JP2019046632A - フィルム状ヒータ - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献4に記載されているように、面状の発熱抵抗体の両面に熱可塑性ポリイミドシートを熱圧着し、さらに一方の該熱可塑性ポリイミドシートの表面に金属板を熱圧着してヒートプレートとすること、特許文献5に記載されているように、パターン化された導体膜からなるヒータエレメントが絶縁膜でラミネートされ、一方の絶縁膜上に熱伝導良好な膜が形成されてなるシートヒータは公知である。
このようなヒートスポットが形成されることは、ヒータ表面の加熱温度にムラが生じることを意味している。そうすると、使用するにつれて、フィルム状ヒータの表面層等の加熱温度が高い表面の樹脂部分は局所的に熱劣化が進展したり、部分的に溶融したりする。また、その樹脂部分等が熱膨張をすることによって、低温の部位との熱膨張率の違いに起因して、繰り返し使用するとヒータ全体が波を打ってしまう。加えて被加熱材料によっては、部分的に加熱温度が高くなり、被加熱材料自身が変性する等の支障が生じることが懸念されている。
またこのように表面温度のムラが大きく、使用時において部分的にでも被加熱物を変性させるほどの温度にまで加熱するときには、被加熱物を均一に加熱するどころか、加熱することによる目的を達成できない可能性がある。特に比較的低温かつ均一に被加熱物を加熱する必要があるときに、このような支障が生じることになる。
したがって、これらの支障を回避するために、局所的に高温になる箇所の加熱温度が溶融する温度に達しないように、あるいは、ヒータに供給する電力を抑制して、加熱温度を低下させたり、加熱時の温度上昇速度を小さくする等の使用上の工夫を必要としていた。
なお、特許文献2に示すように、フッ素樹脂によるモールド中に発熱体を入れると、モールドにより形成された樹脂層は厚く、この樹脂層の厚み方向には伝熱しにくいので、発熱した熱がモールドの外に放熱されにくく、低い加熱温度となり、結果的にエネルギー効率が良くない加熱装置となる。また必要以上にフィルム状ヒータが大型化することになる。
また、モールド成型によるために、加熱装置の小型化が困難で、かつ発熱体の配線パターンも限定されるために均一な発熱も困難であった。
特許文献3〜5に記載された手段によれば、被加熱物が均一に加熱されるものの、ヒータの外表面上には金属等の放熱のための面が形成されることになり、被加熱物質によっては、その金属表面が劣化することが懸念される。
また、シート状ヒータの縁部はヒータを被覆する樹脂等の部材の封止部である等の理由により、通常、ヒータの電熱線等の加熱手段が設けられていない部分である。このような端部では、特にヒータ下面に発生した泡が結合して大きくなり、一旦留まる傾向にある。このようにして大きくなった泡が、ヒータの下面から一気に上昇すると、まるで突沸したかのようになり安定して液体を加熱できない可能性がある。
1.発熱層の両面に熱拡散材料層を設け、該熱拡散材料層の外面に絶縁層を形成してシート状導電性発熱体を形成し、
該シート状導電性発熱体の中央部には、該シート状導電性発熱体を貫通する貫通孔を設け、
さらに、該シート状発熱体の縁部に切り欠き部を設け、及び/又は、該縁部下面に曲面部を設けてなるシート状導電性発熱体を有する、フィルム状ヒータ。
2.該絶縁層がテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体から形成された1.に記載のフィルム状ヒータ。
3.フィルム状ヒータが外部電源と接続された端子部がフッ素樹脂フィルムにて被覆されている1.又は2.に記載のフィルム状ヒータ。
4.発熱層及び/又は熱拡散材料層はシート状発熱体の貫通孔よりも径が大である貫通孔を有し、かつ発熱層及び/又は熱拡散材料層の外縁は、シート状発熱体の縁部に対して相似の形状である1.〜3.のいずれかに記載のフィルム状ヒータ。
5.該切り欠き部及び該曲面部はフィルム状ヒータの中心部から35〜90度の角度の方向毎に形成されてなる1.〜4.のいずれかに記載のフィルム状ヒータ。
つまり、加熱時において、シート状導電性発熱体の下面にて加熱された液体が、該貫通孔や該切り欠き部及び/又は該縁部下面の曲面部を通ってシート状導電性発熱体の上面に流動することができる。このため、シート状導電性発熱体は、加熱された該液体が流動することの障害になることがない。仮にシート状導電性発熱体下面とビーカー等の底との間に液体の蒸気等である気泡が発生しても、その後気泡が加熱により膨張したり、複数の気泡が結合することにより大きくなりながら移動したり、液体と共に流動したりして、容易に液面に向けて放出される。その結果、気泡の存在により液体の加熱が不十分となったり、シート状導電性発熱体の加熱にむらが生じることがない。なお、このとき、シート状導電性発熱体の端部には、電熱線等のヒータが設けられていない。この端部に達した気泡は、切り欠き部及び/又はその下面の曲面部により速やかにシート状導電性発熱体の端部から上方に放出される。
よって、気泡は互いに一体化して大きくなりすぎることがなく、大きくなりすぎた気泡が一気に放出されて、あたかも突沸状態となることがない。
また、より大きな面積で液体を加熱するので、本発明のフィルム状ヒータは、その表面に耐熱性に優れた樹脂を使用したこともあって、被加熱液体に対してもむらなく加熱できる。加えて、より高い電力により速やかな加熱させることや、より低電力での穏やかな加熱等の所望の加熱条件による加熱を行うことができる。
さらに、発生した気泡が、貫通孔やフィルム状ヒータの周縁部から、速やかに上方に放出されるために、フィルム状ヒータの下面に気泡が接触することにより、フィルム状ヒータの下面が局所的に空だきされることがない。この結果としてフィルム状ヒータを過熱により、劣化したり、溶融したりすることがない。
図1に示すように、本発明のフィルム状ヒータ1はビーカー等の容器内の液体中に、その一部を浸漬し、容器底面側に位置するシート状導電性発熱体2と、その端部から上方に延びる配線部3を設け、さらに配線部に付属した端子部4を設けてなる。
このとき、フィルム状ヒータ1を単に投入しても良いが、図1の係止部7を容器外に出し、配線部3を容器内に入れるようにして、容器壁面にフィルム状ヒータをかみ合わせて固定させることもできる。
以下に本発明のフィルム状ヒータ1の構成部材及び構造について説明する。
図2に示すように、本発明におけるシート状導電性発熱体2は、銅、ステンレス、ニッケルとクロムの合金等の金属、炭化ケイ素等のセラミック、カーボン等の、公知の電気抵抗により発熱する材料からなるシートや薄膜のパターンあるいは細線を含んで構成する発熱層2aを有することができる。発熱層2aが薄膜のパターンを有する場合には、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル等の耐熱性を有する樹脂フィルムの片面又は両面にパターンを設けたものとすることができる。
シート状導電性発熱体2の全体の形状、パターンや、電熱線のように発熱する導線10の太さ、若しくはパターンの幅等は、目的とする加熱温度や、フィルム状ヒータの大きさ等に基づいて適宜調整できる。例えば、図8に示すように導線10を折り返すようにして、発熱層を形成できるようにするとともに、予定する加熱能力等に応じて、Lで示す導線の配線の密度や、2Lで示す配線の密度とすることもできる。
全体の形状は、液体等の被加熱物を収納したビーカー等の容器の底面付近に設置でき、底面の周縁部や壁面に対して若干の隙間を有する形状とすることができる。
さらに、発生した気泡が、貫通孔やフィルム状ヒータの周縁部から、速やかに上方に放出されるために、フィルム状ヒータの下面に気泡が接触することにより、フィルム状ヒータの下面が局所的に空だきされることがない。この結果としてフィルム状ヒータを過熱により劣化したり、溶融したりすることがない。
このとき、耐熱性に優れた樹脂層2bを使用することと併せて、フィルム状ヒータの樹脂部分の過熱による劣化を防止できる。
そのような熱拡散材料層2cとしては、熱伝導率が高い材料、つまり、金、銀、銅、鉄、ステンレス、アルミニウム等の金属、グラファイトやセラミックスの粉体、繊維状、シート状、箔状、板状あるいは焼結状の材料、加えて、例えば酸化チタン、シリカ、アルミナ等の金属化合物や金属粉等の無機物質を多量に含有した樹脂からなるシートを採用することができる。このときにも、フィルム状ヒータの用途、加熱能力等に合わせて採用することができる。そしてこれらの中でも、金属やグラファイトからなるものが好ましい。
熱拡散材料層は、導電性発熱体から発生した熱を十分に吸収しかつ、外部に放熱させるために必要な大きさであることが求められる。
このような性質を有する絶縁層2を得るための材料としてはフッ素樹脂、シリコン樹脂等の公知の樹脂を採用することができる。中でもテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体を採用することが好ましい。また、絶縁層2dの形状は該パターンや熱拡散材料層2cよりも大であることが必要である。この結果、該シート状導電性発熱体2を製造する際に、絶縁層2dを形成する2枚のシートで、熱拡散材料層2cまでを形成した部材をはさんだときに、この2枚のシートの縁が直接的に相対する状態となる。
この状態で、絶縁層とこれらの層を加圧しながら、特に、この2枚のシートの縁部を加熱・溶着する。この結果として、上記発熱層2aと熱拡散材料層2cが絶縁層2dにより挟まれて密閉された該シート状導電性発熱体2を形成させることができる。
なお、シート状導電性発熱体2の端部や貫通孔付近は、発熱層2aが設けられていない部分であり、この部分においてシート状導電性発熱体2の下面にて仮に気泡が留まると、互いに結合して大きくなる傾向にある。そのため、本発明におけるように気泡を留まらせないようにすることが必要である。
なお図2の断面図はシート状導電性発熱体2の端部ではない部分の断面図である。端部の構造は、図2において発熱層2aを有しない構造であるか、又は発熱層2aと熱拡散材料層2cを共に有しない構造に相当する。
図3におけるシート状導電性発熱体2中の斜線部は、発熱層2aを有する発熱部2eであり、その縁部2fは発熱層2aを有しない。又はシート状導電性発熱体2中の斜線部は、熱拡散材料層2cである。発熱層2a及び/又は熱拡散材料層2cは、シート状発熱体の貫通孔よりも径が大である貫通孔を有し、かつ発熱層及び/又は熱拡散材料層の外縁は、シート状発熱体の縁部に対して相似の形状であっても良い。そして、加熱に寄与する面積をより大きくするためには相似形であることが好ましい。図3における斜線部の外縁とシート状導電性発熱体2の外縁との間隔、つまり、加熱に寄与しない部分の幅が3mm以下であることが好ましい。
そのため、発熱部2eの下面にて加熱により発生した気泡は、縁部2fに向けて移動し縁部2fにて滞留しようとする。しかしながら、本発明においては、縁部2fに設けた切り欠き部2g、及び/又は、該縁部下面に設けた曲面部2iによって、縁部2fに達した気泡は速やかに上方に放出される。
そして該シート状導電性発熱体2の形状としては、図3に示すように該シート状導電性発熱体2を貫通する貫通孔5を1つ以上設け、さらに、該シート状導電性発熱体2の縁部2fには、切り欠き部2gを設けることによって、液体をより均一に加熱することが可能である。ここで貫通孔5の形状は、円、楕円、多角形、不定形等の任意の形状で良く、切り欠き部2gの形状は、円、楕円、多角形や不定形状の一部の線による形状で良い。
また、図3に示すように、該シート状導電性発熱体2の縁部2fに円、楕円、多角形、不定形等の任意の形状の突起部2hを設けても良い。このときには、突起部2hを設けていない部分を切り欠き部と見なすことができ、気泡は専ら突起部2hの付け根部分から上方に放出される。なお突起部2hの付け根部分の縁部2fの輪郭は、半径5mm以下の円弧や直線の交点で形成されていることが、より気泡を上方に放出させやすい点において好ましい。
なお、図3は切り欠き部2gと突起部2hを共に設けたが、いずれか一方のみを設けることもできる。
図4に示すように、ビーカー等の容器内に入れたフィルム状ヒータのシート状導電性発熱体2と配線部3の接続部分や、シート状導電性発熱体2の縁部の下面に曲面部2iを設けることもできる。このときには、図4に示すように、シート状導電性発熱体2の下面にて発生した気泡が縁部に移動し、そのまま曲面部2iをなぞるようにして、矢印で示すように移動し、最後には上方に放出される。
仮に曲面部2iがなければ、縁部に移動した気泡が縁部の下面にて滞留する傾向にあるが、曲面部2iによって、気泡が円滑に上方に放出される。
このような曲面部2iとしては、図4で示す断面の形状として半径が2mm以上の円弧、あるいは円弧に類似する形状であれば良い、
曲面部2iはシート状導電性発熱体2の全周にわたって設けても良く、下記に記載する切り欠き部と同程度の位置に設けても良い。
このような曲面部2iを一部の縁部に設け、他の縁部には切り欠き部2gを設けてもよい。切り欠き部や切り欠き部2gにより残された部分についても、このような曲面部2iを設けることができる。
貫通孔5の数は1つ以上でよく、各切り欠き部2gの中心は配線部3との接続個所を除いてシート状導電性発熱体2の中心部を中心にして、35〜90度が好ましく、さらに40〜80度毎の位置に設けることが望ましい。より望ましくは、42〜48度毎である。切り欠き部2gの数としては、4〜8個程度の範囲が好ましい。
貫通孔5の面積と切り欠き部2gを設けた縁部の面積の合計が大きくなりすぎると、結果的に発熱層2aの面積を小さくせざるを得ず、シート状導電性発熱体2の加熱面積が小さくなる。そのため、これらの面積の合計が、容器底面側に向けられて設置される熱拡散材料層2cの面積に対して、3〜20%とすることが好ましく、さらに好ましくは7〜15%である。3%未満であると、発生した気泡を貫通孔又は切り欠き部から逃がすことが困難になり、20%を超えると実質的な加熱面積が小さくなりすぎて、加熱する能力が低下するおそれがある。
また、シート状導電性発熱体2の表面における、貫通孔及び切り欠き部の端部ではないどの地点からも、最も近い貫通孔又は切り欠き部の端部までの距離が30mm以下、及び、シート状導電性発熱体の径の半分以下の両方を満足することが好ましく、より好ましい距離は20mm以下、さらに好ましい距離は15mm以下である。距離が30mmを超えると、加熱条件にもよるが、シート状導電性発熱体2と容器の底との間に気泡が滞留しやすくなり、加熱にムラが発生したり、部分的に加熱対象である液体と接しなくなるので、空だき状態となることがある。
なお貫通孔は、該シート状導電性発熱体2の中心から、該シート状導電性発熱体2の短径の二分の一の範囲内に形成されることが、より円滑に液体を対流させる点において望ましい。
この貫通孔5と切り欠き部2g、曲面部2iによる均一な加熱は、シート状導電性発熱体2を内部に液体を有するビーカー等の容器の底部に設置して、該液体を加熱する際に、該液体の蒸気等の気泡が発生した場合に、該貫通孔5や切り欠き部2g、曲面部2iを通過して液面に放出されることにより達成される。そのため、該気泡がシート状導電性発熱体2の底面に接触して滞留することがない。このように滞留しないことによって、シート状発熱体2の両面の全面が液体と接触でき、より均一に加熱することができる。
またシート状導電性発熱体2の下部に存在し、加熱された液体も、該気泡と同様に、貫通孔5や切り欠き部2g、曲面部2iを通過して上昇し、容器中の液体の対流をより活発化させ、該液体を均一に加熱することができる。
なお、貫通孔5、及び切り欠き部2g、曲面部2iを含むシート状導電性発熱体2の縁部を成形する際には、バリ等の突起部が容器底面側に向かないようにする。
また、より大きな面積で液体を加熱するので、シート状導電性発熱体2の単位面積当たりの発熱量は、従来のU字形状の投げ込みヒータよりも小さく、被加熱液体に対してもむらなく加熱でき、より高い電力を加えて速やかな加熱速度とすることや、より低電力での穏やかな加熱温度による加熱等の所望の加熱条件による加熱を行うことができる。
このとき、発生した気泡が、貫通孔やフィルム状ヒータの周縁部から、速やかに上方に放出されるために、フィルム状ヒータの下面に気泡が接触することにより、フィルム状ヒータの下面が局所的に空だきされることがない。この結果としてフィルム状ヒータを過熱により劣化したり、溶融したりすることがない。
このとき、耐熱性に優れた樹脂層2bを使用することと併せて、フィルム状ヒータの樹脂部分の過熱による劣化を防止できる。
耐熱性に優れた樹脂を使用することにより、フィルム状ヒータの樹脂部分が過剰に高温での加熱により劣化したり、溶融したりすることがない。
シート状導電性発熱体2は、ビーカー等の液体を収納する容器の底に配置するものであるが、そのように配置するには、ビーカーの内壁に平行に配置される、シート状導電性発熱体2と端子部4を接続する配線が必要である。その配線を有する部分を図5に示す配線部とする。そして、該配線の一端には、外部から電流を供給するために、接続部を設けることができる。図1及び5において配線部3の下端は、シート状導電性発熱体に接続している。
本来温度測定部や温度ヒューズをシート状導電性発熱体2に設けることが好ましい。しかしながら、シート状導電性発熱体2にはこれらを設ける場所がない。
そのため、また配線部において液体中に浸漬される個所には、温度センサSや温度ヒューズF等、さらにはダミーヒータHを設けることができる。
このときに設けられる温度ヒューズFは、定められた温度で自己溶断して電気を導電しなくなるような不可逆的な絶縁構造を持つため立体的な形状が必要であり、シート状導電性発熱体2のようにシート状の薄い構造をとることができない。また、温度測定に、熱電対を使用する場合もその太さからシート状の薄い構造をとることは困難であるので、外部にチューブなどで被覆された別の構造を用いる必要がある。
したがって、チューブなどを用いる場合は、熱の伝導構造などを工夫する必要がある。なお、温度ヒューズは電気の絶縁により設定温度に到達したことを認知するため、設置部付近で配線を折り返す必要があるが、温度ヒューズと外部の配線の接続部2箇所をずらして配置することにより前記接続部の絶縁処理を行わなくてもチューブ内での電気的短絡を防ぐことができる。
このとき、配線部内接続部Tや温度ヒューズFは前記のチューブに被覆された状態で、ダミーヒータからの熱を検知するのでダミーヒータと前記チューブはできるだけ密着されていることが好ましい。また、少なくとも温度ヒューズ近傍の前記チューブをあらかじめ熱変形加工して楕円形とすることでチューブ内の空間又は気体の体積を小さくできるのでチューブ内での熱容量が小さくなり、熱伝導的に有利である。また、前記ダミーヒータ部分に前記チューブの楕円形の長軸面を接する構造とする(熱融着する)ことで前記チューブへの熱伝導効率が良好となるほか、温度ヒューズの遊び(ふらつき)も無くなり安定する。
但し、ダミーヒータの加熱能力を、温度ヒューズの被覆の状況に応じて変更しておくことができる。例えば、ダミーヒータへの通電回路の設計による供給電力の上昇、ダミーヒータの加熱用電熱線の密度の向上等により、なるべく、シート状導電性発熱体2近傍にフッ素樹脂製チューブ等で被覆しない温度ヒューズを設置した状態に近似した環境にできるように、フッ素樹脂製チューブ等による温度ヒューズの被覆による、温度の検知感度の低下を補償するように、ダミーヒータによる加熱能力を調整しておくことができる。
また、温度ヒューズFは、そのダミーヒータHによる発熱を十分に検知できる程度に近接させることが好ましい。
ダミーヒータHの加熱能力を設計する上で、上記において図8を基に説明したように、例えば、Lで示す導線の配線の密度、2Lで示す配線の密度とすることもできる。
さらに、配線部の上部には、ビーカー等の容器の縁に係止して、フィルム状ヒータ全体を固定するための係止部7を設けることができる。浮力に抗し、かつ容器の縁に確実に係止させるために、係止部7はある程度の剛性を備えることが必要であり、かつ係止部7の表面も耐液性、耐熱性等を備えた樹脂により形成されることが必要である。そのため係止部7も樹脂被覆された金属層により形成される等することが必要である。
図1において係止部7を配線部3の両側に設けている。そして両側の係止部7のそれぞれにおいて、窪み部7aを2つ設けることができる。また用途や使用が予想される容器の大きさや形状、容器内の液体の量に応じて、係止部7片側あたり、窪み部7aを1つ、又は3つ以上設けたフィルム状ヒータとすることができる。
なお、使用時において、被加熱物である液体を有する容器の壁面が液面に対して垂直であり、該壁面に配線部3が沿うように、本発明のフィルム状ヒータを固定するときにおいて、配線部3に対してシート状導電性発熱体2を直角に曲げておくと、シート状導電性発熱体2は液面に対して平行に設置される。
一方、配線部3に対してシート状導電性発熱体2を直角に曲げない場合には、シート状導電性発熱体2は液面に対して平行ではない状態で設置される。このときにはシート状導電性発熱体2の下面が傾斜するので、発生した気泡は斜面に沿ってより上方へと移動できる。本発明はこのような場合も包含する。
なお配線部3には、温度センサS、温度ヒューズF等や配線部3内の配線を、配線部内接続部Tにより互いに接続することができる。このとき配線部内接続部Tを複数設ける際には、その複数の配線部内接続部Tが横に並ばないようにすることが好ましい。仮に複数の配線部内接続部Tが横に並ぶと配線部3が厚くなりすぎたり、特に剛性が高くなりすぎたりして、本発明のフィルム状ヒータを容器に固定する操作が困難になる可能性がある。
図5においては、配線部内接続部Tを上下及び左右にずらして2箇所設けた。これにより、配線部3の厚みを薄くでき、さらに配線部3を曲げやすくなり、曲げたときに配線がショートする可能性を低減できる。
温度センサSには、温度センサとして各種温度センサや各種測温抵抗体等の公知の温度センサを使用でき、測定範囲としては、本発明のフィルム状ヒータの各種の用途に従って予定される範囲とすることが必要である。
但し上記配線部3に埋設させることから薄い形状又は細線のものが好ましく、配線部3を構成する樹脂層間に設置することが望ましい。これらの層内に埋設させる際には、これらの層を構成する複数のフィルムの間に1つ以上の温度センサ等の温度センサSを挿入しておくことが好ましい。
温度センサSにて使用する温度センサ等としては、格別のことがない限り1つで良く、温度センサSを設ける場所としては、被加熱物に近い箇所が被加熱物の温度制御をより正確に行う点において好ましい。
そのため図5においてシート状導電性発熱体に近い箇所に温度センサSを設けている。
図6に示す端子部4は、図示しない外部電源に接続された外部電源側導電線Pと、フィルム状ヒータが外部電源と接続される配線部3の端子である、配線部側導電線Rを接続するための部位であり、液体を収納した容器の外に設置され、使用時において被加熱物と接触するものではない。
接続するために、公知の接続構造を備えることも可能であるが、使用時以外に被加熱物と接触する可能性があること、またその他の場合においてもより確実に接続できるように、接続するための部位を耐液体性及び耐熱性を有する特定の構造のチューブにて被覆することができる。
そのような被覆構造を、図7(A)(B)に示す。
この図7に記載のチューブは、外層8をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(融点327℃)等の高融点フッ素樹脂、内層9をテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)(融点275℃)等の低融点フッ素樹脂で形成してなる構造を基にしている。FEP等よりもPTFE等のほうが融点は高い。この2種のフッ素樹脂の融点の差は50℃以上であることが必要である。
このように、PTFE等の高融点フッ素樹脂の外層を収縮させ、かつFEPの低融点フッ素樹脂の内層を軟化させることによって、FEP等の低融点フッ素樹脂の内層が端子部とその周囲にある隙間等の細部に充填され、かつその充填された部分が、PTFE等の高融点フッ素樹脂の外層及びFEP等の低融点フッ素樹脂の内層によって気密に維持される。なお、多少の外部からの応力によってこの被覆構造は破壊されることはない。
ここで、外部電源側導電線Pと、配線部側導電線Rとを公知の手段により電気的に接続し、その接続部位で、両導電線が露出した個所とその個所に隣接する絶縁被覆をいずれもさらに被覆できるように、特定のチューブによって覆う。
その後適切な温度に加熱して、この特定のチューブを収縮させることによって、両導電線が露出した個所とその個所に隣接する絶縁被覆を気密に封止する。
本発明のフィルム状ヒータは、構成する材料を破壊・劣化させない範囲で任意の温度まで加熱する用途に使用できる。このような用途としては、化学工業の薬液反応プロセス、食品工業での製造プロセス、飲食品の保温、血液の保温、薬品や水の加熱、薬品製造、電子材料や半導体の製造プロセスでの薬液や洗浄剤の加熱、水槽内の保温等、これまで、液体の加熱や保温等を行ってきた用途に使用することができる。
なかでも、本発明のフィルム状ヒータを使用する際に、フィルム状ヒータ自体が変質せず、ガスや不純物を生じないので、不純物の混入を防止することが必要な用途において、水、薬液、血液、洗浄剤を直接的に保温や加熱できる。
本発明のフィルム状ヒータは、一部のみが加熱されるヒートスポットが発生することなく、ヒータの面を均一に加熱するので、温度管理を厳密に行い、特に予定する温度よりも高温に加熱されることを防止しなくてはならない医療等の用途においても有効に使用することができる。
本発明のフィルム状ヒータは、例えばビーカー、液体撹拌用容器、オイルバス等の投げ込み型のヒータに代えて使用することができる。この場合の使用方法としては、例えば図1に示すように、容器内に液体を入れ、容器内の底にシート状導電性発熱体2を配置して液体中に浸漬して、所定の温度になるように加熱を行う。
実施例においては、60度ごとであるため、本来は切り欠き部を6個設けるべきところ、その内の1個設けるべき場所に配線部を接続したので、5個となった。
実施例及び比較例のフィルム状ヒータを、水を入れた容器の底部に平行に設置した。その後加熱して水中に発生する気泡の状態を観察した。
実施例によれば、シート状導電性発熱体2と容器の底との間に気泡が滞留せず、大きな気泡が発生することがなかった。発生した気泡は貫通孔や切り欠き部を通過して上昇した。
比較例によれば、発生した気泡はシート状導電性発熱体2と容器の底との間に滞留する傾向にあり、その結果として気泡が大きくなった。さらに加熱をつづけると、大きくなりすぎた気泡がシート状導電性発熱体2を押し上げながら上昇するもので、突沸したような状態となり、安定して加熱を継続することが困難であった。
2・・・シート状導電性発熱体
3・・・配線部
4・・・端子部
5・・・貫通孔
6・・・切り欠き部
7・・・係止部
8・・・外層
9・・・内層
10・・導線
T・・・配線部内接続部
F・・・温度ヒューズ
P・・・外部電源側導電線
H・・・ダミーヒータ
S・・・温度センサ
R・・・配線部側導電線
Claims (5)
- 発熱層の両面に熱拡散材料層を設け、該熱拡散材料層の外面に絶縁層を形成してシート状導電性発熱体を形成し、
該シート状導電性発熱体の中央部には、該シート状導電性発熱体を貫通する貫通孔を設け、
さらに、該シート状発熱体の縁部に切り欠き部を設け、及び/又は、該縁部下面に曲面部を設けてなるシート状導電性発熱体を有する、フィルム状ヒータ。 - 該絶縁層がテトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体から形成された請求項1に記載のフィルム状ヒータ。
- フィルム状ヒータが外部電源と接続された端子部がフッ素樹脂フィルムにて被覆されている請求項1又は2に記載のフィルム状ヒータ。
- 発熱層及び/又は熱拡散材料層はシート状発熱体の貫通孔よりも径が大である貫通孔を有し、かつ発熱層及び/又は熱拡散材料層の外縁は、シート状発熱体の縁部に対して相似の形状である請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム状ヒータ。
- 該切り欠き部及び該曲面部はフィルム状ヒータの中心部から35〜90度の角度の方向毎に形成されてなる請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム状ヒータ。
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