上記歩行車は、互いに分離された左右の肘置きを備えている。各肘置きは、比較的小型である。一方、左のグリップ上から右のグリップ上に亘って左右に延びる大型の肘置きを備えた歩行車が知られている。このような大型の肘置きに前述のヒンジ部材を適用すれば、大型の肘置きを備えた歩行車において、肘置きを使用する利用方法と左右のグリップを使用する利用方法とを選択できるようになる。
例えば、図11に示すように、大型の肘置き146の前端部にヒンジ部材146aを追加することが考えられる。肘置き146を利用する際には、肘置き146を後方に倒すことにより、肘置き146をグリップ143の上方に配置する。これにより、肘置き146に肘を置きながらハンドル141を掴むことが可能となる。一方、左右のグリップ143を利用する際には、肘置き146を図中の矢印A、Bの順に前方に倒すことによって、グリップ143上から移動させる。これにより、グリップ143を握ることが可能となる。
しかし、左右に分離された小型の肘置きに比べて、大型の肘置き146を前方または後方に倒す作業は大変である。また、左右に分離された小型の肘置きの場合、利用者は左右の肘置きの間にいるので、前方または後方に倒す際に肘置きが利用者の顔などにぶつかるおそれはない。しかし、大型の肘置き146は左のグリップ上から右のグリップ上に亘って左右に延びているので、肘置き146を倒す際に、利用者が左のグリップと右のグリップとの間にいる場合、肘置き146の先端が利用者の顔などにぶつかるおそれがある。そのため、肘置き146がぶつからないように注意する必要があり、肘置き146を倒す作業が面倒となる。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、左右に延びる肘置きを備えながら、肘置きを使用する利用方法と左右のグリップを使用する利用方法とを選択することができ、更に、肘置きの位置変更が容易な歩行車を提供することである。
本発明に係る歩行車は、グリップバーと、左グリップと、右グリップと、左リンクアームと、右リンクアームと、肘置きと、を備えている。前記グリップバーは、左右に延びたグリップ部と、前記グリップ部の左端から後方に延びる左連結部と、前記グリップ部の右端から後方に延びる右連結部と、を有する。前記左グリップは、前記グリップバーの前記左連結部から後方に延びる。前記右グリップは、前記グリップバーの前記右連結部から後方に延びる。前記左リンクアームは、前記左連結部に対し左右に延びる軸線周りに回転可能に連結された根元側連結部と、先端側連結部とを有する。前記右リンクアームは、前記右連結部に対し左右に延びる軸線周りに回転可能に連結された根元側連結部と、先端側連結部とを有する。前記肘置きは、前記左リンクアームおよび前記右リンクアームの前記先端側連結部に対し左右に延びる軸線周りに回転可能に連結され、少なくとも一部が前記左グリップの右端よりも左方の位置から前記右グリップの左端よりも右方の位置に亘って延びている。
前記歩行車によれば、肘置きを前方に押すと、左リンクアームは左連結部に対し前方に回転し、右リンクアームは右連結部に対し前方に回転する。しかし、肘置きは、左リンクアームおよび右リンクアームの先端側連結部に対し回転可能であるので、肘置き自体はグリップバーに対して回転せず、前方に向かって略スライドする。逆に、肘置きを後方に引っ張ると、左リンクアームは左連結部に対し後方に回転し、右リンクアームは右連結部に対し後方に回転する。しかし、肘置きは、左リンクアームおよび右リンクアームの先端側連結部に対し回転可能であるので、肘置き自体はグリップバーに対して回転せず、後方に向かって略スライドする。このように、前記歩行車によれば、肘置きはグリップバーに対して略スライドすることによって、前後に移動するように構成されている。よって、肘置きをグリップバーに対して回転させる場合に比べて、肘置きを容易に移動させることができる。また、肘置きを移動させる際に、肘置きが利用者の顔などにぶつかりにくい。したがって、前記歩行車によれば、左右に延びる肘置きを備えながら、肘置きを使用する利用方法と左右のグリップを使用する利用方法とを選択することができ、しかも、肘置きの位置の変更が容易となる。
本発明の好ましい一態様によれば、前記肘置きは、前記左リンクアームおよび前記右リンクアームを前記先端側連結部が前記根元側連結部よりも後方に位置するように回転させると、前記左グリップおよび前記右グリップの少なくとも一部の上方を覆う使用位置に移動し、前記左リンクアームおよび前記右リンクアームを前記先端側連結部が前記根元側連結部よりも前方に位置するように回転させると、前記左グリップおよび前記右グリップの前記一部よりも前方に位置する非使用位置に移動するように構成されている。
上記態様によれば、肘置きは、使用位置と非使用位置との間で移動可能である。肘置きを使用位置に移動させることで、利用者は、肘置きに肘を置き、グリップバーのグリップ部を掴んで歩行車を使用することができる。他方、肘置きを非使用位置に移動させることにより、利用者は左グリップおよび右グリップを握って歩行車を使用することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記肘置きの下面には、前記肘置きが前記非使用位置に配置されたときに前記グリップバーに支持される支持部が設けられている。
上記態様によれば、肘置きを使用位置から非使用位置に向けて前方に移動させると、非使用位置に至った時点で、肘置きの支持部がグリップバーに接触し、グリップバーに支持される。そのため、肘置きを前方に移動させたときに、肘置きが前方に回転することや、前方に移動しすぎてしまうことを防ぐことができる。また、利用者が左右のグリップを握って歩行する際には、グリップバーは、本来は利用されない部材となる。しかし、上記態様によれば、肘置きが非使用位置に配置されたとき、肘置きはグリップバーに載せられた状態となる。そのため、本来は利用されないグリップバーを、肘置きを支える部材として有効活用することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記肘置きの下面には、前記肘置きが前記使用位置に配置されたときに前記左グリップに支持される左支持部、および、前記肘置きが前記使用位置に配置されたときに前記右グリップに支持される右支持部が設けられている。
上記態様によれば、肘置きが使用位置に配置されたとき、肘置きは左グリップおよび右グリップに載せられた状態となる。左グリップおよび右グリップが肘置きを支持するので、利用者が肘置きに肘を置いて歩行する際に、歩行車の安定性が向上する。また、利用者が肘置きに肘を置いて体重をかけたときに、左リンクアームおよび右リンクアームに過大な力が加わることを防止することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記歩行車は、前記左リンクアームと前記右リンクアームとに架け渡された連結バーを備えている。
前述の通り、本発明では、肘置きの位置変更に際して、肘置きをグリップバーに対して略スライドさせるために、肘置きとグリップバーとの間に左右のリンクアームを介在させている。ここで、左リンクアームと右リンクアームとは、左右に離れた位置に配置されている。肘置きを移動させる際に、利用者が肘置きの中央部分を押す場合、左リンクアームと右リンクアームとにはほぼ均等の力が加わる。そのため、左リンクアームと右リンクアームとは、良好に連動して回転する。しかし、例えば、利用者が肘置きの右側部分を押すと、右リンクアームに加わる力は左リンクアームに加わる力よりも大きくなる。そのため、右リンクアームが左リンクアームよりも早く回転し、両リンクアーム同士の前後位置がずれることによって、両リンクアームが良好に連動しない場合がある。ところが、左リンクアームと右リンクアームとが良好に連動しないと、肘置きを円滑に移動させにくくなる。しかしながら、上記態様によれば、左リンクアームと右リンクアームとは、連結バーによって連結されている。よって、移動の際に肘置きに加えられる力が左右に偏っていたとしても、左リンクアームと右リンクアームとは連動して回転する。したがって、使用位置と非使用位置との間で、肘置きを円滑に移動させることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記連結バーは、前記左リンクアームの前記根元側連結部と前記先端側連結部との間の部分と、前記右リンクアームの前記根元側連結部と前記先端側連結部との間の部分とに接続されている。
上記態様によれば、連結バーにより、左リンクアームの回転と右リンクアームの回転とを良好に連動させることができる。これにより、肘置きを円滑に移動させることができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記連結バーは、前記左リンクアームを前記根元側連結部と前記先端側連結部との間で三等分したときの中央の部分に接続され、かつ、前記右リンクアームを前記根元側連結部と前記先端側連結部との間で三等分したときの中央の部分に接続されている。
上記態様によれば、連結バーにより、左リンクアームの回転と右リンクアームの回転とを更に良好に連動させることができる。これにより、肘置きの移動を更に円滑化することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記歩行車は、前記肘置きの前記左リンクアームおよび前記右リンクアームの前記先端側連結部に対する所定量以上の回転を規制する回転規制部を備えている。
肘置きは、左リンクアームおよび右リンクアームの先端側連結部に対し回転可能である。そのため、肘置きが移動中に過剰に回転してしまうと、肘置きの前端部または後端部が跳ね上がり、利用者の顔などに接触するおそれがある。しかし、上記態様によれば、回転規制部により、肘置きの所定量以上の過剰な回転が規制される。よって、肘置きの跳ね上がりが防止され、肘置きが利用者の顔などに接触することをより確実に防止することができる。
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記回転規制部は、前記肘置きの下面に設けられたフックを有している。前記肘置きが前記左リンクアームおよび前記右リンクアームの前記先端側連結部に対して前記所定量回転したときに、前記連結バーが前記フックに引っ掛かることにより前記肘置きの回転が規制されるように構成されている。
上記態様によれば、連結バーをフックに引っ掛けるという簡単な構成で、肘置きの跳ね上がりを防止することができる。また、左右のリンクアームを良好に連動させるための連結バーを、跳ね上がり防止のための部材として有効活用することができる。
本発明によれば、左右に延びる肘置きを備えながら、肘置きを使用する利用方法と左右のグリップを使用する利用方法とを選択することができ、更に、肘置きの位置変更が容易な歩行車を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る歩行車の実施形態について説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の一実施形態に過ぎず、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る歩行車100の斜視図である。図2は、歩行車100の平面図である。図3は、図2のIII−III断面における歩行車100の断面図である。以下の説明では、前、後、左、右、上、下とは、歩行車100を利用して歩行する利用者(図示せず)から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。各図面中における符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表すものとする。ただし、これらの方向は、説明の便宜上定めた方向に過ぎず、歩行車100の態様を何ら限定するものではない。
図1に示すように、歩行車100は、左右の前輪11と、前輪11の後方に配置された左右の後輪12とを備えている。また、歩行車100は、前輪11および後輪12を支持するベースフレーム14と、ベースフレーム14の上部に設けられた左右の縦フレーム16と、縦フレーム16の上端部に設けられたグリップバー41と、グリップバー41に設けられた左グリップ42および右グリップ43(図4参照)と、肘置き46とを備えている。また、歩行車100は、後輪12を制動するブレーキ18と、ブレーキ18に連結されたブレーキワイヤ19と、ブレーキワイヤ19に接続されたブレーキバー21と、ブレーキワイヤ19に接続された左右のブレーキレバー22と、を備えている。
ベースフレーム14は、左右の前フレーム25と左右の後フレーム26とを有している。後輪12は、それぞれ左右の後フレーム26の下端部に回転可能に支持されている。後フレーム26の上端部には、ブラケット27が固定されている。ブラケット27には、前フレーム25の上端部が回転可能に支持されている。前輪11は、前フレーム25の下端部に回転可能に支持されている。左の前フレーム25と右の前フレーム25とには、左右に延びた横バー28が接続されている。左の後フレーム26と右の後フレーム26とは、左右に延びた横バー29が接続されている。
図3に示すように、左右のブラケット27には、横バー31が架け渡されている。左右の後フレーム26には、ブラケット32Aが接続されている。左右のブラケット32Aには、横バー32が架け渡されている。これら横バー31および32には、収容かご33が支持されている。収容かご33の上には、トレイ34が支持されている。
前フレーム25と後フレーム26とは、リンク機構35によって連結されている。リンク機構35は、バー35Aと、バー35Bと、バー35Aとバー35Bとを回転可能に連結する軸35Cとを有している。歩行車100は、利用しないときには折り畳むことができる。折り畳み時には、前フレーム25がその上端部を中心として後方に回転すると共に、軸35Cが上方に移動するようにリンク機構35が折り畳まれる。その結果、前輪11が後輪12に接近し、歩行車100の前後の寸法が小さくなる。
縦フレーム16は、ベースフレーム14から上方に向かって延びている。縦フレーム16は、上下に真っ直ぐに延びた中空のパイプ状に形成されている。縦フレーム16は、後フレーム26にスライド可能に挿入されている。縦フレーム16は、ねじ15によってブラケット27に固定されている。縦フレーム16には、上下に並ぶ複数のねじ孔16aが形成されている。これら複数のねじ孔16aからねじ15を嵌めるねじ孔16aを選択することによって、縦フレーム16における後フレーム26からの突出長さを調整することができる。これにより、歩行車100の高さを調整することができる。
ブレーキバー21は、平面視において後方に開いたU字状に形成されている。図3に示すように、ブレーキバー21の一部は、側面視において前斜め上向きに傾斜している。左右の縦フレーム16の上端部には、それぞれケース16bが固定されている。ブレーキバー21の左後端部および左のブレーキレバー22は、左のケース16bに支持されている。ブレーキバー21の右後端部および右のブレーキレバー22は、右のケース16bに支持されている。ブレーキレバー22は、ケース16bから後方に延びている。ブレーキバー21とブレーキレバー22とは、ケース16bの内部において互いに連結されている。また、ブレーキバー21およびブレーキレバー22は、ケース16bの内部においてブレーキワイヤ19に連結されている。
グリップバー41は、左右の縦フレーム16の上端部に支持されている。図4に示すように、グリップバー41は、平面視において逆U字状に形成されている。言い換えると、グリップバー41は、平面視において後方に開いたU字状に形成されている。グリップバー41は、左右に延びるグリップ部41aと、グリップ部41aの左端から後方に延びる左連結部41bと、グリップ部41aの右端から後方に延びる右連結部41cとを備えている。グリップ部41aは、利用者が歩行の際に両手で掴むことができるように構成されている。利用者が掴みやすいように、グリップ部41aには、ゴムなどによって形成された可撓性部材が巻かれていてもよい。本実施形態では、グリップ部41aと左連結部41bと右連結部41cとは一体物であり、金属製のパイプによって形成されている。ただし、グリップバー41は複数の部材を組み合わせることによって形成されていてもよく、その材料は特に限定されない。
左グリップ42および右グリップ43は、それぞれ利用者の左手および右手によって握られる部材である。左グリップ42はグリップバー41の左連結部41bに接続され、左連結部41bから後方に延びている。右グリップ43はグリップバー41の右連結部41cに接続され、右連結部41cから後方に延びている。左グリップ42および右グリップ43の材料は何ら限定されないが、利用者が掴みやすいように、ゴムなどの可撓性部材によって形成されていてもよい。
図3に示すように、グリップバー41のグリップ部41aは、縦フレーム16の前斜め上方に位置している。グリップバー41の一部は、側面視において前斜め上向きに延びている。グリップ部41aの少なくとも一部は、ブレーキバー21の前方または上方に配置されている。左グリップ42および右グリップ43は、縦フレーム16よりも後方に配置されており、左右のブレーキレバー22の上方に位置している。
図1に示すように、肘置き46は、歩行車100の左右に亘って延びており、両腕の肘を一緒に載せることができるものである。肘置き46の具体的形状は何ら限定されないが、本実施形態では図2に示すように、平面視において矩形状に形成されている。左グリップ42の少なくとも一部および右グリップ43の少なくとも一部は、肘置き46と上下に重なっている。本実施形態では、左グリップ42および右グリップ43の全体が、肘置き46と上下に重なっている。図2に示すように平面視において、左グリップ42および右グリップ43の上方は、肘置き46によって覆われるようになっている。肘置き46の少なくとも一部は、左グリップ42の右端よりも左方の位置から右グリップ43の左端よりも右方の位置に亘って延びている。
本実施形態に係る歩行車100では、利用者は、肘置き46を使用する利用方法と、肘置き46を使用しない利用方法とを選択することができる。肘置き46を使用する場合には、利用者は、両腕の肘を肘置き46に置きながら、グリップバー41を両手で掴んで歩行することができる。一方、肘置き46を使用しない場合には、利用者は、左手で左グリップ42を握り、右手で右グリップ43を握って歩行することができる。しかし、肘置き46が左グリップ42および右グリップ43の上方に配置されていると、肘置き46が邪魔になり、左グリップ42および右グリップ43を握りにくい。そこで、本実施形態に係る歩行車100では、左グリップ42および右グリップ43を使用する場合には、肘置き46を前方に移動させることができるようになっている。すなわち、肘置き46の位置変更が可能に構成されている。図5は肘置き46が使用位置P1に配置された状態を表し、図6は肘置き46が非使用位置P2に配置された状態を表している。
歩行車100は、肘置き46を使用位置P1と非使用位置P2との間で移動可能とする移動機構48を備えている。次に、移動機構48の構成について説明する。図4に示すように、移動機構48は、左リンクアーム61と、右リンクアーム62と、連結バー63とを備えている。図5および図6に示すように、肘置き46とグリップバー41とは、左リンクアーム61および右リンクアーム62を介して連結されている。
詳しくは、右リンクアーム62は、根元側連結部62aと先端側連結部62bとを有している。グリップバー41の右連結部41cには、ブラケット67が固定されている。右リンクアーム62の根元側連結部62aは、左右に延びる軸68により、ブラケット67に回転可能に連結されている。右リンクアーム62の先端側連結部62bは、左右に延びる軸74により、肘置き46に回転可能に連結されている。
左リンクアームも同様にして、グリップバー41の左連結部41bおよび肘置き46に連結されている。図4に示すように、グリップバー41の左連結部41bには、ブラケット65が固定されている。左リンクアーム61の根元側連結部61aは、左右に延びる軸66により、ブラケット65に回転可能に連結されている。左リンクアーム61の先端側連結部61bは、左右に延びる軸72により、肘置き46に回転可能に連結されている。
図7に示すように、肘置き46の下面の左部には、下方に突出したブラケット71が設けられている。左リンクアーム61の先端側連結部61bは、軸72によって、ブラケット71に回転可能に組み付けられている。同様に、肘置き46の下面の右部には、下方に突出したブラケット73が設けられている(図6参照)。右リンクアーム62の先端側連結部62bは、軸74により、ブラケット73に回転可能に組み付けられている。
なお、左リンクアーム61および右リンクアーム62の形状および材料は特に限定されない。本実施形態では、左リンクアーム61および右リンクアーム62は、両端が円弧状に形成された金属製の平板部材であるが、例えば、円柱状または円筒状の部材であってもよい。左リンクアーム61および右リンクアーム62は、側面視において直線状に形成されていてもよく、曲線状に形成されていてもよい。左リンクアーム61および右リンクアーム62は、側面視において、一部が屈曲したような形状に形成されていてもよい。左リンクアーム61はグリップバー41の左連結部41bの左方に配置されているが、右方に配置されていてもよい。また、右リンクアーム62はグリップバー41の右連結部41cの右方に配置されているが、左方に配置されていてもよい。
図4に示すように、連結バー63は、左リンクアーム61と右リンクアーム62とに架け渡されている。連結バー63は、左リンクアーム61と右リンクアーム62とを接続しており、左右に延びている。連結バー63の左端は左リンクアーム61に接続され、連結バー63の右端は右リンクアーム62に接続されている。本実施形態では、連結バー63は、左リンクアーム61の根元側連結部61aと先端側連結部61bとの間の部分と、右リンクアーム62の根元側連結部62aと先端側連結部62bとの間の部分とに接続されている。特に、連結バー63の左端は、左リンクアーム61を根元側連結部61aと先端側連結部61bとの間で三等分したときの中央の部分に接続されている。連結バー63の右端は、右リンクアーム62を根元側連結部62aと先端側連結部62bとの間で三等分したときの中央の部分に接続されている。
本実施形態では、左リンクアーム61の一端部、他端部が、それぞれ根元側連結部61a、先端側連結部61bとなっている。同様に、右リンクアーム62の一端部、他端部が、それぞれ根元側連結部62a、先端側連結部62bとなっている。しかし、根元側連結部61aまたは先端側連結部61bは、左リンクアーム61の端部でなくてもよい。左リンクアーム61は、根元側連結部61aよりも根元側に延長されていてもよく、先端側連結部61bよりも先端側に延長されていてもよい。その場合、連結バー63は、左リンクアーム61のうち根元側連結部61aと先端側連結部61bとの間の部分以外の部分に接続されていてもよい。同様に、連結バー63は、右リンクアーム62のうち根元側連結部62aと先端側連結部62bとの間の部分以外の部分に接続されていてもよい。また、連結バー63は、左リンクアーム61および右リンクアーム62の根元側連結部61a、62aに接続されていてもよいし、先端側連結部61b、62bに接続されていてもよい。
連結バー63の形状は特に限定されないが、ここでは、平板状である(図7参照)。ただし、連結バー63は、例えば円柱状または円筒状に形成されていてもよい。連結バー63の横断面形状は特に限定されない。本実施形態では、連結バー63は直線状に形成されている。しかし、連結バー63は、一部または全部が湾曲していてもよく、一部が屈曲していてもよい。連結バー63は、左リンクアーム61および右リンクアーム62と別体であってもよく、例えば、左リンクアーム61および右リンクアーム62に対して、ねじ等の固定具によって固定されていてもよい。また、連結バー63は、左リンクアーム61および右リンクアーム62と一体的に形成されていてもよい。連結バー63、左リンクアーム61、および右リンクアーム62は、一体成型されていてもよい。
前述のように、肘置き46は、使用位置P1と非使用位置P2との間で移動可能である。図5に示すように、肘置き46は、使用位置P1にあるときには、グリップバー41のグリップ部41aよりも後方に位置する。また、肘置き46は、使用位置P1にあるときには、左グリップ42および右グリップ43よりも上方に位置し(図8も参照)、左グリップ42および右グリップ43の少なくとも一部の上方を覆う。肘置き46は、使用位置P1にあるときには、左グリップ42および右グリップ43に支持され、利用者が肘を置きやすいように水平な状態となる。
図7に示すように、肘置き46の下面の左部には、左グリップ42に支持される左支持部82が設けられている。左支持部82は、肘置き46の下面に取り付けられた部材であり、左グリップ42の上部形状に対応した形状をしている。本実施形態では、左グリップ42は筒状に形成されているので、左支持部82は、上方に凹んだ半円柱状の溝形状に形成されている。同様に、肘置き46の下面の右部には、右グリップ43に支持される右支持部83が設けられている。右支持部83は、右グリップ43の上部形状に対応した形状を有しており、ここでは、上方に凹んだ半円柱状の溝形状に形成されている。なお、ここでは、左支持部82および右支持部83は、肘置き46と別体の部材であるが、肘置き46と一体であってもよい。言い換えると、肘置き46の下面の一部が、左支持部82および右支持部83を形成していてもよい。
図6に示すように、肘置き46の非使用位置P2は、使用位置P1よりも前方の位置であり、肘置き46が使用されないときの位置である。肘置き46は、非使用位置P2にあるときには、左グリップ42および右グリップ43の少なくとも一部よりも前方に位置する。肘置き46は、非使用位置P2にあるときには、前端部がグリップバー41によって支持され、前端部が後端部よりも上方に位置するように傾斜する。また、図9に示すように、肘置き46が非使用位置P2にあるときには、左グリップ42および右グリップ43の少なくとも一部の上方が開放され、利用者は左グリップ42および右グリップ43を容易に掴むことができるようになる。
肘置き46を使用位置P1から非使用位置P2に移動させるときには、例えば、肘置き46を前方に押し出す。すると、図5および図6に示すように、左リンクアーム61および右リンクアーム62は、根元側の軸68を中心として前方に回転する(図5および図6において、時計回りに回転する)。一方、肘置き46は、先端側の軸74を中心として、左リンクアーム61および右リンクアーム62に対して相対的に後方に回転する。その結果、肘置き46は、上下がひっくり返ることなく、肘置き面51が上向きの状態のまま前方に略スライドする。
逆に、肘置き46を非使用位置P2から使用位置P1に移動させるときには、例えば、肘置き46を後方に引っ張る。すると、左リンクアーム61および右リンクアーム62は、根元側の軸68を中心として後方に回転する(図5および図6において、反時計回りに回転する)。一方、肘置き46は、先端側の軸74を中心として、左リンクアーム61および右リンクアーム62に対して相対的に前方に回転する。その結果、肘置き46は、肘置き面51が上向きの状態のまま後方に略スライドする。
ところで、肘置き46は左リンクアーム61および右リンクアーム62に対して回転可能であるので、左リンクアーム61および右リンクアーム62が軸68を中心として回転している途中に、肘置き46が左リンクアーム61および右リンクアーム62に対して過剰に回転してしまうと、肘置き46の前端部または後端部が跳ね上がってしまうおそれがある。ところが、肘置き46の前端部または後端部が跳ね上がってしまうと、肘置き46が利用者の顔などに接触するおそれがある。そこで、本実施形態に係る歩行車100では、肘置き46が跳ね上がらないように、肘置き46の所定量以上の回転を規制する回転規制部を備えることとした。
図7に示すように、本実施形態に係る回転規制部は、肘置き46の下面に設けられたフック49を有している。図10は、肘置き46が使用位置P1と非使用位置P2との間を移動する状態を模式的に示す右側面図である。なお、図10では、フック49を誇張して図示している。図10(b)に示すように、肘置き46が使用位置P1と非使用位置P2との間にあるときに、軸74を中心として後方に所定量回転すると(反時計回りに所定量回転すると)、フック49が連結バー63に引っ掛かる。これにより、肘置き46の所定量以上の回転が規制され、肘置き46の前端部が跳ね上がることが回避される。なお、図10(b)に示す状態において、肘置き46が軸74を中心として前方に回転しても(時計回りに回転しても)、肘置き46の下面が連結バー63と接触する。そのため、肘置き46の前方への回転は規制され、肘置き46の後端部が跳ね上がることは回避される。
なお、本実施形態では、フック49は肘置き46の下面の前部に設けられ、フック49により、肘置き46の前端部の跳ね上がりが防止される。しかし、フック49を肘置き46の下面の後部に設け、フック49により、肘置き46の後端部の跳ね上がりを防止することも可能である。また、肘置き46の下面の前部および後部の両方にフック49を設けることにより、肘置き46の前端部および後端部の跳ね上がりをフック49により防止することも可能である。
ところで、肘置き46を使用位置P1に配置した場合、および、不使用位置P2に配置した場合のいずれにおいても、肘置き46ががたつかないように固定することが好ましい。肘置き46を固定する方法は特に限定されず、例えば、固定バンド(図示せず)によって肘置き46をグリップバー41に固定してもよい。また、左リンクアーム61の根元側の軸66および先端側の軸72と、右リンクアーム62の根元側の軸68および先端側の軸74とをボルトによって構成してもよい。そして、肘置き46の位置を変更した後に上記ボルトにナットを締結することにより、肘置き46を固定してもよい。肘置き46の位置を変更するときには、上記ナットを弛めることにより、肘置き46を移動させることができる。このようにすれば、固定バンドなどは不要となり、歩行車100の部品点数を削減することができる。
以上のように、本実施形態に係る歩行車100では、肘置き46とグリップバー41とは、左リンクアーム61および右リンクアーム62を介して連結されている。使用位置P1にある肘置き46を前方に押すと、肘置き46は前方に向かって略スライドし、不使用位置P2に移動する。不使用位置P2にある肘置き46を後方に引っ張ると、肘置き46は後方に向かって略スライドし、使用位置P1に移動する。歩行車100によれば、肘置き46は略スライドすることによって前後に移動するように構成されている。よって、肘置き46をグリップバー41に対して回転させる場合(例えば、図11参照)と比べて、肘置き46の可動範囲を抑えることができる。肘置き46を大掛かりに移動させる必要がないので、肘置き46を容易に移動させることができる。また、肘置き46の移動中に、肘置き46の端部が大きな奇跡を描きながら移動する(図11参照)ことがないので、肘置き46が利用者の顔などにぶつかりにくい。したがって、本実施形態によれば、左右に延びる大型の肘置き46を備えながら、肘置き46を使用する利用方法と左右のグリップ42、43を使用する利用方法とを選択することができ、しかも、肘置き46の位置を容易に変更することが可能となる。
図5および図6に示すように、肘置き46は、左リンクアーム61および右リンクアーム62を先端側連結部61b、62bが根元側連結部61a、62aよりも後方に位置するように回転させると、使用位置P1に移動し、左リンクアーム61および右リンクアーム62を先端側連結部61b、62bが根元側連結部61a、62aよりも前方に位置するように回転させると、非使用位置P2に移動するように構成されている。図5に示すように、利用者は、肘置き46を使用位置P1に移動させることで、肘置き46に両肘を置きながら、グリップバー41のグリップ部41aを掴んで歩行車100を利用することができる。他方、図6に示すように、利用者は、肘置き46を非使用位置P2に移動させることで、左グリップ42および右グリップ43を握って歩行車100を利用することができる。
本実施形態では、図6に示すように、肘置き46が非使用位置P2に配置されたときに、肘置き46の少なくとも一部はグリップバー41によって支持される。肘置き46の下面には、肘置き46が非使用位置P2に配置されたときにグリップバー41に支持される支持部81が設けられている。なお、支持部81は、肘置き46と別体の部材であってもよく、肘置き46の一部が支持部81を形成してもよい。本実施形態によれば、肘置き46を使用位置P1から非使用位置P2に移動させるときに、グリップバー41により、肘置き46が前方に回転してしまうことや、前方に移動しすぎてしまうことを防ぐことができる。また、肘置き46を使用しないときには、利用者は左グリップ42および右グリップ43を使用するので、グリップバー41は本来使用されない。しかし、本実施形態によれば、本来は使用されないグリップバー41を、肘置き46を支える部材として有効活用することができる。
本実施形態では、図7に示すように、肘置き46の下面には、左グリップ42に支持される左支持部82、および、右グリップ43に支持される右支持部83が設けられている。肘置き46が使用位置P1に配置されたとき、肘置き46は左グリップ42および右グリップ43に載せられた状態となる。左グリップ42および右グリップ43が肘置き46を支持するので、利用者が肘置き46に肘を置いて歩行する際に、歩行車100の安定性が向上する。また、利用者が肘置き46に肘を置いて体重をかけたときに、左リンクアーム61および右リンクアーム62に過大な力が加わることを防止することができる。よって、移動機構48の耐久性を向上させることができる。
ところで、肘置き46の移動の際に、左リンクアーム61および右リンクアーム62は大型の肘置き46を支えることになるが、左リンクアーム61と右リンクアーム62とは左右に離れた位置に配置されている。肘置き46を移動させる際に、利用者が肘置き46の中央部分を押す場合、左リンクアーム61と右リンクアーム62とにはほぼ均等の力が加わる。そのため、連結バー63がなくても、左リンクアーム61と右リンクアーム62とは良好に連動して回転する。しかし、利用者が肘置き46に対し、左右のいずれか一方に偏った力を加える場合がある。例えば、利用者が右利きの場合、利用者は肘置き46の右側部分を押す傾向がある。その場合、右リンクアーム62に加わる力は左リンクアーム61に加わる力よりも大きくなる。そのため、右リンクアーム62が左リンクアーム61よりも早く回転し、両リンクアーム61,62同士の前後位置がずれる場合がある。そのような場合、両リンクアーム61,62が捩れてしまい、良好に連動しないおそれがある。ところが、左リンクアーム61と右リンクアーム62とが良好に連動しないと、肘置き46は円滑に移動しなくなる。
しかしながら、本実施形態によれば、左リンクアーム61と右リンクアーム62とは、連結バー63によって連結されている(図4参照)。よって、位置変更の際に肘置き46に加えられる力が左右に偏っていたとしても、左リンクアーム61と右リンクアーム62とは良好に連動して回転する。したがって、使用位置P1と非使用位置P2との間で、肘置き46を円滑に移動させることができる。
本実施形態では、連結バー63は、左リンクアーム61の根元側連結部61aと先端側連結部61bとの間の部分と、右リンクアーム62の根元側連結部62aと先端側連結部62bとの間の部分とに接続されている。また、連結バー63は特に、左リンクアーム61を根元側連結部61aと先端側連結部61bとの間で三等分したときの中央の部分と、右リンクアーム62を根元側連結部62aと先端側連結部62bとの間で三等分したときの中央の部分とに接続されている。このことにより、左リンクアーム61の回転と右リンクアーム62の回転とを更に良好に連動させることができ、肘置き46を更に円滑に移動させることができる。
本実施形態では、肘置き46の左リンクアーム61および右リンクアーム62の先端側連結部61b、62bに対する所定量以上の回転を規制する回転規制部を備えている。回転規制部により、肘置き46の移動中に肘置き46の前端部または後端部が跳ね上がることを防止することができる。よって、肘置き46を移動させるときに、肘置き46が利用者の顔などに接触することをより確実に防止することができる。
本実施形態では、回転規制部は、肘置き46の下面に設けられたフック49によって構成されている。このことにより、連結バー63をフック49に引っ掛けるという簡単な構成で、肘置き46の跳ね上がりを防止することができる。また、連結バー63を、肘置き46の跳ね上がり防止のための部材としても有効活用することができる。
以上、本発明の実施の一形態について説明した。しかし、本発明の実施の形態が前記実施形態に限定されないことは勿論である。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。次に、本発明の他の実施形態の例について、簡単に説明する。
上記実施形態では図6に示すように、肘置き46は、非使用位置P2に配置されているときに、少なくとも一部がグリップバー41と接触し、グリップバー41に支持されるように構成されている。しかしながら、肘置き46は、非使用位置P2に配置されているときにグリップバー41と接触しなくてもよく、グリップバー41よりも上方に配置されてもよい。肘置き46の支持部81は、必ずしも必要ではない。
上記実施形態では、肘置き46は、使用位置P1に配置されているときに、左グリップ42および右グリップ43に支持されるように構成されている。しかしながら、肘置き46は、使用位置P1に配置されたときに、左グリップ42および右グリップ43のうちの一方または両方に支持されなくてもよい。肘置き46は、使用位置P1に配置されたときに、左グリップ42および右グリップ43よりも上方に配置されてもよい。