JP2019049385A - 熱交換器及びそれを用いたヒートポンプ装置及び冷却装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、伝熱管内の気液二相冷媒のスラグ流から環状流への遷移領域で発生するドライアウトによる蒸発伝熱性能の低下を抑える熱交換器を提供することを目的とする。【解決手段】気液二相冷媒を直線状に流す伝熱流路を有し、前記伝熱流路の流路方向の中間部に流路断面積を連続的に拡大し、その後、流路断面積を連続的に縮小する流路断面変化領域を備える熱交換器。【選択図】図3
Description
本発明は、熱交換器及びそれを用いたヒートポンプ装置及び冷却装置に関する。
非特許文献1には、伝熱管の径が小さいほど、気液二相冷媒の同一乾き度(クオリティ)での蒸発熱伝達率が向上するが、熱伝達率が低下し始めるドライアウトの開始乾き度が低下し、高乾き度において熱伝達率が低下することが示されている。ドライアウトの開始乾き度は、3.1mm管が0.9、1.12mm管が0.8〜0.9、0.51mm管が0.5〜0.6である。(非特許文献1のFig.3を参照)。また、非特許文献2には、蒸発管の入口流動様式がスラグ流の場合、蒸発管の局所熱伝達率の低下し始めが、スラグ流と環状流の境界にほぼ一致することが示されている。(非特許文献2の43頁の上から4行目を参照)
一方、特許文献1には、周方向にねじれながら軸方向に延びるフィンからなる遠心力作用フィンにより、噴霧流で流れている場合の冷媒の液滴を内側流路の内面に付着しやすくし、ドライアウトによる蒸発伝熱性能の低下を抑える構成が記載されている。
一方、特許文献1には、周方向にねじれながら軸方向に延びるフィンからなる遠心力作用フィンにより、噴霧流で流れている場合の冷媒の液滴を内側流路の内面に付着しやすくし、ドライアウトによる蒸発伝熱性能の低下を抑える構成が記載されている。
Shizuo Saitoh, Hirofumi Daiguji, and Eiji Hihara, Effect of tube diameter on boiling heat transfer of R-134a in horizontal small-diameter tubes, International Journal of Heat and Mass Transfer, 48, (2005) p. 4973-4984
齋藤静雄、「冷媒HFC−134aの水平平滑管内沸騰熱伝達における管径の影響」、東京大学大学院新領域創成科学研究科学位請求論文、2007年11月、p.39−46
特許文献1には、ドライアウトによる蒸発伝熱性能の低下を抑える構成が記載されているが、対象が噴霧流で、非特許文献2に述べているスラグ流と環状流の境界(スラグ流から環状流への遷移)に関連する蒸発伝熱性能の低下に対しては考慮されていない。
そこで、本発明は、伝熱管内の気液二相冷媒のスラグ流から環状流への遷移領域で発生するドライアウトによる蒸発伝熱性能の低下を抑える熱交換器を提供することを目的とする。
本発明の熱交換器は、気液二相冷媒を直線状に流す伝熱流路を有し、前記伝熱流路の流路方向の中間部に流路断面積を連続的に拡大し、その後、流路断面積を連続的に縮小する流路断面変化領域を備える。
本発明によれば、伝熱管内の気液二相冷媒のスラグ流から環状流への遷移領域で発生するドライアウトによる蒸発伝熱性能の低下を抑える熱交換器を提供することができる。
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
図1は本実施例に係るヒートポンプ装置としての機器冷却装置のサイクル構成図ある。圧縮機3より吐出された高温且つ高圧の冷媒は、凝縮器8に流入する。凝縮器8に流入した冷媒は、凝縮器ファン8fによって送られる空気と熱交換することで、凝縮されて液冷媒となる。液冷媒は、膨張弁5を通過することで低温低圧の気液二相冷媒になり、蒸発器60に流入する。蒸発器60に流入した低温低圧の気液二相冷媒は、蒸発器60と接合されている発熱体である機器70と熱交換し蒸発する。このとき、機器70は、蒸発器60に流入した低温低圧の気液二相冷媒によって冷却され、機器70の温度を下げることができる。蒸発器60は機器70のヒートシンクとして働く。蒸発器60で熱交換された冷媒は圧縮機3に戻る。
図2は実施例1に係る蒸発器60の図である。蒸発器60は伝熱流路を形成する部材61、カバー部材62、冷媒配管63a、63bを接合して構成されている。
図3は蒸発器60の伝熱流路を形成する部材の図であり、図4はカバー部材の図である。伝熱流路を形成する部材61には矩形の溝が加工され、ヘッダ部61a、61b及び複数の直線状の伝熱流路61cを形成している。また、伝熱流路61cには、その流路方向の中間部に流路断面積が連続的に拡大する流路拡大部61d、流路断面が連続的に縮小する流路縮小部61eを設けている。さらに、カバー部材62には、伝熱流路を形成する部材61の流路拡大部61d、流路縮小部61eに対応する場所に凹部62dと凹部62eを設けている。伝熱流路の加工は切削または鍛造で行う。また、部材61と部材62との接合はロウ付けにより行う。
流路拡大部61dと流路縮小部61eからなる流路断面変化領域を設ける位置は、スラグ流と環状流の境界(スラグ流から環状流への遷移域)である。スラグ流と環状流の境界は、例えば、蒸発器60のカバー部材62をガラス板で製作し、観察する予備検討を行うことにより推定することができる。
低温低圧の乾き度0.2程度の気液二相冷媒は冷媒配管63aを介して、ヘッダ61aの下方より流入し、ヘッダ61aで各伝熱流路61cに分配され蒸発しほぼ乾き度1.0の状態となり、ヘッダ61bで合流し、下方の冷媒配管63bを介して流出する。
本実施例では、伝熱流路61cの水力直径は0.3mmで、流路断面変化領域(流路拡大部61d、流路縮小部61e)は、伝熱流路61cのヘッダ61aからヘッダ61bの流れ方向に4分の1の位置に設けている。したがって、この流路断面変化領域は冷媒の乾き度がほぼ0.4の位置となる。
図5に実験に基づく水力直径0.3mmの流路断面変化有り無しの乾き度と蒸発熱伝達率の関係図を示す。流路断面変化が無い場合、乾き度0.4付近(スラグ流と環状流の境界付近)から、蒸発熱伝達率が低下し始め、乾き度0.5以上で大幅に低下する。スラグ流は液体スラグと気体プラグの間欠流で,気体プラグの周囲に薄い液膜を形成している。蒸発による乾き度の増加に伴い,液体スラグは短くなり、気体プラグは長くなる。スラグ流と環状流の境界(スラグ流から環状流への遷移域)付近では、液体スラグが残存し、長くなった気体プラグの周囲の液膜の一部が消失して、ドライアウトが発生し、熱伝達率の低下が起こる。
一方、本発明の流路断面変化が有る場合について、図6の現象モデル図を用いて説明する。流路断面変化領域の流路拡大部において、液体スラグは表面張力の影響により、流路断面積が連続的に拡大する流路壁に沿って付着しながら流れることにより、流路拡大部の中央に空隙(気泡)が形成されるため、そのまま液体は流路断面積が緩やかに縮小する流路縮小部の流路壁に沿って流れ、元の断面形状と同じ伝熱流路において環状流となる。この時、スラグ流の液体スラグの中央部の液体部分が環状流の液膜の増加に寄与するため、ドライアウトが抑制される。
図5に示すように、流路断面変化が有る場合、ドライアウト開始乾き度が増加し0.7付近となり、流路断面変化が無い場合のスラグ流と環状流の境界付近からの蒸発熱伝達率の低下を抑えている。乾き度0.7以上で熱伝達率が低下し始めドライアウトが開始するのは、環状流の壁面の液膜から液滴が飛散し、それにより液膜の一部が消失して、ドライアウトが発生し、熱伝達率が低下するためである。
図7に流路断面変化有無での液体スラグ個数を示す。これは、発明者らが伝熱流路の可視化を行い、流路断面変化有り無しで、乾き度0.6における単位時間当たりの液体スラグ個数を測定した結果である。流路断面変化が無い場合の単位時間当たりの液体スラグ個数は44に対して、有りの場合は6で、流路断面変化を設けることにより、液体スラグの個数が大幅に低減している。なお、図5に示したように乾き度0.4をスラグ流と環状流の境界と定めたが、乾き度が0.6となっても流動様式の遷移が完了しておらず、遷移域にかなり幅があることがわかる。
したがって、スラグ流から環状流への遷移をさらに促進するため、スラグ流から環状流への遷移域に流路断面変化領域を複数設けても良い。
本発明は伝熱流路の水力直径が0.5mm以下のものに対して特に効果がある。それは、流路断面変化が無い場合、ドライアウトの開始乾き度は、例えば、前述の非特許文献1の1.12mm管では0.8〜0.9であるのに対して、0.51mm管では0.5〜0.6となり、発明者らの実験の水力直径0.3mmでは0.4となり、0.5mm以下の場合、かなり低い乾き度でドライアウトが開始するため、流路断面変化を設けることによる改善効果が大きい。
流路断面変化領域を設ける位置をスラグ流から環状流への遷移域と前述した。また、非特許文献2には、蒸発管の局所熱伝達率の低下し始め(ドライアウトの開始)が、スラグ流と環状流の境界にほぼ一致することが示されている。したがって、流路断面変化領域を設ける位置は、より具体的には水力直径0.5mmで乾き度が0.5〜0.6となる位置、水力直径0.3mmで乾き度0.4となる位置である。概略、水力直径(Y)0.3〜0.5mmにおいて、乾き度(X=Y+0.1±0.1)の位置である。
本実施例では、ヒートポンプ装置としての機器冷却器において、伝熱管内の気液二相冷媒のスラグ流から環状流への遷移領域で発生するドライアウトによる蒸発伝熱性能の低下を抑える熱交換器を提供することができる。
本実施例ではヒートポンプ装置を対象としたが、圧縮機を用いず、液冷媒をポンプで循環させ、蒸発と凝縮を行わせる冷却装置の蒸発器に適用しても同様な効果が得られる。
第1実施例と異なる部分について説明し、第1実施例と重複する部分については説明を省略する。図8は本実施例2に係るヒートポンプ装置としての空気調和機のサイクル構成図である。冷房運転時は、圧縮機3より吐出された高温且つ高圧の冷媒は、四方弁4を介して凝縮器として働く室外熱交換器2に流入する。室外熱交換器2に流入した冷媒は、室外送風ファン2fによって送られる室外の空気と熱交換することで、凝縮されて液冷媒となる。液冷媒は、膨張弁5を通過することで低温低圧の気液二相冷媒になり、蒸発器として働く室内熱交換器1に流入する。室内熱交換器1に流入した低温低圧の気液二相冷媒は、室内送風ファン1fによって送られる室内の空気と熱交換し蒸発する。このとき、室内熱交換器1に送られた室内の空気は、室内熱交換器1に流入した低温低圧の気液二相冷媒によって冷却され、吹出口から室内に吐出される。吹出口から室内に吐出される空気は、吸込口における空気の温度よりも低いため、室内の温度を下げることができる。室内熱交換器1で熱交換された冷媒は四方弁4を介して再び圧縮機3に戻る。圧縮機3と室外熱交換器2と室外送風ファン2fと膨張弁5は室外機に配置され、室内熱交換器1と室内送風ファン1fは室内機に配置されている。
図9は本実施例に係る室内熱交換器1の図である。室内熱交換器1は、長手方向を鉛直方向に配置された円筒状のヘッダ10、20と、水平方向に所定の間隔で配置されるとともに、ヘッダ10、20の鉛直方向の側壁に接続される複数の伝熱管30と、波形に折り曲げその頂部をそれぞれ上側の伝熱管30と下側の伝熱管30とに接合した複数のフィン40とから構成されている。冷房運転時は、ヘッダ10の下方より気液二相の冷媒が流入し、冷媒はヘッダ10で各伝熱管30に分配され蒸発し、ヘッダ20で合流し、上方より冷媒が流出する。伝熱管30は直線状で、図10に示すように、(a)円管、(b)円形の多孔扁平管、(c)矩形の多孔扁平管が用いられる。
伝熱管30には、その流路方向の中間部に流路断面積が緩やかに拡大する流路拡大部30d、流路断面が緩やかに縮小する流路縮小部30eを設けている。流路断面変化領域(流路拡大部30d、流路縮小部30e)の加工は、予め単体の伝熱管30に流路断面変化部をかたどった金型を挟み、伝熱管30内を液圧縮することにより形成する。流路断面変化領域を設ける位置は、スラグ流と環状流の境界(スラグ流から環状流への遷移域)である。スラグ流と環状流の境界は前述の非特許文献2に示すように、伝熱管の代わりにガラス管を観察する予備検討を行うことにより推定することができる。
本実施例での、流路断面変化の無い場合と有る場合の説明は実施例1と同じため、説明を省略する。
本実施例では、ヒートポンプ装置としての空気調和機において、伝熱管内の冷媒のスラグ流から環状流への遷移領域で発生するドライアウトによる蒸発伝熱性能の低下を抑える熱交換器を提供することができる。
1・・・室内熱交換器、10,20,61a,61b・・・ヘッダ、30・・・伝熱管、30d,61d・・・流路拡大部、30e,61e・・・流路縮小部、60・・・蒸発器、61c・・・伝熱流路
Claims (6)
- 気液二相冷媒を直線状に流す伝熱流路を有し、前記伝熱流路の流路方向の中間部に流路断面積を連続的に拡大し、その後、流路断面積を連続的に縮小する流路断面変化領域を備える熱交換器。
- 前記流路断面変化領域を気液二相冷媒のスラグ流から環状流への遷移領域に設けることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
- 前記伝熱流路の水力直径を0.5mm以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
- 前記伝熱流路の水力直径(Y)が0.3〜0.5mmの時、前記流路断面変化領域を乾き度(X=Y+0.1±0.1)の位置に設けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱交換器。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱交換器を用いたヒートポンプ装置。
- 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱交換器を用いた冷却装置。
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JP2017173634A JP2019049385A (ja) | 2017-09-11 | 2017-09-11 | 熱交換器及びそれを用いたヒートポンプ装置及び冷却装置 |
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