JP2019050691A - 列車位置検出システム、自動列車制御システム、列車運転支援システム及び列車障害物検知システム - Google Patents

列車位置検出システム、自動列車制御システム、列車運転支援システム及び列車障害物検知システム Download PDF

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Abstract

【課題】地上子の設置数を増やすことなく、勾配変化の無い区間であっても列車位置を高精度に検出する、列車位置検出システムを提供する。【解決手段】列車位置検出システムは、車両の絶対位置出力部107、絶対位置と速度から車両の暫定位置を検出する暫定位置検出部108、車両の加速度を検出する車両加速度検出部109を備える。路線形状推定部110は、制駆動力実績値159、車両加速度158、及び少なくとも重量を含む車両特性153に基づき、車両が走行中の路線の路線形状を推定する。路線形状蓄積部112には、車両が走行する路線内における位置と路線形状とが対応付けられた路線形状データが保持されており、路線形状照合部111は、路線形状推定部により推定された路線形状と、路線形状蓄積部に保持される暫定位置付近の路線形状データを照合し車両の位置補正量を算出し、位置補正部113は、位置補正量に基づき暫定位置を補正する。【選択図】図1

Description

本発明は、鉄道をはじめとする軌道輸送を行う移動体の位置検出に関する。
鉄道運行のコスト低減策として、列車の自動運転技術が研究開発されている。自動列車運転では、これまで乗務員が担当していた速度制御や障害物検知の機能の一部あるいは全てをシステム側で担う。これらの機能を実現するための前提として、自列車の位置を精度よく検出する必要がある。そのため、自動列車運転の実現に向け、自列車位置の高精度な検出が求められている。
鉄道における自列車位置の検出は、一般的に、絶対位置の検出と、その絶対位置を基準とした速度情報の積分で行われている。絶対位置の検出は主として地上子を用いて行われており、駅近辺や駅中間の地上に置かれた地上子を列車の車上子が検知した際に、列車の位置認識が地上子の位置に設定(補正)される。地上子が無い区間では、速度発電機で検出した速度を積分し、走行距離を加算して列車位置を検出しているが、速度の精度に依存して列車位置の誤差が発生するため、地上子による位置の補正が必要である。
多数の地上子を設置できれば頻繁に列車位置が補正できるため、列車位置の検出精度は向上する。しかしながら、地上子の設置にはコストがかかるため地上子の設置を減らしたいという要望も多く存在する。
特許文献1では、現在の列車速度をサンプリングして加減速度を求める手段と、前記加減速度及びノッチ特性に基づいて、走行路の勾配抵抗を求める手段と、路線の勾配及び位置情報を含む路線情報DB(data base)と、前記勾配抵抗から勾配値を求める手段と、前記路線情報DBを検索し、前記勾配値から現在位置を判断する手段を備える列車制御装置が開示されている。
特開2011-250575号
しかしながら、特許文献1の技術では勾配変化の無い区間では現在位置が判断できない。また、前記の公知技術では走行路の勾配抵抗を求めるためにノッチ特性を使用しているが、架線電圧などの外乱がある状況下において、ノッチ特性からは車両が出力した制駆動力が精度よく把握できないため、勾配抵抗の推定誤差が大きくなり、現在位置の把握精度に課題がある。
本発明は、これらの問題点を改善するために考案されるもので、地上子の設置数を増やすことなく、勾配変化の無い区間も含めて、列車位置の高精度な検出を実現する列車位置検出システムを提供することを目的とする。
本発明に係る列車位置検出システムの一例は、車両の絶対位置を出力する絶対位置出力部と、絶対位置と車両速度から車両の暫定位置を検出する暫定位置検出部を持つ列車位置検出システムであって、車両に加わった加速度を検出する車両加速度検出部と、制駆動力実績値と加速度と、少なくとも車重を含む車両特性を基に車両が走行している路線の路線形状を推定する路線形状推定部と、車両が走行する路線内における位置と路線形状の対応からなる路線形状データを保持している路線形状蓄積部と、路線形状推定部で推定された路線形状と暫定位置の付近の路線形状データを照合して車両の位置補正量を算出する路線形状照合部と、暫定位置を位置補正量によって補正し、補正後の暫定位置を車両位置として検出する位置補正部と、を備えることを特徴とする列車位置検出システムである。
本発明によれば、地上子の設置を減らして、自列車位置の検出精度を向上可能である。
本発明の列車自動制御システムのシステム構成の一例を示す図である。 本発明の位置検出部の処理フローの一例を示す図である。 本発明の路線形状照合部における処理の概念図である。 本発明の列車運転支援システムのシステム構成の一例を示す図である。 本発明の列車障害物検知システムのシステム構成の一例を示す図である。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本実施例では、車両に生じた加速度と発生した制駆動力を用いて、当該車両が走行した区間の路線形状、具体的には勾配と曲線半径を推定し、予め用意されている路線形状のデータベース(路線上の位置と路線形状を現す値の対応が格納されている)と照合することで、自動運転用の自列車位置を検出する自動列車制御システムを説明する。本実施例によれば、地上子の設置を増やすことなく高精度な位置検出結果を用いて自動列車運転ができるため、コストを抑えて、省エネ性・定時性に優れた自動列車運転システムを提供可能である。
まず、図1を用いて、自動列車制御システム100の構成と各構成要素の役割を説明する。
前記自動列車制御システム100は、位置検出部101と、速度検出部102と、車両特性管理部103と、制駆動指令算出部104と、制駆動制御部105とから構成される。前記制駆動指令算出部104は、前記位置検出部101で検出された車両位置151と、前記速度検出部102で検出された車両速度152と、前記車両特性管理部103が保持する当該車両の車両特性153とを入力として、車両の制駆動指令154を生成する。前記制駆動制御部105は前記制駆動指令154を入力として、車両を制駆動させるアクチュエータ106に対するアクチュエータ制御指令155を生成する。
前記位置検出部101の内部構成と各構成要素の役割は後述する。
前記速度検出部102は、車両の速度を検出する手段である。速度を検出する方式の例として、速度発電機を使用する方式が挙げられる。速度発電機からの出力は車輪の回転に比例した電圧のパルスであり、そのパルスから算出される車輪の回転速度と、別途管理される車輪径のデータとを用いることで、車両の速度が検出される。車輪径のデータは定期的に保守作業で測定され、更新されるが、走行中の磨耗によって減少するため常に真値であるとは限らず誤差を持っている。そのため、検出される車両速度152にも誤差が含まれる。
前記車両特性管理部103は、少なくとも、車両の加減速特性や編成重量、あるいは走行抵抗の係数といった、車両の制駆動挙動に関わる特性値を管理している。装置の例として、車両情報管理装置が挙げられる。編成重量は乗車率によって変動するため、随時更新されて常に新しい値が保持されていることが望ましい。編成重量はバネ下重量とバネ上重量からなる。乗車率で変動するバネ上重量の測定方法としては、AS圧(AS:Air Suspension)の値をブレーキ制御装置などから取得し、バネ上の重量に換算する方法が一般的である。
前記制駆動指令算出部104は、既定の目標走行パターンに沿って車両を走行させるよう、前記制駆動指令154を生成する。ここで目標走行パターンとは、路線内の位置に応じた速度で定義される。前記制駆動指令154を生成する方法の一例として、比例制御が挙げられる。比例制御では、前記車両位置151に応じた目標速度を目標走行パターンから検索し、当該目標速度と前記車両速度152との差分に比例して、制駆動指令の大きさが決められる。目標速度に対する前記車両速度152の追従性を向上させるために、比例制御のパラメータ調整(オフセットや感度)が必要であり、そのために前記車両特性153の入力が有効である。
前記制駆動制御部105は、前記アクチュエータ106によって異なるが、前記アクチュエータ106がモータと摩擦ブレーキの場合、前記制駆動制御部105はインバータ装置およびブレーキ制御装置が例として挙げられる。
次に、前記位置検出部101の構成と各構成要素の役割を説明する。
前記位置検出部101は、絶対位置検出部107と、暫定位置検出部108と、車両加速度検出部109と、路線形状推定部110と、路線形状照合部111と、路線形状蓄積部112と、位置補正部113と、から構成される。
前記位置検出部101における前記車両位置151の検出には大きく二つの流れがある。ひとつは絶対位置検出結果を初期値とした速度情報の積分による位置の検出である。もうひとつは、路線形状の推定と照合に基づく位置の補正である。
まず、絶対位置検出結果を初期値とした速度情報の積分による位置の検出を説明する。
前記絶対位置出力部107は、路線内における車両の絶対位置が確定できるタイミングで、絶対位置156を出力する。路線内における車両の位置が確定できるタイミングの例として、軌道内に固定されている地上子を車両の車上子が検出したタイミングが挙げられる。他の例として、駅でドア開操作が行われたタイミングもある。駅でドア開操作が行われた場合、駅の所定の位置に車両が停車していることが確実であるため、予め用意されている駅位置のデータベースに基づいて当該駅の位置を前記絶対位置156として出力する。
前記暫定位置検出部108では、前記絶対位置156を初期値として、前記車両速度152の積分により、暫定位置157を算出する。前記暫定位置157は前記位置補正部113に入力される。
以上が、絶対位置検出結果を初期値とした速度情報の積分による位置検出の説明である。
次に、路線形状の推定と照合に基づく位置の補正を説明する。
前記車両加速度検出部109では、車両に生じた前後方向および左右方向の加速度を検出し、車両加速度158として前記路線形状推定部110へ入力する。ここで、前記車両加速度検出部109の例として、加速度センサを用いることが考えられる。加速度センサの設置位置はバネ下である台車が望ましい。バネ上に設置すると空気バネの影響で加速度に不要な成分が重畳するので、このような不要な成分が重畳することを防ぐためである。
また、加速度センサの故障・異常の可能性を考慮して加速度センサを多重化しておくことが望ましい。
例えば、加速度センサを複数用い、正常動作している、あるいは、故障を検知していない加速度センサの内、いずれか一つが検知する加速度を車両加速度158として前記路線形状推定部110へ入力することが考えられる。これにより加速度センサが故障しても他の加速度センサが正常動作していれば、それにより正常な位置の補正を行うことができる。
また、他の例として、加速度センサを複数用い、正常動作している、あるいは、故障を検知していない加速度センサの検知する加速度の平均をとり、それを車両加速度158として前記路線形状推定部110へ入力することが考えられる。これにより、各加速度センサの誤差を吸収し、位置の補正の精度を高めることができる。
さらに、他の例として、加速度センサを複数用い、それらの検知する加速度の平均をとり、その平均値から規定値以上離れた値を検知した加速度センサを故障と判断し、その検知した値を使用しないようにすることが考えられる。この場合、故障と判断した加速度センサの検知した加速度の値を除外して、他の加速度センサの検知した加速度の平均をとり、車両加速度158として前記路線形状推定部110へ入力する。さらに、この平均値から規定値以上離れた値を検知した加速度センサを故障と判断して、上記処理を繰り返してもよい。
その他、前後方向の加速度に関しては、前記車両速度152の微分で算出する方法も考えられる。加速度センサを使用する方法をベースとしつつ、車両速度152の微分で加速度を算出する方法も併用することで、前記車両加速度検出部109の多重化が図れる。車両速度152の微分で加速度を算出する方法を実現する装置を上記の加速度センサの多重化で用いられる加速度センサの一つとみなして加速度センサの多重化をすることも可能である。これにより、新たに加速度センサを用いなくても加速度センサの多重化が可能である。
前記路線形状推定部110では、前記車両加速度158、前記車両速度152、前記車両特性153、前記暫定位置157、制駆動力実績値159を入力として、現地点までに走行してきた区間に関する路線形状推定データ160を算出する。前記制駆動力実績値159は、前記制駆動制御部105から取得する情報である。前記制駆動力実績値159は、ノッチ操作から推定する方式も考えられるが、精度の面では前記制駆動制御部105から直接取得することが望ましい。前記路線形状推定データ160の算出方法については、後に、制御処理フローの説明の中で述べる。
前記路線形状照合部111では、前記路線形状蓄積部112から取得する照合用路線形状データ161と、前記路線形状推定データ160とを比較・照合することで、位置補正量162を算出する。前記照合用路線形状データ161に含まれるデータの位置範囲は、前記路線形状推定データ160に含まれる位置範囲を含むものであり、照合用データ範囲163として前記路線形状照合部111から前記路線形状蓄積部112に対して指定する。前記位置補正量162の算出方法については、後に、制御処理フローの説明の中で述べる。
ここで、前記路線形状蓄積部112に蓄積されている路線形状データの作成方法にはいくつかの例が考えられる。ひとつには路線を設計・工事した際の設計値を使用する方法である。他の例として、他の高精度な位置検知の仕組みを使用しつつ、実走行で観測された加速度を元に推定した路線形状データを用いる方法である(加速度から路線形状データを算出する方法は後述する)。後者の方法であれば設計値に現れないような軌道形状に由来する車両動揺も考慮できるため、より高精度な位置検出が可能である。
前記位置補正部113では、前記暫定位置157に対して前記位置補正量162を反映させることで、車両位置151を生成し、前記制駆動指令算出部104へ出力する。
編成内の他車両に前記位置検出部101と同様の仕組み、あるいは別の位置検出の仕組みが存在する場合、当該他車両から編成内他車両位置164を前記位置補正部113に入力することで、前記車両位置151の算出過程を高度化することが可能である。例えば、前記編成内他車両位置164から換算した自車両位置と、前記暫定位置157に対して前記位置補正量162を反映して得た車両位置とが所定の閾値以内(例えば車両長程度)であれば、双方の平均値を前記車両位置151とすることで、より確からしい車両位置となる場合が考えられる。逆に、前記編成内他車両位置164から換算した自車両位置と、前記暫定位置157に対して前記位置補正量162を反映して得た車両位置とが極端に乖離している場合(例えば数百メートル)、位置補正が有効でないと考えられるため、前記位置補正量162は加味せず、前記暫定位置157をそのまま前記車両位置151とすることが望ましい。
以上が、路線形状の推定と照合に基づく位置補正の説明である。
以上が、前記自動列車制御システム100の構成と各構成要素の説明である。
次に、図2を用いて、前記位置検出部101の処理の流れを説明する。
ステップ201で、前記絶対位置出力部107における絶対位置の更新有無を判定する。絶対位置の更新があったは場合ステップ202に進み、前記暫定位置検出部108において、暫定位置の初期値として更新後の絶対位置を設定する。続くステップ203では、前記位置補正量162をゼロに設定し、ステップ210に進む(ステップ210以降はステップ209までの説明の後に説明する)。
ステップ201で絶対位置の更新が無かった場合ステップ204に進む。
ステップ204では、前記暫定位置検出部108と前記路線形状推定部110に前記車両速度152が入力される。
続くステップ205で前記暫定位置157が更新され、前記路線形状推定部110と前記位置補正部113に入力される。前記暫定位置157の更新の例を式(1)に示す。
更新後暫定位置[m]=更新前暫定位置[m]+車両速度[m/s]×演算周期[s]
…式(1)
続いてステップ206で、前記車両特性153が前記路線形状推定部110に入力される。また、ステップ207で、前記制駆動力実績値159が前記路線形状推定部110に入力される。
次にステップ208で、前記路線形状推定部108において、前記路線形状推定データ160が算出され、前記路線形状照合部111に入力される。ステップ208の詳細は後述する。
次のステップ209で、前記路線形状照合部111において前記位置補正量162が算出され、前記位置補正部113に入力される。ステップ209の詳細は後述する。
ステップ210で、前記暫定位置157に対して前記位置補正量162を反映することで、前記車両位置151を生成し、ステップ211で前記車両位置151を前記制駆動指令算出部104へ出力する。
次にステップ208における路線形状推定データ算出の詳細を説明する。
本実施例における路線形状としては、勾配と曲線半径が使用可能である。いずれか片方でも本実施例の意図する位置検出は可能であるが、勾配と曲線半径の両方を使用した方が、より精度のよい位置検出が可能である。なぜならば、勾配のみを使用した場合は平坦な路線形状では位置検出ができず、また曲線半径のみを使用した場合は直線的な路線形状では位置検出ができないからである。
まず、曲線半径に関して、路線形状推定の方法を説明する。
式(2)に示す遠心加速度の公式に着目する。
遠心加速度[m/s2]=円周速度[m/s]2÷曲線半径[m] …式(2)
遠心加速度に前記車両加速度158の横方向の加速度を、円周速度に前記車両速度152を代入することで曲線半径が求められる。
次に、勾配に関して路線形状推定の方法を説明する。
鉄道車両の挙動は、式(3)に示す運動方程式で表される。
発生制駆動力[kN]−走行抵抗[kN]=重量[t]×発生加速度[m/s2]
…式(3)
ここで、「発生制駆動力」には前記制駆動力実績値159を代入する。「重量」には前記車両特性153に含まれる編成重量を代入する。「発生加速度」には前記車両加速度158を代入する。これらにより、「走行抵抗」の値が求まる。
鉄道における基本的な走行抵抗式は、式(4)である。
走行抵抗[kN]=転がり抵抗+空気抵抗+勾配抵抗+曲線抵抗 …式(4)
左辺は算出済みである。「曲線抵抗」は式(5)で表され、既に求めた曲線半径に反比例することが知られている。ここでKは定数であり、例えばK=800といった値が使用される。
曲線抵抗[kN]=K×重量[t]×重力加速度[m/s2]÷曲線半径[m]
…式(5)
転がり抵抗+空気抵抗の部分は、式(6)で表され、前記の編成重量、前記車両速度152、および編成両数を代入することで求められる。
転がり抵抗[kN]+空気抵抗[kN]=
[a+b×車両速度[km/h]+{c+d×(編成両数−1)}×車両速度[km/h]2÷重量[t]]×重量[t]×重力加速度[m/s2] …式(6)
これらから式(4)の勾配抵抗のみを取り出すことができる。ここで、a、b、c、dは走行抵抗式の係数であり、在来線では例えば、a=1.32、 b=0.0164、c=0.0280、d=0.0078といった値が使用される。
勾配抵抗は、路線勾配をθとすると、式(7)で表される。
勾配抵抗[kN]=車重[t]×重力加速度[m/s2]×sinθ …式(7)
左辺は算出済みであり、右辺の車重に前記の編成重量を代入することにより、路線勾配θが算出できる。
このようにして、前記車両加速度158から、路線の曲線半径と勾配を推定することができる。なお、曲線半径や勾配の値には、路線の設計値に表れないような車両動揺の影響も残り得る。これに対応するためには、前記路線形状蓄積部112のデータを実走行結果に基づくデータとしておくことが望ましい。
前記路線形状推定部110の中では、上記の方法で推定した路線形状データを、推定時の前記暫定位置157の値との組で管理し、走行区間の路線形状推定データの配列として保管、出力する。すなわち配列の要素は、位置と曲線関係と勾配であり、位置の範囲は所定の初期値から最新の前記暫定位置157までである。ここで所定の初期値とは、過去直近で前記絶対位置156が更新された位置が望ましい。
以上が、ステップ208における路線形状推定データ算出の詳細の説明である。
次に、ステップ209における位置補正量算出の詳細を説明する。
まず準備段階として、前記路線形状照合部111はステップ208で算出された前記路線形状推定データ160を取得し、データに含まれる位置範囲を前記照合用データ範囲163として、前記位置補正部112に伝える。前記位置補正部112は受け取った位置範囲に該当する路線形状データを、前記照合用路線形状データ161として前記路線形状照合部111に出力する。
次に、位置補正量を決めるために、前記路線形状推定データ160の波形と前記照合用路線形状データ161の波形の重ね合わせを試みる。この重ね合わせのイメージを図3に示す。図3は勾配・曲線半径のうちいずれかひとつの路線形状を対象に描いた図である。
なお、波形の重ね合わせは、路線形状に関してひとつ以上の変化点が必要である。前記照合用路線形状データ161の中に路線形状の変化点が無い場合は、波形の重ね合わせができないため、前記位置補正量162はゼロとして扱う。
図3において、301が前記照合用路線形状データ161であり、302が前記路線形状推定データ160である。304が補正前の前記暫定位置157である。この状態から、前記路線形状推定データ160の波形を位置方向前後に平行移動し、両波形の差異が最も少なくなる移動量を探る。具体的な方法の例としては、各位置での路線形状の差を集計し、最小自乗法で最適な波形の移動量を見つけることができる。勾配と曲線半径の両方を使用する場合は、各々のパラメータに関する波形偏差の自乗和の和を最小となるように、波形の移動量を定める。
図3では303が、路線形状のズレを最小化するようにシフトさせた路線形状データであり、そのときのシフト量306が、前記位置補正量162である。
ステップ209に続くステップ210では、このようにして求めた前記位置補正量162を前記暫定位置157に反映することで、補正後の位置である前記車両位置151(図3中の305)を求める。
以上が、ステップ209における位置補正量算出の詳細説明である。
以上が、前記位置検出部101の処理フローの例の説明である。
以上が、前記自動列車制御システム100の説明である。
本実施例では、車両に生じた加速度と発生した制駆動力を用いて、当該車両が走行した区間の路線形状、具体的には勾配と曲線半径を推定し、予め用意されている路線形状のデータベース(路線上の位置と路線形状を表す値の対応が格納されている)と照合することで、運転支援用の自列車位置を検出する列車運転支援システムを説明する。
本実施例によれば、地上子の設置を増やすことなく高精度な位置検出結果を用いて運転支援内容を決定できるため、コストを抑えて、省エネ性・定時性に優れた運転支援システムを提供可能である。
まず、図4を用いて、列車運転支援システム400の構成と各構成要素の役割を説明する。
前記列車運転支援システム400は、位置検出部101と、速度検出部102と、車両特性管理部103と、運転支援内容生成部404と、運転支援内容教示部414と、制駆動制御部105とから構成される。前記運転支援内容生成部404は、前記位置検出部101で検出された車両位置151と、前記速度検出部102で検出された車両速度152と、前記車両特性管理部103が保持する当該車両の車両特性153とを入力として、当該車両の運転支援内容465を生成する。前記運転支援内容465は前記運転支援内容教示部414を通じて、運転士に伝えられる。前記制駆動制御部105は図示しない運転士の運転操作を入力として、車両を制駆動させるアクチュエータ106に対するアクチュエータ制御指令155を生成する。
前記位置検出部101の内部構成と各構成要素の役割は実施例1と同一である。
前記速度検出部102は実施例1と同一である。
前記車両特性管理部103は実施例1と同一である。
前記運転支援内容生成部404は、各駅間を省エネ性と定時性のいずれか、もしくは両方の性能を適正化するような駅間の目標走行パターンを保持しており、前記車両位置151と前記車両速度152と前記車両特性153を入力として、当該車両が前記目標走行パターンに沿って運行できるよう、運転士に対する前記運転支援内容465を生成する。前記運転支援内容465の具体例は、ノッチ操作や定速/抑速スイッチ操作の内容とそのタイミングである。
前記運転支援内容465を受け取った前記運転支援内容教示部414は、画面表示と音声鳴動のいずれか、もしくは両方によって、当該車両の運転士に対して前記運転支援内容465を伝える役割を果たす。
前記制駆動制御部105は実施例1と同一である。
以上が、前記列車運転支援システム400の構成と各構成要素の説明である。
前記位置検出部101の処理の流れは実施例1と同一である。
以上が、前記列車運転支援システム400の説明である。
本実施例では、車両に生じた加速度と発生した制駆動力を用いて、当該車両が走行した区間の路線形状、具体的には勾配と曲線半径を推定し、予め用意されている路線形状のデータベース(路線上の位置と路線形状を現す値の対応が格納されている)と照合することで、障害物検知用の自列車位置を検出する列車障害物検知システムを説明する。本実施例によれば、地上子の設置を増やすことなく高精度な位置検出結果を用いて障害物検知ができるため、コストを抑えて、安全性に優れた障害物検知システムを提供可能である。
まず、図5を用いて、列車障害物検知システム500の構成と各構成要素の役割を説明する。
前記列車障害物検知システム500は、位置検出部101と、速度検出部102と、車両特性管理部103と、前方監視部515と、障害物有無判定部504と、障害物情報教示部514と、制駆動制御部105とから構成される。前記前方監視部515は、カメラ、レーダ、ミリ波などのセンサ単体もしくは組み合わせで構成され、列車前方の監視を行う。前方監視結果566は前記障害物有無判定部504に送られる。前記障害物有無判定部504は、前記前方監視結果566と、前記位置検出部101で検出された車両位置151と、前記速度検出部102で検出された車両速度152と、前記車両特性管理部103が保持する当該車両の車両特性153とを入力として、当該車両の運行に支障する障害物が前方に存在するか否かを判定し、障害物情報565を前記障害物情報教示部514に送る。
前記制駆動制御部105は図示しない運転士の運転操作、または、図示しない自動運転システムからの制駆動指令を入力として、車両を制駆動させるアクチュエータ106に対するアクチュエータ制御指令155を生成する。
前記位置検出部101の内部構成と各構成要素の役割は実施例1と同一である。
前記速度検出部102は実施例1と同一である。
前記車両特性管理部103は実施例1と同一である。
前記運転支援内容生成部504は、前方監視結果566に何らかの障害物候補が確認できた場合に、前記障害物候補が自列車の運行に支障するか否かを判定する。具体的には、予め分かっている路線形状と前記車両位置151から、車両限界内に前記障害物候補があるか否かを判定する。特に、カーブのある区間において、前記障害物候補が車両限界内にあるか否かを正しく判定するためには、前記車両位置151の精度が求められる。そして、車両限界内に前記障害物候補がある場合、前記車両速度152と前記車両特性153を参照して必要な車両制動の度合いを判定する。障害物と車両の距離に対し、前記車両速度152と前記車両特性153を鑑みて、緊急ブレーキが必要なのか、常用ブレーキで足りるのかを判定する。必要以上に大きなブレーキを使用しないことで、乗客にとって不快な車両動揺を抑えたり、摩擦ブレーキの磨耗を抑えたりする効果がある。前記障害物情報565には、障害物の有無と上記の必要なブレーキ操作に関する情報が含まれ、前記障害物情報教示部514において表示と音声鳴動のいずれか、もしくは両方で乗務員に伝えられる。
前記制駆動制御部105は実施例1と同一である。
以上が、前記列車障害物検知システム500の構成と各構成要素の説明である。
前記位置検出部101の処理の流れは実施例1と同一である。
以上が、前記列車障害物検知システム500の説明である。
100…自動列車制御システム
101…位置検出部
102…速度検出部
103…車両特性管理部
104…制駆動指令算出部
105…制駆動制御部
106…アクチュエータ
107…絶対位置出力部
108…暫定位置検出部
109…車両加速度検出部
110…路線形状推定部
111…路線形状照合部
112…路線形状蓄積部
113…位置補正部
151…車両位置
152…車両速度
153…車両特性
154…制駆動指令
155…アクチュエータ制御指令
156…絶対位置
157…暫定位置
158…車両加速度
159…制駆動力実績値
160…路線形状推定データ
161…照合用路線形状データ
162…位置補正量
163…照合用データ範囲
164…編成内他車両位置
301…路線形状蓄積部が保持するデータ
302…路線形状推定部が出力する路線形状データ
303…路線形状のズレを最小化するよう位置方向にシフトさせた路線形状データ
304…暫定位置(補正前)
305…車両位置(補正後)
306…位置補正量
400…列車運転支援システム
404…運転支援内容生成部
414…運転支援内容教示部
465…運転支援内容
500…列車障害物検知システム
504…障害物有無判定部
514…障害物情報教示部
515…前方監視部
565…障害物情報
566…前方監視結果

Claims (15)

  1. 車両の絶対位置を出力する絶対位置出力部と、前記絶対位置と車両速度から前記車両の暫定位置を検出する暫定位置検出部を持つ列車位置検出システムであって、
    前記車両に加わった加速度を検出する車両加速度検出部と、制駆動力実績値と前記加速度と、少なくとも車重を含む車両特性を基に前記車両が走行している路線の路線形状を推定する路線形状推定部と、前記車両が走行する路線内における位置と前記路線形状の対応からなる路線形状データを保持している路線形状蓄積部と、前記路線形状推定部で推定された前記路線形状と前記暫定位置の付近の前記路線形状データを照合して前記車両の位置補正量を算出する路線形状照合部と、前記暫定位置を前記位置補正量によって補正し、補正後の前記暫定位置を車両位置として検出する位置補正部と、
    を備えることを特徴とする列車位置検出システム。
  2. 請求項1に記載の列車位置検出システムであって、
    前記位置補正部は、編成内の他車両の位置情報を取得し、
    前記暫定位置を、前記位置補正量と、前記他車両の位置情報とを基に補正すること
    を特徴とする列車位置検出システム。
  3. 請求項1又は請求項2のいずれか一つに記載の列車位置検出システムであって、前記位置補正部は、前記路線形状データの路線形状に関し、増減傾向の変化点がひとつ以上含まれるときに、前記暫定位置を前記位置補正量によって補正すること、を特徴とする列車位置検出システム。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の列車位置検出システムであって、前記路線形状が路線勾配と曲線半径のいずれかまたは両方であることを特徴とする列車位置検出システム。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の列車位置検出システムであって、前記車両加速度検出部は、前記車両速度の時間変化から前記加速度を検出することを特徴とする列車位置検出システム。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の列車位置検出システムであって、前記車両加速度検出部は加速度センサであることを特徴とする列車位置検出システム。
  7. 請求項6に記載の列車位置検出システムであって、前記加速度センサが台車に設置されることを特徴とする列車位置検出システム。
  8. 請求項6乃至請求項7のいずれか一つに記載の列車位置検出システムであって、前記加速度センサの内、少なくとも一つは、前記車両速度の時間変化から前記加速度を検出するものであることを特徴とする列車位置検出システム。
  9. 請求項6乃至請求項8のいずれか一つに記載の列車位置検出システムであって、前記加速度センサを複数備え、正常動作しているか、故障を検知していない前記加速度センサの内、いずれか一つが検出する前記加速度を前記車両に加わった前記加速度として検出することを特徴とする列車位置検出システム。
  10. 請求項6乃至請求項8のいずれか一つに記載の列車位置検出システムであって、前記加速度センサを複数備え、正常動作しているか、故障を検知していない前記加速度センサの検出する前記加速度の平均を前記車両に加わった前記加速度として検出することを特徴とする列車位置検出システム。
  11. 請求項6乃至請求項8のいずれか一つに記載の列車位置検出システムであって、前記加速度センサを複数備え、前記複数の前記加速度センサの検出する前記加速度の平均より規定値以上乖離した値を検出した前記加速度センサを故障と判断し、前記故障と判断しない前記加速度センサの検出する前記加速度の平均を前記車両に加わった前記加速度として検出することを特徴とする列車位置検出システム。
  12. 請求項1乃至請求項11のいずれか一つに記載の列車位置検出システムであって、前記路線形状蓄積部が保持している前記路線形状データを、前記路線形状推定部で推定された前記路線形状のデータで作成あるいは更新することを特徴とする列車位置検出システム。
  13. 車両位置を検出する位置検出システムと、車両速度を検出する速度検出部と、少なくとも車重を含む車両特性を管理する車両特性管理部と、前記車両位置と前記車両速度と前記車両特性を基に前記車両の制駆動指令を算出する制駆動指令算出部と、前記制駆動指令を受けて前記車両のアクチュエータを制御する制駆動制御部と、を備える自動列車制御システムであって、
    前記位置検出システムは、請求項1乃至請求項12のいずれか一つに記載の列車位置検出システムであることを特徴とする自動列車制御システム。
  14. 車両位置を検出する位置検出システムと、車両速度を検出する速度検出部と、少なくとも車重を含む車両特性を管理する車両特性管理部と、前記車両位置と前記車両速度と前記車両特性を基に前記車両の運転士に対する運転支援内容を生成する運転支援内容生成部と、前記運転支援内容を受けて、運転士に運転支援内容を伝える運転支援内容教示部と、を備える列車運転支援システムであって、
    前記位置検出システムは、請求項1乃至請求項12のいずれか一つに記載の列車位置検出システムであることを特徴とする列車運転支援システム。
  15. 車両位置を検出する位置検出システムと、車両速度を検出する速度検出部と、少なくとも車重を含む車両特性を管理する車両特性管理部と、車両の前方を監視する前方監視部と、前記前方監視部の監視結果と前記車両位置と前記車両速度と前記車両特性を基に、列車の運行を支障する障害物の有無を判定する障害物有無判定部を、前記判定の結果を乗務員に教示する障害物情報教示部と、を備える列車障害物検知システムであって、
    前記位置検出システムは、請求項1乃至請求項12のいずれか一つに記載の列車位置検出システムであることを特徴とする列車障害物検知システム。
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