御する。この場合、システムコントローラ31は、抵抗器26が消費する電気エネルギの指令を、電力値の指令である指令電力値として取得する(指令電力取得セクション31C)。また、システムコントローラ31は、直流母線23A,23Bで検出される電圧値と電流値(より具体的には、交流直流変換器としてのコンバータ22で検出される電流値と電圧値)とを実測電力値に変換する(電力変換セクション31D)。そして、システムコントローラ31は、実測電力値と指令電力値とに基づいて、実測電力値が指令電力値となるようにチョッパ27の接続、遮断(の比率)を切換える(スイッチ切換セクション31F)。
このように、システムコントローラ31は、「指令電力値」と「直流母線23A,23B(コンバータ22)の電流値と電圧値とから変換された実測電力値」とに基づいて、直流母線23A,23B(コンバータ22)の実測電力値が指令電力値となるように、チョッパ27の接続、遮断(の比率)を切換える。換言すれば、システムコントローラ31は、抵抗器26の電力消費量を調整(増減)するチョッパ27の指令として、直流母線23A,23B(コンバータ22)の電力量を指令値(指令電力値)として取得する。そして、システムコントローラ31は、直流母線23A,23B(コンバータ22)を流れる電流と電圧の検出値(より具体的には、検出値から変換された実測電力値)をフィードバック値としてチョッパ27を制御する。
このため、抵抗器26は、直流母線23A,23B(コンバータ22)の電流値と電圧値とから得られる実測電力値(即ち、指令電力値)で電力を消費することができる。これにより、抵抗器26の温度変化に伴う抵抗値の変化、主発電機13の出力変動、エンジン10の出力変動等に拘わらず、抵抗器26で消費される電力消費量を精度よく制御することができる。この結果、例えば、ダンプトラック1(電気駆動車両)の性能検査を行うときに、抵抗器26で消費される電力消費量を指令電力値に制御することができる。即ち、ダンプトラック1を停車させた状態で、主発電機13には、抵抗器26で消費される電力(指定電力値)に基づく一定の負荷を付与することができる。逆に言えば、主発電機13は、発電量の指令(指令電力値)で精度よく発電することができる。これにより、ダンプトラック1を停車させた状態で、エンジン10、主発電機13、コンバータ22等の各種搭載機器の性能検査、性能の定量化を精度よく行うことができる。
実施の形態によれば、システムコントローラ31は、直流母線23A,23B(コンバータ22)で検出された電流値と電圧値とから変換された実測電力値が指令電力値未満のときにチョッパ27のデューティ比を増大し、直流母線23A,23B(コンバータ22)で検出された電流値と電圧値とから変換された実測電力値が指令電力値未満のときにチョッパ27のデューティ比を低減する。このため、抵抗器26で消費される電力消費量を指令電力値に精度よく調整することができる。これにより、ダンプトラック1を停車させた状態で、主発電機13に一定の負荷を精度よく付与することができ、主発電機13を指令電力値で精度よく発電することができる。この結果、ダンプトラック1を停車させた状態で(ダンプトラック1を走行させることなく)、エンジン10、主発電機13、コンバータ22等の各種搭載機器の性能検査、性能の定量化を精度よく行うことができる。
実施の形態によれば、システムコントローラ31は、直流母線23A,23B(コンバータ22)で検出された電流値と電圧値とから変換された実測電力値を記憶する記憶装置としてのメモリ31Aを備えている。このため、例えば、ダンプトラック1を停車させた状態で性能検査、性能の定量化を行うときの状態量(測定値)の一つとして、メモリ31Aに実測電力値(主発電機13の発電量、抵抗器26の電力消費量)を記録することができる。
なお、実施の形態では、直流母線23A,23Bで検出される電流値と電圧値として、コンバータ22の整流器22Aに設けた電圧検出器22Cと電流検出器22Dの検出値を用いる構成とした場合を例に挙げて説明した。即ち、実施の形態では、直流母線23A,23Bで検出される電流値と電圧値として、コンバータ22(整流器22A)の直流側で検出される電流値と電圧値(換言すれば、直流母線23A,23Bのコンバータ22側で検出される電流値と電圧値)を用いる構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、直流母線で検出される電流値または電圧値として、例えば、直流母線の間に設けた電圧検出器の検出値、または、直流母線からスイッチに向けて分岐する分岐線に設けた電流検出器の検出値を用いる構成としてもよい。換言すれば、抵抗器に供給される電力の電圧値と電流値とを検出する構成とし、この検出された電圧値と電流値を、直流母線で検出される電流値と電圧値とすることができる。また、検出した電圧値と電流値は、コントローラのソフトウエアの処理により実測電力値に変換(算出)してもよいし、コントローラとは別に設けられたハードウエア(電力検出器)により実測電力値に変換してもよい。
実施の形態では、発電量(実測電力値)を表示する発電量表示装置をダンプトラック1のキャブ5内に設けられたモニタ装置32とし、かつ、指令電力値を入力する電力指令入力装置もキャブ5内に設けられたタッチパネル33とした場合を例に挙げて説明した。また、実測電力値を記憶する記憶装置を、ダンプトラック1に設けられたシステムコントローラ31のメモリ31Aとした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、発電量表示装置、電力指令入力装置、および、記憶装置は、例えば、電気駆動車両の試験を行うときに電気駆動車両のコントローラに接続するパーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ等の情報端末、携帯端末を用いてもよい。
実施の形態では、電気駆動車両としてダンプトラック1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、電気自動車、電気運搬車両等の各種の電気駆動車両、より具体的には、交流直流変換器で変換された直流電力を消費する抵抗器を備えた各種の電気駆動車両に適用することができる。