JP2019056142A - 金属皮膜の成膜装置 - Google Patents

金属皮膜の成膜装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2019056142A
JP2019056142A JP2017181368A JP2017181368A JP2019056142A JP 2019056142 A JP2019056142 A JP 2019056142A JP 2017181368 A JP2017181368 A JP 2017181368A JP 2017181368 A JP2017181368 A JP 2017181368A JP 2019056142 A JP2019056142 A JP 2019056142A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
solid electrolyte
film
electrolyte membrane
metal
anode
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017181368A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6806014B2 (ja
Inventor
飯坂 浩文
Hirofumi Iizaka
浩文 飯坂
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
Priority to JP2017181368A priority Critical patent/JP6806014B2/ja
Publication of JP2019056142A publication Critical patent/JP2019056142A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6806014B2 publication Critical patent/JP6806014B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Electroplating Methods And Accessories (AREA)

Abstract

【課題】異なる厚みの金属皮膜を簡単に成膜することができる金属皮膜の成膜装置を提供する。【解決手段】金属皮膜の成膜装置1は、陽極11と、陽極11と基材Wとの間に配置される固体電解質膜13と、金属溶液を収容する溶液収容部15と、陽極11と基材Wとの間に電圧を印加する電源部16とを、備えている。溶液収容部15は、収容された金属溶液Lを、固体電解質膜13に加圧するものであり、溶液収容部15の内部には、固体電解質膜13を覆うように固体電解質膜13に隣接し、かつ、複数の貫通孔14cが形成された遮蔽板14が配置されている。遮蔽板14は、比誘電率が2.0〜5.4の誘電体であり、引張強さが、19〜80MPaであり、曲げ弾性率が50GPa以下の樹脂材料からなる。【選択図】図1

Description

本発明は、基材の表面に金属皮膜を成膜する成膜装置に係り、特に、陽極と基材との間に電圧を印加することにより、基材の表面に膜厚の異なる金属皮膜を成膜することができる金属皮膜の成膜装置に関する。
従来から、基材の表面に金属皮膜を成膜する際には、固体電解質膜を備えた成膜装置が利用されている。このような成膜装置として、たとえば、例えば、特許文献1には、基材の表面に、部分的に金属皮膜を成膜する成膜装置が提案されている。この成膜装置は、陽極と、陽極と基材との間に配置される固体電解質膜と、陽極と固体電解質膜に接触するように金属溶液を収容する溶液収容部と、陽極と基材との間に電圧を印加する電源部と、備えている。
この成膜装置の固体電解質膜には、基材の表面のうち金属皮膜が成膜される成膜領域に固体電解質膜が接触し、成膜領域を除く表面に固体電解質膜が非接触となるように、成膜領域に接触する接触面に対して凹んだ凹部が形成されている。これにより、固体電解質膜の接触面は、成膜領域に部分的に接触するため、基材の表面に部分的に金属皮膜を成膜することができる。
特開2016−169398号公報
しかしながら、特許文献1に示す成膜装置を用いた場合、固体電解質膜と基材とが接触している界面に均一に金属が析出するため、基材上に厚みの異なる金属皮膜を形成しようとすると、薄い金属皮膜を形成したあと、厚い金属皮膜を形成したい領域以外に凹部が形成された固体電解質膜を用いて、再度成模する必要があり、製造に時間がかかる。
本発明はこのような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、異なる厚みの金属皮膜を簡単に成膜することができる金属皮膜の成膜装置を提供することにある。
このような点に鑑みて、本発明に係る金属皮膜の成膜装置は陽極と、前記陽極と陰極となる基材との間に配置される固体電解質膜と、前記陽極と前記固体電解質膜との間において、前記陽極と前記固体電解質膜に金属イオンを含む金属溶液が接触するように、前記金属溶液を収容する溶液収容部と、前記陽極と前記基材との間に電圧を印加する電源部とを、備えた金属皮膜の成膜装置であって、前記溶液収容部は、収容された前記金属溶液を、前記固体電解質膜に加圧するものであり、前記溶液収容部の内部には、前記固体電解質膜を覆うように前記固体電解質膜に隣接し、かつ、複数の貫通孔が形成された遮蔽板が配置されており、前記遮蔽板は、比誘電率が2.0〜5.4の誘電体であり、引張強さが、19〜80MPaであり、曲げ弾性率が50GPa以下の樹脂材料からなることを特徴とする。
本発明によれば、固体電解質膜と基材が接触する領域に金属イオンが析出する。また、遮蔽板の比誘電率を2.0〜5.4の誘電体にしたので、陽極付近に正電荷が増加して基材付近に負電荷が増加すると、基材と固体電解質膜の界面に誘電分極(界面分極)が生じる。これにより、遮蔽板の貫通孔に対応する部分にはより厚みの大きい金属皮膜が基材に成膜される。このようにして、一度の成膜工程で、基材上に厚みの異なる金属皮膜を形成することができる。
また、溶液収容部は、収容された金属溶液(電解液)を、固体電解質膜に加圧するものであるので、金属溶液の液圧で、固体電解質膜が変形する。このような場合であっても、遮蔽板の材料に、引張強さを19〜80MPaとなり、曲げ弾性率を50GPa以下となる樹脂材料を選定したので、固体電解質膜の応力変形に、遮蔽板を追従させることができる。このため、遮蔽板の貫通孔の形状に応じて金属皮膜の厚みを大きくし、貫通孔の形状に応じた形状が鮮明となるように、金属皮膜を成膜することができる。
さらに、溶液収容部において、固体電解質膜と遮蔽板と間に、わずかに間隙を設ければ、固体電解質膜と遮蔽板の界面に生じたガスが蓄積されることはないので、基材に対する固体電解質膜の面圧ばらつきを抑制することができる。
本発明の実施形態の金属皮膜の成膜装置の模式的分解斜視図である。 (a)は、図1に示す成膜装置の要部断面図であり、(b)は、(a)の成膜前の状態を示す断面図である。 図1に示す成膜装置による金属皮膜の成膜を説明するための模式的図である。 (a)、(b)は、実施例1、2に係る陽極と基材との間の電圧変化を示したグラフである。 (a)、(b)は、実施例3、4に係る陽極と基材との間の電圧変化を示したグラフである。 (a)、(b)は、比較例1、2に係る陽極と基材との間の電圧変化を示したグラフである。 比較例3に係る陽極と基材との間の電圧変化を示したグラフである。 (a)、(b)は、比較例4、5に係る陽極と基材との間の電圧変化を示したグラフである。 実施例1〜4および比較例2、3における遮蔽板の比誘電率とニッケル皮膜重量の関係を示したグラフである。 実施例1〜4および比較例2、3における遮蔽板の引張り強さとニッケル皮膜重量の関係を示したグラフである。 実施例1〜4および比較例2、3における遮蔽板の曲げ弾性率とニッケル皮膜重量の関係を示したグラフである。
以下に本発明の実施形態に係る金属皮膜の成膜を好適に実施することができる成膜装置について、図1〜図3を参照しながら説明する。
1−1.成膜装置1について
図1は、本発明の実施形態の金属皮膜の成膜装置1の模式的分解斜視図であり、図2(a)は、図1に示す成膜装置1の要部断面図であり、(b)は、(a)の成膜前の状態を示す断面図である。図3は、図1に示す成膜装置1による金属皮膜Fの成膜を説明するための模式的図である。図1に示すように、本実施形態に係る成膜装置1は、基材Wの表面wfに金属皮膜Fを成膜する装置である。
基材Wの表面wfが金属である場合には、基材Wは、アルミニウム系(アルミニウムまたはその合金)材料、または、銅系(銅またはその合金)材料からなってもよく、シリコン基板または樹脂基板などの非導電性基板の表面に上述した金属の表面層が形成されている基材であってもよい。
成膜装置1は、陽極11と、陽極11と陰極となる基材Wとの間に配置される固体電解質膜13と、陽極11と固体電解質膜13に接触するように、金属イオンを含む金属溶液Lを収容する溶液収容部15と、陽極11と基材Wとの間に電圧を印加する電源部16とを備えている。
陽極11は、金属溶液Lに対して不溶性を有した酸化ルテニウム、白金、酸化イリジウムなどを挙げることができ、これらの金属が銅板などに被覆された陽極であってもよい。本実施形態では、陽極11は、金属皮膜の金属と同じ金属(金属溶液Lの金属イオンの金属)からなる可溶性の陽極であってもよく、例えば、金属皮膜がニッケル皮膜である場合には、陽極11はニッケルからなる。
固体電解質膜13は、上述した金属溶液Lに接触させることにより、金属イオンを内部に含浸することができ、電圧を印加したときに基材Wの表面において金属イオン由来の金属を析出することができるのであれば、特に限定されるものではない。固体電解質膜の材質としては、たとえばデュポン社製のナフィオン(登録商標)などのフッ素系樹脂、炭化水素系樹脂、ポリアミック酸樹脂、旭硝子社製のセレミオン(CMV、CMD、CMFシリーズ)などのイオン交換機能を有した樹脂を挙げることができる。
溶液収容部15は、陽極11と固体電解質膜13の間において、陽極11と固体電解質膜13に金属溶液Lが接触するように、金属溶液Lを収容するものである。溶液収容部15には、金属溶液Lを供給する供給通路15aと、これを排出する排出通路15bが形成されている。溶液収容部15は、金属溶液Lに対して不溶性の材料からなり、金属製および樹脂製のいずれであってもよい。
金属溶液Lは、たとえば、銅、ニッケル、銀などのイオンを含む電解液などを挙げることができ、金属溶液Lには、金属皮膜となる金属が、イオンの状態で存在する。
溶液収容部15は、溶液供給装置21に接続されている。溶液供給装置21は、金属溶液Lを収容する収容槽(図示せず)と、収容槽から金属溶液Lを圧送する圧送ポンプ(図示せず)と、を備えており、溶液収容部15の供給通路15aに、金属溶液Lを圧送して供給するように接続されている。これにより、溶液収容部15が、収容された金属溶液Lを、固体電解質膜13に加圧することができる。
さらに、溶液供給装置21は、溶液収容部15の排出通路15bからの金属溶液Lを回収するように、排出通路15bに接続されている。このようにして、溶液供給装置21により装置内で金属溶液Lを循環させることができる。
本実施形態では、溶液収容部15の内部には、固体電解質膜13を覆うように固体電解質膜13に隣接し、かつ、複数(具体的には、4×4個)の貫通孔14cが形成された遮蔽板14が配置されている。遮蔽板14は、固体電解質膜13に対して非接触であることが好ましい。遮蔽板14は、比誘電率が2.0〜5.4の誘電体であり、引張強さが、19〜80MPaであり、曲げ弾性率が50GPaよりも小さい樹脂材料からなる。遮蔽板14の樹脂材料としては、たとえば、ナイロン66、MCナイロン(高結晶ナイロン)、または塩化ビニルなどを挙げることができる。
1−2.成膜装置1を用いた成膜方法について
まず、図1および図2(b)に示すように、成膜装置1の固体電解質膜13に対向する位置に、基材Wを配置する。次に、固体電解質膜13の表面が、基材Wの表面wfに接触するように固体電解質膜13を基材Wに配置する。
この配置状態で、溶液供給装置21を稼働させて、溶液収容部15に金属溶液Lを供給し、溶液収容部15内の金属溶液Lを加圧することにより、金属溶液Lの液圧で、固体電解質膜13を基材Wの表面wfに加圧する。
次に、電源部16により、陽極11と基材Wとの間に電圧を印加する。これにより、図3に示すように、固体電解質膜13と基材Wが接触する領域に金属イオンが析出し、基材Wの表面に金属皮膜Fが形成される。ここで、図3に示す拡散層は、金属イオンを含む金属溶液が、固体電解質膜13から基材Wに拡散した層であり、この層でも、僅かに金属が析出する。
本実施形態では、遮蔽板14の比誘電率を2.0〜5.4の誘電体にしたので、陽極11付近に正電荷が増加して、基材W付近に負電荷が増加すると、基材Wと固体電解質膜13の界面に誘電分極(界面分極)が生じる。これにより、遮蔽板14の貫通孔14cに対応する部分にはより厚みの大きい金属皮膜Fが基材Wの表面wfに成膜される。このようにして、一度の成膜工程で、基材Wの表面wfに厚みの異なる金属皮膜Fを形成することができる。
また、溶液収容部15は、収容された金属溶液(電解液)Lを、固体電解質膜13に加圧するものであるので、金属溶液Lの液圧で、固体電解質膜13が変形する。このような場合であっても、遮蔽板14の材料に、引張強さが19〜80MPaであり、曲げ弾性率を50GPaよりも小さい樹脂材料を選定したので、固体電解質膜13の応力変形に、遮蔽板14を追従させることができる。このため、遮蔽板14の貫通孔14cの形状に応じて金属皮膜Fの厚みを大きくし、貫通孔14cの形状に応じた形状が鮮明となるように、金属皮膜Fを成膜することができる。
溶液収容部15において、固体電解質膜13と遮蔽板14と間にわずかに間隙を設ければ、固体電解質膜13と遮蔽板14の界面に生じたガスが蓄積されることはないので、基材Wに対する固体電解質膜13の面圧ばらつきを抑制することができる。
ここで、電源部16により、陽極11と基材Wとの間に電圧を印加したときにおける、固体電解質膜13および遮蔽板14の分極について説明する。固体電解質膜13および遮蔽板14は、高分子樹脂からなり、絶縁体であるので電気を通さない。しかし、電源部16による電圧の印加により、高分子樹脂を電場の中に配置すると、電子、原子、および双極子が励起され、これらが分極する。これらの分極は、固体電解質膜13および遮蔽板14の内部で生じる。
電子分極は、原子間に局在化している電子が励起され、正の電極に向かうセグメントと負の電極に向かうセグメントに分かれ、分子全体として電子の偏りを生じる分極である。原子分極は、正および負の電荷をもって分布している原子が、それぞれの電極に引き寄せられ、偏位するために発生する分極である。双極子分極(配向分極)は、極性官能基を有する分子が電場に置かれると、分極している双極子が回転及び配向することによりさらに分極が進む現象である。
さらに、界面分極とは、不均質誘電体で相間の誘電率と伝導率の比が異なる場合、界面に電荷が蓄積され、分極するという現象でありMaxwell−Wagner効果と呼ばれる。本実施形態では、基材Wと固体電解質膜13の界面にこの界面分極が生じる。
具体的には、上述した分極が緩和する緩和時間の異なる材料の界面に電流が流れ込む際には、界面に電荷の蓄積が起きる。より詳細に説明すると、材料内を電荷が広がる速さは緩和時間によって律速されるが、それが異なる材料の界面では電荷の広がる速さが違うため電荷の蓄積が起きることになる。このように異なる材料の界面に電荷が蓄積されることにより、界面分極が生じる。
誘電体(絶縁体)を材質とした遮蔽板14を使用して金属皮膜Fの成膜を実施すると、Maxwell−Wagner効果も加味されて、誘電分極(導体に金属イオンが近づくと、導体内の自由電子が移動して、金属イオンに近い側には異符号であるマイナスの電気が発生し、遠い側には同符号のプラスの電気が現れる現象)が発生する。
以下の実施例では、誘電体である固体電解質膜と金属溶液の界面に、誘電率の異なる遮蔽板を配置し、電極間に電圧を印加して、界面分極(Maxwell−Wagner効果)が金属皮膜に与える影響を、定性的には金属皮膜の形態観察から、定量的には金属皮膜の重量測定から調査した。
以下に本発明を実施例に基づいて説明する。
<実施例1>
陽極としてニッケル板(製品番:NI−313551、大きさ:厚さ2mm×40×50mm、(株)ニラコ製)、電解液(金属溶液)として(1M塩化ニッケル、酢酸/酢酸ニッケル緩衝液0.5M)水溶液(pH3.0)、固体電解質膜としてイオン交換膜(電解質膜:CSH50、旭硝子社製)を準備した。
また、陰極としての基材としてニッケル箔(膜厚:15μm、大きさ;260×35mm、福田金属箔粉工業(株)製)、遮蔽板として、ナイロン66からなる樹脂製の遮蔽板(大きさ:30×30×2mm、貫通孔径;2mm、貫通乱数;16個、ピッチ:4mm)を準備した。
成膜条件は、基材温度を80℃、圧力(液圧)を0.5MPa、成膜速度を20μm/分、ニッケル皮膜の成膜面積を50mm、ニッケル膜厚を50μmとした。なお、ニッケル箔(基材)にニッケル皮膜を成摸する前に、25%塩酸でニッケル箔を10分間リンスし、金属溶液と固体電解質膜の界面に遮蔽板を配置した。遮蔽板のナイロン66では、比誘電率が3.45の誘電体であり、引張強さが80MPaであり、曲げ弾性率が2.9GPaの樹脂材料である。
なお、遮蔽板の比誘電率は、静電容量方式比誘電率測定装置(製品名;DPS17、DCバイアス;40V、AC振幅電圧;5mV−2Vrms、キーコム(株))を用いて、JlS C2101に基づき測定した。また、遮蔽板の機械特性(引張強さ及び曲げ弾性率)は、万能型引張試験機(製品番;5566、インストロン社)を用いて、JISK7161及びJISK7171に基づいて測定した。
ニッケル皮膜の成膜前後で固体電解質膜と基材の合計重量を測定し、合計重量の差をニッケル成膜の重量と定義した。また、マイクロスコープ(VH−8000(株)キーエンス)により、ニッケル皮膜の外観を観察した。ここで、ニッケル皮膜の重量を測定する際、電解質膜とニッケル基材の合計重量を測定した理由は、ニッケル皮膜を成膜する際、Maxwell−Wagner効果により固体電解質膜の表面にニッケル皮膜が成長し、ニッケル皮膜と電解質膜が密着して、ニッケル皮膜重量を測定することが困難となる可能性が高かったためである。
<実施例2>
実施例1と同じように、ニッケル皮膜を成膜した。実施例1と相違する点は、遮蔽板がMCナイロン(高結晶ナイロン)からなる点である。遮蔽板のMCナイロン(高結晶ナイロン)では、比誘電率が4.25の誘電体であり、引張強さが76MPaであり、曲げ弾性率が2.5GPaの樹脂材料である。
<実施例3>
実施例1と同じように、ニッケル皮膜を成膜した。実施例1と相違する点は、遮蔽板が塩化ビニルからなる点である。遮蔽板の塩化ビニルは、比誘電率が5.4の誘電体であり、引張強さが19MPaであり、曲げ弾性率が2.9GPaの樹脂材料である。
<実施例4>
実施例1と同じように、ニッケル皮膜を成膜した。実施例1と相違する点は、遮蔽板がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)らなる点である。遮蔽板のポリテトラフルオロエチレンでは、比誘電率が4の誘電体であり、引張強さが25MPaであり、曲げ弾性率が0.5GPaの樹脂材料である。
<比較例1>
実施例1と同じように、ニッケル皮膜を成膜した。実施例1と相違する点は、遮蔽板を設けなかった点である。
<比較例2>
実施例1と同じように、ニッケル皮膜を成膜した。実施例1と相違する点は、遮蔽板がステンレス鋼(SUS304)からなる点である。遮蔽板のステンレス鋼では、比誘電率が1であり、引張強さが520MPaであり、曲げ弾性率が197GPaの金属材料である。
<比較例3>
実施例1と同じように、ニッケル皮膜を成膜した。実施例1と相違する点は、遮蔽板がフェノール樹脂からなる点である。遮蔽板のフェノール樹脂では、比誘電率が7.5の誘電体であり、引張強さが5MPaであり、曲げ弾性率が8GPaの樹脂材料である。したがって、比較例3では、フェノール樹脂の比誘電率および引張強さが、本発明の範囲から外れている。
<比較例4>
実施例1と同じように、ニッケル皮膜を成膜した。実施例1と相違する点は、遮蔽板がシリコーン樹脂からなる点である。遮蔽板のシリコーン樹脂では、比誘電率が5の誘電体であり、引張強さが120MPaであり、曲げ弾性率が13GPaの樹脂材料である。したがって、比較例4では、シリコーン樹脂の引張強さが、本発明の範囲を超えている。
<比較例5>
実施例1と同じように、ニッケル皮膜を成膜した。実施例1と相違する点は、遮蔽板がウレタンゴムからなる点である。遮蔽板のウレタンゴムでは、比誘電率が7の誘電体であり、引張強さが60MPaであり、曲げ弾性率が10GPaの樹脂材料である。したがって、比較例5では、ウレタンゴムの比誘電率が、本発明の範囲を超えている。
(成膜時の電圧変化の測定とその結果)
実施例1〜4および比較例1〜5の成膜装置で成膜した際に、陽極と基材との間の電圧変化を測定した。この結果を、図4〜図8に示す。図4(a)、(b)は、実施例1、2に係る陽極と基材との間の電圧変化を示したグラフであり、図5(a)、(b)は、実施例3、4に係る陽極と基材との間の電圧変化を示したグラフである。図6(a)、(b)は、比較例1、2に係る陽極と基材との間の電圧変化を示したグラフである。図7は、比較例3に係る陽極と基材との間の電圧変化を示したグラフである。図8(a)、(b)は、比較例4、5に係る陽極と基材との間の電圧変化を示したグラフである。なお、成膜されたニッケル皮膜を、上述したマイクロスコープで観察した。
比較例1の遮蔽板がない場合には、図6(a)に示すように、電圧が一定の方形波となり、固体電解質膜側に水酸化ニッケルが、陰極(基材)側にニッケル皮膜が形成されるが、均一な成膜とはならなかった。
比較例2の遮蔽板の材質が導体(ステンレス鋼)である場合には、図6(b)に示すように、電位は電圧印加から時間と共に増加し、極大値をとってから二段階のプラトー領域を経て、カットオフされた。遮蔽板の貫通孔形状には、ニッケル皮膜が成膜されないことがわかった。これは、比較例2の場合には、導体(金属)を材質とした遮蔽板を使用したので、静電誘導および電気のチャージアップが発生したことによると考えられる。
一方、遮蔽板の材質が誘電体(絶縁体)として、ナイロン66(実施例1)、MCナイロン(実施例2)、塩化ビニル(実施例3)、ポリテトラフルオロエチレン(実施例4)、および、フェノール樹脂(比較例3)を使用した場合、成膜されたニッケル皮膜を観察すると、遮蔽板の貫通孔の形状に応じて、膜厚の厚いニッケル皮膜が形成されており、成膜時に、ニッケルイオンが貫通孔に収束したと考えられる。
しかしながら、遮蔽板の材質が誘電体(絶縁体)であっても、遮蔽板の材質にシリコーン樹脂(比較例4)およびウレタンゴム(比較例5)を使用した場合には、遮蔽板の貫通孔の形状に応じて、膜厚の厚いニッケル皮膜が形成されず、成膜時に、ニッケルイオンが貫通孔に収束しなかったと考えられる。
また、図4、図5、図7から、遮蔽板の貫通孔形状にニッケルイオンを収束できた誘電体(絶縁体)のうち、ナイロン66(実施例1)、MCナイロン(実施例2)、ポリテトラフルオロエチレン(実施例4)、およびフェノール樹脂(比較例3)においては、電圧は電圧印加から時間と共に増加して、極大値をとってから緩やか減少し、プラトー領域を経て、カットオフされていた。一方、塩化ビニル(実施例3)においては、電圧は時間とともに増加して、極大値をとってから急激に増加し、10Vに達してからプラトー領域(80秒から140秒の間)なり、140秒から二つの極大値をとって減少し、カットオフされることがわかった。
このように、誘電体(絶縁体)を材質とした遮蔽板を使用すると、ある条件では、遮蔽板の貫通孔形状にニッケルイオンを収束することが可能になることがわかった。一方、金属(導体)を材質とした遮蔽板を使用すると、ニッケルイオンを収束することができないことがわかった。
なお、図7に、フェノール樹脂からなる遮蔽板を使用した時間−電圧曲線における各時間毎の現象を説明する。上述したニッケル皮膜の成膜は定電流方式により、陽極及び基材(陰極)に小さな電圧を印加し、そのあとニッケル皮膜の成膜に必要な値まで電圧を増加し、ニッケル皮膜の成膜を実施した。そのときに発生する現象は図7に記載した(1)→(2)→(3)→(4)のように進む。
図7に示す電圧波形(1)のように、陽極及び基材(陰極)間に小さな電圧を印加すると、金属溶液中に含まれるイオンの瞬間移動が起き、短時間で各界面に電荷が蓄積する。
次に、電圧波形(2)のように、電圧をさらに上げていくと、電気的性質の異なる相が接する界面の電気エネルギーが十分な値となり、電気二重層と界面分極が形成される(電気二重層を充電する非ファラデー電流が流れる)。
次に、電圧波形(3)のように、金属溶液が陽極に電子を供与し、基材(陰極)から電子を受容して、電解反応が開始する。電解反応が進むと、陽極付近の金属溶液は正電荷が増加し(負電荷が減少し)、基材(陰極)付近の溶液は負電荷が増加(正電荷が減少)する(電子授受律速のファラデー電流が流れる)。
次に、電圧波形(4)のように、過剰の電荷を打ち消し、電気的中性を形成するため、固体電解質膜及び金属溶液中のアニオンは陽極に、金属溶液中のカチオンは基材(陰極)に向かい、陽極からニッケルイオンが溶解し、基材(陰極)にニッケルイオンが輸送され、基材(陰極)の表面にニッケル皮膜が成膜される(拡散律速のファラデー電流が流れる)。このとき、界面分極が発生するため、ニッケルを基材(陰極)に収束することが可能になる。そのため、均一なニッケルイオンを収束させるためには、(4)ニッケル皮膜の成膜における電圧をプラトーにする材質の遮蔽板を選択すればよいことが考えられる。
ここで、金属溶液の液圧により、固体電解質膜を基材に押圧する液圧方式では、成膜時に、陽極と固体電解質膜との間に金属溶液が配置された状態で、固体電解質膜を基材に接触させる。この状態で、陽極と基材(陰極)との間に電圧を印加すると、金属溶液に含まれるニッケルイオンが陽極側から陰極側(基材側)に向かって移動し固体電解質膜の内部に含有され、さらにこのニッケルイオンを固体電解質膜の陰極側に析出させることができる。この成膜時においても、パスカルの原理により、固体電解質膜は、加圧された溶液の液圧により基材表面を均一に加圧するため、均一な膜厚のニッケル皮膜を基材の表面に成膜することができる。
さらに、固体電解質膜と金属溶液の界面に貫通孔が形成された遮蔽板を配置した。液圧方式では、固体電解質膜を基材(陰極)に接触させたときに、金属溶液を加圧することにより、金属溶液の液圧で固体電解質膜を介して基材(陰極)を加圧しながら、ニッケル皮膜の成膜を行った。このため、成膜中の固体電解質膜及び遮蔽板は加圧により変形し、静電場により誘電分極する。そこで、ニッケル皮膜重量に依存する遮蔽板の物性(機械及び電気)を調査した。
図9は、実施例1〜4および比較例2、3における遮蔽板の比誘電率とニッケル皮膜重量の関係を示したグラフである。図10は、実施例1〜4および比較例2、3における遮蔽板の引張り強さとニッケル皮膜重量の関係を示したグラフである。さらに、図11は、実施例1〜4および比較例2、3における遮蔽板の曲げ弾性率とニッケル皮膜重量の関係を示したグラフである。
図9から、比誘電率が2.0〜5.4の範囲において、ニッケル皮膜重量が極大値となることが分かった。図10から、引張り強さが19〜80MPaの範囲においてニッケル皮膜重量の極大値があることがわかった。図11から曲げ弾性率が50GPa以下の範囲でニッケル皮膜重量が大きくなることわかった。
遮蔽板の比誘電率において、最適範囲が存在する理由は、成膜中において電気的性質の異なる相が接する界面に電荷がたまる界面分極(Maxwe11−Wagner効果)が発生するためと推定できる。遮蔽板の比誘電率が2.0未満である場合、5.4を超えた場合には、このような効果が得られない。比較例2のように、金属製の遮蔽板を使用すると、ニッケルイオンを収束ができなかったことは、遮蔽板表面では静電誘導が生じ(誘電分極が生じず)、界面分極(Maxwell−Wagner効果)が発生しないことによる。
ここで、遮蔽板の引張り強さが19MPa未満である場合、基材(陰極)を固体電解質膜で加圧の際、貫通孔が変形し、ニッケルイオンが収束し難くなると考えらえる。一方、遮蔽板の引張り強さが80MPaを超えた場合、基材(陰極)を固体電解質膜で加圧の際、遮蔽板が固体電解質膜の変形に追従できず、ニッケルイオンが収束し難くなるからであると考えられる。
また、遮蔽板の曲げ弾性率が50GPaを超えた場合にも、成膜中に固体電解質膜が変形する際、遮蔽板が固体電解質膜の変形に追従できず、ニッケルイオンが収束し難くなるからであると考えられる。
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
1:成膜装置、11:陽極、13:固体電解質膜、14:遮蔽板、14c:貫通孔、15:溶液収容部、16:電源部、L:金属溶液、W:基材

Claims (1)

  1. 陽極と、
    前記陽極と陰極となる基材との間に配置される固体電解質膜と、
    前記陽極と前記固体電解質膜との間において、前記陽極と前記固体電解質膜に金属イオンを含む金属溶液が接触するように、前記金属溶液を収容する溶液収容部と、
    前記陽極と前記基材との間に電圧を印加する電源部とを、備えた金属皮膜の成膜装置であって、
    前記溶液収容部は、収容された前記金属溶液を、前記固体電解質膜に加圧するものであり、
    前記溶液収容部の内部には、前記固体電解質膜を覆うように前記固体電解質膜に隣接し、かつ、複数の貫通孔が形成された遮蔽板が配置されており、
    前記遮蔽板は、比誘電率が2.0〜5.4の誘電体であり、引張強さが、19〜80MPaであり、曲げ弾性率が50GPa以下の樹脂材料からなることを特徴とする金属皮膜の成膜装置。
JP2017181368A 2017-09-21 2017-09-21 金属皮膜の成膜装置 Active JP6806014B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017181368A JP6806014B2 (ja) 2017-09-21 2017-09-21 金属皮膜の成膜装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017181368A JP6806014B2 (ja) 2017-09-21 2017-09-21 金属皮膜の成膜装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019056142A true JP2019056142A (ja) 2019-04-11
JP6806014B2 JP6806014B2 (ja) 2020-12-23

Family

ID=66107040

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017181368A Active JP6806014B2 (ja) 2017-09-21 2017-09-21 金属皮膜の成膜装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6806014B2 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016108586A (ja) * 2014-12-03 2016-06-20 トヨタ自動車株式会社 表面処理方法および表面処理装置
JP2016125087A (ja) * 2014-12-26 2016-07-11 トヨタ自動車株式会社 金属皮膜の成膜装置およびその成膜方法
JP2017101300A (ja) * 2015-12-03 2017-06-08 トヨタ自動車株式会社 配線基板の製造方法
JP2017125251A (ja) * 2016-01-15 2017-07-20 株式会社豊田中央研究所 電気めっきセル、及び金属皮膜の製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016108586A (ja) * 2014-12-03 2016-06-20 トヨタ自動車株式会社 表面処理方法および表面処理装置
JP2016125087A (ja) * 2014-12-26 2016-07-11 トヨタ自動車株式会社 金属皮膜の成膜装置およびその成膜方法
JP2017101300A (ja) * 2015-12-03 2017-06-08 トヨタ自動車株式会社 配線基板の製造方法
JP2017125251A (ja) * 2016-01-15 2017-07-20 株式会社豊田中央研究所 電気めっきセル、及び金属皮膜の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6806014B2 (ja) 2020-12-23

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Zhang et al. CrN/Cr multilayer coating on 316L stainless steel as bipolar plates for proton exchange membrane fuel cells
EP2818585A1 (en) Film formation device and film formation method for forming metal film
JP6819531B2 (ja) 金属皮膜の成膜方法および金属皮膜の成膜装置
Hu et al. The effect of duty cycle and bias voltage for graphite-like carbon film coated 304 stainless steel as metallic bipolar plate
Fan et al. Enhancing through-plane electrical conductivity by introducing Au microdots onto TiN coated metal bipolar plates of PEMFCs
Mendizabal et al. TaNX coatings deposited by HPPMS on SS316L bipolar plates for polymer electrolyte membrane fuel cells: Correlation between corrosion current, contact resistance and barrier oxide film formation
KR20090130181A (ko) 연료 전지용 금속 세퍼레이터 및 그 제조 방법
WO2015074752A1 (en) Graphene based composition and graphene based coatings for electrochemical devices
CN102439797B (zh) 接触件制造用组成物及使用有该组成物的接触件和连接器
CN105970277B (zh) 用于形成金属涂层的涂层形成装置和涂层形成方法
Kellenberger et al. Electrochemical evaluation of niobium corrosion resistance in simulated anodic PEM electrolyzer environment
JP7310599B2 (ja) 配線基板の製造方法および配線基板
JP6806014B2 (ja) 金属皮膜の成膜装置
JP7027874B2 (ja) 燃料電池用セパレータ及びその製造方法
CN109785996B (zh) 一种金属复合线材及其制备方法
Kameneva et al. Effect of structure, phase, and elemental composition of AlN, CrAlN, and ZrAlN coatings on their electrochemical behavior in 3% NaCl solution
Al Soud et al. Analysis of the various effects of coating W tips with dielectric epoxylite 478 resin or UPR-4 resin coatings under similar operational conditions
JP2018070980A (ja) アルミニウム部材、および、アルミニウム部材の製造方法
US3729389A (en) Method of electroplating discrete conductive regions
JP7006472B2 (ja) ニッケル皮膜の成膜方法
JP2014122377A (ja) 金属被膜の成膜装置および成膜方法
Feng et al. Effect of Magnetic Field on Corrosion Behaviors of Gold-Coated Titanium as Cathode Plates for Proton Exchange Membrane Fuel Cells
CN110391432B (zh) 燃料电池隔离件
WO2024111533A1 (ja) 配線基板およびその製造方法
JP2000104014A (ja) 重合皮膜の形成方法と、これを用いた金属材料の絶縁被覆方法および絶縁被覆金属導体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200128

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20201009

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20201104

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20201117

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6806014

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151