JP2019055943A - 5−アミノレブリン酸を含むエビ目用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】エビ目生物の飼育、養殖において有用な、エビ目用経口投与組成物および組成物を摂取させることを含む方法の提供。【解決手段】5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目用経口投与組成物。本エビ目用経口投与組成物は、エビ目の飼育、養殖に使用されることが可能であり、Vibrioparahaemolyticusを原因菌とする、EMS/AHPND(早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死病)を有効に予防および治療することが可能である。また、本エビ目用経口投与組成物を所定の量で投与することにより、エビ目の成長を促進させることが可能である。【選択図】図1
Description
本発明は、5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目用経口投与組成物、飼料および飼料用添加剤に関し、より詳細には、5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死病(EMS/AHPND)の予防・治療用経口投与組成物に関する。また、本発明は5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をエビ目の生物に摂取させることを含む方法に関し、より詳細には、5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をエビ目の生物に摂取させることを含む、エビ目早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死病(EMS/AHPND)を予防・治療する方法に関する。
世界のエビの生産量は、平成4(1992)年の301万トンから平成24(2012)年の768万トンへと急増している。このうち養殖による生産量の割合をみると、平成4(1992)年の30%から平成24(2012)年は生産量の過半数を超えて56%になるなど、近年のエビの養殖の発展には目を見張るものがある(非特許文献1)。エビの養殖においては、天然の環境とは異なり、一般的に高密度で飼育され、過剰なストレスがかかるなどの理由から、エビの養殖場において様々な病気の発生が認められてきた。養殖水産動植物の生存率は養殖経営に大きく影響するため、養殖業においては病気への適切な対応が求められている。
近年、稚エビに発生し、死亡率がほぼ100%となるEMS(Early Mortality Syndrome:早期死亡症候群)と呼ばれるエビの疾病により、一部の国においてエビ養殖業は危機的な状況に直面している。この疾病は2009年に中国で最初に報告され、次いでベトナム、タイ、マレーシア等の東南アジアにも広がってきており、2013年にはメキシコでの発生が報告されている。EMSにおいては、エビの肝膵臓に変色等の症状が現れ、壊死してしまうので、この早期死亡症候群は、EMS/AHPND(Acute Hepatopancreatic Necrosis Disease:急性肝膵臓壊死病)とも呼ばれている。そして、このEMS/AHPNDは特殊なタイプの腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)の感染によるものであることも知られている(非特許文献2)。
エビにおけるビブリオ感染に対してワクチンを使用するという方法が開発されている(特許文献1)。しかし、この特許文献1には、対象菌として腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)が示唆されているものの、具体的に腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)に対するワクチンを製造したことは開示されておらず、ましてやこのワクチン療法がEMS/AHPNDを予防・治療するのに有効であるかは全く不明である。さらに、特殊なワクチンよりも安価かつ簡単に入手できる物質によってEMS/AHPNDを予防・治療する方法があれば、その方が望ましいのは明らかである。また、EMS/AHPNDの予防・治療以外にもエビの養殖において有利な効果をもたらすような物質があればさらに望ましい。
5−ALAは、細胞のミトコンドリアに存在し、動物においてはミトコンドリアで生合成され、鉄分と結びついてヘムやシトクロムの原料となるなど代謝に必須の成分であり、植物においては、葉緑体で生合成され、マグネシウムと結びついてクロロフィルとなり光合成に必須の成分であることが知られている。そして、特許文献2には5−ALAリン酸塩の製造方法が開示されており、さらに5−ALA塩酸塩の合成方法がすでに知られていたことも記載されている。また、微生物による5−ALAの製造方法も知られている(特許文献3)。
特許文献4には、5−ALAを有効成分として含有する魚類病原性微生物の感染予防および治療用組成物が記載されており、さらに前記魚類病原性微生物として、エドワードジエラタルダ細菌(Edwardsiella tarda)、ストレプトコッカス属細菌(Streptococcus sp.)スタフィロコッカス属細菌(Staphylococcus sp.)、スタフィロコッカスエピデルミディス細菌(Staphilococcus epidermidis)、シュードモナス属細菌(Pseudomonas sp.)、またはビブリオアングイラルム細菌(Vibrio anguillarum)が記載されている。しかし、特許文献4においては、エビ目の生物に対する5−ALAの影響については何ら検討されていない。さらに、特許文献4に記載されているビブリオアングイラルム(Vibrio anguillarum)はエビ目のEMS/AHPNDの原因菌である腸炎ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus)とは異なるため、エビ目の生物においてEMS/AHPNDを生じさせない。よって、特許文献4の記載からは、エビ目の生物における5−ALAによるEMS/AHPND予防・治療効果は何ら予想できない。また、5−ALAがエビ目の生物の成長を促進させることは知られていない。
平成25年度水産白書、(6)世界の養殖業の生産状況
Mohammad Jalil Zorriehzahra, Reza Banaederakhshan; Early Mortality Syndrome (EMS) as new Emerging Threat in Shrimp Industry; Advances in Animal and Veterinary Sciences, March 2015, Volume 3, Special issue 2, Pages 64-72
従って、クルマエビ科をはじめとするエビ目の生物の飼育、養殖において有用な、特に、EMS/AHPNDを予防・治療できるエビ目用経口投与組成物の開発が長年の間強く求められていた。また、エビ目の生物のEMS/AHPNDを予防・治療できるだけでなく、その成長を促進させることもできるエビ目用経口投与組成物の開発も求められていた。しかし、このようなエビ目用経口投与組成物は実現されていなかった。
本発明者らは、上記問題点を解決できるようなエビ目用経口投与組成物について鋭意検討を行ったところ、5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を含む組成物が極めて有用であることを見いだし、これに基づいて本発明を完成するに至った。
本発明者らは、上記問題点を解決できるようなエビ目用経口投与組成物について鋭意検討を行ったところ、5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を含む組成物が極めて有用であることを見いだし、これに基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目用経口投与組成物。
[2]5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死病(EMS/AHPND)の予防・治療用経口投与組成物。
[3]エビ目がクルマエビ科である前記[1]または[2]に記載の組成物。
[4]組成物が飼料または飼料用添加剤である前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の組成物。
[5]5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をエビ目の生物に摂取させることを含む方法。
[6]5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をエビ目の生物に摂取させることを含む、エビ目早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死病(EMS/AHPND)を予防・治療する方法。
[7]エビ目がクルマエビ科である前記[5]または[6]に記載の方法。
[8]5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を、5−ALAリン酸塩換算でエビ目の生物の体重1gあたりかつ一日あたりで、0.25μg/g・日〜2.5μg/g・日の量で、エビ目の生物に摂取させることを含む、エビ目の生物の成長を促進させる方法。
[1]5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目用経口投与組成物。
[2]5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死病(EMS/AHPND)の予防・治療用経口投与組成物。
[3]エビ目がクルマエビ科である前記[1]または[2]に記載の組成物。
[4]組成物が飼料または飼料用添加剤である前記[1]〜[3]のいずれか1つに記載の組成物。
[5]5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をエビ目の生物に摂取させることを含む方法。
[6]5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をエビ目の生物に摂取させることを含む、エビ目早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死病(EMS/AHPND)を予防・治療する方法。
[7]エビ目がクルマエビ科である前記[5]または[6]に記載の方法。
[8]5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を、5−ALAリン酸塩換算でエビ目の生物の体重1gあたりかつ一日あたりで、0.25μg/g・日〜2.5μg/g・日の量で、エビ目の生物に摂取させることを含む、エビ目の生物の成長を促進させる方法。
本発明の5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目用経口投与組成物は、エビ目の生物の飼育、養殖において、エビ目EMS/AHPNDを予防・治療できるという効果をもたらしうる。その結果、従来であれば死亡率がほぼ100%となるEMS/AHPNDを予防・治療でき、エビ目の生物の飼育、養殖における経済的な寄与をもたらしうる。また、本発明のエビ目用経口投与組成物は、所定の投与量でエビ目の生物に投与した場合に、成長を促進させるという有利な効果をもたらす。この有利な効果は、従来知られていなかった効果であって、かつエビ目の生物の飼育、養殖の技術分野の当業者が予期していなかった効果である。
本発明の一実施態様は、5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目用経口投与組成物である。
本発明において、5−アミノレブリン酸(5−ALA)はδ−アミノレブリン酸とも称される化合物である。本発明において、「5−ALA若しくはそのエステル」とは、「5−ALA若しくは5−ALAエステル」であり、下記式(I)で表されうる。本発明において、「5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩」の記載における「それらの塩」とは、5−ALAの塩、若しくは5−ALAエステルの塩をいう。この塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、メチルリン酸、エチルリン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の酸付加塩、及びナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明において、5−アミノレブリン酸(5−ALA)はδ−アミノレブリン酸とも称される化合物である。本発明において、「5−ALA若しくはそのエステル」とは、「5−ALA若しくは5−ALAエステル」であり、下記式(I)で表されうる。本発明において、「5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩」の記載における「それらの塩」とは、5−ALAの塩、若しくは5−ALAエステルの塩をいう。この塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、メチルリン酸、エチルリン酸、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の酸付加塩、及びナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩等が挙げられるがこれらに限定されない。
前記式(I)において、R1は、水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。R1が水素の場合には前記式(I)は5−ALAを表す。R1が直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である場合には、前記式(I)は5−ALAエステルを表す。
R1において示される直鎖若しくは分岐状のアルキル基は、好ましくは、炭素数が1〜18のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、3−メチルペンチル基、エチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基、tert−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチルヘプチル基、n−ノニル基、イソノニル基、1−メチルオクチル基、エチルヘプチル基、n−デシル基、1−メチルノニル基、n−ウンデシル基、1,1−ジメチルノニル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などが挙げられるだけでなく、アルキル置換基を有するシクロアルキル基、例えば、炭素数1〜6のアルキル置換基を有するシクロアルキル基、例えば、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、2−メチルシクロオクチル基等も挙げられる。直鎖若しくは分岐状のアルキル基としては、炭素数1〜16のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキサデシル基又は2−エチルヘキシル基が特に好ましい。
R1において示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。当該アリール基は、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、カルボキシ基等の置換基1〜3個によって置換されていてもよい。
R1において示されるアラルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基と炭素数6〜20のアリール基とから構成されるものが好ましい。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、炭素数6〜20のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基のうち、ベンジル基又はフェネチル基が好ましく、ベンジル基が特に好ましい。当該アラルキル基のアリール基は、上記記載の炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、カルボキシ基等の置換基1〜3個によって置換されていてもよい。
本発明においては、5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種が有効成分として使用されればよく、この有効成分は一種だけの使用であってもよいし、またはこの有効成分は複数種類の組み合わせの形態であってもよい。例えば、本発明において使用される有効成分は、5−ALA、5−ALAエステル、5−ALA塩、または5−ALAエステルの塩のいずれであってもよい。また、例えば、5−ALAと5−ALAエステルの塩の組み合わせなどであってもよい。本発明において使用される5−ALA若しくはエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種は精製された状態のものであっても良いし、粗精製された状態のもの、または合成されて得られた混合物の状態のものであっても良い。本発明においては5−ALA塩が有効成分として使用されるのが好ましく、より好ましくは5−ALA塩酸塩および/または5−ALAリン酸塩が有効成分として使用される。
本発明において「エビ目」とは、十脚目(Decapoda)とも称される、甲殻類の分類群の一つであり、エビ・カニ・ヤドカリを含む生物群である。本発明の対象としては、好ましくはエビ目の生物はエビであり、より好ましくは、根鰓亜目(Dendrobranchiata)とも称されるクルマエビ亜目の生物である。より好ましくは、本発明の対象となるエビ目の生物は、クルマエビ亜目のクルマエビ科(Penaeidae)に属する生物である。さらにより好ましくは、本発明の対象となるエビ目の生物は、クルマエビ科のバナメイエビ(Litopenaeus vannamei)、クルマエビ(Marsupenaeus japonicus)、ウシエビ(ブラックタイガー)(Penaeus monodon)、コウライエビ(タイショウエビ)(Fenneropenaeus chinensis)、フトミゾエビ(Melicertus latisulcatus)、ヨシエビ (Metapenaeus ensis)、アカエビ(Metapenaeopsis barbata)、クマエビ(Penaeus semisulcatus)などが挙げられるがこれらに限定されない。また、さらにより好ましくは、本発明の対象となるエビ目の生物はバナメイエビである。また、エビ目EMS/AHPNDが稚エビに発生するという観点から、好ましくは、本発明の対象となるエビ目の生物は稚エビであり、さらにより好ましくは本発明の対象となるエビ目の生物はクルマエビ科の稚エビである。
本発明において、エビ目用経口投与組成物はエビ目の生物に経口投与される組成物であれば特に限定されない。例えば、有効成分である5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を水などの媒体に溶解してエビ目の生物が飼育されている環境に投与するような形態の組成物であってもよい。この場合、投与された環境中の有効成分がエビ目の生物に経口的に摂取されることにより、その効果がもたらされる。
5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をより効率的にエビ目の生物に摂取させるという観点から、本発明の経口投与組成物は、好ましくは、エビ目用飼料もしくはエビ目用飼料添加剤である。エビ目用飼料は通常エビ目の生物の飼育、養殖に使用される成分であれば任意の成分を含んでいて良く、任意の製造方法において製造されたものであっても良い。本発明の飼料においては、従来のエビ用飼料の原材料とほぼ同じものを用いることができ、例えば、一般のエビ用飼料に用いられるイカミール、オキアミミール、ホワイトミール、大豆油かす、コーングルテンミールなどのタンパク質源、グルテン、デンプンなどのバインダー類、その他ビタミン混合物,ミネラル混合物,微量金属を含有するものであっても良いが、これに限定されない。また、本発明のエビ目用飼料は、飼育されるエビ目の生物の種類および大きさなどに応じて任意の形状、大きさであってよい。また、本発明のエビ目用飼料は種々の形態に製造することができる。例えば、本発明のエビ目用飼料は、乾燥原料を混合、粉砕した粉末状飼料、粉体を固形化した固形化飼料、例えばドライペレット、または水分を含んだ固形化飼料、例えば、ペースト状の飼料、もしくはモイストペレットなどであってもよい。例えば、一般の粉末のエビ養殖用飼料と5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種の有効成分とを、任意に混合用の媒体、例えば、水などと共に混合し、この混合物を成形し、例えば、この混合物を50mLのシリンジから押し出し成形して、成形物を乾燥させ、例えば、60〜65℃で2時間程度乾燥させることにより、本発明の5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目用飼料が形成されうる。飼料の形、乾燥の程度などは、投与に不都合がない限りは、特に限定されるものではない。この有効成分の効果をエビ目の生物内で充分に発揮させるという観点から、飼料中に含まれる有効成分(すなわち、飼料中に含まれうる5−ALA、5−ALAエステル、5−ALAの塩、および5−ALAエステルの塩)の合計量が5−ALAリン酸塩換算で、望ましくは1〜100ppm、より望ましくは2〜50ppm、更に望ましくは3〜20ppmである。特に、エビ目の生体の成長を促進させるとの観点からは、飼料中に含まれる有効成分の合計量は5−ALAリン酸塩換算で、望ましくは5〜50ppm、より望ましくは10〜40ppm、更により望ましくは15〜30ppmである。
また、エビ目用経口投与組成物はエビ目用飼料添加剤であってよい。ここでの飼料添加剤とは、通常のエビ目用の飼料に添加できる添加剤であればよく、特に限定されるものではない。例えば、本発明における飼料添加剤は、5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種と、この有効成分をエビ目用飼料に付着させることができる展着剤などを含むものであってよいし、この有効成分をエビ目用飼料に吸収させるような媒体を含むものであってもよいし、またはこの有効成分をエビ目用飼料の原料に混合しやすくするような媒体を含むものであってもよい。本発明の飼料添加剤は、飼料中に含まれる有効成分の合計量が上述の範囲となるように飼料に添加されるのが好ましい。
本発明の別の実施態様は、5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をエビ目の生物に摂取させることを含む方法である。ここでの摂取とは経口的な摂取である。有効成分である5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をエビ目の生物に摂取させることができるのであればその方法は特に限定されない。例えば、エビ目の生物を飼育している環境下に5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を添加して、当該有効成分をエビ目に摂取させる方法がある。しかし、より効率的に有効成分である5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をエビ目に摂取させるという観点から、5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩からから選択される少なくとも一種を含む飼料をエビ目の生物に摂取させるのが好ましい。
本発明の別の実施態様は、所定の量の5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をエビ目の生物に摂取させることを含む、エビ目の生物の成長を促進させる方法である。この実施態様においては、エビ目の生物に摂取させる、有効成分である5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種の合計量は、好ましくは、5−ALAリン酸塩換算でエビ目の生物の体重1gあたりかつ一日あたりで、0.25μg/g・日〜2.5μg/g・日であり、より好ましくは0.5μg/g・日〜2.0μg/g・日であり、更により好ましくは0.75〜1.5μg/g・日である。理論に拘束されるものではないが、本発明のこの実施態様におけるエビ目の生物の成長促進のメカニズムの1つとしては、エビ目の生物の生体内において、摂取した餌からエネルギーを取り出す効率を5−ALAが高めていることが考えられる。
本発明の別の実施態様は5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死病(EMS/AHPND)の予防・治療用経口投与組成物である。また、本発明のさらに別の実施態様は、5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をエビ目の生物に摂取させることを含む、エビ目早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死病(EMS/AHPND)を予防・治療する方法である。本発明における「エビ目早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死病(EMS/AHPND)」の「予防・治療」とは、エビ目の生物の養殖において重大な問題となっている、Vibrio parahaemolyticusを原因菌とする、早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死病(EMS/AHPND)と呼ばれるエビの疾病の予防および/または治療をいう。ここで、予防とは、5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種の投与下で、EMS/AHPNDの発症を抑制すること、すなわち発症を完全に抑制するかまたは発症率を低下させることをいう。また、治療とは、Vibrio parahaemolyticusに感染したか、EMS/AHPNDを発症したエビ目の生物の当該感染およびEMS/AHPNDを治癒させることをいう。本発明のこの実施形態は、有効成分である5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種が、このエビ目のEMS/AHPNDを予防および/又は治療できるという有利な効果を奏するものである。この効果は、実施例において、原因菌の攻撃後の死亡率の低減という形で明確に示されている。有効成分である5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種によりもたらされるこの有利な効果は従来知られていなかった効果であって、エビ目の飼育、養殖の技術分野の当業者が予期していなかった効果である。エビ目EMS/AHPNDの予防・治療においては、エビ目の生物に摂取させる、有効成分である5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種の合計量は、5−ALAリン酸塩換算でエビ目の生物の体重1gあたりかつ一日あたりで、好ましくは0.05μg/g・日〜5μg/g・日であり、より好ましくは0.1μg/g・日〜2.5μg/g・日であり、更により好ましくは0.15〜1μg/g・日である。
本発明が適用されるエビ目の生物が飼育、養殖されている環境は特に限定されず、東南アジア等で大規模に行われている池での養殖にも本発明は適用可能であるし、また水槽などでの小規模での飼育においても本発明は適用可能である。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。
実施例1:5−ALAを含む飼料の作成
5−ALAリン酸塩(C5H9NO3・H3PO4)が濃度15ppmとなるように、粉末飼料(タイ国でバナメイエビの養殖のために使用されている一般的な市販餌を粉末化して使用した)と良く混合し、粉末飼料と等量の蒸留水を添加し良く混合した。次いで、得られた混合物を50mLのシリンジに詰め、押し出すことによりスパゲッティー状の成型飼料を作成した。これを60〜65℃で2時間程度乾燥した。乾燥後、投与しやすいようにスパゲッティー状の成型飼料小さく粉砕してペレット状にした。このペレットは使用まで冷蔵庫で保管した。
5−ALAリン酸塩(C5H9NO3・H3PO4)が濃度15ppmとなるように、粉末飼料(タイ国でバナメイエビの養殖のために使用されている一般的な市販餌を粉末化して使用した)と良く混合し、粉末飼料と等量の蒸留水を添加し良く混合した。次いで、得られた混合物を50mLのシリンジに詰め、押し出すことによりスパゲッティー状の成型飼料を作成した。これを60〜65℃で2時間程度乾燥した。乾燥後、投与しやすいようにスパゲッティー状の成型飼料小さく粉砕してペレット状にした。このペレットは使用まで冷蔵庫で保管した。
実施例2:Vibrio parahaemolyticusによる攻撃を受けたバナメイエビの生存率に対して5−ALAが及ぼす影響
体重約2gのバナメイエビを使用した。一群あたり20匹のバナメイエビを100Lの水槽に入れ、28日間飼育を行った。5−ALA投薬群においては実施例1で作成した飼料を投与し、対照群においては5−ALAを含まない以外は同じ飼料を投与した。給餌量はエビの体重の5%とし、給餌は1日に4回で、自動給餌器を使用して行った。
試験開始から2週間目に、バナメイエビをVibrio parahaemolyticusを3×105cfu/mlの量で含む海水を入れた15L水槽に移し、バナメイエビに対するVibrio parahaemolyticusの感染処理を行った。感染処理からさらに2週間にわたってバナメイエビの生存率を確認した。結果を図1に示す。図1においては、「Control」が対照群を表し、「ALA」が5−ALA投薬群を表す。
体重約2gのバナメイエビを使用した。一群あたり20匹のバナメイエビを100Lの水槽に入れ、28日間飼育を行った。5−ALA投薬群においては実施例1で作成した飼料を投与し、対照群においては5−ALAを含まない以外は同じ飼料を投与した。給餌量はエビの体重の5%とし、給餌は1日に4回で、自動給餌器を使用して行った。
試験開始から2週間目に、バナメイエビをVibrio parahaemolyticusを3×105cfu/mlの量で含む海水を入れた15L水槽に移し、バナメイエビに対するVibrio parahaemolyticusの感染処理を行った。感染処理からさらに2週間にわたってバナメイエビの生存率を確認した。結果を図1に示す。図1においては、「Control」が対照群を表し、「ALA」が5−ALA投薬群を表す。
図1に示されるように、5−ALAを投与していない対照群においては感染後7日目から生存率の顕著な低下を示し、感染後13日目には全てのバナメイエビが死亡した。一方、5−ALAをあらかじめ投与していた投薬群においては、観察期間中、わずか1匹が死亡しただけであり、対照群に対して有意な生存率(p値<0.0001)を示した。よって、5−ALAはエビ目の生物において、Vibrio parahaemolyticusを原因菌とする、EMS/AHPNDに対して有効な予防・治療薬であることが明らかとなった。なお、実際のエビ養殖場でEMS/AHPNDが発生すると、ほぼ100%のエビが死亡するので、実施例2の実験条件は実際のエビ養殖場でのEMS/AHPND発生をシミュレートするものであると考えられる。よって、5−ALAは実際のエビ養殖場でのEMS/AHPNDの予防・治療に有効であると推察される。
実施例3:以下の試験で使用されたバナメイエビの飼育条件
平均体重0.84±0.33グラムのバナメイエビ400匹を、100匹ずつ以下の4群に分け、各群ごとに別の水槽で飼育した。飼育開始時、飼育開始から2週目および3ヶ月目に、以下に示される様々な項目を測定した。
(a)15ppmの5−ALAを含む飼料を投与した、15ppmの5−ALA投与群。
(b)30ppmの5−ALAを含む飼料を投与した、30ppmの5−ALA投与群。
(c)60ppmの5−ALAを含む飼料を投与した、60ppmの5−ALA投与群。
(d)5−ALAを含まない飼料を投与した対照群。
バナメイエビへの一日あたりの給餌量はバナメイエビの平均体重の5%とした。一日あたりの給餌量を4回(8:00、13:00、18:00および23:00)に分けて、バナメイエビに飼料が与えられた。一週間ごとに、各群のバナメイエビ全体の重量を測定することにより、バナメイエビの体重をモニターし、測定した体重に基づいて一日当たりの給餌量を調節した。食べ残した飼料および排泄物は一日一回取り除かれた。飼育中は水質パラメータもモニターされた。
平均体重0.84±0.33グラムのバナメイエビ400匹を、100匹ずつ以下の4群に分け、各群ごとに別の水槽で飼育した。飼育開始時、飼育開始から2週目および3ヶ月目に、以下に示される様々な項目を測定した。
(a)15ppmの5−ALAを含む飼料を投与した、15ppmの5−ALA投与群。
(b)30ppmの5−ALAを含む飼料を投与した、30ppmの5−ALA投与群。
(c)60ppmの5−ALAを含む飼料を投与した、60ppmの5−ALA投与群。
(d)5−ALAを含まない飼料を投与した対照群。
バナメイエビへの一日あたりの給餌量はバナメイエビの平均体重の5%とした。一日あたりの給餌量を4回(8:00、13:00、18:00および23:00)に分けて、バナメイエビに飼料が与えられた。一週間ごとに、各群のバナメイエビ全体の重量を測定することにより、バナメイエビの体重をモニターし、測定した体重に基づいて一日当たりの給餌量を調節した。食べ残した飼料および排泄物は一日一回取り除かれた。飼育中は水質パラメータもモニターされた。
15ppmの5−ALAを含む飼料は以下のように作成された。150mgの1%5−ALA粉体(5−ALAリン酸塩(C5H9NO3・H3PO4)含有)を100mlの水に溶解し、得られた溶液が100グラムのエビ用粉末飼料(タイ国でバナメイエビの養殖のために使用されている一般的な市販餌を粉末化して使用した)と良く混合され、飼料混合物を得た。次いで、マッシャーを用いて、飼料混合物がペレットにされた。このペレットをインキュベータ内で60〜65℃で2〜3時間程度乾燥させて、15ppmの5−ALAを含む飼料を得た。この飼料は使用まで冷蔵庫内で4℃で保管した。30ppmの5−ALAを含む飼料および60ppmの5−ALAを含む飼料は、添加された1%5−ALA粉体の量がそれぞれ300mgおよび600mgであったこと以外は、15ppmの5−ALAを含む飼料の製造方法と同じ方法で製造された。対照群に使用された5−ALAを含まない飼料は、1%5−ALA粉体が添加されなかったこと以外は、15ppmの5−ALAを含む飼料の製造方法と同じ方法で製造された。
実施例4:バナメイエビの成長に対する5−ALAの影響
実施例3に記載された条件下でのバナメイエビの飼育において、3ヶ月の飼育期間での体重増加を測定することにより、5−ALAによるバナメイエビの成長に及ぼす影響を検討した。飼育開始時および飼育開始から3ヶ月目に、各群のバナメイエビの個々の体重が測定された。結果が以下の表1に示される。表中、当初体重は飼育開始時(0日目)の体重であり、最終体重は3ヶ月目の体重であり、体重増加は最終体重−当初体重であり、SGRは瞬間成長率(Specific Growth Rate)(%)であって、SGR=[(ln最終重量−ln当初重量)/給餌日数]×100の式から算出したものであり、FCRは飼料要求率(Feed Conversion Rate)であって、FCR=飼料消費/体重増加である。表中の当初体重、最終体重、体重増加、およびSGRの数値は平均±標準偏差(mean±SD)である。表中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。
実施例3に記載された条件下でのバナメイエビの飼育において、3ヶ月の飼育期間での体重増加を測定することにより、5−ALAによるバナメイエビの成長に及ぼす影響を検討した。飼育開始時および飼育開始から3ヶ月目に、各群のバナメイエビの個々の体重が測定された。結果が以下の表1に示される。表中、当初体重は飼育開始時(0日目)の体重であり、最終体重は3ヶ月目の体重であり、体重増加は最終体重−当初体重であり、SGRは瞬間成長率(Specific Growth Rate)(%)であって、SGR=[(ln最終重量−ln当初重量)/給餌日数]×100の式から算出したものであり、FCRは飼料要求率(Feed Conversion Rate)であって、FCR=飼料消費/体重増加である。表中の当初体重、最終体重、体重増加、およびSGRの数値は平均±標準偏差(mean±SD)である。表中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。
表1に示されるように、15ppmの5−ALA投与群および30ppmの5−ALA投与群においては、対照群と比較して体重増加および瞬間成長率(SGR)が大きかった。このことから、バナメイエビへの15ppmの5−ALA投与および30ppmの5−ALA投与はバナメイエビの成長を促進させることが明らかとなった。また、15ppmの5−ALA投与群および30ppmの5−ALA投与群においては、対照群と比較して飼料要求率(FCR)が若干低下していた。このことから、理論に拘束されるものではないが、15ppmの5−ALA投与群および30ppmの5−ALA投与群における5−ALAによるバナメイエビの成長促進の原因の1つが、バナメイエビ生体内での5−ALAによる飼料からのエネルギー取り出し効率の向上である可能性が推察される。
また、3ヶ月間の飼育期間中のバナメイエビの脱皮の頻度が測定され、その脱皮の累積的頻度が図2に示される。図2中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。図2においては、脱皮の累積的頻度が最も高かった30ppmの5−ALA投与群の12週目における脱皮の累積的頻度を100%として各群の脱皮の累積的頻度を表している。図2に示されるように、脱皮の累積的頻度は30ppmの5−ALA投与群において最も高く、次いで15ppmの5−ALA投与群であり、脱皮の頻度が最も低かったのは対照群であった。エビは成長に伴って脱皮するので、30ppmおよび15ppmの5−ALA投与による脱皮の累積的頻度の向上も、5−ALA投与によるバナメイエビの成長促進を示していると推察される。
実施例5:肝膵臓のATPレベルに対する5−ALAの影響
飼育開始から2週間目に、バナメイエビの肝膵臓におけるATPレベルを測定した。このATPレベルの測定は、一群あたり3匹のバナメイエビについて行われた。ATP濃度測定用サンプルは以下のように調製された。それぞれのバナメイエビから約10mgの肝膵臓が採取された。採取した肝膵臓がリン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)で洗浄された。洗浄された肝膵臓は氷冷した2Nの過塩素酸(PCA)100μl中でホモジナイズされ、ホモジネートが氷上に30分間保持され、次いで13000×g、4℃で、2分間遠心分離されて、上清を得た。この上清がATPアッセイバッファーで500μlに希釈された。次いで、希釈された上清に50〜100μlの氷冷KOH(2M)が添加されて、過剰なPCAを沈殿させた。必要に応じて、この上清に0.1MのKOHまたはPCAが添加されて、pHが調整された。得られたサンプルは、次いで、13000×gで15分間遠心分離され、上清が回収され、ATP濃度測定用サンプルとして使用された。ATP濃度測定には、ATP比色分析キット(カタログ番号:ab83355:アブカム(Abcam)(登録商標)、ケンブリッジ、マサチューセッツ州、米国)が使用された。ATP濃度の測定は、当該キットの製造者の指示に従って行われた。結果が図3に示される。図3中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。
飼育開始から2週間目に、バナメイエビの肝膵臓におけるATPレベルを測定した。このATPレベルの測定は、一群あたり3匹のバナメイエビについて行われた。ATP濃度測定用サンプルは以下のように調製された。それぞれのバナメイエビから約10mgの肝膵臓が採取された。採取した肝膵臓がリン酸緩衝生理食塩水(1×PBS)で洗浄された。洗浄された肝膵臓は氷冷した2Nの過塩素酸(PCA)100μl中でホモジナイズされ、ホモジネートが氷上に30分間保持され、次いで13000×g、4℃で、2分間遠心分離されて、上清を得た。この上清がATPアッセイバッファーで500μlに希釈された。次いで、希釈された上清に50〜100μlの氷冷KOH(2M)が添加されて、過剰なPCAを沈殿させた。必要に応じて、この上清に0.1MのKOHまたはPCAが添加されて、pHが調整された。得られたサンプルは、次いで、13000×gで15分間遠心分離され、上清が回収され、ATP濃度測定用サンプルとして使用された。ATP濃度測定には、ATP比色分析キット(カタログ番号:ab83355:アブカム(Abcam)(登録商標)、ケンブリッジ、マサチューセッツ州、米国)が使用された。ATP濃度の測定は、当該キットの製造者の指示に従って行われた。結果が図3に示される。図3中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。
図3に示されるように、バナメイエビの肝膵臓におけるATPレベルは対照群と比べて、全ての5−ALA投与群において高かった。バナメイエビの肝膵臓におけるATPレベルは5−ALAの用量依存的に増大していた。30ppmおよび60ppmの5−ALA投与群においては、対照群に対するATPレベルの上昇について統計的に有意差が認められた。有意差検定はt検定法を用い、図3におけるアスタリスクはp<0.05を表す。60ppmの5−ALA投与群においては、ATPレベルの上昇と体重増加は相関していなかった。理論に拘束されるものではないが、これは過剰な5−ALAにより電子伝達系が過剰に活性化され、電子伝達系へ還元力を供給するTCA回路により多量の脂質や炭水化物が消費された為と考えられる。しかし、15ppmおよび30ppmの5−ALA投与群におけるATPレベルの上昇は、5−ALAによるバナメイエビの成長促進の原因の1つと推察されるバナメイエビ生体内での5−ALAによる飼料からのエネルギー取り出し効率の向上を支持するものである。
実施例6:Vibrio parahaemolyticusによるEMS/AHPND感染試験
Vibrio parahaemolyticusによる攻撃を受けたバナメイエビの生存率に対して5−ALAが及ぼす影響について検討した。
Vibrio parahaemolyticusを3×106cfu/mlの量(高用量)で含む海水を入れた10L水槽、およびVibrio parahaemolyticusを3×105cfu/mlの量(低用量)で含む海水を入れた10L水槽をそれぞれの群に対して準備した。飼育開始から3ヶ月目のバナメイエビを各群10匹ずつ、これら水槽に移し、バナメイエビに対するVibrio parahaemolyticusの感染処理を行った。感染処理から2週間にわたって、感染処理前に投与されていたのと同じ飼料(15ppm、30ppmもしくは60ppmの5−ALAを含む飼料、または5−ALAを含まない飼料)が各群のバナメイエビに給餌された。感染処理から2週間にわたって1日ごとに、各群および各Vibrio parahaemolyticus用量におけるバナメイエビの生存率を確認した。Vibrio parahaemolyticusを3×106cfu/mlの量(高用量)で含む海水でバナメイエビを処理した結果を図4に示し、Vibrio parahaemolyticusを3×105cfu/mlの量(低用量)で含む海水でバナメイエビを処理した結果を図5に示す。図4および図5中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。
Vibrio parahaemolyticusによる攻撃を受けたバナメイエビの生存率に対して5−ALAが及ぼす影響について検討した。
Vibrio parahaemolyticusを3×106cfu/mlの量(高用量)で含む海水を入れた10L水槽、およびVibrio parahaemolyticusを3×105cfu/mlの量(低用量)で含む海水を入れた10L水槽をそれぞれの群に対して準備した。飼育開始から3ヶ月目のバナメイエビを各群10匹ずつ、これら水槽に移し、バナメイエビに対するVibrio parahaemolyticusの感染処理を行った。感染処理から2週間にわたって、感染処理前に投与されていたのと同じ飼料(15ppm、30ppmもしくは60ppmの5−ALAを含む飼料、または5−ALAを含まない飼料)が各群のバナメイエビに給餌された。感染処理から2週間にわたって1日ごとに、各群および各Vibrio parahaemolyticus用量におけるバナメイエビの生存率を確認した。Vibrio parahaemolyticusを3×106cfu/mlの量(高用量)で含む海水でバナメイエビを処理した結果を図4に示し、Vibrio parahaemolyticusを3×105cfu/mlの量(低用量)で含む海水でバナメイエビを処理した結果を図5に示す。図4および図5中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。
図4に示されるように、Vibrio parahaemolyticusを3×106cfu/mlの量(高用量)で含む海水でバナメイエビを処理した場合には、60ppmの5−ALA投与群は対照群と比べてかなり高い生存率を示した。15ppmおよび30ppmの5−ALA投与群は、60ppmの5−ALA投与群と比べて生存率は低かったが、対照群と比べて高い生存率を示した。Vibrio parahaemolyticusを3×105cfu/mlの量(低用量)で含む海水でバナメイエビを処理した場合には、図5に示されるように、15ppm、30ppmおよび60ppmの5−ALA投与群は、いずれも、対照群と比べてかなり高い生存率を示した。よって、5−ALAはエビ目の生物において、Vibrio parahaemolyticusを原因菌とする、EMS/AHPNDに対して有効な予防・治療薬であることが明らかとなった。
実施例7:Vibrio parahaemolyticusによる感染処理での、全血球数に対する5−ALAの影響
飼育開始から3ヶ月目のバナメイエビを実施例6におけるのと同じ方法でVibrio parahaemolyticus(高用量)によって感染処理した。感染処理前(0時間)、感染処理から6時間後、および感染処理から12時間後に各群3匹ずつバナメイエビの腹部静脈洞(ventral sinus)から200μlの血リンパ(hemolymph)が採取され、800μlの抗凝固液で希釈された。C−チップ(C-chip)血球計(ナノエンテック(NanoEntek)、ドイツ国)を用いて、血リンパ中の全血球数を測定した。図6中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。図6に示されるように、感染処理前および感染処理後の全ての時点で、5−ALA投与群においては、対照群と比較して全血球数が増大していた。感染処理から6時間後での60ppmの5−ALA投与群においては、他の群と比較して統計的に優位に高い全血球数を示した。有意差検定はt検定法を用いた。理論に拘束されるものではないが、エビにおいては顆粒球などの血球は免疫担当細胞として重要な役割を担っているので、5−ALA投与によるEMS/AHPNDに対する予防・治療効果の原因の1つが5−ALAによる全血球数の増大による自然免疫系の活性化であるという可能性が考えられる。
飼育開始から3ヶ月目のバナメイエビを実施例6におけるのと同じ方法でVibrio parahaemolyticus(高用量)によって感染処理した。感染処理前(0時間)、感染処理から6時間後、および感染処理から12時間後に各群3匹ずつバナメイエビの腹部静脈洞(ventral sinus)から200μlの血リンパ(hemolymph)が採取され、800μlの抗凝固液で希釈された。C−チップ(C-chip)血球計(ナノエンテック(NanoEntek)、ドイツ国)を用いて、血リンパ中の全血球数を測定した。図6中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。図6に示されるように、感染処理前および感染処理後の全ての時点で、5−ALA投与群においては、対照群と比較して全血球数が増大していた。感染処理から6時間後での60ppmの5−ALA投与群においては、他の群と比較して統計的に優位に高い全血球数を示した。有意差検定はt検定法を用いた。理論に拘束されるものではないが、エビにおいては顆粒球などの血球は免疫担当細胞として重要な役割を担っているので、5−ALA投与によるEMS/AHPNDに対する予防・治療効果の原因の1つが5−ALAによる全血球数の増大による自然免疫系の活性化であるという可能性が考えられる。
実施例8:Vibrio parahaemolyticusによる感染処理での、ヘムオキシゲナーゼ−1およびフェノール酸化酵素前駆体の遺伝子発現に対する5−ALAの影響
飼育開始から3ヶ月目のバナメイエビを実施例6におけるのと同じ方法でVibrio parahaemolyticus(高用量)によって感染処理した。感染処理前(0時間)、感染処理から6時間後、および感染処理から12時間後に各群5匹ずつバナメイエビから肝膵臓を採取し、RNAiso Plus試薬(タカラバイオ、日本国)を用いて、当該試薬の製造者の指示に従って、それぞれのバナメイエビの肝膵臓から全RNAが抽出された。ハイキャパシティー逆転写キット(High-Capacity Reverse Transcription kit)(アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)、米国)を用いて、当該キットの製造者の指示に従って、1μgの全RNA抽出物からcDNAが合成された。合成されたcDNAが5倍に希釈され、qPCRのためのテンプレートとして使用された。このcDNAをSYBRグリーン蛍光色素を使用するリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にかけることによって、ヘムオキシゲナーゼ−1(HO−1)およびフェノール酸化酵素前駆体(proPO)の遺伝子発現を測定した。この測定は、Thunderbird(登録商標)SYBR qPCR Mix(東洋紡、日本)を使用して行われた。増幅反応はMicroAmp Optical 96−ウェル反応プレート(アプライドバイオシステムズ、米国)を使用して行われた。各ウェルは10μlのqPCR Mix、0.6μlの各プライマー、0.4μlのROX参照色素、および2μlのcDNAテンプレートを収容していた。サイクル条件は以下の通りであった。95℃で1分、次いで、90℃で15秒および60℃で60秒を40サイクル。各qPCR反応の終わりに、解離分析が行われて、1種類だけの生成物の検出であることを確認した。2−ΔΔCt法(LivakおよびSchmittgen、2001)を用いて、qPCRによる遺伝子発現データの相対的な変化が決定された。Ct値(サイクル閾値:Threshold Cycle)の計算のために、内部標準としてEF1αの遺伝子発現を測定した。対照群の相対的発現を用いて正規化された比率が計算された。データは分析の前に対数(底=2)変換された。ヘムオキシゲナーゼ−1の発現を測定するために、配列1(5’−CTGAGGAGCTCGATGAGGAG−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列2(5’−CATGGCCACAACACTACCAG−3’)を有するリバースプライマーが使用された。フェノール酸化酵素前駆体の発現を測定するために、配列3(5’−GGAATTGTTTTACTACATGCATCAGC−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列4(5’−GGAACAAGTCATCCACGAGCTT−3’)を有するリバースプライマーが使用された。EF1αの発現を測定するために、配列5(5’−ATTGCCACACCGCTCACA−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列6(5’−TCGATCTTGGTCAGCAGTTCA−3’)を有するリバースプライマーが使用された。結果は図7〜8に表される。各時点での対照群の遺伝子発現の平均値が0とされ、各群の遺伝子発現はこの平均値に対する相対的な値である。図7〜8におけるエラーバーは標準偏差である。図7〜8中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。
飼育開始から3ヶ月目のバナメイエビを実施例6におけるのと同じ方法でVibrio parahaemolyticus(高用量)によって感染処理した。感染処理前(0時間)、感染処理から6時間後、および感染処理から12時間後に各群5匹ずつバナメイエビから肝膵臓を採取し、RNAiso Plus試薬(タカラバイオ、日本国)を用いて、当該試薬の製造者の指示に従って、それぞれのバナメイエビの肝膵臓から全RNAが抽出された。ハイキャパシティー逆転写キット(High-Capacity Reverse Transcription kit)(アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)、米国)を用いて、当該キットの製造者の指示に従って、1μgの全RNA抽出物からcDNAが合成された。合成されたcDNAが5倍に希釈され、qPCRのためのテンプレートとして使用された。このcDNAをSYBRグリーン蛍光色素を使用するリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にかけることによって、ヘムオキシゲナーゼ−1(HO−1)およびフェノール酸化酵素前駆体(proPO)の遺伝子発現を測定した。この測定は、Thunderbird(登録商標)SYBR qPCR Mix(東洋紡、日本)を使用して行われた。増幅反応はMicroAmp Optical 96−ウェル反応プレート(アプライドバイオシステムズ、米国)を使用して行われた。各ウェルは10μlのqPCR Mix、0.6μlの各プライマー、0.4μlのROX参照色素、および2μlのcDNAテンプレートを収容していた。サイクル条件は以下の通りであった。95℃で1分、次いで、90℃で15秒および60℃で60秒を40サイクル。各qPCR反応の終わりに、解離分析が行われて、1種類だけの生成物の検出であることを確認した。2−ΔΔCt法(LivakおよびSchmittgen、2001)を用いて、qPCRによる遺伝子発現データの相対的な変化が決定された。Ct値(サイクル閾値:Threshold Cycle)の計算のために、内部標準としてEF1αの遺伝子発現を測定した。対照群の相対的発現を用いて正規化された比率が計算された。データは分析の前に対数(底=2)変換された。ヘムオキシゲナーゼ−1の発現を測定するために、配列1(5’−CTGAGGAGCTCGATGAGGAG−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列2(5’−CATGGCCACAACACTACCAG−3’)を有するリバースプライマーが使用された。フェノール酸化酵素前駆体の発現を測定するために、配列3(5’−GGAATTGTTTTACTACATGCATCAGC−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列4(5’−GGAACAAGTCATCCACGAGCTT−3’)を有するリバースプライマーが使用された。EF1αの発現を測定するために、配列5(5’−ATTGCCACACCGCTCACA−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列6(5’−TCGATCTTGGTCAGCAGTTCA−3’)を有するリバースプライマーが使用された。結果は図7〜8に表される。各時点での対照群の遺伝子発現の平均値が0とされ、各群の遺伝子発現はこの平均値に対する相対的な値である。図7〜8におけるエラーバーは標準偏差である。図7〜8中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。
図7に示されるように、感染処理から6時間後に、5−ALA投与群においては、対照群と比較してヘムオキシゲナーゼ−1の遺伝子発現が用量依存的に増大していた。図8に示されるように、感染処理から6時間後に、5−ALA投与群においては、対照群と比較してフェノール酸化酵素前駆体の遺伝子発現が増大していた。ヘム蛋白質の1種であるヘムオキシゲナーゼ−1はヘム代謝にかかわる酵素であると共に、細胞を酸化ストレスによる傷害から守る細胞保護タンパク質であることが知られている。フェノール酸化酵素前駆体は真菌や細菌の細胞壁成分を認識し、その認識結果をtoll受容体のリガンド生成につなげる仕組みに関与している可能性が示唆されている。よって、理論に拘束されるものではないが、5−ALA投与によるEMS/AHPNDに対する予防・治療効果の原因の1つが5−ALAによるヘムオキシゲナーゼ−1およびフェノール酸化酵素前駆体の遺伝子発現の増大であるという可能性が考えられる。
実施例9:核内受容体E75および一酸化窒素合成酵素の遺伝子発現に対する5−ALAの影響
飼育開始から3ヶ月目に、各群3〜4匹のバナメイエビから肝膵臓を採取し、それぞれのバナメイエビの肝膵臓から全RNAを抽出し、全RNAからcDNAを合成した。このcDNAをSYBRグリーン蛍光色素を使用するリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にかけることによって、核内受容体遺伝子E75および一酸化窒素合成酵素の遺伝子発現を測定した。Ct値の計算のために、内部標準としてEF1αの遺伝子発現を測定した。核内受容体遺伝子E75の発現を測定するために、配列7(5’−GCCTACAACAAGCCCCATAA−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列8(5’−GCCAGAGAGGAAGTCTGGTG−3’)を有するリバースプライマーが使用された。一酸化窒素合成酵素の発現を測定するために、配列9(5’−GGAAGACCCACGTCTGGAAG−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列10(5’−TCGAGCGATCTCCTTGAAGC−3’)を有するリバースプライマーが使用された。測定に使用された装置、条件などは実施例8におけるのと同じであった。結果は図9〜10に表される。対照群の遺伝子発現の平均値が0とされ、各群の遺伝子発現はこの平均値に対する相対的な値である。図9〜10におけるエラーバーは標準偏差である。図9および10中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。
飼育開始から3ヶ月目に、各群3〜4匹のバナメイエビから肝膵臓を採取し、それぞれのバナメイエビの肝膵臓から全RNAを抽出し、全RNAからcDNAを合成した。このcDNAをSYBRグリーン蛍光色素を使用するリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にかけることによって、核内受容体遺伝子E75および一酸化窒素合成酵素の遺伝子発現を測定した。Ct値の計算のために、内部標準としてEF1αの遺伝子発現を測定した。核内受容体遺伝子E75の発現を測定するために、配列7(5’−GCCTACAACAAGCCCCATAA−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列8(5’−GCCAGAGAGGAAGTCTGGTG−3’)を有するリバースプライマーが使用された。一酸化窒素合成酵素の発現を測定するために、配列9(5’−GGAAGACCCACGTCTGGAAG−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列10(5’−TCGAGCGATCTCCTTGAAGC−3’)を有するリバースプライマーが使用された。測定に使用された装置、条件などは実施例8におけるのと同じであった。結果は図9〜10に表される。対照群の遺伝子発現の平均値が0とされ、各群の遺伝子発現はこの平均値に対する相対的な値である。図9〜10におけるエラーバーは標準偏差である。図9および10中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。
図9に示されるように、全ての5−ALA投与群においては、対照群と比較して核内受容体E75の遺伝子発現が統計的に有意に増大していた。有意差検定はt検定法を用いた。図10に示されるように、5−ALA投与群においては、対照群と比較して一酸化窒素合成酵素の遺伝子発現が増大していた。核内受容体E75はエクダイソン合成に必要とされるタンパク質であって、ヘムを補欠分子族として含み、細胞内のヘム濃度のセンサーとして機能する他、一酸化窒素を細胞内シグナル伝達分子として感知する可能性があることが知られている。一酸化窒素合成酵素は細菌感染などにおいて強力な抗菌活性を有するパーオキシナイトライトの発生に必要となる一酸化窒素の合成に関与する酵素であって、ヘムタンパク質であることが知られている。E75はその構造を安定させる為にヘムを必要とし更にヘム濃度のセンサーとなり、一酸化窒素合成酵素はそれ自体がヘム蛋白質であることからこれらの発現を調べることにより5−ALAの投与がエビの体内におけるヘム合成に関連していることを確認するための指標となる可能性がある。
実施例10:一酸化窒素合成酵素およびC型レクチンの遺伝子発現に対する5−ALAの影響
飼育開始から2週間目に、各群3〜4匹のバナメイエビから肝膵臓を採取し、それぞれのバナメイエビの肝膵臓から全RNAを抽出し、全RNAからcDNAを合成した。このcDNAをSYBRグリーン蛍光色素を使用するリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にかけることによって、核内受容体遺伝子E75および一酸化窒素合成酵素の遺伝子発現を測定した。Ct値の計算のために、内部標準としてEF1αの遺伝子発現を測定した。一酸化窒素合成酵素の発現を測定するために、配列9(5’−GGAAGACCCACGTCTGGAAG−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列10(5’−TCGAGCGATCTCCTTGAAGC−3’)を有するリバースプライマーが使用された。C型レクチンの発現を測定するために、配列11(5’−CAAGATGGCTCCCACCAACA−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列12(5’−GTCGAACTCGGCGTTATCGG−3’)を有するリバースプライマーが使用された。測定に使用された装置、条件などは実施例8におけるのと同じであった。結果は図11〜12に表される。対照群の遺伝子発現の平均値が0とされ、各群の遺伝子発現はこの平均値に対する相対的な値である。図11〜12におけるエラーバーは標準偏差である。図11〜12中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。
飼育開始から2週間目に、各群3〜4匹のバナメイエビから肝膵臓を採取し、それぞれのバナメイエビの肝膵臓から全RNAを抽出し、全RNAからcDNAを合成した。このcDNAをSYBRグリーン蛍光色素を使用するリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にかけることによって、核内受容体遺伝子E75および一酸化窒素合成酵素の遺伝子発現を測定した。Ct値の計算のために、内部標準としてEF1αの遺伝子発現を測定した。一酸化窒素合成酵素の発現を測定するために、配列9(5’−GGAAGACCCACGTCTGGAAG−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列10(5’−TCGAGCGATCTCCTTGAAGC−3’)を有するリバースプライマーが使用された。C型レクチンの発現を測定するために、配列11(5’−CAAGATGGCTCCCACCAACA−3’)を有するフォワードプライマーおよび配列12(5’−GTCGAACTCGGCGTTATCGG−3’)を有するリバースプライマーが使用された。測定に使用された装置、条件などは実施例8におけるのと同じであった。結果は図11〜12に表される。対照群の遺伝子発現の平均値が0とされ、各群の遺伝子発現はこの平均値に対する相対的な値である。図11〜12におけるエラーバーは標準偏差である。図11〜12中の15ppm、30ppm、および60ppmの記載は、それぞれ、15ppmの5−ALA投与群、30ppmの5−ALA投与群、および60ppmの5−ALA投与群を表す。
図11に示されるように、5−ALA投与群においては、対照群と比較して一酸化窒素合成酵素の遺伝子発現が用量依存的に増大していた。図12に示されるように、15ppmの5−ALA投与群においては、対照群と比較してC型レクチンの遺伝子発現が増大していた。C型レクチンは初期の免疫応答に最も重要なノジュール反応を誘起する可能性が示唆されている。理論に拘束されるものではないが、C型レクチンは顆粒細胞が細菌を取り込み、更に細菌の拡散を阻止する反応であるノジュール形成反応において重要な役割を担うことからEMSへの有効性の一因が5−ALA投与によるC型レクチンの発現増加によるノジュール反応促進作用である可能性を示唆していると考えられる。一酸化窒素合成酵素は一酸化窒素の合成に関与する酵素であって、ヘムタンパク質であり、5−ALAの投与によりその合成が促進される。
本願発明の5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目用経口投与組成物は、エビ目の生物の飼育、養殖に使用されることが可能であり、Vibrio parahaemolyticusを原因菌とする、EMS/AHPNDを有効に予防および治療することが可能である。また、本願発明の5−ALA若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目用経口投与組成物は、所定の投与量でエビ目の生物の成長を促進させることが可能である。
Claims (8)
- 5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目用経口投与組成物。
- 5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を含むエビ目早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死病(EMS/AHPND)の予防・治療用経口投与組成物。
- エビ目がクルマエビ科である請求項1または2に記載の組成物。
- 組成物が飼料または飼料用添加剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
- 5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をエビ目の生物に摂取させることを含む方法。
- 5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種をエビ目の生物に摂取させることを含む、エビ目早期死亡症候群/急性肝膵臓壊死病(EMS/AHPND)を予防・治療する方法。
- エビ目がクルマエビ科である請求項5または6に記載の方法。
- 5−アミノレブリン酸(5−ALA)若しくはそのエステル、またはそれらの塩から選択される少なくとも一種を、5−ALAリン酸塩換算でエビ目の生物の体重1gあたりかつ一日あたりで、0.25μg/g・日〜2.5μg/g・日の量で、エビ目の生物に摂取させることを含む、エビ目の生物の成長を促進させる方法。
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