(発明が解決しようとする課題)
多段型蓄冷式冷凍機の多段シリンダのそれぞれのシリンダ部の先端に設けられる各冷却ステージの目標冷却温度は、先端に設けられる冷却ステージほど、低くされる。例えば、二段型蓄冷式冷凍機の一段目のシリンダ(一段目シリンダ部)に設けられる一段目冷却ステージの目標冷却温度は30K〜80Kであり、一段目のシリンダよりも先端の二段目のシリンダ(二段目シリンダ部)に設けられる二段目冷却ステージの目標冷却温度は10K程度である。従ってこの場合、10K程度の極低温に冷却される被冷却体は、二段目冷却ステージに熱的に接続される。
多段シリンダの先端側(すなわち高段側)に設けられる冷却ステージ(すなわち高段側冷却ステージ)の目標冷却温度は極めて低いので、高段側冷却ステージの温度を目標冷却温度(例えば10K)にまで冷却するためには大きな冷凍能力が必要である。しかしながら、高段側のシリンダ部の径は低段側のシリンダ部の径よりも細く、その内部に充填される蓄冷材などの冷却媒体の量も少ないので、高段側冷却ステージを冷却するための冷凍能力は小さい。このため、高段側冷却ステージを目標冷却温度まで冷却するための冷却時間は非常に長く、それ故に、高段側冷却ステージにて極低温に冷却される被冷却体の冷却時間が非常に長い。
本発明は、極低温に冷却される被冷却体の冷却時間を短縮することができる構造を有する多段型蓄冷式冷凍機を提供することを目的とする。
(課題を解決するための手段)
本発明に係る多段型蓄冷式冷凍機(1)は、径が異なる複数のシリンダ部(21,22)により構成され、先端に向かって段階的に径が小さくなるように段付円筒状に形成される多段シリンダ(2)と、多段シリンダ内に設けられる蓄冷手段(33,34)と、複数のシリンダ部の先端(211,221)側にそれぞれ設けられる複数段の冷却ステージ(60,70)と、多段シリンダ内の圧力を変動させる圧力変動機構(5)と、多段シリンダを構成する材質よりも熱収縮率の大きい材質で構成され、その一方端(80a)が、複数段の冷却ステージのうち最も高段の冷却ステージ以外の冷却ステージである低段側冷却ステージ(60)に固定され、低段側冷却ステージから多段シリンダの軸方向に沿って延設されるとともに、その他方端(80b)が、常温にて、低段側冷却ステージよりも高段側の冷却ステージである高段側冷却ステージ(70)の多段シリンダの軸方向に沿った高さ位置(B)よりも高い高さ位置(A)に位置する伝熱部材(80)と、多段シリンダの軸方向に沿った高段側冷却ステージの高さ位置よりも高い高さ位置に配設され、伝熱部材が常温であるときに伝熱部材の他方端に接触するとともに高段側冷却ステージに多段シリンダの軸方向に沿った隙間(G)を隔てて対面配置された補助冷却部材(90)と、補助冷却部材を伝熱部材の他方端側に向けて付勢する付勢部材(95)と、を備える。
この場合、伝熱部材の温度が低段側冷却ステージの目標冷却温度に達したときに、伝熱部材の他方端の高さ位置が、高段側冷却ステージの高さ位置よりも低くなるように、多段シリンダの軸方向に沿った伝熱部材の長さが設定されているとよい。
上記発明において、「多段シリンダの軸方向に沿った高さ位置」とは、多段シリンダの軸方向に沿った低段側冷却ステージからの距離により表される位置である。また、この高さ位置について、「高い」とは、多段シリンダの軸方向に沿った低段側シリンダからの距離が長いことを表す。その反対に、高さ位置について、「低い」とは、多段シリンダの軸方向に沿った低段側シリンダからの距離が短いことを表す。
本発明に係る多段型蓄冷式冷凍機によれば、低段側冷却ステージに伝熱部材の一方端が固定されており、この伝熱部材は常温状態であるときに、その他方端にて補助冷却部材に接触している。この状態で本発明に係る多段型蓄冷式冷凍機を作動させた場合、低段側冷却ステージの冷熱は、伝熱部材を介して補助冷却部材に熱接触した被冷却体(被冷却体が補助冷却部材であるときは、補助冷却部材)に伝達される。すなわち、低段側冷却ステージの冷熱により、被冷却体が冷却される。低段側冷却ステージの冷凍能力は高いので、被冷却体は速やかに冷却される。
また、低段側冷却ステージの冷却が進むにつれて伝熱部材が熱収縮することにより、伝熱部材の他方端の高さ位置が低くされる。ここで、低段側冷却ステージの冷却中において伝熱部材の他方端の高さ位置が高段側冷却ステージの高さ位置よりも高い場合、付勢部材により伝熱部材の他方端側に向けて付勢されている補助冷却部材が伝熱部材の他方端の高さ位置の低下に追従して、伝熱部材との接触を維持したまま低段側冷却ステージ側に向けて移動する。このとき、補助冷却部材と高段側冷却ステージとの間に隙間が設けられるので、斯かる隙間によって、補助冷却部材と高段側冷却ステージとは熱的に絶縁される。低段側冷却ステージの冷却中は、高段側冷却ステージは十分に冷却されないので、上記した隙間の存在により、十分に冷却されていない高段側冷却ステージから補助冷却部材への熱流入を防止することができる。
さらに低段側冷却ステージの冷却が進んで低段側冷却ステージの温度が低段側冷却ステージの目標冷却温度(例えば30K〜80Kの温度範囲内で予め定めた温度αK)に近い温度(例えば(α+10)K)に達したとき、伝熱部材がさらに熱収縮して伝熱部材の他方端の高さ位置が高段側冷却ステージの高さ位置に一致する。すると、補助冷却部材と高段側冷却ステージとの間に設けられていた隙間が無くなり、補助冷却部材が高段側冷却ステージに接触する。このとき高段側冷却ステージは十分に冷却されている可能性が高く、その場合、補助冷却部材は低段側冷却ステージ及び高段側冷却ステージによって冷却される。
そして、低段側冷却ステージの温度が目標冷却温度(例えばαK)に達すると、伝熱部材がさらに熱収縮して、その他方端側の高さ位置が高段側冷却ステージの高さ位置よりも低い位置に位置することになる。また、補助冷却部材は高段側冷却ステージに接触していて、それ以上低段側冷却ステージに向かう方向に移動できない。つまり、高段側冷却ステージが補助冷却部材の移動に対するストッパとして機能する。このため補助冷却部材が伝熱部材から切り離される。従って、補助冷却部材及び補助冷却部材に熱接触した被冷却体が、高段側冷却ステージにより冷却される。そして、高段側冷却ステージの冷熱によって、被冷却体が極低温(例えば10K)まで冷却される。なお、補助冷却部材及び補助冷却部材に熱接触した被冷却体が高段側冷却ステージにより冷却されているときには、上記したように補助冷却部材が伝熱部材から切り離されているので、伝熱部材を経由した一段目冷却ステージから補助冷却部材への熱流入を防止することができる。
このように、本発明によれば、極低温に冷却される被冷却体が、高段側冷却ステージの冷却が十分でないときには低段側冷却ステージの冷熱により冷却される。そして、高段側冷却ステージが十分に冷却されてきた場合に高段側冷却ステージの冷熱により被冷却体が極低温まで冷却される。低段側冷却ステージの冷凍能力は高段側冷却ステージの冷凍能力よりも高いので、低段側冷却ステージで被冷却体が冷却される分だけ、極低温に冷却される被冷却体の冷却時間を短縮することができる。
本発明において、伝熱部材は、高段側冷却ステージが設けられたシリンダ部(高段側シリンダ部)の外周を覆うように、円筒状に形成されていると良い。これによれば、外部からの輻射熱が伝熱部材で遮蔽されることにより、熱輻射による高段側シリンダ部への熱流入を効果的に防止することができる。
また、伝熱部材はアルミニウムにより構成されるとよい。この場合、多段シリンダはステンレスにより構成されるとよい。アルミニウムは熱伝導度が高く且つ熱収縮率がステンレスよりも大きい。従って、この構成によれば、伝熱部材(アルミニウム)と多段シリンダ(ステンレス)の熱収縮率の差を利用して、上記したように伝熱部材と補助冷却部材との熱的な接続及び切り離しを実現することができる。
また、多段シリンダが、一段目シリンダ部と、一段目シリンダ部よりも径の小さい二段目シリンダ部とを備え、低段側冷却ステージが一段目シリンダ部の先端側に設けられる一段目冷却ステージであり、高段側冷却ステージが二段目シリンダ部の先端側に設けられる二段目冷却ステージであり、多段型蓄冷式冷凍機が二段型蓄冷式冷凍機であるとよい。これによれば、二段型蓄冷式冷凍機において、二段目冷却ステージにて冷却される被冷却体の冷却時間の短縮化を図ることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る蓄冷式冷凍機である二段型GM冷凍機を示す部分断面概略図である。なお、図1には、非作動状態である二段型GM冷凍機の断面、すなわち常温環境下における二段型GM冷凍機の断面が示される。図1に示すように、本実施形態に係る二段型GM冷凍機1は、多段シリンダ2と、ディスプレーサ3と、駆動装置4と、圧力変動機構5と、一段目冷却ステージ60と、二段目冷却ステージ70と、伝熱スリーブ80と、補助冷却板90と、圧縮コイルスプリング95を備える。
多段シリンダ2は、低段側シリンダ部としての一段目シリンダ部21と、高段側シリンダ部としての二段目シリンダ部22を有する。一段目シリンダ部21は、先端側を構成する一方端部211及びその反対側の他方端部212を有する円筒形状に形成される。二段目シリンダ部22は、先端側を構成する一方端部221及びその反対側の他方端部222を有する円筒形状に形成される。なお、図1においては、シリンダ部(21、22)の一方端部(211、221)が上方の端部として表され、他方端部(212、222)が下方の端部として表されているが、ここにおける「上方」、「下方」は、図面を参照した説明の便宜のために用いているのみであって、絶対空間における「上方」、「下方」を意味するものではない。また、以下の説明においても、「上」、「下」といった方向を表す用語は、図面を参照した説明の便宜のために用いるのみであって、必ずしも絶対空間における「上」、「下」を意味するものではない。
一段目シリンダ部21の内径は二段目シリンダ部22の内径よりも大きく、一段目シリンダ部21の外径は二段目シリンダ部22の外径よりも大きい。一段目シリンダ部21と二段目シリンダ部22は、同軸配置されるとともに、一段目シリンダ部21の一方端部211に二段目シリンダ部22の他方端部222が接続される。このため多段シリンダ2は先端側(図1において上方側)に向かうほど(すなわち低段側から高段側に向かうほど)段階的に径が小さくなる段付円筒形状を呈する。すなわち、多段シリンダ2は、径が異なる複数のシリンダ部(21,22)により構成され、先端に向かって段階的に径が小さくなるように段付き円筒状に形成される。また、一段目シリンダ部21の内部空間が二段目シリンダ部22の内部空間に連通している。従って、多段シリンダ2の内部空間の形状は、先端側(図1において上方側)に向かうほど(低段側から高段側に向かうほど)径が小さくなる段付き円柱形状である。
ディスプレーサ3は多段シリンダ2の内部空間に配設される。ディスプレーサ3は一段目蓄冷器31及び二段目蓄冷器32を有する。一段目蓄冷器31は低温端部311及びその反対側の高温端部312を有する円筒形状に形成され、低温端部311側が一段目シリンダ部21の一方端部211側に位置し、高温端部312側が一段目シリンダ部21の他方端部212側に位置するように、一段目シリンダ部21内に配設される。
二段目蓄冷器32は低温端部321及びその反対側の高温端部322を有する円筒形状に形成される。一段目蓄冷器31の内径は二段目蓄冷器32の内径よりも大きく、一段目蓄冷器31の外径は二段目蓄冷器32の外径よりも大きい。二段目蓄冷器32の高温端部322が一段目蓄冷器31の低温端部311に接続される。ディスプレーサ3も多段シリンダ2と同様に、先端側(図1において上方側)に向かうほど径が小さくなる段付き円筒形状を呈する。二段目蓄冷器32は、図1に示すように一段目蓄冷器31の図1において上端面から上方に延設され、二段目シリンダ部22の内部空間に進入している。
一段目蓄冷器31の軸方向長さ(高さ)は、一段目シリンダ部21の内部空間の軸方向長さ(高さ)よりも短い。従って、一段目シリンダ部21内にて一段目蓄冷器31の上端面よりも上方及び一段目蓄冷器31の下端面よりも下方にそれぞれ空間が形成される。一段目蓄冷器31の上端面よりも上方の空間によって一段目膨張室21aが形成され、一段目蓄冷器31の下端面よりも下方の空間によって背面室21bが形成される。図1からわかるように、一段目膨張室21aは一段目シリンダ部21の一方端部211内の空間により構成され、背面室21bは一段目シリンダ部21の他方端部212内の空間により構成される。また、二段目シリンダ部22内にて、二段目蓄冷器32の上端面よりも上方にも空間が形成される。二段目蓄冷器32の上端面よりも上方の空間により二段目膨張室22aが形成される。二段目膨張室22aは二段目シリンダ部22の一方端部221内の空間により構成される。
ディスプレーサ3は、一段目蓄冷器31の図1において下方の端部に接続されたロッド36を介して駆動装置4に接続される。駆動装置4は、例えばモータ及びスコッチヨーク等により構成されており、駆動することによってロッド36をその軸方向に往復駆動させる。ロッド36の往復駆動によって、ロッド36に接続したディスプレーサ3が多段シリンダ2内で往復移動する。
多段シリンダ2の図1において下端部に主連通路23が形成される。主連通路23の一方端が多段シリンダ2内の背面室21bに開口する。主連通路23の他方端は、圧力変動機構5に接続される。圧力変動機構5は、多段シリンダ2内の圧力を変動させる機能を有する。本実施形態では、圧力変動機構5は、コンプレッサ51と、高圧開閉弁52と、低圧開閉弁53と、開閉制御機構54と、共通通路55とを備える。
コンプレッサ51は、作動ガスとしてのヘリウムガスを吸入口51aから吸入し、内部にてヘリウムガスを圧縮し、圧縮した高圧のヘリウムガスを吐出口51bから吐出する。従って、コンプレッサ51の吸入口51a側にて低圧が生成され、コンプレッサ51の吐出口51b側にて高圧が生成される。
高圧開閉弁52は2つのポートを有し、開状態であるときに2つのポートの連通を許容し、閉状態であるときに2つのポートの連通を遮断することができるように構成される。高圧開閉弁52の2つのポートのうちの一方のポートがコンプレッサ51の吐出口51bに接続され、他方のポートが共通通路55の一方端に接続される。低圧開閉弁も2つのポートを有し、開状態であるときに2つのポートの連通を許容し、閉状態であるときに2つのポートの連通を遮断することができるように構成される。低圧開閉弁53の2つのポートのうちの一方のポートがコンプレッサ51の吸入口51aに接続され、他方のポートが共通通路55の一方端に接続される。共通通路55の他方端が、多段シリンダ2に形成された主連通路23に接続される。
開閉制御機構54は、高圧開閉弁52と低圧開閉弁53のいずれか一方が開いているときに他方が閉じているように、これらの開閉弁の開閉作動を制御する。開閉制御機構54の作動により、共通通路55内の圧力が高圧から低圧に、或いは低圧から高圧に切り替えられる。開閉制御機構54による高圧開閉弁52と低圧開閉弁53の開閉、すなわち高低圧の切り換えは、多段シリンダ2内でのディスプレーサ3の往復移動に連動して周期的に行われる。高圧開閉弁52、低圧開閉弁53、及び開閉制御機構54は、これらが一体となったバルブユニットにより構成されていてもよい。この場合、駆動源として駆動装置4に内蔵されたモータなどを利用して、ディスプレーサ3の往復移動と圧力変動機構5による高低圧の切り替え作動を連動させてもよい。
一段目蓄冷器31の内部空間には、蓄冷手段として、約30K〜100K程度の低温における比熱が大きい材質からなる一段目蓄冷材33が充填される。一段目蓄冷材33は、例えばりん青銅により形成された金網などの積層体により構成することができる。一段目蓄冷材33が充填されている一段目蓄冷器31の内部空間を、以下、一段目充填空間31aと呼ぶ。また、二段目蓄冷器32の内部空間には、蓄冷手段として、約4〜20K程度の極低温における比熱が大きい材質からなる二段目蓄冷材34が充填される。二段目蓄冷材34として、例えば鉛球などを用いることができる。二段目蓄冷材34が充填されている二段目蓄冷器32の内部空間を、以下、二段目充填空間32aと呼ぶ。
一段目蓄冷器31に一段目高温側連通路313及び一段目低温側連通路314が形成される。一段目高温側連通路313は、一段目蓄冷器31の高温端部312側の部分である一段目蓄冷器31の下端壁に形成されており、一段目充填空間31aの図1において下方の部分と背面室21bとを連通する。一段目低温側連通路314は、一段目蓄冷器31の低温端部311側の部分である一段目蓄冷器31の側周壁の上端部分に形成されており、一段目充填空間31aの図1において上方の部分と一段目膨張室21aとを連通する。本実施形態においては、複数の一段目低温側連通路314が、一段目蓄冷器31の周方向に沿って等間隔に設けられている。一段目低温側連通路314及び一段目高温側連通路313を経由して、作動ガスが一段目蓄冷器31の内部に流入し、或いは一段目蓄冷器31の内部から作動ガスが流出する。
二段目蓄冷器32に、二段目高温側連通路323及び二段目低温側連通路324が形成される。二段目高温側連通路323は、二段目蓄冷器32の高温端部322側の部分である二段目蓄冷器32の側周壁の下方部分に形成されており、一段目膨張室21aと二段目充填空間32aとを連通する。二段目低温側連通路324は、二段目蓄冷器32の低温端部321側の部分である二段目蓄冷器32の側周壁の上端部分に形成されており、二段目充填空間32aの図1において上方の部分と二段目膨張室22aとを連通する。二段目低温側連通路324及び二段目高温側連通路323を経由して、作動ガスが二段目蓄冷器32の内部に流入し、或いは二段目蓄冷器32の内部から作動ガスが流出する。
一段目蓄冷器31の外周側面の図1において下方部分に、周方向にわたって一段目シールリング315が取り付けられる。一段目シールリング315によって、背面室21bと一段目膨張室21aとの連通が遮断される。また、二段目蓄冷器32の外周側面の下方部分であって、二段目シリンダ部22の内周側面と対面する部分に、二段目シールリング325が取り付けられる。二段目シールリング325によって、一段目膨張室21aと二段目膨張室22aとの連通が遮断される。
二段目充填空間32aの上端部及び下端部に、二段目充填空間32a内に充填されている二段目蓄冷材34(例えば鉛球)の径よりも小さいメッシュ径を有する金網35,35が配設される。金網35,35によって、二段目充填空間32a内の二段目蓄冷材34が外部に漏出することが防止される。なお、金網に代えて、焼結プレートを用いてもよい。
一段目シリンダ部21の一方端部211に、すなわち一段目シリンダ部21(低段側シリンダ部)の先端側に、低段側冷却ステージとしての一段目冷却ステージ60が設けられる。一段目冷却ステージ60は、円筒部61及び円板部62を有する。円筒部61は、一段目シリンダ部21の一方端部211側を構成する側周壁を覆うように、一段目シリンダ部21に取り付けられる。円板部62は、円筒部61の図1において上端部から径外方に放射状に延設される。また、円板部62には、その軸方向(図1において上下方向)に貫通した複数の貫通孔63が周方向に沿って形成される。貫通孔63には、後述するボルトBTが挿通される。
二段目シリンダ部22の一方端部221に、すなわち二段目シリンダ部22(高段側シリンダ部)の先端側に、高段側冷却ステージとしての二段目冷却ステージ70が取り付けられる。二段目冷却ステージ70は、円筒部71及び円板部72を有する。円筒部71は、二段目シリンダ部22の一方端部221側を構成する側周壁を覆うように、二段目シリンダ部22に取り付けられる。円板部72は、円筒部71の図1において上端部から径外方に放射状に延設される。また、円板部72には、その軸方向(図1において上下方向)に貫通するネジ孔73が形成される。ネジ孔73には、後述するボルト94が螺合される。
二段目冷却ステージ70(高段側冷却ステージ)が設けられた二段目シリンダ部22を覆うように、伝熱部材としての伝熱スリーブ80が配設される。伝熱スリーブ80は一方端80a及び他方端80bを有する円筒形状を呈し、一段目冷却ステージ60の円板部62上に配設される。伝熱スリーブ80の一方端80aには、軸方向に延設された複数のネジ孔82が周方向に沿って形成される。このネジ孔82は、伝熱スリーブ80の一方端80aを一段目冷却ステージ60の円板部62に同軸的に載置したときに、円板部62に形成されている貫通孔63に対面する位置に、形成される。
伝熱スリーブ80の一方端80aは、一段目冷却ステージ60に固定される。この場合、伝熱スリーブ80の一方端80aに形成されたネジ孔82と一段目冷却ステージ60の円板部62に形成された貫通孔63が対面するように、伝熱スリーブ80を円板部62に載置し、その状態で、ボルトBTを、円板部62の下方側から貫通孔63及びネジ孔82に挿通する。そして、挿通されたボルトBTがネジ孔82に螺合される。これにより、伝熱スリーブ80の一方端80aが一段目冷却ステージ60に固定される。伝熱スリーブ80は、その一方端80aが一段目冷却ステージ60に固定された状態で、一段目冷却ステージ60から図1において上方に延設される。ここで、図1の上下方向は、多段シリンダ2の軸方向に一致する。従って、伝熱スリーブ80は、一段目冷却ステージ60から、多段シリンダ2の軸方向であって二段目冷却ステージ70に向かう方向に延設されることになる。なお、伝熱スリーブ80には、その内周壁面から外周壁面にかけて貫通した貫通孔81が形成される。この貫通孔81の存在により、伝熱スリーブ80内の空間と外部の空間との圧力が均一にされる。
また、図1は、上述したように非作動状態の二段型GM冷凍機1の断面図である。つまり、常温状態における二段型GM冷凍機1の断面図である。この場合、伝熱スリーブ80も常温である。図1に示すように伝熱スリーブ80が常温であるとき、伝熱スリーブ80の他方端80bは、二段目冷却ステージ70よりも上方に位置する。
ここで、図1において、多段シリンダ2の軸方向(図1の上下方向)に沿った、一段目冷却ステージ60(低段側冷却ステージ)からの距離により高さ位置が表されるとする。この場合、伝熱スリーブ80が常温であるとき、伝熱スリーブ80の他方端80bの高さ位置Aは、二段目冷却ステージ70の高さ位置B(正確には二段目冷却ステージ70の円板部72の上面の高さ位置B)よりも高い。すなわち、多段シリンダ2の軸方向に沿った、一段目冷却ステージ60から伝熱スリーブ80の他方端80bまでの長さが、一段目冷却ステージ60から二段目冷却ステージ70までの長さよりも長い。
二段目冷却ステージ70及び二段目シリンダ部22の先端面(上端面)に対面するように、補助冷却部材としての補助冷却板90が配設される。補助冷却板90は、円板形状を呈し、その外径は、伝熱スリーブ80の外径にほぼ等しい。なお、補助冷却板90の外径は、伝熱スリーブ80の内径よりも大きければよい。補助冷却板90は、熱伝導度の高い材質で構成される。本実施形態では、補助冷却板90は、銅により構成される。
図1に示すように、補助冷却板90は、二段目冷却ステージ70の上方に配設される。つまり、補助冷却板90は、二段目冷却ステージ70の高さ位置よりも高い高さ位置に配設される。また、図1に示す状態では、補助冷却板90の下面が、伝熱スリーブ80の他方端80bに接触した状態で、伝熱スリーブ80上に載置される。このとき、補助冷却板90と二段目冷却ステージ70との間に、多段シリンダ2の軸方向に沿った隙間Gが形成される。従って、補助冷却板90は、多段シリンダ2の軸方向に沿った二段目冷却ステージ70の高さ位置よりも高い高さ位置に配設され、伝熱スリーブ80が常温であるときに伝熱スリーブ80の他方端80bに接触するとともに二段目冷却ステージ70に多段シリンダ2の軸方向に沿った隙間Gを隔てて対面配置されることになる。
補助冷却板90には、多段シリンダ2の軸方向(図1において上下方向)に貫通する複数の貫通孔91が、周方向に沿って形成される。この貫通孔91に、ボルト94が挿通される。ボルト94は、二段目冷却ステージ70に螺合固定される。
図2は、補助冷却板90付近の断面の拡大図である。図2に示すように、補助冷却板90に形成される貫通孔91は、大径部91aと、大径部91aよりも径の小さい小径部91bを有し、大径部91a及び小径部91bが、多段シリンダ2の軸方向(図2の上下方向)に沿って同軸状に形成される。貫通孔91の小径部91bが、二段目冷却ステージ70の円板部72に対面する。また、大径部91aと小径部91bとの境界には、リング状の段差面91cが形成される。なお、大径部91aと段差面91cは、無くてもよい。すなわち、貫通孔91が小径部91bのみにより構成されていてもよい。
また、貫通孔91に挿通されるボルト94は、ボルトヘッド94a、軸部94b、及びネジ部94cを有する。ボルトヘッド94aから軸部94bが延設され、軸部94bの先端からネジ部94cが軸部94bと同軸状に延設される。軸部94b及びネジ部94cの外径は、補助冷却板90の貫通孔91の小径部91bの径よりも僅かに大きい。また、ボルトヘッド94aの外径は、軸部94bの外径よりも大きい。
また、補助冷却板90は、その貫通孔91の小径部91bが二段目冷却ステージ70に形成されたネジ孔73に同軸配置するように、二段目冷却ステージ70の図2において上方に配置される。そして、ボルト94の軸部94bが貫通孔91に挿通されるとともに、ボルト94のネジ部94cが二段目冷却ステージ70のネジ孔73に螺合される。これにより、ボルト94が二段目冷却ステージ70に螺合固定される。
また、図2からよくわかるように、ボルト94の軸部94bの外周回りに、付勢部材としての圧縮コイルスプリング95が取り付けられる。この圧縮コイルスプリング95は、ボルト94が二段目冷却ステージ70に螺合固定された状態において、その一端にてボルト94のボルトヘッド94aの図2において下面に係止されるとともにその他端にて補助冷却板90の貫通孔91の段差面91cに係止される。ボルト94は二段目冷却ステージ70に螺合固定されているから、圧縮コイルスプリング95の付勢力は、補助冷却板90に作用する。斯かる付勢力により、補助冷却板90は、図1及び図2において下方に付勢される。なお、貫通孔91が小径部91bのみにより構成されている場合、圧縮コイルスプリング95は、その一端にてボルトヘッド94aに係止されるとともにその他端にて補助冷却板90の上面に係止される。
ここで、図1からわかるように、補助冷却板90の下方に伝熱スリーブ80が配設されていて、図1に示す状態では、補助冷却板90が伝熱スリーブ80の他方端80bに接触されている。従って、補助冷却板90に作用する上記付勢力は、伝熱スリーブ80に作用する。このため補助冷却板90は、圧縮コイルスプリング95によって、伝熱スリーブ80の他方端側に付勢されることになる。換言すれば、圧縮コイルスプリング95は、補助冷却板90を伝熱スリーブ80の他方端80b側に向けて付勢する。
多段シリンダ2は、金属の中でも熱伝導度の低い材質により構成される。典型的には、多段シリンダ2はステンレスにより構成される。また、ボルト94及び圧縮コイルスプリングも、熱伝導度の低い材質、例えばステンレスにより構成される。一方、伝熱スリーブ80は、金属の中でも熱伝導度の高い材質により構成される。
また、伝熱スリーブ80は、多段シリンダ2を構成する材質よりも熱収縮率の大きい材質により構成される。従って、多段シリンダ2がステンレスにより構成されている場合、伝熱スリーブ80は、熱伝導度が高く、且つ、ステンレスよりも熱収縮率の大きい材質により形成される。多段シリンダ2がステンレスにより構成される場合、伝熱スリーブ80は、典型的には、アルミニウムにより構成されるとよい。
また、多段シリンダ2の軸方向に沿った伝熱スリーブ80の長さ(軸方向長さ)は、伝熱スリーブ80の温度が一段目冷却ステージ60の目標冷却温度(例えば、30K〜80Kの温度範囲内で予め定めた温度αK)に達したときに、伝熱スリーブ80の他方端80bの高さ位置Aが、二段目冷却ステージ70の高さ位置Bよりも低くなるように、設定される。
また、一段目冷却ステージ60及び二段目冷却ステージ70は、熱伝導度の高い材質により構成される。典型的には、一段目冷却ステージ60及び二段目冷却ステージ70は、銅により構成される。
上記構成の二段型GM冷凍機1において、以下に、その作動について簡単に説明する。ディスプレーサ3が多段シリンダ2内にて図1において最も上方(上死点)に位置しているときには、圧力変動機構5の高圧開閉弁52が開いており低圧開閉弁53が閉じている。従って、高圧の作動ガスが、共通通路55、主連通路23を経由して多段シリンダ2内に流入する。
<高圧移送過程>
次いで、ディスプレーサ3が多段シリンダ2に対して下方に変位される。すると、背面室21b内の高圧の作動ガスが、一段目高温側連通路313を通って一段目蓄冷器31内の一段目充填空間31aに流入する。一段目充填空間31a内に流入した作動ガスは一段目蓄冷材33から冷熱(低温)を奪うことにより冷却される。そして、一段目蓄冷材33により冷却された作動ガスは一段目低温側連通路314を通って一段目蓄冷器31内から流出するとともに一段目膨張室21aに流入する。
また、一段目膨張室21a内の作動ガスは、二段目高温側連通路323を通って二段目蓄冷器32内の二段目充填空間32aに流入する。二段目充填空間32a内に流入した作動ガスは二段目蓄冷材34から冷熱を奪うことにより冷却される。そして、二段目蓄冷材34により冷却された作動ガスは二段目低温側連通路324を通って二段目蓄冷器32内から流出するとともに二段目膨張室22aに流入する。
<膨張過程>
その後、圧力変動機構5の高圧開閉弁52が閉じた後に低圧開閉弁53が開く。これによって、一段目シリンダ部21の一方端部211側に位置する一段目膨張室21a内の作動ガス及び、二段目シリンダ部22の一方端部221側に位置する二段目膨張室22a内の作動ガスが、それぞれ膨張仕事を行う。斯かる膨張仕事によって、それぞれの膨張室21a,22a内にて冷熱が発生する。
<低圧移送過程>
次に、ディスプレーサ3が多段シリンダ2に対して上方に変位される。すると、二段目膨張室22a内の作動ガスは、二段目低温側連通路324を経由して二段目蓄冷器32内に流入し、二段目蓄冷器32内の二段目充填空間32aを通る。このとき作動ガスが二段目充填空間32a内の二段目蓄冷材34に冷熱を奪われることによって加熱される。二段目充填空間32a内の作動ガスはさらに二段目高温側連通路323を経由して二段目蓄冷器32から流出するとともに一段目膨張室21aに流入する。
また、一段目膨張室21a内の作動ガスは、一段目低温側連通路314を経由して一段目蓄冷器31内に流入し、一段目蓄冷器31内の一段目充填空間31aを通る。このとき作動ガスが一段目充填空間31a内の一段目蓄冷材33に冷熱を奪われることによって加熱される。一段目充填空間31a内の作動ガスはさらに一段目高温側連通路313を経由して一段目蓄冷器31から流出するとともに主連通路23、共通通路55、低圧開閉弁53を通り、コンプレッサ51に流入する。
<圧縮過程>
次いで、圧力変動機構5の低圧開閉弁53が閉じ、高圧開閉弁52が開く。これによって、高圧の作動ガスが、共通通路55、主連通路23を経由して多段シリンダ2内に流入する。なお、コンプレッサ51の圧縮仕事により発生する熱は、コンプレッサ51の吐出側に設けられている図示しない放熱器によって外部に放熱される。
上記した熱サイクル(GMサイクル)が繰り返されることによって、一段目膨張室21a内が例えばαK程度に冷却され、二段目膨張室22a内が例えば10K程度に冷却される。一段目膨張室21a内で生じた冷熱は、一段目冷却ステージ60に伝熱され、二段目膨張室22aで生じた冷熱は、二段目冷却ステージ70に伝熱される。従って、一段目冷却ステージ60の目標冷却温度はαK程度であり、二段目冷却ステージ70の目標冷却温度は10K程度である。それぞれの冷却ステージから、外部に冷熱が取り出される。
ところで、一般的に、常温環境下の二段型GM冷凍機を作動させた場合、まず、一段目冷却ステージが冷却される。一段目冷却ステージの冷却中、二段目冷却ステージの冷却速度は非常に遅い。一段目冷却ステージの温度が目標冷却温度(例えばαK)に近い温度にまで冷却されたときに、二段目冷却ステージの冷却速度が速くなる。このように、二段目冷却ステージの冷却速度は、一段目冷却ステージの冷却速度よりも非常に遅い。また、一段目冷却ステージの冷凍能力は二段目冷却ステージの冷凍能力よりも大きい。言い換えれば、二段目冷却ステージの冷凍能力は一段目冷却ステージの冷凍能力よりも小さい。このように、二段目冷却ステージの冷却速度が非常に遅いこと、及び、二段目冷却ステージの冷凍能力が小さいことにより、二段目冷却ステージを利用して被冷却体を常温から極低温(例えば10K)まで冷却しようとすると、冷却完了までに非常に長い時間を要する。
この点に関し、本実施形態に係る二段型GM冷凍機1は、極低温に冷却される被冷却体の冷却時間の短縮化を図ることができるように構成されている。このことについて、以下に説明する。
本実施形態に係る二段型GM冷凍機1が非作動状態であるとき、すなわち常温環境下にあるとき、図1に示すように、伝熱スリーブ80が、補助冷却板90に熱的に接触している。また、補助冷却板90には、二段目冷却ステージ70で冷却されるべき非冷却体(例えば熱シールド板)が熱的に接続される。
図1に示す状態の二段型GM冷凍機1が作動すると、まず、一段目冷却ステージ60が冷却される。ここで、本実施形態に係る二段型GM冷凍機1によれば、一段目冷却ステージ60に伝熱スリーブ80が固定されており、この伝熱スリーブ80は、常温状態で補助冷却板90に熱的に接触している。従って、一段目冷却ステージ60にて発生した冷熱は、伝熱スリーブ80を介して補助冷却板90に伝達される。これにより、補助冷却板90が、一段目冷却ステージ60の冷却中に冷却される。よって、補助冷却板90に熱的に接続された被冷却体は、補助冷却板90及び伝熱スリーブ80を介して一段目冷却ステージ60の冷熱により冷却される。
また、一段目冷却ステージ60の冷却に伴って伝熱スリーブ80が冷却された場合、伝熱スリーブ80が熱収縮する。ここで、伝熱スリーブ80は、その一方端80a(下方端)にて一段目冷却ステージ60に固定されているので、熱収縮によって伝熱スリーブ80の他方端80b(上方端)の高さ位置が低下する。
一段目冷却ステージ60の冷却が進むにつれて伝熱スリーブ80が熱収縮することにより、伝熱スリーブ80の他方端80bの高さ位置が低くされる。ここで、伝熱スリーブ80の他方端80bの高さ位置Aが、二段目冷却ステージ70の高さ位置Bよりも高い間は、圧縮コイルスプリング95により伝熱スリーブ80の他方端80b側に向けて付勢されている補助冷却板90が、伝熱スリーブ80の他方端80bの高さ位置の低下に追従して、伝熱スリーブ80との接触を維持したまま図1の下方、すなわち一段目冷却ステージ60側に向けて移動する。このとき、補助冷却板90と二段目冷却ステージ70との間の隙間Gは確保されているため、補助冷却板90と二段目冷却ステージ70とは熱的に絶縁される。一段目冷却ステージ60の冷却中は、二段目冷却ステージ70は十分に冷却されないので、隙間Gが確保されることにより、十分に冷却されていない二段目冷却ステージ70から補助冷却板90への熱流入を防止することができる。
なお、一段目冷却ステージ60の冷却中、多段シリンダ2も冷却されるので、多段シリンダ2も熱収縮する。しかしながら、多段シリンダ2は熱収縮率の小さいステンレスにより構成されているので、熱収縮量も小さい、よって、多段シリンダ2の二段目シリンダ部22に設けられている二段目冷却ステージ70の高さ位置は、多段シリンダ2が冷却された場合であってもさほど変化しない。
さらに一段目冷却ステージ60の冷却が進んで一段目冷却ステージ60の温度が目標冷却温度(例えば30K〜80Kの温度範囲内で予め定めた温度αK)に近い温度(例えば(α+10)K)に達したとき、伝熱スリーブ80がさらに熱収縮して伝熱スリーブ80の他方端80bの高さ位置Aが二段目冷却ステージ70の高さ位置Bに一致する。すると、補助冷却板90と二段目冷却ステージ70との間に設けられていた隙間Gが無くなり、補助冷却板90が二段目冷却ステージ70に接触する。図3は、補助冷却板90が二段目冷却ステージ70に接触した状態を示す、二段型GM冷凍機1の部分断面概略図である。
二段型GM冷凍機1が図3に示す状態であるとき、補助冷却板90は、伝熱スリーブ80を介して一段目冷却ステージ60に熱的に接触しているとともに、二段目冷却ステージ70にも熱的に接触している。また、一段目冷却ステージ60の温度が目標冷却温度に近い温度にまで冷却された時点では、二段目冷却ステージ70の冷却も速くなり、二段目冷却ステージ70の温度が比較的低温である可能性が高い。よって、図3に示す状態では、補助冷却板90及び補助冷却板90に熱的に接続された被冷却体が、一段目冷却ステージ60及び二段目冷却ステージ70によって冷却されることになる。
そして、一段目冷却ステージ60の冷却がさらに進み、一段目冷却ステージ60の温度が目標冷却温度(例えばαK)に達すると、伝熱スリーブ80がさらに熱収縮して、その他方端80bの高さ位置Aが、二段目冷却ステージ70の高さ位置Bよりも低い位置に位置することになる。また、図3に示すように伝熱スリーブ80の他方端80bの高さ位置Aが二段目冷却ステージ70の高さ位置Bに一致した状態では、補助冷却板90は二段目冷却ステージ70に接触していて、それ以上下方(一段目冷却ステージ60に向かう方向)に移動できない。つまり、二段目冷却ステージ70が補助冷却板90の下方移動に対するストッパとして機能する。このため、伝熱スリーブ80の他方端80bの高さ位置Aが二段目冷却ステージ70の高さ位置Bよりも低い位置に位置した場合、補助冷却板90が伝熱スリーブ80の他方端80bの高さ位置の低下に追従して移動することができず、それ故に、補助冷却板90が伝熱スリーブ80と切り離される。
図4は、補助冷却板90が伝熱スリーブ80から切り離された状態を示す、二段型GM冷凍機1の部分断面概略図である。図4に示す状態では、補助冷却板90が一段目冷却ステージ60と切り離されるとともに、二段目冷却ステージ70に熱的に接触する。従って、補助冷却板90及び補助冷却板90に熱的に接続された被冷却体が、二段目冷却ステージ70のみにより冷却される。ここで、補助冷却板90及び被冷却体が二段目冷却ステージ70のみにより冷却される時点では、補助冷却板90及び被冷却体はそれまで一段目冷却ステージ60の冷熱により例えばαK程度にまで冷却されている。よって、二段目冷却ステージ70の冷凍能力が小さくても、比較的短時間で、補助冷却板90及び被冷却体を極低温(例えば10K)まで冷却することができる。
図5は、従来の二段型GM冷凍機を用いて被冷却体を極低温(例えば10K)に冷却する場合における、被冷却体の温度の推移を示すグラフである。図5の横軸が時間、縦軸が温度[K]であり、図5中のグラフAが被冷却体の温度推移を示す。なお、被冷却体は二段目冷却ステージに熱的に接続されている。また、一段目冷却ステージの温度推移が図5中のグラフBに示される。
図5に示すように、二段型GM冷凍機を作動させると、一段目冷却ステージの温度はすぐに低下するものの、二段目冷却ステージの温度はすぐには低下しないので、二段目冷却ステージに熱的に接続された被冷却体の温度もしばらくは低下せず、常温(約300K)のままである。一段目冷却ステージの温度が目標冷却温度(αK)に近づく時点から、二段目冷却ステージの温度の低下速度が速くなるので、それに伴い被冷却体の温度も低下する。そして、時間T1にて一段目冷却ステージの温度が目標冷却温度に達した後の時間T2にて被冷却体の温度が目標冷却温度(10K)に達する。
このように、従来の二段型GM冷凍機においては、一段目冷却ステージの温度が目標冷却温度に近い温度まで低下しないと、二段目冷却ステージの温度が低下しない。このため、二段目冷却ステージにより冷却される被冷却体の温度が極低温に至るまでに長時間を要する。
図6は、本実施形態に係る二段型GM冷凍機1を用いて被冷却体を極低温(例えば10K)に冷却する場合における、被冷却体の温度推移を示すグラフである。図6の横軸が時間、縦軸が温度[K]であり、図6中のグラフAが被冷却体の温度推移を示す。なお、一段目冷却ステージ60の温度推移が図6のグラフBに示される。
図6に示すように、二段型GM冷凍機1を作動させると、一段目冷却ステージ60の温度はすぐに低下する。また、被冷却体は冷却初期には一段目冷却ステージ60の冷熱により冷却されるので、被冷却体の温度も一段目冷却ステージ60の温度低下に追従して低下していく。なお、一段目冷却ステージ60の冷熱が伝熱スリーブ80及び補助冷却板90を介して被冷却体に奪われるが、一段目冷却ステージ60の冷却能力は高いので、それによって一段目冷却ステージ60の冷却速度が顕著に低下することはない。よって、一段目冷却ステージ60の温度が目標冷却温度に達するまでの時間T1’は、図5に示す従来の二段型GM冷凍機の一段目冷却ステージの温度が目標冷却温度に達するまでの時間T1とほとんど同じである。
上記のように一段目冷却ステージ60の冷却中に被冷却体が冷却されるため、一段目冷却ステージ60の温度が目標冷却温度(αK)に達した時点T1’にて、被冷却体の温度は十分に低下している。そして、時間T1’以降、被冷却体が二段目冷却ステージ70により冷却される。時点T1’にて被冷却体の温度は十分に低下しているので、その後に被冷却体が冷凍能力の低い二段目冷却ステージ70により冷却された場合でも、極低温(例えば10K)に至るまでの時間T2’は図5に示す従来の二段型GM冷凍機を用いた場合に被冷却体が極低温に至るまでの時間T2よりも短い。このようにして、極低温(例えば10K)に冷却する被冷却体の冷却時間の短縮化を図ることができる。
以上のように、本実施形態に係る二段型GM冷凍機1によれば、極低温に冷却される被冷却体が、二段目冷却ステージ70の冷却が十分でないときには一段目冷却ステージ60の冷熱により冷却される。そして、二段目冷却ステージ70が十分に冷却されてきた場合に二段目冷却ステージ70の冷熱により被冷却体が極低温まで冷却される。一段目冷却ステージ60の冷凍能力は二段目冷却ステージ70の冷凍能力よりも高いので、冷却開始の初期に一段目冷却ステージ60で被冷却体が冷却される分だけ、極低温に冷却される被冷却体の冷却時間を短縮することができる。
また、伝熱スリーブ80は、二段目シリンダ部22の外周を覆うように円筒状に形成されている。従って、外部からの輻射熱が伝熱スリーブ80で遮蔽される。よって、熱輻射による二段目シリンダ部22への熱流入を効果的に防止することができる。
また、伝熱スリーブ80がアルミニウムにより構成され、多段シリンダ2がステンレスにより構成される。このため、伝熱スリーブ80(アルミニウム)と多段シリンダ2(ステンレス)の熱収縮率の差を利用して、上記したような伝熱スリーブ80と補助冷却板90との熱的な接続及び切り離しを実現することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態では、二段型の蓄冷式冷凍機について説明したが、二段型以外の多段型の蓄冷式冷凍機についても、本発明を適用することができる。また、上記実施形態では、蓄冷式冷凍機としてGM冷凍機を示したが、それ以外の蓄冷式冷凍機、例えば、パルス管冷凍機やスターリング型パルス管冷凍機等の蓄冷式冷凍機についても本発明を適用することができる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。