JP2019058951A - 鋼部材および溶接接合構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】出隅部を有する鋼部材の溶接部における応力集中を効果的に防止する。【解決手段】本発明のある観点による鋼部材は、材軸方向に沿って互いに隣接して延びる第1の面および第2の面、材軸方向の端部に形成される端面、端面に隣接する材軸方向の第1の区間で第1の面と第2の面との間に形成される第1の出隅部、第1の区間に隣接する材軸方向の第2の区間で第1の面と第2の面との間に形成される面取り部、および第2の区間に隣接する材軸方向の第3の区間において第1の面と第2の面との間に形成される第2の出隅部を備える。【選択図】図4
Description
本発明は、鋼部材および溶接接合構造に関する。
鋼部材の溶接接合構造において、溶接部は材質的に不連続な箇所であり、特に溶接止端部おいては、形状的な不連続の影響も加わって応力集中による延性亀裂が発生しやすい。延性亀裂が溶接部付近にある母材の熱影響部(HAZ:Heat Affected Zone)や溶接金属とHAZとの境界のボンド部に進展すると、脆性亀裂に移行して鋼部材の塑性変形性能や疲労性能を著しく低下させる。それゆえ、溶接部における延性亀裂の発生および進展を抑制することが求められてきた。
例えば、特許文献1には、溶接されるべき端部同士を突き合わせて開先部の溶接をする工程と、開先を有する部材の表面側の開先端から当該部材の材軸方向に5mm以上の距離の範囲まで化粧盛溶接をする工程とを含む構造部材の溶接方法が記載されている。これによって、溶接部で発生した表面亀裂をHAZやボンド部ではなく母材内に伝播させ、亀裂発生後も母材の機械的性質に基づいた挙動が示されることによって構造部材の強度低下や破損を防ぐことができる。
溶接の対象になる鋼部材には、さまざまな形状のものがある。角形鋼管や溶接箱型断面部材、形鋼など多くの部材では、部材の端部や接合部、折曲部に、材軸方向に延びる出隅部が形成される。出隅部は特に形状的に不連続な箇所であるため、上記のように材質的に不連続な箇所である溶接部と出隅部とが重なった部位では、応力集中による延性亀裂が特に発生しやすくなる。
上記の特許文献1に記載された技術は、一般的な構造部材の溶接部を想定したものであり、出隅部に着目したものではない。それゆえ、例えば出隅部と化粧盛溶接の端部とが重なった部位で生じる応力集中への対処が十分でない可能性がある。また、化粧盛溶接自体が、通常の溶接に対する追加の工程になるため、工程の簡略化という面でなおも改善の余地がある。
そこで、本発明は、出隅部を有する鋼部材の溶接部における応力集中を効果的に防止することが可能な、新規かつ改良された鋼部材および溶接接合構造を提供することを目的とする。
本発明のある観点による鋼部材は、材軸方向に沿って互いに隣接して延びる第1の面および第2の面、材軸方向の端部に形成される端面、端面に隣接する材軸方向の第1の区間で第1の面と第2の面との間に形成される第1の出隅部、第1の区間に隣接する材軸方向の第2の区間で第1の面と第2の面との間に形成される面取り部、および第2の区間に隣接する材軸方向の第3の区間において第1の面と第2の面との間に形成される第2の出隅部を備える。
上記の構成によれば、鋼部材の溶接後に、溶接止端から所定の距離だけ離れた上記第2の区間に面取り部が形成され、出隅部が形成される部分に対する断面欠損が作り出される。これによって、溶接止端に係る応力を分散させることができる。
上記の構成によれば、鋼部材の溶接後に、溶接止端から所定の距離だけ離れた上記第2の区間に面取り部が形成され、出隅部が形成される部分に対する断面欠損が作り出される。これによって、溶接止端に係る応力を分散させることができる。
上記の鋼部材において、端面は、材軸方向に対して傾いた面を含み、第1の出隅部は、傾いた面に隣接して形成されてもよい。
また、上記の鋼部材は、角形鋼管または溶接箱型断面部材であり、第1の面および第2の面は、角形鋼管または溶接箱型断面部材の隣接する2つの側面を構成してもよい。
本発明の別の観点による鋼部材は、材軸方向に沿って互いに隣接して延びる第1の面および第2の面、他の鋼部材の接合位置を含む材軸方向の第1の区間で第1の面と第2の面との間に形成される第1の出隅部、第1の区間の少なくとも片側に隣接する材軸方向の第2の区間で第1の面と第2の面との間に形成される面取り部、および第2の区間に第1の区間とは反対側で隣接する材軸方向の第3の区間において第1の面と第2の面との間に形成される第2の出隅部を備える。
上記の鋼部材は、材軸方向に沿って延びる板面と板面の幅方向両側に形成される側端面とを有する板状部分を含み、第1の面は他の鋼部材が接合される板面であり、第2の面は板面に隣接する側端面であってもよい。
上記の2つの観点による鋼部材において、面取り部は、第1の面および第2の面のそれぞれに対して傾き、かつ材軸方向に沿って延びる第3の面を形成する平坦部と、第1の出隅部と平坦部との間に形成される接続部とを含んでもよい。この場合において、接続部は、第3の面に連続する凹状の円柱面を含んでもよい。接続部は、第1の出隅部に隣接し、かつ円柱面に連続する第4の面をさらに含んでもよい。
本発明の別の観点による溶接接合構造は、第1の鋼部材と第2の鋼部材との間に形成される。第1の鋼部材は、第1の鋼部材の材軸方向に沿って互いに隣接して延びる第1の面および第2の面、材軸方向の端部に形成される第1の溶接面、第1の溶接面に隣接する材軸方向の第1の区間で第1の面と第2の面との間に形成される第1の出隅部、第1の区間に隣接する材軸方向の第2の区間で第1の面と第2の面との間に形成される面取り部、および第2の区間に隣接する材軸方向の第3の区間において第1の面と第2の面との間に形成される第2の出隅部を備える。第2の鋼部材は、第1の溶接面に対向する第2の溶接面を備える。第1の溶接面と第2の溶接面との間には、溶接金属が充填または積層されている。
上記の溶接接合構造において、第1の鋼部材は、角形鋼管または溶接箱型断面部材であり、第2の鋼部材は、通しダイヤフラムまたはベースプレートであり、第1の面および第2の面は、角形鋼管または溶接箱型断面部材の隣接する2つの側面を構成してもよい。
また、上記の溶接接合構造において、第1の鋼部材は、板厚tcの鋼板で形成された角形鋼管であり、第1の面および第2の面は、角形鋼管の隣接する2つの側面を構成し、第1の区間の長さは、板厚tc以下であり、面取り部は、第1の出隅部に隣接して形成される接続部と、接続部に隣接して形成され、第1の面および第2の面のそれぞれに対して傾き、かつ材軸方向に沿って延びる第3の面を含む平坦部とを含み、接続部は、第3の面に連続する半径ρの凹状の円柱面と、第1の出隅部に隣接し、かつ円柱面に連続する第4の面とを含み、板厚tcと、半径ρと、第2の区間において第1の出隅部の頂部を第1の鋼部材の材軸方向に仮想的に延長した線と第3の面との距離eと、第1の出隅部を基準にした場合の溶接金属の余盛高さvと、第4の面が材軸方向に対してなす角度θとの間に、以下の式(i)に示す関係が成り立ってもよい。
あるいは、上記の溶接接合構造において、第1の鋼部材は、板厚tcの鋼板で形成された角形鋼管であり、第1の面および第2の面は、角形鋼管の隣接する2つの側面を構成し、第1の区間の長さは、板厚tc以下であり、面取り部は、第1の出隅部に隣接して形成される接続部と、接続部に隣接して形成され、第1の面および第2の面のそれぞれに対して傾き、かつ材軸方向に沿って延びる第3の面を含む平坦部とを含み、接続部は、第3の面に連続する半径ρの凹状の円柱面からなり、板厚tcと、半径ρと、第2の区間において第1の出隅部の頂部を第1の鋼部材の材軸方向に仮想的に延長した線と第3の面と距離eと、第1の出隅部を基準にした場合の溶接金属の余盛高さvとの間に、以下の式(ii)に示す関係が成り立ってもよい。
本発明のさらに別の観点による溶接接合構造は、第1の鋼部材と第2の鋼部材との間に形成される。第1の鋼部材は、材軸方向に沿って互いに隣接して延びる第1の面および第2の面、第1の面に第2の鋼部材が当接する材軸方向の第1の区間で第1の面と第2の面との間に形成される第1の出隅部、第1の区間の少なくとも片側に隣接する材軸方向の第2の区間で第1の面と第2の面との間に形成される面取り部、および第2の区間に第1の区間とは反対側で隣接する材軸方向の第3の区間において第1の面と第2の面との間に形成される第2の出隅部を備える。第1の区間の一部において、第1の面と第2の鋼部材との間には溶接金属が充填または積層されている。
以上で説明したように、本発明によれば、出隅部を有する鋼部材の溶接部における応力集中を効果的に防止することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る溶接接合構造の斜視図である。図1に示されるように、第1の実施形態に係る溶接接合構造は、角形鋼管10(第1の鋼部材)と通しダイヤフラム20(第2の鋼部材)との間に形成される。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る溶接接合構造の斜視図である。図1に示されるように、第1の実施形態に係る溶接接合構造は、角形鋼管10(第1の鋼部材)と通しダイヤフラム20(第2の鋼部材)との間に形成される。
角形鋼管10は、材軸方向(図中のx方向)に沿って延びる4つの側面11(側面11A〜11Dとして図示する)を含む。互いに隣接して延びる2つの側面11(第1の面及びその第1面に隣接する第2の面)の間、すなわち、側面11A及び側面11D、側面11A及び側面11B、側面11B及び側面11C、側面11C及び側面11Dの間には、それぞれ出隅部12(出隅部12A〜12Dとして図示する)が形成される。ただし、後述するように、材軸方向の一部の区間では、2つの側面11の間に出隅部12ではなく面取り部13(面取り部13A〜13Dとして図示する)が形成される。なお、面取り部13Dは、図1には現れていない(図2に示されている)。
通しダイヤフラム20は、角形鋼管10の材軸方向の端部に対向する板面21を有する。角形鋼管10は、通しダイヤフラム20の板面21に溶接金属30を介して溶接接合される。より具体的には、角形鋼管10の材軸方向の端部に形成される溶接面14(第1の溶接面)と、溶接面14に対向する通しダイヤフラム20の溶接面22(第2の溶接面)との間に溶接金属30が充填または積層されている。
なお、図示された例では、通しダイヤフラム20の板面21の反対側の面に別の角形鋼管が溶接接合されているが、この溶接接合構造は角形鋼管10と通しダイヤフラム20との間の溶接接合構造と同様であるため、詳細な説明は省略する。また、他の実施形態では、角形鋼管10が通しダイヤフラム20ではなくベースプレートに溶接接合されてもよい。
図2は図1に示す溶接接合構造のII−II線に沿った断面図であり、図3は図2に示す部分IIIの拡大断面図である。なお、部分IIIに含まれるのは面取り部13Aであるが、面取り部13B〜13Dも同様の形状であるため、以下では面取り部13として説明する。図示されているように、本実施形態において、角形鋼管10の2つの側面11の間に形成される出隅部12は、尖った角ではなく、鋼板の曲げ加工によって形成される曲率をもった形状を有する。面取り部13は、例えば角形鋼管10の全長にわたって形成されている出隅部12の一部を切削加工によって削ぎ落とすことによって形成される。あるいは、面取り部13は、出隅部12の一部を塑性加工によって押しつぶすことによって形成されてもよい。また、鋳造や転造などによって、最初から出隅部12と面取り部13とが形成された角形鋼管10を製造してもよい。
図4は、図1および図2に示す溶接接合構造のIV−IV線に沿った断面図である。以下の説明では、角形鋼管10の材軸方向(図中のx方向)について、溶接面14が側面11および出隅部12に接続する溶接止端141に隣接する区間S1(第1の区間)と、区間S1に隣接する区間S2(第2の区間)と、区間S2に隣接する区間S3(第3の区間)とを定義する。角形鋼管10の互いに隣接する2つの側面11の間に、区間S1では出隅部12が形成され(第1の出隅部)、区間S2では面取り部13が形成され、S3では出隅部12(第2の出隅部)が形成される。これによって、例えば上記のように角形鋼管10の全長にわたって形成されていた出隅部12を面取りすることによって面取り部13が形成される場合、面取り部13は、溶接止端141から少し離れた位置を始点として、角形鋼管10の材軸方向の一部の区間に形成される。
図5は、図4に示す部分Vの拡大断面図である。なお、部分Vに含まれるのは出隅部12Aおよび面取り部13Aであるが、出隅部12B〜12Dおよび面取り部13B〜13Dも同様の形状であるため、以下では出隅部12および面取り部13として説明する。本実施形態において、角形鋼管10の材軸方向(図中のx方向)の区間S2に形成される面取り部13は、面取り部13の両側の側面11のそれぞれに対して傾き、かつ材軸方向に沿って延びる平面132A(第3の面)を形成する平坦部132含む。さらに、面取り部13は、区間S1の出隅部12(第1の出隅部)と平坦部132との間に形成される接続部131を含む。接続部131は、例えば平面132Aに連続する円柱面131Aと、出隅部12(第1の出隅部)に隣接し、かつ円柱面131Aに連続する平面131B(第4の面)とを含む。円柱面131Aは、角形鋼管10の外周側に対して凹状に湾曲した円柱面であり、平面132Aに対して平行な中心軸AXの回りに形成される。平面131Bは、面取り部13の両側の側面11のそれぞれに対して傾き、かつ材軸方向に対しても傾いており、区間S1の出隅部12に切り込むように形成される。
ここで、面取り部13の接続部131は、出隅部12と平坦部132との間の形状変化を緩和することによって、過度の応力集中を防止するために設けられる。接続部131の形状は、上記の円柱面131Aと平面131Bとの組み合わせの例には限られず、例えば円柱面131Aだけで形成されてもよい。円柱面131Aは、円柱面以外の曲面によって代替されてもよい。この場合も、円柱面131Aの場合と同様に、出隅部12と平坦部132との間の形状変化を緩和する効果が得られる。その一方で、接続部131に含まれる曲面を円柱面131Aとした場合、切削などの加工が容易になり、また後述する設計例のように各種の条件によって応力集中を制御することも容易になる。また、図4に示されるように、面取り部13は、区間S3の出隅部12(第2の出隅部)と平坦部132との間に形成される接続部133をさらに含む。接続部133は、例えば上記の接続部131と同様に形成される。なお、接続部131,133の形状は、必ずしも同じでなくてもよい。
以上で説明したような本発明の第1の実施形態に係る溶接接合構造では、角形鋼管10の溶接止端141から所定の距離だけ離れた区間に面取り部13を形成し、出隅部12が形成される部分に対する断面欠損をあえて作り出すことによって、溶接止端141にかかる応力が分散される。これによって、例えば面取り部13の形状変化部分である接続部131で延性亀裂が発生する可能性があるが、上記のように面取り部13を溶接止端141からわずかに離れた区間に形成することによって、亀裂の発生箇所をHAZやボンド部ではなく靭性値が比較的高い母材(角形鋼管10)の部分とし、亀裂によって角形鋼管10の塑性変形性能や疲労性能が著しく低下するのを防止することができる。
上記のような応力分散の効果を考慮した場合、図4に示された区間S1(第1の区間)は、HAZやボンド部を避けて面取り部13を形成できる限りにおいて短い方が好ましい。一例として、区間S1の長さは、角形鋼管10の板厚(図5にtcとして示す)以下であってもよい。一方、区間S2(第2の区間)の長さは、主に面取り部13に含まれる平坦部132の長さによって決まる。平坦部132にある程度の長さをもたせることによって、面取り部13で発生する角形鋼管10の塑性変形が局所的に集中しないようにすることができる。例えば、区間S2の長さは、角形鋼管10の全長の10%程度、または角形鋼管10の背(せい)(この実施形態の場合、図4における角形鋼管10の上下方向の長さ)の2倍程度であってもよい。
また、本実施形態では、角形鋼管10の材軸方向の区間S2と区間S1,S3との間で応力中心が偏心するため、偶力の発生によって溶接止端141にかかる引張応力を低減することができる。さらに、面取り部13は溶接工程の前に形成しておくことが可能であるため、溶接工程において追加の工程は必要とされない。これは、例えば自動溶接装置を利用する場合などに有利である。
図6は、本発明の第1の実施形態に係る鋼部材を示す図である。図6には、上記で図5に示した角形鋼管10の溶接前の状態が示されている。この状態において、角形鋼管10の材軸方向(図中のx方向)の端部には、端面15が形成されている。図示された例では、溶接のための開先加工によって、端面15が材軸方向に対して傾いた面151を含んでいて、この傾いた面151は、角形鋼管10の外周側に行くに従って面取り部13に近づく方向(溶接対象である通しダイヤフラム20の板面21から離れる方向)に傾斜している。なお、図示された例において端面15は、全体的に、材軸方向に対して傾いた面151で形成されるが、端面15の形状は開先加工の方法によってさまざまでありうる。具体的には、例えば、端面15は、角形鋼管10の外周側に形成される傾いた面151と、角形鋼管10の内周側に形成される材軸方向に対して垂直な面とを含んでもよい。あるいは、端面15は、全体的に、材軸方向に対して垂直な面で形成されてもよい。また、例えば、端面15は、角形鋼管10の外周側および内周側のそれぞれに行くに従って溶接対象である通しダイヤフラムの板面21から離れるように材軸方向に対して傾いた面、つまり図6に示した断面において山形になるような面を含んでもよい。
溶接前の角形鋼管10では、材軸方向について、端面15に隣接する区間S1A(第1の区間)と、区間S1に隣接する区間S2(第2の区間)と、区間S2に隣接する区間S3(第3の区間;図示せず)とが定義される。区間S2,S3は、図5に示した溶接後の区間S2,S3と同じであり、面取り部13は区間S2に形成される。区間S1Aは、図5に示した溶接後の区間S1よりも長い。これは、図5において破線で示されるように、溶接面14が溶接前の端面15よりも面取り部13側に形成されるためである。図6に示すように、溶接前の角形鋼管10において、適切な長さの区間S1Aを設定し、開先加工された端面15からある程度離れた位置に面取り部13を形成することによって、図5に示すように、溶接後にHAZやボンド部に重複しないように面取り部13を位置させることができる。具体的には、区間S1Aの長さは、角形鋼管10の板厚(図6にtcとして示す)程度であってもよい。
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態に係る溶接接合構造の斜視図である。図2に示されるように、第2の実施形態に係る溶接接合構造は、溶接箱型断面部材40(第1の鋼部材)と通しダイヤフラム50(第2の鋼部材)との間に形成される。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る溶接接合構造の斜視図である。図2に示されるように、第2の実施形態に係る溶接接合構造は、溶接箱型断面部材40(第1の鋼部材)と通しダイヤフラム50(第2の鋼部材)との間に形成される。
溶接箱型断面部材40は、4つの鋼板を溶接して断面略矩形枠状の中空の箱型としたもので、材軸方向(図中のx方向)に沿って延びる4つの側面41(側面41A〜41Dとして図示する)を含む。互いに隣接する2つの側面41(第1の面及びその第1面に隣接する第2の面)の間、すなわち、側面41A及び側面41B、側面41B及び側面41C、側面41C及び側面41D、側面41D及び側面41Aとには、出隅部42(出隅部42A〜42Dとして図示する)が形成される。ただし、材軸方向の一部の区間では、2つの側面41の間に出隅部42ではなく面取り部43(面取り部43A〜43Cとして図示する)が形成される。なお、出隅部42Dに対応する面取り部43は、図7には現れていない。
通しダイヤフラム50は、溶接箱型断面部材40の材軸方向の端部に対向する板面51を有する。溶接箱型断面部材40は、通しダイヤフラム50の板面51に溶接金属60を介して溶接接合される。より具体的には、溶接箱型断面部材40の材軸方向の端部に形成される溶接面44と、溶接面44に対向する通しダイヤフラム50の溶接面52との間に溶接金属60が充填または積層されている。
なお、図示された例では、通しダイヤフラム50の板面51の反対側の面に別の溶接箱型断面部材が溶接接合されているが、この溶接接合構造は溶接箱型断面部材40と通しダイヤフラム50との間の溶接接合構造と同様であるため、詳細な説明は省略する。また、他の実施形態では、溶接箱型断面部材40が通しダイヤフラム50ではなくベースプレートに溶接接合されてもよい。
図8は、図7に示す溶接接合構造に含まれる鋼部材の拡大断面図(第1の実施形態の図3に対応する図)である。図8に示されるように、溶接箱型断面部材40は、2つの鋼板のうちの一方の鋼板(図7に示すものの場合、側面41A,41Cを形成する鋼板)の板幅方向(鋼板の材軸方向と直交し、かつ板面に沿う方向)の端面を他方の鋼板(図7に示すものの場合、側面41B,41Dを形成する鋼板)の板面に溶接接合することによって形成されている。このとき、板幅方向の端面が外方に露出している鋼板の、その板幅方向の端面と、端面が溶接されている鋼板の外方側の板面とは、溶接接合により一体化されて1つの側面を形成する。これにより、それぞれの鋼板の板面が隣接する2つの側面41が形成され、これらの2つの側面41の間である、板幅方向の端面が外方に露出している方の鋼板(図7に示すものの場合、側面41B,41Dを形成する鋼板)の端縁が出隅部42を形成する。従って、図示されているように、本実施形態において、出隅部42は、鋼板の角部分に当たるため比較的尖った角でありうる。面取り部43は、例えば溶接箱型断面部材40の全長にわたって形成されている出隅部42の一部を切削加工によって削ぎ落とすことによって形成される。あるいは、面取り部43は、出隅部42の一部を塑性加工によって押しつぶすことによって形成されてもよい。なお、面取り部43は、鋼板同士が溶接接合されて溶接箱型断面部材40が形成された後に形成されてもよいし、鋼板同士が溶接接合される前に、後に出隅部42になる鋼板の端縁に形成されてもよい。
出隅部42および面取り部43の材軸方向の配置は、上記の第1の実施形態と同様である。つまり、溶接箱型断面部材40の材軸方向について、端部に形成される溶接面(溶接前は端面)に隣接する第1の区間と、第1の区間に隣接する第2の区間と、第2の区間に隣接する第3の区間とが定義され、面取り部43は第2の区間に形成される。
以上で説明したような本発明の第2の実施形態に係る溶接接合構造でも、上記の第1の実施形態と同様に、溶接箱型断面部材40において面取り部43を形成し、出隅部42が形成された部分に対する断面欠損をあえて作り出すことによって、溶接止端にかかる応力が分散される。これによって、亀裂によって溶接箱型断面部材40の塑性変形性能や疲労性能が著しく低下するのを防止することができる。
(他の実施形態)
図9は、本発明の別の実施形態に係る鋼部材の例を示す断面図である。図9に示された鋼部材は、H形鋼70である。なお、以下の図9を参照した説明では、図の向きに従って上側および下側を定義する。H形鋼70は、上側のフランジ71A、下側のフランジ71B、およびウェブ72を含む。H形鋼70では、上側のフランジ71Aの上側(ウェブ72とは反対側)の端縁が出隅部712Aを形成し、材軸方向(図中のx方向)の一部の区間では出隅部712Aの代わりに面取り部713Aが形成される。つまり、上側のフランジ71Aにおいては、上側の面を第1の面、フランジ幅方向の端面を第2の面として、これらの上側の面とフランジ幅方向の端面との間である、上側のフランジ71Aの上側の端縁に出隅部712A、面取り部713Aがそれぞれ形成される。また、H形鋼70では、フランジ71Bの上側(ウェブ72側)の端縁が出隅部712Bを形成し、材軸方向の一部の区間では出隅部712Bの代わりに面取り部713Bが形成される。つまり、下側のフランジ71Bにおいては、上側の面を第1の面、フランジ幅方向の端面を第2の面として、これらの上側の面とフランジ幅方向の端面との間である、下側のフランジ71Bの上側の端縁に出隅部712B、面取り部713Bがそれぞれ形成される。
図9は、本発明の別の実施形態に係る鋼部材の例を示す断面図である。図9に示された鋼部材は、H形鋼70である。なお、以下の図9を参照した説明では、図の向きに従って上側および下側を定義する。H形鋼70は、上側のフランジ71A、下側のフランジ71B、およびウェブ72を含む。H形鋼70では、上側のフランジ71Aの上側(ウェブ72とは反対側)の端縁が出隅部712Aを形成し、材軸方向(図中のx方向)の一部の区間では出隅部712Aの代わりに面取り部713Aが形成される。つまり、上側のフランジ71Aにおいては、上側の面を第1の面、フランジ幅方向の端面を第2の面として、これらの上側の面とフランジ幅方向の端面との間である、上側のフランジ71Aの上側の端縁に出隅部712A、面取り部713Aがそれぞれ形成される。また、H形鋼70では、フランジ71Bの上側(ウェブ72側)の端縁が出隅部712Bを形成し、材軸方向の一部の区間では出隅部712Bの代わりに面取り部713Bが形成される。つまり、下側のフランジ71Bにおいては、上側の面を第1の面、フランジ幅方向の端面を第2の面として、これらの上側の面とフランジ幅方向の端面との間である、下側のフランジ71Bの上側の端縁に出隅部712B、面取り部713Bがそれぞれ形成される。
出隅部712A,712Bおよび面取り部713A,713Bの材軸方向の配置は、上記の第1の実施形態と同様である。つまり、H形鋼70の材軸方向について、端部に形成される溶接面(溶接前は端面)に隣接する第1の区間と、第1の区間に隣接する第2の区間と、第2の区間に隣接する第3の区間とが定義され、面取り部713A,713Bは第2の区間に形成される。
ここで、図9に示された例では、フランジ71A,71Bのそれぞれの上側の端縁に面取り部713A,713Bが形成される。これは、フランジ71A,71Bの端面(図示せず)が、いずれも上側に向かって開くように開先加工され、溶接止端部がフランジ71A,71Bの上側に形成されるためである。このように、面取り部を鋼部材のどちら側に形成するかは、開先加工の向き、すなわち溶接後に溶接止端部が形成される向きによって決定される。
このように、本発明の実施形態は、材軸方向に沿って延びる第1の面および第2の面の間に形成される出隅部を有するあらゆる鋼部材に適用することが可能である。ここで、出隅部は、例えば上記の第1の実施形態および第2の実施形態で示されたように、曲率をもった形状であってもよいし、比較的尖った角であってもよい。また、図9の例に示されたように、必ずしも鋼部材のすべての出隅部に対応する面取り部が形成されるわけではなく、溶接後に溶接止端部が形成される向きに応じて面取り部を形成する部位が選択される。
図10は、本発明の第3の実施形態に係る溶接接合構造の斜視図である。図10に示されるように、第3の実施形態に係る溶接接合構造は、H形断面部材(第1の鋼部材)のフランジ81と縦スチフナ83(第2の鋼部材)との間に形成される。なお、図10は、H形断面部材の一対のフランジのうちの一方のフランジ81、およびウェブにおけるフランジ81側の一部のみを示し、その他の部分は省略している。また、縦スチフナ83についてもフランジ81側の一部のみを示している。
フランジ81は、材軸方向(図中のx方向)に沿って延びる板面82A(第1の面)と、板面82Aの幅方向両側に形成される側端面82B(第2の面)とを有する板状部分である。板面82Aと側端面82Bとは、材軸方向に沿って互いに隣接して延びる。板面82Aと側端面82Bとの間には、出隅部812が形成される。ただし、後述するように、材軸方向の一部の区間では、板面82Aと側端面82Bとの間に出隅部812ではなく面取り部813A,813Bが形成される。
縦スチフナ83は、フランジ81の板面82Aに対して垂直に配置され、板面82Aに溶接金属30を介して隅肉溶接される。より具体的には、縦スチフナ83が板面82Aに当接する部分の両側で、板面82Aと縦スチフナ83との間に溶接金属30が充填または積層されている。
本実施形態では、フランジ81において、板面82Aに縦スチフナ83が隅肉溶接される材軸方向の第1の区間S1の両側に隣接する第2の区間S2に、上記の第1の実施形態における面取り部13と同様の面取り部813A,813Bが形成される。具体的には、面取り部813A,813Bは、第1の区間S1にある溶接止端141から少し離れた位置から形成される。つまり、隅肉溶接によって溶接金属30が充填または積層されるのは、第1の区間S1の一部である。面取り部813A,813Bの形成後に第1の区間S1に残った出隅部812が、第1の出隅部812Aとして図示されている。第2の区間S2に第1の区間S1とは反対側で隣接する材軸方向の第3の区間S3には面取り部は形成されない。第3の区間S3の出隅部812は、第2の出隅部812B,812Cとして図示されている。
以上で説明したような本発明の第3の実施形態に係る溶接接合構造でも、上記の第1の実施形態と同様に、フランジ81において面取り部813A,813Bを形成し、出隅部812が形成される部分に対する断面欠損をあえて作り出すことによって、溶接止端141にかかる応力が分散される。これによって、亀裂によってフランジ81の塑性変形性能や疲労性能が著しく低下するのを防止することができる。
なお、本実施形態の構成は、フランジ81に縦スチフナ83以外の鋼部材、例えば吊金物や冶具などを溶接接合する場合にも適用することができる。また、フランジ81を含むH形断面部材以外にも、板面と側端面とを有する板状部分を含む鋼部材、例えば第2の実施形態に示したような溶接箱型断面部材を構成する鋼板を第1の鋼部材として、溶接箱型断面部材の外側に吊金物や冶具などを溶接接合する場合に本実施形態の構成を適用することができる。
また、上記の説明ではフランジ81の板面82Aに縦スチフナ83が隅肉溶接される区間を第1の区間S1として特定したが、例えばフランジ81に縦スチフナ83が溶接される前、フランジ81を含むH形断面部材が単独で製造または流通する場合でも、縦スチフナなどの他の鋼部材の接合位置が特定されていれば、当該接合位置を含む区間を第1の区間として、第1の区間に隣接する第2の区間に面取り部813を形成することができる。
(面取り部の設計例)
次に、上記で第1の実施形態として説明した角形鋼管10を含む溶接接合構造における面取り部13の設計例について説明する。上記の通り、本発明の実施形態は出隅部を有するあらゆる鋼部材に適用可能であるが、例えば冷間成形された角形鋼管10は、出隅部12における一様伸びが小さく、エネルギー吸収性能が小さいため、角形鋼管10が塑性変形した場合には延性亀裂が発生しやすい。従って、角形鋼管10は本発明の効果的な実施形態の1つになりうる。
次に、上記で第1の実施形態として説明した角形鋼管10を含む溶接接合構造における面取り部13の設計例について説明する。上記の通り、本発明の実施形態は出隅部を有するあらゆる鋼部材に適用可能であるが、例えば冷間成形された角形鋼管10は、出隅部12における一様伸びが小さく、エネルギー吸収性能が小さいため、角形鋼管10が塑性変形した場合には延性亀裂が発生しやすい。従って、角形鋼管10は本発明の効果的な実施形態の1つになりうる。
図11は、面取り部の設計例において使用した応力集中係数を算出するためのモデルを示す図である。参考文献1(辻勇、「非荷重伝達型すみ肉溶接継手の止端部の応力集中係数の推定式」、西部造船会会報第80号、1990年、pp.241-251)では、図11に示すような十字溶接継手が水平方向に引張力を受ける場合の溶接止端部における応力集中係数Ktが、以下の式(1)によって推定されることが記載されている。なお、式(1)において、tは板厚、hはすみ肉の脚長、Wはすみ肉を含めた継手の高さ(t+2hに等しい)、ρは止端部の曲率半径、Sは付加物寸法、θはすみ肉のフランク角の補角である。
一方、参考文献2(宗川陽祐、中野達也、「25度狭開先溶接部におけるコラム角部溶接止端部の応力・ひずみ状態とコラムの変形性能−鉄骨造建造物の安全性向上に資する新自動溶接技術の開発(その22)−」、日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿)、2014年9月、pp.2023-1024)では、参考文献1に記載された十字溶接継手を、角形鋼管柱と通しダイヤフラムとを溶接したときにコラム角部外側(上記で説明した角形鋼管10の出隅部12)に形成される溶接部形状と等価なものとして扱うことによって、溶接止端部における延性亀裂発生時の部材角Rdcと応力集中係数Ktとの間の関係を解析している。参考文献2によれば、Ktが小さいほどRdcは大きくなる。具体的には、Ktが2.0以下であれば、Rdcが角形鋼管柱の十分な変形性能が得られる程度に大きくなる。
図12は、図1に示した本発明の第1の実施形態に係る溶接接合構造の各部の寸法を示す図である。図示された例では、角形鋼管10と通しダイヤフラム20との間の溶接接合構造において、円柱面131Aの曲率半径が溶接止端部の曲率半径ρに、平面131Bと出隅部12とがなす角度がフランク角の補角θに、それぞれ対応付けられる。板厚tは、角形鋼管10の板厚tcと、面取り部13の深さ、すなわち出隅部12の頂部を材軸方向に仮想的に延長した線と平坦部132との距離eとを用いて、t=tc−eと表される。すみ肉の脚長hは、深さeと、出隅部12を基準にした場合の溶接金属30の余盛高さvとを用いてh=e+vと表される。継手高さWは、W=tc+vと表される。さらに、付加物寸法Sは、通しダイヤフラム20の板厚tdと、上記の円柱面131Aと平坦部132との境界から通しダイヤフラム20の板面21までの距離jとを用いてS=2j+tdと表される。
図13は、図12に示された距離jの算出過程を示す図である。図13(A)に示されるように、接続部131が円柱面131Aと平面131Bとを含む場合、接続部131の長さxは、平面131Bが出隅部12となす角度θ、および円柱面131Aの曲率半径ρを用いて、以下の式(2)のように算出される。
一方、図13(B)に示されているように、接続部131が円柱面131Aを含み平面131Bを含まない場合、接続部131の長さxは以下の式(3)のように算出される。
円柱面131Aと平坦部132との境界から通しダイヤフラム20の板面21までの距離jは、上記の式(2)または式(3)によって算出された長さxに、面取り部13の始端から通しダイヤフラム20の板面21までの距離を加えることによって算出される。
以上のような仮定により、本発明の第1の実施形態に係る溶接接合構造の変形性能、具体的には応力集中係数Ktを、上記の式(1)を用いて評価することが可能になった。以下では、角形鋼管10および面取り部13の形状を様々に変化させた場合について応力集中係数Ktを算出し、溶接接合構造の変形性能を評価した。
図14は、角形鋼管の形状係数と応力集中係数との関係を示す第1の計算結果を示すグラフである。図14の例では、上記で図13(A)に示したように、接続部131が円柱面131Aと平面131Bとを含む場合について計算を実施した。
グラフに示された例では、角形鋼管10の径が600mm、700mm、800mmの3通り、板厚tcが35mm、40mm、50mm、60mmの4通り、面取り部13の深さeが板厚tcとの比e/tcにして0.1、0.2、0.3、0.4の4通り、角度θが10°、25°、30°、45°、60°の5通り、曲率半径ρが2mm、5mm、10mm、20mm、30mm、40mmの6通りとし、これらの条件の組み合わせについて、上記の式(1)を用いて応力集中係数Ktを算出した。なお、応力集中係数Ktを算出する際の各条件の組み合わせを表現するために、以下の式(4)で定義されるような形状係数αを用いる。
なお、上記の計算において、出隅部12における曲げ半径は板厚tcの3.5倍とした。また、円柱面131Aと平坦部132との境界から通しダイヤフラム20の板面21までの距離jは、(i)角形鋼管10の端面15(図6参照)に隣接して出隅部12が形成される第1の区間の長さが板厚tcに等しく、(ii)開先加工によって端面15に形成された面151の材軸方向に対する角度が35°であり、(iii)端面15と通しダイヤフラム20の板面21との間のルートギャップが10mmである、という仮定の下で算出した。
計算結果を示す図14のグラフから明らかなように、形状係数αと応力集中係数Ktとの間には正の相関関係が見られる。ここで、参考文献2に従って、Kt≦2.0の場合に角形鋼管10の十分な変形性能が得られるものとすると、α≦0.45になるように各条件を設定すればよいことがわかる。
図15は、角形鋼管の形状係数と応力集中係数との関係を示す第2の計算結果を示すグラフである。図15の例では、上記で図13(B)に示したように、接続部131が円柱面131Aを含み平面131Bを含まない場合について計算を実施した。
グラフに示された例において、計算において組み合わせる条件は上記の図14の例と同様である。ただし、角度θについては、上記の式(3)に示すように面取り部13の深さeおよび曲率半径ρから算出することとし、これらの比ρ/eを1.5、2.0、3.0、4.0、5.0の5通りとした。応力集中係数Ktを算出する際の各条件の組み合わせは、以下の式(5)で定義される形状係数βによって表現される。また、計算において、出隅部12における曲げ半径、および円柱面131Aと平坦部132との境界から通しダイヤフラム20の板面21までの距離jは、上記の図14の例と同様とした。
計算結果を示す図15のグラフから明らかなように、形状係数βと応力集中係数Ktとの間には正の相関関係が見られる。ここで、参考文献2に従って、Kt≦2.0の場合に角形鋼管10の十分な変形性能が得られるものとすると、β≦0.47となるように各条件を設定すればよいことがわかる。
図16は、角形鋼管に形成される面取り部が断面性能に与える影響を示す計算結果を示すグラフである。図16の例では、径が800mmの角形鋼管10について、板厚tcが30mm、40mm、50mm、60mmのそれぞれの場合に、板厚tcとの比e/tcにして0.1、0.2、0.3、0.4の4通りの面取り部13が形成されたものとして、断面係数を算出した。図16のグラフには、断面積A、断面二次モーメントI、断面係数Ze、塑性断面係数Zpのそれぞれについて、面取り部13が形成された場合と形成されなかった場合との計算結果の比(A/A0、I/I0,Ze/Ze0、Zp/Zp0)が示されている。
計算結果を示す図16のグラフから明らかなように、全体的に見て、面取り部13が形成されることによる断面性能への影響は小さい。断面二次モーメントIは角形鋼管10の弾性剛性に影響を与えるが、面取り部13が形成されるのは角形鋼管10の材軸方向の一部の区間、具体的には、上記のように例えば全長の10%程度、または背(せい)の2倍程度の区間であるため、弾性剛性への影響は限定的である。また、塑性断面係数Zpは最大で約6%低下するが、これによって溶接止端141にかかる応力が低減されるため、全体としては角形鋼管10の塑性変形性能が向上する。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
10…角形鋼管、11…側面、12…出隅部、13…面取り部、14…溶接面、15…端面、20,50…通しダイヤフラム、21,51…板面、22,52…溶接面、30,60…溶接金属、40…溶接箱型断面部材、41…側面、42…出隅部、43…面取り部、44…溶接面、70…H形鋼、71A,71B…フランジ、72…ウェブ、73A…面取り部、73B…面取り部、131…接続部、131A…円柱面、131B…平面、132…平坦部、132A…平面、133…接続部、141…溶接止端、151…面、712A,712B…出隅部、713A,713B…面取り部、S1〜S3…区間、81…フランジ、82A…板面、82B…側端面、83…縦スチフナ、812,812A,812B,812C…出隅部、813A,813B…面取り部。
Claims (13)
- 材軸方向に沿って互いに隣接して延びる第1の面および第2の面、
前記材軸方向の端部に形成される端面、
前記端面に隣接する前記材軸方向の第1の区間で前記第1の面と前記第2の面との間に形成される第1の出隅部、
前記第1の区間に隣接する前記材軸方向の第2の区間で前記第1の面と前記第2の面との間に形成される面取り部、および
前記第2の区間に隣接する前記材軸方向の第3の区間において前記第1の面と前記第2の面との間に形成される第2の出隅部
を備える鋼部材。 - 前記端面は、前記材軸方向に対して傾いた面を含み、
前記第1の出隅部は、前記傾いた面に隣接して形成される、請求項1に記載の鋼部材。 - 前記鋼部材は、角形鋼管または溶接箱型断面部材であり、
前記第1の面および前記第2の面は、前記角形鋼管または前記溶接箱型断面部材の隣接する2つの側面を構成する、請求項1または請求項2に記載の鋼部材。 - 材軸方向に沿って互いに隣接して延びる第1の面および第2の面、
他の鋼部材の接合位置を含む前記材軸方向の第1の区間で前記第1の面と前記第2の面との間に形成される第1の出隅部、
前記第1の区間の少なくとも片側に隣接する前記材軸方向の第2の区間で前記第1の面と前記第2の面との間に形成される面取り部、および
前記第2の区間に前記第1の区間とは反対側で隣接する前記材軸方向の第3の区間において前記第1の面と前記第2の面との間に形成される第2の出隅部
を備える鋼部材。 - 前記鋼部材は、前記材軸方向に沿って延びる板面と前記板面の幅方向両側に形成される側端面とを有する板状部分を含み、
前記第1の面は前記他の鋼部材が接合される前記板面であり、前記第2の面は前記板面に隣接する前記側端面である、請求項4に記載の鋼部材。 - 前記面取り部は、
前記第1の面および前記第2の面のそれぞれに対して傾き、かつ前記材軸方向に沿って延びる第3の面を形成する平坦部と、
前記第1の出隅部と前記平坦部との間に形成される接続部と
を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鋼部材。 - 前記接続部は、前記第3の面に連続する凹状の円柱面を含む、請求項6に記載の鋼部材。
- 前記接続部は、前記第1の出隅部に隣接し、かつ前記第3の面に連続する凹状の円柱面に連続する第4の面をさらに含む、請求項7に記載の鋼部材。
- 第1の鋼部材と第2の鋼部材との間の溶接接合構造であって、
前記第1の鋼部材は、
前記第1の鋼部材の材軸方向に沿って互いに隣接して延びる第1の面および第2の面、
前記材軸方向の端部に形成される第1の溶接面、
前記第1の溶接面に隣接する前記材軸方向の第1の区間で前記第1の面と前記第2の面との間に形成される第1の出隅部、
前記第1の区間に隣接する前記材軸方向の第2の区間で前記第1の面と前記第2の面との間に形成される面取り部、および
前記第2の区間に隣接する前記材軸方向の第3の区間において前記第1の面と前記第2の面との間に形成される第2の出隅部
を備え、
前記第2の鋼部材は、前記第1の溶接面に対向する第2の溶接面を備え、
前記第1の溶接面と前記第2の溶接面との間に溶接金属が充填または積層されている、溶接接合構造。 - 前記第1の鋼部材は、角形鋼管または溶接箱型断面部材であり、
前記第2の鋼部材は、通しダイヤフラムまたはベースプレートであり、
前記第1の面および前記第2の面は、前記角形鋼管または前記溶接箱型断面部材の隣接する2つの側面を構成する、請求項9に記載の溶接接合構造。 - 請求項9に記載の溶接接合構造であって、
前記第1の鋼部材は、板厚tcの鋼板で形成された角形鋼管であり、
前記第1の面および前記第2の面は、前記角形鋼管の隣接する2つの側面を構成し、
前記第1の区間の長さは、前記板厚tc以下であり、
前記面取り部は、
前記第1の出隅部に隣接して形成される接続部と、
前記接続部に隣接して形成され、前記第1の面および前記第2の面のそれぞれに対して傾き、かつ前記材軸方向に沿って延びる第3の面を含む平坦部と
を含み、
前記接続部は、前記第3の面に連続する半径ρの凹状の円柱面と、前記第1の出隅部に隣接し、かつ前記円柱面に連続する第4の面とを含み、
前記板厚tcと、前記半径ρと、前記第2の区間において前記第1の出隅部の頂部を前記第1の鋼部材の材軸方向に仮想的に延長した線と前記第3の面との距離eと、前記第1の出隅部を基準にした場合の前記溶接金属の余盛高さvと、前記第4の面が前記材軸方向に対してなす角度θとの間に、以下の式(i)に示す関係が成り立つ溶接接合構造。
- 請求項9に記載の溶接接合構造であって、
前記第1の鋼部材は、板厚tcの鋼板で形成された角形鋼管であり、
前記第1の面および前記第2の面は、前記角形鋼管の隣接する2つの側面を構成し、
前記第1の区間の長さは、前記板厚tc以下であり、
前記面取り部は、
前記第1の出隅部に隣接して形成される接続部と、
前記接続部に隣接して形成され、前記第1の面および前記第2の面のそれぞれに対して傾き、かつ前記材軸方向に沿って延びる第3の面を含む平坦部と
を含み、
前記接続部は、前記第3の面に連続する半径ρの凹状の円柱面からなり、
前記板厚tcと、前記半径ρと、前記第2の区間において前記第1の出隅部の頂部を前記第1の鋼部材の材軸方向に仮想的に延長した線と前記第3の面との距離eと、前記第1の出隅部を基準にした場合の前記溶接金属の余盛高さvとの間に、以下の式(ii)に示す関係が成り立つ溶接接合構造。
- 第1の鋼部材と第2の鋼部材との間の溶接接合構造であって、
前記第1の鋼部材は、
材軸方向に沿って互いに隣接して延びる第1の面および第2の面、
前記第1の面に前記第2の鋼部材が当接する前記材軸方向の第1の区間で前記第1の面と前記第2の面との間に形成される第1の出隅部、
前記第1の区間の少なくとも片側に隣接する前記材軸方向の第2の区間で前記第1の面と前記第2の面との間に形成される面取り部、および
前記第2の区間に前記第1の区間とは反対側で隣接する前記材軸方向の第3の区間において前記第1の面と前記第2の面との間に形成される第2の出隅部
を備え、
前記第1の区間の一部において、前記第1の面と前記第2の鋼部材との間には溶接金属が充填または積層されている、溶接接合構造。
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