以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図8は、本実施の形態による貨幣釣銭機やこのような貨幣釣銭機に設けられた紙幣処理装置を示す図である。
コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の商業施設の店舗において、顧客が立ち入ることができるフロント領域には様々な商品が陳列された商品棚が設置されているとともに、このフロント領域の精算所(具体的には、対面式レジカウンター)には、図1に示すような貨幣釣銭機1およびPOSレジスタ60からなる貨幣処理システムが設置されている。ここで、フロント領域に複数の精算所が設けられる場合には、各精算所にそれぞれ貨幣処理システムが設置されるようになる。顧客がこのような精算所で精算処理を行う際に、店員は、顧客から受け取った商品の代金としての貨幣を貨幣釣銭機1に入金したり、釣銭としての貨幣を貨幣釣銭機1から出金して顧客に返却したりするようになっている。また、POSレジスタ60は貨幣釣銭機1に対して通信可能となっており、当該POSレジスタ60により、顧客が購入した商品に係る情報や貨幣釣銭機1に収納されている貨幣に係る情報等の管理が行われるようになっている。
次に、貨幣釣銭機1の構成の詳細について以下に説明する。図1に示すように、貨幣釣銭機1は、左右並ぶよう配置された硬貨処理装置10および紙幣処理装置20を有しており、これらの硬貨処理装置10および紙幣処理装置20の上面にPOSレジスタ60が載置されるようになっている。硬貨処理装置10は、硬貨を外部から受け入れる硬貨受入部12aと、筐体の内部で硬貨を搬送する搬送部(図示せず)と、搬送部に設けられ、当該搬送部により搬送される硬貨の金種、真偽、正損、搬送状態等の識別を行う識別部(図示せず)と、搬送部に接続され、当該搬送部から送られた硬貨を金種毎に収納するとともに収納されている硬貨を搬送部に繰り出し可能な複数の収納繰出部14(図8参照)と、搬送部に接続され、当該搬送部により搬送される硬貨を筐体の外部に出す硬貨出口部12bとを有している。ここで、本実施の形態では、硬貨受入部12a、搬送部、識別部、硬貨出口部12b等により、硬貨の処理を行う硬貨処理部12(図8参照)が構成されている。このような硬貨処理装置10の構成の詳細については説明を省略する。
図1および図2に示すように、紙幣処理装置20は、紙幣を外部から受け入れる紙幣受入部22と、筐体の内部で紙幣を搬送する搬送部30と、搬送部30に設けられ、当該搬送部により搬送される紙幣の金種、真偽、正損、搬送状態等の識別を行う識別部32と、搬送部30に接続され、当該搬送部30から送られた紙幣を金種毎に収納するとともに収納されている紙幣を搬送部30に繰り出し可能な複数(図2に示す例では3つ)の収納繰出部40、42、44と、搬送部30に接続され、当該搬送部30により搬送される紙幣を筐体の外部に出す紙幣出口部24とを有している。また、紙幣処理装置20には、紙幣の出金処理が行われる際に正常な紙幣ではないと識別部32により識別された紙幣が搬送部30から送られる出金リジェクト部26が設けられている。また、搬送部30には、筐体の手前側から紙幣収納カセット90が着脱自在に装着されるカセット装着部28が接続されており、カセット装着部28に紙幣収納カセット90が装着されると、当該紙幣収納カセット90に収納されている紙幣を搬送部30に繰り出すとともに搬送部30から紙幣収納カセット90に紙幣を送って当該紙幣収納カセット90に収納させることができるようになっている。より詳細には、紙幣収納カセット90には紙幣の出入口92が設けられており、カセット装着部28に紙幣収納カセット90が装着されると、この紙幣収納カセット90に設けられた紙幣の出入口92が搬送部30と向き合うようになる。また、紙幣収納カセット90には、複数の紙幣が立位状態で横方向に重ねられるような態様で収納されるようになっている。以下、このような紙幣処理装置20の各構成要素の詳細について説明する。
紙幣受入部22には紙幣受入口22aが設けられており、紙幣処理装置20の筐体の前面に配置されている。操作者はこの紙幣受入口22aを介して1または複数の紙幣を立位状態で横方向に重ねた状態で筐体の外部から紙幣受入部22に挿入することができるようになっている。この際に、操作者は筐体の外部から1または複数の紙幣をその長手方向に沿った方向で紙幣受入口22aに挿入する。また、紙幣受入部22には、当該紙幣受入部22に重なった状態で受け入れられた紙幣を1枚ずつ搬送部30に繰り出す紙幣繰出機構23が設けられている。
図2に示すように、搬送部30は、周回搬送部分30aと、周回搬送部分30aから放射状に延びる複数の接続搬送部分30bとを有している。また、周回搬送部分30aには識別部32が設けられており、当該周回搬送部分30aにおいて周回移動している紙幣の金種、真偽、正損、搬送状態等が識別部32により識別されるようになっている。また、複数の接続搬送部分30bは、周回搬送部分30aと、紙幣受入部22、紙幣出口部24、出金リジェクト部26、カセット装着部28、各収納繰出部40、42、44の各々とをそれぞれ接続するようになっている。
各収納繰出部40、42、44には、搬送部30から送られた紙幣が金種毎に収納されるようになっている。具体的には、収納繰出部40には千円札が収納され、収納繰出部42には五千円札および二千円札が混合状態で収納され、収納繰出部44には一万円札が収納されるようになっている。また、各収納繰出部40、42、44に収納されている紙幣をこれらの収納繰出部40、42、44から搬送部30に1枚ずつ繰り出すことができるようになっている。また、本実施の形態では、各収納繰出部40、42、44に複数の紙幣が立位状態で横方向に重ねられるような態様で収納されるようになっている。このような各収納繰出部40、42、44の構成の詳細については後述する。
紙幣出口部24は搬送部30から送られた紙幣を一時的に保留するようになっている。また、紙幣処理装置20の筐体の前面には紙幣放出口24aが設けられており、紙幣の出金処理において出金されるべき枚数の紙幣が搬送部30から紙幣出口部24に送られて当該紙幣出口部24に保留されると、この紙幣出口部24に保留されている紙幣が紙幣放出機構(図示せず)により紙幣放出口24aから筐体の外部に放出されるようになっている。このとき、出金されるべき枚数の紙幣が複数であった場合には、それらの紙幣は紙幣出口部24に重なった状態で保留され、紙幣放出機構(図示せず)により紙幣放出口24aから筐体の外部にまとめて放出される。このことにより、操作者は筐体の外部へ出金紙幣を取り出すことができるようになる。
次に、本実施の形態による貨幣釣銭機1における制御系の構成について図8を用いて説明する。図8に示すように、貨幣釣銭機1にはCPU(中央演算処理ユニット)等の制御部70が設けられており、硬貨処理装置10および紙幣処理装置20の各構成部材がそれぞれ当該制御部70に接続されている。具体的には、紙幣処理装置20の紙幣繰出機構23、紙幣出口部24(具体的には、紙幣放出機構)、搬送部30、識別部32、各収納繰出部40、42、44、カセット装着部28等がそれぞれ制御部70に接続されている。そして、識別部32による紙幣の識別結果が制御部70に送られるようになっている。また、制御部70は、紙幣処理装置20の紙幣繰出機構23、紙幣出口部24、搬送部30、収納繰出部40、42、44、カセット装着部28等の各構成部材に指令を送ることによりこれらの構成部材の制御を行うことができるようになっている。また、硬貨処理装置10の硬貨処理部12、収納繰出部14等も制御部70に接続されており、制御部70は、硬貨処理装置10の硬貨処理部12、収納繰出部14等の各構成部材に指令を送ることによりこれらの構成部材の制御を行うことができるようになっている。
また、図1に示すように、硬貨処理装置10の上面前部にはタッチパネル等の操作表示部50が設けられており、当該操作表示部50は制御部70に接続されている。操作表示部50には、紙幣処理装置20や硬貨処理装置10に収納されている紙幣や硬貨の在高等に関する情報や、紙幣や硬貨の処理状況に係る情報等が表示されるようになっている。また、操作者は操作表示部50により制御部70に様々な指令を入力することができるようになっている。また、図8に示すように、制御部70には、記憶部72および通信部78がそれぞれ接続されている。記憶部72には、紙幣処理装置20や硬貨処理装置10に収納されている紙幣や硬貨の在高等に関する情報や、紙幣や硬貨の処理履歴に係る情報等が記憶されるようになっている。また、制御部70は通信部78によりPOSレジスタ60等の外部装置に対して信号の送受信を行うことができるようになっている。
次に、このような貨幣釣銭機1の動作について以下に説明する。なお、以下に説明するような貨幣釣銭機1の動作は、制御部70が紙幣処理装置20や硬貨処理装置10の各構成部材を制御することによって行われるようになっている。
まず、貨幣釣銭機1の紙幣処理装置20において紙幣の入金処理が行われる際の動作について図2を用いて説明する。操作者が紙幣受入口22aを介して紙幣受入部22に1または複数の紙幣を縦向きで重ねた状態で挿入すると、紙幣受入部22に受け入れられた紙幣は1枚ずつ紙幣繰出機構23により搬送部30に繰り出される。搬送部30に繰り出された紙幣は周回搬送部分30aを少なくとも1周分だけ周回移動し、その際に識別部32によって当該紙幣の金種、真偽、正損、搬送状態等の識別が行われる。ここで、識別部32により正常な紙幣であると識別された紙幣は搬送部30から各収納繰出部40、42、44に金種毎に送られ、これらの収納繰出部40、42、44に収納される。一方、識別部32により正常な紙幣ではないと識別された紙幣や、識別部32により識別することができなかった紙幣はリジェクト紙幣として搬送部30から紙幣出口部24に送られ、紙幣放出口24aから筐体の外部に放出される。このことにより、操作者は紙幣放出口24aから筐体の外部に放出されたリジェクト紙幣を紙幣受入口22aを介して紙幣受入部22に再び入れることができるようになる。そして、紙幣受入部22から紙幣が全て搬送部30に繰り出されて各収納繰出部40、42、44等に送られると、紙幣の入金処理が完了する。
次に、貨幣釣銭機1の紙幣処理装置20において紙幣の出金処理が行われる際の動作について説明する。操作者によって操作表示部50により紙幣の出金処理の指令が制御部70に入力されたり、POSレジスタ60等の外部装置から通信部78を介して制御部70に紙幣の出金処理の指令が送られたりすると、出金されるべき紙幣が1枚ずつ各収納繰出部40、42、44から搬送部30に繰り出される。搬送部30に繰り出された紙幣は周回搬送部分30aを少なくとも1周分だけ周回移動し、その際に識別部32によって当該紙幣の金種、搬送状態等の識別が行われる。ここで、識別部32により正常な紙幣であると識別された紙幣は搬送部30から紙幣出口部24に送られ、この紙幣出口部24で一時的に保留される。一方、識別部32により正常な紙幣ではないと識別された紙幣(具体的には、例えば搬送異常の紙幣)は搬送部30から出金リジェクト部26に送られ、この出金リジェクト部26に集積される。そして、出金されるべき紙幣が紙幣出口部24に送られてこの紙幣出口部24に保留されると、紙幣出口部24に重なった状態で保留されている1または複数の紙幣が紙幣放出機構(図示せず)により紙幣放出口24aから筐体の外部にまとめて放出される。このことにより、操作者は筐体の外部から出金紙幣を取ることができるようになる。そして、紙幣放出口24aから出金紙幣が全て取り出されると紙幣処理装置20における紙幣の出金処理が完了する。
次に、各収納繰出部40、42、44の構成の詳細について図3乃至図7を用いて説明する。
図3は、各収納繰出部40、42、44を上方から下向きに見たときの内部構成を示す上面図であり、図4は、図3に示す各収納繰出部40、42、44の内部を側方から見たときの構成を示す側面図である。図3および図4に示すように、各収納繰出部40、42、44は、枠体80と、枠体80の内部に設けられ、搬送部30から枠体80の内部に送られた紙幣を受ける受け部材84と、受け部材84により受けられた状態にある紙幣を枠体80の外部に繰り出す帯状の搬送ベルト82(搬送部材)と、受け部材84に対向するよう設けられた一対の押さえ部材86とを有している。ここで、図3に示すように、搬送ベルト82は一対のプーリ82a、82bに張架されている。また、一対のプーリ82a、82bの間にはベルト側ローラ82cおよび補助ローラ82dがそれぞれ配置されている。また、図4に示すように、一対のプーリ82a、82bのうち一方のプーリ82aには駆動モータ81が接続されており、この駆動モータ81によってプーリ82aが回転駆動されることにより搬送ベルト82は図3における時計回り方向および反時計回り方向の両方に循環移動するようになっている。そして、プーリ82aおよびベルト側ローラ82cに対向して、それぞれ対向ローラ83aおよびゲートローラ83bが配置されている。なお、図4に示すように、搬送ベルト82は平行に並ぶよう3本設けられており、各々の搬送ベルト82に対応して各プーリ82a、82bや各ローラ83a、83bが設けられている。そして、駆動モータ81は3つのプーリ82aを同期して回転させるようになっている。また、図5に示すように、各搬送ベルト82は、内側に歯部分が等間隔で設けられた歯付きベルトから構成されている。このため、搬送ベルト82は図3における時計回り方向または反時計回り方向に循環移動すると、この搬送ベルト82の内側に設けられた歯部分が各プーリ82a、82bや各ローラ82c、82dに接触するようになる。
また、図3に示すように、枠体80におけるプーリ82aの近傍の箇所には紙幣の出入口80aが形成されており、搬送部30から各収納繰出部40、42、44に送られた紙幣は出入口80aを通って枠体80の内部に入るようになっている。また、各搬送ベルト82により受け部材84から繰り出された紙幣は出入口80aを通って枠体80の外部に出て搬送部30により引き続き搬送されるようになっている。
また、図3に示すように、受け部材84には押圧機構85が取り付けられており、当該押圧機構85により受け部材84が各搬送ベルト82に向かって押圧されるようになっている。また、図5に示すように、受け部材84における各搬送ベルト82に対向する表面には、各搬送ベルト82に向かって突出する凸部84aが形成されている。このような受け部材84の構成の詳細については後述する。
図4に示すように、紙幣の積み重ね方向(すなわち、図3における上下方向)から見て各搬送ベルト82を間に挟むような位置において、一対の押さえ部材86が紙幣の繰出方向(すなわち、図3および図4における左方向)と略平行に延びている。各押さえ部材86は、略矩形断面の棒状となっており、図4に示すように、先端側が受け部材84における出入口80a側の端縁付近まで延びるとともに、基端側が受け部材84の他方の端縁を越えて延びている。各押さえ部材86の基端側は、紙幣の積み重ね方向の他側(すなわち、図3における下側)に延びる連結部87に繋がっている。また、各押さえ部材86の基端寄りの部分には、受け部材84側へ僅かに突出した摩擦部材86aが設けられている。摩擦部材86aは、押さえ部材86の表面(例えば、滑らかな金属面または樹脂面)よりも摩擦係数の大きい表面(例えば、ゴム面)を有している。また、図3に示すように、一対の押さえ部材86を紙幣の積み重ね方向に移動させる移動機構88が設けられている。具体的には、図3に示すように、移動機構88に連結部87が接続されており、この移動機構88により連結部87は図3における上下方向に移動させられるようになっている。移動機構88により連結部87が移動させられると、各押さえ部材86も図3における上下方向に移動させられるようになる。なお、ここで、図4に示すように各押さえ部材86は各搬送ベルト82を間に挟むよう配置されているため、各押さえ部材86を各搬送ベルト82よりも受け部材84から離れた位置に移動させることができるようになる。
次に、各収納繰出部40、42、44に紙幣を収納させる動作について説明する。搬送部30から各収納繰出部40、42、44に紙幣を送り、これらの収納繰出部40、42、44に紙幣を収納させるにあたり、まず移動機構88により連結部87が図3における下方向に移動させられ、押圧機構85による押圧力に抗して各押さえ部材86が受け部材84を図3における下方に押動する。このことにより、各押さえ部材86が各搬送ベルト82から下方に離間し、各搬送ベルト82と各押さえ部材86との間に空間が形成されるようになる。また、駆動モータ81により各プーリ82aが回転駆動させられることによって各搬送ベルト82が図3における反時計回りの方向に循環移動させられる。このことにより、出入口80aから枠体80の内部に入った紙幣は各搬送ベルト82により各搬送ベルト82と各押さえ部材86との間の空間に送られる。具体的には、出入口80aから枠体80の内部に入った紙幣は、各搬送ベルト82と各対向ローラ83aとの間に形成される領域、および各搬送ベルト82と各ゲートローラ83bとの間に形成される領域をそれぞれ通過した後に、各搬送ベルト82と各押さえ部材86との間の空間に送られるようになる。また、各搬送ベルト82と各押さえ部材86との間に形成される空間に紙幣が送られる度に、移動機構88により連結部87が図3における上方向に移動させられ、よって各押さえ部材86が各搬送ベルト82よりも図3における上方に移動する。このことにより、各搬送ベルト82と各押さえ部材86との間の空間に送られていた紙幣が受け部材84により受けられるようになる。その後、移動機構88により連結部87が図3における下方向に移動させられ、押圧機構85による押圧力に抗して各押さえ部材86が受け部材84を図3における下方に押動する。このことにより、各押さえ部材86が各搬送ベルト82から下方に離間し、各搬送ベルト82と各押さえ部材86との間に空間が再び形成されるようになる。このようにして、各搬送ベルト82と各押さえ部材86との間に、出入口80aから新たに枠体80の内部に送られる紙幣の収納領域を確保することができるようになる。そして、搬送部30から各収納繰出部40、42、44に紙幣を送る動作が完了すると、移動機構88により連結部87が図3における上方向に移動させられ、各押さえ部材86が各搬送ベルト82よりも図3における上方に移動する。このことにより、受け部材84により受けられた1または複数の紙幣は受け部材84と各搬送ベルト82との間に挟まれた状態で収納されるようになる。
次に、各収納繰出部40、42、44に収納されている紙幣をこれらの収納繰出部40、42、44から繰り出す動作について説明する。各収納繰出部40、42、44に収納されている紙幣をこれらの収納繰出部40、42、44から繰り出して出入口80aから枠体80の外部に出すにあたり、駆動モータ81により各プーリ82aが回転駆動させられることによって各搬送ベルト82が図3における時計回りの方向に循環移動させられる。また、押圧機構85によって受け部材84が各搬送ベルト82に向かって押圧されることにより、受け部材84により受けられている1または複数の紙幣のうち各搬送ベルト82に最も近い側の紙幣が当該搬送ベルト82により出入口80aに送られる。具体的には、各搬送ベルト82に接触した紙幣は、各搬送ベルト82と各ゲートローラ83bとの間に形成される領域、および各搬送ベルト82と各対向ローラ83aとの間に形成される領域をそれぞれ通過した後に、出入口80aに送られてこの出入口80aから枠体80の外部に出されるようになる。より詳細には、図3に示すように各搬送ベルト82を挟んで受け部材84と反対側の位置には各補助ローラ82dが各搬送ベルト82に接するよう設けられている。このため、押圧機構85によって受け部材84が各搬送ベルト82に向かって押圧されると、受け部材84により受けられている1または複数の紙幣のうち各搬送ベルト82に最も近い側の紙幣における、各搬送ベルト82を挟んで各補助ローラ82dに接触する箇所に大きな力がかかるようになり、当該箇所で各搬送ベルト82と紙幣との間に働く摩擦力が大きくなる。このことにより、受け部材84により受けられている紙幣をより確実に各搬送ベルト82によって繰り出すことができるようになる。また、上述したように、受け部材84における各搬送ベルト82に対向する表面には、各搬送ベルト82に向かって突出する凸部84aが形成されている。このことにより、受け部材84により受けられている1または複数の紙幣のうち各搬送ベルト82に最も近い側の紙幣における、凸部84aに乗っている箇所に更に大きな力をかけることができるようになり、よって当該箇所で各搬送ベルト82と紙幣との間に働く摩擦力を更に大きくすることができるようになる。
また、本実施の形態では、図5乃至図7に示すように、受け部材84に設けられた凸部84aにおける各補助ローラ82dに対向する位置に空間84bが形成されている。このことにより、凸部84aには、第1の平面84cと、第1の平面84cよりも各搬送ベルト82から離間した位置にある第2の平面84dとがそれぞれ設けられるようになる。すなわち、凸部84aにおける各搬送ベルト82に対向する表面は、第1の平面84cおよび第2の平面84dからなる段差形状となっている。このため、押圧機構85によって受け部材84が各搬送ベルト82に向かって押圧されたときに、この受け部材84に設けられた凸部84aにおける第1の平面84cは各搬送ベルト82に接するようになるが第2の平面84dは各搬送ベルト82に接しないようになる。なお、受け部材84に1または複数の紙幣が受けられているときには、押圧機構85によって受け部材84が各搬送ベルト82に向かって押圧されたときに、この受け部材84に設けられた凸部84aにおける第1の平面84cは紙幣を挟んで各搬送ベルト82に接するようになるが第2の平面84dは各搬送ベルト82に接しないようになる。言い換えると、押圧機構85によって受け部材84が各搬送ベルト82に向かって押圧されたときに、受け部材84に設けられた凸部84aにおける第2の平面84dと各搬送ベルト82との間には空間84bが存在するようになる。
より詳細には、図7に示すように、平行に沿って延びるよう設けられた3つの搬送ベルト82に対応して3つの補助ローラ82dが並ぶよう配置されているが、各補助ローラ82dの軸方向(すなわち、図7の上下方向)において、凸部84aにおける各々の補助ローラ82dに対向する位置に3つの空間84bが形成されている。このことにより、凸部84aには3つの第2の平面84dが各補助ローラ82dに向き合うように形成されるようになる。
ここで、各搬送ベルト82が歯付きベルトである場合には、搬送ベルト82は図3における時計回り方向または反時計回り方向に循環移動すると、この搬送ベルト82の内側に設けられた歯部分が補助ローラ82dに接触し、この補助ローラ82dは図6において実線で示すような歯の先端に接する位置と図6において二点鎖線で示すような歯と歯の間に入る位置との間で振動するようになる。しかしながら、上述したように、受け部材84に設けられた凸部84aにおける第2の平面84dと各搬送ベルト82との間には空間84bが存在するため、このような補助ローラ82dの振動が凸部84aに伝わりにくくなる。このため、補助ローラ82dが振動しても受け部材84の振動を抑制することができるようになり、よって受け部材84から大きな騒音が発生してしまうことを抑制することができるようになる。
また、本実施の形態では、受け部材84に設けられた凸部84aにおける第1の平面84cと第2の平面84dとの間の段差の大きさ(すなわち、図5の上下方向における空間84bの長さ)は、受け部材84に受けられる紙幣に直交する方向(すなわち、図5の上下方向)における補助ローラ82dの振動量よりも大きくなっている。ここで、受け部材84に受けられる紙幣に直交する方向における補助ローラ82dの振動量とは、図6の上下方向における、実線で示す補助ローラ82dと二点鎖線で示す補助ローラ82dとの差の距離(すなわち、図6において参照符合aで示す距離)のことをいう。このような補助ローラ82dの振動量よりも空間84bの長さを大きくすることにより、補助ローラ82dが振動しても各搬送ベルト82が第2の平面84dに接触しなくなり、よって受け部材84の振動をより一層確実に抑制することができるようになる。
なお、補助ローラ82dが位置固定で設けられる場合には、搬送ベルト82は図3における時計回り方向または反時計回り方向に循環移動すると、この搬送ベルト82の内側に設けられた歯部分が補助ローラ82dに接触しても、補助ローラ82dは振動せず、代わりに搬送ベルト82における補助ローラ82dに接する箇所が振動するようになる。このような事態に備えて、搬送ベルト82の振動量よりも空間84bの長さを大きくしておくことが望ましい。この場合には、搬送ベルト82が振動しても当該搬送ベルト82が第2の平面84dに接触しなくなり、よって受け部材84の振動をより一層確実に抑制することができるようになる。
また、図5に示すように、受け部材84に設けられた凸部84aにおける第1の平面84cと第2の平面84dとの間の境界は当該凸部84aの表面に対して傾斜している。このことにより、各収納繰出部40、42、44に紙幣を収納させる際に、出入口80aから枠体80の内部に入った紙幣が各搬送ベルト82により受け部材84に送られるときにこの紙幣が受け部材84の凸部84aにおける第1の平面84cと第2の平面84dとの間の境界で引っ掛かってしまうことを抑制することができるようになる。
以上のような構成からなる本実施の形態の紙幣処理装置20に設けられた各収納繰出部40、42、44(収納繰出機構)によれば、帯状の各搬送ベルト82(搬送部材)との間で紙幣の収納空間を形成する受け部材84には、第1の平面84cと、第1の平面84cよりも各搬送ベルト82から離間した位置にある第2の平面84dとが設けられており、第2の平面84dは、少なくとも補助ローラ82d(回転体)に対向する位置に形成されている。このことにより、受け部材84における第2の平面84dと各搬送ベルト82との間には空間84bが存在するようになり、よって受け部材84と各搬送ベルト82との間に収納されている紙幣の枚数が少なくなっても補助ローラ82dの振動が凸部84aに伝わりにくくなる。このため、補助ローラ82dや各搬送ベルト82に生じる微振動が受け部材84に伝達されてしまうことを抑制することによって受け部材84から大きな騒音が発生してしまうことを抑制することができる。
また、本実施の形態の紙幣処理装置20に設けられた各収納繰出部40、42、44においては、上述したように、受け部材84を各搬送ベルト82に受かって押圧する押圧部として押圧機構85が設けられている。また、受け部材84には、各搬送ベルト82に向かって突出する凸部84aが形成されており、第1の平面84cは凸部84aに設けられている。このことにより、受け部材84に受けられている紙幣を繰り出すときに、押圧機構85によって受け部材84が各搬送ベルト82に向かって押圧される際に、受け部材84により受けられている1または複数の紙幣のうち各搬送ベルト82に最も近い側の紙幣における、凸部84aに乗っている箇所に更に大きな力をかけることができるようになり、よって当該箇所で各搬送ベルト82と紙幣との間に働く摩擦力を更に大きくすることができるようになる。なお、本実施の形態の紙幣処理装置20では、受け部材84に凸部84aが設けられるような態様に限定されることはない。変形例に係る紙幣処理装置の各収納繰出部において、受け部材84に凸部84aが設けられておらず、この受け部材84に第1の平面84cおよび第2の平面84dが直接形成されるようになっていてもよい。
また、本実施の形態の紙幣処理装置20に設けられた各収納繰出部40、42、44においては、上述したように、受け部材84における第1の平面84cと第2の平面84dとの間の段差の大きさは、受け部材84に受けられる紙幣に直交する方向における補助ローラ82dまたは各搬送ベルト82の振動量よりも大きくなっている。この場合には、補助ローラ82dや各搬送ベルト82の振動量よりも空間84bの長さを大きくすることにより、補助ローラ82dや各搬送ベルト82が振動しても各搬送ベルト82が第2の平面84dに接触しなくなり、よって受け部材84の振動をより一層確実に抑制することができるようになる。
また、本実施の形態の紙幣処理装置20に設けられた各収納繰出部40、42、44においては、上述したように、搬送部材として用いられる各搬送ベルト82は歯付きベルトである。なお、本実施の形態の紙幣処理装置20では、各搬送ベルト82が歯付きベルトであるような態様に限定されることはない。変形例に係る紙幣処理装置の各収納繰出部において、搬送部材として用いられるベルトが歯付きベルトではなく丸ベルトや平ベルトであってもよい。このような丸ベルトや平ベルトでも、これらの丸ベルトや平ベルトが移動する際に当該ベルトに接触する補助ローラ82dが振動する場合があるが、受け部材84における第2の平面84dとベルトとの間に空間84bを形成することにより、補助ローラ82dの振動が受け部材84に伝わりにくくなる。このため、補助ローラ82d等に生じる微振動が受け部材84に伝達されてしまうことを抑制することによって受け部材84から大きな騒音が発生してしまうことを抑制することができる。
また、本実施の形態の紙幣処理装置20に設けられた各収納繰出部40、42、44においては、上述したように、各補助ローラ82dの軸方向において第2の平面84dは受け部材84において各補助ローラ82dに対向する位置に設けられている(図7参照)。このことにより、少なくとも受け部材84における各補助ローラ82dと対向する位置に空間84bを形成することができるようになり、よって各補助ローラ82dの振動が受け部材84に伝わりにくくなる。
なお、本実施の形態による紙幣処理装置20は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
上記の説明では本実施の形態による貨幣釣銭機1として紙幣処理装置20および硬貨処理装置10を有するものを用いたが、このような態様に限定されることはない。本実施の形態による貨幣釣銭機1として紙幣処理装置20のみが単体で使用されるものが用いられてもよい。この場合には、上述した制御部70、操作表示部50、記憶部72および通信部78等が紙幣処理装置20に設けられるようになる。
また、上記の説明では、各収納繰出部40、42、44に複数の紙幣が立位状態で横方向に重ねられるような態様で収納されるような例について述べたが、本実施の形態の紙幣処理装置20はこのような例に限定されることはない。他の例として、各収納繰出部に複数の紙幣が受け部材(ステージ)上に積層状態で鉛直方向に積み重ねられるようになっていてもよい。このような各収納繰出部においても、上述した各収納繰出部40、42、44と同様に、受け部材における第2の平面と搬送ベルト等の搬送部材との間に空間を形成することにより、受け部材と搬送ベルトとの間に収納されている紙幣の枚数が少なくなっても補助ローラ等の振動が受け部材に伝わりにくくなる。このため、補助ローラ等に生じる微振動が受け部材に伝達されてしまうことを抑制することによって受け部材から大きな騒音が発生してしまうことを抑制することができる。
また、図7では、各補助ローラ82dの軸方向において、第2の平面84dが受け部材84において各補助ローラ82dに対向する位置に設けられているような例が示されているが、本実施の形態の紙幣処理装置20に設けられた各収納繰出部40、42、44はこのような例に限定されることはない。他の例として、第2の平面84dが各補助ローラ82dの軸方向における受け部材84の略全域に亘って(すなわち、図7に示す受け部材84の凸部84aの上下方向の全長に亘って)設けられていてもよい。この場合でも、少なくとも受け部材84における各補助ローラ82dと対向する位置に空間84bを形成することができるようになり、よって受け部材84と各搬送ベルト82との間に収納されている紙幣の枚数が少なくなっても各補助ローラ82dの振動が受け部材84に伝わりにくくなる。
また、紙幣処理装置20に設けられた各収納繰出部40、42、44における各搬送ベルト82、各補助ローラ82d、受け部材84、押圧機構85、押さえ部材86等と同様の収納繰出機構が、カセット装着部28に着脱自在に装着される紙幣収納カセット90の内部に設けられていてもよい。この場合には、カセット装着部28に紙幣収納カセット90が装着されると、搬送部30から出入口92により紙幣収納カセット90の筐体の外部から内部に入れられた紙幣が受け部材84によって受けられることにより紙幣収納カセット90の内部に収納される。また、紙幣収納カセット90の内部に収納されている紙幣は各搬送ベルト82により繰り出されて出入口92により紙幣収納カセット90の筐体の内部から外部に出されて搬送部30に送られるようになる。
また、本発明に係る紙葉類処理装置や紙葉類収納カセットは、紙幣の処理を行う紙幣処理装置20や紙幣を収納する紙幣収納カセット90に限定されることはない。本発明に係る紙葉類処理装置や紙葉類収納カセットとして、紙幣以外の紙葉類(例えば、商品券や小切手等)の処理を行うものや当該紙葉類を収納するものが用いられてもよい。また、本発明に係る収納繰出機構は、紙幣を収納するとともに収納されている紙幣を繰り出し可能な紙幣収納繰出機構に限定されることはない。本発明に係る収納繰出機構として、紙幣以外の紙葉類(例えば、商品券や小切手等)を収納するとともに収納されている紙葉類を繰り出し可能なものが用いられてもよい。