以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置100の模式的な断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を利用してフルカラー画像を形成することのできる、中間転写方式を採用したタンデム型(インライン方式)のレーザービームプリンターである。
画像形成装置100は、複数の画像形成部(ステーション)として、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色の画像を形成する第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。各画像形成部SY、SM、SC、SKにおける同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを表す符号の末尾のY、M、C、Kを省略して総括的に説明することがある。図2は、画像形成部Sの模式的な断面図である。本実施例では、画像形成部Sは、後述する感光ドラム1、帯電ローラ2、像露光装置3、現像装置4、1次転写ローラ5、ドラムクリーニング装置6などを有して構成される。
画像形成装置100は、像担持体としてのドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム1を有する。本実施例では、感光ドラム1は、アルミ素管上に下地層、電荷発生層、電荷輸送層が順次積層されて構成されている。本実施例では、下地層、電荷発生層及び電荷輸送層で感光体層が構成される。感光ドラム1は、駆動手段としてのドラム駆動装置13(図3)によって、図中矢印R1方向(時計回り)に所定の周速度(プロセススピード)で回転駆動される。本実施例では、感光ドラム1の周速度は、約150mm/secである。
回転する感光ドラム1の表面は、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2によって、所定の極性(本実施例では負極性)の所定の電位に一様に帯電させられる。本実施例では、帯電ローラ2は、芯金と、芯金の周りに同心一体に形成された導電性弾性体層と、を有し、その回転軸線方向が感光ドラム1の回転軸線方向と略平行になるように配置されている。帯電ローラ2は、導電性弾性体層の弾性に抗して所定の押圧力で感光ドラム1に接触(当接)させられている。また、帯電ローラ2は、その芯金の両端部が軸受け部材によって回転可能に支持されており、感光ドラム1の回転に伴って従動して回転する。帯電ローラ2は、感光ドラム1に当接する当接部材の一例である。帯電工程時に、帯電ローラ2には、その芯金を介して、印加手段としての帯電電源(高圧電源回路)E1によって、所定の極性(本実施例では負極性)の直流電圧である帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。本実施例では、帯電電圧は、約−1200Vの直流電圧である。これにより、感光ドラム1の表面は、−650Vの帯電電位に帯電させられる。
帯電処理された感光ドラム1の表面は、露光手段としての像露光装置3によって画像情報に応じて走査露光され、感光ドラム1上に静電像(静電潜像)が形成される。本実施例では、像露光装置3は、レーザースキャナー装置である。像露光装置3には、後述する制御部50(図3)によって画像情報が処理されて生成された時系列電気デジタル画素信号が入力される。像露光装置3は、時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザー光を出力するレーザー出力部、回転多面鏡(ポリゴンミラー)、fθレンズ、反射鏡などを有している。そして、像露光装置3は、感光ドラム1の回転軸線方向と略平行な主走査方向に走査しながら感光ドラム1の表面にレーザー光を照射する。また、このレーザー光は、感光ドラム1の回転により、感光ドラム1の表面の移動方向と略平行な副走査方向にも走査される。これより、感光ドラム1上に、画像情報に対応した静電像が形成される。
感光ドラム1上に形成された静電像は、現像手段としての現像装置4によって現像剤としてのトナーが供給されて現像(可視化)され、感光ドラム1上にトナー像が形成される。本実施例では、現像装置4は、接触現像方式を採用している。現像装置4は、現像剤担持体(現像部材)としての現像ローラ41と、トナーを収容する現像容器42と、を有する。現像容器42には、現像剤として非磁性一成分現像剤(非磁性トナー)が収容されている。現像ローラ41は、現像容器42に収容されたトナーを担持して、感光ドラム1との対向部に搬送する。本実施例では、現像ローラ41は、芯金と、芯金の周りに同心一体に形成された導電性弾性体層と、を有し、その回転軸線方向が感光ドラム1の回転軸線方向と略平行になるように配置されている。現像ローラ41は、摩擦によって負極性に帯電させられたトナーを担持して感光ドラム1との対向部に搬送する。トナーを担持した現像ローラ41は、感光ドラム1の表面に接触(当接)し、感光ドラム1上に形成された静電像に応じてトナーを感光ドラム1の表面に付着させる。現像工程時に、現像ローラ41には、その芯金を介して、現像電源(高圧電源回路)E2(図3)によって、所定の極性(本実施例では負極性)の直流電圧である現像電圧(現像バイアス)が印加される。本実施例では、現像電圧は、約−400Vの直流電圧である。本実施例では、一様に帯電させられた後に露光されることで電位の絶対値が低下した感光ドラム1上の露光部に、感光ドラム1の帯電極性と同極性(本実施例では負極性)に帯電したトナーが付着する(反転現像)。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。なお、現像ローラ41と感光ドラム1とは、接離手段としての現像接離機構15(図3)によって、適宜当接状態又は離間状態に切り替えることが可能である。現像ローラ41は、概略、現像動作などのために必要な時にだけ感光ドラム1に当接させられる。
全ての感光ドラム1に対向するように、中間転写体としての無端状のベルトで構成された中間転写ベルト7が配置されている。本実施例では、中間転写ベルト7として、電気抵抗値(体積抵抗率)が1011〜1016Ω・cm程度、厚さが100〜200μm程度の樹脂フィルムを無端状に形成したものを用いた。中間転写ベルト7の材料としては、PVdf(ポリフッ化ビニリデン)、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)などを用いることができる。中間転写ベルト7は、複数の支持部材(張架ローラ)としての駆動ローラ71、テンションローラ72及び2次転写対向ローラ73に掛け渡されて、所定の張力で張架されている。中間転写ベルト7は、駆動ローラ71が駆動手段としてのベルト駆動装置14(図3)によって回転駆動されることで、図中矢印R2方向(反時計回り)に、感光ドラム1の周速度と略同一の周速度で回転(循環移動)する。中間転写ベルト7の内周面側には、各感光ドラム1に対応して、1次転写手段としてのローラ型の1次転写部材である1次転写ローラ5が配置されている。本実施例では、1次転写ローラ5は、芯金と、芯金の周りに同心一体に形成された導電性弾性層と、を有し、その回転軸線方向が感光ドラム1の回転軸線方向と略平行になるように配置されている。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト7を介して感光ドラム1に向けて付勢され、中間転写ベルト7を感光ドラム1に向けて押圧して、感光ドラム1と中間転写ベルト7とが接触する1次転写部(1次転写ニップ)T1を形成する。すなわち、1次転写ローラ5は、中間転写ベルト8を介して感光ドラム1に所定の押圧力で当接させられる。1次転写ローラ5は、中間転写ベルト7の回転に伴って従動して回転する。なお、1次転写ローラ5と感光ドラム1とは、1次転写接離手段としての1次転写接離機構16(図3)によって、適宜当接状態又は離間状態に切り替えることが可能である。1次転写ローラ5が感光ドラム1から離間されると、中間転写ベルト7が感光ドラム1から離間される。
上述のように感光ドラム1上に形成されたトナー像は、1次転写部T1において、1次転写ローラ5の作用によって、回転している被転写体としての中間転写ベルト7上に転写(1次転写)される。1次転写工程時に、1次転写ローラ5には、その芯金を介して、1次転写電源(高圧電源回路)E3(図3)によって、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である1次転写電圧(1次転写バイアス)が印加される。これにより、1次転写部T1に1次転写電界が形成される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1Y、1M、1C、1K上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト7上に重ね合わされるようにして順次1次転写される。
中間転写ベルト7の外周面側において、2次転写対向ローラ73と対向する位置には、2次転写手段としてのローラ型の2次転写部材である2次転写ローラ8が配置されている。2次転写ローラ8は、中間転写ベルト7を介して2次転写対向ローラ73に向けて押圧され、中間転写ベルト7と2次転写ローラ8とが接触する2次転写部(2次転写ニップ)T2を形成する。上述のように中間転写ベルト7上に形成されたトナー像は、2次転写部T2において、2次転写ローラ8の作用によって、中間転写ベルト7と2次転写ローラ8とに挟持されて搬送される記録材P上に転写(2次転写)される。記録材Pは、記録紙、OHPシート、葉書、封筒、ラベルなどである。2次転写工程時に、2次転写ローラ8には、2次転写電源(高圧電源回路)E4(図3)によって、トナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧である2次転写電圧(2次転写バイアス)が印加される。これにより、2次転写部T2に2次転写電界が形成される。
記録材Pは、収納部としてのカセット11から搬送部材としての給送ローラ12などによって搬送され、中間転写ベルト7上のトナー像とタイミングが合わされて2次転写部T2に供給される。また、トナー像が転写された記録材Pは、定着手段としての定着装置9によって加熱及び加圧されることでトナー像が定着(溶融固着)された後に、画像形成装置100の装置本体110の外部に排出(出力)される。
一方、1次転写時に中間転写ベルト7に転写されずに感光ドラム1の表面に残留したトナー(1次転写残トナー)は、感光体クリーニング手段としてのドラムクリーニング装置6によって感光ドラム1の表面から除去されて回収される。ドラムクリーニング装置6は、感光ドラム1の表面に当接するクリーニング部材としてのクリーニングブレード61と、クリーニング容器62と、を有する。本実施例では、クリーニングブレード61は、ウレタンゴム製のチップブレードと、これを支持する板金と、を有して構成された、弾性クリーニングブレードである。クリーニングブレード61は、その自由端部が感光ドラム1の回転方向の上流側を向いたカウンター方向で感光ドラム1の表面に当接させられている。そして、ドラムクリーニング装置6は、クリーニングブレード61によって、回転する感光ドラム1の表面から1次転写残トナーを掻き取り、クリーニング容器62内に収容する。また、中間転写ベルト7の外周面側において、2次転写対向ローラ73と対向する位置に、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置74が配置されている。2次転写時に記録材Pに転写されずに中間転写ベルト7の表面に残留したトナー(2次転写残トナー)は、ベルトクリーニング装置74によって中間転写ベルト7の表面から除去されて回収される。
本実施例では、各画像形成部Sにおいて、感光ドラム1と、これに作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及びドラムクリーニング装置6とは、一体的に装置本体110に対して着脱可能なプロセスカートリッジ10を構成している。プロセスカートリッジ10は、例えば現像装置4内のトナーが無くなった場合、あるいは感光ドラム1が寿命に達した場合などに新品と交換される。
ここで、感光ドラム1の回転方向(表面の移動方向)における帯電ローラ2による帯電処理が行われる位置が帯電位置である。帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転方向における帯電ローラ2と感光ドラム1との当接部(帯電ニップ)Nの上流及び下流に形成される帯電ローラ2と感光ドラム1との間の微小な間隙の少なくとも一方で発生する放電によって感光ドラム1を帯電処理する。ただし、簡単のため、帯電ローラ2と感光ドラム1との当接部Nが帯電位置であると擬制して考えてもよい。また、感光ドラム1の回転方向における像露光装置3による露光が行われる位置が像露光位置Exである。また、感光ドラム1の回転方向における現像ローラ41から感光ドラム1へのトナーの供給が行われる位置(本実施例では現像ローラ41と感光ドラム1との当接部)が現像位置Dである。また、感光ドラム1の回転方向における感光ドラム1から中間転写ベルト7へのトナー像の転写が行われる位置(本実施例では感光ドラム1と中間転写ベルト7との接触部)が一次転写位置(一次転写部)T1である。また、感光ドラム1の回転方向におけるクリーニングブレード61と感光ドラム1との当接部がクリーニング位置Cdである。
2.制御態様
図3は、本実施例の画像形成装置100の要部の制御態様を示す概略ブロック図である。画像形成装置100の装置本体110には、制御手段としての制御部(制御回路)50が設けられている。制御部50は、演算制御手段としてのCPU51、記憶手段としてのROMやRAMで構成されたメモリ52などを有して構成される。CPU51は、メモリ52に格納されたプログラムに従って画像形成装置100の各部の動作を統括的に制御する。制御部50には、ドラム駆動装置13、ベルト駆動装置14、各種電源E1〜E4、像露光装置3、現像接離機構15、1次転写接離機構16などが接続されている。また、制御部50には、電流検知手段としての電流検知回路21が接続されている。電流検知回路21は、帯電電源E1により帯電ローラ2に電圧を印加した際に帯電ローラ2に流れる電流値を検知する。本実施例では、電流検知回路21は、帯電電源E1に直接接続されている。なお、図3では図示を省略しているが、本実施例では、帯電電源E1、現像電源E2、1次転写電源E3は、それぞれ各画像形成部SY、SM、SC、SKごとに独立して設けられている。一方、電流検知回路21は、全ての画像形成部SY、SM、SC、SKに対して共通化されている。また、本実施例では、ドラム駆動装置13は、各感光ドラム1を独立して回転/停止させることができるようになっている。
制御部50には、インターフェース53を介して外部機器200が接続されている。制御部50は、外部機器200との間で各種の電気的情報信号の授受をする。また、制御部50は、画像形成装置100内の各種のプロセス機器やセンサから入力される電気的情報信号の処理、各種のプロセス機器への指令信号の処理を行う。外部機器200は、例えば、ホストコンピュータ、ネットワーク、イメージリーダ、ファクシミリなどである。制御部50は、外部機器200から入力される画像データ(電気的な画像情報)に対応した画像を記録材Pに形成して出力するように画像形成装置100の動作の制御を行う。また、制御部50は、詳しくは後述する画像流れ検知動作及び画像流れ抑制動作の制御を行う。
ここで、画像形成装置100は、一の開始指示により開始される、単一又は複数の記録材Pに画像を形成して出力する一連の動作であるジョブ(プリント動作)を実行する。ジョブは、一般に、画像形成工程、前回転工程、複数の記録材Pに画像を形成する場合の紙間工程、及び後回転工程を有する。画像形成工程は、実際に記録材Pに形成して出力する画像の静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写や2次転写を行う期間であり、画像形成時とはこの期間のことをいう。より詳細には、これら静電像の形成、トナー像の形成、トナー像の1次転写や2次転写の各工程を行う位置で、画像形成時のタイミングは異なる。前回転工程は、開始指示が入力されてから実際に画像を形成し始めるまでの、画像形成工程の前の準備動作を行う期間である。紙間工程は、複数の記録材Pに対する画像形成を連続して行う際(連続画像形成)の記録材Pと記録材Pとの間に対応する期間である。後回転工程は、画像形成工程の後の整理動作(準備動作)を行う期間である。非画像形成時とは、画像形成時以外の期間であって、上記前回転工程、紙間工程、後回転工程、更には画像形成装置100の電源投入時又はスリープ状態からの復帰時の準備動作である前多回転工程などが含まれる。本実施例では、非画像形成時に、詳しくは後述する画像流れ検知動作及び画像流れ抑制動作が実行される。
3.画像流れ
次に、画像流れについて説明する。なお、以下の説明において、電圧値、電流値、電位の大小関係について言及する場合は、便宜上、その絶対値についての大小関係を言うものとする。
図4は、帯電ローラ2に印加した直流電圧と感光ドラム1の表面電位との関係を、温度30℃、相対湿度80%の高温高湿環境(以下、「H/H環境」という。)で測定した結果を示すグラフ図である。なお、図4は、画像流れが発生しない感光ドラム1を用いた場合の測定結果を示している。帯電ローラ2に印加する直流電圧を大きくしていくと、ある電圧値までは感光ドラム1の表面電位に変化はないが、ある電圧値から感光ドラム1の表面電位が上昇し始める。この感光ドラム1の表面電位が上昇し始める直流電圧の値が、放電開始電圧Vthである。本実施例では、放電開始電圧Vthは、一例として−550Vであるものとする。なお、放電開始電圧Vthは、帯電ローラ2と感光ドラム1との間の間隙、感光ドラム1の感光体層の厚み、感光ドラム1の感光体層の比誘電率などによって決まる。放電開始電圧Vth以上の直流電圧を帯電ローラ2に印加すると、パッシェンの法則に基づき、帯電ローラ2と感光ドラム1との間の間隙での放電現像が発生し、感光ドラム1の表面に電荷が載る(電位が形成される)。つまり、帯電ローラ2に放電開始電圧Vth以上の直流電圧を印加した場合に、感光ドラム1の表面電位は上昇を開始し、それ以降は帯電ローラ2に印加する直流電圧に対して略傾き1の線形の関係にて感光ドラム1の表面電位が上昇する。したがって、電子写真に必要とされる感光ドラム1の表面電位(帯電電位)Vdを得るためには、直流電圧Vd+Vthを帯電ローラ2に印加することが必要である。直流電圧Vd+Vthを帯電ローラ2に印加すると、感光ドラム1と帯電ローラ2との間で放電が起こる。
図5は、画像流れが発生する感光ドラム1を用いた場合における、帯電ローラ2に印加した直流電圧と感光ドラム1の表面電位との関係をH/H環境で測定した結果を示すグラフ図である。感光ドラム1の表面に付着した放電生成物は、高湿環境下で吸湿し、感光ドラム1の表面の電気抵抗を低下させて、画像流れを発生させる。図5に示すように、画像流れが発生する感光ドラム1では、帯電ローラ2に印加する直流電圧が放電開始電圧Vthよりも低い場合にも感光ドラム1の表面電位が上昇し始める。そして、帯電ローラ2に放電開始電圧Vthを印加した際には、感光ドラム1の表面電位は約−50Vとなる。これは、画像流れが発生する感光ドラム1では、表面の電気抵抗が低下していることによって注入帯電が発生し、パッシェンの法則に基づく放電開始電圧Vth未満の直流電圧を印加した場合にも感光ドラム1の表面に微小に電位が形成されることによる。
図6は、画像流れが発生しない感光ドラム1と画像流れが発生する感光ドラム1とを用いて、帯電ローラ2に印加した直流電圧と電流検知回路21により検知された電流値との関係をH/H環境で測定した結果を示すグラフ図である。画像流れが発生しない感光ドラム1では、帯電ローラ2に印加する直流電圧が放電開始電圧Vthよりも低い場合には、電流検知回路21によって電流はほとんど検知されない。これに対して、画像流れが発生する感光ドラム1では、帯電ローラ2に印加する直流電圧が放電開始電圧Vthよりも低い場合にも、電流検知回路21によって電流が検知される。これは、画像流れが発生する感光ドラム1では、感光ドラム1の表面に注入帯電により電位が形成される際に微小な電流が流れることによる。
図7は、上述のように電流の検知結果が異なるメカニズムを説明するための模式図である。図7(a)は画像流れが発生しない感光ドラム1を用いた場合、図7(b)は画像流れが発生する感光ドラム1を用いた場合を示している。図7(a)に示すように、画像流れが発生しない感光ドラム1では、帯電ローラ2に印加する直流電圧が放電開始電圧Vth未満の場合は(左図)、感光ドラム1の表面に電位は形成されない。そして、帯電ローラ2に放電開始電圧Vth以上の直流電圧を印加することで(右図)、帯電ローラ2と感光ドラム1との間の微小な間隙で放電が開始されることにより、感光ドラム1の表面に電位が形成される。一方、図7(b)に示すように、画像流れが発生する感光ドラム1では、帯電ローラ2に印加する直流電圧が放電開始電圧Vth未満の場合も、感光ドラム1の表面に電位が形成される。これは、放電生成物に反応・吸着された水分によって感光ドラム1の表面の電気抵抗が下がり、帯電ローラ2と感光ドラム1との当接部(帯電ニップ)Nで感光ドラム1の表面に電荷が注入されるためである。
4.画像流れ検知方法の原理
次に、画像流れ検知方法の原理について説明する。なお、感光ドラム1の表面電位の状態などに関して言及する場合、上流、下流とは、感光ドラム1の回転方向(表面の移動方向)における上流、下流を意味する。
図8は、1つの画像形成部Sに注目した場合の画像流れの検知構成の模式図である。この画像流れの検知構成は、感光ドラム1と、帯電ローラ2と、像露光装置3と、帯電電源E1と、電流検知回路21と、を有する。なお、ここでは、現像装置4、1次転写ローラ5、ドラムクリーニング装置6は、それぞれ取り外されているものとする。
この検知構成において、感光ドラム1を、H/H環境の暗部で、ある一定の帯電量に帯電させながら回転(空回転)させた。この感光ドラム1の回転中は、像露光装置3による感光ドラム1の全面露光を行って、帯電ニップNに到達する感光ドラム1の表面電位が略0Vになるようにした。なお、ここでは、「全面露光」とは、感光ドラム1の回転軸線方向における像露光装置3の露光可能範囲の全域を、感光ドラム1の表面電位が略0Vになるような露光量で露光することを言うものとする。これにより、感光ドラム1を画像流れの発生しやすい状態とした。その後、H/H環境の暗部で、次のような動作を行った。つまり、一旦、感光ドラム1の帯電処理を停止させ、像露光装置3による全面露光を行って感光ドラム1の周方向の全域の表面電位を略0Vとした。次に、像露光装置3による露光を停止し、感光ドラム1を約150mm/secの周速度で回転させた状態で、帯電ローラ2に対する放電開始電圧Vth未満である−400Vの直流電圧の印加を開始した。その後、感光ドラム1を一定期間回転させた後に、放電開始電圧Vth未満の直流電圧の印加、感光ドラム1の回転を継続した状態で、像露光装置3による感光ドラム1の全面露光を開始した。
図9は、放電開始電圧Vth未満の直流電圧の印加を開始してからの、時間と電流検知回路21により検知された電流値との関係を測定した結果を示すグラフ図である。上述のように、画像流れが発生する感光ドラム1では、帯電ローラ2に放電開始電圧Vth未満の直流電圧を印加した場合にも注入帯電により帯電ニップNの下流側において感光ドラム1の表面にわずかに電位が形成される。したがって、画像流れが発生する感光ドラム1では、電位が形成されていない感光ドラム1の表面(表面電位が略0Vの領域)が帯電ニップNを通過する際に、帯電ローラ2に放電開始電圧Vth未満の直流電圧の印加を開始すると、瞬間的に電流が流れる。そのため、電流検知回路21によって電流が検知される。その後、この放電開始電圧Vth未満の直流電圧の印加を継続しながら感光ドラム1の回転を継続すると、複数回帯電ニップNを通過するうちに感光ドラム1の表面電位が安定し、電流が流れなくなる。そのため、電流検知回路21によって電流は検知されなくなる。その状態で、像露光装置3による全面露光によって帯電ニップNの上流側の感光ドラム1の表面電位が略0Vにキャンセルされると、全面露光された領域(ここでは「露光領域」ともいう。)が帯電ニップNに到達した際に注入帯電により再び電流が流れる。帯電ニップNを通過する前後の感光ドラム1の表面電位に差が生じるからである。これにより、再び電流検知回路21によって電流が検知される。したがって、例えば、所定の閾値を設定し、このとき流れる電流値がその閾値以上の場合に、感光ドラム1が画像流れの発生しやすい状態であると判断することができる。本実施例の構成では、このときに流れる電流値が、例えば−1μA以上の場合に、感光ドラム1が画像流れの発生しやすい状態であると判断することができる。
一方、画像流れが発生しない感光ドラム1では、上記同様の動作を行った場合、放電開始電圧Vth未満の直流電圧の印加を開始した際も、露光領域が帯電ニップNに到達した際も、帯電ニップNの下流側において感光ドラム1の表面に電位は形成されない。そのため、画像流れが発生しない感光ドラム1では、上記同様の動作を行った場合、電流検知回路21によって電流は検知されない。
本実施例では、上述のような現象を利用して、感光ドラム1が画像流れの発生しやすい状態か否かを検知する。なお、本実施例では、電流検知回路21は、帯電電源E1に直接接続されているが、例えば感光ドラム1と接地との間に接続されていてもよい。また、本実施例では、帯電電源E1により所定の電圧を帯電ローラ2に印加した際に流れる電流値を電流検知回路21を用いて検知するが、帯電電源E1により帯電ローラ2に所定の電流を流した際の電圧値を検知してもよい。例えば、制御部50が、電流検知回路21で検知される電流値が所定値となるように帯電電源21の出力の設定値を変更し、所定の電流値が得られた際の帯電電源E1の出力の設定値から電圧値を検知するようにすることができる。この場合、制御部50などにより電圧値を検知する検知手段が構成される。つまり、検知手段は、帯電電源E1により帯電ローラ2に電圧を印加した際の電流変化、電圧変化のいずれを検知してもよい。
ここで、詳しくは後述するように、本実施例では、共通の電流検知回路21の検知結果に基づいて、複数の感光ドラム1のそれぞれを特定して、画像流れの発生しやすい状態か否かを検知する。そこで、画像流れ検知動作では、一旦、複数の感光ドラム1を、帯電ローラ2に放電開始電圧Vth未満の直流電圧を印加しても電流が流れない状態にする。そのために、本実施例では、上述のように帯電ローラ2に放電開始電圧Vth未満の直流電圧を印加しながら感光ドラム1を回転させると感光ドラム1の周方向の全域の表面電位がある一定時間経過後に飽和することを利用する。
図10は、帯電ローラ2に放電開始電圧Vth未満である−400Vの直流電圧を印加した状態で感光ドラム1を約150mm/secの周速度で回転させた際の、時間と感光ドラム1の表面電位との関係を測定した結果を示すグラフ図である。感光ドラム1の表面電位は、帯電部を通過するごとに上昇し、最終的にはおよそ30秒で感光ドラム1の表面電位が飽和した。したがって、帯電ローラ2に−400Vの直流電圧を印加する場合、感光ドラム1を少なくとも30秒回転させることで、該直流電圧を印加しても実質的に電流が流れない状態にすることができる。
このように、感光ドラム1の表面電位が飽和した状態から、感光ドラム1の周方向の所定領域に対して像露光装置3による全面露光を行う。そして、感光ドラム1の露光領域が帯電ニップNに到達した際に注入帯電により流れる電流を、電流検知回路21で検知する。つまり、感光ドラム1の露光領域が帯電ニップNに到達するまでは電流は流れないが、感光ドラム1が画像流れの発生しやすい状態の場合は感光ドラム1の露光領域が帯電ニップNに到達した瞬間に電流が流れるので、この電流を電流検知回路21により検知する。これにより、感光ドラム1が画像流れの発生しやすい状態か否かを検知することができる。
なお、図5、図6から分かるように、注入帯電による感光ドラム1の表面電位が高くなるほど、該注入帯電の際に流れる電流値は大きくなる。注入帯電による電流を精度良く検知するためには、注入帯電により流れる電流値がなるべく大きくなる条件で検知を行うことが望ましい。そのため、画像流れ検知動作で用いる放電開始電圧Vth未満の直流電圧の値は、できるだけ大きくすることが望まし。この点に鑑みて、本実施例では、画像流れ検知動作で用いる放電開始電圧Vth未満の直流電圧の値は−400Vとした。また、本実施例では、画像流れ検知動作における感光ドラム1の周速度は、画像形成時と略同一の約150mm/secである。
5.制御手順
次に、本実施例における画像流れ検知動作及び画像流れ抑制動作の制御手順について説明する。
5−1.制御手順の概要
まず、本発明の理解を容易とするために、1つの画像形成部Sに注目して、画像流れ検知動作及び画像流れ抑制動作の制御手順の概要について説明する。図11は、1つの画像形成部Sに注目した場合の画像流れ検知動作及び画像流れ抑制動作の制御手順の概略を示すフローチャート図である。図11において、概略、S102〜S105の動作が画像流れ検知動作であり、S106〜S108の動作が画像流れ抑制動作である。
制御部50は、画像流れ検知動作の実行タイミングが到来すると、感光ドラム1を回転させる(S101)。そして、制御部50は、帯電ローラ2に対する放電開始電圧Vth未満の直流電圧の印加を開始させて、感光ドラム1の回転を30秒間継続させる(S102)。このとき、像露光装置3はOFFとし、現像ローラ41は感光ドラム1から離間させて現像電圧はOFFとし、1次転写ローラ5は感光ドラム1から離間させて1次転写電圧はOFFとする。なお、当該制御が後回転工程で実行される場合など、画像流れ検知動作の実行タイミングが到来した際に感光ドラム1が回転している場合は、その回転を継続させればよい。また、ここでは、画像流れ検知動作の実行タイミングが到来する前に、感光ドラム1の周方向の全域の表面電位は略0Vになっているものとする。このような動作により、画像流れの発生しやすい状態の感光ドラム1であれば、注入帯電により電流が流れた後、感光ドラム1の表面電位が飽和することで電流が流れなくなる。
次に、制御部50は、放電開始電圧Vth未満の直流電圧の印加、感光ドラム1の回転を継続しながら、感光ドラム1の周方向の所定領域を像露光装置3により全面露光させる(S103)。次に、制御部50は、感光ドラム1の露光領域が帯電ニップNに到達し、該露光領域に放電開始電圧Vth未満の直流電圧が印加された際の電流検知回路21の検知結果を取得する(S104)。次に、制御部50は、閾値以上の電流値が電流検知回路21により検知されたか否かを判断する(S105)。制御部50は、S105で閾値以上の電流値が検知されたと判断した場合は、画像流れ抑制動作を実行することを決定し、引き続き画像流れ抑制動作を開始させる(S106)。その後、制御部50は、画像流れ抑制動作を所定時間にわたり実行させた後に(S107)、画像流れ抑制動作を終了させ(S108)、動作を停止させる(S109)。一方、制御部50は、S105で閾値以上の電流値が検知されなかったと判断した場合は、画像流れ抑制動作を実行させずに、動作を停止させる(S109)。
なお、ここでは、感光ドラム1の表面電位を飽和させた後、感光ドラム1の露光領域が帯電ニップNを通過するまで、帯電ローラ2に対する直流電圧の印加を継続した。ただし、感光ドラム1の表面電位を飽和させた後に該直流電圧の印加を一旦停止し、感光ドラム1の露光領域が帯電ニップNに到達するタイミングに合わせて再度該直流電圧の印加を開始してもよい。そして、電流検知回路21の検知結果を取得するための該直流電圧を、感光ドラム1の露光領域が帯電ニップNを通過する間のみ印加することができる。
ここで、本実施例では、画像流れ抑制動作(画像流れ抑制モード)として、感光ドラム1を所定時間にわたり回転させて、クリーニングブレード61で感光ドラム1の表面を摺擦する動作を行う。ただし、画像流れ抑制動作は、感光ドラム1の表面に付着した放電生成物の影響を低減することのできる任意の動作であってよい。典型的には、該動作は、感光ドラム1の表面から放電生成部を除去する動作や、感光ドラム1の表面を乾燥させて放電生成物が吸湿することにより感光ドラム1の表面の電気抵抗が低下することを抑制する動作などである。例えば、感光ドラム1の表面から放電生成物を除去する動作としては、本実施例の動作の他、例えば回転可能なローラ型のブラシなどの摺擦部材を感光ドラム1の表面に当接させて回転させる動作が例示できる。また、感光ドラム1の表面を乾燥させる動作としては、感光ドラム1の内部(中空部)や周囲、あるいは画像形成装置100の装置本体110内の任意の箇所に設けられたヒータなどの加熱手段によって感光ドラム1の表面や周囲を加熱する動作が挙げられる。
5−2.複数の感光ドラムを備える場合の課題
次に、複数の感光ドラム1を備えた画像形成装置100に上述の制御手順を適用する場合の課題について説明する。
上述のように、帯電ローラ2に放電開始電圧Vth未満の直流電圧を印加することによって生じる注入帯電による電流変化を検知することで、感光ドラム1が画像流れの発生しやすい状態か否かを検知することができる。しかし、本実施例では、画像形成装置100は、装置の小型化や低コスト化を図るため、複数の感光ドラム1に対して単一の電流検知回路21のみが設けられている。そのため、上述の制御手順を単純に適用したのでは、複数の感光ドラム1のそれぞれを特定して画像流れの発生しやすい状態か否かを検知することはできない。すなわち、本実施例の画像形成装置100では、共通の電流検知回路21で全ての画像形成部Sの帯電ローラ2に流れる電流の総和(合計電流)を検知することになるため、画像形成部Sごとに個別に帯電ローラ2に流れる電流を検知することができない。
仮に、上述の制御手順に従って、全ての感光ドラム1の表面電位を飽和させた後に、全ての感光ドラム1に対して同時に像露光装置3による全面露光を行う場合を考える。この場合も、画像流れが発生する感光ドラム1が存在する場合には、注入帯電により流れる電流が電流検知回路21により検知される。しかし、この場合は、全ての感光ドラム1の露光領域が同時に帯電ニップNに到達するので、複数の感光ドラム1のうち1つでも画像流れが発生する感光ドラム1である場合には、注入帯電により流れる電流が電流検知回路21により検知されることになる。そのため、複数の感光ドラム1のうちのどの感光ドラム1が画像流れの発生しやすい状態になっているのか検知することができない。また、各感光ドラム1がどの程度画像流れの発生しやすい状態になっているのかを判断することもできない。したがって、この場合は、画像流れが発生しやすい状態の感光ドラム1が1つでもある場合には、全ての感光ドラム1に対して、一律に画像流れ抑制動作を実行することしかできない。そのため、画像流れ抑制動作による部材や材料の消耗や消費、画像流れ抑制動作のためのダウンタイム(画像を出力できない期間)の増加につながる。
ここで、共通の電流検知回路21を用いて複数の感光ドラム1のそれぞれを特定して画像流れの発生しやすい状態か否かを検知する方法の一例として、図12のフローチャートに示す次のような方法が考えられる。
制御部50は、画像流れ検知動作の実行タイミングが到来すると、全ての感光ドラム1を回転させる(S201)。なお、ここでは、複数の感光ドラム1を単一の駆動モータで同時に回転させるものとするが、複数の感光ドラム1は、同時に回転を開始させても、タイミングをずらして回転を回転させてもよい。また、複数の感光ドラム1は、単一の駆動モータによって回転駆動されても、それぞれ独立した駆動モータによって回転駆動されてもよい。次に、制御部50は、第1の画像形成部SYについて、図11のS102〜S104と同様のS202〜S204の動作を実行させて、電流検知回路21の検知結果を取得する。その後、制御部50は、全ての画像形成部Sについての電流検知回路21の検知結果の取得が終了するまで(S205)、第2、第3、第4の画像形成部SM、SC、SKと順次切り替えてS202〜S204の動作を繰り返す(S206)。
次に、制御部50は、全ての画像形成部Sについての電流検知回路21の検知結果の取得が終了したら、閾値以上の電流が電流検知回路21により検知された画像形成部Sがあるか否か判断し、ある場合にはどの画像形成部Sかを特定する(S207)。そして、制御部50は、S207で閾値以上の電流値が電流検知回路21により検知された画像形成部Sについて、画像流れ抑制動作を所定時間にわたり実行させた後に、動作を停止させる(S208〜S211)。一方、制御部50は、S207で閾値以上の電流値が電流検知回路21により検知されなかった画像形成部Sについては、画像流れ抑制動作を実行させずに、動作を停止させる(S211)。
このような方法によっても、複数の感光ドラム1のそれぞれを特定して画像流れの発生しやすい状態か否かを検知することができる。しかし、このような方法では、1つの画像形成部Sでの画像流れ検知動作が完了するまで他の画像形成部Sでの画像流れ検知動作を行うことができず、制御に時間がかかりダウンタイムの増加につながる。
そこで、本実施例では、以下のような制御手順によって、制御にかかる時間を短縮しつつ、複数の感光ドラム1のそれぞれを特定して画像流れの発生し易い状態か否かを検知できるようにする。
5−3.本実施例の制御手順
次に、本実施例における画像流れ検知動作及び画像流れ抑制動作の制御手順について説明する。図13は、本実施例における画像流れ検知動作及び画像流れ抑制動作の制御手順の概略を示すフローチャート図である。図13において、概略、S302〜S305の動作が画像流れ検知動作であり、S306〜S308の動作が画像流れ抑制動作である。
本実施例では、画像流れ検知動作及び画像流れ抑制動作は、制御部50によって、非画像形成時に実行される。具体的には、画像流れ検知動作は、画像形成部Sにおいてジョブの最後の画像の形成が終了した後の後回転工程中に実行される。そして、画像流れ検知動作において画像流れ抑制動作を実行することが決定された場合、当該後回転工程中に画像流れ抑制動作が実行される。なお、本実施例では、画像流れ抑制動作は、典型的には、画像形成部Sにおいてジョブの最後の画像の形成が終了した後、該画像が転写された記録材Pが定着装置9を通過して画像形成装置100の装置本体110の外部に排出されるまでの間に実行される。そして、その画像流れ検知動作で画像流れ抑制動作を実行することが決定された場合、該記録材Pが装置本体110の外部に排出された後まで継続してもよい所定期間にわたって、画像流れ抑制動作が実行される。
制御部50は、画像流れ検知動作の実行タイミングが到来すると、全ての画像形成部Sの感光ドラム1を同時に回転させる(S301)。そして、制御部50は、全ての画像形成部Sの帯電ローラ2に対する放電開始電圧Vth未満の直流電圧の印加を同時に開始させ、全ての画像形成部Sの感光ドラム1の回転を30秒間継続させる(S302)。このとき、全ての画像形成部Sにおいて、像露光装置3はOFFとし、現像ローラ41は感光ドラム1から離間させて現像電圧はOFFとし、1次転写ローラ5は感光ドラム1から離間させて1次転写電圧はOFFとする。なお、本実施例では、当該制御は後回転工程で実行されるので、画像形成の終了後から画像流れ検知動作の実行タイミングまで感光ドラム1は継続して回転させられる。また、本実施例では、画像流れ検知動作の実行タイミングが到来する前に、感光ドラム1の周方向の全域の表面電位は略0Vになっているものとする。
次に、制御部50は、全ての画像形成部Sにおいて放電開始電圧Vth未満の直流電圧の印加、感光ドラム1の回転を継続しながら、各画像形成部Sでタイミングを異ならせて感光ドラム1の周方向の所定領域を像露光装置3により全面露光させる(S303)。つまり、本実施例では、まず、第1の画像形成部SYの感光ドラム1Yの周方向の所定領域に対して全面露光が行われる。次に、第1の画像形成部SYの感光ドラム1Yの露光領域が帯電ニップNに到達する前に、第2の画像形成部SMの感光ドラム1Mの周方向の所定領域に対して全面露光が行われる。次に、第1の画像形成部SYの感光ドラム1Yの露光領域が帯電ニップNに到達する前に、第3の画像形成部SCの感光ドラム1Cの周方向の所定領域に対して全面露光が行われる。次に、第1の画像形成部SYの感光ドラム1Yの露光領域が帯電ニップNに到達する前に、第4の画像形成部SKの感光ドラム1Kの周方向の所定領域に対して全面露光が行われる。これにより、それぞれの画像形成部Sにおいて感光ドラム1の露光領域が帯電ニップNに到達するタイミングを異ならせることが可能となる。
図14は、第4の画像形成部SKの感光ドラム1Kの全面露光を行っているタイミングにおける、各画像形成部Sの感光ドラム1の露光領域の位置(位相)を示す模式図である。図14に示すように、各画像形成部Sにおける感光ドラム1の露光領域の位置(位相)は異なっており、これによって各画像形成部Sにおける感光ドラム1の露光領域が帯電ニップNに到達するタイミングが異なることになる。したがって、各画像形成部Sにおける、感光ドラム1の露光領域に対して放電開始電圧Vth未満の直流電圧を印加して電流検知回路21により電流を検知するタイミングを、異ならせることが可能となる。制御にかかる時間をできるだけ短くするためには、第1の画像形成部SYにおいて感光ドラム1Yの露光領域が帯電ニップNに到達する時までに、第4の画像形成部SKにおける全面露光が完了することが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の画像形成部Sにおける感光ドラム1の露光領域に放電開始電圧Vth未満の直流電圧を印加して電流検知回路21により電流を検知するタイミングが異なればよい。つまり、各画像形成部Sの感光ドラム1の露光領域は、例えば第1の画像形成部SYの感光ドラム1の露光領域の位相位置を基準とした場合に、それぞれ異なる位相位置であればよい。
次に、制御部50は、各感光ドラム1Y、1M、1C、1Kの露光領域がそれぞれ帯電ニップNに到達し、該露光領域に放電開始電圧Vth未満の直流電圧が印加された際の電流検知回路21の検知結果をそれぞれ取得する(S304)。次に、制御部50は、閾値以上の電流値が電流検知回路21により検知された画像形成部Sがあるか否か判断し、ある場合にはどの画像形成部Sかを特定する(S305)。そして、制御部50は、S305で閾値以上の電流値が電流検知回路21により検知されたと判断した画像形成部Sについて、画像流れ抑制動作を実行することを決定し、引き続き画像流れ動作を開始させる(S306)。その後、制御部50は、画像流れ抑制動作を実行する画像形成部Sについては、画像流れ抑制動作を所定時間にわたり実行させた後に(S307)、画像流れ抑制動作を終了させ(S308)、動作を停止させる(S309)。一方、制御部50は、S305で閾値以上の電流値が電流検知回路21により検知されなかった画像形成部Sについては、画像流れ抑制動作を実行させずに、動作を停止させる(S309)。
図15は、本実施例の効果を説明するための模式図である。図15(a)は前述のように全ての画像形成部Sで同時に全面露光を行なう制御手順により画像流れ検知動作を行なった場合、図15(b)は本実施例の制御手順により画像流れ検知動作を行なった場合の電流検知回路21の検知結果を示している。ここでは、第2、第3の画像形成部SM、SCの感光ドラム1M、1Cが画像流れの発生しやすい状態になっているものとする。
図15(a)に示すように、全ての画像形成部Sで全面露光のタイミングが同じである場合は、全ての画像形成部Sで帯電ローラ2に流れる電流が電流検知回路21により同時に検知される。したがって、第2、第3の画像形成部SM、SCの帯電ローラ2M、2Cに流れる電流の総和(合計電流)が電流検知回路21により検知される。そのため、複数の感光ドラム1のそれぞれを特定して画像流れの発生しやすい状態か否かを検知することはできない。
これに対して、図15(b)に示すように、各画像形成部Sで全面露光のタイミングを異ならせた場合は、各感光ドラム1の露光領域がそれぞれ帯電ニップNに到達した際に、画像形成部Sごとに帯電ローラ2に流れる電流が電流検知回路21により検知される。そのため、本実施例の制御手順の場合は、複数の感光ドラム1のそれぞれを特定して画像流れの発生しやすい状態か否かを検知することができる。図15(b)の例では、第2、第3の画像形成部SM、SCの感光ドラム1M、1Cの露光領域が帯電ニップNを通過するタイミングでのみ帯電ローラ2M、2Cに流れる電流が検知されている。したがって、露光領域が帯電ニップNを通過するタイミングと画像形成部Sとを関係付けておけば、第2、第3の画像形成部SM、SCの感光ドラム1M、1Cが画像流れの発生しやすい状態であることを検知することができる。換言すれば、第1、第4の画像形成部SY、SKの感光ドラム1Y、1Kは画像流れの発生しやすい状態ではないことを検知することができる。
また、本実施例の制御手順の場合は、複数の感光ドラム1のそれぞれがどの程度画像流れの発生しやすい状態かを判断することができる。図15(b)の例では、第2の画像形成部SMの帯電ローラ2Mに流れる電流の方が、第3の画像形成部SCの帯電ローラ2Cに流れる電流よりも大きい。したがって、第2の画像形成部SMの感光ドラム1Mの方が、第3の画像形成部SMの感光ドラム1Cよりも画像流れの発生しやすい状態であると判断することができる。これにより、画像流れの発生しやすさの程度に応じて、画像流れ抑制動作の内容を異ならせることが可能となる。例えば、第2の画像形成部SMの画像流れ抑制動作の実行時間を、第3の画像形成部SCの画像流れ抑制動作の実行時間よりも長くすることができる。具体的には、例えば、複数の閾値を設定し、検知された電流値が第1の閾値以上第2の閾値未満の場合よりも、第2の閾値以上の場合の方の画像流れ抑制動作の実行時間を長くすることができる。また、例えば、予め設定された検知電流値(絶対値や所定範囲ごと)と画像流れ抑制動作の内容(動作の種類や動作時間など)とを関係付ける情報に基づいて、画像流れ抑制動作の内容を変更するようにしてもよい。
このように、本実施例では、画像形成装置100は、印加手段E1により複数の当接部材としての帯電ローラ2に電圧を印加した際に流れる電流値又は発生する電圧値を検知する、共通の検知手段としての電流検知回路21を有する。また、画像形成装置100は、非画像形成時に複数の感光ドラム1のそれぞれの表面電位に関する情報を取得する制御を行う制御手段としての制御部50を有する。この制御部50は、次のような制御を行う。つまり、露光手段としての像露光装置3により複数の感光ドラム1を異なるタイミングで露光させて複数の感光ドラムのそれぞれに露光領域を形成する。また、それぞれの露光領域が帯電ローラ2との当接部(帯電ニップ)Nを通過している時に印加手段E1により複数の帯電ローラ2に放電開始電圧未満の直流電圧を印加させて電流検知回路21の検知結果を取得する。そして、取得したそれぞれの検知結果に基づいて複数の感光ドラム1のそれぞれの表面電位に関する情報を取得する。本実施例では、印加手段は、複数の帯電ローラ2のそれぞれに電圧を印加する個別の電源E1を有する。また、本実施例では、制御部50は、上記制御において、複数の感光ドラム1の表面電位の絶対値が所定値以下に低下している状態から所定時間にわたり印加手段E1により複数の帯電ローラ2に放電開始電圧未満の直流電圧を印加させる。そして、制御部50は、その後に、複数の感光ドラム1のそれぞれに表面電位の絶対値が上記所定値以下の露光領域を形成させる。本実施例では、上記所定値は、略0Vであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、帯電ローラ2への放電開始電圧Vth未満の直流電圧の印加により感光ドラム1に形成され得る表面電位の絶対値よりも小さければよい。また、本実施例では、制御部50は、取得した複数の感光ドラム1のそれぞれの表面電位に関する情報に基づいて、複数の感光ドラム1のそれぞれに関して、表面に付着している放電生成物の影響を低減する動作を実行させるか否かの制御を行う。本実施例では、制御部50は、露光領域が帯電ニップNを通過している時の検知手段により検知された電流値又は電圧値の絶対値が所定の閾値以上の場合に、該露光領域に対応する感光ドラム1に関して上記動作を実行させる。特に、本実施例では、該動作を実行させるのは、電流検知回路21により検知された電流値が所定の閾値以上の場合である。また、本実施例では、露光領域は、感光ドラム1の表面の移動方向と略直交する方向における像露光装置3が露光可能な領域の全域に形成される。
以上説明したように、本実施例によれば、複数の感光ドラム1のそれぞれを特定して、画像流れの発生しやすい状態か否かを検知すること、更にはどの程度発生しやすい状態かを判断することができる。これにより、複数の感光ドラム1のそれぞれについて、必要な場合に必要なだけ画像流れ抑制動作を実行することができ、放電生成物に起因する画像流れを効率よく抑制することができる。特に、本実施例では、装置の小型化や低コスト化、更には制御にかかる時間の短縮を図りつつ、これらの効果を得ることができる。
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
実施例1では、画像流れ検知動作において、複数の感光ドラム1を、帯電ローラ2に放電開始電圧Vth未満の直流電圧を印加しても電流が流れない状態にするために、放電開始電圧Vth未満の直流電圧の印加により感光ドラム1の表面電位を飽和させた。これに対して、本実施例では、全ての画像形成部Sにおいて、帯電ローラ2に放電開始電圧Vth以上の直流電圧を印加して、感光ドラム1の周方向の全域を放電によって帯電させる。本実施例では、このとき帯電ローラ2に−1200Vの直流電圧を印加して、感光ドラム1を画像形成時と略同一の−650Vに帯電させる。その後、実施例1と同様に、複数の感光ドラム1にタイミング異ならせて形成した露光領域が帯電ニップNを通過する際に、帯電ローラ2に放電開始電圧Vth未満の直流電圧を印加して流れる電流を、電流検知回路21により検知する。これにより、一の画像形成部Sにおいて感光ドラム1の露光領域が帯電ニップNを通過する際には、他の画像形成部Sでは感光ドラム1の放電により帯電させられた領域(ここでは、「帯電領域」ともいう。)が帯電ニップNを通過する。感光ドラム1の帯電領域に放電開始電圧Vth未満の電圧を印加しても、実質的に帯電ローラ2には電流は流れない。そのため、上記一の画像形成部Sで露光領域が帯電ニップNを通過する際に全ての画像形成部Sの帯電ローラ2に放電開始電圧Vth未満の直流電圧を印加しても、上記他の画像形成部Sでは実質的に帯電ローラ2には電流は流れない。
図16は、本実施例における画像流れ検知動作及び画像流れ抑制動作の制御手順の概略を示すフローチャート図である。図16のS401、S403〜S409の動作は、それぞれ図13のS301、S303〜S309の動作と同様である。
本実施例では、S402において、制御部50は、次のような動作を行わせる。つまり、制御部50は、全ての画像形成部Sにおいて、帯電ローラ2への放電開始電圧Vth以上の直流電圧の印加を同時に開始させ、感光ドラム1の周方向の全域を放電により帯電させる。次に、S403において、制御部50は、次のような動作を行わせる。つまり、制御部50は、全ての画像形成部Sにおいて、感光ドラム1の回転を継続させながら、帯電ローラ2に印加する直流電圧を放電開始電圧Vth未満の直流電圧に切り替えさせる。そして、制御部50は、各画像形成部Sでタイミングを異ならせて、感光ドラム1の周方向の所定領域を像露光装置3により全面露光させる。
このように、本実施例では、制御部50は、複数の感光ドラム1が放電により帯電させられた後に、複数の感光ドラム1のそれぞれに表面電位の絶対値が所定値以下の露光領域を形成させる。本実施例では、上記所定値は、略0Vであるが、これに限定されるものではなく、帯電ローラ2への放電開始電圧Vth未満の直流電圧の印加により感光ドラム1に形成され得る表面電位の絶対値よりも小さければよい。
以上説明したように、本実施例の制御手順によっても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して、詳しい説明は省略する。
図17は、本実施例の画像形成装置100の要部の概略構成を示す模式的な断面図である。本実施例では、複数の画像形成部Sの帯電ローラ2に直流電圧を印加する電源が共通化されている。つまり、本実施例では、印加手段は、複数の帯電ローラ2に電圧を印加する共通の電源E1を有する。
画像形成装置100は、帯電電源E1、電流検知回路21などを備えた電源装置20を有する。帯電電源E1は、トランス及びトランス駆動・制御系などにより構成されている。帯電電源E1には、第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKの帯電ローラ2Y、2M、2C、2Kが接続されている。帯電電源E1は、負のトランスから出力された帯電電圧(電源電圧)Vcdcを帯電ローラ2Y、2M、2C、2Kに供給する。すなわち、本実施例では、第1、第2、第3、第4の画像形成部SY、SM、SC、SKの帯電ローラ2Y、2M、2C、2Kには、単一の帯電電源E1から直流電圧が印加される。本実施例では、帯電電源E1から各画像形成部Sの帯電ローラ2に印加する直流電圧は、所定の関係を維持させたまま一括して調整することはできる。しかし、各画像形成部S間で帯電ローラ2に印加する直流電圧を独立して調整することはできない。そして、本実施例では、この帯電電源E1に電流検知回路21が直接接続されている。
本実施例では、帯電電圧Vcdcが抵抗素子R1、R2によりR2/(R1+R2)で降圧された負電圧が、基準電圧Vrgvにより正極性の電圧にオフセットさせられて、モニタ電圧Vrefとされる。そして、このモニタ電圧Vrefが一定値になるようフィードバック制御が行われることで、帯電電圧Vcdcが略一定に制御される。具体的には、制御部50のCPU51から予め設定されたコントロール電圧Vcがオペアンプ22の正端子に入力され、モニタ電圧Vrefがオペアンプ22の負端子に入力される。コントロール電圧Vcは、制御部50によって例えば環境などに応じて適宜変更される。そして、帯電電源E1のトランスの制御・駆動系は、モニタ電圧Vrefがコントロール電圧Vcと等しくなるように、オペアンプ22の出力値によってフィードバック制御される。これにより、帯電電源E1のトランスから出力される帯電電圧Vcdcが目標値になるように制御される。
ここで、抵抗素子R1、R2は、固定抵抗、半固定抵抗、可変抵抗のいずれによって構成されていてもよい。また、本実施例では、帯電電源E1のトランスからの電源電圧自体が帯電ローラ2Y、2M、2C、2Kに直接入力されるが、この電圧入力形態に限定されるものではない。帯電ローラ2や現像ローラ41への様々な電圧入力形態が考えられる。例えば、トランスからの出力をコンバータによりDC−DC変換した変換電圧や、電源電圧や変換電圧を固定の電圧降下特性を持った電子素子により分圧、又は降圧した電圧を帯電ローラ2や現像ローラ41に入力してもよい。なお、固定の電圧降下特性を持った電子素子としては、例えば抵抗素子、ツェナーダイオードなどを例に挙げることができる(図17中の符号23)。また、コンバータには可変レギュレータなども含まれる。また、電子素子により分圧、又は降圧するとは、分圧した電圧を更に降圧する場合や、その逆の場合(降圧した電圧を更に分圧する場合)なども含むものとする。また、トランスの出力制御について、オペアンプ22の出力を制御部50のCPU51へ入力し、制御部50のCPU51による演算結果をトランスの制御・駆動系に反映するようにしてもよい。
本実施例では、複数の画像形成部Sで帯電電源E1が共通化されている。そのため、本実施例では、複数の画像形成部S間で感光ドラム1に電位を形成するタイミングを変えることは困難となる。また、本実施例では、複数の画像形成部Sで電流検知回路21が共通化されている。そのため、本実施例では、電流検知回路21では複数の帯電ローラ2に流れる電流の総和(合計電流)が検知される。
このような構成においても、実施例1、2と同様して画像流れ検知動作を行うことで、複数の感光ドラム1のそれぞれを特定して、画像流れの発生しやすい状態か否かを検知すること、更にはどの程度発生しやすい状態かを判断することができる。これにより、実施例1、2と同様の効果を得ることができる。
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
上述の実施例では、画像形成装置は、1次転写後に感光ドラムの表面に残留したトナーを除去するドラムクリーニング装置を有していた。これに対して、感光ドラムの表面に残留したトナーを除去する専用のクリーニング装置を有していないクリーナレス方式の画像形成装置がある。クリーナレス方式の画像形成装置では、概略、感光ドラムの表面に残留したトナーは、帯電ローラによって帯電されるなどした後に、一部は現像ローラを介して現像装置に回収され、他の一部は後続のトナー像を構成する。ところで、感光ドラムの表面は、一般に、表面摩擦係数μが低く、硬いので削れにくく、表面に付着した放電生成物が除去されにくい。クリーニング装置を有する画像形成装置では、感光ドラムの表面に付着した放電生成物は、クリーニング装置のクリーニングブレードなどのクリーニング部材によって感光ドラム1の表面が摺擦されることで除去されやすい。しかし、クリーナレス方式の画像形成装置では、感光ドラムの表面を摺擦するクリーニング部材がないため、感光ドラムの表面に放電生成物が付着して蓄積しやすく、前述の放電生成物に起因する画像流れの問題が発生しやすい。一方、クリーナレス方式の画像形成装置では、帯電ローラに放電開始電圧未満の電圧を印加した際の、放電生成物に起因する注入帯電による電流は多くなる。そのため、クリーナレス方式の画像形成装置では、本発明の効果がより顕著に得られると言える。
上述の実施例では、画像形成時に帯電ローラに帯電電圧として直流電圧のみを印加したが、画像形成時に帯電ローラに帯電電圧として直流電圧と交流電圧とが重畳された振動電圧を印加してもよい。また、上述の実施例では、画像形成時に現像ローラに現像電圧として直流電圧のみを印加したが、画像形成時に現像ローラに直流電圧と交流電圧とが重畳された振動電圧を印加してもよい。
上述の実施例では、画像形成装置は中間転写方式を採用していたが、本発明は直接転写方式を採用した画像形成装置にも適用できるものである。当業者には周知のように、直接転写方式の画像形成装置は、上述の実施例における中間転写体の代わりに、記録材を担持して搬送する無端状のベルトなどで構成される記録材担持体を有する。そして、直接転写方式の画像形成装置では、上述の実施例における一次転写と同様にして、複数の感光ドラムに形成されたトナー像が記録材担持体に担持されて搬送される記録材に直接転写される。このような画像形成装置でも、上述の実施例と同様に感光ドラムの表面への放電生成物の付着による問題が生じ得る。したがって、このような画像形成装置にも本発明を適用することで、上述の実施例と同様の効果を得ることができる。
上述の実施例では、画像流れ検知動作において感光ドラムに露光領域を形成するための露光手段として像露光装置を用いたが、前露光装置を用いてもよい。当業者には周知のように、画像形成装置には、感光ドラムの回転方向において転写位置より下流かつ帯電位置より上流において感光ドラムの表面の電荷の少なくとも一部を除去(除電)する除電手段が設けられることがある。そして、この除電手段として、感光ドラムに光を照射する前露光装置が設けられることがある。このような画像形成装置においては、この前露光装置を用いて、上述の実施例におけるものと同様の露光領域を感光ドラムに形成することができる。
上述の実施例では、画像流れ検知動作及び画像流れ抑制動作は、非画像形成時として後回転工程で実行したが、本発明はこれに限定されるものではない。画像流れ検知動作、画像流れ抑制動作は、それぞれ非画像形成時であれば任意のタイミングで実行することができる。また、例えば、画像流れ抑制動作が感光ドラムの表面や周囲を加熱する動作である場合などには、画像流れ抑制動作は画像形成時、非画像形成時にかかわらず実行できる場合がある。また、画像流れ検知動作と画像流れ抑制動作とは連続して実行することに限定されるものではなく、画像流れ抑制動作は、画像流れ検知動作で実行することが決定された後、任意のタイミングで実行することができる。
上述の実施例では、注入帯電による電流を検知するための当接部材として帯電部材を用いたが、本発明はこれに限定されるものではない。感光ドラムに直接又は中間転写体や記録材担持体を介して当接する当接部材であって、十分な導電性を有し感光ドラムに電圧を印加することのできる当接部材であれば用いることができる。例えば、当接部材としては、現像ローラなどの現像部材、1次転写ローラなどの転写部材、クリーニングブレードなどのクリーニング部材を用いることができる。つまり、当接部材は、像担持体の表面を帯電させる帯電部材、像担持体の表面に現像剤を供給する現像部材、像担持体の表面に現像剤で形成された画像を被転写体に転写させる転写部材、又は像担持体の表面から現像剤を除去するクリーニング部材であってよい。
上述の実施例では、帯電部材はローラ状の部材であったが、例えばベルト状の部材、パッド状の部材、ブラシ状の部材などであってもよい。同様に、転写部材、クリーニング部材は、それぞれ、例えばパッド状の部材、ブラシ状部材などであってもよい。また、感光体はドラム状のもの(感光ドラム)に限定されるものではなく、無端ベルト状のもの(感光体ベルト)であってもよい。また、中間転写体や記録材担持体は無端ベルト状のものに限定されるものではなく、例えば枠体にフィルムを張設して形成したドラム状のものなどであってもよい。
また、放電開始電圧Vthは、上述のように、例えば感光体の感光体層の厚みなどによって変化することがある。したがって、放電開始電圧Vth未満の直流電圧の値は、画像形成装置の使用環境や寿命などに応じて十分に放電開始電圧Vth未満となるように予め設定しておくことができる。あるいは、種々の要因に応じて変化する放電開始電圧Vthの特性を予め実験などによって求めておき、適宜現在の放電開始電圧Vthを予測し、その結果に応じて放電開始電圧Vth未満の直流電圧の値を変更してもよい。また、画像形成装置において、帯電部材などの当接部材に複数の試験電圧を印加して電流電圧特性を求め、その特性から放電開始電圧Vthを求めてもよい。典型的には、放電開始電圧Vthより小さい少なくとも1点の直流電圧と、放電開始電圧Vthより大きい少なくとも1点の直流電圧とを印加して、それぞれの電圧を印加した際に帯電電源に流れる電流を測定する。これにより、図6に示すような電流電圧特性を得ることができる。そして、例えば得られた特性の変曲点(概略、放電開始電圧Vthより大きい電圧範囲の電流電圧特性において電流値が0μAの場合の電圧値に相当する。)から放電開始電圧Vthを求めることができる。放電開始電圧Vthを求める動作は、所定のタイミングで非画像形成時に行うことができる。この所定のタイミングは、環境(温度又は湿度の少なくとも一方)が所定の範囲以上に変化した場合、感光体の使用量と相関する指標値が所定の閾値を超えた場合などとすることができる。なお、感光体の使用量と相関する指標値としては、回転回数、回転時間、帯電処理を行った時間、画像形成枚数などの任意の値を利用できる。