以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、建設機械の一例として、フロント装置(フロント作業機)の先端に作業具としてバケットを備える油圧ショベルを例示して説明するが、ブレーカやマグネットなどのバケット以外のアタッチメントを備える油圧ショベルに本発明を適用することも可能である。また、クレーン車のように作業アームを備えた、油圧ショベル以外の建設機械(作業機械を含む)に本発明を適用することも可能である。
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態を図1〜図6を参照しつつ説明する。
図1は、本実施の形態に係る建設機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。また、図2は、本実施の形態に係る油圧回路システムの要部を本発明の関連構成とともに抜き出して模式的に示す図である。
図1において、油圧ショベル100は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム31、アーム33、バケット(作業具)35)を連結して構成された多関節型のフロント装置(フロント作業機)30と、車体を構成する上部旋回体20及び下部走行体10とを備えており、上部旋回体20は下部走行体10に対して旋回可能に設けられている。上部旋回体20は、基部となる旋回フレーム21上に各部材を配置して構成されており、上部旋回体20を構成する旋回フレーム21が下部走行体10に対して旋回可能となっている。また、フロント装置1のブーム31の基端は上部旋回体20の前部に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム33の一端はブーム31の基端とは異なる端部(先端)に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム33の他端にはバケット35が垂直方向に回動可能に支持されている。
ブーム31、アーム33、バケット35、上部旋回体20、及び下部走行体10は、油圧アクチュエータであるブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36、旋回モータ23、及び左右の走行モータ11(ただし、一方の走行モータのみ図示)によりそれぞれ駆動される。上部旋回体20を構成する旋回フレーム21上には、原動機であるエンジン22とともに、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36、旋回モータ23及び左右の走行モータ11などの各油圧アクチュエータ11,23,32,34,36を駆動するための油圧回路システム40が搭載されている。
図2において、油圧回路システム40は、油圧ショベル100全体の動作を制御するコントローラ49から信号路22aを介して入力される制御信号に基づいて動作するエンジン22によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ41と、エンジン22によって駆動される固定容量型のパイロットポンプ44と、パイロットポンプ44からポンプトルク制御電磁弁45を介して入力されるパイロット圧(制御信号)に基づいて、油圧ポンプ41の傾転角(吐出流量)を制御するレギュレータ46と、コントローラ49から信号路45aを介して入力される制御信号に基づいて、レギュレータ46に入力される制御信号(パイロット圧)を制御するポンプトルク制御電磁弁45と、エンジン22によって駆動される油圧ポンプ41から各油圧アクチュエータ11,23,32,34,36に供給される作動油の方向及び流量を制御するコントロールバルブ(流量制御弁)42とを備えている。なお、図2においては図示の簡単のため、油圧アクチュエータ11,23,32,34,36を代替的に油圧アクチュエータ43a,43bで表現する。すなわち、油圧アクチュエータ43a,43bは油圧アクチュエータ11,23,32,34,36のことである。
オペレータが搭乗する運転室(キャブ)57には、油圧アクチュエータ23,32,34,36を操作するための操作信号を出力する複数の操作レバー装置(操作装置)50(本実施の形態では1つのみを代表して図示する)が設けられている。コントロールバルブ42は、エンジン22によって駆動されるパイロットポンプ44から吐出され図示しない油路から操作レバー装置50を介して出力される操作信号(パイロット圧)により行われる。図示はしないが複数の操作レバー装置50はそれぞれ前後左右に傾倒可能であり、それぞれオペレータにより操作される操作レバー装置50の操作方向及び操作量に応じたパイロット圧(操作信号)に基づいてコントロールバルブ42を制御することにより、各油圧アクチュエータ23,32,34,36の動作が制御される。つまり、操作レバー装置50の前後方向または左右方向に、油圧アクチュエータ23,32,34,36の操作がそれぞれ割り当てられている。操作レバー装置50からコントロールバルブ42に出力される操作信号の信号路には、操作信号としてのパイロット圧(すなわち、操作レバー装置50の操作量)を検出する圧力センサ(操作量検出装置)53a,53bが設けられており、検出結果はそれぞれ信号路53f,53gを介してコントローラ49に入力される。
なお、操作レバー装置50は電気信号方式であってもよく、オペレータにより操作される操作レバー装置50の操作信号であるレバーの傾倒量、すなわちレバー操作量を電気的に検知する検出装置を含み、検出装置が検出したレバー操作量を制御装置であるコントローラ49に電気配線を介して出力し、コントローラ49で電磁比例弁などを制御することによって各油圧アクチュエータ23,32,34,36を駆動するように構成しても良い。
また、キャブ57内には、コントローラ49から信号路55aを介して入力される制御信号に基づいて油圧ショベル100に関する種々の情報や設定画面等を表示するためのモニタ(表示装置)55と、モニタ55に表示される各種設定画面を操作する信号を信号路56eを介してコントローラ49に出力する操作スイッチ56とが配置されており、操作レバー装置50には油圧アクチュエータ23,32,34,36の操作と並行して(すなわち、操作レバー装置50の操作と同時に)操作できるように操作レバー装置50の操作信号の信号路50a,50bに対し別個独立した操作信号の信号路58aを有したレバースイッチ58(設定スイッチ)が配置されている。操作スイッチ56は、モニタ55に表示される各種設定画面等を操作するためのものであり、例えば、モニタ55に表示されるカーソル等の指示表示の位置を上下方向に移動させる方向指示ボタン56a,56bや、選択した内容を決定する決定ボタン56c、選択した内容をキャンセルしたり前の処理に戻ったりするキャンセルボタン56dなどを備えている。
なお、操作スイッチ56は、モニタ55に表示される内容の操作を行えれば良いため、上記の構成に限られるものではなく、例えば、回転スイッチを回転および押下することにより選択や決定を行うよう構成を採用しても良い。
コントローラ49は、油圧ショベル100全体の動作を制御するものであり、油圧ポンプ41の吸収馬力が所定の値になるようにP−Q等馬力曲線(油圧ポンプ41の吐出圧と吐出流量の関係を示した特性線)に従ってエンジン22の回転数や油圧ポンプ41の吐出流量を制御するほか、オートパワーアップ制御を行う。
オートパワーアップ制御は、レバースイッチ58の設定スイッチとしての機能が有効になっている場合(後述)において、操作レバー装置(操作装置)50の操作中にレバースイッチ(設定スイッチ)58が操作されたときの操作レバー装置50の操作量に基づいて、通常運転時よりも油圧アクチュエータ23,32,34,36の出力を増加させる高出力運転に切り換えるための出力アップ条件(または、オートパワーアップ設定条件ともいう)を設定し、圧力センサ(操作量検出装置)53a,53bにより検出された操作レバー装置50の操作量が出力アップ条件を満たした場合(すなわち高出力運転に切り換える動作タイミングとなった場合)に、油圧ポンプ41のポンプ吐出圧力Pとポンプ吐出流量Qの積(言い換えると、油圧ポンプ41の吸収馬力)が通常運転時よりも大きな(つまり、増加させた)所定の値となる高出力運転用のP−Q等馬力曲線(出力増加特性線)に切り換え、この高出力運転用のP−Q等馬力曲線に基づいて油圧ポンプ41を制御するものである。
本実施の形態においては、ブーム上げ操作量、ブーム下げ操作量、アーム引き操作量、アーム押し操作量、バケット掘削操作量、バケットダンプ操作量、左旋回操作量、及び右旋回操作量に基づいて出力アップ条件を設定する場合を例示して説明する。
図3は、オートパワーアップ制御における出力アップ条件の設定の具体例を示す図である。
図3では、出力アップ条件の設定において対象となっている操作のうち、ブーム上げ操作、アーム引き操作、バケット掘削操作がなされて操作量が有意に存在しており(すなわち、予め操作量0(ゼロ)付近に定めた閾値であって、操作レバー装置50が対応する方向に操作されているかどうかを判定する閾値を超えている場合であり)、その他の操作(ブーム下げ操作、アーム押し操作、バケットダンプ操作、左右の旋回操作)がなされずに操作量が無い場合(非操作の場合)を例示している。なお、図3では操作量が無い操作のうち(左右)旋回操作を代表して示し、他の操作については図示を省略する。
レバースイッチ58の設定スイッチとしての機能が有効になっている場合(後述)において、オペレータが図3に示すアクチュエータの操作を行っている状態でのある時点でレバースイッチ58を操作することにより出力アップ条件が生成され設定される。この例でのレバースイッチ58操作時の各操作量は、ブーム上げ操作量=Pi_boom、アーム引き操作量=Pi_arm、バケット掘削操作量=Pi_bucketであり、その他の操作量は0(ゼロ)と判定されるので、生成される出力アップ条件は、ブーム上げ操作量≧Pi_boomかつアーム引き操作量≧Pi_armかつバケット掘削操作量≧Pi_bucketとなる。なお、操作量が0(ゼロ)であって操作が行われていない(非操作)と判定された操作については、出力アップ条件には含めない。
図4は、図3に示した出力アップ条件が有効になっている場合に、各操作量がその出力アップ条件を満たした場合の目標ポンプトルクの変化の具体例を示す図である。また、図5は、オートパワーアップ制御における油圧ポンプのP−Q等馬力曲線の変化の一例を示す図である。
図4に示すように、各操作量が出力アップ条件を満たす状態の場合、予め定めた出力アップ率(後述)に基づいて通常運転時の目標ポンプトルクを増加させるように制御する。このとき、図5に示すように、油圧ポンプ41のポンプ吐出圧力Pとポンプ吐出流量Qの積が通常運転時よりも大きな所定の一定値となる高出力運転用のP−Q等馬力曲線に基づいて油圧ポンプ41を制御するので、通常運転時よりも油圧アクチュエータ23,32,34,36の出力を増加させることができる。つまり、オペレータがレバースイッチ58の設定スイッチとしての機能を有効にし、オペレータが作業時の力や作業速度の増加を望む作業状態(すなわち、操作レバー装置50の操作状態)の時点で出力アップ条件を生成して設定することにより、オペレータが要求する作業で力や速度を増加させることができる。ただし、通常運転時及び高出力運転用のP−Q等馬力曲線、すなわち、油圧ポンプ41の最大吸収馬力は、エンジンの定格出力馬力曲線よりも小さい範囲となるように制御される。
ここで、図6〜図12を用いてオートパワーアップ制御をさらに詳細に説明する。
図6は、オートパワーアップ制御における出力アップ条件設定のフローチャートであり、図7は、オートパワーアップ制御の処理を示すフローチャートである。また、図8〜図10は、出力アップ条件設定においてモニタに表示される設定画面の遷移を示す図である。
図6において、コントローラ49は、まず、オートパワーアップ動作設定状態かどうかを判定する(ステップS100)。図8に示すように、モニタ55に表示される設定画面を操作スイッチ56の方向指示ボタン56a,56bで操作して「オートパワーアップ」を選択して決定ボタン56cを押し(手順1−1)、続いて表示される設定画面において、出力アップ条件(出力アップ率を含む)を設定して記憶させたい項目(例えば、「設定1」)を選択して決定ボタン56cを押し(手順1−2)、続いて表示される設定画面において、手順1−2で選択した項目(「設定1」)に設定される出力アップ条件を「有効」にするか「無効」にするか(ここでは、「有効」)を選択して決定ボタン56cを押し(手順1−3)、続いて表示される設定画面において、オートパワーアップ動作設定状態にするための「動作設定」、又は、出力アップ率を設定するための「出力UP率設定」(ここでは、「動作設定」)を選択して決定ボタン56cを押す(手順1−4)。このように、手順1−1〜手順1−4の操作を行い、手順1−4で「動作設定」を選択し決定することにより、オートパワーアップ動作設定状態となる。なお、手順1−2を行う前に既に有効に設定されている項目が無い場合には、手順1−2で設定される項目(ここでは「設定1」)の有効又は無効の設定がそのままオートパワーアップ制御の有効又は無効を設定することになる。
ステップS100での判定結果がNOの場合、すなわち、オートパワーアップ動作設定状態ではない場合には処理を終了する。なお、手順1−3で「無効」を選択した場合には、手順1−2で選択した項目(例えば、「設定1」)に設定されていた出力アップ条件が無効となり、手順1−1の設定画面に戻る。
また、ステップS100での判定結果がYESの場合、すなわち、手順1−4で「動作設定」を選択してオートパワーアップ動作設定状態としている場合、すなわち、レバースイッチ58の設定装置としての機能が有効になっている場合には、レバースイッチ58がON操作されたかどうかを判定し(ステップS110)、判定結果がNOの場合には、ステップS110でのYES判定から一定時間(例えば、60秒)が経過したかどうかを判定する(ステップS111)。ステップS111での判定結果がNOの場合には、レバースイッチ58がON操作されたかどうかを判定するステップS110を繰り返し、S111での判定結果がYESの場合、すなわち、レバースイッチ58がON操作されずに一定時間が経過した場合には、処理を終了する。手順1−4で「動作設定」を選択して決定ボタン56cを押すことにより表示される設定画面(ここでば、レバースイッチ58のON操作を促す表示)が表示されている状態(すなわち、オートパワーアップ動作設定状態)において、レバースイッチ58を操作せずに一定時間が経過すると、手順1−4の設定画面に戻る(手順1−5)。
また、ステップS110での判定結果がYESの場合、すなわち、手順1−4で「動作設定」を選択して決定ボタン56cを押すことにより表示される設定画面が表示されている状態(オートパワーアップ動作設定状態)の一定時間内においてレバースイッチ58がON操作された場合には、レバースイッチ58がON操作された際の操作レバー装置50の操作量に基づいて、出力アップ条件を設定し(ステップS120)、処理を終了する。手順1−5で一定時間内にレバースイッチ58をON操作すると(手順1−5)、出力アップ条件を設定した旨の表示がなされ(手順1−6)、一定時間が経過すると手順1−4の設定画面に戻る。このように、オペレータが高出力運転にしたい操作レバー装置50の操作中にレバースイッチ58をON操作して出力アップ条件を生成し設定することにより、オペレータが要求する作業で力や速度を増加させることができる。
出力アップ条件が満たされて高出力運転となった場合の出力アップ率も出力アップ条件設定と同様の手順で設定を行う。図9において、手順1−1〜手順1−3は出力アップ条件設定と同様である。手順1−3で「有効」を選択し決定ボタン56cを押すことで表示される設定画面において、出力アップ率を設定するための「出力UP率設定」を選択して決定ボタン56cを押し(手順2−4)、続いて表示される設定画面において出力アップ率の設定値を入力(例えば、プルダウンで表示される数値候補から選択的に設定、又は直接入力)して決定ボタン56cを押すと(手順2−5)、出力アップ率を設定した旨の表示がなされ(手順2−6)、一定時間が経過すると手順2−4の設定画面に戻る。
なお、図8及び図9で示した設定画面の遷移では、出力アップ条件と出力アップ率を別々の流れで設定する場合を例示して説明したが、図10に示すように出力アップ条件と出力アップ率を一連の流れで設定するようにしても良い。
図10において、手順1−1〜手順1−6は図8の出力アップ条件設定と同様である。手順1−5で一定時間内にレバースイッチ58をON操作すると、出力アップ条件を設定した旨の表示がなされ(手順1−6)、一定時間が経過すると手順1−4の設定画面において「出力UP設定率」が予め選択された状態の設定画面が表示される。この状態で決定ボタン56cを押し(手順3−7:図9の手順2−4に対応)、続いて表示される設定画面において出力アップ率の設定値を入力して決定ボタン56cを押すと(手順3−8:図9の手順2−5に対応)、出力アップ率を設定した旨の表示がなされ(手順3−9:図9の手順2−6mに対応)、一定時間が経過すると手順1−4の設定画面に戻る。
また、図8〜図10においては、手順1−3の設定画面において項目「設定1」の「有効」か「無効」かの設定と、出力アップ条件設定及び出力アップ率の設定について例示して説明したが、他の項目「設定2」や「設定3」、或いは、図示しない他の設定においても同様に設定することができる。
図11及び図12は、コントローラからポンプトルク制御電磁弁に出力される制御信号の演算処理機能を示す機能ブロック図である。図11では手順1−3の設定画面において1つの項目のみに設定を行った場合を示している。
図11において、演算処理機能49aは、ポンプトルク制御電磁弁45への指令値を演算して出力し、油圧ポンプ41のポンプトルク(或いは吐出流量)を制御するものである。図11に示すように、演算処理機能49aでは、通常運転時に用いる基準ポンプトルク指令値60を演算し、に積算機能部70を介して係数(比率)を積算し、ポンプトルク制御電磁弁45へ出力することにより、油圧ポンプ41のポンプトルクを制御している。
図7において、コントローラ49は、まず、ポンプトルク演算を行い、基準ポンプトルク指令値60を演算する(ステップS200)。続いて、ステップS200の判定結果がNOの場合、すなわち、オートパワーアップ制御が無効である場合には、選択部65aによって比率「1」の非出力アップ係数63aが選択されて積算機能部70に入力されるので、基準ポンプトルク指令値60がそのままポンプトルク制御電磁弁45への指令値として出力される(ステップS220)。また、ステップS210の判定結果がYESの場合、すなわち、オートパワーアップ制御が有効である場合に、出力アップ条件を満たすかどうかを判定する(ステップS211)。ステップS211での判定結果がNOの場合、すなわち、出力アップ条件を満たさない場合には、選択部64a,65aによって比率「1」の非出力アップ係数62aが選択されて積算機能部70に入力されるので、基準ポンプトルク指令値60がそのままポンプトルク制御電磁弁45への指令値として出力される(ステップS220)。
また、ステップS211の判定結果がYESの場合、すなわち、オートパワーアップ制御が有効であって、かつ、出力アップ条件を満たす場合には、出力アップ条件設定で設定した出力アップ率61aが選択部64a,65aによって選択されて積算機能部70に入力され、基準ポンプトルク指令値60に出力アップ率61aが積算されて高出力運転時のポンプトルク指令値としてポンプトルク制御電磁弁45へ出力される(ステップS212)。
図12では複数(例えば、「設定1」と「設定2」の2つ)の項目に設定を行った場合を示している。
図12においても図11と同様に、演算処理機能49bは、ポンプトルク制御電磁弁45への指令値を演算して出力し、油圧ポンプ41のポンプトルク(或いは吐出流量)を制御するものである。また、図12においても、演算処理機能49bでは、通常運転時に用いる基準ポンプトルク指令値60を演算し、に積算機能部70を介して係数(比率)を積算し、ポンプトルク制御電磁弁45へ出力することにより、油圧ポンプ41のポンプトルクを制御している。
図12において、コントローラ49は、まず、ポンプトルク演算を行い、基準ポンプトルク指令値60を演算する。続いて、「設定1」と「設定2」のそれぞれにおいて、オートパワーアップ制御が無効である場合には、選択部65a,65bによって比率「1」の非出力アップ係数63a,63bが選択され、このうち最大値選択器能71によって選択された比率の大きい一方(この場合は比率「1」)が積算機能部70に入力されるので、基準ポンプトルク指令値60がそのままポンプトルク制御電磁弁45への指令値として出力される。
「設定1」と「設定2」の少なくとも一方においてオートパワーアップ制御が有効である場合に、いずれも出力アップ条件を満たさない場合には、選択部64a,65a,64b,65bによって比率「1」の非出力アップ係数62a,62bが選択され、このうち最大値選択器能71によって選択された比率の大きい一方(この場合は比率「1」)が積算機能部70に入力されるので、基準ポンプトルク指令値60がそのままポンプトルク制御電磁弁45への指令値として出力される。
また、「設定1」と「設定2」の少なくとも一方においてオートパワーアップ制御が有効であって、かつ、出力アップ条件を満たす場合には、出力アップ条件設定で設定した出力アップ率61a又は出力アップ率61bの少なくとも一方が選択部64a,65a,64b,65bによって選択され、最大値選択器能71に入力される。例えば、「設定1」と「設定2」の両方においてオートパワーアップ制御が有効であって、かつ、出力アップ条件を満たす場合には、出力アップ率61aと出力アップ率61bが最大値選択器能71に入力されるので、このうち比率が大きいものが積算機能部70に入力され、基準ポンプトルク指令値60に積算されて高出力運転時のポンプトルク指令値としてポンプトルク制御電磁弁45へ出力される。また、「設定1」と「設定2」の一方のオートパワーアップ制御が有効であって、かつ、出力アップ条件を満たし、他方が満たさない場合には、条件を満たす一方の出力アップ率(61a又は61b)が最大値選択器能71に入力され、他方からは比率「1」の非出力アップ係数が入力されるので、このうち比率が大きい出力アップ率(61a又は61b)が積算機能部70に入力され、基準ポンプトルク指令値60に積算されて高出力運転時のポンプトルク指令値としてポンプトルク制御電磁弁45へ出力される。
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
従来技術には、油圧ショベル等の建設機械において、アクティブモードスイッチのオン操作の信号を受けたときは、ポンプ吐出圧力Pとポンプ吐出量Qとの積が通常運転の所定値より高いアクティブモードのP−Qの等馬力曲線Haとなるようにし、さらに、パワーモードスイッチのオン操作の信号及び作業機レバースイッチのオン操作の信号を受けたときは、ポンプ吐出圧力Pとポンプ吐出量Qとの積がアクティブモードのP−Qの等馬力曲線Haより一段上のパワーアクティブモードのP−Qの等馬力曲線Hapとなるようにし、作業時の力と作業速度を増加させるものがある。しかしながら、通常よりも力や速度を増加させて作業を行うのに際し、前もってアクティブモードにしておく必要があるため、実際に力や速度を増加させたい場面以外でもアクティブモードのP−Qの等馬力曲線で作業を行うことになり、無駄な燃料消費やCO2排出量増加につながってしまうという課題があった。また、さらに力や速度を増加させたい場合には、作業操作中にその都度パワーモードスイッチを操作する必要があるためオペレータの負担となってしまうという点も問題であった。
これに対して本実施の形態においては、操作レバー装置50からの信号路に対して独立した信号路58aを有し、操作レバー装置50に設けられたレバースイッチ58を備え、コントローラ49は、操作レバー装置50の操作中にレバースイッチ58が操作されたときの操作レバー装置50から出力される操作信号に基づいて、通常運転時より油圧アクチュエータ23,32,34,36の出力を増加させる運転(高出力運転)に切り換えるための出力アップ条件を設定し、圧力センサ53a,53bにより検出された操作レバー装置50から出力される操作信号が出力アップ条件を満たした場合には、油圧ポンプ41の吸収馬力が通常運転時よりも増加するように高出力運転用のP−Q等馬力曲線に従ってエンジン22またはエンジン22により駆動される可変容量型の油圧ポンプ41を制御するように構成したので、オペレータによる操作の負担を低減しつつ、オペレータが要求する作業でのみ適切に力や速度を増加させることができる。
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態を図13を参照しつつ説明する。本実施の形態では第1の実施の形態との相違点についてのみ説明するものとし、図面において第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態は、第1の実施の形態の出力アップ率に代えてエンジン回転数増分値を設定し、エンジンの回転数を制御するためのエンジン回転数指令値にエンジン回転数の増加分を加算することにより、エンジンにより駆動される油圧ポンプの吸収馬力を制御するよう構成したものである。
すなわち、本実施の形態においては、第1の実施に形態の図9及び図10に示した設定画面(例えば、手順2−5、手順3−8)において、高出力運転時にエンジン回転数を増加させるためのエンジン回転数増分値を設定している。
図13は、本実施の形態におけるコントローラからエンジンの図示しないエンジン回転数制御部に出力される制御信号の演算処理機能を示す機能ブロック図である。
図13において、コントローラ49の演算処理機能49cは、まず、目標エンジン回転数の演算を行い、目標エンジン回転数指令値60cを演算する。続いて、オートパワーアップ制御が無効である場合には、選択部65cによって値「0」(ゼロ)の回転数増分値63cが選択されて加算機能部70cに入力されるので、目標エンジン回転数指令値60cがそのままエンジン22にエンジン回転数指令値として出力される。また、オートパワーアップ制御が有効であって、かつ、出力アップ条件を満たさない場合には、選択部64c,65cによって値「0」(ゼロ)の回転数増分値62cが選択されて加算機能部70cに入力されるので、目標エンジン回転数指令値60cがそのままエンジン22への指令値として出力される。オートパワーアップ制御が有効であって、かつ、出力アップ条件を満たす場合には、出力アップ条件設定で設定したエンジン回転数増分値61cが選択部64c,65cによって選択されて加算機能部70cに入力され、目標エンジン回転数指令値60cにエンジン回転数増分値61cが積算されて高出力運転時のエンジン回転数指令値としてエンジン22へ出力される。
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態を図14及び図15を参照しつつ説明する。本実施の形態では第1の実施の形態との相違点についてのみ説明するものとし、各図面において第1の実施の形態と同様の部材には同じ符号を付し、説明を省略する。
本実施の形態は、圧力センサにより検出された操作レバー装置の操作量に加え、油圧ポンプの吐出圧を検出する圧力センサからの検出値に基づいて、出力アップ条件を設定するように構成したものである。
図14は、本実施の形態に係る油圧回路システムの要部を本発明の関連構成とともに抜き出して模式的に示す図である。
図14において、油圧回路システム40Aは、油圧ショベル100全体の動作を制御するコントローラ49Aから信号路22aを介して入力される制御信号に基づいて動作するエンジン22によって駆動される可変容量型の油圧ポンプ41と、エンジン22によって駆動される固定容量型のパイロットポンプ44と、パイロットポンプ44からポンプトルク制御電磁弁45を介して入力されるパイロット圧(制御信号)に基づいて、油圧ポンプ41の傾転角(吐出流量)を制御するレギュレータ46と、コントローラ49Aから信号路45aを介して入力される制御信号に基づいて、レギュレータ46に入力される制御信号(パイロット圧)を制御するポンプトルク制御電磁弁45と、エンジン22によって駆動される油圧ポンプ41から各油圧アクチュエータ11,23,32,34,36(図14では油圧アクチュエータ43a,43bで代替的に表現する)に供給される作動油の方向及び流量を制御するコントロールバルブ(流量制御弁)42とを備えている。また、油圧ポンプ41からコントロールバルブ42に供給される圧油の流路には、油圧ポンプ41の吐出圧を検出する圧力センサ53cが設けられており、検出結果は信号路53hを介してコントローラ49Aに入力される。
本実施の形態においては、ブーム上げ操作量、ブーム下げ操作量、アーム引き操作量、アーム押し操作量、バケット掘削操作量、バケットダンプ操作量、左旋回操作量、及び右旋回操作量に加え、油圧ポンプの吐出圧に基づいて出力アップ条件を設定する場合を例示して説明する。
図15は、オートパワーアップ制御における出力アップ条件の設定の具体例を示す図である。
図15では、出力アップ条件の設定において対象となっている操作のうち、ブーム上げ操作、アーム引き操作、バケット掘削操作がなされて操作量が有意に存在しており(すなわち、予め操作量0(ゼロ)付近に定めた閾値であって、操作レバー装置50が対応する方向に操作されているかどうかを判定する閾値を超えている場合であり)、その他の操作(ブーム下げ操作、アーム押し操作、バケットダンプ操作、左右の旋回操作)がなされずに操作量が無い場合(非操作の場合)であり、かつ、ポンプ圧が生じている場合を例示している。なお、図15では操作量が無い操作のうち(左右)旋回操作を代表して示し、他の操作については図示を省略する。
レバースイッチ58の設定スイッチとしての機能が有効になっている場合において、オペレータが図15に示すアクチュエータの操作を行っている状態でのある時点でレバースイッチ58を操作することにより出力アップ条件が生成され設定される。この例でのレバースイッチ58操作時の各操作量及び油圧ポンプの吐出圧は、ブーム上げ操作量=Pi_boom、アーム引き操作量=Pi_arm、バケット掘削操作量=Pi_bukect、ポンプ圧=Ppumであり、その他の操作量は0(ゼロ)と判定されるので、生成される出力アップ条件は、ブーム上げ操作量≧Pi_boomかつアーム引き操作量≧Pi_armかつバケット掘削操作量≧Pi_bucketかつポンプ圧≧Ppumとなる。なお、操作量が0(ゼロ)であって操作が行われていない(非操作)と判定された操作については、出力アップ条件には含めない。
その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
以上のように構成した本実施の形態においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、出力アップ条件に油圧ポンプの吐出圧を加えたので、さらに精度良くオペレータが要求する作業でのみ適切に力や速度を増加させることができる。
<第3の実施の形態の変形例>
第3の実施の形態においては、圧力センサにより検出された操作レバー装置の操作量に加え、油圧ポンプの吐出圧を検出する圧力センサからの検出値に基づいて、出力アップ条件を設定するように構成したが、油圧ポンプの吐出圧以外の圧力に基づいて出力アップ条件を設定することも考えられる。
例えば、図16及び図17に示すように、圧力センサにより検出された操作レバー装置の操作量に加え、油圧アクチュエータの負荷圧を検出する圧力センサからの検出値に基づいて、出力アップ条件を設定するように構成してもよい。
図16は、本変形例に係る油圧回路システムの要部を本発明の関連構成とともに抜き出して模式的に示す図である。図16において、油圧回路システム40Bのコントロールバルブ42から各油圧アクチュエータ23,32,34,36(図16では油圧アクチュエータ43a,43bで代替的に表現する)に供給される圧油の流路には、油圧アクチュエータ43aの負荷圧を検出する圧力センサ53d,53e設けられており、検出結果はそれぞれ信号路53i,53jを介してコントローラ49Bに入力される。
図17は、オートパワーアップ制御における出力アップ条件の設定の具体例を示す図である。図17では、図15と同様に、出力アップ条件の設定において対象となっている操作のうち、ブーム上げ操作、アーム引き操作、バケット掘削操作がなされて操作量が有意に存在しており、その他の操作が非操作の場合であり、かつ、油圧アクチュエータ43aの負荷圧が生じている場合を例示している。なお、図17では操作量が無い操作のうち(左右)旋回操作を代表して示し、他の操作については図示を省略する。
レバースイッチ58の設定スイッチとしての機能が有効になっている場合において、オペレータが図17に示すアクチュエータの操作を行っている状態でのある時点でレバースイッチ58を操作することにより出力アップ条件が生成され設定される。この例でのレバースイッチ58操作時の各操作量及び油圧ポンプの吐出圧は、ブーム上げ操作量=Pi_boom、アーム引き操作量=Pi_arm、バケット掘削操作量=Pi_bucket、アクチュエータ圧=Pactであり、その他の操作量は0(ゼロ)と判定されるので、生成される出力アップ条件は、ブーム上げ操作量≧Pi_boomかつアーム引き操作量≧Pi_armかつバケット掘削操作量≧Pi_bucketかつアクチュエータ圧≧Pactとなる。なお、操作量が0(ゼロ)であって操作が行われていない(非操作)と判定された操作については、出力アップ条件には含めない。
以上のように構成した本変形例においても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、出力アップ条件に油圧アクチュエータの負荷圧を加えたので、さらに精度良くオペレータが要求する作業でのみ適切に力や速度を増加させることができる。
次に上記の各実施の形態の特徴について説明する。
(1)上記の実施の形態では、原動機(例えば、エンジン22)と、前記原動機により駆動される1つ以上の可変容量型の油圧ポンプ41と、前記油圧ポンプから吐出される圧油により駆動される1つ以上の油圧アクチュエータ(例えば、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36、旋回モータ23、及び左右の走行モータ11)と、操作装置(例えば、操作レバー装置50)の操作量に応じて前記油圧ポンプから前記1つ以上の油圧アクチュエータに供給される圧油の流量をそれぞれ制御する流量制御弁(例えば、コントロールバルブ42)と、前記操作装置から出力される操作信号を検出する操作量検出装置(例えば、圧力センサ53a,53b)と、前記油圧ポンプの動作を前記油圧ポンプの吸収馬力が所定の値になるように前記油圧ポンプにおける吐出圧と吐出流量の関係を示した特性線に従って制御するコントローラとを備えた建設機械において、前記操作装置からの信号路に対して独立した信号路を有し、前記操作装置に設けられた設定スイッチ(例えば、レバースイッチ58)を備え、前記コントローラは、前記操作装置の操作中に前記設定スイッチが操作されたときの前記操作装置から出力される操作信号に基づいて、前記油圧アクチュエータの出力を増加させる運転に切り換えるための動作タイミングを設定し、前記操作量検出装置により検出された前記操作装置から出力される操作信号に基づき前記設定スイッチにより設定された前記動作タイミングであると判断した場合に、前記油圧ポンプの吸収馬力が増加するように前記特性線を前記所定の出力値を増加させた出力増加特性線に切り換え、前記出力増加特性線に基づいて前記原動機及び前記油圧ポンプの一方を制御するものとした。
これにより、オペレータによる操作の負担を低減しつつ、オペレータが要求する作業でのみ適切に力や速度を増加させることができ、作業時の力や作業速度の無駄な増加を抑制することができる。
(2)また、上記の実施の形態では、(1)の建設機械において、前記コントローラは、前記操作装置から出力される操作信号に基づき前記動作タイミングであると判断した場合に、前記油圧ポンプの吐出流量を増加させて前記油圧ポンプの吸収馬力を増加させるものとした。
(3)また、上記の実施の形態では、(1)の建設機械において、前記コントローラは、前記操作装置から出力される操作信号に基づき前記動作タイミングであると判断した場合に、前記原動機の回転数を増加させて前記油圧ポンプの吸収馬力を増加させるものとした。
(4)また、上記の実施の形態では、(1)の建設機械において、前記出力増加特性線の吸収馬力の前記所定の値に対する増加割合を設定する設定装置を備えたものとした。
(5)また、上記の実施の形態では、(1)の建設機械において、前記油圧ポンプの吐出圧を検出する吐出圧検出装置を備え、
前記コントローラは、前記操作装置の操作中に前記設定スイッチが操作されたときの前記操作装置から出力される操作信号および前記油圧ポンプの吐出圧に基づいて前記動作タイミングを設定するものとした。
これにより、さらに精度良くオペレータが要求する作業でのみ適切に力や速度を増加させることができる。
(6)また、上記の実施の形態では、(1)の建設機械において、前記油圧アクチュエータの負荷圧を検出する供給圧検出装置を備え、
前記コントローラは、前記操作装置の操作中に前記設定スイッチが操作されたときの前記操作装置から出力される操作信号および前記油圧アクチュエータの付加圧に基づいて前記動作タイミングを設定するものとした。
これにより、さらに精度良くオペレータが要求する作業でのみ適切に力や速度を増加させることができる。
<付記>
なお、上記の実施の形態においては、エンジン等の原動機で油圧ポンプを駆動する一般的な油圧ショベルを例に挙げて説明したが、油圧ポンプをエンジン及びモータで駆動するハイブリッド式の油圧ショベルや、油圧ポンプをモータのみで駆動する電動式の油圧ショベル等にも本発明が適用可能であることは言うまでもない。
また、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。