JP2019053393A - 電力自給自足率試算方法および電力自給自足率試算装置 - Google Patents

電力自給自足率試算方法および電力自給自足率試算装置 Download PDF

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Abstract

【課題】未建築の建物であっても、電力の自給自足率を高精度で試算可能な電力自給自足率試算方法を提供すること。【解決手段】既存の複数の住宅Hの太陽光パネル1の出力能力、断熱性能、蓄電装置2の有無および容量を含む建物仕様のデータと、地域データと、住人構成データと、消費電力量データおよび発電電力量データとを管理サーバ5に入力し、管理サーバ5のデータから、試算対象となる邸の所在地および住人構成に応じた複数の住宅Hの消費電力量データおよび発電電力量データを含む試算用のデータを抽出し(S105)、入力された試算対象の邸の設定条件と試算用のデータとに基づいて、試算対象の邸の総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量のモデルデータを求め(S109)、モデルデータの総消費電力量に占める総買電電力量以外の電力量の割合を電力自給自足率として求める(S110)電力自給自足率試算方法とした。【選択図】図4

Description

本開示は、電力自給自足率試算方法および電力自給自足率試算装置に関するものである。
近年、太陽光発電などの再生可能エネルギ(自然エネルギ)を利用した発電装置を蓄えた建物において、消費電力に対する発電電力などを自給自足率として演算する装置が知られている(例えば、特許文献1〜特許文献4参照)。
これらの従来技術は、現時点、あるいは、所定期間の実際の自給自足率を演算し、それを表示したり、電力供給の切り替えの制御に用いたりするものである。
特許第5579459号公報 特開2016−63591号公報 特許第3875149号公報 特許第5780833号公報
上述の従来技術は、建築後の建物においてその時点あるいは過去の消費電力や、発電電力などのデータに基づいて、その建物の自給自足率を演算するものであるが、建築前の建物における自給自足率を高精度に演算するものではなかった。
それに対し、近年、建築前に、太陽光発電装置などの仕様を、どのようにすればどの程度の自給自足率になるかを具体的に知りたいという需要が出てきたが、これを高精度で試算可能なものが無かった。
そこで、本発明は、未建築の建物であっても、電力の自給自足率を高精度で試算可能な電力自給自足率試算方法および電力自給自足率試算装置を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本開示の電力自給自足率試算方法は、
太陽光発電装置を備えた建物の電力自給自足率を試算する電力自給自足率試算方法であって、
既存の複数の建物のそれぞれの太陽光発電装置の出力能力、蓄電装置の有無およびその容量を含む建物仕様のデータと、各建物の地域データと、各建物の住人構成データと、各建物の所定期間に測定した電力データと、を各建物に関連付けしてデータベースに入力するデータ入力ステップと、
試算対象となる建物の、所在地、住人構成、前記太陽光発電装置の容量データおよび前記蓄電装置の有無を含む容量データを含む設定条件を入力する設定条件データ入力ステップと、
前記データベースに入力された前記データから、試算対象となる建物の所在地および住人構成に応じた前記建物の電力データを含む試算用のデータを抽出する抽出ステップと、
前記抽出した前記試算用のデータに基づいて、前記試算対象の建物に応じた所定期間の総消費電力量と、総売電電力量および/または総買電電力量とを含む電力に関するモデルデータを作成し、このモデルデータに基づいて所定期間の前記総消費電力量に占める前記総買電電力量以外の電力量の割合を電力自給自足率として求める電力自給自足率演算ステップと、
を備える電力自給自足率試算方法とした。
また、前記目的を達成するために、本開示の電力自給自足率試算装置は、
既存の複数の建物のそれぞれの太陽光発電装置の出力能力、蓄電装置の有無およびその容量を含む建物仕様のデータと、各建物の地域データと、各建物の住人構成データと、各建物の所定期間に測定した電力データと、が前記建物毎に関連付けて入力されたデータベースと、
前記データベースと通信可能な演算装置と、
前記演算装置の演算結果を表示する表示装置と、
を備え、
前記演算装置は、
前記データベースに入力された前記データから、試算対象となる建物の所在地および住人構成に応じた前記建物の前記電力データを抽出し、
前記試算対象となる建物に対応する前記太陽光発電装置の容量データと、前記蓄電装置の有無を含む容量データと、を含む設定条件に基づいて、前記試算対象の建物に応じた所定期間の総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量のモデルデータを作成し、さらに、このモデルデータに基づいて所定期間の前記総消費電力量に占める前記総買電電力量以外の電力量の割合を電力自給自足率として求め、
前記求めた電力自給自足率を前記表示装置により表示する電力自給自足率試算装置とした。
本開示の電力自給自足率試算方法および電力自給自足率試算装置では、試算対象の建物と、地域や住人構成が同一あるいは近似した建物における過去の実際の電力データに基づいて、試算対象の建物の総消費電力量、総発電電力量および/または総買電電力量のモデルデータを作成し、このモデルデータに基づいて電力自給自足率を試算する。
実際の複数の建物の消費電力量や総発電電力量および/または総買電電力量のデータは、地域毎に異なる自然条件や、住人構成を反映したデータとなっている。このような地域や住人構成に応じた建物の電力データに基づいて求めたモデルデータを使用して、電力の自給自足率の演算を行うため、単に、建物に設置する装置の仕様、性能などに基づいて試算するものよりも、高精度で電力自給自足率を試算することができる。
本発明の実施の形態1の電力自給自足率試算方法を実施する電力制御システムの全体構成を模式的に示す全体システム図である。 前記電力制御システムにおける住宅側の構成を示すブロック図である。 前記電力制御システムにおける管理サーバ側の構成を示すブロック図である。 前記電力制御システムによる電力自給自足率の演算の処理の流れを示すフローチャートである。 前記電力制御システムにおける表示画面の概略を示す説明図である。 管理サーバから抽出した消費電力量のデータの分布を示す説明図である。 実施の形態1において蓄電装置を設けない設定で試算した場合の太陽光発電量、消費電力量の変化の一例を示すタイムチャートである。 図7Aに示す太陽光発電量、消費電力量に基づいて試算した電力自給自足率、電力自給自足日数の表示状態を示す図である。 図7Aの試算例に対し太陽光発電装置の性能および邸の断熱性能を向上させた設定条件での試算による太陽光発電量、消費電力量の変化の一例を示すタイムチャートである。 図8Aに示す太陽光発電量、消費電力に基づいて試算した電力自給自足率、電力自給自足日数の表示状態を示す図である。 図8Aの試算例に対し蓄電装置を設置した設定条件での試算による太陽光発電量、消費電力量の変化の一例を示すタイムチャートである。 図9Aに示す太陽光発電量、消費電力量に基づいて試算した電力自給自足率、電力自給自足日数の表示状態を示す図である。 図9Aの試算例に対しさらに電気自動車を追加した設定条件での試算による太陽光発電量、消費電力量の変化の一例を示すタイムチャートである。 図10Aに示す太陽光発電量、消費電力量に基づいて試算した電力自給自足率、電力自給自足日数の表示状態を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
まず、図1を参照しながら実施の形態1の電力自給自足率試算方法を実施する電力自給自足率試算装置としての電力制御システムの全体構成について説明する。
この電力制御システムは、制御される建物としての住宅H1,H2,H3,・・・,HXは、電力会社の発電所や地域毎に設置されたコジェネレーション設備などの系統電力網としての商用電源E(図2参照)に接続されている。なお、以下の説明において、住宅H1,・・・,HXのうちの特定のものを指さない場合は、単に住宅Hと表記する。
これらの複数の住宅は、全国に配置されている。また、各住宅は、その所在地に応じた省エネルギ基準に基づいて予め設定された複数の地域区分に分けられており、地域区分に応じた断熱性能が与えられている。例えば、平成25年の省エネルギ基準による地域区分によれば、全国が1〜8の地域区分に分けられている。
各住宅Hは、少なくとも太陽光発電装置としての太陽光パネル1と、電力を一時的に蓄えておく蓄電装置2とを備えている。さらに、これらの住宅Hは、それぞれインターネットなどの外部の通信ネットワークNを介して管理サーバ5に接続され、管理サーバ5との間で、計測値や演算処理結果などのデータの送受信や各種制御信号の送受信などが行われる。本実施の形態1では、これらの住宅Hから管理サーバ5に送られる電力データとして、少なくとも、発電電力量、買電電力量、売電電力量が含まれる。本実施の形態1では、このような実際に計測された電力データを用いて、試算対象の住宅(邸)の電力自給自足率の演算を行う。
なお、管理サーバ5は、図示は省略するが、CPUとRAM、ROMなどのメモリを備えた情報処理装置により構成され、CPUの制御による通信ネットワークNを介した通信を行う通信インタフェース51(図3参照)などを備える。
(住宅側の構成)
次に、住宅Hの電力系統および通信系統を模式的に示すブロック図である図2に基づいて、住宅H側の構成について説明する。
各住宅Hの電力供給系として、分電盤10が設けられている。
分電盤10は、商用電源Eに接続され、かつ、住宅Hの太陽光パネル(太陽光発電装置)1、蓄電装置2、電力負荷群3に接続されている。
太陽光パネル1は、太陽光を、太陽電池を利用することによって、電力に変換して発電を行う装置である。この太陽光パネル1は、太陽光を受けることができる時間帯のみ電力を供給することが可能である。また、太陽光パネル1によって発電された直流電力は、通常、パワーコンディショナ(不図示)によって交流電力に変換されて使用される。なお、これらの住宅Hに設置された太陽光パネル1は、複数の仕様があり、仕様の違いで発電容量などがことなるもので、住宅Hごとの仕様の違いについては、管理サーバ5側の後述する邸情報データベース53aに記憶されている。
一方、蓄電装置2も、太陽光パネル1と同様に、パワーコンディショナ(不図示)により直流−交流の変換が成されて、蓄電(充電)および放電の制御がなされる。この蓄電、放電の制御は、例えば、蓄電装置2に、商用電源Eから供給される深夜電力などの電力価格が安い電力や、太陽光パネル1にて発電された電力を蓄電し、商用電源Eの電力価格が高い時間帯に放電を行うよう制御する。加えて、売電価格などを考慮して、発電電力の一部あるいは全てを、商用電源E側に放電して売電する制御も含まれる。なお、蓄電装置2の蓄電電力の容量や定格出力などの仕様も、管理サーバ5側の後述する邸情報データベース53aに住宅Hに関連付けて記憶されている。
また、蓄電装置としてさらに電動車両MVを含んでよい。この電動車両MVに車載の蓄電池(不図示)は、EVパワーコンディショナ8を介して分電盤10と接続可能となっている。この電動車両MVに搭載された蓄電池(不図示)は、走行のための充電を行う場合は負荷となる一方で、住宅Hの電力負荷群3のために放電させる蓄電装置2として用いることができる。なお、電動車両MVとしては、モータのみを駆動源とするいわゆる電気自動車のみならず、エンジンも搭載したプラグインハイブリッド車を含む。
電力負荷群3は、電力を消費して駆動する複数の電力負荷から成るもので、電力負荷としては、例えば、給湯装置31、空調装置32、照明スタンドやシーリングライトなどの照明装置(不図示)、冷蔵庫やテレビなどの家電装置(不図示)、調理装置などが含まれる。そして、分電盤10と、電力負荷群3の各電力負荷とは、複数の分岐回路20a,20b〜20nを介して接続されている。
電力負荷群3などの消費電力は、計測装置4により計測される。
すなわち、計測装置4は、商用電源Eから分電盤10へ向けて供給される買電力量、住宅Hから商用電源Eへ向けて供給される売電力量、太陽光パネル1で発電された発電電力量、蓄電装置2から放電される放電電力量、蓄電装置2に充電される充電電力量を計測する。さらに、各分岐回路20a〜20nを介して電力負荷群3へ供給される消費電力量を計測するようにしてもよい。なお、消費電力量は、前記計測を行わずに買電電力量+(発電電力量−売電電力量)から求めることもできる。
また、計測装置4による各電力量の計測は、1秒単位、1分単位、1時間単位などの任意の時間毎に積算して行うことができる。そして、計測装置4によって計測された計測値のデータは、管理サーバ5側の後述する消費電力履歴データベース53bに記憶される。
なお、各住宅Hには、通信インタフェース19が設けられている。この通信インタフェース19は、インターネットなどの外部の通信ネットワークNを介して管理サーバ5に接続されており、管理サーバ5との間で、計測装置4の計測値や管理サーバ5における演算処理結果などのデータの送受信や制御信号の送受信を行う。
また、住宅コントロールユニット18は、分電盤10から蓄電装置2を含む電力負荷群3への電力の供給をコントロールすることができるもので、この住宅コントロールユニット18は、管理サーバ5から送られる運転計画に基づいて、蓄電装置2を含む電力負荷群3の運転を行う。
(管理サーバの構成)
次に、図3に基づいて、管理サーバ5の構成について説明する。
管理サーバ5は、通信インタフェース51と、各種制御を行う制御部52と、邸情報データベース(DB)53aと、消費電力履歴データベース(DB)53bと、電力価格データベース(DB)53cと、気象データベース(DB)53dと、運転パターンデータベース(DB)53eとを備える。
通信インタフェース51は、通信ネットワークNを介して各住宅Hから送信されてくる計測値、処理要求などを、管理サーバ5の制御部52に送る。また、通信インタフェース51は、各種データベース53a〜53eに記憶されたデータ、制御部52で行われた演算処理結果、更新プログラムなどを各住宅Hに向けて送る機能を有している。なお、この制御部52で行われた演算処理結果として、家庭での電力の使用の効率化を図ってエネルギを節約するいわゆるHEMS(Home Energy Management System)制御が含まれる。
邸情報データベース53aには、各住宅Hに与えられた邸コード(識別番号)、およびその邸コードに関連付けられた住所、建築年、断熱性能、間取りおよび床面積、電気配線、使用部材、太陽光パネル1の仕様(発電容量)、蓄電装置2の仕様(蓄電容量、定格出力)などの各種設備の仕様に関する情報が記憶されている。
消費電力履歴データベース53bには、各住宅Hで計測あるいは演算された消費電力量を含む電力データが、通信インタフェース51を介して受信されて記憶される。この消費電力量の履歴は、単位時間毎に記憶されるとともに、曜日など暦に関連付けして記憶される。なお、消費電力履歴データベース53bでは、気温などの気象条件に影響を受け易い空調装置32などの空調負荷および給湯装置31などの給湯負荷の消費電力量と、気温などの気象条件に影響を受け難いその他の負荷の消費電力量とを負荷別にカテゴリー分けして記憶してもよい。
さらに、消費電力履歴データベース53bには、住宅Hごとに、実際の単位時間毎の発電電力量が、気象データ(日射量)に関連付けて記憶されている。例えば、住宅H毎に太陽光パネル1の設置条件が異なることから、同じ地域区分で同じ日射量であっても、発電量に違いが生じるため、住宅Hごとにそのデータを記憶する。加えて、消費電力履歴データベースには、単位時間毎の買電電力量も記憶されている。
電力価格データベース53cには、各時間帯毎の電力価格(住人側から見て買電価格)や、太陽光パネル1で発電した電力を電力会社などが買い取る価格(住人側から見て売電価格)が記憶されている。
気象データベース53dには、気象庁や気象予報会社などの図示省略のサーバから通信ネットワークNを介して受信した各住宅Hが立地する全国各地の気温や日射量などの翌日の気象予報データが記憶されている。さらに、気象データベース53dには、時々刻々の実際の気象データ、気温、湿度、日照量などの気象データを記憶し、これを過去のデータとして用いるようにしてもよい。
運転パターンデータベース53eには、各住宅Hに設置された電力負荷群3および蓄電装置2の様々な運転パターンが、気象データに対応付けて記憶されている。
制御部52は、運転計画部52a、運転監視部52bを備える。
運転計画部52aは、翌日の気象予報および過去の消費電力量データに基づいて、翌日の時間毎の必要な消費電力量、発電量、運転パターンを予測し、蓄電装置2の蓄電運転時刻、放電運転時刻、給湯装置31による蓄湯運転時刻などの設定を行う。
運転監視部52bは、住宅Hから送られてくるデータに基づいて、住宅Hにおける電力を利用する運転状態を監視し、蓄電装置2の異常を含む異常発生時には、その異常を報せるなどの異常に応じた処理を実行する。なお、この異常を報せる処理としては、表示装置18aにより表示する処理や、あるいは住宅Hの管理会社に、通信ネットワークNを介して電話やメールなどにより報せる処理などを行う。
(電力自給自足率試算方法)
本実施の形態1の電力自給自足率試算方法は、上記の管理サーバ5と、この管理サーバ5と通信ネットワークNを介して接続可能なパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)PCとにより実行される。
このパソコンPCは、管理サーバ5に記憶された各住宅Hのデータに基づいて、試算対象の住宅(以下、この試算対象の住宅を既存の住宅Hと区別して邸と称する)に関する設定条件データに応じて電力自給自足率を演算する。この試算(電力自給自足率を演算)は、例えば、これから建設する邸における仕様(太陽光パネル1の容量、邸の断熱仕様、蓄電装置2の容量など)を決定する際に用いることができる。
ここで、本実施の形態1では、試算対象がいわゆるオール電化住宅の場合を例に挙げる。なお、オール電化住宅とは、調理・空調・照明・給湯などを全て電気で賄っている住宅である。
(試算処理)
以下に、パソコンPCにおいて実行する電力自給自足率の演算の処理の流れを図4のフローチャートに基づいて説明する。
この電力自給自足率は、パソコンPCにより、試算ソフトを立ち上げることで開始される。
最初のステップS101では、邸条件入力画面(不図示)を立ち上げる。この邸条件入力画面は、管理サーバ5に入力されている各住宅Hのデータの中で、試算対象の邸と同様の条件の住宅Hを抽出するための条件を入力するための画面であって、パソコンPCの表示画面SCに表示される。
次のステップS101bは、操作者による入力操作で行われるもので、邸条件を入力する。パソコンPCによる処理ではないため、点線枠として表示している。また、入力する邸条件としては、地域区分と、住人構成(家族構成、世帯数など)とが含まれる。すなわち、試算対象の邸が属する地域および住人構成を、邸条件として入力し、試算対象の邸とこれらの条件が一致する住宅Hのデータを管理サーバ5から取り出す。また、入力条件として、邸の仕様に関するものを加え、より邸と共通する仕様の住宅Hを特定するようにしてもよい。
なお、上述のような邸条件は、試算対象の邸と、消費電力量が類似する住宅Hのデータを取り出すためのものである。すなわち、試算対象の邸と、同一区分の地域に建築され、類似した住人構成を条件に入れることで、断熱性能や、空調、給湯、照明などの消費電力量として邸と類似した住宅Hを検索することができる。
例えば、本実施の形態1では、試算対象の邸がいわゆるオール電化住宅であり、入力条件として、これを加えてもよい。あるいは、さらに具体的に試算対象の邸の商品名(住宅商品)を入力するようにしてもよい。この場合、試算対象の邸と同商品の住宅Hのデータのみをダウンロードすることが可能である。
また、本実施の形態1では、試算に必要なデータとして、所定時間毎の総消費電力量、発電電力量、買電電力量、太陽電池容量が含まれるが、これらのデータを指定する場合は、このステップS101bにおいて、入力するようにしてもよい。
ステップS101bに続くステップS102では、データ読込指示操作が行われたか否か判定し、データ読込指示操作が行われた場合は、ステップS103に進み、データ読込指示操作が行われない場合は、ステップS102を繰り返す。
データ読込指示操作が行われて進むステップS103では、管理サーバ5に入力されている住宅Hのデータのうち、ステップS101bにおいて入力した邸条件に応じた住宅Hを検索し、検索した住宅Hを複数表示する。
ステップS103に続く点線枠のステップS103bは、住宅Hの表示の後に操作者による入力操作で行われるもので、表示された住宅Hの中から試算に利用したい住宅Hを選択する。
この場合、選択する住宅Hは、検索された複数の住宅Hの中から、総消費電力量が中央値、あるいは中央値近傍の値の1つの住宅Hを選択する。この選択は、自動的に行ってもよいし、中央値およびその付近のデータの中から、好ましいデータを有した住宅Hを手作業により選択して行ってもよい。ここで、データとして好ましいものとは、例えば、消費電力量のデータの他に、発電電力量および買電電力量のデータが年間を通じて正常に記録されているものである。さらに、消費電力量の値が中央値近傍のものの中で、方位、家族構成、床面積、太陽光パネル1の仕様などが、試算対象の邸に最も近いものを選択するようにしてもよい。
このように、総消費電力量のデータの中央値あるいはその近傍の住宅Hの中から、自動あるいは手動により、1つの住宅Hを選択し、この選択した住宅Hの総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量のデータを抽出する。この総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量のデータは、1年間に亘る所定時間毎のデータであって、本実施の形態1では、1年間の1時間あるいは30分毎のデータとする。なお、ここで読み込むデータとしては、総消費電力量の他には、総発電電力量と総買電電力量のデータとのいずれか一方であってもよい。すなわち、総買電電力量は、総消費電力量から総発電電力量を差し引いた値として求めることができ、一方、総売電電力量は、総発電電力量から総消費電力量を差し引いた値として求めることができるからである。
上記の総消費電力量の分布の中央値の住宅Hのデータを抽出することについて説明を加えると、図6は試算対象の邸の地域区分および住人構成が一致する複数の住宅Hのデータの中から、年間総消費電力量のデータの分布の一例を示す。図6に示す年間総消費電力量のデータにおいて、年間総消費電力量の中央値は、a000〜b000kWhとなる。
この図示の例では、年間総消費電力量がa000〜b000kWhの住宅Hの数は58程度であり、これの中の年間総消費電力量の中央値あるいはその近傍の値の1つの住宅Hを選択する。
ステップS103bに続くステップS104では、データ読込指示操作が行われたか否か判定し、データ読込指示操作が行われた場合は、ステップS105に進み、データ読込指示操作が行われない場合は、ステップS104を繰り返す。
続くステップS105では、ステップS103bにおいて選択された住宅Hの総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量の実計測データおよび各種仕様のデータを、パソコンPCにダウンロードし保存する。
なお、本実施の形態1では、太陽光パネル1や蓄電装置2の経時的な劣化を考慮して、ステップS103において検索する対象の住宅Hは、築年数が浅く(例えば、1,2年以内)上記の劣化が殆ど生じていない住宅Hに限って検索している。したがって、ステップS105において、ダウンロードされたデータも、築年数が浅い(例えば、1,2年以内)住宅Hのデータである。また、検索する住宅Hとして、築年数の浅い住宅に限らずに検索し、住宅Hの築年数に応じて、総発電電力量などのデータを新築当時のデータ相当に補正するようにしてもよい。
次のステップS106では、図5に示す自給自足率試算用画面100を表示する。この自給自足率試算用画面100は、入力データ欄110と、試算結果表示欄120とを備える。なお、この自給自足率試算用画面100は、データのダウンロード後、自動的に行ってもよいし、操作者の操作により行うようにしてもよい。
そして、ステップS106の自給自足率試算用画面100の表示処理に続く点線枠のステップS106bは、操作者による入力操作で行われるもので、入力データ欄110に、試算に必要な邸に関する設定条件を入力する。この設定条件は、邸の断熱仕様などの建物仕様、太陽光パネル1の仕様(容量)、蓄電装置2の仕様(容量)が含まれる。なお、この設定条件の入力は、邸条件入力(ステップS101b)の際に、同時に行ってもよい。
ここで、上記図5に示す自給自足率試算用画面100およびその入力について説明を加える。
まず、入力データ欄110について説明すると、この入力データ欄110は、邸設定入力部111と蓄電池設定入力部112と太陽光発電設定入力部113とを備える。
邸設定入力部111は、試算対象の邸の設定条件を入力するもので、少なくとも、選択した住宅Hの総消費電力量データおよび総発電電力量データと、電気料金体系データと、を入力し表示する欄を備える。なお、この入力は、ステップS105の処理により実計測データをダウンロードした時点で自動的に行うようにしてもよい。
さらに、邸設定入力部111は、電動車両MV(図2参照)に関する燃料調整費および年間走行距離に関するデータを入力する欄を備える。すなわち、電動車両MVの蓄電池(不図示)に対して充放電を行う場合、これも試算に含む。
蓄電池設定入力部112は、試算対象の邸の蓄電装置2の容量に関する入力を行う。ここで、試算対象の邸は、既設の邸であってもよいが、以下の説明では、建築前の邸において、邸における各種仕様を検討する場合を説明する。
すなわち、本実施の形態1の説明においては、電力自給自足率の試算は、新規の邸(住宅)の建築にあたり、邸の断熱仕様や、太陽光パネル1の仕様や、蓄電装置2の仕様や、住宅設備(調理・空調・電気・給湯などの設備)の仕様などを決定するために行う場合を例に挙げる。
また、蓄電池設定入力部112では、例えば、邸の建築者が電動車両MVを有している場合は、電動車両MVの蓄電池の容量に関する入力、実際には、電動車両MVの型式の入力を行う。この場合、さらに、走行距離などの入力を行うことで、試算の精度を向上させることができる。
太陽光発電設定入力部113は、試算対象の邸の太陽光パネル1の容量に関する入力を行う欄である。なお、容量に加え、発電電力の買い取り方式や、買い取り価格、買い取り方式も入力可能となっている、例えば、試算対象が、将来の数年先の場合は、その年数に応じた太陽光パネルの劣化度なども入力可能となっている。
以上のように、ステップS106bでは、入力データ欄110を用いて必要な邸の設定条件を入力する。なお、売電価格および買電価格や、電力の制御タイプの違いなどにより、買電電力量は、下記の試算時に演算により求めるようにしているが、この買電電力量も、ステップS103bにおいて選択した住宅Hの買電電力量のデータも、設定条件に含み、この値を用いて買電電力量の推定を行うようにしてもよい。
図4に戻り、ステップS106bに続くステップS107では、試算開始指示が有ったか否か判定し、試算開始指示が有った場合はステップS108に進み、試算開始指示が無い場合は、ステップS107を繰り返す。
ここで、試算開始指示は、自給自足率試算用画面100の入力データ欄110において必要データの入力が終わり、操作者が試算を指示する画面上のボタンの操作を行うことで成される。
試算開始指示が有った場合に進むステップS108では、入力データ欄110の入力データの読み込みを行った後、ステップS109に進む。
ステップS109では、入力データ欄110に入力された各データに基づいて、邸の仕様に応じた総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量の想定値であるモデルデータの演算を行う。
すなわち、1年間の各実計測データに基づいて、試算対象の邸における1年間の総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量の想定値である邸のモデルデータを演算し、作成する。
なお、ここで、モデルデータは、1年間の月別、日毎、1時間毎あるいは30分毎の光熱費[円]、売電量[円]、買電量[円]、電気自動車利用量[円]、消費電力量[kWh]、発電量[kWh]、売電量[kWh]、買電量[kWh]、電気自動車利用量[kWh]、自家電力消費[kWh]、放電量[kWh]のデータが含まれるものが好ましい。
また、電力自給自足率の演算のために、少なくとも、総発電電力量と総買電電力量との少なくとも一方と、総消費電力量とのモデルデータを作成する。すなわち、買電電力量は、消費電力量から発電電力量を差し引いた値として求めることができ、一方、売電電力量は、発電電力量から消費電力量を差し引いた値として求めることができる。したがって、消費電力量、発電電力量、買電電力量については、必ずしも、その全てをダウンロードし、かつ、モデルデータを作成する必要はない。
同様に、消費電力量としても、住宅Hから消費電力量をそのまま読み込む他に、発電電力量、買電電力量、売電電力量から消費電力量を演算することもできる。すなわち、買電電力量+(発電電力量−売電電力量)=総消費電力量として求めることもできる。
また、この総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量の試算を行うのにあたり、住宅Hの実際の仕様と、試算対象の邸において設定された太陽光パネル1の容量、蓄電装置2の容量、消費電力量、住宅性能(断熱性など)などの仕様の相違を換算する演算式が設定されている。
すなわち、予め住宅の仕様や住宅設備の仕様や、太陽光パネル1の能力、蓄電装置2の能力の違いを補正する演算式が設定されている。例えば、データをダウンロードした住宅Hの太陽光パネル1の能力(容量)と、試算対象の邸において試算する太陽光パネル1の能力(容量)とが、異なる場合がある。したがって、その能力の違いにより、発電電力量の実計測データを、試算対象の邸の仕様の太陽光パネル1において1年間発電を行った場合の発電電力量のモデルデータ(想定値)に換算できるように、予め演算式の形でパソコンPCに入力されている。これにより、所定時間(1時間あるいは30分)毎の発電量の実測値に基づいて、試算対象の邸における所定時間(1時間あるいは30分)毎の発電量のモデルデータ(想定値)を得ることができる。
同様に、蓄電装置2についても、住宅Hの仕様と、邸の設定仕様との違いを換算する補正用の演算式が、予めパソコンPCに入力されている。したがって、所定時間(1時間あるいは30分)毎の充放電量の実測値に基づいて、試算対象の邸における所定時間(1時間あるいは30分)毎の充放電量のモデルデータ(想定値)を得ることができる。
また、消費電力量についても、例えば、住宅Hと邸とで、世帯数が共通していても、居住人数が異なる場合があり、居住人数が多いほど空調や給湯に必要なエネルギが増加し、消費電力量が増加する。また、住宅Hの断熱性能と、邸の設定した断熱性能とが異なる場合、断熱性能が低い方が空調による消費電力量が増加する。
したがって、邸との居住人数の違いや断熱性能の違いに応じて、住宅Hの消費電力量から邸の推定した消費電力量に換算する演算式が、予めパソコンPCに入力されている。これにより、所定時間(1時間あるいは30分)毎の消費電力量の実測値に基づいて、試算対象の邸における所定時間(1時間あるいは30分)毎の消費電力量のモデルデータ(想定値)を得ることができる。
ステップS110では、ステップS109において求めた邸の総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量のモデルデータ(想定値)を用いて、電力自給自足率および電力自給自足日を演算し、次のステップS111において、電力自給自足率および電力自給自足日を表示する。
なお、電力自給自足率は、総消費電力量に占める買電電力量以外の電力の割合であり、下記の式(1)により求める。
電力自給自足率(%)=[1−(1年間の総買電電力量)/1年間の総消費電力量)]×100・・・(1)
すなわち、1年間を通して、買電電力量が0となると自給自足率が100%となる。
また、電力自給自足日は、1日単位で総消費電力量、買電電力量を求めるため、買電電力量が0の日数を積算して求める。
(実施の形態1の作用)
次に、実施の形態1の作用を説明する。
この作用の説明では、邸の建築にあたり、オール電化の邸の仕様を決定する打合せの際に、仕様に応じて電力自給自足率を試算する場合を、順を追って説明する。
なお、前提として、管理サーバ5には、建設済みの複数の住宅Hにおける消費電力量、太陽光パネル1の発電電力量、蓄電装置2の充電電力量、放電電力量のデータが、所定の時間(例えば、1時間、30分)単位で入力されていれる。また、管理サーバ5では、この時間毎のデータが記憶されるとともに、これを積算した1日、週、月、年毎のデータも記憶される。
さらに、管理サーバ5では、住宅H毎の仕様に関するデータも予め記憶されている。
上記の打合せの際に、例えば、営業職などのパソコンPCの操作者は、本実施の形態1で用いる試算ソフトを立ち上げ(S101)、まず、試算対象となる邸の所在地に応じた地域区分と住人構成を入力し(S101b)、検索を開始する操作を行う。これに応じパソコンPCの処理ソフトは、試算対象の邸と地域区分が共通するとともに、住人構成が共通あるいは近似する住人構成のオール電化タイプの住宅Hを検索し表示する(S103)。なお、本実施の形態1では、検索対象は、築年数が浅い住宅Hに限っている。
そこで、操作者は、検索された住宅Hの中から、1年間の総消費電力量の中央値あるいはその近傍の住宅Hを選択し(S103b)、そのデータ読込指示操作を行うことにより(S104)、その住宅Hに関連付けられた電力に関する実計測データを管理サーバ5からダウンロードする(ステップS105)。
このデータのダウンロード後に、パソコンPCの表示画面SCに、自給自足率試算用画面100を表示する(ステップS106)。
そして、操作者は、自給自足率試算用画面100において、試算対象となる邸の仕様に関する設定条件の入力を行う(ステップS106b)。この設定条件として、太陽光パネル1の容量、蓄電装置2の有無及び容量、邸の断熱性能が含まれる。
操作者は、設定条件の入力を終えると、試算を開始させる操作を行う。これに応じ、パソコンPCでは、設定条件データおよび測定データの読み込みが成され(ステップS108)、設定条件データと測定データとに基づいて、試算対象の邸における総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量のモデルデータの演算を行う(ステップS109)。そして、総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量のモデルデータから電力自給自足率を演算し(ステップS110)、その演算結果の表示を行う(ステップS111)。
ここで、総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量は、所定時間毎(例えば、1時間や30分)に演算する。例えば、消費電力量は、平日と平日以外の休日などとでは、その消費パターンが異なる場合が多いが、これも、測定データにおける平日のパターンと、平日以外のパターンとに応じて、そのパターンに応じたモデルデータを演算する。その結果、1週間の総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量のモデルデータを高い精度で試算することができる。そして、これを積算した1か月の総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量のモデルデータも高精度で演算でき、さらに、年間の総消費電力量、総発電電力量、総買電電力量のモデルデータも高精度で求めることができる。したがって、電力自給自足率も高精度で求めることができる。
次に、上記の総消費電力、総発電電力、総買電電力のモデルデータおよび電力自給自足率の演算および演算結果の表示例を、図7A、図7B、図8A、図8B、図9A、図9B、図10A、図10Bに基づいて説明する。
図7A、図7Bは、試算の設定条件として蓄電装置2を設けず太陽光パネル1のみを設けた設定として試算した例を示している。
図7Aは、演算した太陽光発電量と消費電力量とを示しており、4月〜10月は、太陽光発電量が消費電力量を上回る時間帯が多いが、12月〜2月の冬場は、消費電力量が太陽光発電量を上回ることが多いのが分かる。
このように、蓄電装置2を設けない場合、図7Bに示すように、電力自給自足率の試算結果は、32%となり、電力自給自足日数は0という試算結果となった。なお、電力自給自足日数とは、1年間の内、1日の総買電電力量がゼロの日数のことである。また、蓄電池残量は、充電量から放電量を差し引いて求めることができる。電力自給自足ができない日は、蓄電池残量は0になる。一方、電力自給自足ができた日は、蓄電池残量は、+あるいは0となる。
次に、図8A、図8Bは、図7A、図7Bの設定条件よりも、太陽光パネル1の容量を高めるとともに、邸の断熱性を高めた設定として試算を行った結果を示す。なお、この場合も、蓄電装置2は設置しない設定としている。
この例では、図8Aに示すように、図7Aと比較して消費電力量が減ったことが分かるとともに、太陽光発電量が消費電力量を上回る時間帯が増加したのが分かる。
しかしながら、図8Aの下段に示すように、蓄電装置2の設定が無いため、夜間は、毎日、買電することとなる。
その結果、図8Bに示すように、電力自給自足率は、図7Bの場合よりも15%向上するが、電力自給自足日数は、図7Bと同様に、夜間の発電が無いため0日となる。
次に、図9A、図9Bは、図8A、図8Bの設定条件に加え、蓄電装置2を設置した設定での試算結果を示す。
この試算例では、図9Aの下段に示すように、消費電力の大部分が蓄電装置2からの放電で賄えるようになったことが分かる。しかしながら、太陽光発電量が減る冬場は、蓄電装置2の放電量が不足し、その間、買電により消費電力を賄うことなる。
また、この試算例では、図9Bに示すように、電力自給自足率が91%となり、エネルギ自給自足日も、大幅に増えて211日となった。
次に、図10A、図10Bは、図9A、図9Bの設定条件に加え、電動車両MVも設定条件に加えた設定での試算結果を示す。
この例では、蓄電装置2および電動車両MVによる蓄電量が大幅に増え、図10Aの下段に示したように、蓄電装置2の放電量が不足する冬場でも、蓄電装置2と電動車両MVにおける蓄電量の残量が残っていることが分かる。
この例の場合、図10Bに示すように、電力自給自足率が100%となり、電力自給自足日数も366日となった。
このように、邸を建築する前に、邸の電力自給自足率を試算により知ることができ、これらを考慮しながら、邸の仕様を決定することができ、特に、上記のように、電力自給自足率が100%とする仕様を確認することができる。また、邸の建築主は、仕様毎の費用と、その性能である電力自給自足率とを確認しながら、最適の仕様を決定できる。すなわち、電力自給自足率を100%にする場合であっても、最も経済的な仕様を知ることができる。
加えて、この試算は、邸の所在地と同じ地域区分に建てられた住宅における総消費電力量、総発電電力量などの実際に計測した電力データに基づいて演算しているため、単に、予め設定した値などに基づいて推定する場合と比較して、高精度で試算することができる。
すなわち、日本国内であっても、積雪量が多い東北地方や北海道と、日射量が多い九州や沖縄とでは、発電量が大幅に異なり、しかも、電力消費も、前者は暖房に多くを使用し、後者は冷房に多くを使用するというように、消費のパターンやその電力量が異なる。また、地域区分により、住宅の断熱性能も異なるため、同じ外気温であっても、暖房や冷房による消費電力量が異なる。それに対して、本実施の形態では、試算に、同じ地域区分に属する実際の住宅Hのデータおよびその断熱性能データを使用するため、高い試算精度を得ることができる。
また、実際の計測値を使用する住宅Hは、複数の住宅Hの中から、総消費電力量の値が中央値あるいはその近傍のデータを用いるため、最も、平均的な電力消費を行う住宅Hに基づいてモデルデータを形成することができる。
(実施の形態1の効果)
以下に、本開示の実施の形態1の効果を列挙する。
1)実施の形態1の電力自給自足率試算方法は、
太陽光パネル1を備えた邸の電力自給自足率を試算する電力自給自足率試算方法であって、
既存の複数の住宅Hのそれぞれの太陽光パネル1の出力能力、蓄電装置2の有無およびその容量を含む住宅仕様データと、各住宅Hの地域データと、各住宅Hの住人構成データと、各住宅Hの所定期間に測定した電力データと、を各住宅Hに関連付けして管理サーバ5のデータベースに入力するデータ入力ステップと、
試算対象の邸の太陽光パネル1の、所在地、住人構成、太陽光パネル1の容量データおよび蓄電装置2の有無を含む容量データを含む設定条件を入力する設定条件データ入力ステップ(S101b、S106b)と、
管理サーバ5のデータベースに入力されたデータから、試算対象となる邸の所在地および住人構成に応じた住宅Hの電力データを含む試算用のデータを抽出する抽出ステップ(S103〜S105、S108)と、
試算対象の邸の太陽光パネル1の容量データと、蓄電装置2の有無を含む容量データと、を含む設定条件を入力する設定条件データ入力ステップ(S106b)と、
抽出された試算用のデータに基づいて、試算対象の邸に応じた所定期間の総消費電力量、総発電電力量および/または買電電力量を含む電力に関するモデルデータを作成し(S109)、このモデルデータに基づいて所定期間の総消費電力量に占める総買電電力量以外の電力量の割合を電力自給自足率として求める電力自給自足率演算ステップ(S110)と、を備える。
このように、実施の形態1の電力自給自足率試算方法では、実際の住宅Hの消費電力量や発電電力量などの電力データに基づいて試算を行うため、単に、邸に設置する装置の仕様、性能などに基づいて試算するものよりも、高精度で電力自給自足率を求めることができる。
2)実施の形態1の電力自給自足率試算方法は、
データ入力ステップでは、前記電力データは、所定時間毎に測定した所定時間データと、これを前記所定期間のデータとして蓄積した所定期間データとを管理サーバ5のデータベースに入力する。
したがって、単に所定期間の消費電力量を入力するものと比較して、例えば、曜日別の細かなデータの蓄積と、これに基づくモデルデータの試算とを行うことが可能であり、より高精度に電力自給自足率を求めることができる。
3)実施の形態1の電力自給自足率試算方法は、
抽出ステップでは、設定条件として入力された所在地および住人構成に応じて検索した複数の住宅Hの総消費電力量を求め、各総消費電力量の中央値を基準として選択した住宅Hの電力データを抽出する。
すなわち、総消費電力量は、住宅Hによりばらつきが大きく、また、異なる住宅Hにおいて同一値となることも少ない。このため、例えば、消費電力量が平均値の住宅Hのデータは、最大値や最小値の住宅Hの影響を受けやすく精度低下を招くおそれがあり、また、最頻値も得られにくい。そこで、総消費電力量の中央値を基準として住宅Hを選択することで、最も標準的な電力消費を行っている住宅Hのデータを抽出することが可能となり、これにより、精度の高いモデルデータを得ることが可能となる。
さらに、総消費電力量が中央値の住宅Hに限定しないことにより、総消費電力量が中央値の住宅Hにおける他のデータに瑕疵がある場合に、これを排除することが可能となり、これよっても電力自給自足率の精度を高めることが可能となる。
4)実施の形態1の電力自給自足率試算方法は、
設定条件データ入力ステップでは、蓄電装置2の容量データとして、蓄電装置2に加え、電動車両MVの蓄電装置の容量データを含む。
したがって、電動車両MVを保有している場合の、試算精度がさらに高くなる。
5)実施の形態1の電力自給自足率試算方法は、
電力自給自足率演算ステップでは、
抽出した住宅Hの仕様と、試算対象の邸の仕様と、の差異に応じた補正を行って試算対象の建物における所定期間の総消費電力量、総発電電力量および/または総買電電力量のモデルデータを求める。
したがって、抽出した住宅Hの仕様と、試算対象の邸の仕様とに違いがあっても、高精度で、モデルデータを求め、高精度で電力自給自足率を求めることができる。これにより、試算対象の邸において、いろいろな仕様での電力自給自足率を試算し、この試算結果に基づいて、邸の仕様を決定することができる。
6)実施の形態1の電力自給自足率試算方法は、
電力自給自足率演算ステップでは、所定期間の電力自給自足率として、少なくとも年間の電力自給自足率を演算する。
このように、年間を通した電力自給自足率の試算が可能であり、より細かに邸の仕様を決定することが可能となる。
7)実施の形態1の電力自給自足率試算方法は、
電力自給自足率演算ステップでは、年間の電力自給自足率を演算するのにあたり、
所定時間毎の総消費電力量、総発電電力量、総買電力量のモデルデータを求め、これを蓄積して、平日と平日以外の1日の総消費電力量、総発電電力量、総買電力量のモデルデータを演算し、
平日と平日以外の1日の総消費電力量、総発電電力量、総買電力量のモデルデータに基づいて、1か月の総消費電力量、総発電電力量、総買電力量のモデルデータおよび1年のモデルデータのモデルデータを演算する。
このように、細かな単位のモデルデータを蓄積して、年間のモデルデータを演算するため、高精度のモデルデータの演算が可能であり、これに基づいて、高精度の電力自給自足率の演算が可能である。
加えて、1日単位の総消費電力量、総発電電力量、総買電力量から、1日単位の自給自足の可否を求め、自給自足日数を求めることが可能となる。
8)実施の形態1の電力自給自足率試算装置は、
既存の複数の住宅Hのそれぞれの太陽光パネル1の出力能力、蓄電装置2の有無およびその容量を含む建物仕様のデータと、各建物の地域データと、各建物の住人構成データと、各建物の所定期間に測定した電力データと、が前記建物毎に関連付けて入力された管理サーバ5のデータベースと、
データベースと通信可能なパソコンPCと、
パソコンPCの演算結果を表示する表示画面SCと、
を備え、
パソコンPCは、
管理サーバ5のデータベースに入力されたデータから、試算対象となる邸の所在地および住人構成に応じた住宅Hの電力データを抽出し、
試算対象となる邸に対応する太陽光パネル1の容量データと、蓄電装置2の有無を含む容量データと、を含む設定条件に基づいて、試算対象の邸に応じた所定期間の総消費電力量、総発電電力量および/または総買電電力量のモデルデータを作成し、さらに、このモデルデータに基づいて所定期間の前記総消費電力量に占める前記総買電電力量以外の電力量の割合を電力自給自足率として求め、
求めた電力自給自足率を表示画面SCにより表示する電力自給自足率試算装置とした。
このように、実際の住宅Hの消費電力量や発電電力量や買電電力量などの電力データに基づいて試算を行うため、単に、邸に設置する装置の仕様、性能などに基づいて試算するものよりも、高精度で電力自給自足率を求めることができる。
加えて、実際の住宅Hのデータの中から、試算用のデータを抽出するため、試算用のデータとしてより好ましいものを抽出可能となり、これにより、より高精度で電力自給自足率を算出することが可能である。
以上、図面を参照して、本開示の電力自給自足率試算方法および電力自給自足率試算装置の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本開示の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、実施の形態では、建物として住宅を例に挙げたが、住宅以外の建物に適用することも可能である。
また、実施の形態では、建物としての住宅は、太陽光発電装置(太陽光パネル)と蓄電装置とを備えたものを示したが、図7A,図7Bに示した例のように、太陽光発電装置のみを有し、蓄電装置を備えない住宅(邸)の電力の自給自足率の試算も可能である。
また、実施の形態では、これから建築する邸の仕様を決定するのに適用した例を示したが、これに限定されず、増改築の際に、太陽光発電装置や蓄電装置の増設を検討する際にも、用いることが可能である。
また、実施の形態では、試算対象の邸のタイプとして、オール電化住宅を例示したが、試算対象としては、このオール電化住宅に限定されるものではない。なお、このオール電化住宅以外のタイプの住宅(邸)における電力自給自足率の試算を行う場合には、データを取得する対象となる住宅についても、試算対象の邸と同様のタイプの住宅を検索し、そのデータをダウンロードする。
E 商用電源
H 住宅
MV 電動車両
N 通信ネットワーク
PC パーソナルコンピュータ(パソコン:演算装置)
SC 表示画面(表示装置)
1 太陽光パネル(太陽光発電装置)
2 蓄電装置
3 電力負荷群
4 計測装置
5 管理サーバ(データベース)
31 給湯装置
32 空調装置
53a 邸情報データベース
53b 消費電力履歴データベース
53c 電力価格データベース
53d 気象データベース
53e 運転パターンデータベース
100 自給自足率試算用画面
110 入力データ欄
111 邸設定入力部
112 蓄電池設定入力部
112 電池設定入力部
113 太陽光発電設定入力部
120 試算結果表示欄

Claims (8)

  1. 太陽光発電装置を備えた建物の電力自給自足率を試算する電力自給自足率試算方法であって、
    既存の複数の建物のそれぞれの太陽光発電装置の出力能力、蓄電装置の有無およびその容量を含む建物仕様のデータと、各建物の地域データと、各建物の住人構成データと、各建物の所定期間に測定した電力データと、を各建物に関連付けしてデータベースに入力するデータ入力ステップと、
    試算対象となる建物の、所在地、住人構成、前記太陽光発電装置の容量データおよび前記蓄電装置の有無を含む容量データを含む設定条件を入力する設定条件データ入力ステップと、
    前記データベースに入力された前記データから、試算対象となる建物の所在地および住人構成に応じた前記建物の電力データを含む試算用のデータを抽出する抽出ステップと、
    前記抽出した前記試算用のデータに基づいて、前記試算対象の建物に応じた所定期間の総消費電力量と、総売電電力量および/または総買電電力量とを含む電力に関するモデルデータを作成し、このモデルデータに基づいて所定期間の前記総消費電力量に占める前記総買電電力量以外の電力量の割合を電力自給自足率として求める電力自給自足率演算ステップと、
    を備える電力自給自足率試算方法。
  2. 請求項1に記載の電力自給自足率試算方法において、
    前記データ入力ステップでは、前記電力データは、所定時間毎に測定した所定時間データと、これを前記所定期間のデータとして蓄積した所定期間データとを前記データベースに入力する電力自給自足率試算方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の電力自給自足率試算方法において、
    前記抽出ステップでは、前記設定条件として入力された所在地および住人構成に応じて検索した複数の住宅の総消費電力量を求め、各総消費電力量の中央値を基準として選択した住宅の前記電力データを抽出する電力自給自足率試算方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電力自給自足率試算方法において、
    前記設定条件データ入力ステップでは、前記蓄電装置の容量データとして、前記蓄電装置に加え、電動車両の蓄電容量データを含む電力自給自足率試算方法。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電力自給自足率試算方法において、
    前記電力自給自足率演算ステップでは、
    前記抽出した前記建物の仕様と、前記試算対象の建物の仕様と、の差異に応じた補正を行って前記試算対象の建物における所定期間の前記総消費電力量、前記総発電電力量および/または前記総買電電力量のモデルデータを求める電力自給自足率試算方法。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の電力自給自足率試算方法において、
    前記電力自給自足率演算ステップでは、所定期間の電力自給自足率として、少なくとも年間の電力自給自足率を演算する電力自給自足率試算方法。
  7. 請求項6に記載の電力自給自足率試算方法において、
    前記電力自給自足率演算ステップでは、前記年間の電力自給自足率を演算するのにあたり、
    所定時間毎の前記総消費電力量、前記総発電電力量、前記総買電力量のモデルデータを求め、これを蓄積して、平日と平日以外の1日の前記総消費電力量、前記総発電電力量、前記総買電力量のモデルデータを演算し、
    前記平日と平日以外の1日の前記総消費電力量、前記総発電電力量、前記総買電力量のモデルデータに基づいて、1か月の前記総消費電力量、前記総発電電力量、前記総買電力量のモデルデータおよび1年のモデルデータのモデルデータを演算する電力自給自足率試算方法。
  8. 既存の複数の建物のそれぞれの太陽光発電装置の出力能力、蓄電装置の有無およびその容量を含む建物仕様のデータと、各建物の地域データと、各建物の住人構成データと、各建物の所定期間に測定した電力データと、が前記建物毎に関連付けて入力されたデータベースと、
    前記データベースと通信可能な演算装置と、
    前記演算装置の演算結果を表示する表示装置と、
    を備え、
    前記演算装置は、
    前記データベースに入力された前記データから、試算対象となる建物の所在地および住人構成に応じた前記建物の前記電力データを抽出し、
    前記試算対象となる建物に対応する前記太陽光発電装置の容量データと、前記蓄電装置の有無を含む容量データと、を含む設定条件に基づいて、前記試算対象の建物に応じた所定期間の総消費電力量、総発電電力量および/または総買電電力量のモデルデータを作成し、さらに、このモデルデータに基づいて所定期間の前記総消費電力量に占める前記総買電電力量以外の電力量の割合を電力自給自足率として求め、
    前記求めた電力自給自足率を前記表示装置により表示する電力自給自足率試算装置。
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