以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、一実施形態に係る塗布材押出容器の初期状態を示す縦断面図、図2は、図1の塗布材押出容器におけるパイプ部材の前進限の状態を示す縦断面図、図3は、図1の塗布材押出容器におけるピストンの前進限の状態を示す縦断面図である。図1に示すように、本実施形態の塗布材押出容器200は、塗布材Mを収容すると共に適宜使用者の操作により押し出し及び引き戻し可能とするものである。
塗布材Mとしては、例えば、リップスティック、リップグロス、アイライナー、アイカラー、アイブロー、リップライナー、チークカラー、コンシーラー、美容スティック、ヘアーカラー等を始めとした種々の棒状化粧料、筆記用具等の棒状の芯等を用いることが可能であり、特に、非常に軟らかい(半固体状、軟固形状、軟質状、ゼリー状、ムース状、及びこれらを含む練り状等の)棒状物を用いるのが好適である。また、外径が1mm以下の細径棒状物や10mm以上の太めの棒状物が使用可能である。
また、塗布材Mとしては、硬度が比較的低い半固形状のものを用いるのが好適であり、特に好ましいとして0.4N〜0.9N程度の硬度を有する塗布材Mを用いることが可能である。この塗布材Mの硬度は、化粧品において硬度を計るために使用される一般的な測定方法により求められる。ここでは、例えばFUDOH RHEO METER[RTC-2002D.D](株式会社レオテック社製)を測定器として用い、雰囲気温度25℃条件下にてφ2mmの鋼棒(アダプタ一)を6cm/minの速度で塗布材Mに深さ10mm程度挿入したときに当該塗布材Mに生じるピーク時の力(強度)を硬度(針入度)としている。
塗布材押出容器200は、内部に塗布材Mが充填され吐出口(開口)201aを先端に有する先筒201と、その前半部に先筒201を内挿して該先筒201を軸線方向及び軸線回り回転方向(以下、単に「回転方向」ともいう)に係合し一体となるように連結する本体筒202と、この本体筒202の後端部に相対回転可能にして軸線方向に連結された操作筒203と、を外形構成として具備し、先筒201及び本体筒202により容器前部が構成されると共に、操作筒203により容器後部が構成される。
なお、「軸線」とは、塗布材押出容器200の前後に延びる中心線を意味し、「軸線方向」とは、前後方向であって軸線に沿った方向を意味する(以下、同じ)。また、塗布材Mの繰出し方向を前方(前進する方向)とし、塗布材Mの繰戻し方向を後方(後退する方向)としている。
この塗布材押出容器200は、その内部に、移動螺子筒(螺合部材)205、移動体206及びピストン207を備えている。移動螺子筒205は、先筒201に第1螺合部70を介して螺合する。移動体206は、操作筒203に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に、移動螺子筒205に第2螺合部80を介して螺合する。ピストン207は、移動体206の前端(先端)部に装着される押出部であり、後述のパイプ部材208に密接するように内挿されて充填領域Xの後端を構成する。
また、本実施形態において塗布材押出容器200は、先筒201に対し軸線方向に摺動可能に内挿されたパイプ部材208と、移動螺子筒205と操作筒203との間に介在するOリング(弾性体)100と、を備えている。
この塗布材押出容器200では、本体筒202(先筒201でも可)及び操作筒203が一方向に相対回転されると、第1螺合部70の螺合作用によって移動螺子筒205が前進して、先筒201に対しパイプ部材208が移動体206及びピストン207と共に前進し、さらに一方向に相対回転されると、第2螺合部80の螺合作用によって先筒201及びパイプ部材208に対し移動体206及びピストン207が前進する。また、本体筒202及び操作筒203が一方向とは反対の他方向に相対回転されると、第1螺合部70の螺合作用によって移動螺子筒205が後退して、先筒201に対しパイプ部材208が移動体206及びピストン207と共に後退する。
本体筒202は、例えばABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンの共重合合成樹脂)で成形され、円筒状に構成されている。本体筒202は、その軸線方向中央部の内周面に、先筒201を回転方向に係合するものとして、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びてなるローレット202aを有している。また、本体筒202の前端部の内周面には、先筒201を軸線方向に係合するための環状凹凸部(凹凸部が軸線方向に並ぶもの)202bが設けられている。この本体筒202の後部側の内周面でローレット202aの後側には、操作筒203を軸線方向に係合するものとして、内周面に沿って周方向に延在する凸部202cが形成されている。
図4は、図1の塗布材押出容器の操作筒を一部断面化して示す側面図である。操作筒203は、例えばABS樹脂で成形され、前方に開口する有底円筒状を呈している。操作筒203の前端側は、本体筒202が外挿されるものとして、その外径が段差203bを介して小径とされた前端筒部203aを備えている。
前端筒部203aの外周面の前部には、本体筒202に軸線方向に係合する凹部213が設けられている。操作筒203の底部中央には、移動体206に回転方向に係合する軸体233が立設されている。軸体233は、非円形の外形を有する構成とされている。具体的には、軸体233は、円柱体の外周面に、周方向六等配の位置に径方向外側に突出するよう配置されて軸線方向に延びる突条243を備える横断面非円形形状とされている。
また、操作筒203の底部の内周面には、底部から前方へ短尺に延びる突条203cが一対対向して設けられている。この突条203cは、移動螺子筒205が後退限に達したときに当接する回り止め部である。
図1及び図4に示すように、操作筒203は、その前端筒部203aが本体筒202に内挿され、その段差203bが本体筒202の後端面に突き当てられると共に、その凹部213が本体筒202の凸部202cに軸線方向に係合することで、本体筒202に相対回転可能にして軸線方向に連結され装着されている。
図5は、図1の塗布材押出容器の移動螺子筒を一部断面化して示す側面図、図6は、図5の移動螺子筒を後方から見た斜視図である。移動螺子筒205は、例えばPOM(ポリアセタール樹脂)で成形され、図5及び図6に示すように、円筒状に構成されている。この移動螺子筒205は、前端側の前端部205aと、該前端部205aの後側に大径に連なる第1中間部205bと、該第1中間部205bの後側に連なる第2中間部205cと、該第2中間部205cの後側に連なる後端部205dと、を有している。
前端部205aは、その内周面において前端から所定長後方に亘る領域に、第2螺合部80を構成する雌螺子81が設けられている。なお、第2螺合部80のピッチは、第1螺合部70のピッチより細かいものとされており、第1螺合部70のリード(本体筒202と操作筒203との相対回転一回転当たりの推進量)が第2螺合部80のリードよりも大きく設定されている。
また、前端部205aの外周面における中央部には、パイプ部材208の後端面に軸線方向に当接する環状の鍔部215が設けられている。前端部205aの外周面における前側には、パイプ部材208に軸線方向に係合する環状凸部225が設けられている。前端部205aは、前端から軸線方向に所定長延在し対向するよう一対形成されたスリット235によって、径方向外側に拡開可能に構成されている。スリット235の後端側は、側方から見て(図5参照)周方向に長尺の長円形状となるように拡がっており、これにより、組立時に前端部205aが拡開し易く構成されている。
第1中間部205bは、移動螺子筒205において軸線方向中央部の前寄りに設けられている。この第1中間部205bは、その外周面において後端から所定長前方に亘る領域に、第1螺合部70を構成する雄螺子72が設けられている。
第2中間部205cは、バネ部265を備えている。バネ部265は、ここでは、軸線方向に伸縮可能とされた所謂樹脂バネであり、略矩形断面で一定太さ(一定厚)の円環状部265eを軸線方向に離間して2個並べ、これらの円環状部265eを、軸線方向に延び径方向に対向する一対の連結部265f,265fで連結したものである。一対の連結部265f,265fは、ここでは、軸線方向に隣り合う一対の連結部265f,265fに対して、軸線周りに90°互いにずれて配設される。そして、バネ部265は、上記のような円環状部265e及び連結部265f,265fを有することにより、回転方向に捩れないように(捩れ難く)なっている。
後端部205dは、その後端面寄りの位置の外周面にOリング溝205eが円環状に凹設されており、当該Oリング溝205eに、摩擦抵抗を与えるためのOリング100(図1及び図5参照)が装着されている。
後端部205dの後端面には、移動螺子筒205が後退限に達したときに、操作筒203の突条203cに回転方向に当接する回り止め部205fが設けられている。回り止め部205fは、円筒の後端面から垂直に短尺に切り欠かれ周方向に沿って180°離間した位置に形成された一対の回り止め面205gと、回り止め面205gの下端から周方向に沿う上り傾斜に形成され、他方の回り止め面205gの上端に連なるスロープ205hと、を備え、回り止め面205gが後退限で操作筒203の突条203cに当接するようになっている。
そして、図1に示すように、移動螺子筒205は、本体筒202及び操作筒203に内挿され、Oリング100は、移動螺子筒205の後端部205dの外周面と操作筒203の後部の内周面との間に介在した状態となっている。
移動体206は、例えばPOMで成形され、先端側に鍔部206aを有する円筒状に構成されている。移動体206は、その鍔部206aより後側から後端部に亘る外周面に、第2螺合部80の雄螺子82を備えている。この移動体206の内周面において周方向六等配の位置には、操作筒203に回転方向に係合するものとして、放射状に突出し軸線方向に延びる突条206cが設けられている。
移動体206は、その後端側から、操作筒203の軸体233に外挿されると共に、移動螺子筒205に内挿される。このとき、移動体206は、その雄螺子82が移動螺子筒205の雌螺子81と螺合すると共に、その突条206cが軸体233の突条243,243(図4参照)間に進入し回転方向に係合することで、操作筒203に対し同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。
ピストン207は、例えばPP(ポリプロピレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等で成形されている。ピストン207における後端面に凹設された凹部の内周面には、移動体206に対し軸線方向に所定長だけ移動可能にして係合する環状突部207bが設けられている。
また、ピストン207の外周面において周方向四等配の位置には、パイプ部材208に密着する領域として、凸部207cが設けられている。凸部207cは、パイプ部材208に対し当接(密接)し抵抗をもって摺動可能とするものであり、軸線方向中央部から後端まで延設されている。そして、周方向における凸部207cと凸部207cとの間、及び、凸部207cとパイプ部材208の後述の筒孔208sとの間にわずかな隙間(エアートラップ)を形成することにより、温度変化等の環境変化で塗布材Mが自然に移動することを防止できる。このピストン207は、移動体206の前端部に外挿され、その環状突部207bが移動体206に軸線方向に係合することで、移動体206に対し相対回転可能且つ軸線方向移動可能(所定の範囲内を移動可能)に装着されている。
図7は、図1の塗布材押出容器の先筒を示す縦断面図である。先筒201は、円筒形状を成し、その前端の開口が塗布材Mを出現させるための吐出口201aとされている。この先筒201は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂やABS樹脂等で成形されている。吐出口201aは、軸線方向に対し所定角度で傾斜する傾斜角度面により形成されている。なお、吐出口201aは、軸線方向の垂直面で形成するフラット形状とする場合や山形形状とする場合もある。
また、先筒201の外周面には、本体筒202の環状凹凸部202bに軸線方向に係合するための環状凸凹部201bが設けられている。また、先筒201の外周面において環状凸凹部201bより後側の周方向四等配位置には、軸線方向に延びる突条201gが、本体筒202のローレット202aに回転方向に係合するものとして設けられている。
また、先筒201の内周面において軸線中央部の後方寄りには、パイプ部材208に回転方向に係合するものとして、軸線方向に延在する溝部201cが複数設けられている。ここでの溝部201cは、先筒201の内周面における周方向不均等の6箇所の位置に延設されている。先筒201の内周面において溝部201cよりも後側は、段差201xを介して拡径されている。
また、先筒201の外周面において突条201gよりも後側には、先筒201内外を連通する貫通孔としての開口部211が、互いに対向するように一対形成されている。開口部211は、その対向する方向から見て(図7参照)概略矩形状に穿設されており、具体的には、開口部211は、周方向に沿って延びる前縁と、周方向に対する螺旋方向に沿って延びる後縁と、軸線方向に沿って延びる両側縁と、を含んでいる。
この先筒201の内周面において開口部211の後側には、第1螺合部70の雌螺子71が連設されている。雌螺子71は、先筒201の内周面にて螺旋状に延びる突条であって、開口部211の周方向位置に軸線を中心に180°回転複写されるように一対配されている。
図1に示すように、先筒201は、その後側から本体筒202に内挿され、その環状凸凹部201bに本体筒202の環状凹凸部202bが軸線方向に係合すると共に、その突条201gに本体筒202のローレット202aが回転方向に係合することで、本体筒202に軸線方向及び回転方向に係合されて装着され、当該本体筒202と一体化されている。また、先筒201は、その後側から移動螺子筒205に外挿され、その雌螺子71が移動螺子筒205の雄螺子72と螺合されている。
図8は、図1の塗布材押出容器のパイプ部材を示す一部破断側面図である。パイプ部材208は、円筒形状を成し、その前端の開口は、吐出口201a(図1参照)と同様に、上記所定角度で傾斜する傾斜角度面により形成されている。また、パイプ部材208は例えばPP等で形成されている。パイプ部材208の筒孔208sを形成する肉厚は、一定で最小化することが好ましく、例えば0.2〜0.5mmで成形されている。
パイプ部材208の外周面において軸線方向中央部の後側には、先筒201に回転方向に係合するものとして、軸線方向に延びる突条218が複数設けられている。突条218は、組立時に円周方向の位置合わせを容易にするため、周方向不均等の6箇所の位置に設けられている。また、パイプ部材208の外周面における後端部は、段差208xを介して拡径されている。パイプ部材208の内周面における後端部には、移動螺子筒205に軸線方向に係合するものとして、径方向内側に突出する突部228が対向するように一対設けられている。
図1に示すように、パイプ部材208は、先筒201に内挿され、該先筒201に対して軸線方向に摺動可能とされている。このとき、その突条218に先筒201の溝部201cが回転方向に係合され、これにより、先筒201に対するパイプ部材208の相対回転が規制されている。パイプ部材208の前端は、初期状態において先筒201の前端よりも一定量後方に位置し、また、前進限において先筒201の前端と略同一位置に位置するように構成されている(図2参照)。
また、パイプ部材208は、移動螺子筒205の前側に外挿され、その後端面が移動螺子筒205の鍔部215に突き当てられると共に、その突部228が移動螺子筒205の環状凸部225に軸線方向に係合され、これにより、移動螺子筒205に対して軸線方向に連結されている。そして、パイプ部材208内には、ピストン207が摺接するようにして内挿されている。
塗布材Mは、初期状態においてパイプ部材208の筒孔208s内から先筒201の筒孔201s内に亘って満たされるように充填(隙間なく収容)されており、すなわち、塗布材Mが充填される充填領域Xは、先筒201の内周面と、パイプ部材208の内周面と、ピストン207の前面と、で構成されている。
そして、先筒201の筒孔201sにおいて、少なくとも塗布材Mが充填される領域の内面である内周面は、軸線方向に沿って真っ直ぐ延びている。具体的には、筒孔201sを構成する内周面にあっては、パイプ部材208の後退限(初期状態)においてのパイプ部材208の前端位置から前側領域が、段差や角部、凹部及び窪み等(以下、単に「段差等」という)を有しておらず、且つ、軸線方向に対し傾斜しておらず、さらに、軸線方向に平行に真っ直ぐ延在している。ここでは、筒孔201sは、塗布材Mが充填される領域にて、軸線方向から見て一定の断面円形とされると共に、側方から見て両縁が軸線方向に平行となっている。
次に、塗布材押出容器200の動作の一例について説明する。
図1に示す初期状態の塗布材押出容器200にあっては、パイプ部材208の前端が先筒201の前端よりも一定量後方に位置し、この状態において、塗布材Mがパイプ部材208の筒孔208sと先筒201の筒孔201sとピストン207とに密着して充填された状態にある。そして、パイプ部材208の突条218の前面及び段差208xが、先筒201の溝部201cの前面及び段差201xよりも後側に離れて位置し、パイプ部材208が先筒201に対し一定量前進可能な状態とされている。
この初期状態の塗布材押出容器200において、使用者によりキャップCが取り外されて本体筒202と操作筒203とが繰出し方向である一方向に相対回転されると、移動螺子筒205の後端部205dと操作筒203の後部との間に介在するOリング100の摩擦抵抗により、操作筒203と移動螺子筒205が同方向に回転する(同期回転する)。これにより、移動螺子筒205と先筒201とが相対回転し、移動螺子筒205の雄螺子72及び先筒201の雌螺子71により構成された第1螺合部70の螺合作用が働き、先筒201に対し移動螺子筒205が前進する。
その結果、移動螺子筒205の当該前進に伴われて、先筒201に対しパイプ部材208が移動体206及びピストン207と共に前進し、塗布材Mが先筒201に対して繰り出され(つまり、先筒201に対しパイプ部材208が塗布材Mと共に前進され)、塗布材Mが吐出口201aから出現する。
続いて、図2に示すように、一方向の相対回転が続けられ、パイプ部材208の前端が先筒201の前端と略同一位置に位置したとき、パイプ部材208の突条218の前面及び段差208xが、先筒201の溝部201cの前面及び段差201xに当接し、パイプ部材208及び移動螺子筒205の前進が停止され、第1螺合部70の螺合作用が停止され、これにより、パイプ部材208及び移動螺子筒205が前進限に達する。
そして、一方向の相対回転がさらに続けられると、当該停止前よりも大きい回転力が操作筒203及び移動螺子筒205に加わり、Oリング100の摩擦抵抗を超える相対回転力によって、操作筒203に対し移動螺子筒205が相対回転する。その結果、移動体206の雄螺子82及び移動螺子筒205の雌螺子81により構成された第2螺合部80の螺合作用のみが作用し、停止したパイプ部材208内においてピストン207により塗布材Mが押し出されて前進(つまり、先筒201及びパイプ部材208に対し塗布材Mが前進)する。その後、移動体206及びピストン207が前進限に達する(図3参照)。
他方、例えば、使用後の塗布材押出容器200において、本体筒202と操作筒203とが繰戻し方向である他方向へ相対回転されると、Oリング100の摩擦抵抗により、操作筒203と移動螺子筒205が同方向に回転する(同期回転する)。これにより、移動螺子筒205と先筒201とが相対回転し、第1螺合部70の螺合作用が働き、先筒201に対し移動螺子筒205が後退する。
その結果、移動螺子筒205の当該後退に伴われて、先筒201に対しパイプ部材208が移動体206及びピストン207と共に後退し、塗布材Mが先筒201に対して繰り戻され(つまり、先筒201に対しパイプ部材208が塗布材Mと共に後退され)、塗布材Mが吐出口201a内へ埋入される。
そして、他方向の相対回転が続けられると、移動螺子筒205が図1に示す後退限に達し、移動螺子筒205の回り止め面205gが操作筒203の突条203cに当接する。さらに同方向の回転を続けると、移動螺子筒205のバネ部265が縮退し、移動螺子筒205の雄螺子72が先筒201の雌螺子71から外れて第1螺合部70の螺合作用が解除されるが、この状態からバネ部265が伸長し、雌螺子71及び雄螺子72が係合する。さらに同方向の回転を続けると、雌螺子71及び雄螺子72の係合及び係合解除によるクリック感が生じ、移動螺子筒205が後退限にあることを使用者に感知させることができる。
そして、移動螺子筒205が後退限にあって、一方向への回転が開始されると、第1螺合部70が直ちに螺合復帰する。そして、一方向への回転の続行により、操作筒203の突条203cは、移動螺子筒205のスロープ205hの上面を滑り(図6参照)、回転を邪魔することなく容易且つ確実に回り止めを解除できる。
このように、本実施形態においては、先筒201又は本体筒202と操作筒203とが繰出し方向に対応する一方向に相対回転されると、操作筒203と移動螺子筒205との間で周方向に摩擦抵抗を生じさせるOリング100の介在によって、移動螺子筒205が操作筒203の回転に従い同方向に回転し、第1螺合部70の螺合作用が働いて移動螺子筒205が前進し、移動螺子筒205の前進が停止した状態で、一方向への相対回転が続けられると、これが塗布材Mを押し出す回転操作に該当し、Oリング100の摩擦抵抗を超える相対回転力によって、操作筒203に対し移動螺子筒205が相対回転し、第2螺合部80の螺合作用が働いて移動体206が前進し、塗布材Mが吐出口201aから押し出される。すなわち、塗布材Mを押し出す回転操作による第2螺合部80の作動時にはクリック感は発生せず、高級感のある操作が可能となる。また、第1螺合部70の螺合作用時にあっては、Oリング100による軸線方向の摩擦抵抗に抗しながら移動螺子筒205が前進するので、使用者に、適度な回転操作抵抗感を与えながら、移動螺子筒205を安定して前進させることができる。
また、本実施形態によれば、弾性体をOリング100としているため、簡易な構成で上記作用・効果を実現できる。
なお、Oリング100をバネ部265より前に位置させた場合には、バネ部265のバネ力をかなり強くする必要がある。このバネ部265の強いバネ力により、Oリング100の摩擦抵抗を超えたバネの伸縮作用が可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
例えば、塗布材Mとしては、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状の塗布材を用いた塗布材押出容器に対しても勿論適用可能である。
また、上記実施形態においては、弾性体を特に好ましいとして、Oリング100としているが、例えばCリング等、他の弾性体を用いることもできる。
また、移動螺子筒205の後退限の回り止め部は、1箇所でも、3箇所以上であっても良い。
また、塗布材Mの断面形状については、円形断面の他に、楕円形、トラック型、並びに、頂点を丸めた多角形及びしずく型等の種々の非円形断面形状も選択できる。
また、本体筒202及び操作筒203が一方向に相対回転されると、第1及び第2螺合部70,80の螺合作用の協働によって先筒201に対しパイプ部材208が塗布材Mと共に前進しても良いし、同様に、他方向に相対回転されると、第1及び第2螺合部70,80の螺合作用の協働によって先筒201に対しパイプ部材208が塗布材Mと共に後退しても良い。
また、上述した雄螺子及び雌螺子は、螺子山や螺子溝だけでなく、間欠的に配される突起群、又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山や螺子溝と同様な働きをするものであっても良い。
なお、Oリング(弾性体)は、先筒201と移動螺子筒205との間や、移動体206と移動螺子筒205との間に配置することも可能である。